「なんというか、凄い世界だな」
そう言いながら、俺は周りの光景を見ながら呟く。
そこは近未来のSF映画のイメージ通りに描かれた世界であった。
「少しは落ち着きなさいよ」
そう俺に話しかけたのは、この世界での朝田さんの姿であるシノンだった。
「ごめん、だけどさ。
こうやって、見ると、この世界は凄いよ。
だって、本当に現実との違いがまるで分からないよ」
現在、デスガン・ディビエルの正体を探る為にその噂の元となっているガンゲイル・オンラインに俺と朝田さんはログインしていた。
響にはログインしている間に何か起きたらすぐに起こしてもらうように、外で待ってもらっている。
「まずは死銃の事についてを調べたいけど、やっぱりなかなか見つからないな」
ログインしてから3時間程、シノンと一緒に色々な所で情報を聞いたが、やはりほとんどが本当なのか分からない情報ばかりだった。
「・・・ねぇ、聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「さっきの話は本当なの?
今朝、いきなりその、仮面ライダーとか言う力を得たのって」
「まぁ信じられないけど、本当なんだよ」
そう言いながら、俺は情報を探している間に、今朝の出来事についてを話した。
だが、その中で、朝田さんの事について知ったのは今朝だという事だけは話さなかった。
「そうね、まぁあんなのを見せられた以上は信じるしかないけどね。
なんというか、少し羨ましいと思ったわ」
「まぁ実際にこんなファンタジーのような力だとね」
「・・・そういう事じゃないわ」
「???」
その言葉の意味が分からず、俺は思わず首を傾げる。
「あなたも知っているでしょ。
私が、昔人を殺した事を」
「・・・あぁ」
そう言いながら、周りに誰もいない事を確認するとシノンはそのまま淡々と話し続ける。
本来ならば、彼女と共に過ごす中で聞くはずだった話。
だが、実際には、この謎の現象によって、無理矢理知ってしまった話。
それは余りにも残酷すぎると思えた。
彼女の過去、母親を守る為に銀行強盗から銃を奪い、強盗を殺した。
話を聞けば、簡単に理解してしまうが、その時は彼女のせいではないだろう。
だが、それが原因で学校に虐められ、俺が介入して、彼女を助けたという事になっている。
「この世界で、私は強くなろうと思った。
けど、案外上手くいかない。
だけど、あなたは」
その言葉と共に思い浮かべたのは、セイバーとしての俺の姿だろう。
確かに常識では考えられない程の強さはあの姿にはあった。
それでも
「俺は別に強くないよ」
そう言うしかなかった。
「俺がこうして戦えたのは、ただ単に道具が強かっただけだ。
それをなんとか使って戦えただけで、強くなってない」
「そんなの」
そう呟くシノンに対して俺は
「だったら、一緒に強くなろう」
「えっ」
その言葉に驚きを隠せなかったようだ。
「俺はセイバーとして、君や響を守れるように強くなる。
だから、君も一緒に強くなろう」
俺はそう言って、真っすぐと見つめる。
「・・なによそれ。
本当に変わっているわね」
そう言いながらも、少し落ち着いたのか、シノンもまた手を繋ぐ。
「えぇ、だったら一緒に強くなるわよ。
でも、置いていかれないようにね」
「分かっているよ」
そう言いながら、俺達は再び歩き始める。
その時、現実の世界で、ソードアートオンラインに僅かな変化が起きている事は、この時、まだ俺は知らなかった。