「強欲の魔女か」
「あぁ、とにかく座りたまえ」
「あぁ」
そう言いながら、強欲の魔女と名乗った女性を目の前にしながら、俺は用意された椅子に座る。
「さて、改めて自己紹介を。
僕の名前はエキドナ、この世界では強欲の魔女と呼ばれている」
「この世界という事は、俺がこの世界の住人じゃないというのは知っていると言う事だな」
その強欲の魔女という名前からして、この世界では相当有名だろう。
だからこそ、その名前を先に出して、自己紹介を行った。
「それは簡単な事だよ。
君が持っている本から感じ取る力は僕の知る、どの力でもないから。
何よりもその格好は、以前までここに通っていた彼と同じ感じだからね」
「同じ感じ?」
それに俺は疑問に思ったが
「あぁ、遠く離れているここまではっきりと分かる程の力だからね。
だからこそ、少し無理をして、この世界に繋げたんだ」
「そうか、それで、何が目的だ?」
俺はそう言いながら、目の前にいるエキドナを睨みながら言う。
それに対してエキドナは
「目的、そうだね。
あえて言うならば、僕は君の事を知りたくてたまらない。
これは本音だ」
「俺の事が知りたいだと?」
何を言いたいのか分からず、俺は首を傾げる。
「そうだね、君自身はそれを自覚しながら、それを使っている。
僕はそれに興味があり、それを解明したい」
「それはワンダーライドブックを作る力の事か」
「あぁ、そうだね」
そう言いながら、その三日月を思えるような笑みをこちらを見せる。
「そう、ワンダーライドブックを作る力。
それは無尽蔵に他の世界の事を知る事のできる能力。
知識欲に対する強欲さが有名な僕にとって、その能力は魅力的すぎる。
この世界の常識が通じない未知の世界に、この世界によく似ていながらまったく異なる世界、そんな無限に近い世界の知識を知る事のできるその能力は僕にとっては強い興味の対象であり、実に近づきたい対象だ」
「俺に強い興味か、それでお前はただ知りたいだけなのか?
それとも、その力を使って何を企む」
「それならば、はっきり言うと、僕はただ知りたい。
それだけしかない。
君に対して嘘を言っても、きっと断る。
それは以前の彼から学んだからこそ、僕自身の正直な思いを伝えよう。
僕は自身の知識欲の為に君に近づきたい」
「そうか、まぁそれだったら良いか」
「あれ?」
俺は特に気にする事なく、懐からワンダーライドブックを取り出す。
「なんだ、その反応は?」
「いや、こういう場合、断るんじゃないのかな?」
「断って、助けられない命が増えるより、協力してもらって、助ける方が良いだろ。
それに」
「んっ?
あぁ、なるほど、雰囲気が似ているか」
「あぁ」
先程からエキドナから感じる狂気、それはデスルクと同じような狂気。
そんな感じがした。
「ふふっ、確かに、悪いと思ったが、君の記憶を覗かせて貰った。
そこに出てきた彼女の雰囲気は確かに僕によく似ている。
ただ、僕の場合はただ純粋な知識への探求欲、彼女の場合は力を手にする事への執着。
どちらも何かを純粋に求めている事には変わりない」
「あぁ」
「ふふっ、まぁ彼女が何を考えているのか、私には分からないがね。
もしかしたら、平行世界の私自身かもしれない。
名前なんて、その世界によって変わるし」
そう軽く言いながらエキドナは話を終わらせると共に
「さて、まずはお近づきの印に、君を強くする方法を一つ教えようと思う」
「強くする方法」
その言葉に俺は身構える。
「必要な事。
それは圧倒的な戦闘経験。
サウザンベースの剣士達は君よりも力を持っていなくても、その人生のほとんどを戦いに捧げた者達だ。
これまでは偶然と君自身の潜在的な力で乗り越えたが、これからもそうなるとは限らない。
ならばこそ、君に必要なのは多くの戦闘経験だ」
「そんな方法あるのか?」
「あるとも。
それも、君自身の持っているワンダーライドブックにね」
そう言いながらエキドナに言われて、ワンダーライドブックを少し並べる。
そのワンダーライドブックの一つ、ディケイド世界旅行記だった。
「少し、この本の力を借りて」
その言葉と共に作り出されたのはマゼンダの扉だった。
「これは」
「このワンダーライドブックに納められた物語の内の一つを体験する事ができる本だ。
その物語の詳細は僕も君も知らない戦いの歴史。
それを実際に体験する事によって、君に戦闘経験を積ませる」
「そうか」
そう言い、俺はドアノブに手を置くが
「なんで、手を繋ぐ」
「それは一緒に移動するからね。
後ろから着いていって、入れなかったら嫌じゃないか。
これでも殿方の手を繋ぐのは、僕も恥ずかしいから」
「よし、さっさと入るか」
「君は君で結構あっさりとしているね」
そう言いながら、俺はそのまま扉の中へと入っていく。