聖なる刃と物語   作:ボルメテウスさん

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屋敷の魔獣戦

「おらあああぁぁぁ!!」

 

その叫び声と共に、尾上はその手に持った土豪剣激土を手に持ち、囲んでいる魔獣を切り裂く。

 

戦闘から始まって1時間、その足下には既に桁が十を超える程の魔獣の死体が倒れていた。

 

だが、それでも途切れる事のない魔獣の大群が尾上に襲い掛かってきている。

 

「たくっ、この世界に何が起きているんだ?」

 

そう言いながら、周りを見渡しても、魔獣が覆っていた。

 

「神山がいなくなって、数日。

ここまでの魔獣の数、可笑しすぎるだろっ」

 

それと共に尾上はすぐにワンダーライドブックを取り出す。

 

【この甲虫の王者が現れし時、森を大いなる災いより救うと伝えられている】

 

その音声が響くと共に、土豪剣激土に装填し

 

【昆虫王者ムシキング!一刀両断!ブッた斬れ!ドゴ!ドゴ!土豪剣激土!

激土重版!絶対装甲の大剣が北方より大いなる一撃を叩き込む!】

 

その音声と共に尾上の左腕はカブトムシを思わせる籠手が現れ、そのまま真っ直ぐと魔獣の一体に突っ込む。

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

その雄叫びと共に近くにいた魔獣を掴むとそのまま地面に大きく叩きつける。

 

「ガンガンスマッシュ!!」

 

叩きつけられた魔獣は悲鳴を上げるが、それでも収まる事なく、何度も叩きつける。

 

そんな尾上に襲い掛かろうとする魔獣達だが、叩きつける事で飛び出た破片に目を潰され、魔獣は一瞬怯む。

 

そんな魔獣達に向けて、土豪剣激土で切り裂き、手に掴んだ魔獣を投げ捨てる。

 

「はぁはぁ、たくっ、どうなっていやがる」

 

そう言いながら、息を荒げていると共に、尾上の耳に聞こえたのは二つの声だった。

 

「なんだ?」

 

疑問に思い、警戒しながら構えると、二つの声だった。

 

『良いよ、このままあの剣士の足止めをお願いね。

さすがに合流されると、厄介だから』

 

一人は幼い子供だと思われ、その子供が魔獣達に命令していた。

 

「この子供が黒幕か、だが」

 

それとは別にもう一つの声が聞こえる。

 

『この方向に行けば、屋敷へと迎えるんですね!』

 

それはまるで周りにいる小動物達から情報を聞いて、屋敷へと向かっていた。

 

「これはもしかして、加護?」

 

それと共に、動物や昆虫などの声を聞き、操る事ができる加護を持つ者が生まれる事がある。

 

そんな話をフレデリカと聞いたのを思い出す。

 

「ムシキングワンダーライドブックの力か」

 

ムシキングワンダーライドブックの能力として、様々な昆虫達の力を身に纏う能力だと聞いた事がある。

 

それを考えれば、加護を持つ者達が命令したり、話を行う者達の声を聞く事ができるのは必然かもしれない。

 

「片方は敵だと確定して、もう片方は味方か?」

 

一瞬迷いながらも

 

『なっ魔獣がこっちに?!

なんですかっスバルさん』

 

「スバル?」

 

その名を聞いた瞬間、フレデリカから聞いた、エミリアの騎士と同じ名だった。

 

ここにはいないはずの彼がここにいるのは疑問だが、魔獣達の敵である事は確実だ。

 

『もう来たんだ。

だったら、始末をお願いね』

 

その言葉と共にスバル達に向かっていく鋭い音が聞こえる。

 

それはこれまで尾上が感じた事のない気配を持つ何かだった。

 

魔獣と近く、だがディビエルと近い気配。

 

「まぁ良いか」

 

どうしようか、一瞬、迷うが

 

「好きな奴の為に行動している奴を放っておく訳にはいかないか」

 

同時に聞いたスバルの人物像を信じる事にして、土豪剣激土を構え、走り出す。

 

「ダンガンッ!」

 

その言葉と共にスバルに迫っていたディビエルに向けて突っ込む。

 

「ここでっ白鯨かよっ!」

 

それと共に至近距離で聞こえたスバルの声。

 

襲い掛かろうとしていた白鯨の力を持ったディビエルを吹き飛ばす。

 

「尾上さんっ!!」

 

「なんで、俺の名前をって、そういう場合じゃないな!」

 

そう言いながら、尾上はスバル達の竜車の前に立ちはだかる。

 

「ここは俺に任せろ。

てめぇらはさっさと屋敷に行け」

 

「あぁ、分かった」

 

スバルはそう、まるで分かりきったように返事すると

 

「尾上さんっ!

そいつの出す煙に当たるとやばいし、ピンチになったら3体に増えるから!

その時に逃げている一体が本体だから」

 

「なんだか詳しいな、だが、分かったぜ!」

 

【とある魔術講師となった青年が、二人の少女の関りによって己の思いと再び向き合う物語】

 

「さっさと、行け!」

 

「おぉ!」

 

そう言いながら、白鯨ディビエルを睨む。

 

「さて、聞いた話だと、確かに厄介だな。

まぁ、ここからだと屋敷から十分な距離だな」

 

その言葉と共に新たなワンダーライドブックを取り出し、そのまま土豪剣激土に装填する。

 

【ロクでなし魔術講師と禁忌経典!一刀両断!ブッた斬れ!ドゴ!ドゴ!土豪剣激土!

激土重版!絶対装甲の大剣が北方より大いなる一撃を叩き込む!】

 

それと共にムシキングから新たな装甲として、魔術師を思わせるローブを身に纏う。

 

『ガアアァァ』

 

こちらの姿が変わったのを見ると、白鯨ディビエルは雄叫びを上げながら、頭から白い煙を尾上に襲い掛かったが

 

「おらぁ!!」

 

尾上はそのまま殴り飛ばす。

 

同時に煙を覆うが尾上は姿を消さなかった。

 

『ッ!?』

 

「さぁ、こっちに付き合って貰うぜ!」

 

 


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