ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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悟空地球飛来前
1話 前世を思い出した時には妻に先立たれていた


 儂は天才科学者、ドクター・ゲロ……に、転生してしまったらしい現代日本人である。

 前世では、トラックに轢かれた覚えはないのだが、気が付けば死んでおり、神を名乗る存在の前にいた。そして、誰に転生するか決めるクジを引かされた。

 その結果がドクター・ゲロだったわけである。ちなみに、チートは無い。

 

 儂だってできれば悟空やベジータの方が……いや、無理だ。儂が悟空になっても、原作ブレイクするだけだ。ベジータになんてなったら、フリーザ軍時代の悪行に精神が耐えられない。

 それでもヤムチャや天津飯の方が良かったなと、当人達の苦労を無視して儂はそう思う。

 

 何せドクター・ゲロである。人造人間編では諸悪の根源だし、この世界の未来が超ではなくGT編につながっているなら、自分が改造した人造人間に二回も殺されることになる。

「それに関しては、儂自身が人造人間を作らなければいいだけの話なのだが……」

 

 儂が前世の記憶を取り戻した状況は、不治の病で亡くなった妻の遺体を冷凍保存した直後だ。そう、前世で知った時は儂自身驚いたが、ドクター・ゲロは妻帯者なのだ。

 その妻とは、ゲーム『ドラゴンボールファイターズ』の黒幕(?)である、人造人間21号。彼女になった人物だ。

 

 彼女は難病にかかり、儂でも治療することはできなかった。そして今際の際に、儂は約束してしまった。彼女を最強の人造人間として復活させてみせると。そして彼女は、「そうしたら、また一緒に研究が出来ますね」と微笑み、それが彼女の最期の言葉となった。

 狂気の科学者夫婦らしい別れの言葉だろう。儂自身そう思うが、それが儂ら夫婦の愛情の形なのだから、誰にも否定はさせん。

 

 儂はこの約束を違えるつもりはない。ドラゴンボールがある? 残念だが、ドラゴンボールは寿命と病で死んだ者は生き返せない。それはナメック星のドラゴンボールでも同じだろう。GTで登場する究極のドラゴンボールは分からないが、願いを叶えた後宇宙を探し回らなければならない。超のスーパードラゴンボールなら可能だろうが、この第七宇宙だけではなく第六宇宙に行かなければならないので、今の儂に集める事は不可能だ。

 

 だから、妻を生き返すのなら人造人間として復活させるしかない。だが、それだけなら何も『最強』に拘る必要はないかもしれない。

 

 だが、考えてみてほしい。例えば、恋人に「最高の結婚指輪を用意するから結婚してほしい」とプロポーズして、実際に用意できたのは金メッキにガラス玉の結婚指輪だったらどうだろうか? それを言ったのが貧乏だが純粋な好青年なら、救いはあるかもしれない。しかし、それを言ったのが世界有数の金持ちだったらどうだ? ただの詐欺じゃないか。

 

 そして私はこの世界でも有数の頭脳を誇るドクター・ゲロだ! 最低でもパーフェクトセルを上回らなくては、私の意地が許さない。

 

 それに考えてもみてほしい。この世界は安全だろうか? 儂が知る限り、原作では何度も町が吹き飛んでいるし、未来トランクスの世界線も含めれば人類が絶滅しかけて(まあ、元凶は儂だが)いるし、魔人ブウ編では地球そのものが破壊されている。

 

 儂が転生したこの世界が、そうならないとは限らない。ドラゴンボールで孫悟空達が生き返してくれる? いやいや、それはわからんぞ。ドラゴンボールで人を生き返すときの常套句、「悪人以外の」があるからな。

 儂や妻が悪人に含まれないとは限らない。何せ儂は悪の科学者だ。今のところは、ちょっと軍に協力して兵器を開発した経験がある程度だが。

 

 正直、いくつもの星に住む種族を絶滅させているベジータがブウ編では『極悪人』ではないと解釈されているので、儂と妻も大丈夫な気がするが……油断はできない。

 

「それに、約束以外にも人造人間は作らねばならんし」

 もし儂が今から人造人間を作るのをやめたら、孫悟空が最悪の場合は死んでしまい、原作ブレイクが発生する。何せ、まだ人造人間8号もいないのだ。ホワイト将軍のパワードガンで悟空が気絶させられても、助けてくれるフランケンシュタインの怪物っぽい心優しい人造人間が、存在しない。

 

 その場合、普通にホワイト将軍に殺されてドラゴンボール完結。一時的にレッドリボン軍の天下になるだろうが、後に復活するピッコロ大魔王に世界は征服されるだろう。

 ただ、運が良ければドラゴンボールを8号ではなくホワイト将軍の部下が見つけるだけかもしれないが。

 

 その場合、ホワイト将軍は予定通り用済みになったスノが暮らしていた村の村人を皆殺しにした後、ドラゴンボールを持って本部に引き上げるだろうから、ドラゴンレーダーでボールを探す悟空と遭遇しないかもしれない。

 それで孫悟空が生存し続けたとしても、人造人間編でセルが存在しなければ悟空達はスーパーサイヤ人2に覚醒する事はなく、そのまま魔人ブウと対決することになり……多分勝てないだろう。

 

 GTだと邪悪龍の発生がしばらく後回しにされるだけだが、超だと17号と18号が存在しない分戦力が低下し、第七宇宙敗退、という事もあり得る。

 

 何が言いたいのかというと、ドラゴンボールで妻を生き返した後穏やかな生活を過ごすだけでは、あっさり死ぬかもしれないと言うことだ。

 ……仮に、宇宙の他の惑星に移住したとしても、魔人ブウ編でブウが惑星をいくつかつぶしているし、ドラゴンボール超では破壊神シャンパがスーパードラゴンボールを探すために、自分の宇宙でもないのに惑星をいくつか破壊している。

 

 ……改めて考えると、ドラゴンボールって超危険な世界だな。安全地帯が一切ないぞ。

 

「そうなると儂が取れる選択肢は、原作通りに人造人間を作って孫悟空達に強敵を提供しつつ生き残れるよううまく立ち回る。

 もしくは……儂が魔人ブウを倒せる最強の人造人間を作るかだ」

 

 儂の作る人造人間が魔人ブウを倒せるなら、孫悟空達を強くする必要はない。GT編は、ドラゴンボールにさえ注意すれば起きないだろうし……ドラゴンボール超の方に歴史が動いたら困るが、それもどうにかなるだろう。

 あと、儂自身も強くなる必要がある。原作の人造人間20号程度の強さでは、魔人ブウ編以降ではうっかり死にかねないからだ。

 

 儂自身が魔人ブウを倒せるほどになる必要はないが、ピッコロさんぐらいには強くなっておきたい。……それでも億単位の戦闘力が目標か。気が遠くなりそうだ。

 

「だが……儂は、映画版も含めれば人造人間13号の時点で、宇宙の帝王フリーザを超える強さの人造人間を作る事ができる天才科学者! その儂が原作知識を手に入れた以上、不可能はない!」

 

 カプセルコーポレーションのブリーフ博士やブルマには劣るがね。あの親子は本物のチートだ。

 

 

 

 さて、最強の人造人間を作ると決意した儂だが、次は具体的な今後の行動指針を決めなければならない。

 今は孫悟空が地球に来るどころか、まだこの世に生を受けてもいない。

 ブリーフ博士もまだホイポイカプセルを発明していない。何せ、儂がまだ爺ではなく中年だからな。髪の毛もあるし。

 

 ちなみに、儂と妻の息子……人造人間16号のモデルとなった人物だが、残念ながらこの世界には存在しない。儂が記憶を取り戻す前のことだが何らかの差異があったのか、それとも単に巡り合わせか、子供ができる前に妻は逝ってしまった。

 

 なので、今の儂は天涯孤独ということになる。寂しさを覚えないわけではないが、ある意味気楽な身の上だ。人造人間1号はいるが、これは戦闘どころか家事も出来ない初期の機械タイプの人造人間だからなぁ。

 

「今からセルを超える人造人間を直接作る……それは無理だ」

 時間的余裕はあるが、素材も技術もデータも足りない。原作知識があっても、それは作品としての知識だ。ゲロが具体的にどんな科学技術を使って人造人間を作っていたのか、解説されてはいない。

 

 永久エネルギー炉やら異なる人間や宇宙人から採取した細胞を合成とか、聞いただけでできるならやってみてほしい。

 だが、儂も三十年以上ドクター・ゲロを伊達でしていたわけではない。ドラゴンボール世界の科学技術の知識を修めたこの頭脳は、「こうすればできるのではないか」という推測は可能だった。足りない素材やデータが揃い、十分な実験を繰り返し技術を洗練させれば、原作よりも高性能な人造人間を作る事ができるだろう。

 

 それに、儂は孫悟空に復讐する気が全くない。そもそも、まだレッドリボン軍自体存在していないし。だから、孫悟空達とも協力してやっていけるだろう。……多分だが。

 

「つまり、儂の今後の行動は素材とデータ収集、そして儂自身の知識と技術を高めるための行動が中心となる。……まず、ブリーフ博士と接触するか。博士のホイポイカプセルが必要だ」

 

 儂はまだカプセルコーポレーションを設立していないブリーフ博士に接触し、資金と研究の援助を申し出た。突然の事に彼は戸惑ったようだが、そこは「人類の未来のために」とか「子供たちの明るい将来のために」とか、いろいろ良い事を言って納得させた。

 

 それから数年でブリーフ博士は結婚してホイポイカプセルを発明。都で一番の金持ちとなる。儂にもホイポイカプセルの権利をくれるといったが、断っておいた。

 代わりに将来研究で困ったことになったら、助けてくれと言ったら快諾してくれた。……白紙の小切手を切らせたようで心苦しい。そう感じるくらいには、彼と親しくなれたと思う。

 

 まあ、儂が金に困っていなかったという事情もあるが。ホイポイカプセルの研究開発を手伝う傍ら、儂は自身のトレーニングと研究も進めていた。

 それで開発した人造人間2号を基に量産した家事手伝いロボットが、大当たりしたのだ。戦闘能力は持たせていないが、掃除や洗濯、簡単な料理やちょっとした力仕事、さらには車の運転や飛行機の操縦などもできる優れもので、パンチー夫人にも大好評である。

 

 あと、化粧品の販売も手掛けている。人間タイプの人造人間を作るために必要な、細胞を強化する薬剤を開発する過程でできた皮膚細胞を活性化させる効果のある液体を、化粧水として売り出したのだ。やはりパンチー夫人にも大好評である。

 

 おかげで、儂はカプセルコーポレーションほどではないが金持ちになれた。

 ……将来レッドリボン軍に協力しなくてもいいのではないだろうか? いや、それだと孫悟空がホワイト将軍に戦うとき大変だな。それに、健康で身体能力の高い軍人は人造人間の素体として理想的だし。

 

 ちなみに、トレーニングの成果も着実に出ており、儂は格闘技初段ぐらいの戦闘技術を身に着けることに成功した。……猟銃を持った農夫未満の強さ、といったところか。

 ラディッツにゴミ扱いされる程度だが、儂の本番は自分自身を人造人間にしてからだ。それまでは、人造人間に入力するためのデータを集めるためのトレーニングだからこれでいいのだ。

 

「さて、次は宇宙だな」

 

 

 

 私、ブリーフには奇妙な友人がいる。彼、ゲロは当時たいして知られていなかった私の前に突然現れ、「君の研究に協力したい」と言い出した。

 最初は驚いたが、私の研究は人類のためになるとか、未来の子供たちのために必要だとか、熱弁を振るわれてうれしくなってしまい、共同研究を始めた。

 

 彼は私を天才だというが、私は彼こそ天才だと思う。彼は私との研究の傍ら、ロボットを作ってそれを量産したり、化粧水を開発したり、数々の成果をあげている。

 それが彼の目標、「最強の人造人間を作る」ためだと知ったときは少しもめてしまったが。私は彼が人造人間を軍への売り込みや、世界征服などの野望のために利用するのではないかと思ったからだ。

 

 今になってみると、我ながら飛躍すぎだなーと思う。しかし、彼は私に対して怒りもせずにこう答えたのだ。

「世界征服? そんなスケールの小さな事は考えておらんよ。そんな事をするぐらいなら、無人の惑星をテラフォーミングして開発する方が面白いし、やりがいがある。

 儂は、亡き妻との約束を守りたいだけだ」

 

 なんというか、彼は私が思うよりも変な男だった。そしてロマンチストで、愛妻家だった。

 彼は宇宙人の存在を疑っていないようで、次は宇宙へ行くという。宇宙船はどうするのかねと尋ねたら、「既に地球に来ている宇宙人がいるから、勝手に拝見させてもらう」と答えた。

 

 そして人造人間2号君を置いて行ってくれた。家事手伝いロボットの原型になった人造人間で、彼曰く「マシンガンで武装した強盗ぐらいなら、撃退できるだろう」とのことだ。

 宇宙船が完成したら、是非一緒に行ってみたいものである。

 




お付き合いいただきありがとございました。



 gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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