ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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101話 ドクター・ゲロは三度散る。反逆者の覚醒

 光学迷彩で姿を消し、気を限りなく抑えた儂はトワの周りをゆっくりと回りながら装置を設置していた。

 だが、その時やや離れたところで戦っているタイムパトロールのベジータ達によって発生した衝撃波が、風となって儂等を襲った。

 

「っ! そこっ!」

 その影響で僅かに漏れた反重力装置の駆動音か、それとも風の流れに違和感を覚えたのか、トワが儂に向かって杖を向け、気弾を放った。

 

「しまっ――」

 当然避ける事も出来ず気弾に胴体を貫かれ、掻き消える儂。光学迷彩装置の残骸が、反重力装置を搭載したフライングソーサーの上に落ちる。

 

「今のはゲロ? しかし、死体を残さず消えたと言う事は四身の拳で作った分身ね。なら、他にもう三体、本物と分身がいるはず。結界の外にいるのが一体、今消えたのを除けば後二体」

 それを見たトワは周囲を見回して警戒するそぶりを見せるが、儂の気配を探る事は出来なかったのか小さく息を吐く。

 

 諦めたか? そう儂が思った次の瞬間、トワは魔術か何かで地面から適当な岩を持ち上げると、それを砕いて破片をそこら中にばら撒いた。

 石の散弾によって光学迷彩がブレ、フライングソーサーに当たって小さな音が響く。儂は咄嗟に、もしもの時に用意しておいた装置とプログラムを起動した。

 

「フッ、そこよ!」

 トワは続けざまに二発の気弾を放った。それぞれが光学迷彩装置を貫く事に成功し、一瞬だけ姿を現した儂の姿がかき消される。

 

「これで良し。どうやら、結界の内側に入り込んだのは分身だけだったようね。……何故ここに私が結界を張って潜んでいると分かったのかしら? あいつのスカウターは、戦闘力やキリだけじゃなく魔力まで感知できるようになったというの? だとしたら、かなり邪魔だわ」

 

 そう言いながら、結界の外の儂に鋭い眼差しを向けるが、結局手出しするのは止めたようだ。ドミグラや、まだ姿を現していない彼の部下達に妨害されるのが嫌だったのだろう。

「……今は見逃してやる。歴史の改変が望み通りにいかなかった以上、もうしばらく生かしておいた方が都合がいい。

 ゲロの分身が残した装置は……カッチン鋼製? 破壊するのに手間がかかるわね」

 

 フライングソーサーは、いざという時盾や武器として使う事も想定してカッチン鋼を使っている。トワなら本気を出せば壊せるだろうが、ミラ達の戦況を見ながらキリを収集しなければならない彼女にとって、三機のフライングソーサーや用途不明の装置を壊すのは骨が折れる作業になる。

 

「そうね。持ち帰って解析してみましょう」

 そして、魔術師であると同時に科学者でもある彼女は儂が作った装置に好奇心を刺激されたようで、持ち帰る事にしたようだ。

 

 儂はそれを幸いに、隠れながら準備を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ベジータダークが元の歴史に戻る前に時間は遡る。

「二度もサイバイマンに負けて堪るか!」

 リークはターレスに続いて、サイバイマンダークを倒すのに成功した。

 

「フンッ、サイバイマンをここまで強化するとはな」

「どどん波っ! まあ、分断できればこんなもんよね」

 そして、ラディッツとタイツも危なげなくサイバイマンダークを撃退した。リークの戦闘力は3万6千、ラディッツは2万2500、タイツは2万5800。本来の十倍の1万2千に強化されても、サイバイマンダークに苦戦する事はない。

 

 唯一警戒するとすれば、サイバイマンダーク達が連携して一人を狙い、複数匹で同時に自爆する事だった。そうすれば、ラディッツやタイツは即死には至らないだろうが重傷を負っただろう。

 しかし、幸い数が六匹と少なかった事と、ベジータダークやナッパダークが彼らを指揮しなかった事が幸いし、容易く分断して各個撃破する事が出来た。

 

「カカロット、ナッパ、手助けは必要か?」

「で、でぇじょうぶだ!」

「へっ、誰に向かって言っていやがる!」

 

 残っているサイバイマンダークは、悟空達が三人で相手をしている個体と、ナッパが戦っている個体の二匹だけだ。

 悟空達は苦戦しつつも、前衛と後衛を次々に入れ替えてサイバイマンダークを翻弄して自爆のターゲットを決めさせないように立ち回っている。ナッパも、背中に張り付かれないよう警戒しながら戦い、サイバイマンダークを近寄らせない。

 

 しかし、悟空やナッパがいくらタフでも体力は有限であり、サイバイマンダークも周りで同類が次々に敗れていく状況に気が付いていないわけではない。

 

「はいーっ!」

 掛け声とともに突き出されたヤムチャの拳を掻い潜ったサイバイマンダークが、彼の懐に入り込もうとする。

 

『ギッ!?』

「はっ! 下がれ、ヤムチャっ! 悟空っ、ヤムチャと替われ!」

 それを三つの目で見逃さなかった天津飯が、指示を出しながら額の目から光線を放ってサイバイマンダークを怯ませる。

 

「おうっ!」

「助かった! しかし、狼牙風風拳でも追い付けないとはな。こうなったら精神と時の部屋で編み出した新技を出すしかないな」

 

 サイバイマンダークと肉弾戦を始めた悟空と天津飯のやや後方で、ヤムチャは左手で右腕を掴み、集中して気を練る。

「繰気弾! 行けっ!」

 そして出現したのは、握り拳大の気弾だった。だが、ただの気弾ではない。ヤムチャの指の動きに従って、縦横無尽に空を駆け、サイバイマンダークに迫る。

 

『ギギ!?』

「悟空、天津飯、俺が隙を作る!」

「「おうっ!」」

 

 上下左右に激しく動きながら迫る繰気弾をサイバイマンダークは回避しようとするが、何度避けても繰気弾はヤムチャの操作通りに戻ってくる。

『ギィ!』

 苛立ったサイバイマンダークが拳で繰気弾を叩き落とすと、繰気弾は爆発せずに地面に穴を空け、地中に埋まってしまった。

 

『ギャッ!?』

 しかし、次の瞬間サイバイマンダークは予期せぬ衝撃を背に受け目を剥いた。何と、繰気弾は消えておらず地中を移動してサイバイマンダークを背後から急襲したのだ。

 

 それ自体はサイバイマンダークにとっては打撲傷程度でしかない、不意を突かれて驚いただけで、致命傷ではない。

「かめはめ波ーっ!」

「気功砲!」

 だが、弓なりに反って無防備になった腹を悟空のかめはめ波と天津飯の気功砲が直撃した。

 

『ギギャァー!!』

 絶叫を上げ、光と爆発に飲み込まれるサイバイマンダーク。だが、ボロボロになりながらも生き延びた彼は最後の力を振り絞って悟空達の誰か一人でも道連れにしようとした。

 

 そして、三人の中で最も前におり、技の反動で気が小さくなっていた天津飯に飛びついた。

『ギギッ』

 得意げに笑いながら自爆しようとするが……。

 

「フッ、いいだろう。冥土の土産にくれてやる」

 天津飯もニヤリと笑っていた。その意味に気が付く前にサイバイマンダークが自爆し、キリを使い果たしてこの歴史から消え、天津飯も消し飛んだ。

 

「分身に引っかかったか。ふう、運が良かった」

「やったな、天津飯!」

 しかし、天津飯は無事だった。サイバイマンダークが組みついたのは、気功砲を撃つために天津飯が四身の拳で作った分身だったのだ。

 

「あいつ、分裂出来るのか?」

 しかし、それを知らないナッパは思わず動きを止めてしまい、隙を作ってしまった。

『ギギィ!』

 それを見逃さなかったサイバイマンダークは、素早く彼の後ろに回り込むとその広い背中に張り付いた。

 

「なっ!? クソッ、放しやがれ!」

「いかんっ、ナッパっ!」

「チッ!」

 とっさにラディッツとターレスが助けに行こうとするが、ナッパ本人がそれを止めた。

 

「待てっ、来るんじゃねぇっ! 俺に考えが――」

 だが、その考えが何か言う前にサイバイマンダークが爆発し、ナッパの姿が煙に飲み込まれる。

「ナ、ナッパーッ!?」

 ラディッツの声が響き、それに答えるように煙からナッパの巨体が姿を現した。

 

「へっ、情けねぇ声を……出すんじゃねぇよ、ラディッツ」

 そして、ナッパは生きていた。戦闘服の背部は砕け散っており、すぐに地面に膝を突いてしまったが。

「ナッパっ、無事なのか!?」

 

「まあな。その、ターレスってガキがバリヤーを張ってただろ? それを参考にさせてもらったぜ。普段は腕にやっているのを背中にやったから、ちいと薄かったみたいだがな」

 どうやら、ナッパは原作で天津飯の腕を切断した手刀を応用し、気を腕ではなく背中に纏ってフォトンシールドを真似たようだ。

 

 その即席のバリヤーと生来のタフネスで、ナッパはサイバイマンダークの自爆攻撃を耐えきったのだろう。

 これでサイバイマンダークは全て倒れたが、まだナッパが持っていた種から生まれたサイバイマンが残っている。

 

「ギィーヒッヒッヒ!」

「ギャッギャッ!」

 サイバイマン達は自分達の前に居るのが殆ど女子供だから侮っているのが、すぐに仕掛けず耳障りな笑い声をあげている。キリで強化されたサイバイマンダークと違い、彼等には気の感知能力は備わっていないようだ。

 

「俺だって修行したんだ! 行くぞ!」

 そのサイバイマン達に向かって、クリリンが右手を頭上に掲げ気を集中する。

「気円斬!」

 そして、なんと原作では今から十年以上先のサイヤ人襲来編で初めて披露した技、気円斬を発動させた。

 

 ヤムチャが繰気弾を使えた事もだが、どうやら精神と時の部屋での二年分の修行は、彼らの成長をだいぶ早めたようだ。

「はぁっ!」

 クリリンが腕を振り、高速回転する気の円盤がサイバイマン達に向かって放たれる。

 

「ギヒヒッ!」

 対してサイバイマン達はクリリンが強そうに見えない事、気円斬の弾速がそれほど速くない事から、大したことのない攻撃だと舐めてかかった。

 

「ギャヒ!?」

「ギャァァァ!?」

 その結果、気円斬を叩き落とそうとしたサイバイマンの腕と胴体を切断し、もう一匹のサイバイマンの片腕を切断した。

 

「っ!!」

 他のサイバイマンは咄嗟に逃げる事に成功したが、それを見逃す彼等ではない。

「ダイナマイトアターック!」

「マッシュポテト肩パットーっ!」

 サタンとジャガーが、動揺したサイバイマン達に突撃を敢行した。サタンは得意技のダイナマイトアタック、ジャガーはパンブーキンの技を真似て覚えたマッスルカタパルトだ。

 

 技の名前を間違えているが、技そのものは形になっている。

 

「ギヒィッ!?」

 それぞれの技の直撃を受けた二匹が吹っ飛ぶが、無傷の二匹と隻腕の一匹がサタンとジャガーに襲い掛かろうとする。特に、隻腕になったサイバイマンは自分に後がないと悟り、すぐにでも自爆するつもりだ。

 

「動くなぁー!」

「カァーッ!」

 そのサイバイマン達を、チャオズとブルー大佐が超能力で金縛りにして止めにかかる。

 

「自爆なんてさせねぇだぞ!」

 まるで時が停まったかのように制止したサイバイマンの一匹に間合いを詰めたチチが蹴りを放ち、一撃で頭部を蹴り砕く。

 

「「「どどん波っ!」」」

 そして残りの二匹にはそれぞれどどん波が直撃した。

「チチちゃん、態々近づかなくてもいいのに」

「ああ、自爆するような未知の生物に近づくなんて、正気じゃないぜ」

「最初から六匹とも超能力で動きを止めたらよかったんじゃない?」

 

 一発はブルマ、そして隻腕のサイバイマンを狙った残りの二発はなんとボンゴとパスタが撃ったものだ。二人は地球の神様の神殿で、気の制御と感知を習得したのである。

 

「無茶言うんじゃないわよ。六匹全員をサイコキネシスで直接金縛りにするのが、どれくらい難しいか分かって言っているの!?」

「ボクは一匹。ブルーは残りの二匹の担当」

「ブルマも加われば出来たでしょうけどね。って、そう言えばラズリとラピスちゃんがいないじゃない。なんで二人は連れてこなかったのよ?」

 

「二人は、お爺ちゃんから聞いていたサイバイマンの自爆に耐えられないかもって思ったからよ。シルバーさん達もね。……パスタは間違えて連れてきちゃったけど」

「あんたが掴まれって言うからだよ」

 

 そうブルマ達が話している間に、サタンとジャガーがそれぞれ相手にしていたサイバイマンを倒したようだ。

「勝ったっ!」

「よっしゃっ!」

 そう勝ち誇る二人だったが、ジャガーが倒したはずのサイバイマンが跳ね起き、彼に飛び掛かった。

 

「まだまだじゃな、ほっ!」

 しかし、サイバイマンはジャガーに組み付く前に、駆け付けた孫悟飯によって止めを刺された。

「油断大敵じゃな、ジャガー」

「は、はい。助かりました」

 

 いささか危ないところはあったが、サイバイマンダークとサイバイマンは全滅した。その頃、ベジータダークも倒れた。同時に儂の分身が二人やられたが……おおむね此方が優勢だ。

 こちらで残るのは、ナッパダークとラディッツダークだ。

 

『名門出のエリートの俺が、テメェ等になんか負けるかぁ!』

「はっ! 殺し合いに名門も無名門も関係あるかよ!」

「えっ? ムメーモンってなに?」

 ナッパダークは、パンブーキンとトテッポ、ランファン、ランチ、マロンと戦っている。

 

『にしても、テメェ等多すぎじゃねぇか!?』

「うるせぇっ! 試合じゃねぇんだ、泣き言を言ってんじゃねぇよ!」

『クソッ! この女、サイヤ人より好戦的だぞ、どうなってんだ!?』

「そのサイヤ人に鍛えられてんだよ! 四妖拳!」

 

 金髪ランチは四妖拳で生やした三本目と四本目の腕を伸ばしてナッパダークに掴みかかる。

『ぬおっ!?』

「かめはめ波ーっ!」

 そして、動きを止めた瞬間、元々備わっている方の腕でかめはめ波を放った。

 

『危ねぇっ!』

 だが、ナッパダークはランチの腕を手刀で切断し、かめはめ波の直撃を回避する。

「マッスルカタパルトォ!」

 だが、そこにパンブーキンの突撃が決まり、ナッパダークは堪らず『グアアア!?』と叫んで吹っ飛んで行く。

 

「おい、無事か!?」

「斬られたのは増やした方の腕だ、平気に決まってんだろ!」

 そしてランチを心配するが、ランチは四身の拳を解除して元の二本腕に戻っていた。生やした腕を消してもダメージは体力の消費と言う形で残るはずだが、それが堪えている様子もない。

 

「チッ、素直じゃねぇ弟子だぜ」

『俺を無視してじゃれ合うんじゃねぇーっ!』

 吹っ飛んでめり込んだ先の地面を衝撃でまき散らしながら、ナッパダークが再び立ち上がる。

 

「じゃあ、今度はあたしが相手してあげる! えいっ!」

 だが、ナッパダークの相手はランチとパンブーキンだけではない。真正面から間合いを詰めたマロンが、可愛らしい掛け声で強烈な拳を放つ。

 

『くっ! このアマァッ!』

 マロンの今の力は戦闘力に換算して84万。80万のナッパダークを上回っているが、その差は僅か5パーセントに過ぎない。

 それでも直撃は避けたとはいえランチのかめはめ波に、パンブーキンのマッスルカタパルトを受けたナッパダークの方が分は悪いはずだった。

 

「うわ~っ、この悪い方のナッパちゃん、すっごいタフ! 全然疲れた様子がない!」

 しかし、ナッパダークのタフネスはキリで強化されても健在で、傷だらけになりながらも動きは全く衰えていなかった。

 

『それはこっちのセリフだっ! テメェは疲れってもんを知らねぇのか!?』

 だが、タフさならマロンも負けてはいない。動力を完全に永久エネルギー炉が司っている彼女に、疲労はない。

 さらに、攻防を繰り返す内にナッパダークの攻撃を避け切れず、何度も細腕で彼の拳を受け止めているのだが、フリーザ一族の細胞を移植する事で得た驚異的な生命力によって、ダメージが蓄積している様子すらない。

 

「もう、そんなに褒められたら照れちゃうじゃない、ナッパちゃんったら!」

 そう言いながら繰り出したマロンの拳は、ナッパダークの防御の間を縫って彼の腹にめり込む。

『グォッ!?』

 そして、僅かに動きが鈍くなった隙を狙って尻尾をナッパダークの足に巻き付け、彼を空に向かって放り投げた。

 

「アサルトフラッシュ!」

「アングリーボンバー!」

 そして空中で体勢を崩して身動きが取れなくなったナッパに向かって、ランファンとトテッポの必殺技が放たれる。

 

『チッ、チクショーッ!!』

 爆発の中に消えたナッパダークにとって不運だったのは、彼ぐらいの敵なら戦える者が大勢揃っていた事だろう。

 

『くっ、まさかナッパがやられるとはな。間抜け野郎だぜ!』

 ラディッツダークの状況はナッパダークよりはずっとマシで、彼の相手は4号とサンの二人だ。

 

「あなたが追い詰められていると言う事ですが?」

『知った事か!』

「会長は操られてるって言ってただども、会話は出来るようで出来ねぇだな」

 

 サンが前に出てラディッツダークと戦い、4号が距離を置いて援護する形で戦っている。サンの戦闘力は38万5千であるため、彼女がラディッツダークを押しているのだが……。

『フッ、くらえ!』

 ラディッツダークがエネルギー弾で狙ったのは、なんとこの歴史の自分だった。

 

「なっ!?」

「フォトンシールド!」

 瞬間移動した儂が全力でシールドを張る事で、なんとかラディッツダークのエネルギー弾を弾く。儂の戦闘力は10万程度だが、これぐらいなら可能だ。四身の拳を使った後、4号に回復してもらったからな。

 

『隙ありだ!』

 だが、ラディッツダークの狙いは別の歴史の自分を殺す事ではなく、サンと4号を動揺させ隙を突いて逆転する事だった。

 

「おめぇっ、別の歴史とはいえ、自分を狙うってのはどういうつもりだべ!?」

『はっ! 他の歴史の俺がどうなろうが、俺が知った事じゃない!』

 サンはラディッツダークの拳や蹴りを防御しながら彼の戦法を非難するが、そんな彼女に向けてラディッツダークは嘲笑を浮かべた。

 

『貴様にもサイヤ人の血が入っているようだが、弱い奴の事を気にするとは甘っちょろい奴め! 貴様のようなサイヤ人の面汚しは、この俺が殺してやろう!』

「出来るもんなら……やってみるといいべ!」

 威勢のいい啖呵を切るラディッツダークだったが、放った大振りの拳が仇になった。サンが身を屈めて拳を回避すると同時に懐に入り、そのままボディーブローの直撃を腹に受けてしまった。

 

『ぐおっ!?』

「魔口砲!」

『ぐあっ!? ナッパのような真似を!』

 そして4号が畳みかける。ラディッツダークは彼の魔口砲を左腕で弾いて防御したが、その衝撃で腕が痺れているのか目に見えて動きが悪くなった。

 

 先ほどの不意打ちで僅かに逆転した戦況は元通りに……いや、彼にとってさらに追い詰められる結果になった。

『チィッ! なら……くらえっ!』

 そしてラディッツダークは二匹目のドジョウを掬うべく、エネルギー弾を放った。彼が狙ったのは儂の背後にいるラディッツやナッパではなく、彼女だった。

 

 彼女はもし誰かが苦戦するようならフォローに入るために戦闘に加わっておらず、結局その必要もなさそうなので気も解放していなかった。何より、ラディッツダークの記憶では彼女が強いなんて事はあり得ない事なので、ターゲットに選んだのだろう。

 しかし、実際には彼女はラディッツダークよりずっと強いので、彼がたいした威力も込めず放ったエネルギー弾ぐらいでダメージを受ける事は無いだろう。

 

 儂はもちろんサンと4号、そして彼女本人もそう判断したため、ラディッツダークの攻撃を無視した。

「お袋っ、下がれ!」

 だが、無視しなかった者が一人いた。ラディッツだ。彼は狙われた彼女……ギネの前に飛び出し、身を挺して庇った。

 

(ダメだ、死ぬっ!)

 ラディッツダークが放ったエネルギー弾を正面から見たラディッツは、己の死を確信した。だが、脳裏をよぎったのは走馬灯ではなく、自嘲だった。

 

(まさか、この俺がお袋を庇って自分の偽者に殺されるとはな。子が親を殺すのがサイヤ人だが、俺は逆だったらしい。確かに、サイヤ人の面汚しかもしれんな。

 だが、こんな最期も悪く――)

 

 そして爆発音とともにラディッツの意識は途切れる……なんてことはなかった。

「ラディッツっ、なんて危ない真似をするのさっ、死んだらどうするんだい!」

「なっ、お、お袋?」

 ラディッツに庇われたギネが、彼を掴んでそのまま一回転して背中で庇い返したからだ。

 

「無事なのか、お袋!?」

『馬鹿なっ!?』

 ギネがエネルギー弾の直撃を受けても死なないどころか無傷でしゃべっているのを見て、同じように驚くラディッツとラディッツダーク。

 

「あんたはあたしの息子なんだ、あたしより先に死ぬなんて許さないよ! でも……本当に立派になったね。あたしは嬉しいよ。

 さっきあたしを庇おうとした時なんて、バーダックの事を思い出したよ。すっかり大きな背中になったね」

 

「え、いや、そ、そうか?」

「そうだっ、ちょっと待っていておくれよ。叱らなきゃならない奴がいるからね」

「あ、ああ」

 ギネは戸惑ったままのラディッツに、細く小さい背中を向けて別の歴史の息子に向かって歩き出した。

 

『お、お前は本当にお袋なのか? いくら歴史が違うとはいえ、信じ難い……』

 ラディッツダークは自分に近づいて来るギネに対して、驚きのあまり迎え撃つでも逃げるでもなく、棒立ちになったままだ。そんな彼に対して、サンと4号は空気を読んで攻撃を加える事無く下がって距離を取った。

 

「さっきの攻撃は卑怯だとは思うけど、バーダックなら『戦いの最中に気を抜いている奴が悪い』って事になるだろうから、あたしからは何も言わないよ。あたしは気を抜いていた訳じゃないけどね。

 でもね……戦っている相手の強さくらい見極めないでどうするんだっ、このバカ息子!」

 

『ごはっ!?』

 自分を攻撃した事でもなく、卑怯な戦い方でもなく、相手……自分の力量を読み間違えた事を叱りながら、ギネは拳をラディッツダークの頬に叩き込んだ。

 

『ま、待てっ、俺は――がはぁーっ!?』

「言い訳なんて聞いてやらない! 自分の歴史に戻って反省しな!」

 仰け反ったラディッツダークの胴体に蹴りを叩き込み、ボールのように蹴り上げたギネは素早く構えて掌を彼に向けた。

 

「ライオットジャベリン!」

 悲鳴をあげる間もなく、ラディッツダークは元の時代に戻っていったのだった。

 

「ラ、ラディッツ、お前のお袋さんってもしかして、バーダックより強いんじゃねぇか?」

「そんな事はない……はずなんだがな」

 その様子をナッパとラディッツは呆然とした様子で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 ドミグラが他の歴史から連れて来た戦士達が全て消えたのを見て、トワは「潮時ね」と呟いた。

「ドミグラのせいで狙っていた改変には失敗したけれど、ドミグラのお陰で元手無しである程度キリを手に入れる事が出来た。

 これで満足しておきましょうか」

 

 そう言うと、ミラ達を回収するために異空間に繋がる門を開こうとする。

「魔術妨害装置、起動」

 だが、その前に儂の準備が終わった。儂はフライングソーサーや小型ドローンに搭載していた魔術妨害装置を起動し、トワの魔術を妨害する事に成功した。

 

「っ!? これは何っ!? 馬鹿なっ、魔力が制御できない!?」

 放置していたフライングソーサーや、光学迷彩が解除され姿を現した小型ドローンが妖しげに光り出したのを見て、トワが声をあげて動揺を露わにする。

 

「よし、魔術妨害装置は期待した通りの性能を発揮しているようじゃな」

「その声はゲロ!? どこに居るの!?」

「ここじゃよ」

 

 フライングソーサーの一機に小さくなって隠れていた儂は、ミクロバンドを操作して元の大きさに戻ってみせた。

「こんな近くに!? でも、お前の分身は三体全て消したはずよ」

「いや、お前さんが消した分身は二体だけじゃ」

 

 あの時、ミクロバンドを使って咄嗟に小さくなった儂は、同時に光学迷彩装置を応用して儂の立体映像を投影させたのだ。二体目の分身は間に合わなかったが。

 トワが攻撃したのは、儂の分身ではなくただの立体映像だったのである。

 

 これもブルマの発明のお陰じゃな。あとで改めて礼を言おう。

 

「ただ、タネは明かさんでおこう。お前さんも科学者なら、自分で解析したいじゃろう?」

「貴様っ! 調子に乗るんじゃないっ!」

「はっはっは! それはそれとして良いのか? 儂と話している暇はないと思うが?」

「っ!?」

 

 ハッと我に返ったトワが、ミラ達が戦っている方に振り向く。

 儂が開発した魔術妨害装置は、いわゆる魔術のみを妨害する。バビディが宇宙船の部屋を他の場所と繋げた術や、トワやドミグラが移動に使う門、そして……仮面による洗脳にも効果を発揮する。

 

「な、なんだ、これは!?」

「お、おーいっ、ゲロのじっちゃん! これ、ゲロのじっちゃんの仕業か!?」

『っ!!??』

 

 周囲に突然現れた謎の機械類に、ミラ達だけではなく悟空とベジータも驚いている。その中でも、バーダックは両手で頭を抱えてもがき苦しんでいる様子で、戦っているどころではなさそうだ。

 トワが彼に施した洗脳が乱れ、解けかかっているのだ。

 

「その通りじゃ! 今の内にバーダックを解放しろ!」

 と叫び終わったかどうかというタイミングで、儂はトワが放った気弾によって消滅した。

「チッ、分身が消えても装置が止まらない。本体が遠隔操作しているか、一度起動すると自動で動き続けるのか……なんて厄介なの!」

 

 トワはそう怒鳴ると、今度は周りの装置を攻撃し始めた。しかし、カッチン鋼で出来ている魔術妨害装置は本気を出せば壊せるが、全力の一撃を十数発連続で放てるほど彼女はタフではない。

 しかも、彼女の周りには必要以上に魔術妨害装置を設置している。一機や二機機能が停止した程度では、何の影響もない。これで十分時間が稼げるはずだ。

 

「おい、お前は下がれっ! ここから離れていろ!」

 ミラは咄嗟にバーダックを戦場から離れさせようとした。魔術妨害装置の効果範囲外まで逃げれば、バーダックの洗脳は解かれないので、その判断は正しい。

 

 魔術妨害装置の効果範囲はトワが張った結界より僅かに狭い程度なので、結界を解かないと外に逃げる事は出来ないのだが。

 

「出来ると思っているのか、間抜けめ!」

 だが、スーパーサイヤ人ブルーのベジータが、ミラとルシフェル相手に猛攻を仕掛けて抑え込む。

『ぐっ、べ、ベジータぁぁ!』

 

「カカロットっ! 俺がこいつらの相手をしている間に、さっさとバーダックの仮面を砕いてこい!」

「サンキュ、ベジータっ!」

 悟空はミラの命令に従って、逃げようとしているバーダックに追い付くとその顔面を狙って攻撃を繰り出す。

 

『っ!』

 洗脳が通常通り効果を発揮していれば、やすやすと顔面に攻撃を受けるバーダックではなかった。しかし、魔術妨害装置によって洗脳が乱されて激しい苦痛を覚えているのか、動きに精彩を欠いている。

「今だっ!」

 そして、ついに悟空の拳が仮面を打ち、右半分を砕いた。

 

 それを見たトワは罵声を挙げる代わりに、自身の周りを浮かぶフライングソーサーをまた一機叩き壊した。

(バーダックが洗脳の名残で混乱して暴れている間に、妨害装置を破壊して逃げないと拙い!)

 トワは、『神龍の伝説』事件の時のように仮面を半ば砕かれたバーダックが暴れ続けた時の事を想定していた。

 

 そして、彼女が次の魔術妨害装置を破壊するために杖を振り上げたその時、バーダックがこちらに掌を向けているのが見えた。

「なっ!?」

 ハッとした時には、トワは気功波に飲み込まれていた。

 

『ふうっ、ようやく俺自身の意思で動けるぜ――』

 トワに向かって気功波を放ったバーダックは、その手で残りの仮面を引きはがすと握りつぶした。

「手間をかけたな、カカロット」

 

「へへっ、今度は暴れなかったな、父ちゃん」

「ああ、今は頭がスッキリしているからな。ゲロって爺さんの仕業なら、後で礼をいわねぇとな。だが、その前に……」

 バーダックは異なる歴史の息子に背を向けると、視線を煙から姿を現し自分を睨みつけるトワに向き直った。

 

「テメェ等が先だ。俺に俺のガキを殺させようとした礼は、高くつくぜ」




〇戦闘力推移

・ブルー将軍:315→2015 フリーザ軍相手でも下級兵士には勝てるし、サイヤ人襲来編のピッコロよりも強くなった。気の制御と感知も習得済み
・ボンゴ:240→1330 修行の結果、サイバイマンより強くなった。気の制御と感知も習得積み。
・パスタ:190→1040 気の制御と感知も習得したが、まだサイバイマンよりは弱い。

・ランチ:20万→81万
・マロン:77万→84万 
・ランファン:49万→54万1千
・サン:10万9100→38万5千
・ギネ:23万7500→58万3千



〇操気弾

 ヤムチャが天下一武道会でシェン(地球の神様)との試合で披露した技。高速の気弾を遠隔操作する技で、高い気の制御力が必要とされると思われる。
 この作品では潜在能力解放を受け、精神と時の部屋で二年分の修行期間を得た事で技の開発に成功した。



〇気円斬

 クリリンの技。気を極限まで薄くして鋭利な刃を形成し、高速回転する事で命中すれば圧倒的に格上の相手の肉体も切断する必殺技。
 その切れ味は、ナメック星編で第二形態のフリーザの尻尾を切断するほど。

 当時のクリリンの戦闘力は1万から2万ぐらいで、戦闘力約100万の第二形態のフリーザには圧倒的な差があるため普通の技なら全く通用しないはず。それが通用したのだから、格上に通用する技としての完成度は高いと思われる。

 ただ、警戒している相手に通じた事はないため、弾速自体は遅く避ける事は難しくないと解釈しました。



〇魔術妨害装置

 複数の装置を使い、対象を結界のように囲むことで起動する。範囲内の存在が魔力を制御するのを妨害する事が出来る。また、結界なども効果範囲内なら解く事が可能。

 妨害できるのは魔力によって何かをする事だけなので、魔術で作り出した物品を消したり、効果範囲外で展開している結界が勝手に解ける事はない。

 装置の装甲はカッチン鋼製だが、これはトワやドミグラが装置を破壊しようとする事を想定しているためで、別に他の金属ではいけないという訳ではない。

 ゲロの分身たちは、この装置でトワの結界に小さな穴を空けて、ブルマに作ってもらったミクロバンドを装備して入り込んだ。



 名無しの過負荷様、虚気様、ヴァイト様、くるま様、佐藤東沙様、最上川万能説様、PY様、ぱっせる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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