ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
「トワっ! 貴様、よくもトワを!」
『キサマッ、裏切るのか!?』
トワに攻撃したバーダックにミラとルシフェルが怒声をあげるが、バーダックは鼻で笑うだけで取り合わない。
「おいっ、カカロット! そいつは大丈夫なんだろうな!?」
「ああ、大丈夫だ! なあ、父ちゃん?」
そのミラとルシフェルを一人で抑えているベジータに怒鳴られた悟空がそう聞くと、バーダックは力強く頷いてみせた。
「まあな。もっとも、覚えている事は殆どねぇ。この前ラディッツとベジータ王子を殺しかけた事や、何度か仮面を砕かれた前後の事……あ? お前、ベジータ王子か?」
洗脳している間の出来事は本来なら記憶に残らないはずだが、何度か仮面を砕かれた事でバーダックはそれらの事を断片的に覚えていた。
もっとも、逆にそれがバーダックを困惑させていたようだったが。
「俺は貴様とは別の歴史の――」
「邪魔をするな!」
「チィッ! 説明している時間はないっ、カカロット、バーダック、奴を早く仕留めろ!」
しかし、ベジータにそれを説明している余裕はない。そして悟空はそうした説明に向いていない。
「ワリィ、父ちゃん。そう言う訳だからあいつの相手してもらっていいか?」
「何? カカロット、お前はその間どうするつもりだ? 俺の仮面を砕くのに消耗したのか?」
「ああ、あっちのルシフェルっちゅう相手がオラと戦いたがってんだ。ベジータっ、そう言う訳だからルシフェルの相手はオラがする!」
「チッ、勝手にしやがれ!」
『いい気になるのもいい加減にしろ! だが、貴様を殺せるのなら好都合だ!』
ベジータとミラから離れて悟空に向かっていくルシフェル。悟空はバーダックを放っておいて、彼と一対一で戦い始めた。
しかし、ルシフェルは洗脳されていないのだろうか? もしされているなら、儂の魔術妨害装置で洗脳が乱れているはずだというのに、行動に迷いや躊躇いがない。
もしかしたらトワの洗脳よりも悟空に対する憎しみが勝っていて、それだけで動いている状態なのかもしれん。
「行っちまったな」
悟空がルシフェルに向かっていくのを、バーダックは呆気にとられた様子で見送った。武道家ではない彼にとって、一対一に拘る悟空の行動は驚きに値した。
「まあ、いい。俺一人で充分だって事だろう。行くぜ、トワっ!」
しかし、すぐに気を取り直すと再び魔術妨害装置を破壊しようと躍起になっているトワに向かって行った。
「装置を壊して逃げるつもりか? そうはさせねぇ!」
「くっ、私がキリで強化しなければフリーザどころかその取り巻きも倒せなかったサルが! その力は誰のおかげで手に入ったか忘れたの、この恩知らず!」
バーダックは自身の拳を杖で受け止め、罵声を浴びせて来るとトワに不敵な笑みを浮かべて言い返した。
「確かに、お前らには恩があるかもな。だが、俺は親子でも殺し合うサイヤ人だ。恩を仇で返すなんて朝飯前だとは思わねぇか? それに力も――はぁっ!」
バーダックが息を吸い込み、腹の底から声を出して全身に気合を入れると、黒かった髪が金色に、瞳が青に変わり、オーラも金色に染まる。
「この通りだ!」
「スーパーサイヤ人!? くぅっ!」
スーパーサイヤ人に成ったバーダックに力負けしたトワは杖を弾かれ、腹に蹴りを受けて下がる。
本来ならスーパーサイヤ人1程度では、トワには勝てない。だが、バーダックはこれまでミラの組手相手をして来た。それはミラを強くするためだったが、洗脳下であっても彼のサイヤ人の肉体は訓練を積み重ねる事で強さを手に入れていたのだ。
しかも、バーダックはまだトワにキリによって強化された状態だ。
(この魔術妨害装置、なんて厄介なの!?)
トワもバーダックが敵に回った以上、強化を即座に解きたいところだが儂の魔術妨害装置によってそれが出来ない。だというのに、魔術妨害装置はキリによる強化を妨害しない。
魔力とキリは別のエネルギーだからだが、幸運な事にタイムパトロール側に有利に働いたようだ。
「この魔術妨害装置がある間は私本来の力が出せない。サイヤ人なら、より強い敵と戦いたい性があるはずよ!」
「だからこの機械を壊すまで待てって? そう言って機械を壊して魔術が使えるようになったら逃げるつもりなんだろう。その手には乗らねぇ!」
高速で飛び交いながら気弾の応酬を繰り広げ、同時にサイヤ人の性を利用しようと試みても、バーダックには通じない。
このままではジリジリと追い詰められ……いや、一気に形勢が不利になり負ける。
今はトランクスがドミグラと戦っているが、他の歴史から連れて来た戦士は既に消えている。ドミグラが引き上げればトランクスが悟空達に合流し、数もタイムパトロール側が逆転してしまうからだ。
「この手だけは使いたくなかったけれど……奥の手を使うしかないわね」
「させるかっ!」
トワの口ぶりに嫌な予感を覚えたバーダックは、勝負を決めにかかった。トワが放つ気弾に対して防御せずギリギリで回避し、その間に気を集中して必殺技を放つ。
「ライオットジャベリン!」
不意打ち気味にはなった先ほどの一撃とは違い、十分に気を溜めた一撃は、当たればトワを倒すのに十分なダメージを与える威力があった。
「はああああ!」
だが、ライオットジャベリンが当たる寸前、トワから禍々しい、しかし強力な魔力が吹き上がった。そして巻き起こった爆発による煙から姿を現したトワの姿は大きく変わっていた。
「お前、その姿は?」
スーパーサイヤ人のように髪の色は変わっていないが、真っすぐ伸びていた髪は頭頂で二本の角のように伸び、背中でも所々跳ねている。そして、顔に赤いラインが引かれていた。
「フフフ、変身するのはサイヤ人だけではないのよ」
なんと、トワは魔神化していた。彼女は勝ち誇った笑みを浮かべて杖を振るうと、まだ無傷だった魔術妨害装置が次々に煙を吹いて機能を停止する。
魔神化した事で増大したトワの魔力を妨害しきれず、オーバーヒートを起こしたのだ。
「うぐっ、なんだ……力が」
そして、トワの魔術によって強化を解かれたバーダックが虚脱感にうめき声をあげるが、トワが放った魔術はそれだけではなかった。
「な、なんだ!?」
『ウオォォォォ! 力が、漲るっ!』
変化はルシフェルの身にも起きていた。彼がトワから与えられた仮面には、太陽光から彼を守るため以外にも、いざという時の仕掛けが隠されていた。
被った対象の力を強引に引き出し、一時的に戦闘力と邪悪な心を高める仕掛けが。
『死ネ! 孫悟空!』
理性を殆ど失った代わりに、力を増大させた今の彼は、ただのルシフェルではない。魔導師バビディに操られたベジータを『破壊王子』と評すなら、今の彼は明ける事無き夜で世界を包もうとした魔族の王。
暗夜王ルシフェル。
『フハハハハ!』
「こいつっ、急に強くなりやがった!」
それまで優勢だった悟空だったが、突然様子の変わったルシフェルに即座に対応できず押し返されてしまう。
「形勢逆転ね。もう一度洗脳して手駒に戻してもいいけれど――」
「そいつは御免だ!」
そしてバーダックは力が落ちていくなら、完全になくなる前にとトワに攻撃を仕掛けた。
だが、それは先ほどまでと違い片手で軽々と防がれてしまった。
「そうね、お前のような手駒はもう要らないわ。死になさい!」
そしてトワは空いているもう片方の手の人差し指をバーダックの心臓……ではなく腹に突きつけると気功波を放った。
「がはっ!? ぐあぁぁぁ……!」
腹に風穴を開けられたバーダックの髪が黒に戻り、そのまま落ちていく。
「チッ! 親子揃ってだらしがないぞ、キサマ等!」
その窮地に駆けつけたのはベジータだった。彼はミラへの攻撃を中断して落ちていくバーダックの下に駆けつけると、懐から取り出した仙豆を食わせる。
「さっさと飲み込め!」
「っ!? なんだこりゃあ、腹に開いていた穴が塞がったぞ」
「驚いている暇はないぞ」
口の中に放り込まれた仙豆を言われた通りに飲み込んだ途端、傷は消え消耗していた体力も回復した事に驚きを隠せないバーダック。ベジータは、その間にもミラやトワの追撃が来るのではないかと警戒していた。
「トワっ!」
しかし、ミラはベジータに目もくれずトワの下に駆けつけた。そして彼女も、ベジータ達を攻撃しようとはしなかった。笑みを浮かべて勝ち誇っている。
それを見た瞬間、ベジータは自分が引っかけられたのだと気が付いた。
「ルシフェル! 引くわよ。復讐は次の機会にしなさい」
『っ! チィ!』
トワ達はタイムパトロールに対してそれ以上攻撃する事無く、門を開くと速やかに撤退したのだった。
「ありゃ、あいつら消えちまった。せっかく強くなったのになんでだ?」
強敵との戦闘に集中し、これから巻き返して再逆転だと意気込んでいた悟空は、彼女達のあまりの引き際の良さに首を傾げた。
「フンッ、大方あの魔神化というパワーアップは短い時間しか維持できないんだろう。バーダックを殺せたのに殺さなかったのも、逃げる隙を作るためだ」
「まんまとしてやられたって訳か、情けねぇ」
「父さ~ん!」
そこにトランクスがやって来た。
「トランクスか。ドミグラはどうした?」
「はい、さっきまで戦っていたんですが、突然『もう用は済んだ』と言って……逃げられました」
「クソ! どいつもこいつもふざけやがって!」
「まあ、いいじゃねぇか。こうして父ちゃんを取り戻せたんだからよ。なあ、父ちゃん」
『それなんだけど悟空……』
「なんだ? この女の声はどこから聞こえてきやがる?」
「父ちゃん、時の界王神様だ。時の界王神様、何か話でもあるんか?」
突然聞こえて来た時の界王神様の声に戸惑うバーダックに、悟空は短く説明して彼女に先を言うよう促す。
『ええ、そのバーダックの事なんだけど、これから彼をどうする?』
「どうするって、この歴史のオラ達の所に戻すんじゃねぇのか? ゲロのじっちゃんなら、上手くやってくれるだろ」
歴史改変者に操られていたが、バーダックはこの歴史の住人だ。解放されたのなら、この歴史の住人に任せるのが自然だろう。しかし、そうできない理由があるようだ。
『ほら、未来の事とか断片的に知っちゃってるじゃない。トランクスの事とか。まあ、それはゲロもだからいまさらと言えば今更だけど』
「な、なるほど。この歴史で父さんと母さんがどうなるかまだ分からないけど、影響が出るかもしれないと」
「ああ、おめぇ、ベジータ王子の息子だったな。母さんって、母親はどいつだ? 髪の色からすると――」
「余計な詮索をするな! 貴様はとっとと自分の妻の下に戻れ!」
「いや、断る。奴らにまだ借りを返してないからな」
「ええっ!? そうは言うけどよ、父ちゃん」
「カカロット、お前はともかくベジータ王子様もやってるんだ。悪人だからダメだって訳でもないんだろう? なあ、頼むぜ、時の界王神! 俺をタイムパトロールに入れてくれ!」
『ええっ? う~ん、確かに人手不足だったけど……』
『ああ、それについて提案があるんじゃが?』
「その声はゲロさん? 通信機能もついていたんですか!?」
『うむ。カメラもついておる。まあ、流石にスーパーサイヤ人ブルーの動きにはついていけなかったが』
後で解析して見られるようにしておこう。
『ゲロ、あなた今回も……まあ、いいわ。それで、提案って言うのは?』
『バーダックをタイムパトロールへ参加させるべきかと。ただ、休暇はこちらの歴史で過ごす、と言う勤務形態で如何ですかな?』
そう言うと、悟空達は意外そうな顔をした。
「意外だな。ゲロのじっちゃんの事だから、オラてっきり細胞をくれって言うのかと思ったぞ」
「俺は、フリーザを倒すまで待つよう言うのかと思いました」
『はっはっは、細胞はともかくバーダックにフリーザを倒してもらう事は、儂も考えた。しかし、それよりタイムパトロールの戦力強化を優先するべきだと考えたまでだ』
スカウターの限界を超えるだろうから戦闘力は計測していないが、今のバーダックならフリーザどころかクウラにも勝てるだろう。それこそ、赤子の手を捻るより簡単に。
だが、結局歴史改変者にタイムパトロールが負けたらそれで終わりだ。フリーザやクウラに勝とうが負けようが関係ない。
それに、今まで歴史を左右する大きな出来事の度に暗躍していた彼らが、バーダックがフリーザやクウラを倒そうとした時は動かなかった、なんて事は無いだろう。
フリーザやクウラをキリでバーダック以上に強化するに決まっている。
『今、儂らの中にタイムパトロールの戦力になれる者はおらん。仙豆を融通するのが精々だ。……魔術妨害装置も、魔神化されると破られてしまう事がついさっき分かったからな。
なら、バーダックにとって強敵と言える存在がしばらく出てこないだろう儂等の歴史で暮らすより、歴史改変者との激戦に揉まれた方がいいじゃろう。
ただ、ギネやカカロット、それとラディッツもいるのでたまに休暇を取って帰って来てくれれば幸いじゃと思う。トーマやセリパも心配していたし』
「おい、ギネが生きてるのか? それに死んだはずのトーマやセリパが俺を心配しているってのは、どういうことだ?」
『その辺りは覚えて……いや、トワ達が話していなかったのか? まあ、彼女達から見ればギネ達はまだ脅威ではないじゃろうし』
「だから、どういうことだって聞いてるんだ! 答えやがれ!」
『その辺りの事情を把握するためにも、バーダックにはしばらく元の歴史で過ごしてもらいましょうか。未来はもちろん他の歴史に関する事は話しちゃだめよ。
タイムパトロールとして活動してもらう時には、ゲロに連絡するわ。その内バーダックにもゲロと同じ通信機を渡すけど』
「つまり、俺もタイムパトロールに入っていいって事だな?」
『もちろんよ。ようこそ、タイムパトロールへ! ……独身だったらもっと歓迎したんだけど』
時の界王神様の後半の言葉は聞かなかった事にして……こうしてバーダックは四人目のタイムパトローラーになったのだった。
アジトに帰還した途端、トワとルシフェルは意識を失って倒れた。
「トワっ!」
とっさにトワの体を抱き留めたミラの見ている前で魔神化は解け、元の姿に戻ってしまった。
「無理をし過ぎだ……」
「うっ……ありがとう、ミラ。でも無理をしなければ切り抜けられない局面だったわ」
トワにとって魔神化は、ベジータが推測した通り短い時間しか耐えられない奥の手だった。
魔神化とは、暗黒魔界の住人がより強大な力を持つ存在の助けを借りて行うパワーアップ法だ。メチカブラ一味のトワは魔神化しているが、それは暗黒魔王たるメチカブラの力によるもの。そしてドミグラ一味のロベルやシャメルは、ドミグラの力で魔神化を可能としている。
そして、ドミグラを魔神化した存在の事は知られていない。もし、ドミグラが自力で魔神化しているのなら、自分にも可能なのではないか? もし可能なら、タイムパトローラーはもちろん他の歴史改変者に対しても有力な切り札になり得る。
そう考えたトワはさっそく魔神化に取り組んだ。そして、集めたキリを使えば魔神化できるまでになった。
だが、そのために消費するキリは多く、魔神化の反動は大きかった。ほんの数分魔神化しただけで、動けなくなるほどに。
しかし、トワはあの時そうしなければ切り抜けられない程追い詰められていたのも事実だ。
「……トワ、俺はもっと強くなる」
それを分かっているミラは、自責の念に苛まれていた。バーダックの洗脳を解かれる前に、自分がルシフェルと二人がかりでベジータを倒していれば、こんな結果にはならなかった。自分がもっと強ければと。
「ええ、頼りにしているわよ、ミラ。でも、私もゲロをまだ甘く見ていたわ。まさか、魔術を妨害されるなんて」
この敗北はトワにとっても屈辱的だった。あの時、魔術が使えれば魔神化しないままでも逃げる事は出来た。
「これからは洗脳して従えた駒は使えないわね。フフ、ルシフェルを拾っておいてよかったわ」
「こいつは大丈夫なのか?」
「仮面の力で無理に力を引き出したから、その反動で気を失っただけよ。しばらく休めば起きるはずよ」
「いや、またゲロにどうにかされるんじゃないかと思ったんだが……」
ミラの言葉に、トワは「ああ、そっちね」と頷いた。
「その心配は要らないはずよ。ルシフェルも洗脳していたけど、妨害装置の影響下でも私達の言う事を聞いたのは、キリで強化される事で狂暴さが増したのと、孫悟空への憎しみが強かったから。それがある限り、問題ないわ」
トワはルシフェルには確かに洗脳を施したが、それはトワとミラの指示に従い、逆らわないようにするための物だ。自身の野望を妨げた悟空、そして眠り姫を奪ったゲロに対する憎しみは彼自身の物だから洗脳が解かれても問題はない。
「ゲロもキリを扱う事は出来ないようだし。……今のところはだけど」
今後はルシフェルが逆らわないよう、彼をどう扱うか注意しなければならない。そしてよりゲロを警戒する必要があるだろう。魔術妨害装置に対する対抗手段も、用意しなくてはならない。
「どちらにしても、しばらくは動けないわね。キリを消費したから、また稼がなければならないのに。
ミラ、ルシフェルも運んでおいて。バーダックを失った今、今後は彼にもより働いてもらう必要がある」
「分かった、トワ」
ミラはトワを抱き上げると、まずは彼女が休める場所へと運ぶのだった。
「すげぇ……ナメック星人ってのはこんな事も出来るのか?」
4号の治療を受けたナッパは、数分とかからず完治した自分の体を見下ろして感嘆していた。
「龍族というタイプのナメック星人は出来ますよ。私は戦士タイプだけではなく、龍族のナメック星人の細胞も組み込まれていますから」
「そいつはすげぇな。メディカルマシンでも治るのに一日かかるのに、数分で……。
そういや、あのドミグラって奴とヘルメットを被ってた奴はどうした?」
「ドミグラは逃げて、タイムパトロールの方は他の歴史改変者を倒しに向かったそうです。今、ドクターが通信機で話しています」
「そうか。しかし、フリーザを軽く捻れる奴に、そいつを取り締まろうって奴、それから他の歴史とやらから連れて来られた俺達に……頭がどうにかなりそうだぜ」
ナッパにとってこれまで最強の存在と言えば、もちろんフリーザだった。フリーザの兄であるクウラとは会った事がないし、彼らの正確な戦闘力も知らない。だが、どちらも戦闘力1万だったナッパにとって雲の上の存在である事に違いはない。
その雲の上の存在を打倒するという話に乗った直後に、雲どころか太陽よりも遥か上の存在が現れたのだ。青天の霹靂どころの話ではない。
「信じられない、とは言わないんですね」
「意外かよ? そりゃあ、目の前でお前らが戦っている様子を見ちまったからな。いや、見えなかったんだが」
気を感知する能力がなく、ドミグラ達の戦闘力を計測できるスカウターも持っていないナッパだったが、目の前で起きた戦いが自分では介入できない程ハイレベルだった事は理解していた。
「それじゃあ俺も説明を聞きに行くとするか。手当てありがとよ」
そして儂が通話中なので、ターレス達がベジータやラディッツに様々な事を説明している所に行く。
ラディッツダークが消えた後、トーマとセリパが大猿から戻ったベジータ王子と戻って来て、周囲の状況の確認や傷の手当てが始まり、桃白白達が遅ればせながら合流した。
「本当にベジータ王そっくりだな」
「年の離れた弟と言われても信じそうじゃ」
「おいっ! 人を見せ物扱いするのは止めろ! それより、そのドラゴンボールでサイヤ人とのハーフになっただとか、死人を生き返したというのは本当だろうな!?」
ベジータ王子がまず関心を示したのは、やはりドラゴンボールについてだった。
「そうよ。でも、ドラゴンボールを作った地球の神様の力を超える願いは叶えられないわ。フリーザを倒してくれとか、フリーザより強くしてくれ、っていうのは無理」
そう答えるブルマの言葉に、だろうなとベジータは頷いた。
「そんな事が可能なら、とっくに貴様らが願っているだろうからな。それより、なら不老不死になる事は可能なのか?」
「可能だと思うけど、不老不死になって何度も死にかけても復活してフリーザを倒す、って言うのは止めた方がいいと思うわよ」
「女、何故そう思う?」
「お爺ちゃんが言っていたけど、あたし達サイヤ人が復活する度に強くなるのは、生存本能が刺激されるかららしいのよ。生き延びるために肉体がより強くなるんだって。
何をされても死なない不老不死になっちゃったら、生存本能に刺激も何も無いでしょ」
「……なるほど。確かにそうかもしれんな」
ブルマの説明に、ベジータ王子は納得したようだ。サイヤ人の性の中には、戦闘のスリルを楽しむ事も含まれている。それが不老不死……何をされても死ななくなると失われると考えればブルマの言う通りだと思ったのだろう。
しかし、今度はブルマがベジータ王子に食ってかかった。
「それとっ! あたしは女じゃないわ、ブルマよ! 名前で呼びなさい、名前で!」
「……フンッ、生意気な女だ」
「あ~っ! また女って呼んだわね!?」
「まあ、落ちつけ。ボロクソにやられたばかりで気が立ってるんだよ、なあ?」
「キサマッ――」
「なら、ドラゴンボールで死んだサイヤ人達を全員生き返らせなかったのは何故だ? いや、なんなら地球人を全てサイヤ人とのハーフにしてもいいはずだ。その方が戦力は増えるだろう」
ベジータ王子が激高する前に、ラディッツがそう口を挟んだ。話題を変えてベジータ王子の気を逸らそうとしたわけではないだろうが、良いタイミングだ。
「それはね、あたし達が地球人だからよ。いきなりサイヤ人を復活させて、地球を侵略されたら元も子もないじゃない」
ベジータ王子に対して唸っているブルマと彼女を宥めているターレスに変わって、タイツが質問に答えた。
「まあ、今はサイヤ人の人達も地獄で楽しくやっているらしいから、生き返るのにそれほど拘ってないみたいよ。今度、ベジータ王にあったら直接本人に聞いてみたら?」
「そう、なのか?」
ラディッツはいぶかしげな様子で生き返ったサイヤ人達の方に視線を向ける。
「まあな。毎日刑罰は受けるが、それ以外は悪くなかったぜ。最近は武闘大会なんかも開かれて……しまった。生き返っちまったからしばらくリベンジ出来ねぇじゃねぇか! 次はあのチルドの野郎をボコボコにしてやるつもりだったのに!」
「なんだ、パンブーキン、今頃気が付いたのかよ。
ああ、地獄での暮らしだったな。今通話中の宰相閣下が慰霊碑を建てて毎日飯を供えてくれたから、食い物には不自由しなかったぜ」
「……貴様らにかかると地獄がまるでテーマパークか何かのようだな。まったく、サイヤ人と言う奴等は」
パンブーキンとトーマの言葉に、アックマンが顔を顰めて鼻を鳴らした。
彼らの態度に、あの世をただただ恐ろしい物だとしか思っていなかったラディッツ達は何度目かの困惑を覚えた。
「話を戻すけど、地球人を全員サイヤ人ハーフにしないのは……そもそもそんな事をしようって発想が無かったけど……それをしても戦力は増えないわ。サイヤ人ハーフになっても、それだけで強くなるわけじゃないもの。その後、何年もトレーニングをしないと」
「言われてみればその通りか。たしか、人造人間に改造されてもそれは同じ、だったな?」
「ええ、そうよね?」
「そうだよ。改造されて目が覚めた時には、確かに戦闘力は上がっていたけど今ほどじゃなかったからね」
「でも、最近のゲロちゃんの人造人間は最初から強い事も多いのよ。あたしみたいに」
タイツに確認されたギネが頷き、マロンがそう続ける。
「お前も人造人間なのか? じゃあ、もしかしてその尻尾は……?」
「フリーザって人の細胞の影響で生えて来たみたい。可愛いでしょ?」
「こ、これから倒そうって奴の細胞まで利用するたぁ、あの爺さん、とんでもねぇ奴だな。ベジータ、お前あの爺さんが宰相でいいのか?」
「ナッパ、文句があるなら奴を宰相に任命した親父に言うんだな」
「儂の他に宰相なり副官なりを任命したいなら、自由に決めてくれて構わんよ」
そして、通話の終わった儂が会話に加わった。
「儂のやる事自体は、宰相であろうとなかろうと変わらんのじゃからな。名誉職のようなものだ」
「そんな事よりも、こいつらが強くなったトレーニングや、飲むだけで強くなれる水や潜在能力を目覚めさせる儀式をさっさとやらせろ!」
「……ドミグラやベジータダークにやられた事を屈辱に思っておるなら、彼らに勝てなかったからと言って焦る必要はない」
ドミグラはスーパーサイヤ人ブルーになったタイムパトロールの悟空やベジータでも、そうそう勝てる相手ではない。今のベジータ王子が彼に挑むのは、原作でミスター・サタンがセルに挑むようなものだ。
そしてベジータダークは、そのドミグラによって強化された存在だ。ベジータ王子に勝ち目がないほど強化されていたのだから、勝てなくて当然。枯れ木を焚火に投じたら燃えた、と言うぐらい当然の話だ。
「貴様の意見など聞いていられるか!」
「とはいえ、敗北して気にするなと言う方が理不尽か。しかし、トレーニングは研究開発と同じ。一足飛びに強くなる事は出来ん。十歩先に行くには、十歩歩くしかない」
「……まるで普通の科学者みたいなことを言ってるわね、あのマッドサイエンティスト」
「……だったら、あの猛毒は何だったんだ?」
「二人とも、気持ちはわかるけど黙っておいた方がいいよ。話がこじれたところで、一銭の得にもならないんだから」
ブルー大佐達には何か言いたい事があるようだが、今は無視しておこう。超神水に関してはその通りじゃからな。
「ベジータ、この男の言う通りだ」
そして儂にとっては意外な事に、ラディッツが儂に賛同してベジータを制止した。
「俺達はここまで強くなるのに十年以上かかった。あのドミグラと言う奴や、別の歴史とやらから来た俺達、仮面を被った親父に似たサイヤ人、そしてフリーザよりも強くなるためには、何年もの時間が必要だ。
これまでと同じようにな」
後で知ったが、ラディッツは戦士として目覚めてから過酷なトレーニングを繰り返し、ベジータに組手をねだっては半殺し以上の目にあわされる少年時代を過ごしてきたらしい。それに触発され、ベジータやナッパも熱心にトレーニングに取り組むようになったそうだ。
そのため、ラディッツの意見はベジータにとってかなり説得力があったようだ。
「……いいだろう」
そう言って引き下がった。どうやら、落ち着いてくれたようだ。……仲が良いのは素晴らしいが、原作を知っていると違和感が大きいな。これがバタフライエフェクトと言うものか。
まあ、そのうち慣れるだろう。違和感に慣れる事に、儂は慣れている。
「さすがは悟空の兄じゃ。修行の大切さをよく分かっておる」
「ん? お前は……?」
「兄ちゃん、じっちゃんだ」
「この人が地球に来た悟空を拾って育ててくれたんだよ。今ではあたしも一緒に暮らしてる。義理の親みたいなもんだね」
「そ、そうなのか? お袋の義理の親……?」
「じっちゃんと呼んでも構わんぞい。ほっほっほ」
朗らかに笑う孫悟飯に、家族の関係性が希薄なサイヤ人の文化ではまず意識した事がないだろう祖父と言う存在に、義理であっても戸惑いを隠せない様子のラディッツ。
そんなラディッツには悪いが、あまり彼を待たせるのも悪いのでそろそろ連れて来よう。
「さて、王子も落ち着いたしそろそろ良いじゃろう。紹介したい人物がいる」
儂は瞬間移動で一瞬姿を消し、すぐに彼を連れて戻って来た。
「よう、ギネ、お前ら。しばらくぶり、だったか?」
「バーダック! 洗脳が解けたんだね!」
「親父!?」
現れたバーダックに、感激した様子で抱き着くギネと思わず声を上げるラディッツ。
「もう操られたりはしてないだろうね?」
「ああ、そこの爺さんのお陰でな。もっとも、洗脳されていた間の事はあまり覚えちゃいないが。
俺にとってはあっという間だったが……惑星ベジータがフリーザの野郎に滅ぼされてから十数年、寂しい思いをさせちまったな」
「そうだよ。死んであの世に行ったらあんたはいないし。じゃあ生きてるんだと思っていたら、人造人間になってこの世に戻ったらトワってどこの誰とも知らない女に操られているって言うじゃないか。」
「そう言うなよ、こうして会えただろ。俺がいない間、カカロットをよく育ててくれた」
ギネを抱き締めるバーダック。感動的な夫婦の再会に、つい目頭が熱くなる。不死鳥に触れたのが歳を取ってからだったせいか、儂の涙腺は緩いままのようだ。
「カカロット、お前も……って、お前カカロットか?」
「おいおい、あんたが間違えてどうする。俺はターレスだ」
「ははっ、ならこっちか。ワリィ、あんまりお前の事は見てやれなかったからな」
「気にすんなよ、よくターレス兄ちゃんとは間違えられるからな。……父ちゃん、なんだよな?」
兄に続いて自分とよく似ている父親と、本人の感覚では初めて会った悟空は自分の頭を撫でるバーダックに照れたように笑い返しつつも、そう尋ね返した。
「ああ、お前の親父のバーダックだ。すぐに迎えに行ってやれなくて悪かったな」
バーダックは先ほど別の歴史の息子と話していたばかりだが、それはそれ。実の息子との再会には感じるものがあるようだ。
「親父……」
「ラディッツか。すっかりでかくなったな、見違えたぜ。それに、随分強くなったな」
「ああ、だが俺は親父達を殺したフリーザの軍で働いていた」
「へっ、そいつは俺達サイヤ人全てがそうだったんだ。気にすんな。それより……よく生き残ったな。さすがは俺のガキだ」
「だが、俺は結局あんたを超えてないっ! 手も足も出なかった!」
どうやら、バーダックの格好から以前自分達を襲った仮面のサイヤ人の正体が彼だと気が付いたのだろう。しかし、そう訴える息子にバーダックは苦笑いを浮かべて応えた。
「ありゃあ無しだ。こっちは趣味の悪い仮面を被せられて、訳も分からないまま戦わされてたんだぜ。強くなった、なんてとても言えねぇ。
それに、お前はまだまだ強くなる。違うか、ラディッツ」
「……そうだ! フリーザも、お袋も、あんたも超えてやる!」
「その意気だ。……ところで、なんでギネをお前が超えるんだ?」
そう言えば、ギネを改造した事は話したが、強くなっている事まではまだ話していなかったな。
まあ、後で話そう。
「お帰りなさい、バーダックさん!」
「バーダック、久しぶりだな! ようやくチームが揃ったぜ!」
空気を読んで黙っていたリークやトーマ達が、我先にと声をかける。ベジータ王子は何か言いたげな顔をしたまま、まだ黙っているが。
こうして、たった一人の反逆者は夫として、そして父として帰還したのだった。
〇戦闘力推移
・ベジータ:3万6千→4万8千 ベジータダークによって瀕死にされ、仙豆で復活した事でギニュー特戦隊隊員に匹敵する強さに。
・ナッパ:12500→1万5千6百 サイバイマンダークの自爆攻撃を受けた後、4号に治療された事でパワーアップ。キュイを追い越す日も近い。
〇トワの魔神化
暗黒魔界人の(?)パワーアップ形態。通常はより強い存在から力を与えられる、もしくは補助を受けるなどしてなるらしい。メチカブラ一味のトワやダーブラは、暗黒魔王メチカブラの力によって魔神化しており、ドミグラ一味のシャメルやロベルはドミグラによって、魔神化する事が出来る。
しかし、ドミグラを魔神化させた存在については今のところ不明。順当に考えれば先代時の界王神に仕えていた時の上司のメチカブラになりそうだが、時の界王神の代替わりの時にそれぞれ裏切り別の陣営になっているので、可能性は低いように私には思えました。
そのため、ドミグラは封印されている間に修行する事で魔神化に至ったのではないかと推測し、トワがキリを消費して自力で魔神化する展開を思いつきました。
……今後魔神化に関する詳しいルールや仕組みがドラゴンボールヒーローズ等で明らかになった場合は、すみません。
個人によって異なるが、魔神化すると髪形や肌の模様が変化し、角や尻尾が生える等の変化が起こる。……ダーブラの場合は、何故か髪が減る。
また、メチカブラ一味は常時魔神化しており、ドミグラ一味のロベルは普段は魔神化していない。
〇暗夜王ルシフェル
トワの与えた仮面の力でルシフェルを強化した存在。
私は知らなかったのですが、感想で仮面には被った対象の力を引き出す(強化する?)力があると教えていただき、それで思いつきました。
〇バーダック
トワの洗脳から解放されたバーダック。直後はキリによる強化が持続していたので、スーパーサイヤ人1でトワを圧倒していた。
しかし、直後に魔神化したトワによって強化と解かれたため、戦闘力が激減してしまった。……とはいえ、ミラの組手相手を務めるなどしていたため、スーパーサイヤ人に成ればフリーザどころかクウラも片手で捻る事が出来る力を持っている。
素での戦闘力は2億。人造人間編で17号を吸収したセル第二形態を圧倒したベジータより数段弱いくらい。
大猿化で20億、スーパーサイヤ人1で100億。スーパーサイヤ人2以降にはまだ変身できない。
タイムパトロールへの就職が決まり、勤務時は他の歴史の息子と、休暇中は同じ歴史の息子と過ごす事になる。
クロスオーバー大好き侍様、佐藤東沙様、PY様、ヴァイト様、大谷地ひよこ様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。