ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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106話 この世とあの世のサイヤ人のこれからと、宰相の締まらない慰霊

 弱点克服のためと言う名目で行われた、チルドの乱取り稽古は遅めの昼食が用意できるまで続いた。

 そして、午後はバーダック対ベジータ王や、バーダック対バーダックチーム+ギネ、ベジータチーム対狂暴戦士チーム、トーマ対セリパ、マロン対ランチ、ネイル対人造人間チーム、チャパ王対アックマン、アックマン対桃白白、ムラサキ曹長兄弟対シルバー大佐&バイオレット大佐、ボンゴ&パスタ対ギラン&パンプット、ギラン&ラピス対パンプット&ラズリ等々、様々な組み合わせで試合を行った。

 

 そして夕食の後、儂は皆からやや離れた一角でベジータ王とバーダックと三人で盃を交わしていた。

「儂は場違いではないかね?」

「遠慮するな、宰相さんよ」

「そうだ、貴様にも聞きたい事がある」

 

 ベジータ王子が合流した時に諦め……覚悟したが、すっかりサイヤ人の関係者だな。いや、自覚するのが遅かったのかもしれん。

 

「それでバーダック。貴様は儂に『生前からその力があれば』とは言わんのか?」

「その言葉はそっくりそのまま俺自身に返ってくるからな」

 惑星ベジータ消滅の際に、バーダックに今の力があればフリーザを逆に倒していただろう。もっとも、それを望むのは無理な話だが。

 

「だが、強さ以外では言わせてもらうぜ。今のお前なら、もっとマシな王に成れただろうよ」

 バーダックにとってベジータ王は、フリーザ軍の中間管理職のような存在だった。それだけ当時のサイヤ人に対するフリーザの力への恐怖と、フリーザ軍への帰属意識は高かったという事だろう。

 

 それはバーダックだけではなく、ベジータ王との接点がなかったほとんどの下級戦士に言える事だ。

 

「フンッ、それこそ無理な話だ。力と恐怖で従わせる以外の方法を、当時の儂は知らなかったからな」

「信用できるツフル人の家庭教師でも迎えて、政治を学べばなんとかなったかもしれんぞ」

「はっ! ツフル人を信用しようとはしなかった儂には、あり得ない選択だな!」

 

 ベジータ王の不幸は、力による恐怖政治が出来てしまう程彼個人が強かった事と、当時のサイヤ人が結託して彼に反抗せず、彼の独裁を良しとした事だろう。そのため、別の道を模索する機会が彼にはなかったのだ。

「まあ、昔の後悔ばかり話しても酒が不味くなるばかりだろう。もっと前向きな話題に興じないかね?」

 

「クックック、年寄りの儂等に前向きな話題か」

「おい、俺を一緒にしてもらっちゃ困るぜ。歴史改変者のお陰で、十年は歳をとらずに済んでるんだからな」

「フンッ、どうせすぐに儂より年上になる。

 それはともかく……ゲロ、貴様に聞きたいのは、フリーザ軍の件だ。当座は誤魔化すそうだが、倅達をどうする? 休暇は残り半年程だろう?」

 

「それか。……本人達には話したが、他の惑星への侵略はフリーザからの命令でもしない方向で考えている」

 フリーザ軍への偽装工作は、既にラディッツが制作した報告書を送っている。今のところフリーザ軍がベジータ達を怪しんでいる様子はなく、十二月に惑星フリーザNo.79の基地に向かう事になっている。

 

 その後はフリーザ軍の出方次第だ。フリーザから他の惑星の侵略を命じられた場合は、命令に従っているふりをしてどうにか誤魔化す。無理なら偽装工作を止めて対決を早める、と言う事にしている。

 侵略対象の惑星が実際には無人だった場合や、待機命令だとか、宇宙海賊の討伐等の任務なら、そのままベジータ王子達には従ってもらうが。

 

「奴らの事だ、時間を稼ぐなら、命令を素直にこなして惑星を侵略した方がいいとは言わなかったか?」

「言った。ベジータ王子だけではなくチーム全員な。理由を説明して納得してもらったがな」

 打倒フリーザのためには、ナメック星人やヤードラット星人、地球の神様や界王様の協力と、歴史改変者の干渉を抑えるためにタイムパトロールとの連携が不可欠。彼らの信頼を維持するためにフリーザと同じことをするわけにはいかない。

 

 と言うのがベジータチームの面々に説明した理由だ。それを聞いた彼らは面倒そうな顔をしたが、納得してくれた。ナメック星人による潜在能力解放や治療、精神と時の部屋の効果が大きな説得力になっただろう。

 もっとも、内心では「フリーザを倒すまでの話だ」と思っていたかもしれないが……ベジータ王との再会をきっかけに王子が変わる事を期待しよう。

 

「それで、本音はどうなんだ?」

 以上の事を説明した儂に、ベジータ王はそう聞き返した。

「何? 今まで話していたのは建前かよ?」

「バーダック、騙されるなよ。こいつは見かけによらず情に厚く、義理堅いところがある。そしてお人好し気質だ。でなければ、儂等の慰霊碑に毎日飯を供えたりはしない」

 

「……儂は越えてはならん一線を越えないよう、家族や友人の期待と信頼を裏切らないよう、人並みにやっているだけのつもりなのだがな」

 儂はベジータ王の言葉に顔を顰めて、盃を呷った。

 

「確かに、さっき説明したのはベジータ王子達を納得させるための建前だが」

「結局ベジータ王の言う通りかよ」

「知り合いにつまらん理由で罪を重ねてほしくないと思うのは、人として当然じゃろう」

 

 フリーザ軍を誤魔化し時間を稼ぐためだけに、ベジータチームの面々に他星の侵略をさせたくはない。ベジータチームが既に多くの星を侵略し、罪を重ねていてもだ。

 一人殺すも二人殺すも同じ事、ではない。殺さなくてはならない人数は少なければ少ないほど良いのは当然だ。

 

「フッ、人として当然か。手厳しいな」

「そう言うもんか。なるほど、俺達から見ればお人好しだ」

 結果的にベジータ王とバーダックをディスってしまったようだが、そこは気にしないで話を進めよう。

 

「ただのお節介じゃよ。それに、ただの偽善でもある」

 儂が本当に正義の心を持っているなら、時間稼ぎなどせず一刻も早くフリーザを倒さなければならん。こうしている間もフリーザ軍に星が侵略され、異星人たちが服従を強いられ、最悪の場合は老若男女区別なく皆殺しにされているのだから。

 

 フリーザの兄、クウラも同様だ。それをしないのだから、やはりベジータ王の儂に対する評価は買い被り過ぎだろう。

「それで、フリーザ軍を誤魔化す手段は用意しているのか?」

 

「まあ、いくつかの事態を想定して準備を進めている。ドラゴンボールの使用も含めてな。そのためにも、儂も『地球人の科学者』として、手土産持参でベジータ王子達についてフリーザ軍の基地へ行くつもりだ。そこで、フリーザ軍のシステムに、いわゆるコンピューターウィルスを仕掛ける」

 

 誤魔化すには、フリーザ軍の情報をいち早く手に入れる必要がある。また、将来フリーザを倒す時に彼がこの広い宇宙のどこに居るのか分からないと支障が出る。

 そこで、コンピューターウィルスをフリーザ軍のシステムに感染させ、情報を常に得られるようにしたい。

 

「なるほど、スパイを仕込むより確実と言う事か」

「それで、その手土産ってのは何にするつもりなんだ?」

 ベジータ王とバーダックは、「そんな事が出来るのか?」とは尋ねなかった。もちろん、儂もベジータ王子達が持って来たスカウターを改めて解析して、確実に実行できると判断したからこその作戦だが。

 

 まあ、地球からでも通信システムを利用してウィルスを仕込むことも不可能ではないだろうが……様々な惑星戦士のサンプルを手に入れる機会を逃す手は無いだろう。万が一以下の可能性だろうが、ギニュー特戦隊のサンプルが手に入るかもしれんし。

 

 ギニュー特戦隊は、メンバー全員が出身種族の突然変異で高い戦闘力を得た人物だ。超能力者のグルドと、ドラゴンボール世界全体でも特異なチェンジを使えるギニュー以外にも、興味深いサンプルだ。……ギニューは細胞を分析しても、成果は得られないかもしれないが。

 

「おい、ベジータ王よ、あんたがお人好しだって言った爺さんが何か企んでいるように見えるぜ?」

「バーダック、儂はゲロが見かけよりお人好しだとは言ったが、腹に何も抱えていないとは言っていないぞ」

「企んでいるという程の事ではないさ。それで持って行く予定の手土産だが――」

 この後、酔っ払ったパンブーキン達が乱入してきた事で、三人の密談は終わったのだった。

 

「おい、ベジータ王よ! なんで俺とトテッポには見合いの一つも仕掛けなかったんだ!? タロとリークだけズルいじゃねぇか!」

「勝手な事を言いおって。儂は手を回して、貴様等にも何度か機会を作ったのだ! なのに貴様らがまったく女と関わろうとしないから、諦めただけだ!」

 

「そう言えば、自警団のパトロールで何度かいつもと違う奴等と組んだ。その中に、女もいた気がする」

「なにっ!? そうだったか!?」

 

 どうやら、ベジータ王がパンブーキンとトテッポの相手を用意しなかったのは、そう言う事だったらしい。

「いや、あの時は仕事に集中していただけで……」

「お前ら、女に興味が無さすぎだろう」

 

「だがまあ、別に良いか。今女と付き合っても、トレーニングの方にかまけて結局別れそうだしな!」

 どうやら、パンブーキンも酒に酔った勢いで声が大きくなった状態で尋ねただけで、見合い云々の事を深く気にしていたわけではないらしい。大笑いする彼に、ベジータ王は額に手を当ててため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 計画に失敗したチルドは、その代償として凄まじい激戦を経験した。ベジータ王に気絶するまで殴られ、トーマの回し蹴りを受けて意識が途切れ、セリパに殴る蹴るされて視界が暗転し、ネイルの気弾で目の前が真っ白になり、マロンの尻尾の一撃で意識を刈り取られ、バーダックの拳が視界いっぱいに広がったと思ったら何もわからなくなった。

 

 チルドも大人しくやられたわけでは無い。気を解放し、戦闘力を200万まで引き上げてベジータ王やトーマ、セリパと順に戦い、それなりに善戦した。しかし、結局敗北し命乞いをしながら倒れ伏す事になった。

 その度に4号やツムーリに傷と体力をわずか数分で回復され、試合に引きずり出された。確か、その時も命乞いをしていた気がする。「頼む、死にたくないから治療しないでくれ」と。

 

 それを4号達が取り合う事はなかったが、最初は無言だった彼等もだんだんチルドが哀れに思えて来たのか、「頑張ってください」、「お前なら乗り越えられるはずだ」と激励するようになった。

 それで何故かチルドの折れていた心に活力が戻り、再び全力で試合に臨めるようになった。

 

(あの時のボクはどうかしていた。頭を殴られ過ぎて、正常な判断力を失っていたんだ)

 そう、昨日の事を顧みるチルドだったが、その後も試合ではチルドは連戦連敗。持久力の無さを突かれて粘り勝ちされ、瀕死から復活したベジータ王子と戦った時は、彼が再び大猿に変身しないで戦闘力を十倍にして競り負けた。

 

 生きていた時にはしなかった命乞いを、何故死んでからこんなにしなければいけないのか。ああ、そうか。地獄とはこの世にあったんだ。

 そんな事を気絶している間に夢で思ったような気がしないでもない。

 

 そして、あの世に帰る時間が来た時は、安堵のあまり涙が出た。この後は、再び独房にいれられるのだろう。そう考えていたチルドだったが、彼が連れて来られたのは地獄自警団本部の一室だった。

 

「……何のつもりだい、ベジータ王? ボクは君の部下になったつもりはないよ」

「昨日、なんでもするから助けてくれと言っていただろうが」

「き、貴様!? その後散々ボクを嬲り者にしておいて!?」

 

「それとも、このまま独房に戻るか? 閻魔大王に貴様を独房から出す事を了承させた条件は、貴様が俺の部下になり、地獄の治安を守るために尽力させる事だからな」

 そう言いながら、チルドに向かって自警団のエンブレムが付いた戦闘服を投げ渡した。彼は反射的に受け取ったそれを投げ返そうとしたが……。

 

「独房に戻れば、何もない平和な日々に貴様は戻る事になる。ただ、汚名返上の機会も永遠に失われるがな」

「なんだって?」

 ベジータ王の言葉にチルドの手が止まった。

 

「このままでは、貴様は『儂等に逆らおうとして失敗した間抜けな宇宙海賊チルド』として地獄の悪人達の記憶に残る。いずれ地獄に来る貴様の子孫達に、不甲斐ない先祖、一族の顔に泥を塗った恥さらしと思われる訳だ。

 それで構わんのなら好きにするがいい」

 

「き、貴様……!」

「だが、自警団に参加して力を蓄え、再びこの世との交流戦や地獄一武道会でリベンジを果たせば、貴様の名誉は回復し、地獄の悪人達の間にも貴様の名声が轟くのではないか? それに、儂を倒せば自警団は貴様のものだぞ」

 

「どういうつもりだい? まさか、ボクを上手く乗せて掌の上で転がせるとでも思っているのか? ボクが貴様を超えられないとでも?」

 ベジータ王が何故こんな事を言うのか、その狙いが分からずチルドは激高しそうになるのを抑えてそう尋ねた。

 

「フッ、そう思っているのだったら貴様にこんな話はしない、さっさと独房に叩き返している。チルド、儂は貴様に期待しているのだ」

 すると、ベジータ王は凄みのある笑みを浮かべて答えた。

 

「独房と言う限られた空間で数か月過ごしただけで、貴様は戦闘力を四倍にまで引き上げた! 持久力の無さと言う弱点はあったが、十分に評価に値する。そんな貴様が、我々と同じ恵まれた環境でトレーニングが出来るようになれば、どれほど強くなるのか。

 儂は手駒として貴様を利用したいのではない、ライバルとして利用したいのだ!」

 

「こ、このチルド様が、貴様のライバルだと!?」

 ベジータ王は、バーダックチームが生き返ってから常々不満を覚えていた。自分の周りに、自分と実力の近い組手相手が存在しない事に。

 

 パンブーキンとトテッポも生き返らせるようゲロに言ったのは彼自身だが、それとこれとは話が別だ。エビフリャー達狂暴戦士も悪くないが、まだ物足りない。

 そこで目をつけたのがチルドだ。昨日の交流試合で見せた、戦闘力200万になる変身。たった数カ月でそこまで至ったのなら、良い組手相手……ライバルに育つに違いない。

 

(バーダックが言っていたスーパーサイヤ人の次の段階に俺が至るためには、まだまだ強くならなくてはならん。そのためには必要なのだ。サンドバッグではなく、油断すれば追い越されてしまうようなライバルがな!)

 息子には殊勝な事を言ったベジータ王だが、死しても戦闘民族サイヤ人の本能は彼を熱く滾らせていた。

 

「フ、フフフ、いいよ、その話に乗ってやる。だが、期待外れになっても恨まないでもらおうか。近い内に地獄に来るのは、ボクの子孫じゃなくて君の息子やお友達だ。そして、ボクの手下になった君が彼らを出迎えるのさ。

 極悪人のボクにチャンスをやった事を、後悔させてあげるよ」

 

「クックック、その意気だ。悪人同士、良いライバルになりそうだ」

 

 こうして地獄で悪人同士の奇妙なライバル関係が始まったのだった。

 なお、閻魔大王の心労が大きくなった事は言うまでもない。……ついでに、時の界王神の心労の種も増えたが、「あの世の出来事だし、影響はまだ少ないから大丈夫、よね?」とベジータに尋ねていたが、「別の歴史の親父の事は知らん」と返されていた。

 

 

 

 

 

 

 フリーザは、自身のオフィスで各宙域から送られてきた報告書に目を通していた。これは彼にとって仕事であると同時に、娯楽でもある。

 他星の侵略が進んでいるのを見る事で支配欲を満たし、価値のない星に目をつけて「今度花火にしてあげましょう」と仕事の合間の楽しみを見つける。

 

「おや、これはベジータさん達の報告書ですか」

 そんな時、目に留まったのはラディッツが作成したベジータチームの報告書だった。休暇中に侵略した惑星を売りたいとか、そうした報告かと思って目を留めたが違うようだ。

 

「フリーザ様、ベジータ達は休暇中にラディッツの弟、カカロットを捜索しに辺境の惑星に向かい、途中でスラッグ一味の幹部の襲撃を受け、敗退したようです」

「ほう、スラッグ一味の。前時代の遺物のクセに、元気に飛び回っているとは困った物ですね」

 

 フリーザにとってスラッグ一味は、面倒な害虫のような存在だった。

 彼の父、コルド大王が軍の指揮を執っていた時は数々の惑星を支配していたが、今では惑星クルーザーに改造したスラッグ星を駆って、宇宙を飛び回っている。

 おかげで、直接叩き潰してやろうと思っても所在がつかめない。

 

 支配下に置いた惑星がスラッグ一味の攻撃を受けたという報告を受けて向かっても、ついた時には姿をくらませた後だ。

 とはいえ、フリーザの父であるコルド大王の時代と比べるとスラッグ一味はだいぶ弱体化している。それに、スラッグの種族は不明のままだが歳を取り衰えたのか、彼が直接戦いの場に出てきたという情報はほぼない。

 

 このまま老いて死ぬのも時間の問題。不快な羽音に耐えるのも、それまでの短い間だと考えたフリーザは、積極的に始末しようとはしてこなかった。

 ただ、問題としてスラッグ一味の幹部は、フリーザ軍の並みの上級兵士より強い。ダイエット(任務)中のドドリアはもちろん、今横にいるザーボンが変身したとしても勝てない。ベジータ達が敗退したとしても、不思議ではない。

 

 報告書を送ってくると言う事は全滅しなかったと言う事だから、むしろ良い結果かもしれない。

「しかし、そのスラッグ一味の幹部は既にベジータ達が返り討ちにしたそうです」

「ほうっ? それは意外ですね。スラッグ一味の幹部の戦闘力はだいたい4万ぐらいだと思っていましたが。ああ、大猿にでも変身しましたか?」

 

「それが、また戦闘力を短期間で上げたようです。一度目に敗退した後、瀕死の状態で惑星フリーザNo.79の基地に辿り着き、そこで治療された時に」

「なるほど。サイヤ人の生態ですか」

 

 原作ではサイヤ人が死の淵から蘇る度に戦闘能力が上がる生態をしっかり把握していなかったフリーザ達だが、この歴史ではよく知っていた。それは、数少ないサイヤ人の生き残りとしてフリーザが注意を向けていたベジータ達の内ラディッツが原因だ。

 

 激しい訓練を行う彼や、それに付き合ったナッパの戦闘力が瀕死から復活する度に上昇するので、詳しく調査したのである。

「基地で計測したところ、奴らの戦闘力はナッパが1万2500、ラディッツは2万2500、そしてベジータは3万6千だったそうです」

 

「3万6千! それは素晴らしい数字ですね。スラッグ一味の幹部を大猿にならずに倒したという報告も、納得できますよ」

 数字的にはスラッグ一味の幹部の平均にやや届かないが、ベジータの戦闘におけるセンスはフリーザも認めている。彼が前に出て、ラディッツとナッパが援護して連携して戦えば、多少格上の相手でも勝つことができるだろう。

 

 もしくは、一度倒した相手だと、スラッグ一味の幹部が油断したのかもしれない。

 

「しかし、報告書には続きがあるようですね。ほう、なるほど。ラディッツの弟のカカロットを、『地球』と言う惑星で発見。さらに、他に生き残りのサイヤ人がいたと。正確には、サイヤ人と地球人のハーフのようですが。

 それで、地球を新たなサイヤ人の母星にするために貰いたいと」

 

「いかがいたしますか、フリーザ様?」

 ザーボンの問いかけは、改めてサイヤ人を滅ぼすか否かを問うためのものだ。フリーザは数秒考えた後、「いいでしょう」と答えた。

 

「地球は報告書によると環境はそれなりに良さそうですが、それだけの惑星です。位置も辺境ですし、スラッグ一味が目をつけているのなら、奴等から我が軍の縄張りを守る壁代わりにも使えますからね。

 発見されたサイヤ人も、地球人とやらの混血なら問題ないでしょう」

 

 フリーザはゲロの読み通り、サイヤ人に対して若干の警戒心は持っていたが、憎しみや恐怖と言う程の感情はなかった。破壊神ビルスからサイヤ人を滅ぼすよう命令された事に対しても、惑星ベジータを破壊した事で義理は果たしたと考えている。……元々、ビルスに「命令された」事が気に食わなかったフリーザとしては、これ以上彼の意向に従う気はない。

 

 そして何より地球で新たに見つかったサイヤ人の生き残りに関しても、純血のサイヤ人はラディッツの弟一人。他は地球人と言う聞いたことも無い辺境の、サイヤ人が飛ばし子を飛ばす先に選ぶほど劣った星の種族との混血なら、取るに足らないだろうと思い込んでいた。

 

 ……実際には、地球人の血が入ったサイヤ人は高い潜在能力を持つ傾向にあるのだが、流石のフリーザもそこまでは予見できなかった。

 

「問題はベジータさんが力をよりつけている事ですが……そうですね、ベジータさん達には休暇明けにNo.79の基地に来るよう言っておきなさい。丁度近くまで行く予定でしたしね。その時に、ベジータさん達にはザーボンさん、まだあなたにも見せていない二回目の変身を見せてあげましょう」

 

「なんとっ、フリーザ様は複数回の変身が可能なのですか?」

「フフフ、ザーボンさん、あなたは運が良いですよ。この私の第二段階の変身を見る事が出来るのですからね」

 フリーザの高笑いが、オフィスに響いたのだった。

 

 なお、二回目の変身を行ったフリーザの戦闘力は、約200万である。

 

 

 

 

 

 

 あの世との交流試合の翌日、儂は妻であるアルマとの一年ぶりの再会を果たしていた。

「送ってくれた手紙を何度も読んだけれど……永久エネルギー炉のエネルギーを魔力に変換して魔術を妨害する魔術を発動するこの仕組み。もっと効率的にできないかしら?」

 

「ふーむ、試行錯誤を続けるしかないな。プロの魔術師の協力があれば、より効率的に魔術を再現できるだろうが」

 気の使い方にも、無駄だらけでろくに収束できていない気功波と、洗練されて無駄がなく制御された気功波がある。魔術にも同じことが言えるはずだ。

 

 しかし、儂の魔術妨害装置はおそらく前者。それも魔神化したトワの魔力に敗北した理由の一つのはずだ。

「実験できる環境は整えられそう?」

「エネルギーを魔力に変換する装置を疑似的な魔術師に見立てて、その魔術を妨害装置で妨害するという形でなら可能じゃが、不安が残るな」

 

「じゃあ、トワって人のクローンを作るのが先かしら?」

「それも難しそうじゃがな。おそらく、来年の今日も同じ課題について話し合う事になるだろう」

 午前中は魔術妨害装置に関して、充実した議論を行った。

 

「なあ、あいつら夫婦なんだよな?」

「ああ、でも彼女が生きている時からずっとああだったらしいよ。僕がゲロと出会ったのは、彼女が亡くなってからだけどね」

「……今も生き生きとしているが?」

 

 ブリーフとピラフ大王は儂等の夫婦の会話を見てそう評していた。

 

「そうね。まだデータが少なすぎる。神力の方は地球の神様が実験に協力してくれるのよね?」

「うむ、その予定になっている」

「じゃあ、他の研究について議論しましょう。テラフォーミングはどうなったの? 進んでる? 天国でたくさんの宇宙人の科学者に聞いてみたけど、生物のいない惑星を居住可能な星に作り変えた事はないって。皆注目しているわよ」

 

「うむ、それについては責任者を紹介しよう。ピラフ大王だ」

「初めまして、ピラフ大王。天国の科学者達はあなたの話題で持ちきりよ。それに、ロボット工学でとてもユニークな発想をお持ちだとか」

 

「は、はは、此方こそお噂は聞き及んでおります。それで、天国でワシの話題で持ちきりと言うのは本当ですかな?」

「ええ、もちろん。ところで何故スペースコロニーではなくテラフォーミングに注目したのか、聞いてもいいかしら?」

「そ、それはな、ええっと……おい、なんでなんだ?」

 

 照れた様子でアルマと握手していたピラフ大王に尋ねられた儂は、どう答えるかやや悩んだ。宇宙空間に居住可能なスペースコロニーを建造するのではなく、火星などの惑星を居住可能な環境に変えるテラフォーミングを選んだ論理的な理由は、正直言うと無かったからだ。

 

 最初に思いついた理由は……確か、面白そうだったからだった気がする。

 

「儂が思いついたのは、面白そうだったからじゃな」

「なんだと!? もっと他にあるだろう! スペースコロニーを建造するのに比べて初期投資がかかるが、上手く行けば持続的なコストは抑えられるとか、居住後の安心感が違うとか、ロマンがあるとか!」

「ピラフ大王、最後の理由は儂とそう変わらんと思う」

 

「あははははっ! やっぱり変わっていないわね、ゲロ!」

 そうしてテラフォーミングについて話し合い、火星の軌道上に浮かべる地軸安定のための人工衛星や、冷えて固まっている火星の核に撃ち込んで溶かし制御するためのマントル制御装置等を見せた。

 

「アルマ博士、此方が我々とコリー博士がサイバイマンを応用して作り出した、バイオアジッサの種です。地中に植え、培養液をかければ数秒でアジッサの若木にまで成長します」

「凄いわ、ニオン。でも、大気が無くても生息可能なの?」

 

「はい。フリーザの細胞を移植したため、宇宙空間でも僅かな光さえあれば生息可能です。また、勝手に増える事もありません」

「ブリーフ博士が改良していたアジッサ改よりは、酸素の精製や大地の浄化効率は落ちてしまいますが……それは今後の課題です」

 

「現在、火星の衛星の一つで発芽させ実験を行っています。その結果次第で火星にも植える事が出来るでしょう」

 シトウやモロコも誇らしげにアルマに説明している。上手く行けば、来年には彼女を火星に案内できるだろう。……その時には名前が火星から惑星ピラフに改められているかもしれんが。

 

 次にアルマに紹介したのは、シルバー大佐達だ。

「あなた達が私の義理の兄弟姉妹になるレッドリボン軍の人達ね! 私はアルマよ、よろしく」

「ああ、よろしく。あの世との交流試合でも思ったが、死人ってのは俺達が思っているより生き生きしているんだな」

 

 アルマはシルバー大佐、バイオレット大佐と握手を交わした。

「今はこうして足があるから余計にそう見えるのよ。天国にいる時は無いから、きっと見え方も違うと思うわ。

 ところでシルバーさん、あなたに移植する細胞だけどサイヤ人の中でもベジータ王子とコレンの細胞を多く組み込むのはどうかしら? 潜在能力がより強くなるかもしれないわ。それとバーダックの細胞も組み込んで――」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 そして、そのまま興奮した様子でシルバー大佐に話し続けるアルマ。それを見ていたバイオレット大佐とブルー大佐は、儂の方を振り向いて言った。

 

「ゲロ、なんでこんな若い女があんたと結婚したのか不思議だったけど、納得したわ。明らかにあんたと同類よ」

「ええ、似た者夫婦だわ」

「はっはっは、そう褒めるな」

「別に褒めちゃいないわよ!」

 

 

 

 

 

 

 そしてアルマが天国に帰った後、儂はベジータチームの面々とバーダックを墓参りに誘った。

「戦闘民族である俺達サイヤ人の墓を態々建てるとはな」

「ベジータ王が言っていた通り、義理堅い爺さんだな」

 

「忙しい日は掃除や供え物の準備はロボット任せで、儂は軽く手を合わせる程度じゃからそこまでではない。それに、最初に建てたのはパンブーキンとトテッポの墓だけじゃ」

 アルマの墓の隣にある、パンブーキンとトテッポの墓、サイヤ人の慰霊碑、そして今年になってから建立したばかりの地獄自警団の慰霊碑である。

 

 ベジータ王がサイヤ人以外の宇宙人も自警団への入団を認めていると聞いたので、必要だろうと建立したものだ。これで、サイヤ人以外の自警団のメンバーの下にも供え物が届くだろう。

「その内、慰霊碑だらけになるんじゃねぇか、この島?」

「今日はパンブーキンとトテッポの墓を片付けるから、そうはならないんじゃないか?」

 

「この通り生き返ったからな! 当分死ぬ予定もねえし」

「セリパ、墓じまいだ。まあ、パンブーキンの言う通り本人が生き返ったから、通常の手順でいいのか微妙だが」

「通常の手順って、なんだ?」

「確か、まずは墓にお経を……入っているはずの本人がいる前でやるのも締まらんな。まあ、その前に……」

 

 アルマの墓と二つの慰霊碑にそれぞれ花を供え、線香をたいた。それを後ろで見ていたベジータ王子が、声をかけて来た。

「おい、ここで言った事は親父達に伝わるのか?」

 

「いや、伝わらん。ただ若干の安心や満足、幸福感となって伝わるようだ」

 残念だが、墓前や遺影の前で祈ってもそれがそのままあの世に届くわけではない。ただ、以前占い婆に協力してもらって検証したところ、全く届かないというわけでもないという結果が出ている。

 

「何か伝えたい内容があるなら、手紙にしたためて供えるのが確実じゃな」

「そうか」

 そして、ベジータ王子はそれ以上何も言わず、手を合わせて目を閉じ……すぐに開いた。

 

「これで義理は果たしたぞ、ゲロ。さっさとトレーニングに戻るぞ」

「ちょっと待ってくれ、ベジータ。俺達がまだだ!」

「さっさと済ませやがれ!」

 

 ラディッツとナッパもそれぞれ短くだが手を合わせる。その間バーダックは長く手を合わせていたが、苦笑いをしながら止めた。

 

「冥福とやらを祈ろうにも、楽しくやってるのをつい最近知ったばかりだ。しかも、親しい連中はだいたいこの世にいるときてる。

 おい、爺さん。そう言えばなんで今墓に案内したんだ? 俺達が地球に来てから一か月は経ってるぜ」

 

「それはな、直ぐに案内しても、義理を果たそうとしないだろうと思ったからじゃ」

 儂がそう答えたのが聞こえたのか、ベジータ王子は舌打ちをした。

 

 ベジータ王のお陰で彼等も変わりつつあるようだ。

 




〇チルドの自警団入り

 地獄の刑罰的には、これは恩赦ではない。……元々刑罰を与えなければいけない罪人を、「危険だから」と言う理由で独房に閉じ込めて幽閉していたのが特例だったので、正常な罪人の扱いに戻しただけと言える。



〇フリーザとビルス

 ゲームで惑星ベジータを滅ぼした事を労うビルスに対して、フリーザが「私はあなたの部下じゃないんですよ!」と憤るやり取りがある。そのため、フリーザはビルスが破壊神で自分より圧倒的に強いから逆らわないだけで、敬っている訳ではなく、仕方なく言う事を聞いただけだと思われる。

 ……惑星ベジータを破壊してサイヤ人を滅ぼそうとした事には、ビルスからの要請以外にも、劇場版『ブロリー』を見るとサイヤ人が将来反逆してくるだろうことを見越したから、スーパーサイヤ人の伝説を警戒したから、等の複数の理由があったと考えられるが。

 また、ビルスの方もフリーザに対して次に会ったら破壊してしまおうかなと思っていたようなので、関係の薄さではお互い様かもしれない。



〇バイオアジッサの木

 指先程の大きさの種子を、土に植えて培養液をかければたちまち発芽して、二メートル程の高さの若木に成長する。ブリーフ博士のアジッサ改をベースに、解析したフリーザの細胞を移植して作られた合成植物。

根を伸ばせる土、もしくは土代わりになる物があれば宇宙空間でも発芽可能。その後、僅かな光があれば酸素を創り出し土壌から毒素を浄化し、他の植物が生える事が出来るようにすることができる。

 ……フリーザ本人が知らないところで、彼の細胞の有効利用が進む。



〇地獄自警団慰霊碑

 地獄の自警団に所属している者達を慰霊するための碑。生前の所属や行いではなく、死後地獄で自警団に所属している者を慰霊するという、事情を知らない者には奇妙な慰霊碑となっている。
 サイヤ人の慰霊碑の隣に建立されている。



ダイ⑨様、佐藤東沙様、ノーデンス様、名無しの過負荷様、ラグナクス様、PY様、ヴァイト様、太陽のガリ茶様、Paradisaea様、麦茶太郎様、都庵様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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