ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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無印だけど地球丸ごと超決戦!
108話 天才科学者、フリーザ軍基地に降り立つ!


 冬を迎えるころ、火星はすっかり様変わりしていた。

 プロジェクトリーダーのピラフ大王と協力して、この天才科学者であるこの儂、ドクター・ゲロは地軸を安定させるための重力発生装置を組み込んだ人工衛星を火星の衛星軌道上に浮かべ、地中の氷を溶かして火星の核を再活動させるための永久エネルギー炉搭載の杭を打ち込んだ。

 

 そして火星の地表に水があふれたところで、投下されたロボットによってバイオアジッサの種が蒔かれた。バイオアジッサはたちまち芽吹き、若木に成長。火星の土壌を浄化し、地球と比べて少ない上に成分も二酸化炭素が殆どを占める火星の大気に酸素を供給する。

 

 後は窒素を作り出して大気を地球と同じ成分に調節すれば火星は地球人が生身で歩ける惑星になるだろう。

 

 そんな火星の様子を、儂は地上のGCコーポレーションの管制センターのスクリーン越しに眺めていた。

 そして、別のスクリーンにはドーム型の宇宙船が一機飛んでいるのが映っている。行き先は惑星フリーザNo.79の基地。

 

「おい、あの宇宙船は本当に大丈夫なんだろうな? 高度過ぎる装置や希少な素材……永久エネルギー炉やらカッチン鋼の装甲やらを組み込んでいたら、フリーザ軍の奴等に怪しまれる」

「もちろんじゃ。実際にアタックボールを改造して作ってある。余計な部品は使わないよう我慢した」

 

 あの宇宙船は、ベジータチームと儂、そしてカカロット役を演じるターレスが搭乗してフリーザ軍の基地に向かっているという設定の船だ。

 もちろん、十数日とはいえ宇宙船の中で眠って過ごすつもりは儂にもベジータ王子達にもない。船内を調べられた時のために設備自体は設置してあるが、使うつもりはなかった。

 

 この宇宙船には、地球製スカウターでしか拾えない信号を発するビーコンが組み込まれている。この宇宙船が惑星フリーザNo.79に近づいたら、その信号を頼りに座標を割り出し儂が瞬間移動で四人を連れていく手筈になっている。

 

「しかし、正直不安が残るな。隕石にぶつかって故障したり、プログラムの障害で行き先を間違えたりせんだろうな?」

 正直、儂はウィロー合金製ですらないこの宇宙船の性能には不安しか覚えていなかった。動力に永久エネルギー炉を使えないため、燃料費もそこそこかかっているし。

 

「爺さん、永久エネルギー炉の事はフリーザ軍に教えないんだろ? 我慢しろよ」

「ターレスの言う通りだ。それに、俺達は長年アタックボールで宇宙を行き来してきたんだぞ。事故は聞いたことが無いから安心しろ」

 

「言われてみればそうか。それに、考えてみれば大気圏に突入して地面に激突しても故障しない程頑強なら、航行中に隕石にぶつかっても平気か」

 正確には、あの宇宙船はアタックボールを元に儂が改造したものだが、強度は落としていない。ラディッツの言う通り、心配するだけ無駄かもしれん。

 

「じゃあ、俺は界王様の所に帰らせてもらうぜ」

「うむ。十数日後にまた会おう」

 そして、特筆に値する事は何もなく十数日後、宇宙船は惑星フリーザNo.79に到着した。

 

「さて、気を調節するか。……たった一年で強くなったもんだぜ」

「ナッパ、精神と時の部屋の二年分を忘れるなよ」

「おっと、そうだったぜ、ベジータ。だが、フリーザ軍で三年働くのと比べたら大違いだろ?」

 

 そう言うナッパの戦闘力は、精神と時の部屋から出てきた時の6万9百から、10万1千。ギニュー特戦隊の隊員を追い越し、ギニュー隊長に迫りつつある。

「確かにな。フリーザが変身タイプの宇宙人だと知らなければ、奴を殺す機会を狙うところだったぜ」

「大猿化すれば殺せると思い込むところだったな」

 

 そしてラディッツは9万4千から約15万6千、ベジータ王子は15万5千から27万5千だ。大猿化すれば、フリーザが変身しても最終形態になる前なら倒せる強さである。素の状態でも、ギニュー特戦隊を恐れる事はない。まあ、ギニューのチェンジは警戒しなければならないが。

 

「ターレス、界王様の修行はどうだった?」

「ああ、追い込みのお陰で何とか界王拳は習得出来たぜ。元気玉は無理だったがな」

 そしてターレスは3万2千から8万5千。界王拳も習得しており、十倍までなら体に負担をかけるが十分以上続けられるそうだ。

 

「そう言う爺さんはどうなんだ?」

「儂はそんなに強くなってはおらん」

 界王様からの弟子入りの誘いを断った儂は、特別なトレーニングはしていない。10万7千から15万5千と戦闘力は高くなっているが、僅かにラディッツに追い越されている。

 

「十分強くなってるじゃねぇか。というか、なんで科学者がこのナッパ様より強いんだ? 前々から思ってたが、地球人の突然変異だろ、あんた。

それはともかく、修行の成果を発揮する訳にはいかないのが残念だぜ」

 

「よし、打ち合わせ通りの大きさに気を抑えるぞ。もし戦闘が発生しても、殺される危険が無い限り気を解放しないように」

 打ち合わせでは、ナッパは1万8千、ラディッツは2万7千、そしてベジータは4万までに戦闘力を抑える事にしている。それが、「スラッグ一味の幹部を協力して倒した後、半年以上トレーニングを積んだ結果」として想定されている数字だ。

 

「これぐらいか。まさか一割以下に気を抑える羽目になるとはな。あいつら、悟空を舐め過ぎじゃないか?」

「文句を言うな。フリーザ軍にとってカカロットは。『飛ばし子にされたラディッツの弟』だ。半年程俺達に鍛えられたとしても、それ以上強かったら勘ぐる奴等が出てきかねん」

 

「それに、地球は『ベジータチームを待ち伏せていたスラッグ一味の幹部に侵略されてかけていた』んだ。奴等に反抗できそうな強さだったら不自然ってもんだぜ」

 そうベジータとナッパに言われるターレスは、三人と比べると大きく落ちて4千。何と、本来の一割どころか五分もない。

 

「安心しろ、4千もあればフリーザ軍では中級兵士だ。まず絡んで来る馬鹿はいない。特に、あの基地はフリーザ軍でも辺境の基地だ。その中級兵士も少ない」

 そう語るラディッツだったが、ふと眉間にしわを刻んで顔を顰めた。

 

「ただ、紫色の肌のキュイって細身の野郎と、ドドリアってデブを見かけたら注意しろ。まず鉢合わせる事は無いと思うが」

「キュイって奴はともかく、ドドリアって言えばトーマ達を殺したフリーザの側近だろ? 何か揉めたのか?」

「……色々あってな」

 

 後で聞いたが、かなり酷く侮辱したらしい。トーマ達が聞いたら喝采を挙げただろう。

「爺さん、ここから気で分かるか?」

「ドドリアの名前は知っているが、会った事はないから気を探っても確かな事は言えんが……あの星にフリーザが来ているようじゃな」

 

「マジかよ!?」

「おい、確かなのか!?」

「チルドに似た、50万ぐらいの大きさの気が一つある。近くに他の兵士よりはだいぶ大きな気があるが、これがザーボンなのかドドリアなのかは分からん。これ以上は分からんな」

 

「チッ、フリーザ以外にないな。奴め、辺境の基地に何の用だ?」

「やれやれ……ドドリア以上に面倒な話になるかもな。頼りにしてるぜ、兄貴」

「ああ、任せろ」

 

「フリーザがいるのは驚いたが、ターレスとは逆に儂はもっと抑えた方がいいんじゃなかろうか?」

 そして、儂は1万だ。割合的にはターレスより多く、フリーザ軍では上級戦士にギリギリ分類される強さになっている。

 

「貴様は見た目が爺で、しかも『辺境で文明の劣った地球人』だ。舐められない程度にそれぐらい強い方がいい。その程度なら、スラッグ一味の幹部には敵わないから戦わずに隠れていた、と言う言い訳も疑われないはずだ」

「確かに。それに、儂の目的を果たすためには単独行動になる可能性もある。一人でいるところを絡まれたら面倒じゃから、ある程度強いと思わせておいた方がいいか」

 

 そうこう話していると、宇宙船が着陸態勢に入った。アタックボールより大型なので、他の発着場に着陸する。

「お帰りなさいませ、ベジータ様、ラディッツ様、ナッパ様!」

 すると、敬礼をした兵士達が行列を作って出迎える。その中には儂が知っている顔はなかった。

 

「ああ、しばらくぶりだな。ソルベはどうした?」

 ベジータがそう言うと、問われた兵士達は何故か驚いたように目を見開いた。ベジータ王子が自分の顔を覚えていた事に衝撃を覚えたらしい。まあ、儂もソルベの名前が出た事に若干驚いたが。

 

「ソルベ様なら、しばらく前に第三宙域に戻りました。それより、フリーザ様が屋外運動場でお待ちです!」

「何、フリーザ様が!? 分かった。早速ご挨拶に向かうぞ」

 気で探った通りフリーザが待っていたので、驚いたように装うベジータ王子。急いで屋外運動場に向かう。

 

「それで、そちらの二人は……?」

「俺の弟のカカロットと、その育ての親の地球人の科学者だ。報告書に書いてあっただろう」

「こいつらは待たせておいた方がいいのか?」

「いえ、フリーザ様から全員通すよう言われております!」

 

 歩きながら話す兵士とラディッツやナッパ。儂は彼らの後ろを歩きながら、こっそりとスパイロボットを放つ。

 ギニュー特戦隊には程遠いが、様々な種族出身の兵士達はサンプルの宝庫だ。

 

「さて、儂もそろそろ行動するか」

 そして、宇宙船に残っていた四身の拳で作り出した儂の分身も行動を開始した。ミクロバンドで小さくなり、光学迷彩装置を起動して、基地の端末を探す。

 

 そして、ベジータ王子達と儂の本体は基地の運動場……と言う名の空き地に着いた。

「お久しぶりです、フリーザ様」

「ええ、久しぶりですね、元気そうで何よりですよ」

 膝をつくベジータ王子達に倣って頭を下げながら、儂はザーボンを従えたフリーザの姿に内心感動していた。

 

 ベジータ王子の時はタイムパトロールのベジータを既に見ていたから、そこまでではなかったが……やはり前世でドラゴンボールのファンだった身としては、胸が高鳴る物がある。

 まあ、そんなフリーザの打倒を目指している訳だが。キャラクターとしてのフリーザは好きだが、隣人にはしたくない。そんな感想は、直接会ったこの瞬間も変わらない。

 

「スラッグ一味の幹部を倒したそうじゃないですか。なかなかの手柄ですよ」

「ありがとうございます。これもフリーザ様が我々に強くなる機会を与えていただいたおかげです」

 フリーザに対して恭しく、そして慇懃に対応するベジータ王子。彼は以前からこうして猫を被って、忠実な部下の演技を続けていたのだろう。

 

「それで、後ろの二人が報告書にあったカカロットと地球人の科学者ですか」

 そして今度はターレスと儂にフリーザの視線が向けられる。ゾッとするようなプレッシャーを……感じはするが、チルドで慣れたので、正直たいしたことはない。

 

 タイムパトロールと歴史改変者の戦いで味わったプレッシャーに比べれば、恐れるほどではないとも思う。まあ、危険な兆候があったらすぐ瞬間移動で逃げられるからこその余裕だが。

 

「はい。ラディッツの弟、カカロットと申します。そして――」

「育ての親のゲロと申します。宇宙の帝王、フリーザ様の尊顔を拝す機会を頂き、光栄にございます」

 

「ほう、辺境の星の住人とそれに育てられたにしては礼儀作法を弁えているようですねぇ。

 しかし、何故これまで帰還しようとしなかったのです? スカウターの修理やアタックボールの改造が出来るほどの技術力があれば、どうとでもなったと思いますが?」

 

 そう、主に儂に向けて尋ねて来た。確かに、スカウターの修理などが出来る技術力があるなら、カカロットを運んできたアタックボールから、フリーザ軍の存在を知る事も、カカロットの代わりに救難信号を送る事も可能だろう。

 つまり、フリーザは儂を疑っているのだ。うむ、実に正しい判断だ。流石は宇宙に君臨する悪の帝王。

 

 以下、嘘八百である。

「は、それなのですが……実は儂がカカロットを見つけた時、こやつが乗って来たアタックボールを発見する事が出来なかったのです」

「ほう? どういうことです?」

 

「はい。儂が研究に行き詰って気分転換に適当に夜空を飛んでおりますと、大猿が暴れているのを見かけまして。さては先祖にサイヤ人の血が混じった者が、満月を見て変身したのだろうと思い、急いで後頭部を殴りつけ気絶させました。

 すると、大猿から元の姿に戻ったのは幼い少年。しまったと思った時はもう遅く、彼の記憶はなくなっていたのです」

 

「我々サイヤ人は幼少期に頭に強い衝撃を受けると、それまでの記憶が消え、攻撃性が無くなってしまう事があるのです。弟の場合は記憶と刷り込まれた命令を忘れるだけで済んだようですが……」

 儂が経緯を語り、ラディッツが説明を挟んで補足する。

 

「おそらく、カカロットは地球に不時着した直後に満月を見て大猿化し、自分の乗って来たアタックボールを内側から破壊するか、どうにかしてしまったのでしょう。

 その後、儂は記憶を失った彼をサイヤ人の血を濃く引く、もしくは先祖がえりを起こした地球人の子供と考え、ターレスと仮の名を与えて育ててきました」

 

 以上が偽りの経緯だ。これで、カカロットがこれまで地球を滅ぼさなかった事や、フリーザ軍への帰還や救難信号を送ろうとしなかった理由の説明になる。

 また、間違えてターレスの名を呼んでしまった場合の言い訳にもなる。

 

「なるほど。経緯は分かりました。とりあえず、あなた達はベジータさんのチームに所属してもらいましょう」

 そう頷くフリーザ。内心彼がどう考えているのかは不明だが、一先ず納得してくれたようだ。

「ありがとうございます、フリーザ様。これからは兄共々、フリーザ様のために働きます」

「感謝いたします、フリーザ様」

 

「ホッホッホ、よろしく頼みますよ。ああ、そう言えばベジータさんは地球を貰いたいそうですね?」

「はい。純粋なサイヤ人はカカロット一人でしたが、薄くともサイヤ人の血を引く者達が生き残っていた地球を第二の惑星ベジータとすれば、巨大隕石の衝突で星と共に死んだ亡き両親も浮かばれると思いました」

 とても父親の方には半年前に本人に会っているとは思えない様子で、フリーザに答えるベジータ王子。

 

「そうですか。構いませんよ、ベジータさん。あなた達のこれまでの功績を考えれば、辺境の惑星の一つや二つ差し上げても。

ラディッツさんやナッパさんのように、たたき上げの戦士が成功するのは下の者の励みになるでしょうしね」

 

 フリーザは儂が予想していたよりも、簡単にベジータ王子の地球支配を認めた。もしかして、手土産は必要なかっただろうか? しかし、既に献上品を持参いたしますとラディッツに伝えてもらった後じゃし。

「ありがとうございます、フリーザ様。これは我々からの感謝のしるしです。お納めください」

 そして、ベジータ王子は事前に決めた手順通りナッパに目配せをすると、彼が手に提げていたケースを開き、中身を差し出す。

 

「まずはこのゲロが改良したスカウターです」

「これは、我々が使っているスカウターを改造したのか?」

「はい、ベジータ王子達がしていたスカウターを修理する過程で、『改良』した物です。戦闘力で100万程まで計測する事が可能です」

 フリーザに変わってケースを受け取ったザーボンに、儂がそう説明する。

 

「100万? それは素晴らしい。早速試させてもらいましょう。ベジータさん達の今の戦闘力を測るついでにね。ザーボンさん、あなたも測りなさい」

 

 ケースから受け取ったスカウターを装着したフリーザは、性能を試すついでに儂等の戦闘力の計測を始めた。正確さを確かめるため、ザーボンにも同じように計測を命じる。

「ほう、カカロットが4千。なかなかの数字ですね。そしてあなたは……1万? 科学者にしては高いですね」

「フリーザ様、私のスカウターでも1万です。貴様、本当に科学者か?」

 

「お褒めに預かり光栄です。とはいえ、スラッグ一味の幹部には手も足も出せませんでしたが」

 やはり儂の戦闘力には驚かれたが、殊更深く調べられはしなかった。

「1万8千に2万7千、そして4万ですか。また戦闘力を上げたようですね、素晴らしいですよ、ベジータさん。それにこのスカウターの性能も。ザーボンさん、技術者に渡してこのスカウターを量産するよう言っておいてください」

 

「畏まりました」

 フリーザから受け取ったザーボンのスカウターは、ラディッツの戦闘力を計測した時に煙を噴いて爆発してしまっている。

 

 なお、儂が献上したスカウターは地球製スカウターの劣化品だ。正規品は2億まで計測できる。また、このスカウターには何も仕込んでいない。フリーザ達が儂等を怪しんだ時に、儂の献上品から証拠が出たら拙いからな。

 あくまでも、本命は儂の分身が仕掛けるコンピューターウィルスだ。

 

「そして、此方の品は若さを保つ妙薬でございます」

 もう一つの献上品が、儂が不死鳥の力を解析して作り出した長命薬だ。原作のナメック星編でドラゴンボールを使って不老不死を手に入れようとしたフリーザなら、興味を持つはずだ。

 

 それに、これはフリーザに渡しても儂等にとっては問題ない品だ。

 長命なフリーザや軍の幹部達の寿命が二割伸びても、今後の戦いには大きな影響はない。もし、フリーザがこの薬をコルド大王に飲ませたとしてもだ。

 長命薬は寿命を延ばし若さを保つだけの薬で、不死になるわけではなく、飲んだだけで強くなるわけでもないのだから。

 

「若さを保つ妙薬だと!?」

 もっとも、ザーボンの方が強く反応したが。美に強い拘りがある彼なら、当然の反応だろう。

「ほう、それは興味深いですね」

 一方、フリーザの反応は予想より控えめだ。

 

「それで、どれほどの効果があるのですか? まさか、それを飲んだだけで不老不死に成れるわけではないのでしょう?」

「ええ、流石に不老不死は不可能です。これは長命薬と言いまして、これを一粒服用した者の老化を二割遅くすることができます」

 

「なるほど。それを飲めば百年過ぎても八十年分しか年を取らないという訳ですね」

「左様です。その分寿命も二割伸ばす事が出来ます。また、滋養強壮の効果もあり、いわゆる『寿命を削る』程体力を消耗した時や、健康を損なった場合にも効果があります」

 例えが地球人よりも圧倒的に長命なフリーザ一族らしいが、その通りだ。

 

「とはいえ、儂は最近まで母星から出た事が無い地球人。この薬は地球人とサイヤ人、そしてナメック星人以外に試した事はありませんが」

「そう言えば、地球にはナメック星人も少数ながらいるのでしたね。まあ、それはこの際どうでもいいでしょう」

 

 ラディッツの報告書には、ナメック星人が地球に居る事も書いてもらった。理由は4号達が映っている映像がそこら中にあるからと言う、サイヤ人について隠さなかったのと同じだ。

 ただ、フリーザ達はドラゴンボールの存在をまだ知らないので、ナメック星人に対して関心はないようだ。

 

「作るには地球に生息する希少な生物の素材が必要なため、そうそう量産は出来ませんが」

 実際には大量生産が可能だ。一粒作るためにかかる金は高いが、それでもスポーツカーを購入するよりもずっと安くて済む。

 長命薬は一錠、やや高めな大衆車一台とだいたい同じ値段で、地球では販売されている。

 

「なるほど。ザーボンさん、これも我が軍の科学者に解析するよう言っておいてください。

 それとゲロさん、もしこの長命薬を他の宇宙人と取引する事に成ったら、我が軍を間に挟ませていただきますよ? よろしいですね?」

 

「もちろんです。我々地球人はつい最近まで自力で母星の外に出る事も出来なかった、未熟な種族です。フリーザ軍のお力を貸していただけるのなら、願ってもありません」

「良い返事ですね。では……価値のある手土産の礼にベジータさん、あなた達に良い物を見せて差し上げましょう」

 もったいぶった口調でそう言うと、フリーザは乗り物から降りた。

 

「良い物、と言いますと?」

「ええ、あなた方は知らなかったでしょうが、私は実は変身タイプの宇宙人でしてね。ザーボンさんのような一部の者にしか見せた事はなかったので……今回は特別ですよ!」

 

 そうフリーザが力んだ瞬間、サイヤ人が着たまま大猿化しても破れない戦闘服が内側から弾け飛んだ。そして、そのままフリーザの小柄だった肉体が大きく膨張する。

「こ、これはっ!」

「な、なんと言う事だ!」

 ベジータ王子と儂は慌ててそう叫びながら、ターレス達に目配せをした。

 

「っ! フリーザ様の体が見る見るうちにナッパを超える巨体に!?」

「す、すげえっ! 凄ぇよな、オッサン!?」

「お? おおっ! 驚き過ぎて愕然としちまったぜ!」

 そして目配せに気が付いたラディッツとターレス、ナッパは驚いた演技をする。

 

「ふぅ……久しぶりですよ。この姿になったのは。フフフ、随分驚いてくれたようですね」

 父であるコルド大王のような巨体に変身したフリーザは、儂等を見下ろして満足げに笑ってみせた。

「ベジータさん、私の戦闘力はどうです? そのスカウターが計測できる上限の100万ぐらいだと思いますが」

 

「100万! 100万です、フリーザ様!」

「さ、流石フリーザ様だ。宇宙の帝王に相応しい力だぜ」

「圧倒的だ。スラッグなど目ではない」

 

 口々にフリーザをほめたたえる儂等。もちろん、全て演技である。……フリーザが変身タイプの宇宙人である事は既に儂が話しているし、変身後の姿も半年前にチルドがしてみせた気を解放した時の姿とほぼ同じ。そして、100万程度の戦闘力では驚くに値しない。

 

 強いてあげるなら、フリーザ自ら変身タイプの宇宙人である事を明かし、実際に変身してみせた事には驚いたが。原作ではベジータ王子達に明かしていなかったのに何故? もしかして、ベジータ王子達の戦闘力が原作よりだいぶ高く、大猿に変身したら第一形態には勝てると彼らが考えるかもしれないと、警戒したからだろうか?

 

「100万ですか。私の勘もなかなかですね。しかし……まだこれからですよ!」

 だが、フリーザは儂等に次の変身を見せるつもりのようだ。第一形態から巨大化しただけの第二形態から、後頭部が伸び、異形へと変化していく。

 

「こ、これはっ! 先ほど以上のパワーじゃっ! おおっ、スカウターがっ!」

「フリーザ様、この姿はいったい!?」

「な、なんと言うみ……恐ろしい姿だ」

 驚いて見せる儂とベジータ王子、そしてザーボン。彼も第三形態は見た事が無かったらしい。……醜いと口走りかけたような気がするが。

 

「さて、この第三形態の戦闘力はだいたい200万だと思いますが、どうですか?」

「申し訳ありません。スカウターが故障してしまい計測不能です」

「おや、ゲロさんが作ったスカウターは爆発しないようですね。フッフッフ」

 

 第三形態に変身したフリーザは、得意げに笑ってみせた。

「ベジータさん、今の私は機嫌がいいのでトレーニングに付き合ってあげても構いませんよ?」

「御冗談を。今のフリーザ様相手では、俺達が大猿化してもサンドバッグの代わりにもなりません」

 

 そう慇懃に答えるベジータ王子だが、もちろんそれも演技だ。戦闘力200万は確かに大きな数字だが、フリーザの気を感知した儂等には分かっている。半年前のチルドと同じくらいだと。大猿化すれば、今のベジータ王子ならボコボコにできる。

 

「それもそうですね。では……はあっ!」

 後ろに伸びた後頭部が引っ込み、布も含めて体のサイズが縮み、フリーザは元の姿に戻った。

「そろそろ仕事に戻るとしましょう。ベジータさん達はしばらく基地で待機していてください。下がって構いませんよ。」

「はっ! 失礼いたします」

 

 運動場から基地に戻った儂等は、ほっと息を吐いた。

(ばれなかったようじゃな)

(ナッパ、冷や冷やさせてくれたな)

(す、済まねぇ、ベジータ。助かったぜ、ターレス。危ないところだった)

 

 そして小声で言葉を交わした後、ベジータ王子はいつもと同じ調子で儂に声をかけた。

「それでゲロ、他に用はあるか?」

「いや、特には思いつかんな」

 

 ウィルスは仕込み終わったのかと符丁で確認するベジータ王子に、儂は同じく符丁で完了したと返した。ミクロバンドを使って小さくなった儂の分身は、無事フリーザ軍のシステムにウィルスを感染させる事に成功。これで今後は情報を抜き取り放題だ。

 

 さらに、スパイロボットによって基地内にいる様々な宇宙人の細胞も手に入れた。サイヤ人やフリーザ一族の細胞のように抜きんでた特性は無いだろうが、貴重なサンプルだ。

 そして、任務を終えた分身はスパイロボットを回収した後瞬間移動で地球へ戻っている。これで、基地には儂が工作を行った痕跡は残らない。

 

 もしフリーザ達がコンピューターウィルスに気が付いて調査しても、儂が献上したスカウターは白なので疑われる事は無いだろう。フリーザ達が直感で儂等を疑い、証拠探しなどをせずに儂等が犯人だと決めつける可能性もあるので、盲信は出来無いが。

 

 もちろん、本体である儂も何もしなかったわけではない。フリーザの新しいサンプルとザーボンの細胞も手に入れている。目の前で変身してくれたので、その際飛んだ唾液の飛沫等、スパイロボットが収集する細胞には困らなかった。

 

「そうか。だが、フリーザ様から待機していろと言われたからな。追って命令があるまで、この基地から離れられん」

「それじゃあ、久しぶりにここの飯でも食っていくか」

 

 そして儂等は待機命令がすぐに解かれなかったため、フリーザ軍の基地に一泊二日する事となった。

 食事の後ターレスはラディッツの付き添いの元基地の兵士達と模擬戦を行う等トレーニングをし、儂は基地の技術者と話をして、実りある時間を過ごす事が出来た。

 

「ほう、あのドドリアがこの一年現場で働き詰めか。クックック、随分とダイエットに熱心じゃないか」

「それで、キュイ様も副官として付き合わされているそうです。なんでも、フリーザ様に命じられた直後のドドリア様とバッタリ遭遇したとかで」

 

「キュイ? ああ、あいつか。奴等には今度会ったら礼を言っておいてやるか」

「休暇で忙しい俺達の分まで働いてくれてありがとよ、ってか? お前も人が悪いな、ベジータ!」

 その過程で、ベジータ王子達が休暇の間、彼らの分もドドリアとキュイが働いている事が分かった。

 

 やはり、フリーザ軍の被害を減らすという意味では、ベジータ王子達三人を離反させるだけでは全体的には大きな意味はないようだ。

 ベジータチームの分の仕事をしていると言う事は、ドドリアとキュイが本来行うべきだった仕事を他の者がやっていると言う事で全く減っていないというわけでは無いだろうが……気休め程度じゃろうな。

 

 それと、ついでに火星におきている変化についても尋ねられたが、「スラッグ一味の惑星を改造する技術を応用して、火星を食料生産が可能な惑星に作り変えられないか試している。フリーザ様には成功してから報告するつもりだった」とベジータ王子が説明したら、あっさり納得してくれた。

 

 おそらく、彼らは儂等が行っているテラフォーミング事業を、「ちょっとした惑星の改造」程度にしか考えていないのだろう。誤解するように誘導して説明したのだが。

 

「フリーザ様からの命令です。ベジータ様達はとりあえず地球に戻り、スラッグ一味に奪われないよう守るようにとのことです」

 そして、次の日基地の責任者から伝えられたのはそんな命令だった。

 

「なんだそりゃ。ドドリアとキュイの野郎が張り切ったせいで、俺達の分の仕事がなくなったって事か? ……まあ、都合は良いけどよ」

 言葉の最後は小さく呟くように言うナッパ。どうやら、彼は他の星の侵略でも命じられるのかと考えていたようだ。

 

「おそらく、ゲロが渡した長命薬の価値が分かったのだろう。それで、地球の重要度が上がったんだ。あの星は、スラッグ一味が一度手を出した(事になっている)からな」

「じゃろうな。昨日一日で長命薬を解析した結果、我々以外の異星人にも効果があり、他の星の物質では代替できないという結果が出たのかもしれん」

 

 宇宙は広いが、不死鳥のような特殊で希少な生物はそうそういないだろうからな。

 

「では、さっそく地球に戻るか」

 そして宇宙船に乗って惑星フリーザNo.79を飛び立ち……すぐに瞬間移動で地球に戻った。ターレスはそのまま界王様の元に戻り、ベジータ王子達はトレーニングに、儂は研究室に向かおうとするとスカウターから連絡が入った。

 

『おい、爺!』

「バーダックか。タイムパトロールの初仕事はどう――いや、話せないんじゃったな」

 バーダックはタイムパトロールの初仕事に行っていたはずだが、その内容は儂には話せない事になっていた。他の歴史の未来に関わる事なので、儂は知らない方がいいかららしい。

 

『そんな事はどうでもいい! ギネが倒れた!』

「なんじゃと!? 仙豆は食べさせたのか!?」

『ああっ! だが、具合がよくなる様子は――うおっ!?』

「うおっ!?」

 

 スカウターでバーダックと会話をしている途中だが、瞬間移動で孫悟飯の庵に来た儂は、布団に寝かされているギネに近づき、診断を始めた。仙豆を食べても治らないとなると、病気の可能性が高いので治療には何の病気か特定する必要がある。

 

「爺さん? バーダックは騒いでるけど、あたしは平気だよ。ちょっと気分が悪くなって戻しただけだから」

「それを確かめるための診断じゃ。超能力と気の感知でざっとやるから、すぐに済む」

 ……検査をしている時間が無いほど衰弱していたら、超聖水を飲ませて体内の毒素を浄化しよう。

 

「ゲロのじっちゃん、母ちゃんは大丈夫なのか? 病気か?」

「儂は大丈夫だと思うのだがのう。どうじゃ、会長?」

 心配そうに寄り添っている悟空と、心配はしていてもそこまで深刻な事態ではないと考えていそうな孫悟飯にそれぞれ尋ねられる。

 

 結果は……。

「ああ、これはおめでたじゃな。いわゆる、つわりで軽く失神したのだろう」

 孫悟飯が正しかった。この歴史では、ラディッツと悟空に弟か妹が出来るようだ。

 




〇戦闘力推移

・ナッパ:6万9百 → 10万1千 (1万8千) あの世との交流試合での瀕死パワーアップも含めて、10万の大台に乗った。大猿に成れば101万。しかし、フリーザ軍ではキュイと互角の1万8千に抑えている。
・ラディッツ:9万4千 → 15万6600 (2万7千) クウラ機甲戦隊のドーレに迫るほど強くなった。大猿化すれば156万6千。フリーザ軍では変身後のザーボンに迫る2万7千に抑えている。

・ベジータ:15万5千 → 27万5千 (4万) 変身せず大猿化したのと同じ戦闘力になる技を習得したサイヤ人のプリンス。この度、(フリーザ軍の認識では)地球の支配者になった。そのフリーザ軍に対しては、戦闘力が4万であるように装っている。

・ターレス:3万2千 → 8万5千 (4千) 北の界王様の修行の結果、界王拳を習得したターレス。今のところ体に無理を掛けずに6倍まで使える。無理をすれば10倍まで使用可能。第一形態のフリーザなら実は倒せる。
 映画に出演した経験によって培われた演技力を発揮して、カカロット(戦闘力4千)のふりをした。

・ゲロ:10万7千 → 15万5千 (1万) 北の界王様への弟子入りを遠慮した、地球人の天才科学者。それもあってラディッツに抜かされてしまった。フリーザ軍では戦闘力を1万におさえた。



〇ドドリア&キュイ

 まだフリーザの元に帰れていない。ベジータチームが不在である分の仕事を命じられている。
 結果、ベジータチームが星の侵略を行っていなくても、フリーザ軍が出す被害の大きさは全体的に見ると微々たる量しか減っていない。




 佐藤東沙様、ダイ⑨様、Othuyeg様、佐藤浩様、にぼし蔵様、名無しの過負荷様、ゆーゆーX様、変わり者様、ノーデンス様、よんて様、大自在天様、コダマ様、クロスオーバー大好き侍様、クラスター・シャドウ様、kubiwatuki様、御船悠一様、KJA様、ヨシユキ様、ラプラス様、太陽のガリ茶様、Paradisaea様、-SIN-様、闇谷 紅様、GMⅡターボカスタム様、ゆーゆーX様、tahu様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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