ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
フリーザ軍の基地から帰ったら、ギネの妊娠が発覚した。
「妊娠二か月過ぎ。母子ともに安定している」
場所を孫悟飯の庵から我が社が経営する病院に移動して、最新の医療機器で検査した結果を伝える。するとギネは微笑んで腹を撫で、バーダックと孫悟飯はほっと息を吐いた。
「仙豆で治らないはずじゃな。しかし、何故気が付かなかったのかね?」
初産でもあるまいし。そう尋ねると、ギネは「あはは」と照れた様子で笑いながら答えた。
「いや~、あたしも歳だからさ、てっきりもう出来ないかなって」
「ギネ、人造人間に改造した時に老化はほぼ止まると説明しただろう。それに、元々サイヤ人は若い状態が長く維持される種族だ。そこまで地球人と同じように考えんようにな。
しかし、妊娠に気が付かないままよく子供が無事だったな。修行はしていたのじゃろう?」
「うん、普段通りね」
「儂も察したのはついさっき。ギネがつわりで倒れた時じゃったからな」
「俺はしばらく帰っていなかったからな。相手をするのがラディッツとカカロットだったのが幸いしたな」
今日まで普段通りに修行をしていたギネだが、模擬戦の相手が彼女と比べると実力に大きな差があるラディッツと悟空だった事が幸いしたようだ。
それに、考えてみればサイヤ人は地球の十倍の重力がかかる惑星ベジータで暮らしているのだから、胎児も地球人より丈夫なのかもしれない。
「お袋が妊娠……俺に新しく弟か妹が……お、おい、どっちなんだ!?」
「落ち着いてくれ、ラディッツ。赤ん坊の性別についてなら、いくら儂でもまだ分からん」
病院で合流したラディッツは、まだ動揺が激しいようだ。逆に悟空は落ち着いている。
「ゲロのじっちゃんでも分からねぇことがあるんだな」
「そりゃあ、まだ二か月少々では胎児が成長しきっていないからな。数か月先にならないと分からん」
「でもよ、ゲロのじっちゃんって未来予知も出来んだろ?」
「……予知は、儂にも制御できんからな」
原作知識を説明する際に使う定番のカモフラージュに、若干足を引っ張られた。
……そう言えば、バーダックにもカナッサ星のトウロの拳によって、予知能力が備わったと思ったがあれはどうなったのだろう? これこそ本人に制御できない予知能力なので、ここ一年以上発動していなくてもおかしくない。
「そっか、なら仕方ねぇな。じゃあさ、これから母ちゃんもチチの母ちゃんがスイとモウを産んだ時みたいに、腹が膨らむのか?」
「そうじゃよ。順調にいけば、次の夏の終わる前には生まれているじゃろう」
「思っていたより早いな」
「バーダック、お主は二児の父じゃろう」
「仕方ねぇだろう。ラディッツやカカロットの時は、他の星へ行ったり来たりしてたんだからよ」
当時の戦闘員のサイヤ人からしてみると、惑星ベジータから飛び立って侵略する惑星に着いた時に妻の妊娠を知り、帰った時には生まれていたという事も珍しくなかったのだろう。
「何、心配はいらんぞ、会長。育児は儂がしっかり手伝うし、バーダックやラディッツにも教えよう」
ここで頼りになるのが、頭を打つ前のわんぱく小僧だった悟空の世話もした孫悟飯だ。
「とはいっても、生まれたての赤ん坊を育てた事はないんじゃがな。悟空も、拾った時には乳離れしていた」
「その辺りはこの冊子を人数分渡しておこう。バーダック、ラディッツ、しっかり読むように」
孫悟飯は受け取ってさっそく中身を読み始めたが、バーダックとラディッツは冊子と言う言葉から連想するよりもだいぶ分厚いそれに怖気づいているようだ。
「……ガキの世話ってのは、こんなに面倒なもんなのか? アタックボールの説明書より分厚いぞ」
「バーダック、それはアタックボールが宇宙船にしては非常に扱いやすくできているだけじゃ」
「保育器を作った方がいいんじゃないのか? カカロットのように記憶が消える事もない」
「ラディッツ、赤ん坊は保育器にいれなくても、普通は意識を失う程強く頭を打たないように育てるもんじゃ」
それに、生まれてくる子供は純粋なサイヤ人のように幼少期に頭を強く打つと記憶や攻撃性を失う、と言う特性を持っていない可能性が高い。
儂が人造人間に改造したギネは、地球人を含めた様々な宇宙人の細胞を移植してある。その影響は子供にも及ぶため、バーダックとの間に生まれても純粋なサイヤ人とはやや異なった子供になるはずだ。
……父親のバーダックがスーパーサイヤ人に覚醒済なので、もしかしたら生まれてくる子も孫悟天やトランクスのように簡単にスーパーサイヤ人に目覚めるかもしれない。
「あたしは、この子を保育器に入れずに育てたい。サンがしているみたいに。良いだろ、バーダック?」
「産むのはお前だからな。お前の好きにしろ、文句は言わねぇ」
そして何よりギネの希望によって、生まれる子は保育器を使わず育てる事になった。
ギネに返事をする時にはぶっきらぼうな態度だったバーダックだが、彼は儂が渡した冊子をしっかり読んで、予習している。
「精神と時の部屋が使えればよかったんだが……そう言えば、改装はまだ終わらないのか?」
「親父、流石に育児の練習に使うのはどうかと思うぞ」
結果はまだ微妙だが、まあ育児に協力する姿勢を見せて努力をしているのは良い事だ。ラディッツも同様である。
「ところでオラはやらなくていいんか?」
「悟空、お前は時々手伝うぐらいで大丈夫じゃ。バーダック、自信が無いなら牛魔王や鶴仙人様に教えてもらってきたらどうじゃ? ギネもサンや鶴仙人様に改めて相談しているようじゃし」
「っ! そうか、奴等は地球人で育児の経験があるんだったな! そうと決まれば――」
「ちゃんと約束を取り付けるんじゃぞ」
こうしてバーダック達は修行の合間に育児の修行もし、第三子の誕生に備えるのだった。
それと一応バーダックの勤務先の上司である時の界王神様に連絡したが、『まあ、そっちの歴史の状況ならそう言う事もあるわよね』と言いつつ、『おめでとう』と祝福してくれた。
『原作』に存在しない人物が生まれる事について、やはり彼女は何か言うつもりはないそうだ。
『何か言うなら、ヨン・ゴーのように本来の歴史では存在しない、もしくは、サンのように死んでいるはずの人間が人造人間になって、悟空の義理の弟妹を産んでいる時点で言っているわよ。もちろん、本来あり得る歴史を維持するためには良くないんだろうけど……その辺りはどうしようもないじゃない?』
と言う事のようだ。まあ、トーマとセリパのように『原作』では死んでいるはずの者達が生き返っているので、今後このような事は増える一方じゃろうし。
『あなたの歴史に対する私達、つまりタイムパトロールの今後の方針を説明しておくけど、歴史が分岐して新しい時の指輪が増えるのは止めないわ。どの道避けられない事だから』
「確かに、儂が他の歴史の儂ではない時点でいつかは決定的に分離するのは避けられん」
『だから、修正はしないわ。歴史改変者が起こそうとしている改変以外はね。あなたの歴史が分離するのは避けられないからって、トワやドミグラを野放しにしてキリを好き勝手に集めさせていい事にはならないもの』
「つまり、逆に言うと歴史改変者以外が起こす改変、今回のバーダックとギネに第三子が生まれる等、この歴史の住人の行動の結果、起きる改変は修正しないと言う事じゃな。今まで通り」
『そう、今まで通り。……これから本来の歴史では生きているはずのなかった人達の子供が続々生まれるだろうし、何なら悟空君の甥っ子や姪っ子、トランクスの弟なんかも生まれるかもしれないし』
少なくとも、ベジータ王が企むサイヤ人再興計画が進めば進む程、歴史の分岐は避けられないものになるじゃろうしな。
そうなると、いっそ歴史の分岐を早めた方がいい気もするが、時の界王神とタイムパトロールが進んで改変を起こす事は出来ないのだろう。
正直、儂も「この方が効率的だから」と言う以外の理由もないのに、原作で死なないはずの人物の命を奪うような真似はしたくはない。国王様とか、天下一武道大会のリポーター、そしてブリーフ夫妻等。
それに、歴史が分岐したからと言って歴史改変者の活動が沈静化する保証もない。この歴史が『原作』から分岐したとしても、それはこの歴史独自の未来が出来るだけ。その未来が変化するような改変を歴史改変者が起こせば、キリを発生させる事が出来るのだから。
つまり、『今まで通り』に研究開発を行い、トレーニングを積み、備えるのが常道と言う事だ。
「しかし、その方針は儂よりも先にバーダックに説明しておくべきだったのでは? 儂は外部協力者だが、彼はタイムパトロール隊員なのじゃし」
『あはは~……ついうっかり忘れてたのよね』
そして、子供が生まれるのに近い出来事……原作とは番号以外すべて異なる人造人間13号が春になる前に完成し、目覚めた。
「おはようございます、ドクター・ゲロ様……おい、そんなに驚くな、冗談だ」
シルバー大佐が開口一番様付けで儂を呼んだので、顎が外れるほど驚かされた。
「やれやれ、脳改造に失敗したかと思ったわい。具合はどうじゃ、シルバー大佐?」
「問題ないと思うが……やっぱり生えたか」
シルバー大佐は調子を確かめるように手の指を何度か握っては広げた後、腰から生えた猿の尻尾に気が付いた。
「シルバー大佐、事前の説明通りに君にはサイヤ人の細胞を多く移植している。特に、脳にはベジータ王子やコレンのエリートサイヤ人の細胞を多めに。満月を見れば大猿に変身するので、目薬をするか、早期に体を変化させないまま戦闘力を十倍にする訓練を終えなければならん。
まあ、大猿になっても高い確率で理性を保てるだろうが……」
「満月の度に全裸になるのは御免だな。それで、確認するが改造の副作用は他に何かあるのか?」
「サイヤ人の細胞を多めに移植したので、闘争本能が旺盛になっているはずだ。戦う機会があると胸が高鳴り、強い相手を前にすると戦いたくて体が疼くようになるだろう」
「……普通の軍隊の佐官としては、致命的な副作用なんじゃないか?」
通常の軍隊なら、大佐を含めた佐官は普通前線に出ず作戦を指揮する立場だ。そんな戦闘意欲を抑えられず前線に突撃していくようでは、指揮どころではなくなってしまう。
「別にいいじゃろう。レッドリボン軍も、そして宇宙軍も普通の軍ではない」
しかし、大佐や将軍が直接戦う事も珍しくないレッドリボン軍では、戦車より前に出る大佐がいても問題ないはずだ。
「確かにそうだな。むしろ、ここまで強くなったのに兵の後ろで指揮を執っているだけでは、レッド将軍に降格させられてしまうな」
「そのレッド将軍から、君の状態が良好ならテレビ番組の出演や他の人造人間達とエキシビションマッチをするよう命令が出ておるぞ」
「何だと!? 聞いていないぞ、そんな事!」
「君が眠っている間に決まった事じゃから、それはそうじゃろうな」
「レッド将軍はシルバー大佐に、広告塔の役割もして欲しいみたいね。映画やドラマに特別出演したり、軍の入隊希望者向けの広報ビデオの司会をする事になるかもしれないから、覚悟した方がいいかもしれないわよ?
あ、これは着替えね」
ランファンが持ってきた着替えを受け取りながら、シルバー大佐は顔を顰めた。
「ボクサー時代にカメラを向けられた事はあるが、俺の柄じゃない。ランファン、あんたじゃダメなのか? お前も一応レッドリボン軍時代から所属している人造人間だろ」
「あたし? 残念でした。あたしはマロンと一緒にもう宇宙軍の広報活動に参加してるわ。
そんなに気にしなくても大丈夫よ、来年には新しい人造人間が増えるから。皆の注目もそっちに移るわ」
「そういうもんか。俺としては、広報活動より衛星の設置やメンテナンスの仕事に興味があるんだがな。せっかく宇宙軍所属になったんだ、宇宙から地球や星を見てみたい」
「そっちも出来るわよ。ねえ、ドクター?」
「もちろんじゃ。何なら、火星のテラフォーミングを手伝ってくれると特に助かる。まだ普通の人間は宇宙服を着ないと出歩けない状態なのじゃよ」
そんなシルバー大佐の力は、戦闘力に換算して100万。11号のトーマや12号のセリパと比べるとだいぶ落ちるが、目覚めたばかりなのとトーマとセリパは儂が改造する前から強かったという要因がある。
改造前のシルバー大佐の戦闘力は700未満だったので、それが一千倍以上のパワーアップをしたのだから、十分な成果だろう。
なお、原作劇場版の13号と違って、他の人造人間のパーツを吸収してパワーアップする設計にはなっていない。
そして、次の14号はシルバー大佐に続いて人造人間の改造手術を受ける事に同意していたバイオレット大佐に決定した。
「ブルー大佐とパスタとボンゴにも、何なら譲ろうかって声をかけたんだけど……」
「なに、そう不安がる事はない。今のところ、失敗例は一つもない。成功率百パーセントの改造手術じゃ」
不安そうなバイオレット大佐に、儂は出来るだけ明るい口調で話しかけた。大きな手術となれば、患者が不安になるのは当然じゃからな。脳改造までするのだし。
「とはいえ、今すぐに改造手術を始めるわけではない。歴史改変者のトワの細胞の解析はまだかかりそうだが、フリーザ軍の宇宙人達の解析がもうしばらくで完了しそうなのだ。その解析結果が出てから、改造プランを練りたい」
変身タイプであるザーボンの細胞を移植する事で、スーパーサイヤ人や他の変身がよりスムーズに、自分の意思で行えるようになるかもしれん。
「まあ、尻尾や角が生える位なら構わないけれど……」
「肌が水色になるかもしれん」
「出来るだけ抑えて。まだそこまで心の準備は出来てないから」
と言う事で、肌が変色しない程度に抑える方針となった。
そして春になる頃には、シルバー大佐の出演した王立国防軍入隊希望者向けの映像が完成し、ギネは四身の拳を習得してサンが妊娠中にしていたように分身で訓練をする方法で修行をするようになった。
現世ではまだバーダック以外のスーパーサイヤ人に目覚める者は出ていない。トーマやセリパ、ベジータ王子も含めてだ。
スーパーサイヤ人に成るためにはS細胞を増やす必要があり、そのためにはある程度の強さと穏やかな精神が必要だ。彼らの強さは十分な域に達している。穏やかな精神も、個人ごとに差はあるが十分だろう。
それなのにバーダックに続くスーパーサイヤ人が現れないと言う事は、やはりきっかけの問題だろう。
ベジータ王子から見ると、バーダックと言う大きな目標がある。しかし、目標までの距離が遠すぎて追い付けないでいる自分に対していまいち怒りが湧かないのだろう。
別の歴史の自分達と相対した時は、まだ穏やかな精神が足りなかったのだろうし。
トーマやセリパについても、今のところ大きな怒りを覚えるような出来事はない。
そうなると、第六宇宙のサイヤ人であるキャベがカリフラに教えた、「背中のぞわぞわ」と言う感覚からの覚醒を試すべきだろうが、今のところ上手く行っていない。
もしかして、トーマとセリパに他の宇宙人の細胞を移植したのが妨げになっているのだろうか? いや、今のところそうした検査結果は出ていない。結論を急ぐべきではないだろう。
それと、フリーザ軍に対する偽装工作は上手く行っている。コンピューターウィルスに感染させた事で、手に入るようになったフリーザ軍の情報によると、今フリーザはコルド大王の元に向かっているようだ。
儂等の事を疑っている様子はない。この分なら、後数年は時間があるはずだ。
焦らず事を進めよう。
ギネの腹がやや膨らみ、バーダックとラディッツが牛魔王や鶴仙人からオムツの替え方等を習い、その様子を見て思わず「似合わねぇ」と呟いたナッパが育児修行に強制参加させられている頃。
桃白白は人里から離れた荒野でベジータ王子と対峙していた。
「待っていたぜ。貴様が界王拳を習得して戻ってくる、この時をな」
「……ふむ?」
静かに戦意を漲らせるベジータ王子に対して、桃白白は構えを取りつつ内心では大いに動揺していた。
(何故、こいつは私に長年のライバルのような態度で決闘を申し込んできたのだ? 次の映画の主役の座を巡って勝負、と言う訳でもないだろうに)
北の界王様の下での修行を終え、やはり元気玉は習得できなかったが界王拳は使いこなせるようになった桃白白は、ターレス達と共に地球へ戻った。そして、とりあえずGCコーポレーションに戻り、親しい者達に挨拶して回っていた。そこに現れたのがベジータ王子だ。
桃白白とベジータ王子の接点は多くない。彼が地球に移住してから、同じGCGの訓練施設を使っているので顔は何度も合わせているが、長く話した事はない。
ベジータ王子の方が桃白白よりだいぶ強く、実力に差があるため一緒にトレーニングを積む、と言う事も無かった。
去年のあの世との交流試合で行われたエビフリャー相手の試合で、助っ人に入ってもらったラディッツの方がまだ親しい。
そんなベジータ王子が、桃白白に勝負を申し込んできたのだ。
「一つ聞きたいのだが、勝負の相手に何故私を選んだのだ? ターレスやトーマではなく」
桃白白にはベジータ王子に勝負を挑まれる理由がさっぱりわからないため、どうにも落ち着かない。恨まれる覚えはないし、そもそもベジータ王子にもそんな様子はない。
桃白白も武道家の端くれ。強い相手に勝負を挑む気持ちは理解できる。だが、彼とベジータ王子ではベジータ王子の方が強い。
「フンッ、決まっているだろう。貴様に勝って、あの女を見返すためだ」
「あの女……? まさか去年共演した美人女優のジェイミーの事か?」
「誰だ、その女は!? ブルマの事だ、ブルマの!」
思わずそう怒鳴ったベジータ王子は、すぐ我を取り戻すと誤魔化すように鼻を鳴らした。
「ブルマを見返す? ……なるほど」
去年、父であるベジータ王の手紙に書いてあった内容から誤解したベジータ王子が、ブルマに媚を売るなと言ったところ、激怒した彼女に手ひどく罵られた。
その後、しばらく「ナッパの方が魅力的」と言われたショックで呆然としていたベジータ王子だが、次の日には立ち直った。
立ち直ったが、プライドは傷ついたままだ。何としてもブルマを見返さなければ気が済まない。このままでは自分が振られたようではないか。
そして、ベジータ王子はブルマを見返す方法を考えた末に、「親父やナッパよりも素敵になり、ブルマに認めさせる」と言う答えに辿り着いた。
しかし、何をもってブルマが自分より親父やナッパの方が素敵と評したのかが分からなかった。弱肉強食のサイヤ人に生まれつき、フリーザ軍で殺伐とした青春を過ごしてきた彼にとって、女心は難解過ぎた。
ナッパを見習えばいいのかと思ったが、それも違う気がする。
あの時点では、ブルマと自分達は会ってから一日と経っていなかった。話したのもわずかな時間だ。その間、ナッパのした事が彼女にとって魅力的に映ったとは考えにくい。
そこでベジータ王子は思い出した。ブルマが自分と親父を比べて言った言葉を。
(そうか! ブルマは外見の事を言っていたのか! ならナッパと親父の共通点は……髭か)
他にも自分より背が高いという共通点もあったが、それは敢えて黙殺した。そして精神と時の部屋の修行で一時期髭を伸ばそうとしてみたが、途中でやめた。
ナッパやラディッツ、8号にまで「似合わない」と言われたためだ。ベジータ自身も内心ではそう思っていたため、諦めて髭は剃った。
だが、あの世との交流戦で父であるベジータ王と再会し、試合をして今の父にあって自分に無い物に気が付いた。精神的な余裕と器の大きさだ。
……外見とは全く関係ない。
(こうなったら、俺は俺の方法でブルマを見返してやる! まずは、あいつがファンだという桃白白を倒す事で、自信を手に入れる!)
精神と時の部屋に入っている間の二年分も含めて、長い間悩んだベジータの思いは、こうして桃白白に向けられることになったのだ。
「つまり、私は当て馬だな」
「どういうことだ?」
「しかも、自覚が無いのか……重症だな。そんなにブルマの事が気になるのか?」
「馬鹿な事を言うな! 俺はブルマに俺を認めさせて見返してやりたいだけだ!」
「気にしているじゃないか。言っておくが……いや、言っても無駄か」
そんなに長い間「見返してやりたい」と思い続けるのは、かなりの関心を抱いているとしか思えない。そう言いかけた桃白白だが、今のベジータ王子には何を言っても意地になって否定するだけだと察して止めた。
「フン、言っておくが貴様を倒すだけなら簡単だったんだ。以前の貴様は、ナッパにも遠く及ばなかったからな。だが、そんな貴様に勝ってもブルマが俺を認めるとは思えなかった。
だから嬉しかったぜ。貴様があのネイルとかいうナメック星人が使っていたのと同じ技、界王拳を習得するために修行に行った時はな」
「つまり、私がお前と互角に戦える力を手に入れるまで待っていたと。随分拗らせているな」
もう桃白白にはベジータ王子が、好きな女の子に振り向いてもらう為に必死で頑張る少年にしか見えなかった。まあ、その少年が今年二十歳になる青年で、しかも激しい戦意を自分に向けて来ているため微笑ましいとまでは思わなかったが。
「いいだろう。だが、私もただで負けてやるつもりはない。ドーンと高い壁になって若人の前に立ちはだかるのも、年長者の務めだからな。ふんっ!」
気合と共に気を解放する桃白白。その戦闘力は去年まで2万3千だったが、北の界王の修行を受けて5万にまで上昇している。
ギニュー特戦隊隊員に匹敵する強さだが、まだベジータ王子の五分の一以下だ。
「界王拳、五倍!」
そのため、桃白白は自身が大きな負担を掛けず使える最大の倍率の界王拳を発動した。赤いオーラに包まれ、気が爆発的に高まる。
「いいぞっ、それでこそ倒す意味がある!」
「もう勝ったつもりか!? 足をすくわれても知らんぞ!」
そして、お互いに声を上げながら激しくぶつかり合う二人。高速の拳と蹴りの応酬の結果、後ろに下がったのは桃白白の方だった。
「はぁっ! 六倍!」
だが、更に界王拳の倍率を上げてベジータから距離を取るために上空に向かって飛ぶ。
「逃がすか!」
すかさず追うベジータ王子。だが、それは桃白白の罠だった。
「太陽拳!」
なんと、桃白白は上に向かって飛びながら太陽拳で頭ではなく足を光らせた。
「っ! 小賢しい真似を!」
桃白白を下から追いかけていたベジータ王子は、彼の足から放たれた閃光を見てしまい、とっさに目を腕で覆う。
「連続どどん波!」
そんな彼に向かって連射されたどどん波の雨が降り注ぐ。視界を封じられたまま、咄嗟に回避しようとするベジータ王子だが、全ては避け切れず爆発に飲み込まれる。
「止めだ!」
だが、桃白白は油断せず勝負を決めにかかる。実は、彼が体に負担を掛けずに使える界王拳は四倍までで、五倍の段階で僅かだが無理がかかっている。六倍となると、体力の消費も激しい。真剣勝負ならともかく、不器用な恋の八つ当たりによる決闘でこれ以上の無茶はしたくない。
目標を追尾するスーパーどどん波を放ち、確実に当てる。
「ビッグバンアタック!」
だが、その前に爆発に飲み込まれたベジータ王子が上空の桃白白に向かってビッグバンアタックを放った。
「っ!? スーパーどどん波!」
直撃すれば徒では済まないと、ベジータ王子を狙うはずだった必殺技で慌てて迎撃する。だが、スーパーどどん波と衝突したビッグバンアタックはあっさりと爆発して消滅した。
謀られた! そう桃白白が直感した時には既にベジータ王子の接近を許していた。
「くらえっ!」
大振りの蹴りを受けて叩き落された桃白白は、そのまま地面に激突する。ベジータ王子は止めに気功波を放とうと掌を向けて……息を吐いて気を静めた。
「おいっ! 俺の勝ちで文句はないな!?」
「……ない。だが、次に決闘を申し込むときは立会人も用意しておけ。まったく」
よろりと地面から身を起こした桃白白は、服についた埃を叩いて落としながら負けを認めた。
「私の足から太陽拳を小賢しいと言った割に、お前も随分小賢しい真似が上手くなったようだな」
視覚を取り戻していなかったベジータは、見た目は大きくて派手だが実は気があまり込められていないビッグバンアタックを放ち、桃白白を動揺させて彼が溜めていたスーパーどどん波を使わせる囮にしたのだ。
その隙に気で桃白白の位置を探り、必殺技を放った直後で動きが鈍った彼に大振りの一撃をくらわせたのだ。
「気の操作は貴様等地球人の専売特許ではないと言う事だ」
まだ視力が戻っていないらしいベジータ王子は顔を顰めたまま地面に降りてそう言うと、しばらく黙り込んだ。
「なるほど。会長によると演技力もあるようだし、次の映画に出てみるか? きっとファンも増えるぞ」
「役者の真似事をする気はない。それより自力で動けるんだろうな?」
冷静になって桃白白に決闘を挑んだのは八つ当たりに等しかったと気が付いて、罪悪感を覚えたのか彼の体調を気にするベジータ王子。
「まあな。貴様が止めの一撃を放っていたらしばらく動けなかったかもしれんが。それで、ブルマを見返す事は出来そうか?」
一方、桃白白はきっかけこそ下らない理由だったが、勝負では得る物があったので悪い気はしていなかった。界王拳を使えば格上の相手とも十分戦えることが分かったし、実戦に近い形での勝負だったので界王拳でかかる負担がどれほど響くのか知る事が出来た。
後、若者をからかうのも年長者の楽しみの一つだ。
「貴様の知った事か。動けるのなら、俺はもう行くぞ」
そう言うと、ベジータ王子は何処かへ飛び去って行った。
「ふ~む、奴にとってブルマは私以上の強敵のようだな」
その様子を見て、桃白白はこれは長期戦になるなと髭を扱いたのだった。
息子達に軍の実権を渡し、リゾート開発された星で豪勢な隠居生活を過ごしているコルド大王の元に、珍しい客人が来ていた。
「久しぶりだね、パパ。元気そうで何よりだよ」
「フフ、確かにこうして直接顔を会わせるのはいつ以来だろうな、フリーザ」
コルド大王の宮殿は、久しぶりの親子の対面によって和やかな……しかしある種の緊張感が漂っていた。再会した当人達は普段通りだが、仕える使用人達が失態を犯せば命がないと普段以上に緊張しているためだろう。
「それで、今日はどうした? 儂の顔を見るだけなら通信でも十分なはず。忙しいお前がこうして直接来たのだ、何か重要な用件があるのだろう?」
「話が早くて助かるよ、パパ。実は、今日は親孝行に来たのさ」
「親孝行だと?」
「ああ、ちょっと珍しい品が手に入ってね。ザーボンさん」
フリーザの後ろに控えていたザーボンは、携えていたケースを開くと恭しくコルド大王に差し出した。
「なんだ、これは? 薬のようだが?」
ケースに入っていたのは、一錠のカプセルだった。困惑する父に、フリーザは微笑みながら答えた。
「若返りの妙薬、長命薬ですよ」
「何? 若返りの妙薬だと!?」
コルド大王の反応は大きかった。長命なフリーザ一族の中でも、彼は老人の域に入っている。まだ戦闘力に衰えは無いが、若い時と比べると歳をとった事を意識せざるを得ない状態だ。
それだけにフリーザの言葉は魅力的に響いた。
「ほ、本当にこの薬を飲めば若返る事が出来るのか?」
「もちろんだよ、パパ。ある辺境の惑星で発見された希少な物質を使って、その星の科学者が発明した妙薬でね、効果は我が軍の科学者のお墨付き。飲むだけで、今の年齢の二割若返る事が出来るそうだよ」
長命薬は不死鳥の細胞から作り出した薬だが、ゲロはフリーザ軍の科学者達に対して、「地球の奥地にある、一年をかけてもごくわずかな量しか取れない湧水とそこにしか生息していない微生物が原材料」だと説明していた。正直に真実を話したら、不死鳥を寄越すよう要求されかねないと考えたからだ。
「この薬を飲むだけでいいのか?」
ザーボンから用法を聞いたコルド大王は、さっそく長命薬を口にした。ゴクリと飲み干す。
「どうです、パパ?」
「ふむ……心なしか体が軽くなったような気がするが……?」
「カプセルが溶けて薬が吸収されるまで時間がかかるのでは?」
「ふむ、そうかもしれんな。何はともあれ、久しぶりの再会だ。今夜は宴にするとしよう。泊まっていくだろう、フリーザ?」
「ええ、積もる話もあるからね」
そして、次の日の朝にコルド大王は長命薬の絶大な効果に驚かされる事になる。
「ははははっ! フリーザ、あの薬はまさしく若返りの妙薬だったようだな! 衰えていた儂の体が若返ったぞ!」
そう笑うコルド大王の外見は、昨日薬を飲む前と変わらないように見える。しかし、彼自身は体に活力が漲っていた。
「五感は冴えわたり、体力も回復した! いや、それよりも疲労からの回復力を取り戻したのが分かる! 全盛期とは言わんが、中年の頃に戻ったようだ!」
「パパに喜んでもらえて、私も嬉しいですよ。パパにはいつまでも元気でいて欲しいからね」
「ふはははっ、そうかそうか! 儂はお前のような孝行者で優れた後継者に恵まれて幸せ者だな!
クックック、今ならお前の軍に再就職してもやっていけそうだ」
「それは助かるけど、パパを部下扱いはできないよ。ザーボンさんやギニューさんも気を遣うだろうからね」
「それもそうだな。ははは、だが儂の助けが必要ならすぐ言うのだぞ!」
「もちろんだよ。頼りにしているよ、パパ」
口うるさい親の職場復帰、それも部下としてだなんてとんでもない。そんな本音を隠し通したまま、フリーザ達はコルド大王が隠居生活を送る星を後にした。
その帰りの宇宙船の中で、残り九錠になった長命薬を眺めて、フリーザは微笑んだ。
「さて、パパのお陰で私の一族にもこの薬の効果があると分かりました。効きすぎてパパが少し面倒になったかもしれませんが、まあ、いいでしょう」
そして、長命薬を一錠手に取り、ゴクリと飲み下す。
「これで、地球とあのゲロと言う科学者の価値が上がりましたね」
〇根菜一家の第三子
アンケートによって決定しようと思います。
男の子の場合の名前はルターバ。名前の由来はルタバガ。原産地はスウェーデンで、北欧からロシアで栽培されているそうです。カブに似た根菜ですが、カブではなくアブラナ科に属します。日本では明治事態初期に北海道に導入されたが、在来種のカブの方を好む人が大多数だったため、普及しなかったそうです。
また、日本では西洋カブとも呼ばれています。
女の子の場合の名前はラニ。名前の由来はネギの仲間のニラです。
〇キャラクターの年齢
・現在、エイジ752年。原作では決勝戦で天津飯に運悪く負けた天下一武道会やピッコロ大魔王編の一年前。原作コミックでは空白期。アニメでは750年から752年の間に、悟空が金閣銀閣を退治し、魔界の門を通ってシュラと戦った。
・20歳
ベジータ王子、ラディッツ、ヤムチャ
・19歳
タイツ 天津飯
・17歳
ターレス、ラズリ、ラピス
・16歳
クリリン、サタン、ジャガー
・15歳
悟空、チチ、ブルマ
・14歳
チャオズ
・5歳
ユーリン
・3歳
スイ、モウ
〇戦闘力推移
桃白白:2万3千 → 5万 北の界王様に弟子入りした事で界王拳を習得。さらにギニュー特戦隊員に匹敵する実力に至っている。体に負担を掛けずに使える界王拳は四倍までで。だが、六倍までならそう大きな負担を掛けずに行う事が出来る。
〇人造人間13号シルバー大佐
ゲロの改造手術を受けて人造人間となったシルバー大佐。外見の変化はサイヤ人と同じ尻尾が生えただけなので、見ただけではサイヤ人と地球人のハーフに見える。
生体細胞の永久エネルギー炉搭載、ナメック星人の再生力や優れた五感、フリーザ一族の宇宙空間でも活動可能な生態と高い生命力、ヤードラット星人の超能力等、様々な素質を受け継いでいるが、その中でもサイヤ人の細胞を多く移植されている。
脳にベジータやコレンなどの王族やエリートのサイヤ人の細胞を移植されているため、大猿化しても理性を保つことができる。
戦闘力は100万で、改造前の665からは一千倍以上のパワーアップ。大猿化すれば1000万。
SSデッドリィボンバーはもちろん使えない。
〇コルド大王
フリーザとクウラの父親。この作品では歳でフリーザとクウラにそれぞれ軍を継がせた後、リゾート開発した星に建てた宮殿で隠居している、と言う設定。
原作では引退後も未来トランクスに対する命乞いでは「惑星を七つやろう」と言う言葉がすぐ出てくるぐらいの資産を持っていたと思われる。実力はフリーザの最終形態と同じくらい。
原作コミックではメカフリーザとなった息子と地球に襲来し、未来トランクスに親子ともどもあっさり倒されてしまった。
また、アニメでは地獄に落ちた後息子とセルと協力して反乱を起こすが、やはりパイクーハンに倒されている。
ゲームでは地球に襲来した後、通りがかったアックマンのアクマイト光線で倒されるIF展開がある。
フリーザがやられたと聞くと捜索しに行くぐらいには息子に対して情があったが、その息子を細切れにして吹き飛ばした未来トランクスに「息子にならないか」と勧誘する等、切り替えの早さもある。
また、フリーザに(おそらくクウラにも)魔人ブウや破壊神ビルスには手を出すなと言い聞かせるなど、知識もある。ビルスと面識があるかは不明。
息子達から彼に対する情も薄かったようで、フリーザは劇場版『復活のF』で蘇った後、口煩かったという理由で「パパは生き返さなくていい」と言って簡単に見限られた。
また、クウラにはドラゴンボールヒーローズのコミック版の監獄惑星編で、脱出のカギになるドラゴンボールを渡したものの、止めを刺されてしまった。
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