ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
フリーザにとってゲロは、ラディッツの報告書を読んだ時はただの地球人の爺に過ぎなかった。スカウターの修理やアタックボールの改造程度は、フリーザ軍の技術者なら誰でもできる。
報告書によると戦闘力も高いそうだから、前線に出られる技術者と言う珍しい存在のようだが、それだけと言えばそれだけだ。
しかし、数か月前に彼が献上した改造スカウターと長命薬を見た時からフリーザのゲロに対する評価は大きく変わった。
「なんですって? スカウターも長命薬も、解析結果が『分からない』とはどういうことです?」
フリーザは献上品の解析を命じた科学者が、数時間後に齎した報告を思わず聞き返した。
「なかなかユーモアがありますね。ですが、私は冗談を聞いている気分ではないんですよ」
「も、申し訳ありません! ですが、解析した結果……我々では『分からない』としか」
報告に来た時から小さくなっていたフリーザ軍の科学者は、更に縮こまって平伏した。フリーザが脅すまでもなく、命の危機を覚えて震え上がっている様子だ。
「待て、スカウターの方は整備マニュアルもついていたはずだぞ。それを読んでも分からないのか?」
「は、はいっ! ザーボン様の言う通りです! 整備マニュアルを読んでも、外見も重さも現在我が軍に配備されているスカウターとほぼ変わらないまま、何故あれほど高性能になったのか分からないのです!」
ザーボンの言葉に血を吐くような声で答える科学者。その様子にフリーザは驚いた。科学者や技術者にも、兵士と同じく優秀か否かの差はあると分かっているつもりだったが、そこまで圧倒的な差がある物だとは思わなかったからだ。
「長命薬の方も、同様ですか?」
「申し訳ありません。ご命令通り、十錠の内一つを分析し、成分を解析しましたが……ほとんどが未知の物質としか」
フリーザは科学者の返答に深い溜息を吐いた。科学者は死を覚悟したが、フリーザはスラッグ程短気ではない。
「まだ基地内にゲロがいるはずです。本人から聞き出してきなさい」
「は、はいっ! 直ちにっ!」
敬礼して素早くフリーザの前から退出する科学者を見送った後、フリーザはザーボンにスカウターと長命薬のデータをフリーザ軍の中枢にいる科学者達の元に送り、解析させるよう命じた。
これでゲロがでたらめを言っていたとしても、もしくはこの基地の科学者が無能なだけだったとしても、数時間後には答えが出るだろう。
そう思っていた。
「スカウターの方は何とか理解できました。同じ性能のものを作る事も可能です。ですが、長命薬の方は……」
しかし、数時間後に戻って来た科学者の報告はフリーザの予想を裏切るものだった。
「本人から説明を聞いてもですか?」
「は、はいっ、申し訳ありません!」
フリーザはやや驚きながら、ザーボンに目配せをした。
「他の科学者も、送ったデータに対してまだ確かな回答をしておりません。スカウターに関しては、『あと三日、猶予を頂きたい』と。長命薬のデータに関しては、皆沈黙しています」
「……どうやら、ゲロがでたらめを言っている訳でも、あなたが無能な訳でもないようですね」
ゲロは科学者として、フリーザ軍の科学者を超えた存在のようだ。フリーザはようやくそれを認めた。
実際、この時ゲロはフリーザ軍の科学者に、スカウターのどこをどのように、何を使って改造したのか事細かに説明していた。長命薬ですら、原材料が不死鳥の細胞ではなく湧水に含まれる微生物である事以外は偽っていない。製法も正直に説明している。
それは出鱈目を教えて後でばれる事を恐れたからだ。しかし、ゲロが考えているよりも彼とフリーザ軍の科学者達との差は大きかったのだ。
ゲロは、以前の地球よりも高い科学力を持つフリーザ軍の科学技術を高く評価していた。スカウターや戦闘服、アタックボールなどの様々な兵器を盗み勝手に解析して自身の発明品の参考にして来たのだから、当然だ。
ただ、フリーザ軍はあくまでも軍、それも戦力を銃やミサイルではなく生身の兵士達の身体能力に頼った、荒くれ者の集団である事を失念していた。
そして何より……天才とは滅多にいないから天才なのだ。同世代に何人も天才がいる地球が特異なだけで。
「あなたが中心になってスカウターの量産体制を整えなさい」
「わ、私でよろしいのですか?」
「あなたしかゲロから説明を聞いていませんからね。手に余ると思ったら、他の科学者にあなたが受けた説明を伝えればいいでしょう」
「身に余る光栄です! 早速取り掛かります!」
「頼みましたよ。ザーボンさん、スカウターと長命薬、両方のデータをキコノさんに送り解析を依頼しなさい」
ザーボンはここ数年聞かなかった名前がフリーザの口から出たのに驚いた。
「キコノですか? 彼は第一線から離れ半ば隠居しているはずですが」
「私の頼みなら断らないでしょう。他の科学者ならともかく、キコノさんなら何かしら結果を出せるはずです。……それでだめなら、ゲロを我が軍の科学者として招聘する事も考えます」
フリーザ軍の科学者達を過大評価した結果、ゲロはフリーザに思いっきり目をつけられていた。
それから一か月後、移動中の宇宙船でフリーザはキコノからの通信で報告を受け取っていた。
『お久しぶりです、フリーザ様。頂いたデータですが、大変興味深く拝見しました』
宇宙船のスクリーンに、カエルに似た顔つきで黄色い肌の老人、キコノが映る。
『いったい誰が発明したのですか? フリーザ軍の新しい科学者なら、私も安心して隠居できるのですが』
「久しぶりですね、キコノさん。誰が発明したのかはともかく、あなたの意見を聞かせてもらえますか?」
キコノはコルド軍時代から仕える古参の科学者で、スカウターや戦闘服、宇宙船等現在のフリーザ軍でも運用される重要な装備や兵器を発明した天才だ。
フリーザにとって信頼に足る部下で、役に立つ上に不快にならない顔つきをしているのでドドリアやザーボンよりも重用していた。
『はい、畏まりました。スカウターの改造の方ですが、実に見事です。私もこの改良は思いつきませんでした。ですが、まだ甘いようです』
「甘い、ですか?」
『ええ、この改良方法をさらに進めれば、戦闘力200万……いや、1千万まで計測する事が可能かもしれません。製造コストを抑え、現行のサイズと重量を変えずに。私ならそうします』
「ほう、それは興味深いですね」
本当はより高性能に改造できたのに、ゲロは敢えて計測の上限を100万にしたのか? そうだとして、何の意味があるのか。
「他の科学者では、改造の方法までしか、それも改造した本人から説明を受けなければ理解できなかったのに、流石ですね、キコノさん」
『いや~、お褒めに預かり光栄です』
「それで、長命薬の方はどうですか?」
『あ、はい。長命薬という薬の成分ですが、どうやら何らかの有機物が主な原料となっているのは確かです』
「なるほど。ゲロは嘘をついていなかったという事ですか」
『もっとも、有機物がどのような生物由来の物質なのかは解析できませんでした。ところで、ゲロと言うのが発明者ですか?』
「それはともかくキコノさん、他に分かった事は?」
『他にですか? そうですね……他の科学者が行った実験データなども目を通しましたが、それから推測するとあらゆる宇宙人に効果があり、副作用などはないようです』
「あらゆる宇宙人に?」
『はい、効かない宇宙人がいるとすれば、それは不老不死の宇宙人ぐらいでしょう。そんな宇宙人が存在するのならですが。
副作用は……強いてあげれば、肉体的に未成熟な者が服用すると成熟するまでの時間も二割増しになってしまう事ぐらいかと』
「そうですか。他の科学者が『分かりません』としか答えられないのに、多少は結果を出すとは流石ですね。それでキコノさん、あなたが先ほど口にしたスカウターの改造、どれほどかかりますか?」
『そうですね。1千万まで計測可能なスカウターを開発するのでしたら、一年は欲しいところですが……』
「一年ですか。なるほど。丁度100万まで計測できる新型スカウターの量産と配備の目途が立ちましたし、その開発チームと合流してもらいましょうか。では、よろしくお願いします」
『えっ? フリーザ様、私は第一線から退いた隠居の身なのですが……?』
「キコノさん、私は今回の件でよく分かりました。我が軍の科学者はまだまだだと。そう言う訳で、あなたにはまだまだ働いてもらいますよ。頼りにしてもかまいませんね?」
このまま静かに余生を送る事を考えていたキコノは、フリーザの迫力に負けて『わ、分かりました』と頷いた。
(予期せぬ復帰になったが……悪い気はしないな)
宇宙の帝王であるフリーザに期待され、必要とされるのは科学者冥利に尽きるし、歳と言っても実はそれほど体に不自由を覚えてはいない。
そして自身が発明したスカウターをより高性能に改造できるチャンスだ。引退する前はもう自分の仕事は終わったと思っていたが、やりがいのある仕事を前にして意欲が再び湧いてくるのを感じていた。
「さて、キコノさんの解析結果を疑う訳ではありませんが……念のために、パパに試してもらうとしますか」
そして、フリーザはコルド大王の元を訪ね、長命薬を飲ませてその効き目を確かめたのだった。
自身も長命薬を飲んだフリーザは、深く満足した。
まだフリーザ一族の中では若輩と言える年齢のフリーザだが、老いの恐ろしさは知っている。父であるコルド大王はそれで第一線を退いたし、そのコルド大王と覇権を争ったスラッグ一味は落ちぶれる一方だ。
その老いが自身から遠のくのは、喜ばしい事でないはずがない。
「これで、地球とあのゲロと言う科学者の価値が上がりましたね」
「では、ベジータに命じて地球にフリーザ軍の基地を作らせ、ゲロを招聘しますか?」
「そこまではしなくていいでしょう」
しかし、ザーボンの提案を採用するほど執着はしていなかった。
もし、これが条件を満たす事でどんな願いでもかなえられる不思議な玉なら、最優先で獲りに行き不老不死を願っただろう。自分以外の存在が先んじて不老不死を手に入れたら面倒だし、競争相手に負けるわけにはいかないから。何よりも、宇宙の帝王であるフリーザでも屈服させられない老いを克服するチャンスを逃すわけにはいかない。
だが、長命薬の効果はそこまでではない。そして、献上されたのは十錠。その内一つは分析のために使い、もう一つは念のための実験台として父であるコルド大王に、そして三つ目は自分がついさっき飲んだ。
もう手に入れている上に残り七錠もあるのだから、血眼になって確保する必要はない。
「金の卵を産むガチョウを絞める必要はありません。それに、下手に手出しして地球の環境が変わり長命薬が作れなくなったら本末転倒ですからね。
何せ、キコノでも長命薬の製法は分からなかったのですから」
「そうなると、地球とゲロ、双方を確保し続けなければなりません。ですが、スラッグ一味が幹部を派遣した真の目的は、ベジータ達を抹殺するためではなく地球を確保するためだったとも考えられます」
「確かに、私よりも奴らの方が若返りの妙薬は必要でしょうからねぇ」
何故スラッグ一味が地球に長命薬の原材料がある事を知ったのかは知らないが、奴らに地球を奪われるのは……そしてゲロを殺されるのは困る。
「それを考えてベジータさん達を地球に戻しましたが、幹部まではともかくスラッグ本人が来たら力不足は否めないでしょうね」
フリーザがベジータチームを地球に戻し、守るよう命じたのはスラッグ一味や他の宇宙海賊から地球を守らせるためだった。もし地球が吹っ飛ばされたら、そうでなくても大きく環境が変わるような被害を受け、長命薬の原材料である湧水が枯れたら一大事だからだ。
ベジータやラディッツ、ナッパがいればフリーザ軍の殆どの基地より防衛戦力は高くなる。しかし、流石にスラッグ本人が来たらベジータ達でも持ちこたえる事が出来るかどうか怪しい。
かといって、フリーザ本人が滞在する訳にもいかない。ギニュー特戦隊を常駐させるのも、仕事が滞るので避けたい。
しかし、ここにいるザーボンはもちろんドドリアやキュイ、それ以下の有象無象を送りつけても戦力にはならない。
「アボとカドが率いるクラッシャー軍団に命じてはどうでしょうか?」
「ふむ……確かに、あの二人ならスラッグ一味の幹部とも渡り合えるでしょうね。最近頑張っているようですし、休暇もかねて地球の防衛任務を命じるのもいいでしょう」
「ベジータ達もフリーザ様の采配に感謝する事でしょう」
「ホーッホッホッホ。せっかく手に入れた新しい故郷が奪われたら、ベジータさん達も可哀そうですからね」
ザーボンは地球の防衛力が上がる事に、内心で喝采を挙げていた。
(長命薬を手に入れる機会を確保するためにも、ベジータには地球を大切にしてもらわなければならないからな)
戦闘力でベジータに追い抜かれ、その差は変身しても決して勝てない程開いてしまったザーボンだったが、ドドリアのように焦ってはいなかった。
何故なら、ベジータが地球という惑星を手に入れ、その支配者になる事を選んだからだ。これで少なくとも、ベジータがザーボンのポジション……フリーザの側近になる事は考えづらくなった。
ベジータが聞けば、誰がフリーザの野郎の秘書の真似事なんてするかと言いそうだが、お互いに信頼関係のない弱肉強食の組織では猜疑心は中々消せない。フリーザのような、他を圧倒する力を持つ支配者でなければ。
そして、ザーボンの関心はベジータではなく長命薬に移っていた。美に拘りがある彼にとって、老化を遅らせ若さを保てる長命薬は、星よりもずっと価値がある。
「さて、残り七錠の長命薬ですが、一つはキコノに飲ませるとしましょう。代わりの天才科学者はいませんし。ザーボンさん、あなたにも差し上げましょう」
その星よりもずっと価値のある長命薬が、フリーザによって突然ザーボンにもたらされた。
「よ、よろしいのですか、フリーザ様!?」
「ええ、構いませんよ。あなたにはドドリアさんがいない間も頑張ってもらいましたからね」
そう言うフリーザだが、彼が長命薬をザーボンに与えたのは彼の働きを評価しているだけではなく、ベジータに長命薬を餌に取り込まれないように先手を打つためでもあった。
(ベジータさんも立場が変われば、これまでのように私に忠実な兵ではなくなるかもしれませんからね。念のためです)
そう思うフリーザだったが、実際にはベジータはこれまでもフリーザに心からの忠誠は誓っていない事には気が付いていなかった。
「ありがとうございます、フリーザ様! このザーボン、これまで以上に忠節に励ませていただきます」
「ホーッホッホッホ、そんなに喜んでもらえて私も嬉しいですよ。さて、残りの五錠は売りつける相手を見繕うとしましょうか」
『失礼します、フリーザ様! ドドリア様からの通信が入りました!』
「おや、ドドリアさんからですか。メインモニターに出しなさい」
オペレーターにそう指示すると、久しく見てなかったドドリアの顔がモニターに映った。背後には、キュイも控えている。
『お久しぶりです、フリーザ様! ご命令通り、第二宙域の星の侵略が完了いたしました!』
その顔や体形は相変わらず太かったが、約一年前よりもずっと精悍な顔つきになっていた。以前がブタなら、今はイノシシだろうか。
「ほう、随分と仕事が早いじゃありませんか。どうやらダイエットの効果はあったようですね」
『はい、フリーザ様。おかげで体が軽くて仕方ありません! 戦闘力も上がりました!』
休暇を与えられたベジータチームの代わりに、ダイエットを兼ねて仕事を命じられたドドリアは通路で遭遇したキュイを強引にチームに入れ、久しぶりに前線に出て他星の侵略や邪魔な宇宙海賊の排除に精を出していた。
最初は体が重く、しかも勘が鈍っている事に苛立ったが、殺戮を繰り返す内に以前の調子が戻ってくるのを感じた。そして二度とこのような屈辱を味わわなくて済むように、仕事の合間に嫌がるキュイと実戦さながらの組手を行うというトレーニングを続けて来た。
サイヤ人さながらの荒っぽい訓練によって、ドドリアとキュイの戦闘力は上昇したのだ。
『俺は2万3千。へへ、ベジータの野郎にはまだ追いつきませんがね』
『お久しぶりです、フリーザ様! キュイです! 俺の戦闘力は1万9千に上がりました!』
上がった数字は1千程度だが、これまで二十年近く戦闘力が上昇しなかった事を考えれば大した成長だと言えるだろう。
「残念だがドドリア、ベジータの戦闘力は既に4万まで上がっている」
『な、なんだとっ!? 本当か、ザーボン!?』
『な、ナッパはっ、ナッパの戦闘力はどうなんですか、ザーボン様!?』
「本当だ。ちなみに、ラディッツは2万7千。ナッパの戦闘力は1万8千だ。隠している訳ではないというのに今まで知らなかったとは、よほど仕事が忙しかったようだな」
ザーボンが告げた衝撃の事実に、ドドリアは愕然とした様子で固まってしまった。彼がフリーザの傍から離れた当時のベジータの戦闘力は2万7千で、まだ追いつける希望はあった。しかし、約一年かけてやっと少し追いついたと思ったら、ベジータは圧倒的に強くなっていたのだから無理もない。
(相変わらず醜い奴だ。しかし、こんな奴でも私が変身する前の戦闘力と互角か……このままでは、変身しなければドドリアの奴に大きな顔をされかねない。
仕方がない。汗臭いのは不快だが、私もトレーニングをするしかないか)
ザーボンはベジータよりも同僚の成長に危機感を覚え、自身もトレーニングを積むことを決心した。
『あ、危なかったぜ。いよいよナッパにまで追い越されたら立ち直れないところだった』
一方、キュイはラディッツには追い越されたが、ナッパの戦闘力はまだ上回っている事を知って安堵していた。
「さて、そろそろよろしいですか、ドドリアさん。あなた達にはクラッシャー軍団の代わりに働いてもらいます」
クラッシャー軍団を地球に向かわせるとして、その抜けた穴をどうするかが問題だった。ギニュー特戦隊は元々忙しいから、これ以上働かせるのは無理がある。だが、秘書としても使っているザーボンにやらせるとフリーザ自身の負担が大きくなる。
そう悩んでいたフリーザにとって、ドドリアの通信は渡りに船だった。
『えっ? クラッシャー軍団の代わりにって……お、俺はまだフリーザ様の元に戻してもらえないんで?』
「残念ですが、我が軍も色々と事情を抱えているのですよ。ドドリアさん、私の側近として、私の役に立ってくれますね?」
『も、もちろんです。喜んで働きます』
「ホーッホッホッホ、良い返事ですね。やり遂げた暁にはボーナスを弾んであげますから、頑張ってくださいね。ああ、もちろんしばらく休暇を取ってからで構いませんよ」
『ありがとうございます』
こうして、地球へのクラッシャー軍団の派遣、そしてドドリアとキュイの即席チームの続行が決定したのだった。
その頃地球では、帰って来た桃白白達に代わって、地球からはアックマンとチャパ王が北の界王様の元へ弟子入りに向かう事になった。
「俺は地獄生まれの悪魔だがいいのか?」
『いや、儂は地獄に落ちるような悪人は除くと条件を付けただけじゃ。地獄で生まれたからと言って、悪人とは限らん。それに、今の閻魔大王も儂の弟子じゃぞ』
「そう言う事なら、是非! 桃白白に置いて行かれるわけにはいかんからな」
「私もお願いします!」
『よしよし、二人とも来ると良い。ナメック星からもマイーマとツムーリと言う若者が弟子入りに来る事になっておる。いやぁ、儂って人気者じゃなぁ。誘いを断る奴の気が知れんなぁ』
「いや、ですから儂は研究が忙しいので遠慮申し上げただけでして、本音を言えばありがたく受けたかったのですが」
北の界王様に修行の誘いを断った事を少し根に持たれてしまったらしい。チャパ王に詫びの菓子折りでも持って行ってもらうべきだろうか?
そして、天津飯とチャオズがヤードラット星での修行を終え、なんと奥義であるスピリットパワーの強制分離を習得して戻って来た。
「これで歴史改変者に強化された者達を正気に戻す事が出来るでしょうか?」
そう天津飯に問われたが、儂は頷く事は出来なかった。
「歴史改変者が扱うキリが、スピリットパワーの強制分離で引きはがせるかは分からん。他者のエネルギーを吸収してパワーアップするタイプには有効なはずだが」
例を挙げると、超の星喰いのモロや、Zのセル、それにこの歴史のグルメス王じゃな。グルメス王がスピリットパワーの強制分離で元の体に戻ったから、神精樹の実を食べてパワーアップした者にも効くかもしれん。
実を食べた後時間が過ぎて、完全に体に吸収された場合は無理だと思うが。
「じゃあ、超神水を飲んでパワーアップしたのも解けちゃう?」
「チャオズ、そうはならないはずじゃ。超神水を飲んだことによるパワーアップは、エネルギーを吸収したのではなく、猛毒を飲んだことで起きる体の反発、超回復によって起きる効果じゃからな」
つまり、全身に生死にかかわる筋肉痛を起こさせるようなものだ。スピリットパワーの強制分離でも、筋肉痛になる前には戻せないだろう。
「しかし、四身の拳のような技には効果は絶大じゃ。分身にダメージを与える度に、本体に気が戻って分身が弱くなる。それに、何らかの力で二人が一人に合体している者にも有効なはずだ」
「えっ? じゃあ、ランチにも効く?」
「チャオズ、ランチには効かない……ですよね?」
「彼女の場合は一つの体に二つの人格が存在するのが普通の状態じゃから、効かんじゃろう」
色々とまだ不明な点は多いが、天津飯とチャオズがスピリットパワーの強制分離まで習得できたことは心強い。これからの戦いの大きな助けになるだろう。
とはいえ、スピリットパワーの強制分離は相手にダメージを与えなければ効果はない。天津飯とチャオズには今後も修行に打ち込み、強くなってもらう必要があるだろう。
そしてブルマは地球の神様の神殿へ一か月程修行に向かった。地球の神様とミスター・ポポは彼女に教える事は殆どないと言う事だったが、超神水を飲むので念のために鍛えたいらしい。
ブルマも今年で十五歳。血がつながっていなくても孫の成長は早いものだ。
「クラッシャー軍団が地球に!?」
そんなほのぼのとした日常を儂が過ごしている時だった。フリーザがクラッシャー軍団を地球に派遣すると知ったのは。
この歴史では儂が地球に連れ帰って育てたターレスの代わりに、『オッス! 帰って来た悟空』のアボとカドが率いているクラッシャー軍団は、原作と違ってフリーザ軍ではギニュー特戦隊に次ぐエリートチームとして知られている。
フリーザがそんなエリートチームを地球に送る理由が、儂等に疑念を覚えたからではなく、スラッグ一味に対する防衛戦力増強のためだというのだから、儂としてはショックが大きい。
きっかけはベジータ王子達がルシフェル達をスラッグ一味だと誤解した事とは言え、悪役に仕立てたスラッグ一味の脅威と、地球の価値を上げるためにも献上した長命薬のせいで、フリーザが地球を守ろうと考えた結果なのだから。
つまり、フリーザはほぼ打算によるものだが彼なりに善意でクラッシャー軍団を送りつけてきたのだ。歴史改変者に操られたわけではなく。
(ベジータ王子達の襲来は違ったようだが、今度こそ儂のやらかしのせいかもしれん)
「さっそくフリーザ軍の情報を握った成果が出ましたね、ドクター。クラッシャー軍団が地球に来るのは、今いる位置と、彼らの宇宙船の性能から推測すると、一か月半後……今年のあの世との交流試合が終わって一週間ほど経った頃ですか」
内心で動揺していた儂だが、北の界王様の修行を終えて戻って来た4号にそう言われて思考を切り替えた。嘆いていても時間が過ぎるだけじゃからな。
「そうじゃな。ギネの出産予定日より前だから、大事を取って彼女以外のメンバーで対応しなければならん。ベジータ王子や国王、レッド将軍との打ち合わせが必要だな」
「ドクターは彼等と戦わずに他のフリーザ軍同様に地球はベジータ王子に征服されたと偽る、もしくは彼らを取り込むつもりなのですか?」
「フリーザや、その向こうにいるクウラを相手にするにはまだ時間が欲しいからな。クラッシャー軍団を倒してしまうと、儂等の企みが知られるのは時間の問題になるじゃろう」
歴史改変者に強化されない限りクラッシャー軍団は今の儂等の脅威ではない。アボとカドも、『オッス!帰ってきた悟空』で登場した時と同じ強さならともかく、フリーザ軍の一員でギニュー特戦隊に匹敵する戦士である今なら問題ではない。
だが、倒した後フリーザ軍を誤魔化し続けるのが難しくなる。しばらくはウーロンとプーアルに化けてもらって、地球で順調に警備していると報告すればいい。しかし、フリーザもクラッシャー軍団を何年も地球に駐在させ続けはしないだろう。
スラッグ一味の幹部と互角以上に戦えるアボとカドを地球に残して、他のメンバーは惑星を侵略する仕事に戻るよう指示が出るかもしれん。
そう考えると、クラッシャー軍団を倒した場合誤魔化せる時間は一年、運が良くても三年ぐらいじゃろう。……十分な時間に思えるかもしれないが、フリーザを倒すとクウラが一族の名誉を守るために地球に来る可能性が高く、更に歴史改変者の介入が避けられないだろうことを考えると、不安が残る。
「そう考えると、偽ってやり過ごすか、いっそ取り込む事を考えるべきじゃろう。地球に来た時点で、彼らの通信は遮断できるのだからな。
それに元々フリーザ軍から誰かが視察に来る可能性を考え、誤魔化すためのプランは用意してあるのじゃし。AからB,そしてGを」
「ドクター、Gは初耳ですが……まさか、『原作』で彼等のリーダーだったターレスに任せるとか、そんないい加減なプランではありませんよね?」
「はっはっは、そんな訳がないじゃろう」
プランAは接待と偽って囲い込み、視察が終わるまで偽装情報で周りを埋め尽くして何事もなく帰ってもらうプラン。
プランBは、Aが失敗した場合、視察に来た使者を買収するプラン。キュイやザーボンのように己の命惜しさにフリーザを裏切って命乞いをするタイプだと上手く行く可能性が高い。
そしてプランGは――
「プランGとはな、4号。Bも失敗した場合、倒した後死体を回収して儂が人造人間に改造して味方にするというプランじゃ。
もちろん、永久エネルギー炉や他の宇宙人の細胞の移植等は時間が無いのでせず、徹底的な脳改造を施して味方にする事を最優先とする。つまり量産型、もしくは即席の人造人間にするわけじゃな。これなら、長くても一人につき一か月もあれば十分だ」
改造中はウーロンとプーアルに化けてもらって誤魔化して、七か月後には全員の改造が終わる。あとはフリーザ軍で精密検査でもしなければばれないだろう。
「ドクター、プランGは最終手段ですよね?」
「もちろんじゃ。即席の人造人間は儂の研究テーマと合わんし、後の研究に役立つかも疑問じゃからな。それに、悪人と言えど流石に惨い……と、悟空や最長老様は言いそうじゃしな」
儂がそう答えると、4号はほっとした様子で息を吐いた。
その後、ベジータ王子達にクラッシャー軍団が地球に来る事を伝え、対応を検討するため話し合った際にプランGの事を説明したら、戦慄でも覚えたような様子で儂を見つめ返してきた。
「そんなおぞましい事を考えていたとは、相変わらず恐ろしい爺だぜ」
「じゃから、最後の手段だと言っているじゃろう」
〇キコノ
劇場版『ブロリー』で初登場。黄色い肌のカエルに似た顔つきの宇宙人。コルド大王の時代から仕える古参の配下で、現在のフリーザ軍で使っているスカウターや戦闘服、宇宙船を発明した天才科学者。
また、小説版では参謀長と言う地位にある事が明らかになった。
フリーザには側近のドドリア、ザーボンよりも信頼され重用されており、「頭がよく、役に立つ上に腹も立たない容姿をしている」と言う理由で気に入られている。
それを表すように、劇場版『ブロリー』で度々フリーザの行動に疑問を呈しても怒りを買った様子が無く、さらに劇場版「ブロリー」で、フリーザの身長を伸ばしたいという願いを打ち明けられている。さらに物語終盤で、チライとレモに脅されてドラゴンボールで神龍を呼び出し、ブロリーを小惑星バンパに戻す手伝いをさせられた後も、殺されずにフリーザの側近で居続けている。
「殺しますよ」と脅されていたザーボンとは、大違い。
ただ同じく古参の配下のベリブルよりは信頼度が下がるようだ。
この作品ではフリーザが惑星ベジータを滅ぼした数年後に年齢を理由にベリブルと同時期に第一線を離れ、半ば隠居していた。
〇戦闘力推移
ドドリア:2万2千→2万3千 他星の侵略とその合間にキュイとの組手をした事で、戦闘力が1千アップ。原作と違い、実戦の勘を取り戻しているので戦闘力相応のパワーとスピードを発揮できる。
キュイ:1万8千→1万9千 ドドリアに半ば拉致されるようにして部下にされ、約一年間前線で働き続け、仕事の合間に実戦形式の組手の相手をさせられ毎回命の機器を覚える日々を送った結果、戦闘力が1千アップ。また、原作と違い(主にドドリア相手の)激戦を潜り抜けているため、戦闘の勘も取り戻している。
ザーボン:2万3千(変化なし) 戦闘力に変化はないが、フリーザから長命薬を受け取ったため、寿命が二割伸びた。
〇プランG
フリーザ軍から視察のための使者が送られてきた時のために寝られた対応プラン。ただし、ベジータ王子や地球国国王、レッド将軍、そして4号達に前もって説明されていたのはAとBのみ。
Aは送られてきた使者を接待に見せかけて地球の一般人や世間から隔離し、滞在場所も自然豊かな場所にある宮殿や屋敷を当てがって、「地球はベジータ王子に侵略され、支配されている」と思い込ませたまま帰ってもらうというプラン。
対してBは、Aが失敗した場合、送られてきた使者を買収、もしくは脅して寝返らせるプラン。
そしてGは、寝返る事を拒否した使者を倒して拘束、または殺害して脳改造を行い、即席の人造人間にして強引に仲間に加えるというプラン。また、戦闘の結果死体も回収できなかった場合は採取した細胞を元にクローンを制作し、それを使うというプランもあった。
実行するとブリーフや地球の神様、最長老等から苦言を呈されると考えられるので、ゲロにとっても出来ればやりたくないプランである。
匿名鬼謀様、佐藤東沙様、ヴァイト様、ダイ⑨様、-SIN-様、太陽のガリ茶様、 gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
根菜一家の第三子は? 回答期限は110話を投稿するまでになります。
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ルターバ(男の子)
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ラニ(女の子)