ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
爆発に飲み込まれて、「俺は死ぬのか。……悪党の最期なんて、こんなもんか」と薄れていく意識でそんな事を思っていたら、何者かが口の中に何かを突っ込んできた。
「っ!? な、なんだっ? 俺はいったい……!?」
はっとして目を開いたダイーズは、自分のすぐ近くに悟空が立っている事に気が付いてさらに驚いた。
「お、目が覚めたな。仙豆が無かったら危なかったな」
「待てっ、殺さないでくれっ! 降参する、この通りだ!」
既に実力差も、自分が負けた事も分かっているダイーズは、悟空に向かって咄嗟に両手を上げて命乞いを始めた。
(何とか隙を見つけて逃げるか、不意を突いて倒せれば!)
だが、潔く負けを認めたわけではない。ダイーズは自身が生き残るために降参し、悟空を騙そうとしていた。
悪党らしい思考だが、フリーザ軍の兵士にとっては当然の行動だ。
通常の軍隊同士の戦争なら敵に降伏して捕虜になっても、命が助かる見込みはある。軍が互いの捕虜を交換する事や、身代金を払う等、捕虜にされた自軍の兵士を取り戻そうとするからだ。捕虜にした側も、それを見越して待遇の良し悪しはともかく命だけは保証する事が多い。
しかし、フリーザ軍がしているのは戦争と言うより襲撃による侵略だ。外交的な話し合いなど存在しない。何より、フリーザ軍には捕虜にされた兵士を助けようという発想が無い。命惜しさに降伏するような兵など、我が軍には必要ありません。フリーザならそう言ってあっさり見捨てる……どころか、捕虜ごと敵を吹き飛ばすだろう。
フリーザ以外の幹部も同じようなものだ。ダイーズ自身も、同じクラッシャー軍団の仲間ならまだしも、他のチームの兵を態々助けようとは思わない。
「やっと降伏する気になったか! じゃあ、兄ちゃん達の勝負が終わるまで大人しくしてろよ」
しかし、そんなフリーザ軍の常識を知ってか知らずか、悟空はダイーズの降伏をあっさり受け入れた。
「あ、ああ、分かった」
拍子抜けしたが、チョロイ奴だぜと悟空の隙を伺うダイーズ。だが、その過程である事に気が付いた。
(どういうことだ? 傷が治っている。それどころか、疲労すら残っていないだと?)
短いとはいえ激戦の末、死を覚悟するほどのダメージを受けたはずの自分の体に、痛みや疲労が全く残っていなかったのだ。
戦闘服の焦げ跡や肌についた埃が無ければ、あの戦いは夢か何かだったのではないかと思いかねない程、ダイーズの体は万全の状態になっていた。
「どうした? もしかしてまだ具合が悪いんか? 仙豆を食わせたから、治ったと思ったんだけどな」
「仙豆? そいつは何だ?」
「神様が作ってる、ありがたい豆だ。今はブルマの父ちゃんも作ってんだけどよ、一粒食べるだけで七日は何も食べなくてもいいぐらい栄養があって、どんな傷も治っちまうありがたい豆なんだぞ」
「そんなありがたい豆を、敵の俺に使ったのか? いったい何で?」
ダイーズは悟空の説明を疑わなかった。神精樹なんてものが存在するのだから、そんな不思議な豆が存在してもおかしくないと思ったからだ。信じられなかったのは、そんな貴重な(実際には十分な量が確保されているので、そこまでではない)豆を、敵である自分に使った事だ。
「なんでって、あのままだと死んじまいそうだったしよ。それと悪ぃ、ベジータ王子の奴が手下に成れって言ってたの、オラ忘れてた。ハハハ」
そう言って誤魔化すように笑う悟空の言葉を、ダイーズはすぐには理解できなかった。
敵である自分が死にそうだからと言って何なのか? それに、殺し合いの最中に叩いた言葉をいちいち謝る意味があるのか?
「でもよ、ベジータ王子が手下とか言っても、そんなに気にする事ねえぞ。毎日こき使われる、なんて事にはならねぇと思う。って言っても、オラもそんなにベジータ王子と仲が良いわけでもねぇんだけどさ」
「そう、なのか? だが、この星は奴が支配しているんだろ?」
「本当はそんな事ねぇぞ。フリーザ軍にはそう言ってっけど、本当は地球の国王様やレッドのおっちゃんや、ゲロのじっちゃんの方が偉ぇって、じっちゃんが言ってた」
「っ!? つまり、ベジータの奴はこの星の支配者じゃないのか!?」
「おう。だからさ、おめぇとおめぇの仲間もオラ達と力を合わせて、フリーザを倒そうぜ!」
そう言って手を差し伸べて来る悟空が、ダイーズには眩しく見えた。彼だけではない、他のクラッシャー軍団のメンバーも、細かいところは違うが同じ内容の言葉をブルマやチチ、ヤムチャ、そして天津飯からかけられていた。
弱肉強食の宇宙で、異星人の侵略者の治療をして助けた挙句、仲間に成れと誘う。他人事なら、その甘さを鼻で笑っただろう。しかし自分が……それも、正面から戦って自分に勝った相手からされたら、簡単に笑う事は出来なかった。
もちろん、突然改心して涙を流しながら悟空達の手を取るような者はダイーズを含めて誰もいなかった。ダイーズは困惑し、カカオは呆れ、レズンは屈辱を覚え、ラカセイは苛立ち、アモンドは敗北感に呻いた、
しかし、感謝や恩を全く感じなかったわけじゃない。
「お前……俺は……」
特に、ダイーズはクラッシャー軍団に入る前はカボーチャ星の王子だった男だ。侵略者として現れたアボとカドから故郷を守るため、軍を率いて勇猛に戦った。悟空の呼びかけに、そんな悪党になる前の自分を思い出していた。
ダイーズ達のフリーザに対する恐怖心はアボとカドが新たな技を開発し、パワーアップした事で薄れて久しい。そのアボとカドにベジータ達が勝てるなら、ベジータ達はフリーザにも、そしてフリーザよりも強いと噂される兄のクウラも倒す事が出来るのだろう。
(なら、ここはこいつらと手を組んだ方が得策じゃないか? 俺や仲間の命は助かるし、フリーザとクウラを倒した後はどうにでもなる、はずだ)
そう自分の悪党の部分を納得させ、ダイーズは悟空の手を取ろうとした。離れた場所にいる他のクラッシャー軍団のメンバーも、Z戦士達から差し伸ばされた手を振り払う事は出来ず、葛藤していた。
『他の歴史とはいえ、クラッシャー軍団ともあろう者が何をしていやがる!』
その時、突然大声でダイーズ達を叱責する声が響き渡った。同時に、クラッシャー軍団のメンバーの目の前に、神精樹の実が出現する。
それもただの神精樹の実ではない。禍々しいオーラのようなものを纏い、見るからに尋常な雰囲気ではなくなっている。
『さあ、その魔神精樹の実を食って強くなり、再び戦え!』
そして、再び声が響きダイーズ達に戦う事を促した。
「止めろっ、ダイーズ! そいつを食ったらきっとやべぇ事が起きる!」
とっさに魔神精樹の実を叩き落とそうとする悟空。離れた場所にいる他のZ戦士達も、同じように実を攻撃した。
「っ!? 触れられないだと!?」
「気弾を弾いた!?」
「ぎゃんっ!?」
「チチちゃん!?」
しかし、天津飯の拳やヤムチャの気弾は魔神精樹の実が纏っている禍々しいオーラ状のものに阻まれ、チチが額から放った光線は跳ね返されてしまった。
「くっ!」
悟空の拳も例外ではなかった。
そしてダイーズ達は、魔神精樹の実と悟空達を見比べて一瞬躊躇したが、すぐに掴み取った。魔神精樹の実の方を。
それ以上の躊躇は見せず、実に齧りつく。
「っ!? おお、力が漲ってくる!」
「今まで食った神精樹の実の比じゃねぇでっせい!」
「ンダ!!」
「「へへ、こうなったら俺達は無敵だぜ!」」
その瞬間、ダイーズ達の気が膨れ上がり、しかし邪悪な気を発する。まるで魔神精樹の実の禍々しい気配がそのまま乗り移ったようだ。
「ダイーズ、おめぇ……!」
「カカロット……お前の見込み違いだぜ!」
覚えた迷いを振り切るように、悟空に襲い掛かるダイーズ。咄嗟に身構える彼に、一瞬で間合いを詰めると軽く拳を突き出す。
「うわぁーっ!?」
それだけで、ダイーズがついさっき戦った時とは数段格が違うと感じた悟空が吹っ飛んで岩にめり込んだ。
「う、ううっ」
小さくうめき声が聞こえるので、死んではいないようだが立ち上がる様子が無いので動けないようだ。
「なんて凄まじい力だ。今なら、ギニュー特戦隊だって俺一人で倒せる」
そのダイーズの感想は正しく、魔神精樹の実を食べた彼の戦闘力は食べる前の二十倍、28万にまで跳ね上がっていた。
『実は食べたな? なら邪魔な奴等を始末してこの俺の下に集え! 星々を魔神精樹の苗床にして、邪魔なフリーザやクウラを殺す! そうすればこの宇宙は、俺達新生クラッシャー軍団の天下だ!
気ままに宇宙をさすらい、気に入らない星をぶっ壊し、美味い物を食い、美味い酒に酔う。そんな生活をお前達に送らせてやろう!』
再び響いた名も知らぬ声の主の誘いに、ダイーズは強烈に惹かれた。この男の手下になれば、他の全てがどうでもよくなるほど享楽に満ちた人生を過ごせる。そう思わせる、アボやカドにはないカリスマ性に満ちていた。
そして、声の主に応えて悟空に視線を向けた。そして、手を向けるが……すぐに再び手を降ろした。
「態々止めを刺すまでもないか。お前がもし死なずに済んだら、お前も新生クラッシャー軍団に入れるよう口をきいてやるよ」
「へぇ、命を助けられた礼に見逃してやるってか? 悪党にしちゃ義理堅いじゃないか」
悟空に止めを刺さずに立ち去ろうとするダイーズに、弟分の危機に駆けつけたターレスが声をかけた。
「カカロット!? いや、別人……ラディッツには他に弟がいたのか!?」
背後を取られた事以上に、ターレスが悟空そっくりである事にダイーズは驚いた。
「へへ、まあ似たようなもんさ。俺の名はターレス! 弟分が世話になったら、今度は俺が相手をしてやるぜ!」
その頃、他のクラッシャー軍団達の前にも仲間の危機に駆けつけた新たなZ戦士達が立ち塞がり、新たな戦いが始まっていた。
時間をやや巻き戻し、悟空達がダイーズ達とそれぞれ戦っている頃。
「ふんっ!」
この儂、ドクター・ゲロはカドの赤い顔をぶん殴っていた。悲鳴を上げて吹っ飛んだカドを油断なく観察しながら、手袋を外してドローンが運んできた密封容器に入れる。
「無事、サンプルの回収に成功」
秘技でも何でもない、「細胞を寄越せパンチ」だ。既にこの辺り一帯にはスパイロボットを放ってあるが、サンプルは多いに越したことはない。
「お、お前っ、サンプルってなんだ!? 俺から何を取った!?」
「主に皮膚の細胞だが」
「細胞!? 俺の細胞をどうするつもりだ!?」
「解析して今後の研究に役立てる予定だ。ありがとう、心から感謝する」
出身種族の突然変異だらけのフリーザ軍は、貴重なサンプルの宝庫だからな。今後カド自身がどうなるかはともかく、彼の細胞は人造人間研究に大きな貢献をしてくれるのは間違いない。
今から感謝しておこう。
「さ、させねぇ! 俺の細胞は俺の物だ!」
「安心してくれ。最悪の場合でも、君の骨は大事に拾ってやろう」
研究に不要な部分はちゃんと埋葬すると誓おう。
「アボっ! この爺、マジでヤバいぞ!」
しかし、残念ながらカドには儂の感謝の気持ちはいまいち伝わっていないようだ。
「儂等に協力してフリーザを倒したくなったら、いつでも降伏して構わんよ。その場合、我々は君達を仲間として受け入れ、それなりの待遇を約束しよう」
ちなみに、そう説得しつつも儂とカドは戦いを続けている。カドが繰り出す拳を受け流して胴体にカウンターを入れ、後ろに下がりながら放った牽制の気弾を拳で弾いて追う。
カドは、13万5千というフリーザ軍の中ではトップクラスの戦闘力を有している。しかし、儂の戦闘力は約16万。正面からの戦いで遅れはとらん。
「アボっ! ナッパ如きに何を手こずってる!」
「うるせぇ、カド! その爺だけじゃなくてこいつも結構ヤバいんだ!」
「どうしたどうした! 顔が青ざめてるぜ、アボさんよぉ!」
一方、青い肌のアボの相手をしているのはナッパだ。アボの戦闘力はカドと同じ13万5千、それに対してナッパの戦闘力は先日開かれたあの世との交流試合でチルド相手に瀕死になったため、13万2500まで高くなっているが、アボより2千以上低い。
「オラオラオラ!」
「調子に乗りやがって! ついこの前まで中級兵士だった奴にやられるほど、クラッシャー軍団のアボ様は甘くないぞ!」
しかし、優勢なのはナッパの方だ。アボがナッパに攻撃を五回当てる間に、ナッパは彼に七回は攻撃を当てている。
つい数年前の儂等……戦闘力が1万や2万台の戦士同士の戦いならともかく、戦闘力が10万を超える戦士同士の戦いでは2500程度の差は誤差でしかない。
アボは大猿化しなければ敵ではないと侮っていたナッパが、実は自分に匹敵する強さの戦士だった事を知って覚えた動揺から、まだ抜けきっていない。
一方ナッパは、気を読んでアボの方が自分より僅かに強い事を戦闘前から知っていた。そのため動揺するアボに出来た隙を、勢いに乗って突く事が出来る。
たったそれだけでひっくり返る程度の差なのだ。
「クソッ! やるぞ、アボ!」
「おうっ! ギルティラッシュ!」
するとアボとカドは同時に気弾の連射、必殺技らしいギルティラッシュを放った。それ自体は、とっさに防御姿勢を取った儂とナッパには殆ど効かなかった。
「「「どうだ、驚いたか!」」」
「「「これでお前達の攻撃はもう通用しないぞ!」」」
だが、爆発が収まった時アボとカドはそれぞれ三人ずつに増えていた。
「残像拳に似た技か?」
「いや、彼らの技の方がより高度だな。本物と同時に動き、声まで発する幻を作り出しておる」
「ケッ、中々器用な奴等だぜ。小細工にしちゃ上出来だ」
「「「小細工かどうか!」」」
「「「その身で試してみろ!」」」
驚かなかったナッパと儂に、激高した様子のアボとカドがそれぞれ襲い掛かる。
「「「いくらスカウターがあっても!」」」
「「「俺達のスピードに追い付けるはずが無い!」」」
なるほど。確かに、フリーザ軍の従来のスカウターの性能ではこのスピードで動く相手の戦闘力を計測しながら戦う事は難しかっただろう。
「ふんっ!」
「おらよっ!」
「「ぐわーっ!?」」
しかし、儂が開発した地球製スカウターなら容易い事だ。もっとも、気を読めば本物がどれかすぐに分かるのだが。
「く、クソっ! こうなったらあれをやるぞ、カド!」
「ああ、フリーザに使うはずだった奥の手を見せてやろう、アボ!」
すると、儂とナッパに殴り飛ばされた先で、アボとカドは耳からスカウターの残骸を外して向かい合うと、なんと合体した。
『フハハハハ! どうだ、今度こそ驚いただろう!』
肌は二人の色が混じったような紫色に変化し、丸かった体形は二メートル以上の巨漢に変わり、愛嬌のあった顔には二人の面影は殆どない。
「なんと、まさか合体できるとは……!」
合体戦士アカへと変化した。儂はアボとカドが、フリーザが健在であるうちから合体できるとは考えていなかったし、フリーザ軍の情報にもそんな記載はなかったので、驚かされた。
もしかしたら、レズンとラカセイの双子の兄弟が合体できるのを知って、自分達にも可能なのではないかと考えて技を開発したのかもしれない。
『驚いたなら、くらえ!』
アカの指からエネルギー弾が放たれる。儂は瞬間移動によってギリギリで回避したが、ナッパは回避が間に合わず胸を貫かれた。
「がはっ! ぐっ……あ、危ないところだったぜ」
しかし、儂が助けるまでもなく、ナッパは懐に忍ばせていた仙豆を自力で食べて回復していた。
『当たったと思ったが外れたのか? まあ、いい。もう一度……ん?』
アカが再びエネルギー弾を放とうとした時、空がぱっと光った。どうやら、ベジータ王子がパワーボールを使ったようだ。
「ナッパ、ゲロ、交代だ」
だが、儂等の前に出てきたのはラディッツだった。
「ラディッツ、勝算があるんだろうな?」
「ややしんどいが、ベジータ達が出るには早いからな。それに、これぐらいの方が戦闘を楽しめる」
「分かった。行くぜ、爺さん」
「仕方ない。出来るだけ殺さんようにな」
アカのサンプルも欲しいが、とりあえずスパイロボットに任せよう。
『今度の相手はラディッツか。せっかくベジータが満月を作ってくれたのに、大猿化しなくていいのか? 何なら待ってやってもいいんぞ』
「そいつはありがたい。だが、図体がデカくなると戦いにくいから遠慮するぜ。
それにしても合体か。随分強くなったじゃないか。戦闘力270万とは大したもんだ」
アボとカドはアカに合体する事で、戦闘力を270万にまで高めていた。原作でも、合体前はスーパーサイヤ人化した子供トランクスと悟天に敵わなかったのに、合体してアカになった後はゴテンクスと渡り合っている。
ドラゴンボール超ではフュージョンは足し算と評されていたが、実際には合体する二人の気を合計して、その数値を二十五倍に高めた強力な戦士に変身するのがフュージョンらしい。
それを考えると、現在のアカは原作に比べると完成度が低いようだ。
『おうよ! 噂ではフリーザは二回変身して戦闘力は最大200万らしいが、俺達はもう超えている! 今からでも俺達に従うなら、クラッシャー軍団の一員にしてやってもいいぜ』
「ほう、手下より待遇が良さそうじゃないか」
『ああ、お前らが思ったより強かったからな。ナッパやそこの爺は、合体しないと勝てそうになかったし。お前らも大猿化すればフリーザに勝てるとか、そんな事を考えていたんだろう?』
「クックック、甘いな。その程度の力でフリーザには勝てん! 奴は三回の変身が可能で、戦闘力は6千万! 最大で1億2千万だ!」
自分ならフリーザに勝てる。そう語るアカに、真実を突き付けるラディッツ。
『なんだと!? 6千万!? 1億2千万!? 桁が違い過ぎる、そんな訳があるか! もういいっ、やはりフリーザの前にお前達を倒してやる!』
しかし、アカはラディッツの言葉を信じようとはせず、激高して襲い掛かった。
『っ!?』
だが、怒りに任せて振るった腕は空を切った。
「隙だらけだぜ!」
それどころか、腕を掻い潜ったラディッツのミドルキックを脇腹に受けて衝撃に目を剥く事になった。
『ば、馬鹿なっ! なぜ大猿になっていないのに、それほどのスピードとパワーを出せる!?』
「残念だったな。大猿に変身しないまま、戦闘力を十倍に出来る技を習得したのさ!」
そう、ラディッツはベジータ王子のパワーボールによって、既に戦闘力を十倍にしていたのだ。
ラディッツの素の戦闘力は20万5千。そして、今は205万だ。それでもアカには敵わない。今は想定よりラディッツが強かった事に驚いて隙が出来ている、しかし、アボ対ナッパで戦っていた時とは違い約三割と言う大きな差があるため、すぐに逆転されてしまうだろう。
「そして新しい技を習得したのはナッパだけじゃない! プラズマブースト!」
だが、ラディッツはこの一年で習得していたプラズマブーストを発動し、身体能力を倍増させてアカに対して接近戦を展開した。
『ぐおおっ!? こいつ、ちょこまかと!』
懐に入り込んだラディッツを払いのけようと腕を振るい、膝蹴りを放つアカだがそれらは悉く回避されてしまう。
「このまま倒させてもらうぜ!」
逆にラディッツはジャブとフックをアカの胴体に叩き込み、ローキックで下半身を攻め続けた。一撃で与えられるダメージは小さいが、高速で繰り返される攻撃は確実に蓄積されていく。
『ワハハノ――』
このままでは拙いと焦ったアカは、自分自身も爆発に巻き込まれる覚悟でワハハノ波を放とうと試みる。
「させるかっ!」
だが、ラディッツは回し蹴りを放ってアカを真上に蹴り上げる。
「止めだ!」
そして先回りをしたラディッツは、悲鳴をあげながら真上に吹っ飛んできたアカに組んだ両手を振り下ろし、地面に向かって叩き落とす。
轟音と土煙があがった。視界が晴れると、合体が解けて分離し、地面に突き刺さったアボとカドの下半身が見え、それを見下ろす男の姿が見えた。
「どうやら、これからが本番のようじゃな」
男は、ある意味見慣れた姿をしていた。あちこちに跳ねた黒い髪に、褐色の肌といった特徴も同じ。しかし、背はずっと高い。
『やれやれ。他の歴史とはいえ、情けねぇ。他の連中もだ』
そう言うと、男……他の歴史から現れたターレスダークは、無造作にアボとカドの足を掴むとそのまま引っこ抜いて地面に転がした。
「ぷはっ!? な、なんだ、こいつは!?」
「こいつもサイヤ人!? なら、ベジータの手下か!?」
『ベジータの手下? 違うな、他の歴史から態々貴様らを助けに来てやった救い主さ。それよりも、他の歴史とはいえ、クラッシャー軍団ともあろう者が何をしていやがる!』
突然現れたターレスダークに困惑しているアボとカドに対してだけではなく、他の場所にいるクラッシャー軍団のメンバーの元にも彼の怒声が響き渡った。
同時に、アボとカドの目の前に禍々しい気配を纏った神精樹の実が出現した。
『さあ、その魔神精樹の実を食って強くなり、再び戦え!』
「マッスルカタパルト!」
しかし、それを上空で見ていたラディッツが好きにはさせないと、マッスルカタパルトによる突撃を敢行した。気で硬度を増した肘がターレスダークに突き刺さる。
『少しは効いたぜ。そう言ってやりたいところだがな』
しかし、ラディッツのマッスルカタパルトはターレスダークの掌によって、簡単に受け止められていた。
「なっ!? がはっ!」
そして、その腹部にターレスダークの拳がめり込んでいた。
『傷が治ったら改めて話をしようぜ。弱虫じゃない貴様は、俺と一緒に来る資格がある』
「ふ、ふざ……け――!」
そのラディッツの背後に4号が瞬間移動で現れ、彼を連れて再度瞬間移動で離脱する。
「そいつの傷を治せ! その間、このターレスモドキは俺が相手をしてやる!」
そしてターレスダークの前にはベジータ王子が立ち塞がった。
『これはこれは、懐かしいお方がお見えだ。だが王子様には悪いが、貴様でも俺には勝てないぜ。頼りになる宰相お手製の人造人間共に代わってもらった方がいいんじゃないか?』
「奴らはそこの馬鹿共の相手で忙しくなるからな。それに……このベジータ様を舐めるなよ!」
そして立ち向かうベジータ王子が言うように、トーマやセリパ達にターレスダークの相手をしている暇はない。彼が脅威ではないという意味ではなく――。
「力が、漲ってくる!」
「勝てるっ、これなら勝てるぞ! ナッパもあの爺もラディッツも、フリーザだって目じゃねぇ!」
ターレスダークの背後で魔神精樹の実を食ったアボとカドが禍々しい気を発しながら、再び合体。
そして、ダメ押しのように全身から黒いオーラが立ち上った。歴史改変者の手によって、キリで強化されたのだ。
『『もう、俺達は無敵だ!!』』
儂のスカウターで計測したところ、その総合的な強さは、戦闘力に換算して約1億5千万。ラディッツに倒された時とは桁違いの力を発揮している。
「さて、ここまではある意味で想定通りと言うか、今までと同じパターンだ」
「……は、放せっ! カカロットが……!」
「動かないでください。まだ治療の途中です。悟空の所には、ターレスが向かいました」
クラッシャー軍団の各メンバー達も魔神精樹の実とやらを食べたらしく、各地で強力な気が発生し、逆に悟空達の気が小さくなっている。
ターレスを始め、既にそれぞれ手練れが助けに向かったので心配はない。後は歴史改変者をタイムパトロールが撃退する事を信じつつ、ターレスダークとアカを倒す事に全力を注げばいい。
と思っていたがここで想定外の事態が起きた。
地震のような地響きを立てて、文字通り山より巨大な樹が現れたのだ。
「いかん。これは地球の危機じゃ」
なんと、他の歴史から神精樹ダークが現れ地球に根を張り始めたのだ。儂は急いでレッド将軍に通信を入れた。
一仕事やり終えた達成感を味わいつつ、ドミグラは額の汗を拭った。
彼は他の歴史で悟空に敗れ死ぬ寸前だったターレスと、神精樹を回収。ターレスと交渉し、神精樹と共にキリで強化して連れて来た。
そして魔術で強化した神精樹の実をこの歴史のクラッシャー軍団達の前に出現させたのだ。
「ドミグラ様、いくら興が乗ったからと言って、やり過ぎたのでは?」
「神精樹まで持ってくることはなかったと思います」
忠実な配下であるシャメルとロベルにそう問われたドミグラは、ふっと笑って答えた。
「実は、私もそう思っている」
神精樹を回収し、魔術で傷を治してこの歴史に持ってくるのは、ドミグラが想定していたより大仕事だった。今になってから、もっと他にやりようがあったのではないかと思わなくもない。
「しかし、単純に他の歴史から手駒を送り込むより、奴らに与える衝撃は大きいはずだ。飴は甘く、そして鞭は痛くなければ意味がないからな」
だが、そう素直に口にするのは抵抗があったので、それなりに意味のある行動だったと取り繕った。
「とはいえ、交渉相手が来なくては……あら、やや遅いですが来たようです」
ロベルが視線を向けた先に、タイムパトロールの悟空達が現れた。
「なんだ、あの馬鹿でかい樹は。あんなでかい樹は、見た事が無いぜ」
「ありゃあ、確か神精樹っちゅう樹だ。生えると、その星の栄養を全部吸い取っちまう」
「ただの神精樹じゃありません。キリで強化されています。神精樹ダーク……いえ、魔神精樹とでも呼びましょうか」
タイムパトロールの悟空とトランクスの説明に、バーダックは鼻を鳴らした。
「チッ、もうすぐガキが生まれるってのに、厄介な樹を植えやがって」
「おい、貴様等は俺達と手を組みたかったんじゃなかったのか? それともこれも歴史の修正、俺達の手伝いだとでも言うつもりか?」
そう怒りを滲ませた口調で問いただしてくるタイムパトロールのベジータに、ドミグラは落ち着いた様子で答えた。
「もちろんだ。暗黒魔王メチカブラは、我々にとっても脅威だからな。お前達と手を組めれば心強い。だが……タイムパトロールが我々と組む気が無いなら仕方ない。こうして、独自にメチカブラを倒すためにキリを稼がなければならないのだ。
もっとも、今からでも我々と手を組むなら、すぐに奴らを元の歴史に戻しても構わないが?」
「貴様等の手を借りるまでもない。貴様らを倒した後、あのふざけた樹も駆除する。後は……この歴史のゲロがどうとでもするだろう。
貴様等こそ、奴の研究サンプルになりたくなければ自首をお勧めするぜ?」
タイムパトロールのベジータの言葉と、他の面々の態度から予想通りこの場で交渉がまとまる事はないと理解したドミグラは、苦笑いを浮かべて杖を構えた。
「どうやら鞭が足りないらしい」
「実に、エレガントではありませんね」
ロベル、そしてシャメルも各々武器を構え、タイムパトロール達もそれぞれのスーパーサイヤ人に変身する。
そして結界の内側でも激しい戦いの幕が上がったのだった。
その間も魔神精樹の根は地球を蝕み、事態の規模は地球を丸ごと巻き込むまでに拡大する。
この歴史の真の『地球丸ごと超決戦』が始まった。
〇戦闘力推移
・ゲロ 15万5千 → 16万2500
・ナッパ 10万6千 → 13万2500 → 16万5千 あの世との交流試合でのチルドとの試合で瀕死になった事でギニュー隊長より強くなり、アカにやられた致命傷から仙豆によって強くなった事で更に強くなった。
・ラディッツ:16万4千 → 20万5千 → 25万6千 あの世との交流試合でチルドによって瀕死にされた事でクウラ機甲戦隊のサウザーより強くなり、ターレスダークにやられた事で更に強くなった。また、プラズマブースト、マッスルカタパルトを習得している。
・アボ:13万5千 → 魔神精樹の実 → 270万
・カド:13万5千 → 魔神精樹の実 →270万
・アカ:(アボ + カド)×10 = 270万
・魔神精樹の実食後のアカ:1憶5400万
魔神精樹の実を食べた事で、最終形態のフリーザがフルパワーを出した時よりも強くなった。
・アモンド:9100 → 魔神精樹の実 → 18万2千
・ダイーズ:14000 → 魔神精樹の実 → 28万
・カカオ:8400 → 魔神精樹の実 → 16万8千
・レズン:7600 → 魔神精樹の実 → 15万2千
・ラカセイ:8000 → 魔神精樹の実 → 16万
それぞれ魔神青樹の実を食べた事で、クウラ機甲戦隊並みかそれ以上の強さにパワーアップ。
ちなみに、ダイーズ達が悟空達の誘いに乗りかけたり、迷って葛藤したのは、アボとカドのカリスマ性が原作劇場版のターレスに及ばなかったため。
〇魔神精樹の実
ドミグラが魔術で効果を強化した神精樹の実。禍々しいオーラを普段から放っている。
食べれば地球産の神精樹の実よりもパワーアップできるが、実は副作用として食べた者の生命力を消費するため寿命が縮まる。
原作ゲームには、トワによって強化された神精樹の実が登場する。
なお、魔神精樹と名付けたのはターレスダーク。魔神と名乗ったドミグラが強化した神精樹の実なので、魔神精樹。
wtt様、変わり者様、クウヤ様、佐藤東沙様、大自在天様、ヴァイト様、太陽のガリ茶様、岩鋼玄武様、gsころりん様、御船悠一様、T〇M〇K〇TA/こたのん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。