ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
戦闘力が二十倍になったクラッシャー軍団のメンバー達と、悟空達を助けに駆けつけた者達が戦っていた。
「チッ、俺の相手は女子供ばかりかよ!」
「女だからって舐めるなっ、とは言わないよ!」
レズンと戦っているのは、出産予定日を来月に控えたギネだった。
「油断して簡単に負けてくれるなら、都合がいいからさ。普段はそんな事無いけど、今はちょっと無理できないんだよね!」
もちろん、本体ではない。四身の拳で作り出した、本来の五分の一程の気しかない分身である。
無理が出来ないというのは、分身なので仙豆を食べても回復せず、一定以上のダメージを受ければ消えてしまうという意味だ。
「はっ、体調が悪いならそこで寝ているガキを連れて引っ込んでな! そしてさっさとこの地球から逃げ出すんだな! この星は滋養を魔神精樹に吸い尽くされる運命なんだからよぉ!」
戦闘力が15万2千まで跳ね上がったレズンが、エネルギー弾を連射する。
「あんた、顔に似合わず優しい所あるじゃないか」
しかし、彼の目の前にいるのはギネの分身。その戦闘力は20万だ。エネルギー弾を簡単に回避し、レズンを間合いから出さない。
「それって、あたしやチチちゃんを見逃してくれるってことだろ? でも、悪いけどこの星を渡すつもりはないんだ。もうすぐ生まれる三人目の子供を、この星で育てたいからね!」
「なんだと!? ぐっ!」
ギネが繰り出した拳をガードしながら、レズンは驚愕して叫び返した。
「てめぇっ、身重で俺と戦ってんのか!? いくらサイヤ人だからってふざけるのも大概にしやがれ! さっさと旦那と代われ!」
「えっ? いや、そうだけどそうじゃないって言うか……バーダックは、今仕事で忙しいんだよ!」
レズンの真っ当に聞こえる怒りに、思わず怯むギネ。
「そんな状態で俺に勝てると思ってんのか!? それに、身重の女を戦わせてまでしなきゃならねぇ仕事なんざあるのか!?」
「こっちにも色々事情があるんだよ! それに、今のあたしは分身だから大丈夫なの!」
激高したレズンの頬に、ギネの拳が入ったのだった。
「地球一のヒーロー、桃白白参上」
「ヒーローだぁ? テメェみたいな大して強くもなさそうな、髭の爺がか?」
ブルマの元に駆けつけたのは、桃白白だった。しかし、ラカセイの目には彼は強そうには映らなかった。実際、戦闘力が16万に跳ね上がった彼にとって、戦闘力5万2500の桃白白は遥かに格下の相手に過ぎない。
「ふっ、人を見かけで判断するなと教わらなかったのか? なら、私が貴様の親に代わって教えてやろう。三倍界王拳!」
しかし、桃白白には技があった。赤いオーラを放ち、一気にラカセイに飛び掛かる。
「なにっ!? こいつ、強いっ! そうか、お前もサイヤ人だな!?」
「いいや、ただの地球人だ!」
界王拳によって戦闘力を15万7500に高めた桃白白は、動揺するラカセイに対して連続で拳を繰り出し、蹴りを放つ。
「地球人だと!? なんてこった、地球人ってのはサイヤ人並みの戦闘民族だったのか!」
「ふーむ、否定しにくいが、そう言う訳でもない」
「違うのか!? なら、なんでこの星はこんなに強い奴がゴロゴロしてやがる!?」
「それは、会長のせいだろうな。詳しく聞きたいなら、我々の仲間になってくれれば説明してやろう。今なら、私が主演した映画のビデオがついて来るぞ」
「ふざけるなっ! テメェが本当にヒーローだって言うなら、ガキを戦わせる前に何で出てこねぇ!?」
「それは耳が痛いな。だが……」
ラカセイが放ったジェミニショットを、桃白白は巧みな動きで避け切った。そして今度は自分の番だというように、掌をラカセイに向ける。
「若人の成長を促すには、実戦を経験させるのも必要な事なのだ。それに、実際彼女達は貴様等に勝っただろう? スーパーどどん波!」
「っ! うおおおおっ!」
自らに迫りくるスーパーどどん波を避けるため、ラカセイは空を縦横無尽に飛び回った。しかし、目標を追尾する事が出来るスーパーどどん波を撒く事は出来なかった。
「ぐおおおおおーッ!?」
スーパーどどん波に追い付かれ、ラカセイは爆発に飲み込まれた。
「グハハハハ! ナッパ様参上! ハーフとはいえ同じサイヤ人のよしみで助けに……あん?」
ヤムチャの元に駆けつけたのは、なんとナッパだった。本当はアカにあっさりやられてしまったのが気に食わなかったので、暴れられる場所を探したら偶々こうなっただけだったが。
しかし、そんなナッパが名乗りを上げた時にはカカオは身を翻してここから離れようとしていた。
「なんでぇ、つまらねぇ。こいつに止めを刺すつもりがねぇならとっとと何処かへ行っちまえ。
おい、仙豆だ。さっさと飲み込みな」
やる気を失ったナッパは、倒れているヤムチャの口に仙豆を入れて飲み込ませようとする。だが、それが終わる前にナッパは素早く腕を振るった。
「なんだ? やる気になったのか」
ナッパの腕に弾かれたエネルギー弾が、遠くで爆発する。それを放ったのは、もちろんカカオだ。
「ンダ!」
戦闘力が16万8千に膨れ上がったカカオだったが、やはり話せる言葉は「ンダ」の二文字だけだった。
「クックック、いいぜ。俺と遊ぼうぜ、サイボーグ野郎! ヤムチャ、あとは自力で仙豆を飲み込むんだな!」
しかし、ナッパもアカにやられた事で戦闘力が16万5千にまで上昇している。僅かにカカオの方が上だが、その程度の差はすぐにひっくり返してやると、ナッパは挑みかかった。
「なんだ? ボーイフレンドを助けに来たのか?」
「まあ、フレンドではあるけどそう言うんじゃないわね。天津飯とは兄弟弟子みたいなもんだし」
アモンドと天津飯の間に割って入ったのは、タイツだった。とはいえ、アモンドは倒れたまま動かない天津飯に止めを刺すつもりはなかった。
「どうでもいいでっせい。親しい仲なら、そいつを連れて何処かへ逃げた方がいいでっせい」
アモンドは天津飯を指さして、タイツにそう言った。
「ベジータの手下をやっているのが不自然なほど、真面目な奴だ。クラッシャー軍団に誘っても無駄だろうし、命を救われた礼に、今ならついでにあんたも見逃してやるでっせい」
「え? う~ん、予想と違うわね。でも、あたし達は地球から出ていくつもりはないわよ。あんたも、このまま行かせるつもりはないわ」
「なんだと? ……魔神精樹の実を食ったこの俺を舐めるんじゃねぇどっせい!」
タイツの言葉を聞いたアモンドは、全身に気を漲らせてタイツを威嚇した。魔神精樹の実を食べた今の彼の戦闘力は、18万2千にまで高まっている。ギニュー特戦隊どころか、クウラ機甲戦隊を超えている。
その迫力で迫れば、恐いもの知らずの荒くれ者でも逃げ出しただろう。
「ふふん、あんたこそ地球を舐めるんじゃないわよ!」
だが、当然タイツは怯まない。気を解放して、アモンドに対抗する。
「っ! なるほど、ただ者じゃねぇようでっせい。だが、後悔する事になるでっせい、これでお前は、『邪魔者』に成っちまったでっせい!」
タイツの戦闘力は、9万3千にまであがっている。スカウターを持たないアモンドはその正確な数値を知る事は出来なかったが、そのタイツの様子から彼女が天津飯以上の使い手だと見抜いた。魔神精樹の実のパワーアップ効果が切れたら、自分では勝てないだろうという事も。
故に、アモンドはタイツを今の内に始末しなければならなくなった。
アモンドは思考を、冷酷な宇宙の壊し屋に切り替えてタイツに攻撃を仕掛けた。タイツがいくら強くても、今のアモンドの敵ではない。彼の拳が彼女の頬を殴り飛ばすのは避けられない。
「二倍界王拳!」
かに思えたが、タイツは界王拳で気の出力を倍増させ、紙一重でアモンドの拳を回避した。
「何っ!? ぐっ!」
それどころか、アモンドの脇腹に抉るようなフックを叩き込みカウンターを決める。
「油断したでっせいっ! だがっ!」
アモンドはその場で高速回転を開始。勢いでタイツを退かせると、彼女に向かってエネルギーの刃を放った。
「よっ。界王拳、三倍! フォトンシールドバッシュ!」
だが、タイツは瞬間移動で刃を回避すると、気で作り上げたシールドでアモンドに殴りつけた。
「でっ!?」
タイツのシールドとアモンドの高速回転が火花を散らしたのはほんの一瞬。シールドは切り裂かれる事無く、強引にアモンドを吹っ飛ばした。
「メ、メチャクチャしやがるでっせい! プラネット――」
吹っ飛ばされたアモンドは空中で何とか体勢を立て直し、必殺技を放とうとした。しかし、一瞬ためらった。タイツの後ろに、倒れたままの天津飯がいたからだ。
だが、次の瞬間タイツが瞬間移動でアモンドの目の前に移動した。
「――ボム!」
アモンドは、プラネットボムで殴りつけるようにしてタイツに攻撃した。
「シールドっ!」
しかし、フォトンシールドの範囲を展開したタイツによって防がれ、それどころか爆発の反動で自分が大ダメージを受けてしまった。
「……へ、へへ。一度やきが回っちまうと、どうしようもねぇみたいでっせい……」
そう呟くと意識を失うアモンド。タイツは地面に落ちていきそうになった彼の腕を掴んで引き留めた。
「ふう。後は、この人達をきょう……説得すればプランGは回避出来るわね。
あ、本物のガールフレンドが来たけど……何をしているのかしら?」
ふとタイツが視線を上げると、青髪ランチが天津飯に仙豆を食べさせていた。そして、その後ろには周囲に大量の魔神精樹の実を念動力で浮かしているマロンもいる。
何をしているのかと思い、声をかける事にした。
『どうした!? この歴史の俺とは十年以上の付き合いなんだろう?』
ターレスダーク相手の戦いに、4号は苦戦していた。
「ええ、兄弟弟子……実の兄弟同然の関係ですよ」
二十倍界王拳を発動している事で肉体にかかる負担、そしてなにより相手が別の歴史のターレスである事にやり難さを覚えていた。
「だからこそ、そのターレスと顔も声も同じあなたと戦うのはやりにくい。どうしても彼を意識してしまう」
『甘ちゃんだな。姿が同じだけで、攻撃するのを躊躇うとは』
「違います。あなたの技が、特に体術がターレスより雑なのでやりにくいのです」
『なんだと?』
会話しながらも、4号とターレスダークは拳や蹴り、気弾の応酬を続けていた。ターレスダークが強引に仕掛ければ4号は瞬間移動で距離を取り、四妖拳で増やした腕で気弾を連射する。
「あなたの動きは、私達が知るターレスと比べると圧倒的に雑だ。無駄も隙も多くて、幼い頃からトレーニングを重ね、指導を受けて来た彼とは大違いだ」
そして、4号の指摘は事実だった。もしターレスダークの体捌きが一流の武道家のそれに匹敵していたら、4号が瞬間移動を繰り返してもすぐに追いつかれて叩きのめされていただろう。
『フンッ、言ってくれるじゃないか。だが、それで俺に反撃する事もおぼつかないんじゃ格好がつかないぜ?』
そう言い返すターレスダークだが、内心では舌打ちしていた。
二十倍界王拳を使っても戦闘力がターレスダークの七割ほどしかない4号が苦戦するのは、当たり前だ。ターレスダークが4号をなかなか倒しきれず、食い下がらせているのが問題なのだ。
ベジータ王子との戦いで負ったダメージだけではなく、4号のテクニックが時間稼ぎを成功させていた。
だが、ターレスダークも元居た歴史では数々の修羅場を越えて来た歴戦の戦士。このままでは終わらない。
『っ! なら、これならどうだ!』
ターレスダークは、ベジータ王子が空に浮かべた人工の月に向かって強力なエネルギー波を放った。それまで視線を逸らし、自身が大猿化しないようにしていた彼が人工の月をここで狙うとは思っていなかった4号は、瞬間移動でエネルギー波の前に割って入った。
「フォトンシールド!」
そして全力でシールドを張り、エネルギー波を防ぐ。果たして耐えきれるだろうか? そろそろ潮時か? そんな疑問が4号の脳裏に過った。
しかし、ターレスダークのエネルギー波は4号のシールドを破ることなく途切れた。
『フッ、この勝負、俺の勝ちだ!』
4号がシールド越しに見たのは、ターレスダークが新たな魔神精樹の実を片手に勝ち誇る姿だった。
「しまった!」
人工の月を狙ってみせたのは、4号を自分から引き離し魔神精樹の実を手にするための罠だったのだ。
瞬間移動で間合いを詰めて魔神精樹の実を叩き潰そうとする4号だったが、残念ながら間に合わなかった。
「ぐっ!」
『惜しかったな』
左手で4号の胸を貫いたターレスダークは、右手で食いかけの魔神精樹の実をさらに齧る。そして、気が急速に小さくなり、完全に消えた4号の体を投げ捨てた。
『この歴史の俺が世話になったせめてもの礼だ。埋葬してやるからありがたく思え!』
そして、追い打ちとばかりに落下中の4号に向かってエネルギー弾を放ち、周囲の岩ごと爆発に飲み込んだ。
『ん? 気のせいか? 奴の死体に当たる前に爆発したように見えたが……まあ、いい。運の悪い小動物にでも当たったんだろう。
それよりも……まだ青いな』
ターレスダークは魔神精樹の実に視線を落とし、顔を顰める。ランチとマロンに横取りされ、この歴史の地球の戦士達に魔神精樹の発育を妨害され、4号との戦闘中に運良く見つけた実だが、それは未成熟の小さな実だった。
おかげで疲労は回復したが、戦闘力の上昇は期待していたほどではない。
『実を横取りした奴らを探し出して、実を奪い返すか……いや、他にもあるかもしれん実を探して食うか』
キリで強化されているため気を感知する事が可能になったターレスダークだが、青髪ランチとマロンは気が無いため探し出すには時間がかかる。それに、二人が既に実を処分している可能性もある。それより、未成熟でも新たに実った魔神精樹の実を探した方が早い。
そう判断したターレスダークは魔神精樹の枝に、新たな実が実っていないか探し始めた。
「行ったようじゃな。4号、仙豆は食えるか?」
「はい。……引き際を見誤りました」
ターレスダークが死んだと思い込んでいる4号は、しっかり生きていた。地球人なら心臓がある位置に拳大の穴が空いているので、重傷ではあるが。
ナメック星人がベースの4号は、生命力が尽きるか頭部の中心にある核を破壊されない限り死なない。胸に穴が空いても、四肢と同じく再生する事が可能だ。
ターレスダークに胸を貫かれた時、4号は気を自ら抑え死んだ演技をしたのである。
もともと4号はわざとターレスダークに負け、彼に「4号は死んだ」と思わせる作戦だった。本来は、こんな紙一重な状況にならないよう、もっと安全なタイミングを見計らうはずだったのだが――。
「つい、熱くなってしまいました。身内と同じ顔の悪人と言うのは、厄介ですね」
「うむ、追い打ちでエネルギー弾を放って来た時はひやりとしたわい。光学迷彩機能搭載のドローンが間に合ってよかった。
とはいえ、ターレスダークの意識が完全に外れている今がチャンスじゃ」
「はい、ドクター」
仙豆を食べて体力を回復させ、胸に空いた穴を塞いだ4号は立ち上がり、空に向かって両手を伸ばして語り掛けた。
「地球の、そしてナメック星とヤードラット星の皆。私に元気を分けてください」
北の界王神様の修行で習得した元気玉を使うため、4号は呼びかけ始めた。
界王拳を発動して赤いオーラに包まれたターレスと、魔神精樹を口にしてパワーアップしたダイーズの戦いは、ターレスの勝利に終わった。
「がはっ! 神精樹の実を食べた訳でもないのに、戦闘力を倍増させられるなんて、イカサマもいいところだぜ」
膝立ちのまま立ち上がる事が出来ないダイーズは、ターレスを悔しそうに睨んだ。
「おいおい、界王拳は技だぜ。習得するのに何か月もかかる上に、使いこなすのも難しい」
戦闘力が28万に上がったダイーズに対して、あの世との交流試合で瀕死パワーアップを経験したターレスの戦闘力は、11万2千。そのため、初手から三倍界王拳を使用した。
そして、戦闘力を33万6千にまで高めてダイーズを倒したのだ。
「それに比べれば、実を食っただけで戦闘力が二十倍になるお前らの方が俺達から見ればイカサマだぜ」
「チッ、トレーニング狂のサイヤ人らしい感想だぜ。……もう動く体力はねぇ。止めを刺したらどうだ」
一度悟空の手を振り払った以上、二度目は無いだろう。そう言って目を閉じるダイーズを、ターレスは鼻で笑った。
「やなこった。戦う体力がねぇなら、そのまま大人しく捕まってもらうぜ」
「お前ら……正気か? 俺は情けを掛けたカカロットをぶちのめしたばかりだぞ」
驚いて顔を上げるダイーズに、ターレスは「だからだよ」と答える。
「俺がお前を殺したら、悟空に文句を言われちまう。悪いが、俺とあいつは惑星ベジータ生まれだが、育ちはこの地球なんでね。冷酷非道とは縁がないのさ」
とはいえ、もしダイーズが悟空を殺そうとしていればターレスも容赦はしなかっただろう。だが、ダイーズは意識を失った悟空を見逃そうとした。それをターレスは「見どころがある」と評価していた。
「さて、改めて質問だ。俺達の側に付くつもりはないか? 何、難しい事じゃねぇ。俺達と一緒にフリーザ軍相手に芝居をして、奴らを騙している間に強くなってフリーザを、そしてクウラを倒す。それだけだ。
その後は故郷の星に帰るなり、そのまま地球に残るなり、お前の好きにすりゃあいい。まあ、とはいえただの悪党に戻るってんなら、改めてぶちのめすけどな」
「……カカロットにも聞こうと思ったんだが、お前らはフリーザやクウラを倒した後、宇宙を支配するつもりはないのか?」
「ん? ああ、ベジータ王子が何を考えているかは知らないが、ゲロの爺さんにそのつもりはないぜ。面倒なんだとよ。
他の星を支配する時間があるなら、研究に使いたいんだそうだ」
その言葉を聞いたダイーズは、理解できないと言わんばかりに顔を顰めた。
「解せないか? 簡単な事だ。好きな事を好きなだけやりたい、その邪魔になる事は出来るだけやりたくない。あの爺さんがフリーザを倒そうとしているのもそれさ。
自由にも程があるだろう? だが、俺も同意見でね」
悟空と違い刷り込まれたサイヤ人としての知識を持ったままのターレスだが、十数年暮らす内にその価値観はすっかり地球に馴染んでいた。戦闘は好きだが、殺す事が好きなわけではないし、無意味な殺戮に興味もない。支配と言うのも、ピンとこない。
「それで、お前はどうする、ダイーズ?」
「俺は、悪人だぞ」
「それがどうした。ベジータ王子達だって、いくつもの星を侵略してきた極悪人だぜ。俺や悟空が言っているのは、俺達の仲間になって、俺達のルールを尊重するか否かだ。改心や贖罪は、するもしないもお前の好きにしろ」
ダイーズはそのターレスの言葉に、彼の懐の深さを感じた。悪人か善人かという判断基準に囚われない、自由さも。
この手を取れば、フリーザ軍でも得られなかった自由を得られる。そんな予感がして、ダイーズはターレスの手を取ろうとした。
「っ! 危ねぇっ!」
だが、その瞬間空からエネルギー弾がダイーズ目掛けて飛来した。いや、狙われたのは彼だけではない。倒れたレズン、ラカセイ、タイツに担がれているアモンド、ナッパと格闘戦中のカカオ、アカダーク以外のクラッシャー軍団のメンバー全員だ。
「ば、馬鹿なっ! 俺を庇って!?」
レズンはギネの分身が身を挺して庇った。
「いかんっ! ふんっ!」
ラカセイは、桃白白が咄嗟にホイポイカプセルから出したカッチン鋼コーティングの剣を投げつけ、エネルギー弾を爆発させた事で助かった。
「ンダ!?」
「野郎っ! 何処のどいつだ、勝負の邪魔をしやがったのは!?」
カカオはナッパが彼を殴り飛ばした事で偶然回避した。そして、意識の無いアモンドは瞬間移動が使えるタイツに担がれていたため死なずに済んだ。
「い、今のは……」
そして、ダイーズは彼の手を取ったターレスが瞬間移動で彼ごと逃げた事で、無事だった。
「おい、こいつらを新生クラッシャー軍団とやらの一員にするんじゃなかったのか?」
そう問いながら、ターレスは苛立ちのこもった視線をターレスダークに向けた。
『そのつもりだったがな、どうやら俺の見込み違いだったらしい。負けるだけならまだしも、寝返ろうとするとはな。
同じ姿と名前でも、他の歴史の住人はしょせん他人って事を忘れていたぜ』
ダイーズ達目掛けてエネルギー弾を放ったのは、ターレスダークだった。彼はやっと見つけた魔神精樹の実を齧ってから、今度はターレスに話しかけた。
『お前はどうだ、この歴史の俺よ? サイヤ人の血が騒がないか? このちっぽけな星を飛び出し、宇宙で自由に生きたいとは思わないのか?』
「チッ、別の歴史の俺か。顔と声と名が同じだけの別人だと思いたかったぜ」
『おいおい、随分な態度じゃないか。いくら俺達下級戦士に顔が少ないとはいえ、ここまで揃って別人って事はねぇだろ』
「そう言いたくもなるぜ。別の歴史とはいえ、俺ともあろう者がそんな不自由に生きているんだからな」
『何? この俺が不自由だと?』
別の歴史の自分からの言葉だからこそ聞き逃せなかったのか、ターレスダークは魔神精樹の実を食べるのも忘れてターレスに聞き返した。
『宇宙を自由にさすらい、欲しいものは全て奪い、気に入らない存在は全て破壊してきた。そんなこの俺が不自由だと!?』
既にダイーズ達の事は目に入っていない様子のターレスダークの前に立ったまま答えた。
「サイヤ人らしい生活、って奴に縛られてるじゃねぇか。ベジータ王子との話は、スカウターで聞いてたぜ」
『な、なんだと?』
「なんでサイヤ人だというだけの理由で、当てもなく宇宙を彷徨うような根無し草の生活をしなくちゃならない? 一つの星で畑でも耕して一生を静かに生きる事を選ぶ自由は、サイヤ人には無いのか?」
『ガキが、訳の分からない事を! サイヤ人は戦闘民族だぞ!』
「選択する自由が無けりゃ、自由とは言えねぇだろ。テメェは『サイヤ人は冷酷非道な戦闘民族であるべき』って価値観に縛られてるのさ。
それとも……それ以外の生き方が出来ない自分への言い訳か?」
『貴様……言わせておけば!この星でぬくぬくとぬるま湯に肩まで浸かって生きるうちに、芯まで腑抜けちまったようだな!』
「おいおい、この星での生活がぬるま湯だと? サイボーグ化した自称悪魔の科学者や世界征服を企む連中に、太陽を破壊しようとする魔族の親玉、ついでに他の歴史の俺やベジータ王子。毎年のように強敵が現れる、とんでもない星だぜ。
この星でトレーニングと組手をし、美味い飯を食い、強敵と血湧き肉踊る戦いに備える。それこそ戦闘民族サイヤ人に相応しい生活、って奴だと俺は思うがね」
実際、とんでもない強敵が次々に現れる地球と、基本的に格下しかいない星を侵略するフリーザ軍やクラッシャー軍団。どちらの生活がぬるま湯かと問われれば、後者と言えるだろう。
しかし、ターレスダークにとってターレスの主張は受け入れがたいものだったようだ。
「それにしても、さっきから話をしていればガキ相手に怒鳴るばかりでみっともないし品も無ぇ。やはり教育ってのは、受けておくに限るな。爺さんには改めて感謝――」
『もういいっ! やはり歴史が違えば別人だと言う事に、例外はないようだ。なら、別の歴史の俺でも殺さない理由はない!』
「チィッ!」
激高し、ターレスの言葉を遮って殴りかかろうとするターレスダーク。ターレスは瞬間移動で、彼が話している間に離れていたダイーズの元に移動して逃げる。
『俺と長話をしていたのは、そいつを逃がすためだろう? お見通しだ!』
しかし、ターレスダークはそれを予想していた。ターレスとは桁が二つ違う戦闘力を発揮して、即座に間合いを詰める。
『諸共死――がはっ!?』
「ごめん、遅れた!」
だが、瞬間移動で現れたタイツの蹴りを受けて吹っ飛ばされていく。
「タイツっ!? お前を待っていた訳じゃなかったが、なんだ、その気は!?」
「細かい説明は後! あんたもこれ食べて!」
現れたタイツの気は、ターレスが知っている大きさの比ではなかった。驚いている彼に、タイツはこれ……なんと神精樹の実を投げ渡した。
「なにっ!? こいつは魔神精樹の実!?」
「大丈夫、天津飯にスピリットの強制分離をかけてもらったから、ただの神精樹の実よ!」
そう、タイツの急激なパワーアップの理由、そしてブランチの考えとは、魔神精樹の実に天津飯が習得したスピリットの強制分離をかけてキリやドミグラの魔力を分離し、魔神精樹をただの神精樹の実にして食べる事だった。
時間を少し巻き戻し、ターレスダークがクラッシャー軍団のメンバーに向けてエネルギー弾を放つ前。ブランチは天津飯に仙豆を食べさせて目覚めさせた。
「くっ……助かった。すまない、世話を――」
「それより、これにスピリットの強制分離をお願い!」
「これは……魔神精樹とやらの実? この禍々しさを分離できるのか?」
チャオズが魔神精樹からキリやドミグラの魔力を分離できた事をその時点では誰も知らなかったが、失敗しても損はないと天津飯は魔神精樹の実を指で突いて強制分離を仕掛けた。
「効いたっ!」
「すご~い、流石ヤムちゃんのライバル!」
結果は成功。天津飯はマロンから渡される実に、次から次に指で突いてただの神精樹の実にしていき、ブランチとマロン、そしてタイツはそれを食べてパワーアップしたのだ。
「その実のお陰で、今なら二十倍界王拳でも使えるわ!」
結果、今のタイツの戦闘力は138万に高まり、更に二十倍界王拳を発動した事で2760万にまでに上がっている。
「ターレス、そいつを食えっ! それを食えば、お前なら奴に勝てるはずだ!」
「分かったよ。仙豆代わりに食ってやる」
ダイーズにも言われ、ターレスは天津飯の指の穴が空いた神精樹の実に齧りついた。リンゴに似た歯ごたえがして、口内に果汁が溢れる。
「っ! こいつは凄ぇっ!」
それを飲み下した途端、ターレスの全身に力が漲り疲労が吹き飛んだ。気が十倍以上に高まり、まるで無敵になったような全能感を覚えた。
この時ターレスの戦闘力は、168万にまで高まっていた。
しかし、実を食べたのはタイツとターレスだけではない。
『のぼせ上がるなよ、ガキ共!』
タイツの蹴りを受けたターレスダークだったが、魔神精樹の実を幾つか追加で食べていた彼の力は、戦闘力に換算して5700万。彼の思惑の半分にも届かない数値だが、タイツのスピードに対応するには十分だった。
〇戦闘力推移
・ギネ:58万 → 101万 身重なのであの世との交流試合で瀕死パワーアップは出来なかった。レズンと戦ったのは、五分の一程の気しかない分身(戦闘力20万)。息子の所にはターレスが既に駆けつけていたので、未来の娘を助けに行った。
・桃白白:5万 → 5万2500 弟弟子の天津飯の所にはタイツが既に向かっていたので、自分のファンのブルマを助けに向かった。向かった後で、後でベジータ王子からまた恋のさや当てを受けるのではないかと、内心冷や冷やしている。
・ナッパ:13万2500 → 16万5千 アカに瀕死にされ、仙豆で回復した事でパワーアップした。
・タイツ:7万5千 → 9万3千 → 神精樹の実 → 138万 →あの世との交流戦で瀕死パワーアップした事で十万の大台に迫るまで強くなり、神精樹の実を食べた事で一時的に戦闘力が15倍になった。
・ターレス:9万 → 11万2千 → 神精樹の実 → 168万 あの世との交流試合で瀕死パワーアップし、更に神精樹の実を食べた事で戦闘力が一時的に十五倍になった。
・ターレスダーク:1140万 → 地球産魔神精樹の実 → 5700万 魔神精樹がこの歴史の地球の滋養を吸って付けた青い実を複数食べて、戦闘力が更に五倍に高まった。
みそかつ様、ダイ⑨様、変わり者様、ぱっせる様、PY様、大自在天様、ヴァイト様、佐藤東沙様、excite様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。