ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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116話 三人目の伝説の超サイヤ人★

 苦戦していたアカダークとの戦いは、ブランチとマロンが戻って来てから一気に逆転した。

『『こ、こいつら、急に強くなりやがった!? さては、魔神精樹の実を横取りしやがったな!』』

『その通りです! くらいやがれ!』

 巨大化したブランチの拳を受け止めて防御するアカダークだったが、その衝撃の強さに目を見張った。

 

 神精樹の実を食べたブランチの戦闘力は、5460万。そして、巨大化した事で力が倍増し、腕力だけは一億を超えている。

『『へっ、いくら大きくなって力が強くなっても、その分スピードが――ぐおはぁっ!?』』

『はっ! スピードが何だって!?』

 

 距離を取ってスピードで翻弄しようとしたアカダークに、ブランチの四本の腕が次々と叩きつけられる。四妖拳で腕を二本増やして、移植されたナメック星人の細胞を活かして伸ばしたのだ。

「はいは~い、ブランチちゃんが時間を稼いでいる間に食べてね~」

 その間に、マロンが天津飯のスピリットパワーの強制分離でキリや魔力が抜けた神精樹の実をトーマ達に配っている。

 

「これ、食べて大丈夫なのか? 神しか食べる事を許されない実だとかゲロが言っていたはずだが」

「お、なかなかいけるな」

「そうかい? あたしはリンゴの方が好きだけどね」

「お前ら!?」

 

 神精樹の実に口をつけるのを躊躇ったシルバー大佐の横で、トーマとセリパはさっそく齧りついていた。

「俺達はフリーザ軍時代に、数えきれないくらい星を侵略してきたんだ。今更気にする事じゃねぇさ」

「あんたはやらなくてもいいんだよ。地獄行きが決まってるあたしとトーマだけで充分さ」

 

「……フンッ、付き合ってやるさ」

 シルバー大佐はそう言うと、二人に倣って神精樹の実に口をつけた。

「俺も天国のお花畑で過ごすって柄じゃないからな。死んだ後、ベジータ王の自警団で働くのも悪くなさそうだ」

 

「へへ、そう来なくっちゃな」

「でも、ドクターちゃんが神様に聞いたら、大丈夫っぽいって言ってたって」

「なんだ、そうなのか」

 

 神精樹の実は、神しか口にする事が許されないと言われている。しかし、それは神精樹の実を手に入れるには、惑星を一つ犠牲にしなければならない事が大きい。

 そして、今回の場合……他の歴史から持ち込まれた神精樹の実を、スピリットパワーの強制分離でキリや魔力を取り除いてから食べる事は罪には当たらないと、儂がテレパシーで相談した地球の神様は判断した。

 

 ……「閻魔大王様がどういうか分からんが」と言う前置きがあったが。まあ、多分大丈夫だろう。

 

「よし、じゃあ行くか!」

「あ、私も食べるわ!」

 慌てて神精樹の実を食べたランファンも加わって、ブランチに加勢していくトーマ達。

 

 タイツやターレスのように、彼らの戦闘力が十五倍になればアカダークは瞬く間に倒されていただろうが……。

「聞いていたより強くなってねぇな。倍になったぐらいか?」

 だが、トーマの戦闘力は約倍の2億ほどにしか上がらなかった。

 

「元々十倍になっているからね。それぐらいが神精樹の実の限界だったんじゃないか?」

(それに、神精樹の実は未熟な神が力を得るための物らしい。トーマ、お前達の力は既に神精樹の実の効果が十全に発揮される段階を超えているのだろう)

 

「このテレパシーは爺さんか! なるほどな。だが、あいつをぶちのめすには十分だ」

「爺さん達の準備を無駄にしちまうけど、文句はないよね?」

(構いません、思い切りやってください)

 儂に替わって4号がテレパシーでそう答えると、トーマ達は「そう来なくちゃな!」と笑ってアカダークに向かっていく。

 

「今までの鬱憤を晴らさせてもらうぜ!」

『『ぐおっ!? お、お前らも魔神精樹の実を食ったのか!』』

「今度はこっちの番だ、覚悟してもらうよ!」

『『ぐああああっ!?』』

 

 それまでキリと魔神精樹の実で強化されたアカダーク相手に劣勢を強いられていたトーマとセリパが、楽しそうにアカダークに拳や蹴りを叩き込み始める。

「俺達もいくぞ! どどん波!」

「今度は痛いわよ、アサルトフラッシュ!」

 

 シルバー大佐のどどん波と、ランファンのネイル直伝の技が体勢を崩して身動きが取れないアカダークに突き刺さる。

『『ぬおおおっ! お、お前達まで! ち、チクショー! 好き勝手盗み食いしやがって!!』』

「他所の土地どころか、他所の星に勝手に植えたお前らに責められる覚えはない!」

 

「有効活用してるんだから、感謝してよね。デスレイザー!」

 全身の筋肉をパンプアップしたフルパワー形態になったマロンが放ったのは、なんとチルドと同じ技だった。

 

『『ぐわぁぁぁっ!?』』

「おおっ、お前いつの間にチルドの野郎から技を習ったんだっ!?」

「ううん、習ってないわよ。真似ただけー。最近ここまで出来るようになったの」

 どうやら、チルドから技を習ったのではなく見て盗んだらしい。

 

『『さっきから聞いていれば……鬱憤が溜まっているのは俺達の方だ! 疲労って言葉を知らねぇのか!?』』

 激高した様子でアカダークが叫ぶが、セリパは涼しい顔で言い返した。

「悪いね、最近忘れちまったよ」

 

「ああ、俺達もだな」

「知っているのはあたしだけね」

 人造人間10号であるマロン以降は、全員が完全な永久エネルギー炉搭載型であるため、7号のランファン以外は肉体的な疲労を覚えなくなっている。アカダークのような、格上の相手と戦い続けていたとしてもだ。持久戦に持ち込めば、セリパ達に勝てる者はまずいない。

「お疲れのようだな。なら、そろそろ眠りな! ファイアバレット!」

 セリパ達の答えに絶句した様子のアカダークに、トーマの必殺技が炸裂する。炎に包まれたアカダークは断末魔じみた悲鳴をあげて、地面に向かって墜落したが……途中でアボとカドに分離してそのまま動かなくなった。

 

 彼らを強化していたキリは無くなっているが、気は残っている。キリによる強化と狂暴化が切れた反動で意識を失っただけのようだ。

「我ながら手加減が上手くなったもんだぜ。んっ、あいつはターレス、なのか?」

 

 その時、魔神精樹に何かが激突した。煙が晴れた時、二種類の輝きが見えた。

 

 

 

 

 

 

 ターレスに命を助けられたダイーズの見ている前で、彼の目には捉えられない高レベルな戦いが展開されていた。

『ちょこまかと目障りな!』

「文句があるなら、捉えてみやがれ!」

「サイコどどん波!」

 

 神精樹の実を食べて、二十倍界王拳を発動させたターレスとタイツが、この歴史の地球の滋養を吸って実らせた魔神精樹の実を食べたターレスダーク相手に戦っている。

 それぞれターレスは3360万、タイツは2760万。しかし、ターレスダークは5700万。一時的とはいえ圧倒的なパワーアップを遂げた二人が連携して戦っても、気を抜けば一撃で戦闘不能にされかねない。

 

 スピードの差を瞬間移動で補い、ターレスがやや前で、タイツがやや離れた位置から主に気功波で戦う。ターレスダークがターレスに攻撃を仕掛ければ、ターレスはタイツの傍に瞬間移動をして距離を取って回避。逆に、タイツが狙われればターレスがターレスダークの足を止め、タイツが十分逃げた後彼も逃げる。

 

『このままじゃ埒が明かねぇ。いいだろう、この歴史の俺にこの技が見切れるかな?』

 だが、ターレスダークも翻弄されるばかりではない。自分から後ろに下がってターレスから距離を取ると、独特な構えを取った。

 

『キルドライバー!』

 円盤状の気功波がターレスダークの手から広がっていく。

「なんだと!?」

 価値観、そして何より自由に対する主張が大きく異なる別の歴史の自分が同じ技を使えるとは予想外だったのか、ターレスが目を見張った。

 

「この技なら!」

 一方、タイツはキルドライバーにある穴を通り抜けて回避する。

「待てっ、罠だ!」

『正解だが、遅い!』

 しかし、それはターレスダークの罠だった。攻撃範囲が広いが穴のある技を放ち、そこを通り抜けて回避しようとする者を待ち伏せていたのだ。

 

『捕まえればこっちのものだ!』

 しかも、ターレスダークはタイツを攻撃するより、腕を掴んで動きを止める事を優先した。性質を見抜いたわけでは無いだろうが、これで瞬間移動は封じられてしまった。

 

『悪いがこのまま俺と踊ってもらうぜ、お嬢さん』

「お断りよ、太陽拳! うぐっ!」

 ターレスダークに動きを封じられたタイツは、とっさに太陽拳を放つ。しかし、ターレスダークはもう片方の手で目を庇いつつ、膝蹴りをタイツに叩き込む。

 

「振られたんだったら、とっとと放しな!」

 だが、そのお返しと言うかのようにターレスがターレスダークを急襲する。間合いを詰めてがら空きになった脇に拳を連続で叩き込み、背中を蹴りつける。

 

「しつこい男は嫌われるぜ! くっ!?」

『そんなにこの女が大事か? だったら、何処かに仕舞っておくんだったな!』

 しかし、ターレスダークはすぐに持ち直した。ターレスに向かって掴んだままのタイツを盾のようにして使い、彼が攻撃を止めた隙に放ったミドルキックで蹴り飛ばす。

 

「ク、クソがーっ!」

更に、ターレスに向かって連続でエネルギー弾を放った。爆発に飲み込まれてその姿が見えなくなると、ターレスダークはタイツに視線を戻す。

 

『全く、別の歴史の俺とはいえ品のねぇ野郎だ。それで、お嬢さんの方はどうだ? 気の強い女は嫌いじゃないんでね、俺の女になるなら歓迎する――』

 ターレスに気弾が命中するのを見届けたターレスダークは、今度はタイツを勧誘する。しかし、その途中でタイツは彼に向かって至近距離からスーパーどどん波を放った。

 

「ウソっ!?」

『……少しは効いたぜ』

 しかし、スーパーどどん波はターレスダークの掌で受け止められてしまった。

 

『ならば死ね、とは言わんさ。じゃじゃ馬慣らしも楽しいもんだからな!』

 そして掌を拳に変えると、タイツの頬を殴り、鳩尾を突く。

「がっ! あぐっ……!」

 

『おっと、加減を間違えちまったか? 簡単に死んでくれるなよ、俺の歴史にはいなかったサイヤ人の女なんだからな。

 怪我を治すには、これから新たに実る魔神精樹の実でも食べさせればいいだろう。サイヤ人には不要な甘さもキリとやらの効果で無くなるだろうから、一石二鳥だ』

 

 ぐったりと脱力したタイツを脇に抱えると、アカダークの方に視線を向ける。アカダークと戦っているのが、ランファン以外は気のない人造人間達であるため、目視以外で戦況を確認するのは難しいのだ。

『あの野郎、まだ一人も始末してねぇのか。仕方ない、また魔神精樹の実を見つけて持って行ってやるしか……っ!? なんだ、この気配は!』

 ぞっとするような寒気を覚えたターレスダークが、とっさに身構えようとする。

 

『がはっ!?』

 だが、その前に何者かの拳がめり込んでいた。

(だ、誰だ、こいつは!?)

 腹を殴られ前のめりになるターレスダークの視界には、逆立った金色の髪が映る。しかし、こんな髪形の奴はいなかったはずだ。新手か?

 

 顔を確認するより早く、今度は顎にアッパーを食らって上に吹き飛ばされる。衝撃に意識が一瞬途絶えた。

『くっ! 何者だ!?』

 空中で回転して衝撃を逸らし、態勢を立て直す。そして彼が見たのは、いつの間にか奪い返されたタイツを片腕で抱えた、金髪の少年の姿だった。

 

「何者だ、だと? 寝ぼけてるのか? 顔だけは同じはずだぜ」

 髪が黒から金色へと変わって逆立ったターレスは、やはり黒から青へ変わった瞳で驚愕するターレスダークを睨みつけた。

 

『な、なんだ、その姿は!?』

「姿……? へぇ、こいつは驚いたぜ。まさかこのタイミングでなれるとはな。伝説のスーパーサイヤ人にな」

 ターレスダークからタイツを取り返す事も出来ず、エネルギー弾の爆発に飲み込まれた。

 その時、ターレスはダメージに耐えるために気を漲らせると同時に、強い怒りに支配された。ターレスダークへの怒り、そして異なる歴史の自分に勝てない自分への怒りだ。

 

 そして、気が付けばスーパーサイヤ人に覚醒していたのだ。

 

『それが、伝説のスーパーサイヤ人だと!? たしかに、ドミグラから聞いていたのと同じ姿だが……あり得ん! だが、この気の大きさは……!』

 異なる歴史の自分がスーパーサイヤ人に成った事を否定したいターレスダークだったが、ターレスの気が二十倍界王拳を使用していた時の倍以上の大きさになっている事を感じ取り、否定しきれなかった。

 

 今のターレスの戦闘力は、神精樹の実の効果と合わさって8400万。ターレスダークを大きく上回っていた。

 

『まさか、この歴史の俺は王族やエリートの血筋だとでも言うのか!?』

「そんな訳がねぇだろう。王族ともエリートとも縁遠い、下級戦士の生まれさ」

『だったら、何故!?』

 

「そりゃあ……お前の言うサイヤ人らしい生活じゃあ、手に入らない力がある。そう言う事じゃないか?」

 ターレスダークにとって、ターレスのその答えはとても認められるものではなかった。力と自由を重視し、甘さに見向きもしなかった彼の存在そのものを否定されたに等しかったからだ。

 

『認められん! カカロットのように腑抜けた俺が、伝説のスーパーサイヤ人に成るなど……認められるものかーッ!』

 怒りに我を忘れてターレスに飛び掛かるが、既に力の差は逆転していた。

 

「下級戦士だ、エリートだと喧しい! そんなつまらねぇことに拘っているから、テメェは元居た歴史でも負けたんだろうさ!」

 ターレスはターレスダークが繰り出した拳を全て弾き、突き出された蹴りを掴んで放り投げた。

 

「そんなテメェがこいつに手を出すのは千年早い! 失せろっ、サイヤ人の面汚しが! フォトンウェイブ!」

 そして、フォトンウェイブを放ってターレスダークを魔神精樹の幹まで吹き飛ばした。

 

「ケッ。異なる歴史の自分か……他の歴史のベジータ王子やラディッツ達が来た時に嫌な予感がしたが、その通りだったな。他の歴史にはカカロット、悟空以外まともなサイヤ人はいねぇのか?」

「他の歴史のあたしとは、あいつは会ってないみたいだったしね」

 

「お前、気が付いていたのか?」

「うん、まあね。それにしても……あたしってそんなにいい女なんだ? 手を出されそうになったら、怒ってスーパーサイヤ人に成っちゃうぐらい。エヘヘ」

 

「なっ! お前、全部聞いてたのか、あれは――」

 ターレスがタイツに何か言い返そうとした時、弱っていたはずのターレスダークの気が急激に膨れ上がった。

 

 その時、アカダークが敗れてトーマ達がこちらの様子に気が付く。

 

「あいつ、大猿になるつもりか!」

 魔神精樹の幹にもたれかかったまま、ターレスダークが人工の月を見上げている。

『暴れた後は好きにしていいという取引だったな。なら、この星を直接ぶち壊してやる!』

 追い詰められた彼は、このまま大人しく倒されるぐらいなら何もかも道連れにしようとしていた。

 

 キリで強化された彼が大猿化すれば、戦闘力は数億を超えるはずだ。パワーアップしたトーマでも敵わない。

「ちっ!」

 ターレスは咄嗟にベジータ王子が作ったパワーボールを気弾で破壊したが、ターレスダークが新たなパワーボールを次々に放つ。

 

『もう遅い! 貴様等をこの惑星もろともに木っ端みじんにしてくれる!』

 大猿への変身を遂げたターレスダークが立ち上がる。下級戦士出身のはずだが、キリによる強化の副作用か理性を保っていた。

 

「そうはいきません。時間はかかりましたが、完成しました」

 その時、4号が現れた。頭上には彼自身よりも巨大な気弾を浮かべている。

『貴様は、生きていたのか。まさか、それは……!』

 

「これがこの歴史の地球の力! お前が壊せるものは、この星には何一つありはしない!」

 4号が掛け声とともに放った、輝く巨大な元気玉を見たターレスダークは理解した。あれは、自分が元居た歴史でカカロットが放った、自分を殺すはずだったのと同じ技だと。

 

『ここまで来て、ただで負けてたまるかーっ!』

 しかし、ターレスダークの力は大猿化した事で最終形態のフリーザを超え、クウラに迫るまでになっている。口から強烈なエネルギー波を放って元気玉を押し返そうとした。

 

「くっ!」

「フォトンウェイブ! 動けるものは全員力を貸せ!」

 4号だけではターレスダークのエネルギー波に押し負けてしまう。ブルマや悟空達に仙豆を食べさせてきた儂は、微力ながら気功波で元気玉を押し始めた。

 

「おうっ! かめはめ波ーっ!」

「もう一回、デスレイザーっ!」

「気功砲!」

「起こすのが遅いぞ! ギャリック砲ーっ!」

 ブランチ、マロン、シルバー大佐、そして意識を取り戻したベジータ王子に他の皆も加わり、一度は押し返されかけた元気玉はターレスダークを飲み込み、魔神精樹の幹を抉り取ってそのまま吹き飛ばした。

 

 おそらく、元の歴史に戻った後で史実通り死んだだろう。

 

「これで一件落着……なんだが、何故か残っておるな、もう活動を停止したようだが」

 爆発の後には、キリも魔力も抜けたただの神精樹に戻った巨木が枯死していた。

「何らかの原因でキリでの強化が解けたため、この歴史に残ってしまったのかもしれませんね。ドクター、時の界王神様にどうすれば良いか聞いてもらえますか?」

 

「そうだな。だが、まずは負傷者の手当てと、国王様への報告が先じゃな。フリーザ軍への報告の前に、クラッシャー軍団の面々を懐柔か脅迫せねばならんし……っと、ターレス、どうした?」

 儂がハッとして振り返ると、ターレスの変身が解け、タイツを抱えたまま落下しかけていた。そこを駆けつけたダイーズが二人を支える。

 

「おい、どうした!? もしかして、お前にもダメージが残ってるのか? 俺達を回復させた仙豆はどこに……うっ……」

 そして、ひとしきり騒いだ後ダイーズも急に白目を剥いて意識を失った。

 

「よし、4号、彼らの手当てを頼む! 儂は国王様やレッド将軍に報告する!」

「分かりました!」

 こうして、儂等は地球の危機を乗り越えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ターレスダークが元の歴史に戻り魔神精樹が枯死した事を察知したドミグラは、たいして失望した様子も見せず杖を引いた。

「どうやら、レクリエーションの時間はここまでのようだな」

 

「遊びだと? 舐めた事を抜かしやがって!」

「そう怒るな。私が本気になれば、今すぐクラッシャー軍団をセル並みに強化する事も出来るのだぞ?」

「チッ、止めを刺していないのか。ゲロの野郎、カカロット以上に甘い奴だ!」

 

 ベジータが苛立ちを露わにするが、ドミグラはそれ以上彼に構わずこの状況を見ているはずの時の界王神に向けて言葉を発した。

「私と手を組むつもりはないようだな。残念だが、まだ返事は待っているぞ」

 そして、ロベルとシャメルを引き連れてタイムパトロール達の前から立ち去った。

 

「あいつら、まだ何か企んでるみたいだな。次こそ負けねぇぞ!」

「ああ、奴らのお陰で俺も新しい戦法を編み出せそうだ。今度はその礼をしてやらないとな」

『悟空君もバーダック君も、そんな楽しそうにしないでよ。とりあえず、一旦時の巣に帰って来て頂戴。バーダック君はそのまま直帰してもいいわよ~』

 

「そいつはありがたいが、あれはどうするんだ? ドミグラがいなくなっても残ったままだぜ」

 バーダックが目で指したのは、枯死した魔神精樹の残骸だ。大猿化したターレスダークと共に吹き飛ばされた部分を除いてもちょっとした山ほどの体積がありそうだ。……根も含めれば、それこそ山脈並みになるだろう。

 

『あ、あれ? ドミグラの奴、面倒な置き土産を。ちょっと待って……あ、元の歴史に戻せない!』

 何事か調べていた時の界王神が、焦ったような声を上げた。

「どういうことですか、時の界王神様?」

 

『あの魔神精樹、まあもう魔力が抜けているからただの神精樹だけど、元の歴史ではきれいさっぱり吹き飛ばされて存在しないはずだったのよ。それなのにこの残骸を元の歴史に戻したら、私が歴史改変を起こす事に成っちゃうわ!』

 

「フンッ、どうでもいいだろう。どんなにデカくてもただの枯れ木だ。ゲロなら、貴重な研究サンプルになると喜んで受け取るだろうぜ」

『ベジータ君、それはそれで拙い気がするんだけど……なんか変な事を考えそうな気がして不安だわ。でも、時の巣やコントン都に置くわけにもいかないし。

 仕方ない。ゲロには悪用しないよう釘を刺しておくわ。バーダック君からもお願いね!』

 

「おいおい、これから生まれるガキの世話で大変だってのに……って、行っちまいやがった。しかたねぇ、言うだけ言っておくか」

 そして、ただの神精樹に戻った巨大な朽木は地球に残される事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後はやる事が多かった。もし儂が悟空なら、「戦いより大変だった」と零していただろう。

 まず、国王様やレッド将軍への報告は簡単に済んだ。彼らは元々事情を知っていたからな。後は国民へ事態が解決した事を報せ、避難活動を停止し、バトルジャケット部隊やビーム戦車部隊等の撤収活動等は、彼らが指揮してやってくれる。

 GCGの方も、副社長とチューボが上手くやってくれているようだ。

 

 ターレスとタイツの治療も、無事終わった。

「しっかし、驚いたぜ。トーマやセリパより先に、まさかターレスがスーパーサイヤ人に成るとはな」

「ベジータ王子もなりかけていたみたいだからな。やれやれ、こうやって若い世代に追い抜かれていくのか」

「よく言うぜ、トーマ。俺がスーパーサイヤ人に成ったとしても、神精樹の実の効果が切れた今じゃお前に勝てそうにないってのに、追い抜くもなにもねぇだろう」

 

「姉さん、ターレス義兄さんと抱き合ってたって本当っ!?」

「抱き合ってはないわよ。抱かれはしたけど。でも、片腕で抱き寄せられてたって感じ?」

「な、なかなか大胆だべな。キ、キスとかしたんだべか!?」

「映画じゃないんだから、そこまでしないわよ!」

 

「へぇ。じゃあ、テレビ局のプロデューサーや演出家に話してきてやろうか? この事件が映画化する事に成ったら、絶対採用されるよ」

「ちょっ、ラズリ、それは止めて!」

 

 そして、意識を取り戻すと二人共話の中心になった。話題の内容は異なるが。

 

「それにしても、親父が言っていたことが本当になったな。スーパーサイヤ人に成る条件に、血筋は関係ない事がこれではっきりした」

「そうだな。顔は同じでも、こいつは俺と血がつながっちゃいない。へへ、その内スーパーサイヤ人が珍しくなくなるかもな」

 

「そいつはいいな、バーダック。フリーザの野郎、血の気が失せすぎて全身真っ白になっちまうんじゃねぇか?」

「有難味も何もあったもんじゃないね。まるでスーパーサイヤ人のバーゲンセールだ」

「だとしても、次にスーパーサイヤ人に成るのはこの俺だ! ゲロによるとあと一歩まで行ったようだからな」

 

 下級戦士出身で、地力ではトーマやセリパはもちろん、ベジータ王子やラディッツよりも下のターレスがスーパーサイヤ人となった事は、サイヤ人達にとって良い意味で衝撃的だったようだ。

 ベジータ王子も、ターレスダークとの戦いの最中に自分も不完全なスーパーサイヤ人に成る事が出来たからか、原作で悟空がスーパーサイヤ人に成ったと知った時ほどの焦りや悔しさは覚えていないようだ。

 

 そしてターレス達が話している内に、儂はフリーザ軍への報告も済ませた。魔神精樹の出現は、惑星フリーザNo.79からでも見えただろうから、隠蔽は無理がある。突然の事態だったので、監視衛星の光学迷彩で誤魔化す事も出来なかったからな。

 

 とはいえ、詳しく報告した訳ではない。

「敵に襲撃され、妙な巨大植物に星のごく一部が荒らされましたが、ベジータ王子達の尽力で事態を鎮静させる事が出来ました。詳しい報告は調査を纏めて、明日行いたいと思うのですがよろしいですかな?」

 儂が伝えたのはこれだけだ。そして、No.79の基地の責任者からそれで構わないと返答を受け取ったので、明日までに偽装情報をそれらしく纏める必要がある。

 

 そのために不可欠なのが、クラッシャー軍団のメンバーとの交渉と情報の聴き取りだ。彼らの態度次第で、擬装する情報の方向性が変わる。それに、フリーザ軍のコンピューターの情報を見てみるといくつか気になる点があったため、その確認も行いたい。

 

 とはいえ、クラッシャー軍団のメンバーを拘束するのは非常に楽だった。アカへの合体が解けたアボとカドは気絶していたし、ダイーズや他のメンバー……ナッパと戦っていたカカオも急に衰弱して意識を失ってしまったからだ。

 

 魔神精樹の副作用か何かと、実に含まれていた魔力やキリが切れたのが原因だと思われる。

 その意識の無い彼らにミクロバンドを嵌めて小さくし、戻すときにカッチン鋼製の手枷や足枷を嵌めるのは容易い事だった。

 

 意識が戻っても、もう一度小さくなるか、さもなくは手足を切り飛ばさなくては枷を外す事は出来ない。彼らにカッチン鋼を引き裂くのは無理だろうからな。

 

「お、俺達をどうするつもりだ?」

「もしかして、また手下に成れとかいうつもりじゃないだろうな?」

 

「手下に成れと言うつもりはない。打倒フリーザと言う目標達成のために、協力してもらいたい」

 儂がそう言うと、アボとカドは驚いた様子で顔を見合わせた。

「おいっ、本気か!? 俺達はカカロット達の申し出を断った挙句、奴らを半殺しにしているんだぞ!」

 代わりに、ダイーズがそう聞き返してきた。なので、儂も「本気じゃ」と答えた。

 

「ダイーズ、お前はターレスからだいたい聞いていると思うが、他の面々のために再び説明しよう。

 儂等は銀河パトロールでもなければ、正義のために戦う戦士でもない。君らを捕まえて、監獄か何処かでこれまでの罪を償わせようとは、微塵も考えておらん。

 もちろん、新たに罪を犯すのは止めてもらうが」

 

 クラッシャー軍団は既に捕まっているので、ターレスが話した時よりやや強気に話を進めさせてもらおう。

 

「俺達に、善人に成れって? それは無理な話でっせい」

「アモンドだったな? そこまでは言っていない。単に、この星で犯罪とされている事……殺し、理由のない暴力、略奪、破壊活動、そうした事を止めてくれればいい」

 

「ンダ?」

「それは、善人に成れって言っているのと何が違うんだって、言ってるぜ」

「俺達も同じ意見だ」

 

「……君達の中の善人の基準は低いな。まあ、その基準なら善人になってくれと言うしかないな。だが、別に難しく考える必要は無いはずだ。

 君らも、フリーザ軍で意味もなく仲間同士で殺し合いをしたり、基地の設備を壊したり、盗んだりはしてはいないだろう?」

 

「まあ、それはそうだが……」

「この星のルールが、フリーザ軍より細かい場合はどうすりゃいい?」

「それに、殺しを禁止されると俺達はどうやって生きていけばいいんでっせい?」

 

「ルール、法律の方は面倒だと思うのなら、普段は地球人が暮らす街から離れた場所に専用の快適な住居を用意しよう。

 生活の糧を得る方法、仕事については――」

 

「カカロットやターレスから聞いたぜ。とりあえず、あんたの言う事を聞いていればいいんだろう? フリーザを倒した後は、自由にしていいそうだが本当か?」

 儂の言葉を遮って、ダイーズがそう尋ねて来る。儂は、「もちろんだ」と答えた。

 

「とはいえ、フリーザ軍で使われている通貨は持っていないが。フリーザやクウラを倒した後も、相談に乗ろう。君らを大金持ちに出来るかは定かではないが、力になるつもりだ」

 用が済んだら後は知らん、では信頼関係を築く妨げになる。儂等も彼らの力を借りるのだから、儂等も彼らの力になるのがフェアな関係だろう。

 

「それと、君らの治療も行おう」

「治療? 傷は治っているようだが?」

「傷ではなく、魔神精樹の実を食べた事で衰えた生命力と減った寿命の治療じゃ」

 

「じゅ、寿命だと!?」

「減ってるのか!?」

「うむ、君達が意識を失っている間に行った検査によると、残りの寿命が本来の半分程になっている可能性が高い」

 

 狼狽えた様子でお互いに顔を見合わせるクラッシャー軍団の面々。

「あの野郎、そんな事一言も言ってなかったでっせい!」

「チッ、もう選択肢はねぇな。だが、減った寿命をどう戻すってんだ?」

「この薬、長命薬を飲めば治るはずだ」

 

 こうして儂等は新たな協力者を得たのだった。ミクロバンドで彼等を一度小さくして枷を解き、自由にしてから長命薬を渡していく。

 なお、彼らのパワーアップはもう解けているので、もし暴れ出しても鎮圧可能だ。……バーダックも帰って来ているし。

 

「さて、では改めて質問だが……フリーザ軍が侵略する予定だった星が神精樹と思われる被害に遭って滅びているようなのだが、心当たりはないかね?」

 フリーザ軍のコンピューターによると、ここ最近侵略するために目を付けた星に兵士を送り込んでみると、兵士が到着した時には星が生命の存在しない砂漠だけの星になっていた、と言う事がいくつかあったらしい。

 

 手掛かりは、山のように巨大な枯れた樹らしい。星が砂漠化した原因は、おそらく神精樹だろう。

 

「なんだと? 俺達が地球に来る前に神精樹を育てるのに使った星は、フリーザ軍の侵略対象になっていない星ばかりだぞ。なあ、カド」

「ああ、その通りだ、アボ。それに、証拠隠滅のために神精樹の実を収穫した後は星をぶち壊していたから、欠片も残っていないはずだぜ」

 

「砂漠化した星の位置もバラバラで、君達の航路から離れていたからそうだろうとは思っていたが、やはりか。

 どうやら、君等以外にも神精樹の実を使っている者達がいるようだ」

 

 頭の痛い問題だが……それはそれで都合がいい。地球に神精樹を植えたのもそいつらのせいだろうとフリーザ軍が思い込むよう、誘導する方向で報告を行うとしよう。

 




〇戦闘力推移

・ランチ:146 → 182万 → ブランチ化 → 364万 → 神精樹の実 → 5460万
・マロン:170万 → 213万 →神精樹の実 → 3195万 



〇カッチン鋼の枷

 構造的にはただ輪っか状の金属塊。鍵も何もないので、ミクロバンドで小さくした相手に使うと再び小さくなる以外の方法で脱出する事は不可能。なお、ナメック星人は脱出可能。



〇魔神精樹の副作用

 生命力の減退と寿命が縮む副作用は、ドラゴンボールで願う以外にも、不死鳥が存命であるこの作品の場合は不死鳥に触れる、不死鳥から作られる長命薬を服用する、等の方法で治療可能。



〇ベジータが半スーパーサイヤ人で、ターレスがスーパーサイヤ人だった理由

 穏やかな生活をしている期間の長さの違いによるものです。この作品のターレスは3歳から地球で暮らしているのに対して、ベジータが地球に移住したのは去年だったのね。



〇阿井 上夫様からファンアートを頂きました!


【挿絵表示】


スーパーサイヤ人になったターレスが、タイツを片腕で抱きよせている凛々しい姿が描かれております。ぜひご覧ください。



 excite様、みそかつ様、大自在天様、匿名鬼謀様、変わり者様、ぱっせる様、PY様、ダイ⑨様、佐藤東沙様、泡銭様、ヴァイト様、太陽のガリ茶様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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