ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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118話 第三子誕生の宴と、地球外での出来事

 ラニが誕生後、母子共に経過は良好で三日で無事退院となった。

「えー、本日はこの地球で新たなサイヤ人の血を継ぐ、ラニの誕生を心から祝い……おいっ!」

 そして、ラニの誕生から一週間、ブリーフの家で祝いのパーティーが開かれたのだが、祝辞を読み上げていたベジータ王子が突然儂に向かって怒鳴りだした。

 

「どうされましたかな、王子?」

「ゲロ、この台本を考えたのはどいつだ?」

「我が社の副社長、カモミ・ルロマンのはずだが」

 

「あいつか。どうりで妙な事を書きやがって……。

 ギネ、バーダック、よくやった、今後も励め! お前ら、今日は宴だ! 者共、大いに食って飲み、二人を讃えろ!」

 ベジータ王子は勢いよく簡潔な祝辞を述べると、台本を空に向かって投げ、気弾を放って燃やしてしまった。花火のように、色とりどりの炎を上げて燃えつきる台本と、サイヤ人達があげる歓声を合図に宴が始まる。

 

「助かったよ。あんな分厚い台本を全て読み上げるのを待っていたら、腹ペコで待ちきれないところだったよ。ねー、ラニ?」

「だ~っ」

「ラニはまだ料理は食えねぇだろう」

「だからあたしがその分食べるのさ」

 

 本日の主役であるギネとバーダックはラニを間に挟んで、さっそく料理を食べ始めている。夫妻を含めて、ベジータ王子の祝辞は好評だったようだ。

「よう、バーダック。もうラニの戦闘力は測ったのか?」

「トーマ、下らねぇことを気にしている暇があったら、さっさとセリパと身を固めるんだな」

 

「バーダック、あたしとトーマはまだそんなんじゃないって何度言ったら分かるんだい」

「そんな事言って、セリパだってトーマと何度かデートしてるじゃないか」

「それはそうだけど、まだ『付き合う』って言ってないからあたし達は付き合ってないんだ!」

 

「トーマ、お前……まだ言ってねぇのか?」

「いや、言ってるんだぜ、何度も。だけど、その度に『出直してこい』だとか『やり直し』だとか……」

 胡乱気な視線を向けられたトーマは、焦った様子でそう言い訳した。

 

 何度もトーマは本当に何度もセリパに告白しているそうだが、模擬戦が終わった後に「俺の女になってくれ」と言ったり、模擬戦の前に「俺のガキを産んでくれ」と言ったりと、時と場所のチョイスが儂でもそれはどうなのかと言いたくなるものだったようだ。

 

「お前……なんでデートした時にやらねぇんだ?」

「ははは、そりゃあデート中はそれどころじゃねぇからに決まってるだろ」

 慣れない地球人流の交際を上手く進めるだけで、デート中のトーマは精いっぱいのようだ。……プロポーズよりデートに気を使うというのはどうなのだろう?

 

「セリパ、もう自分から言ったらどうだい?」

「トーマがスーパーサイヤ人に成ったら考えてやるよ」

「伝説のスーパーサイヤ人が、付き合う条件とは大きく出たな!」

 どっと笑いだすパンブーキンとタロ。トテッポは黙々と料理を口に運んでいる。

 

「お、俺に妹が……くっ、まだ慣れん!」

「もうラニちゃんが生まれて一週間ですよ? それに、おむつの替え方も練習していたんですよね?」

 一方、妹が出来た長男のラディッツはまだラニに触れる事も慣れていないようだ。リークに問われたラディッツは、バーダックに睨むような視線を向けた。

 

「親父に先を越されて、一度も実践できていない……!」

「へっ、獲物を横取りされるお前が悪いのさ。悔しかったらテメェもさっさとガキを作るんだな」

 悔し気なラディッツに対して勝ち誇るバーダック。実は彼も最初はラニを抱き上げる時に、力を込め過ぎたらどうしようと躊躇い、手つきが覚束なかったのだが、その事は棚の上にでも置き忘れたらしい。

 

「バーダックさん、デレデレじゃないですか。息子と娘じゃ違うのかな? それとも、保育器に入れていないからかな?」

 サイヤ人の幼児は、頭を強く打つと記憶の喪失や性格の大きな変化などが起きてしまう。それを防ぐためにも、生まれた赤ん坊はある程度大きくなるまで保育器の中で育てられるのが、惑星ベジータでは一般的だった。ラニは三人目の子供なのに、バーダックが赤ん坊の接し方に慣れていない理由の一部もそれによるものだ。

 

 その保育器は惑星ベジータの消滅と同時に全て消滅したが、サイヤ人の科学者であるモロコ、シトウ、そしてニオンが生き返っているので、地球でも同じ物を作る事は可能だ。

 しかし、ギネの希望でラニは保育器を使わず育てる事になったので、用意されていない。

 

 そのため、リークを含めて赤ん坊に触れる事に慣れているサイヤ人は誰もいない。

「兄ちゃんもそんなに心配する事ねぇって。赤ん坊だけんど、ラニの気はかなりデカいんだ。ちょっと前のオラより強いかもしれねぇ」

「カカロット、いくら気が大きくてもラニは赤ん坊だ。無茶はするなよ」

 

「分かってるって。でも、兄ちゃんが触ったぐらいでどうにかなる事はねえさ」

 ラニの戦闘力は、計測によるとなんと1万。どこぞの伝説のサイヤ人を連想させる数字だ。しかも、サンが生んだチチの双子の弟妹、スイとモウと同様に儂が移植した人造人間としての要素もギネから受け継いでいる。

 

 すなわち、永久エネルギー炉による驚異的なスタミナ、脳と心臓にある核の何方かが残っていれば生存可能な再生能力、宇宙空間でも生存と活動が可能な生態、そして当然サイヤ人の強さと頑健な肉体……何より、移植された地球人の細胞の働きにより、高い潜在能力が備わっている可能性が高い。

 

「おらのスイとモウが生まれた時よりも気が大きいなんて流石だべな」

「こりゃあ、武術を教える頃には追い越されているかもしれんな」

「武天老師様はいいじゃないですか。私なんてもう追い越されてるんですよ」

 

「クリリンは髪の量も負けてるけどな!」

「だからこれは剃ってるだけだってばっ!」

 わははと笑いが巻き起こり、その隙を縫うようにターレスがラニに話しかける。

 

「よう、ラニ。ターレス兄ちゃんだぞ」

「お、お前はラニの兄ではない! 兄はこのラディッツだ!」

「だったらさっさと抱き上げてやるんだな」

「まったくだぜ。何なら、このナッパ様が子守をしてやろうか? ベロベロバ~、ナッパおじさんでちゅよ~」

 

「おもしれぇ顔だな、ナッパのおっちゃん!」

「ま、まったくだべ。悟空さ、おら、腹がいてぇっ!」

「ははははっ! こいつは傑作だぜ、ナッパ!」

「そうか、そうかって、ガキ共! お前らは笑い過ぎだっ! 特にターレスっ、スーパーサイヤ人に成ったからって調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

 ラニも笑ったが、悟空達にもナッパの変顔は大いに受けたようだ。

 

「あ~、面白かった。そう言えばギネさん、四身の拳での修行は一旦やめるの?」

「ううん、続けるつもりだよ。まだラニから目を離せないからね。一人はラニについていて、もう一人が家事をして、後の二人で修行かな。自分同士で戦うって言うのも、修行になるからね」

「そうなんだ。すっかり四身の拳が主婦必須の技に成っちゃったわね」

 

「四身の拳には妊娠している間だけじゃなくて、育児や家事で大助かりだべ。おら、修行も捗るし、おらはもう四身の拳が使えなかった頃には戻れねぇだよ」

 サンがそうタイツの言葉に頷く。彼女が妊娠している時に、修行を続けるために儂が提案した四身の拳の習得と活用は、今や女性武道家になくてはならない技になったようだ。

 

 ちなみに、牛魔王やバーダックが家事や育児をしていないわけでは無い。牛魔王は家事の方は使用人がしているし、育児は一時期チチを一人で育てていた経験もあり、バーダック達に教えるほど得意だ。

 そしてバーダックも彼なりに家事はしているし、ラニの育児も熱心過ぎてラディッツが手伝う隙が無いほどだ。

 

「まったく、お陰で戦っている時はビビったぜ。ガキだけじゃなくて身重の女にまで助けられた挙句、身を挺して庇われたのかと思って、このレズン様が危うく改心するところだったんだぞ」

 先日の事件ではチチ、そしてギネと戦ったレズンがそう愚痴を口にする。

 

「それは誤解だった訳だが……身重の間だけじゃなくて、育児と戦闘とトレーニングを両立するためにこんな技まで開発するなんざ、地球人はとんだ戦闘民族でっせい」

「いや、活用はされているが妊婦や主婦のために編み出した技と言うわけではないのじゃが……」

 アモンドの感想に、鶴仙人が困り顔でそう呟く。

 

「しかも、俺達ビーンズ人に匹敵する頭脳の持ち主が何人もいやがる。人造人間やサイヤ人以外にも強い奴がいるし、地球人ってのはいったい何なんだ?」

「一言では答えられんな。まあ、柔軟性に富んだ種族である事は間違いないな」

 ラカセイにそう答える儂だが、そうとしか答えられない。儂自身も気が付くと戦闘力が20万を超えているしな。

 

「チチちゃんもそろそろ習っておいた方がいいんじゃない?」

「そんな~、おら達にはまだ早ぇだよ。なあ、悟空さ?」

「オラはそんな事ねぇと思うぞ、チチ。来年には――」

「ら、来年っ!? 来年にはもうおらをお嫁に貰ってくれるんだべか!?」

 

「いや、来年には天下一武道会が……」

「そ、そんな急すぎるべ。修行以外にも、花嫁修業もやらねぇと」

「ダメだ、もう聞こえてねぇ」

 頬を赤くしてぶつぶつ呟き出すチチに、弱ったなと苦笑いする悟空。牛魔王とラディッツは、ほっと胸をなでおろした。

 

「さ、流石に来年は早すぎるべ」

「まったくだ。そう言う事は背が伸びてからするものだ」

「あははは。でもセリパは習っておいてもいいかもね。タイツはもう使えるんだし」

「……考えておくよ」

 

「セリパっ、お前やっと……!」

「勘違いするんじゃないよっ! 戦闘に使えそうだって思っただけだ!」

「これは、覚える時はこっそりやらないとからかわれる事になるわね。先に覚えておいてよかったわ」

「私も今からこっそり練習しておこうかしら」

「ブルー、それはジョークだよな?」

 

「そう言えばターレス、あれからスーパーサイヤ人になかなか変身できないってのは本当か?」

 バーダックがそう尋ねると、ターレスは「そうだ」と頷いて答えた。

「初めてなった時は頭に血が上っていたから気が付かなかったが、一度の変身で体力をかなり持って行きやがる。あんたやベジータ王が変身した後も疲れた様子が無いから、大猿になるより負担が少ないのかと思っていたら大違いだったぜ」

 

 ターレスはターレスダークとの戦闘後、再びスーパーサイヤ人に成る事が中々出来ずにいた。何度か成功したが、戦闘中に同じ事をしたら変身する前に倒されてしまうだろうと思う程、時間がかかっている。

 データを解析したが、その原因はターレスの実力不足、もしくは感情の高ぶりが足りないというものだった。

 

「簡単に変身するコツでもあるのか?」

「さあな。俺はトワ……歴史改変者に強化されたからな。実はスーパーサイヤ人に成った後、ある程度強くなるまでの間の記憶がねぇ。スーパーサイヤ人1には気が付いたら出来るようになっていた、としか言えねぇ」

 

「ベジータ王が大きな体力を消費せず変身できるのは、彼の肉体が仮初のものだからじゃろう。体にかかる負担が、本来の肉体とは異なっていると考えられる」

 アニメオリジナルのあの世一武道会編で悟空が百倍界王拳を使い、スーパーサイヤ人時に界王拳を発動させても平気だったのは、肉体が生身ではなかったからだという考察を目にしたことがある。ベジータ王の場合も同じことが言えるのではないかと、儂は考えている。

 

「つまり、どうすりゃいいんだ?」

「地力を鍛えるしかないな。模擬戦や試合の度に、怒りで感情を高ぶらせるのも無理じゃろう?」

「確かにな。しばらくは界王拳で何とかするか」

 

 一方、ベジータ王子はラニやバーダック夫妻に近づかず、料理を黙々と食っていた。

「ベジータ、お前、祝いの席なのに暗いな」

「って言うか本当に支配者じゃないんだな、お前」

 そんなベジータ王子に、アボとカドが話しかける。

 

「喧しいぞ。貴様等、しばらく前に俺に向かってぶっ殺してやると啖呵を切っていたのを忘れたんじゃなかろうな?」

「覚えてるが、今は仲間だろ? いちいち殺気を飛ばすなよ」

「そうだそうだ、お陰で模擬戦の時肝が冷えっぱなしで堪ったもんじゃねぇ!」

 相変わらず刺々しいベジータ王子の態度に、冷や汗を浮かべながらもそう主張するアボとカド。

 

「まあまあ、祝いの席でそんな苛立つなよ。そう言えば、これ食ったか? あっちのテーブルにあったぜ」

 そんなベジータ王子に、ヤムチャが料理を乗せた皿を持って話しかける。ちなみに、背中には怯えた様子のプーアルが震えている。

 

「……寄越せ」

「おう、いいぜ。これって、惑星ベジータの料理なんだろ? サイヤ人ってもっとワイルドな料理ばっかり食ってると思ったけど、意外と手の込んでいる料理を作るんだな」

 

「俺もこれは初めて食う料理だ。大方、バーダックの仲間が作った大衆料理だろう」

 緊張感のないヤムチャの様子に毒気を抜かれたのか、ベジータ王子から殺気が消えた。ほっと息をつく、アボとカドとプーアル。

 

「へぇ、じゃあセリパさんかな? 意外と家庭的な面があるんだな、いい奥さんになりそうだ」

「いや、悪いが作ったのは俺だ。お袋は主役だし退院したばかりだからな」

「な、なにっ? ラディッツ、本当に貴様が作ったのか?」

「は、ははは、悟空の兄貴は良い旦那さんになりそうだな」

 

 最早意外でも何でもないが、家庭的な面を見せるラディッツに改めて驚くベジータ王子とヤムチャ。そのやり取りで空気がさらに緩んだからか、今度はベジータ王子からヤムチャに話しかけた。

「貴様は何故こっちに来て、俺に話しかけた? バーダックの周りには兄弟弟子も師匠も女もいるだろうが」

 

「いや、こっちがいまいち盛り上がってなかったからさ。それにマロンはガールズトークの真っ最中だし」

「背中にくっついているペットと仲良くしていればいいだろう」

「おいおい、プーアルをペット扱いは止めてくれ。こいつは俺の相棒だ」

「そ、そうだ、そうだ! 本気を出したら、お前なんてボクに傷一つ付けられないんだからな!」

 

「はーっははははっ、つまらんジョークだ! なんなら、試してやってもいいんだぞ?」

「それは止めておいた方がいいわよ、恥ずかしい思いをする事になるから」

「なんだと!?」

 プーアルの啖呵に高笑いをあげるベジータ王子に、近づいて来たブルマがそう忠告した。

 

「ところでベジータ……あんたカモミーおじさんが描いた台本を焼いたじゃない、あれって台本の指示よね?」

 そして、耳打ちするように小声で王子がパーティーを始める前に行ったスピーチについて尋ねる。

「そうだ。始まる寸前でいきなり王子としてスピーチをお願いしますと渡してきたと思ったら、『ここでこの台本を空に投げて気弾で焼き、後は自分の言葉で短く纏めるように』と、ふざけた事が書いてあった。

 長々と下らんことを話すよりマシだったから、言う通りにしてやったがな」

 

「やっぱりね~。あの気弾で色々な色の炎を出して燃える紙、あたしが発明したのよ。テレビ局の人にこんなのできないかって相談されてね」

 カモミー副社長が描いた台本に使われていた紙は、ブルマが発明した特殊なものだった。手品等で使われる低温で燃えるマジックペーパーを参考にしたもので、基本的には桃白白の映画やパンプットが主演しているドラマなどで使われている。

 

「なかなかきれいに燃えてたわよ」

「フン、それは自慢のつもりか?」

「違うわよ、気の性質によって燃える色が変わるの。まあ、どうしても変化しちゃうだけなんだけど」

 

「ああ、それで紙を燃やすためだけに呼ばれたりするのか。ついに俺もドラマデビューかと思ってテレビ局に行ったら、日雇いのバイトみたいな扱いだったからがっかりしたぜ」

「それはヤムチャのあがり症が治ったってまだ知らない人が多いからよ。前の天下一武道会で、水着姿のラズリを見て予選落ちしたのは、衝撃的だったもの」

 

「貴様、サイヤ人でありながらそんな情けない負け方をしたのか!?」

 あがり症だった時のヤムチャの失敗は周知の事実だったが、ベジータ王子はまだ知らなかったようだ。戦闘民族サイヤ人があがり症のせいで負けたと知り、即座に激高する。

 

「いや、あの時はマロンと付き合う前で……それに、サイヤ人ハーフになってから一年もたってなかったし……」

「ごちゃごちゃと情けない言い訳をするな! 宴が終わったら貴様の根性を叩きなおしてやる!」

「ま、待ってくださいっ! だったら、ボクを三分以内に倒せなかったらヤムチャ様を許してください! 後、ボクが勝ったらちゃんと名前を呼んでください!」

 

「いいだろう、だが後で泣いても知らんぞ!」

 ヤムチャを咄嗟に庇うプーアルに、そう怒鳴り返すベジータ王子。あちゃーという顔をして額を押さえるブルマ。

 

 なお、宴の後行われた勝負では、カッチン鋼に変化したプーアルを三分以内に倒せなかったベジータ王子が敗北したのだった。

 

 

 

 

 

 

「何? 長命薬だと?」

 地球から遠く離れた、クウラ軍の縄張り内の宙域を進む宇宙船の中で、クウラは腹心の部下であるクウラ機甲戦隊のリーダー、サウザーにオウム返しに聞き返した。

 

「はい、たった一錠飲むだけで、寿命が二割伸びるそうです。フリーザ様と取引している者達の間では、星よりもずっと高い値で取引されているとか」

 長命薬の取引は早くも宇宙で話題になっており、フリーザの兄であるクウラに仕える彼の耳にも入っていた。

 

 というか、彼に問い合わせた金持ちが何人かいたのだ。彼の主であるクウラから、フリーザに融通するよう働きかけられないか、と。……クウラとフリーザの兄弟仲を知っていたら、尋ねるまでもなく無駄だと分かる問い合わせだ。

 もっとも、そんな愚かな問い合わせのお陰で、すんなり情報が手に入ったのだが。

 

「俄かには信じ難い話だな。フリーザの奴め、まさかつまらん詐欺にでも手を出したんじゃあるまいな?」

 だとしたら支配者の一族に相応しくない愚行だ。すぐさま殺してでも止めさせなければならない。そう思ったクウラだったが、違ったようだ。

 

「それが、調べてみたところ本当に寿命が延びるようです。コルド大王様にも、フリーザ様が献上したとか」

「何? それで父上の様子はどうだ?」

「元々お元気でしたが、長命薬を服用してからはまるで若返ったようだと、元気に過ごされているようです。別荘の星を飛び回り、暇つぶしに見かけた銀河パトロールや宇宙海賊をからかっているとか」

 

「そうか。長命薬とやらが本物だったとして、発明したのは誰だ? たしか、フリーザの奴の所には、キコノが仕えていたはずだがあいつか?」

 父であるコルド大王の代から仕えている科学者の黄色い顔を思い浮かべるクウラに、サウザーは首を横に振った。

 

「いえ、どうやら新しく配下にした男のようです。フリーザ様の配下のサイヤ人が見つけたとか」

 長命薬の出どころと制作者に関しては、フリーザもある程度情報を絞っていた。取引相手の金持ちが長命薬欲しさに、自分を通さず地球に直接赴いて取引を持ち掛けるような事を避けるためだ。

 いつかは知れ渡るにしても、その前に取引ルートを整え、邪魔なスラッグ一味を排除するつもりなのだ。

 

「そうか。まあいい、放っておけ。フリーザの奴が新しい商売に夢中になっている間に、俺達は支配する宙域を広げられる。好都合だ」

 クウラとフリーザは実の兄弟だが、その関係は肉親と言うよりライバルと評した方がいい。父、コルド大王の縄張りを半分ずつ受け継ぎ、軍を率いてそれぞれ星を侵略してきた。

 

 そして、クウラは金儲けよりも支配する星の数と宙域の広さを重視していた。金を軽く見ている訳ではない。財力もまた力であるとは考えている。

 

 だが、重要なのは戦闘における力、それも個人の武力であると考えていた。その前では、金で買える力なんてたかが知れている。

 クウラがフリーザに比べて僅かな、選りすぐった精鋭しか率いない事にもその思想は表れていると言えるだろう。

 

 もっとも、クウラも長命薬が寿命を二割伸ばし、若返らせるだけではなく、不老不死を与えるものだったら、ドラゴンボールのように集めればどんな願いでも叶うという類のものだったら、フリーザを含めた邪魔者が使う前に星ごと破壊しようと考えたかもしれないが。

 

「そう言えば、最近フリーザ軍の縄張りをスラッグ一味が荒らしているそうです。ギニュー特戦隊だけでなく、フリーザ様自らスラッグの討伐に乗り出したとか」

 

「そうか。前時代の遺物の始末に邪魔されるとは、すぐに対処しなかったフリーザの甘さが招いた事態だ。手伝ってくれと頭を下げて来るなら、手を貸してやってもいいがな」

「いっそ、我々でスラッグを倒して奴が支配している星を奪い取るって言うのはどうです?」

 ネイズの意見にクウラは「フッ」と鼻で笑った。

 

「奴らは支配した星を自分達に住みやすいように改造する。太陽の光が差さない極寒の惑星なんぞ手に入れても、売り物にならん。場所も辺境ばかりだろうしな。支配しても維持するだけ手間がかかる星なんぞ要らん。

 それとも貴様の別荘にでも欲しいのか、ネイズ?」

 

「はっはっはっはっは! そんな星にネイズが行ったら、たちまち冬眠しちまいますよ、クウラ様!」

「ドーレ! 俺をカエルやサンショウウオ扱いするのはよせ! お前だって寒さは苦手だろうが!」

 両生類から進化した種族出身のネイズを、溶岩の海に囲まれた大地出身のドーレがからかう。

 

「雑談はここまでだ。もうそろそろ次に侵略する星に着く頃だ、到着後、三時間以内に落とすぞ」

「「「はっ!」」」

 フリーザ軍の動向や地球の事に構わず、クウラ達は己の支配域を拡大していた。

 

 

 

 

 

 

 一方、フリーザ軍やクウラ軍とは逆の正義側の組織である銀河パトロールでは大きな騒ぎになっていた。

「やはり、地球はフリーザ軍の縄張りになってしまったようだな」

 約一年前、メルス隊員の鶴の一声によって、地球やナメック星の動向を探るだけではなく、本当にフリーザ軍の縄張りに取り込まれてしまったのかについても調査と監視を行っていた。

 

 その結果、彼らは地球がフリーザ軍に支配されていると確信するに至った。

「この映像を見ると、そうとしか考えられないな」

「ああ、フリーザ軍の幹部をまるで英雄扱いだ」

 彼らが見ているのは、フリーザ軍の通信を傍受して手に入れた地球の映像……神精樹を撃退した英雄達を讃えるパレードの様子だ。

 

 その中に、アボとカドを含めたクラッシャー軍団の姿が映っていた。

 しかも、その映像は「地球はベジータ王子に支配された星である」事をフリーザ軍に印象付ける事を目的に編集された物だ。

 

「場面の切り変わりが激しい気がするが、どの映像にもフリーザ軍やサイヤ人が映っている。この巨大な女はどこか見覚えがある気がするが……ブリーフ博士の娘はサイヤ人じゃなかったからな」

 目が良いジャコはやや怪しんでいたが、映像はそれらしく編集してあるものの、露骨な合成等はしていない。実際にクラッシャー軍団やベジータ王子、そしてサイヤ人やサイヤ人ハーフが讃えられている場面を切り抜いて撮影した物なので、偽物だと断じる根拠は発見できなかった。

 

 元の映像を知っている者なら、4号やマロンが映らないように編集されている事に気が付くだろうが。

 

 ちなみに、地球に訪れた事があるジャコだが、原作と違いタイツは幼児でブルマは赤ん坊だったため、映っている巨大化したタイツと、尻尾が生えているブルマが同一人物だとは気が付かなかった。

 

「まあ、地球人にとっては英雄なんだろうな。神精樹から星を守ってもらったんだし」

「しかしメルス隊員、神精樹なんてよく知っていましたね」

「ええ、まあ。小耳に挟んだことがあったので」

 

 天使である事を隠して銀河パトロール隊員として活動し正義について学んでいるメルスは、そう微笑み、画面に視線を戻した。

(おそらく何か訳があるはずだが……確かめる術はないな)

 

 まさかこの宇宙の破壊神の付き人をしている兄、ウィスに尋ねに行くわけにもいかない。地球については、このまま監視を行うしかないだろう。

 

「だが、ナメック星の方はフリーザ軍の縄張りにはまだ入っていないようで良かったな」

「ああ、出入りしている宇宙船がこの一年一隻も無かったからな。徹底的に調べたが、近くにフリーザ軍の基地も無かったし」

 逆に、ナメック星はフリーザ軍の支配下にはないと銀河パトロールは考えるようになっていた。何故なら、調査を始めてから一年間、ナメック星やその近くの宙域を行き来するフリーザ軍の宇宙船が存在しなかったからだ。

 

 ゲロ達は瞬間移動で地球とナメック星を行き来しているため、星の外側から監視しているだけでは誰も出入りしていないように見えるのだ。

 

「お陰でナメック星に近い管轄の星に無駄な避難勧告をせずに済んだ。流石メルス隊員だ」

「いえ、皆の調査活動のお陰ですよ」

 誤解でナメック星の比較的近くの星で暮らす人々に、故郷を捨てさせることにならなくて良かった。メルスも含めて、銀河パトロールの面々は性急な判断をしなくて良かったと胸をなでおろした。

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふざけるんじゃねぇぞ、ザーボン! テメェもこっちに来て現場で働いてみやがれ!」

 ドドリアは、征服が終わった星でキュイと適当に選んだ部下数名と一休みしている所に入ったザーボンからの通信で激怒していた。

 

 何故なら、それは彼等にギニュー特戦隊が担当していた星の侵略任務を代わるように告げるものだったからだ。

『落ち着け、ドドリア。もう一度送信した資料に目を通せ』

「うるせぇ! こちとらベジータとクラッシャー軍団の代わりに働き詰めで、ろくにトレーニングも出来やしねぇんだぞ!?」

 

『ちゃんと無理のないスケジュールに調整されている。希望があるなら、具体的に――はっ、今通信を替わります』

「おい、ザーボン! 相手がギニュー隊長だろうがクラッシャー軍団だろうが、俺の言いたい事は変わらねぇぞ!」

『おやおや、随分と苛立っているようですね、ドドリアさん』

「フ、フリーザ様!?」

 

 通信相手がザーボンからフリーザに替わった事に驚いたドドリアは、椅子代わりに腰かけていた瓦礫から思わず立ち上がっていた。彼の様子を伺っていたキュイ達も、息を呑んで迂闊な事がスカウターに拾われないよう口を閉じる。

 

「フ、フリーザ様? フリーザ様のためなら命を懸けて戦う覚悟と忠誠心に変わりはありませんが、そのですね、ちょっと難しいんじゃないかと……」

 しかし、ドドリアは口を閉じなかった。もちろん、長年フリーザの側近を務めている彼は、フリーザに逆らう恐ろしさを知っている。しかし、無理な物は無理である事に変わりはない。

 

 ドドリアがどれほどフリーザに忠実であろうが、戦闘力が高かろうが、彼らが宇宙を移動するのに使う宇宙船の速度は変わらない。片道一か月かかる星には、一か月かけなければ到着できないのだ。

 ドドリアがベジータやクラッシャー軍団、そしてギニュー特戦隊の分の仕事を本来のスケジュール通りに行うには、宇宙は余りにも広すぎる。

 

『やれやれ、そんな事は言われなくても分かっていますよ。スケジュールを確認してごらんなさい』

「は、はい! ……こ、このスケジュールなら問題ありません! 流石フリーザ様!」

 しかし、その点はフリーザも理解している。ドドリア達のアタックボールの移動速度や補給のタイミングも考えてスケジュールを組むよう指示していた。

 

『調整したのはザーボンさんですけどね。向上心があるのはいい事ですが、仕事と両立してもらわなければ困りますよ』

「はいっ! これからもフリーザ様のため腕を磨き、働かせていただきます!」

 

 通信が切れ、ほっと息を吐いたドドリアは腕で冷や汗を拭った。

「よし、テメェ等スケジュールを確認しろ! それが終わったら飯にして次の星に向かうぞっ、ギニュー特戦隊が侵略するはずだった星だから、油断するんじゃねぇぞ!」

 

「ギニュー特戦隊が!? お、俺達で大丈夫なんでしょうか?」

 ドドリアが適当に選んだ兵士達が動揺するが、ドドリアは一喝した。

「フリーザ軍の兵士ともあろう者が情けねぇことを抜かすんじゃねぇ! 強い奴等は俺とキュイに任せて、テメェ等は援護だ! それぐらいの根性は見せやがれ!」

 

「ええっ、俺も!?」

「当たり前だ! キュイ、テメェは俺の右腕なんだからな、俺が前に出る時はお前も前に出るんだよ!」

 元々は出撃するドドリアと廊下で遭遇したせいでチームに強制加入させられただけのキュイは、かなり嫌そうな顔をした。だが、彼に拒否権はない。

 

「次の星の侵略が終わったら一度基地に帰還する! その時に美味い物を好きなだけ奢ってやるから文句を言うんじゃねぇ! やる気を出せ、やる気を!」

 結果的に現在フリーザ軍の惑星売買ビジネスに最も貢献しているチームとなったドドリア達は、こうして次の星へ旅立ったのだった。

 




〇副社長カモミ・ルロマン

 やっと決まった副社長の名前。由来は、ハーブティーのカモミールロマン。鎮静効果があり、胃腸を含めた体の不調を治すのに使われてきたそうです。



〇ラニ

 生まれたばかりの状態で戦闘力1万という、某伝説のスーパーサイヤ人を彷彿とさせるスーパーベイビー。
 ギネの人造人間としての特性……永久エネルギー炉による素早く回復するスタミナ。ナメック星人の細胞を移植した事による脳と心臓の核を破壊されない限り死なない脅威の再生能力。フリーザ一族の細胞を移植した事によって得た宇宙空間でも生存と活動が可能な生態と生命力。そして、当然サイヤ人としての特性も受け継いでいる。

 さらに、ギネには地球人の細胞も移植されているため、原作の孫悟飯のように高い潜在能力が眠っているかもしれない。
 現在の戦闘力は1万。



〇戦闘力推移

・ドドリア 2万3千 → 2万4千 キュイとのトレーニングでじわじわ戦闘力を増している。なお、仕えているのがフリーザではなくスラッグだったら、失言によって始末されていた。

・キュイ 1万9千 → 2万 ドドリアとのトレーニングでじわじわと戦闘力を増している。

・ザーボン 2万3千 → 2万4千 ドドリアにデカい顔をされるのが嫌なので、仕事の合間にトレーニングをしている。スカウターの改良が終わったフリーザ軍の技術者にトレーニング機器を作ってもらい、自己トレーニングをしている。



 ダイ⑨様、ぱっせる様、ユーズファー様、変わり者様、トリアーエズBRT2様、佐藤東沙様、ヴァイト様、tahu様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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