ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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第26回天下一武道会&?編
122話 トワの就職とザーボン訪問


 儂が忘れていたドラゴンボールのアニメオリジナルエピソードを利用してトワ達が起こした事件について、儂や時の界王神様は訝しく思っていた。トワ達の狙いは何なのかと。

 

 歴史改変は、どれも成功している。ランファ村の金角銀角の事件では、解決したのが悟空ではなくラピスになった。また、ワンタン王国の御前試合では、病が悪化した事で出場を辞退して悟空が代わりに出場するはずだったのに、陳大拳が出場している。ミーサ姫を助けに魔界に行ってシュラを倒したのはパンプットだし、その後魔界の門は開いたままだ。

 そして、メンタンピン村で悪さをするはずだったチャオズがイノシカチョウを倒して救う側になっている。

 

「なっているだと? 間接的にだが全て貴様の差し金の癖に、他人事のように語りやがって」

「う~む、それを言われると言い逃れられんな」

 タイムパトローラーのベジータの指摘通り、一連の改変はトワ達だけの仕業ではない。儂も知らず知らずのうちに手を貸してしまっている。

 

 金角銀角は我が社の警備部門GCGの隊員によって退治されて更生していたし、陳大拳は我が社の再生医療技術のお陰で健康体になり、天龍はチャパ王によって何年も前に敗北を経験して心を入れ替えていた。

 パンプットがクレス王国近くの辺境でロケを行ったのは、我が社が所有するテレビ局の仕事じゃし、チャオズがお使いに行ったメンタンピン村も我が社と交流がある。

 

「そう言うなよ、ベジータ。忘れちまったもんは仕方ねぇだろ。でも、天才科学者でも思い出せねぇことがあるんだな」

「悟空、儂が天才科学者になったのはドクター・ゲロに生まれ変わってからの事じゃ。前世はただの人に過ぎん。

 君だって『前世はもっと難しい事が分かったのに、現世では何故できないのか』と言われても困るだろう?」

 

「はは、確かにそれは困るな。ウーブみたいにはいかねぇもんだな」

「あれは特殊な例じゃからな」

「そいつはともかく、カカロット、お前は爺さんと違って事件を解決した張本人だろう? 思い出さなかったのか?」

 

 バーダックに問われたタイムパトローラーの悟空は、後頭部に手を当てて笑いながら答えた。

「もう三十年以上昔の事だからよ、あの瓢箪や天龍を時の界王神様に見せてもらうまで、オラすっかり忘れちまってた」

「まあ、その辺りは仕方ないわよ。私もこの辺りの事件は全く気が付かなかったもの。おかげでかなり後手に回ってしまったわ」

 

 一連の事件はアニメオリジナルエピソードで、しかも事件の規模も小さい。同じアニメオリジナルエピソードでも、ナメック星編後に起きたガーリックJr.編や、セルゲーム後あの世に行った悟空の活躍を描いたあの世一武道会編等は記憶に残っている者も多いだろうが。

 

「今後はこうした事が無いように注意してやるわい。儂も手伝うからの」

 老界王神がそう請け負うと、悟空は「ありゃ? まだ他にもあったか?」と聞き返した。

 

「あるぞ。ピッコロ大魔王を倒した後地球の神の所でお主が修行している時や、セルゲームが開催されるまでの間にお主の息子が関わった事件。

 それに、お前さんは関わっていないが、悟飯がピッコロに攫われて修行している時の出来事や、クリリン達とナメック星に向かっている間の出来事。あげればきりがないわい」

 

「うひゃぁ~っ! こりゃあ大変だな」

「しかし、そのほとんどは改変されても影響は少ない事件ばかりですよね。悟空さんや悟飯さんが殺されでもしない限り。トワ達はそんな事件を改変して、十分なキリを稼げているんでしょうか?」

 

「そこなのよ、トランクス。正直、ゲロの前でこの話をするとその内キリまで解析して研究に利用しそうで怖いから嫌なんだけど――」

「時の界王神様、いくら儂でも、利用したらタイムパトローラーにボコボコにされかねないエネルギーを人造人間に使おうとは考えていないのだが」

 

「発生するキリの量は、歴史改変の規模……後の歴史に及ぼす影響の大きさに比例するわ」

 儂の言葉を無視して時の界王神様はそう説明した。

 例えば、サイヤ人襲来編でラディッツに殺された戦闘力5の農夫と、後に地球の神となったナメック星人のデンデ。二人の命はどちらもかけがえのない同じ価値のあるものだ。

 

 しかし、原作で殺されるずっと前に死んでしまった場合歴史に及ぼす影響はどちらが大きいかは、考えるまでも無いだろう。

 農夫の死は、彼の家族や友人にとっては辛く悲しい出来事であり、彼の農業や酪農の事業を誰かが引き継ぐ、もしくは事業を辞めて畑を売ったり貸したりすることになる。「彼が死んでも影響は小さい」等と言えば関係者の怒りを買うのは必至だ。

 

 しかし、農夫が原作より早く死んだ事で彼がラディッツの前に現れなかったとしても、後の歴史に大きな変化はないはずだ。せいぜい、ラディッツがピッコロやカメハウスの前に現れるのが数秒早くなる程度のはず。

 

 しかし、デンデが原作のナメック星編が始まるより早く死んでいた場合、悟飯とクリリンはデンデの協力が得られない。さらに、悟飯とクリリンがデンデを助けるためにドドリアを妨害し、彼がフリーザの近くから離れる事もない。

 最長老様の存在に悟飯達が気づくかも未知数になるし、ナメック星の神龍を呼び出してピッコロを生き返らせ、ナメック星に呼べるかも分からなくなる。

 

 さらに、第二形態になったフリーザに腹を貫かれたクリリンや、第三形態になったフリーザの気弾の連射で重傷を負ったピッコロ、瀕死パワーアップ目当てで重傷を負ったベジータの治療方法が無くなる。

 悟空の治療が終わる前に、クリリン達は全滅し、フリーザに勝つ事は出来なくなってしまうかもしれないのだ。

 

 そのため歴史改変者がキリを稼ぐ為に命を狙うなら、戦闘力5の農夫よりもデンデをターゲットに選ぶ。

 

「でもよ、ほんのちょっぴりずつでもキリを集められるんなら良いんじゃねぇか?」

「奴らがそんな地道な事をやると思うか?」

「……ドミグラならやりそう。でも、小さな改変を起こすにも他の歴史の住人を連れてきたり、キリで操ったりしているから、結局そんなに稼げていないはずよ。手間を考えたら、明らかに赤字だわ」

 

「やはり、トワ達にはキリを稼ぐ以外の狙いがあると言う事か」

 その狙いが何なのか、具体的な答えは出なかった。しかし、この話し合いを行った数日後に答えの方からやってくることになる。

 

 

 

 

 

 

『初めまして、ドクター・ゲロ。キコノ様の助手のトワと申します。こうしてお会いできて光栄ですわ』

「これはこれは、フリーザ軍で運用されている宇宙船や戦闘服を発明したキコノ殿の、こちらこそ光栄です」

 通信室のスクリーンに映ったトワの顔に驚かずそう答えられた自分を褒めてやりたい。

 

 長命薬を受け取りに来る人員がザーボンに決まり、彼が来る日程などをフリーザ直々に伝えられた。儂が想定していたよりも長命薬ビジネスはフリーザ軍で重要な位置にあるらしい。

 そして、その通信で紹介したい人物がいるといったフリーザが見せたのがトワだ。

 

 ちなみに、フリーザ軍のコンピューターにウィルスを仕込んで情報を盗み出しているが、トワの情報はその中になかった。ウィルスはまだ有効なようだから、魔術で情報を偽装したか、儂の元に来る情報を操作して偽情報を掴ませたのだろう。

 

『フフフ、彼女はキコノさんが見つけて来た科学者でしてね。キコノさんが我が軍に戻って来た後は早くも多くの成果を上げてくれているのですよ』

『ありがとうございます、フリーザ様。今後もよりお役に立てるよう、キコノ様と研究開発に精進してまいりますわ』

 

 自慢げなフリーザに、微笑みつつも慇懃な態度を崩さないトワ。フリーザがトワを態々儂やベジータ王子に紹介したのは、「我がフリーザ軍にもお前達に負けない科学者がいるのだぞ」と釘を刺すためだろう。

 以前惑星フリーザNo.79の基地に行った時、儂は献上した改造スカウターや長命薬について基地の科学者に説明した。しかし、改造スカウターについて理解できたのは一人だけで、長命薬については誰も理解できなかったようだった。

 

 そのため、科学者として儂が増長して妙な事を考えないよう、フリーザは手を打ったのだ。

 まあ、それは儂にとっては比較的どうでもいい。問題は、歴史改変者のトワがキコノの助手と言う立場でフリーザ軍に就職しているのは何故なのか、何を狙っているのかだ。

 

 いや、トワ達の狙いはだいたい推測できる。フリーザ軍に潜り込むことで、サイヤ人襲来編からナメック星編までの間に起こる出来事を改変しやすくするためだろう。

 フリーザ達を魔術等で誘導し、適度なタイミングで強化する。それには、近くにいた方がやりやすいのかもしれない。

 

 では、何故トワはフリーザ軍に潜入し、堂々と姿を現しているのか。そして、タイムパトロールは何故トワを倒すために現れないのか。

 早速通信が終わった後、ピアス型の通信機で時の界王神様に問い合わせた。

 

「おい、ゲロ。どうなっている? 奴はバーダックを操っていた方の歴史改変者じゃないのか?」

「ベジータ王子、儂もそれを調べているところです。時の界王神様、聞こえていますかな?」

『聞こえているわよ~』

 

 通信機から返って来た時の界王神様の声は、だいぶ落ち込んでいた。

『フリーザと一緒にいるトワの事よね? やられたわ。ゲロ、あのトワはこの歴史の今のトワなのよ』

「なるほど、そうなるとタイムパトロールは手出しし難いですな」

「おい、どういうことだ?」

 

「ベジータ王子、先ほど画面に映っていたトワは、この歴史出身で、しかも未来や過去からやってきたのでもない、現在のトワだと言う事です」

 つまり、あのトワはタイムトラベルしていないのだ。

 

「しかし、彼女達が過去に歴史改変を行ってきたのは事実。そして、今後歴史改変を行わないとは考えにくい以上、退治してしまっても構わないのでは?」

『私もそのつもりだったんだけど、調べてみるとそうもいかないのよ。この前に立て続けに起きた歴史改変、それを起こしたのはあのトワ達で、未来で過去に戻ってやった事だったのよ』

 

「……つまり、フリーザ軍で働いているトワ達は、時が来たら過去に戻って金角銀角を操り、別の歴史の天龍や天津飯を連れてきて歴史改変を起こすと。

 その前にトワ達を退治すると過去が変わってしまう」

 

 一連の事件でトワ達はこの歴史の人々の記憶に残っている。そのため、彼女達の犯行は起こらなくてはならないものになってしまっている。

 

「まさか、奴らに手出しできないとでも言うつもりか!?」

『トワ達が過去に戻って事件を起こすまではね。その後は手だろうと足だろうと出し放題よ』

「その時に成ったら、奴らはまた同じ手に出るんじゃないか?」

『もうトワ達の手口は分かったもの。次に同じ事をやろうとしても、そうはさせないわ』

 

 今後はより詳細に歴史を見張る事で、同じ轍を踏むことは防げるとベジータ王子に力説する時の界王神様。

 儂はベジータ王子にこれ以上耳元で大声を出されないために、耳飾りを一旦外してスピーカーにつないだ。……最初からこうするべきだった。

 

「ですが、トワ達が過去に戻ったのがかなり先のタイミングで、それまでに彼女達が歴史改変を試みた場合はどうします?」

 

 現在でフリーザ軍の科学者として働きながら、フリーザ軍を裏で操って歴史改変を試みて、過去に戻ったのはフリーザが死んだ人造人間編の時期だった場合だ。

 その場合、彼女達が起こした歴史改変にのみ対処して、トワ達には手出ししないと言う事になるのだろうか?

 

『……あなたに細かく説明すると、ブルマの代わりにあなたがタイムマシンを作りそうだから嫌なんだけど、まあいいわ』

「いや、破壊神に破壊されかねないリスクを背負ってまで作りたいとは考えないが。やってもグルドの時止め程度にする」

 もしくは、ヒットの時飛ばしだな。

 

「ゲロ、それで自重していると言えるのか?」

『そっちのベジータ君、いいツッコミよ。

 それで説明だけど、奴等には歴史改変を起こすとき必ず自分達もその場に居る必要と理由があるのよ。発生したキリを集めるにはその場にいる必要があるし、キリで洗脳した相手を狙い通りに動かすには近くで操る必要があるはずよ』

 

「なら、奴らが未来にも過去にも行かず、現代に居たまま歴史を改変しようとしたらどうする? 過去に戻って下らん事件を起こす前にな」

『その場合は歴史改変じゃないわ、ベジータ君。現代のトワが現代で起こす行動は、ただの歴史の流れよ。それ以上でもそれ以下でもないわ』

 

 未来トランクスで例えると、彼がタイムマシンで過去に戻ってメカフリーザを倒したり、悟空に心臓病の特効薬を与えるのは歴史改変。しかし、未来トランクスがセルゲーム後に『絶望の未来』へ戻って人造人間17号と18号、そしてセルを倒したのはただの出来事。

 そう言う事だろう。

 

『それに、トワ達がランファ村や魔界で歴史改変を起こす前に、他の歴史改変を起こそうとしている可能性もまずないと思う。その結果次第でトワ達自身にタイムパラドックスが発生してしまうかもしれない。

 あいつらはこの歴史の住人がどうなろうと気にしないだろうけど、自分達にまで事が及ぶような事は出来るだけ避けようとするはずよ』

 

「……チッ、頭が混乱してきたぜ」

「まあ、『そう言うものだ』と思っていればいい。儂等にとっては……しばらくフリーザに手出しし難くなったのは確実ですな」

 

 フリーザの第一形態の戦闘力、53万を超えた者も増え、フルパワー時の1憶2千万も大猿化したトーマなら互角以上に戦える。

 フリーザの所在も、コンピューターにウィルスを感染させて情報を抜き取り放題になった今なら把握できる。

 

 気がかりだったのは、地球で潜伏を続けているピッコロ大魔王とコーチンだけだった。瞬間移動でもしていない限り、儂等が設置した監視衛星の警戒網を潜り抜けて宇宙に脱出は不可能だからな。

 儂等の主力がフリーザと戦っている間に、残った地球と人々をどうにかされたら一大事だから、先に奴らをどうにかしたかった。

 

 ……ただ殺されただけならドラゴンボールでの復活が可能だが、生物兵器などで病死させられたらスーパードラゴンボールを集めるか、人造人間にしないと復活できないからな。

 

 それさえどうにか出来れば、タイムパトローラーに介入してくる歴史改変者をどうにかしてもらっている間に、フリーザを倒す日も、そう遠くないはずだった。

 この分なら、クウラに手が届くようになる日まで数年とかからんだろうし。

 

 しかし、フリーザの近くにタイムパトローラーが退治できないトワ達がいるとなると話が変わる。スーパーサイヤ人ブルーになった悟空達でも倒しきれない強さの彼女達を儂等がどうにかするのは、どう考えても無理だ。

「バーダックはどうだ? 奴はタイムパトローラーの仕事をしている時以外はこの歴史の住人と同じ扱いのはずだ。なら、現在の奴等を倒すのに支障はあるまい」

 

「ベジータ王子、鋭い意見だが……無理でしょうな。今から改装が終わった精神と時の部屋でバーダックに修行を積ませても、トワ達を三人纏めて倒せる強さには至らないでしょう」

 トワには魔神化と言う奥の手もある。三対一ではバーダックに勝ち目はまずないだろう。

 

「チッ。まあいい、奴らが何かしら仕掛けてきた時に、それを叩き潰せる強さを手にしていればいいだけの話だ。それよりゲロ、ザーボンの野郎をどうするか考えておけよ」

「ああ、それも確かに問題でしたな」

 

 当初はクラッシャー軍団が来ると聞いていた時と同じ対応……プランAで擬装によって誤魔化し接待をして穏便に帰ってもらう。それが難しかったらプランBで、懐柔か脅迫でこちら側に寝返らせる。そしてどれもダメならプランGの脳改造で強制的に味方になってもらう……のつもりだった。

 しかし、フリーザ軍にトワがいるので状況が変わってしまった。

 

「まあ、トワ達もフリーザを利用するためにいるはず。本気で忠誠を誓っている訳ではないだろう。……心から忠誠を誓っているなら、儂等の事をフリーザに話しているじゃろうし。

 出来るだけプランAで対応するようにすれば、どうにかなるだろう」

 

『ごめんね。力になれなくて』

「なに、トワ達にしてやられたのは儂等も同じ事。これからも力を合わせていきましょう」

 

 

 

 

 

 

 そして時は流れた。

 儂はバイオレット大佐の改造手術を進めるのと並行して、一連の事件で出来たコネクションを利用して手に入れた貴重なサンプル……魔界の住人であるシュラ達の細胞の解析を進めた。

 彼らは種族的にはトワやダーブラと同じ、魔人と呼ばれる種族だ。そのため、シュラ達の細胞を解析すれば、トワや将来手に入るかもしれないダーブラの細胞の解析の参考になるに違いない。

 

 サンプルは、閻魔大王に頼んで通行証を発行してもらい、それを手に門を通って正面からシュラ達に「細胞を提供してくれ」と頼みに赴くという普通の方法で入手した。

 腕試しに勝てば好きなだけくれてやると言われたので、勝って好きなだけもらってきたという訳だ。

 

 もっとも、力試しで儂が勝った後、「貴様等はどうやってそれほどの力を手に入れたんだ? それとも、クレス王国の人間が例外で、他の人間は元から強かったのか?」と問われたので、色々と説明してきた。

 そして継続的なデータとサンプルの提供と引き換えに、トレーニング器具やバイオサプリメントの提供を行う事になった。

 

 ちなみに、魔術師がいたら紹介してくれと依頼もしておいた。シュラやメラの知り合いにはいないらしいが、今後もし見つけたら教えてくれるそうだ。

 

 次に、アックマンやチャパ王が北の界王様の修行を終えて帰って来た。二人ともしっかり界王拳を習得している。そして彼らに替わって修行に赴く事になったのは、悟空、ヤムチャ、天津飯、チチ、そしてブルマの五名となった。

 マロンやランファン、サンの名前も候補として挙がったが、彼女達はクリリンやサタンとヤードラット星での修行を先にするようだ。

 

 ジャガーはワンタン王国に残って陳大拳の幻星拳の習得に挑戦し、その後ヤードラット星に向かうらしい。

 儂も研究ばかりではなくトレーニングを積み、新必殺技の開発を試みた。今後の戦いの結果を左右する……には程遠いが、役立つはずだ。儂が編み出せば、ラピスやラズリ、ジャガーに教えられるしの。

 そして、季節は冬となり……ザーボンが長命薬の受け取りと視察のために地球へとやって来た。

 

 

 

 

 

 

 フリーザから貸し与えられた宇宙船でザーボンは部下数名と共に地球へ赴いた。

「ザーボン様、これより着陸態勢に入ります」

「分かった」

 宇宙船のスクリーンに映る美しい星(監視衛星は光学迷彩で隠蔽済み)を眺めても、ザーボンは憂鬱だった。

 

 何故なら、フリーザの目の届かない状況で自分より戦闘力が高くなったベジータに会わなければならないからだ。

(まさかベジータが、ギニュー特戦隊員に匹敵するほど強くなるとはな)

 これまで何度も思ってきた事を、また思い浮かべる。

 

(しかし、いくら長命薬が貴重とはいえこの私が受け取り役を命じられるとは……)

 恨みを買っている覚えのある相手のホームグラウンドに行きたくなどなかったザーボンだが、今のフリーザ軍に彼以上の適任はいなかった。

 

 長命薬が高値で売れる事は既に多くの兵士が把握しているため、信用できない者に任せると持ち逃げされる恐れがある。

 だが、ギニュー特戦隊はスラッグ一味の捜索中で、クラッシャー軍団とベジータチームはその地球に居る。そしてドドリアチームはそれらの仕事の穴埋めで忙しい。

 

 信頼という点では、キコノやベリブルもいるが、科学者や非戦闘員に任せる訳にはいかない。道中で長命薬の情報を聞きつけた無謀な宇宙海賊が襲撃を仕掛けてくる可能性もある。

 そうなると、フリーザにはザーボンしか動かせる部下がいないのだ。

 

(フリーザ軍はこんな人材不足だったか? もっと側近を増やすよう進言……いや、そんな事をすれば自分で自分の首を絞める事になりかねない)

 「代わりはいくらでもいる」とフリーザなら言うだろうが、兵士としてならともかく、ある程度信頼できる幹部として使える者は、あまりいなかった。

 

 しかし、優秀な同僚は、手強いライバルでもある。競争相手を増やす愚はそう犯せない。

 

 そうこうしている内に地球への着陸が完了した。

(仕方ない。トレーニングと称して一方的に嬲られるぐらいは覚悟するしかないか。恨みは、フリーザ様に提出する視察の報告で晴らしてやればいい)

 重い気分で宇宙船を降りると、そこは郊外に建設された宇宙船の発着場だった。

 

「……こうして顔を会わせるのは久しぶりだな、ベジータ、ラディッツ、ゲロ」

 そして、会いたくない顔とさっそく再会した。出迎えに来たのだろう戦闘服にマントを羽織ったベジータの姿を見たザーボンは、二十年以上前に見た彼の父、ベジータ王の姿を思い出した。

 

「フンッ、呼び捨てとはずいぶんな態度じゃないか? 今の俺の戦闘力を忘れたのか、ザーボン」

「っ!?」

 早速挑発的な態度を取ったベジータに、ザーボンと彼が連れて来た部下達に動揺が走った。

 

 フリーザ軍では、戦闘力1万以上の上級兵士は、階級的には同格とされる。だからザーボンは、ギニュー隊長に対しても呼ぶときは様をつけなければならないという決まりはない。

 しかし、弱肉強食のフリーザ軍では戦闘力の強弱は大きい。フリーザの側近であるザーボンも例外ではなく、ギニュー隊長や彼の部下の特戦隊隊員に対しては敬意を表さなければならない存在だ。……自分より強い相手に恨まれれば、謀殺される危険性がある。

 

 だからザーボンも、戦闘力4万(だとフリーザ軍に対して偽っている)のベジータを敬わなければならない。

「ベ、ベジータさ――」

「冗談だ。本気にするなよ、ザーボン」

 なので、屈辱に感じながらも様付けでベジータを呼ぼうとしたザーボンだったが、彼にそう告げられて思わず怒鳴りかけた。

 

「この星をフリーザ様から頂くまでいろいろあったが、水に流してお互い上手くやるとしようぜ、ザーボンよ」

 だが、ラディッツにそう言われて思いとどまった。

「どういう風の吹き回しだ?」

 

「このスラッグ一味に目をつけられている辺境の星で、フリーザ様の機嫌を損ねたら拙いからな。だが、ドドリアには恨みを買っている以上、貴様とまで事を構えるのは得策ではない、と言うだけの話だ」

「ベジータ、まさか貴様がそんな事を言うとは……」

「長命薬の受け取りだけではなく、視察も兼ねているんだろう? 精々良い報告をしてくれよ、ザーボンさんよ」

 

「それは……視察の結果次第だ。まずは、長命薬を受け取ろうか」

 しかし、内心で安堵しつつもザーボンは完全に警戒心を解かなかった。

「こちらです。お納めください」

「確かに。では、こちらもフリーザ様からの贈り物だ」

 

 ゲロから受け取った長命薬が入ったアタッシュケースの代わりに、ザーボンの部下がアタッシュケースの鞄を差し出す。

「フリーザ様からの贈り物だと?」

「そうだ。以前お前達が献上したスカウターを、キコノと新しい助手が更に改良した物で、戦闘力1千万まで計測できるそうだ」

 

「それは……素晴らしい。感謝しますとフリーザ様にお伝えください」

 キコノの新しい助手……トワが開発に関わったスカウターが入ったケースを、ゲロは恭しく受け取った。

 

 そして一行はベジータの居城である城(と偽っているキングキャッスル)に向かって出発した。移動のために乗り込んだエアカーから、ザーボン達は地球人達の歓迎を受けた。

 道の左右に集まった地球人達が「歓迎」や「ようこそ」と書かれた旗を振り、紙吹雪が舞う。まるで英雄の凱旋のような盛り上がりに、ザーボンは驚いた。

 

「これはお前達がやらせているのか?」

「別に強制してはいない。この星の連中にとっては、異星人ってだけで珍しいのさ。しかも、スラッグ一味に襲われる度に俺達やクラッシャー軍団の連中に助けられているからな」

 

 そう答えるベジータだが、実際には彼らは地球の一般人に「宇宙人がやってくる」事しか告げていない。しかし、ベジータが言ったようにこの歴史での地球人が宇宙人に対して持っているイメージが良かったため、この大歓迎となったのだ。

 

「貴様等も手でも振ってやったらどうだ?」

 そう言ったベジータが、自身も観衆に向かって手を振っているのを見てザーボンは衝撃を覚えた。あのベジータが、下々の者に愛想を振りまいている。フリーザ軍時代の彼を知る者にとっては衝撃映像である。

 

「あ、ああ、そうだな」

(あのベジータが……。こいつも星を手に入れて甘くなったと言う事か)

 ベジータの観衆に対する態度は、ザーボンの警戒心を引き下げるのに大いに役に立った。そしてキングキャッスルに到着すると、部屋に通された。

 

「さて、こう見えても俺は忙しい。悪いが、後はゲロに任せるが構わんな?」

「ああ、もちろんだ。だが、フリーザ様から視察も命じられている。しっかり見せてもらうぞ」

「好きにしろ。フリーザ様に隠すことなど何もないからな」

 

「では、ザーボン様こちらに。まずはフリーザ様も興味をお持ちのはずの、長命薬の原材料が湧く泉にご案内しましょう」

「おおっ、長命薬の……! この都の近くにあるのか!?」

 

「はい、実はこの城の地下深くに泉はあるのです」

 長命薬と聞き、ザーボンは胸が高鳴るのを覚えた。既にその恩恵を受けているザーボンだったが、もしかしたら今後二割以上若さを保てる薬が……いや、不老不死さえ可能になるのではないか。そんな期待を彼は持っていたのだ。

 

 そしてゲロに案内された先の専用のエレベーターに乗せられ、その泉に着くとその神秘的な光景にザーボン達は目を見張った。

「これは……なんと美しい」

 壁や天井、床から妖しく発光する水晶が突き出たドーム状の地下空間の中央に、コップ一杯ほどの水が溜まっている泉があった。

 

「あれが長命薬の!?」

「ええ、あの泉の水に生息している微生物。それが長命薬を生み出す唯一の原材料になります」

 そうゲロが語ったのは、もちろん大嘘である。この空間にある物は全て人工的に作り出したもので、キングキャッスルの地下にあるのも、情報を秘匿しやすいからに過ぎない。

 

「……なるほど。この城はこの泉を守るために建てられたのか」

「さすがベジータ様だ。抜け目がない」

 だが、細かく説明しなくてもザーボンの部下達は深読みして誤解していた。

 

「さて、そろそろ宜しいですかな? 次は地球人やサイヤ人とのハーフの兵達をご紹介しましょう」

「分かった。ここに長くとどまって、微生物に良からぬ影響が出たら事だからな」

 他星の侵略ビジネスにかけられる人員が減っているフリーザ軍にとって、長命薬の売買は重要なビジネスだ。そのビジネスに悪影響を及ぼしたとなれば、フリーザがどれほど激怒するかは想像に難くない。

 

 ザーボンと彼の部下達は泉や地下空間を見ただけで、調べる事も無く引き上げた。

 

 その後の視察も、特に問題なく進んだ。

「地球軍の参謀を務めているレッドと申します。こちらは私の秘書のブラック。お会いできて光栄です、ザーボン様。

 いかがですか、この星の兵士達は?」

 

「ああ、辺境の星にしては悪くは……いや、かなり精強だな」

 キングキャッスルの中庭に並ぶ戦闘服姿の戦士達を見回し、スカウターでその戦闘力をチェックしたザーボンは驚かされる事になった。

 

「データでは地球人は弱い種族で、平均的な戦闘力は5程度だと聞いていたが、戦闘力1千以上の兵が何人もいる。尻尾が無いようだが、奴らもサイヤ人とのハーフなのか?」

「いえ、彼らは地球人の中でもベジータ様に鍛えられた精鋭中の精鋭です。突然変異……戦闘タイプの地球人と呼べる者達です」

 

「そうか、突然変異ならば納得だ」

 フリーザ軍の兵士達の多くが、そしてザーボン自身も出身種族の突然変異だ。そのため、レッド将軍の説明を疑う事はなかった。

 それに、ベジータはフリーザ軍では誰よりも厳しい訓練を自身と部下に課す事で知られていた男だ。奴なら地球人を徹底的に鍛え上げてもおかしくない。そう考えていた。

 

「失礼します。質問の許可をいただけますか?」

 その地球人の兵の一人……ブルー大佐がザーボンに質問を求めた。

「なんだ? 言ってみろ」

「その……どのようなスキンケア用品を使っているのか、教えていただきたく」

 

「フッ、良いだろう」

 ザーボンは地球人の兵士達の中で最も戦闘力が高いブルーにシンパシィを感じて、気を良くした。

「そう言えば、サイヤ人ハーフの兵達の中にいくつか見覚えのある顔があったような気がするが……気のせいか」

「ベジータ様から聞きましたがサイヤ人には、特に下級戦士は顔のパターンが少なく似た顔つきの者が多い傾向があるとか。地球人とのハーフでもその傾向が残っているのでしょう」

 

 そして、上機嫌のザーボンはそのゲロの説明にも疑問を覚える事無く、列に「サイヤ人ハーフの兵」として並んでいるパンブーキンやトテッポ、タロやリークが純粋なサイヤ人である事に気が付かなかった。

 

「滞在中はこちらの城をお使いください」

 その後、ゲロに宿として案内されたのは美しい宮殿だった。ザーボンだけでなく、部下一人一人に豪華な部屋が用意されていた。

 

「後、ザーボン様にはこちらの品、地球の美容用品を是非試していただきたいのですがよろしいでしょうか?」

「これは、随分と種類が多いな。地球人は美にも関心が深いと見える」

「多くは女性用ですが、昼間お話しになったブルーのように男も美容やファッションに高い関心を持つ者も少なくありません」

 

 数々の美容品を贈られたザーボンは、熱心にそれらの取り扱い説明書に目を通していた。

 そして地球の、それも美容に良いとされる食材を使った料理の数々に舌鼓を打ち、翌日はクラッシャー軍団とベジータ達の訓練を見学。さらに、神精樹の残骸を利用した都市の開発状況を視察し、スラッグ一味の接近をいち早く察知するための衛星の開発と打ち上げスケジュールの説明を受けて、ザーボン一行はフリーザ軍へ戻ったのだった。

 

「良い視察だった。フリーザ様に満足していただける報告が出来そうだ」

 と言う感想を残して。

 

 

 

 

 

 

「何とかなったな。チッ、長々と居座りやがって」

「ああ、親父との模擬戦より奴の接待をする方が疲れるぜ」

「……いや、その感覚はおかしくないか?」

 ザーボンの宇宙船が地球圏から離れるのを見送って、ベジータ王子達はほっと息を吐いた。

 

「ゲロ、ザーボンから受け取ったスカウターはどうだ? 妙な仕掛けがされていないだろうな?」

「解析した結果、何も出なかったが……トワが開発に関わっているので何とも言えんな。なので、念のために魔術妨害装置で囲んである」

 

 フリーザ軍のコンピューターにウィルスを仕込んだ儂等としてはフリーザが、そしてトワが同じ事をするのではないかと警戒するのは当然だ。

 厳重に検査し、解析してもおかしいところはなかったが、念のために魔術を妨害する装置で囲んで保管する事にした。

 

「しかし、城にご馳走に美容用品にと、至れり尽くせりだったな」

「ああ、美容用品はともかく俺達もあんな生活がしてみたいもんだぜ」

 そうぼやくアボとカドに、ラディッツは呆れたように言い返した。

 

「しているだろうが。気が付いていないのか?」

「え? そう言えば確かに……俺達が住んでいるのは町から離れたデカい家だな」

「飯も、ご馳走だな。……もしかして、ザーボンの待遇と俺達の生活って、そんなに変わらねぇのか?」

 

「むしろ、ザーボンの野郎よりも金がかかってるぜ。貴様等の方が飯を大量に食うからな」

「美容用品も、パンチー夫人とカモミーからの提供じゃからな」

 今後宇宙を相手にビジネスを展開するにあたって、ザーボンの意見は貴重だとパンチー夫人とカモミー副社長はこの機会を利用する事にしたのだ。

 

 ザーボンも上機嫌だったので、接待としても成功だったはずだ。

 

「ところで、ザーボンの奴ブルー以外にもレッドと話し込んでいたようだが、何を話したか聞いているか?」

「ああ、身長が伸びた事について聞かれたらしい」

 視察の際、レッドの執務室で以前の彼の写真を見たザーボンに尋ねられたらしい。

 

 最初はレッドと写真に写った人物が同一人物とは思わず、父か親類の写真を飾っているのだと思ったそうだ。しかし、同一人物であるとレッドから明かされた後は熱心にその時の事を聞いたという。

 もしかしたら、彼のコンプレックスについて利用できると思いついたのかもしれない。儂なら、変身後の姿をどうにか出来るかもしれないと考えたとか。

 

 ……それなりに時間をかければ、多分どうにか出来るだろう。だが、彼の変身後の姿について儂は「知らない」事になっているので、こちらから提案する事は出来ない。

 今後の成り行きがどうなるにしても、とりあえずフリーザ軍の視察は乗り越えた。今のところはそれで良しとしよう。

 




〇トワ、フリーザ軍に就職

 キコノの記憶を操作して、軍を離れている間に「弟子兼教え子」として教え始めた宇宙人だと思い込ませ、彼がフリーザ軍に戻った後に、自分を呼び寄せさせて就職した。
 ゲロが仕込んだウィルスには、魔術で細工を施しゲロが引き出した情報のみ、自分達に関する情報は擬装もしくは隠蔽されるようにしてある。

 フリーザ軍の基地や宇宙船から情報を閲覧する場合は普通にトワの事を知る事が可能だが、ゲロがウィルスを介して地球で情報を閲覧すると、トワの事は分からない。

 出身種族は先祖が流浪の身だったので分からず、様々な種族が混血した結果と思われると擬装し、戦闘力も(彼女からすれば)かなり低い数千程度に抑えている。

 尚、ミラとルシフェルは現在所在不明。



 ぱっせる様、excite様、変わり者様、PY様、ヴァイト様、佐藤東沙様、泡銭様、 KJA様、社畜戦士様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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