ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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126話 予選IグループからPグループ

 天下一武道会の予選はバトルロイヤル形式に移った。ここからはジャイアントキリングも起こりやすいが、その分実力で劣る選手が見せ場もなく敗退していく過酷な試合でもある。

 

 早速始まったIグループでも、すぐに実力の劣る選手たちが木の葉のように宙を舞い、場外へ落ちて行った。

「邪魔だ、退けぃ!」

 それを為したのは牛魔王と同じかそれ以上の巨漢……いや、巨人の世界プロレスチャンピオン、アントン・ザ・グレートだ。

 

 原作では天下一武道会の予選でクリリンと対戦した元世界プロレスチャンピオンで、表の世界で自分と戦える者がいなくなってしまったために、地下プロレスで暴れていた。

 しかし、この歴史では地下プロレスに潜ることなく、表の世界でチャンピオンを続けている。何故なら、引退したレッドリボン軍の兵士やグルメス王国兵、そしてGCGの隊員等がレスラーやそのトレーナーに再就職したことで、プロレス界全体のレベルが原作より高くなっていてアントンと戦えるレスラーが何人もいるからだ。

 

「プロレスも武道だと言う事を証明してやる!」

 そして、アントンが天下一武道会に出場した動機は、ショービジネスとしての側面が強いプロレスも武道として通用する事を知らしめるために変わっていた。

 

「こ、こいつ本当に地球人か!?」

「牛魔王よりでかくないか!?」

「俺は生粋の地球人だ! いや、覆面を被って宇宙人レスラーと名乗るのもいいかもな!」

 怯んでいる他の選手達の胴体を鷲掴みにしては放り投げていくアントンの姿は、確かに地球人か疑いたくなるだろう。彼の戦闘力は100で、平均的な地球人を遥かに超えている。

 

「ンダ!」

「う、うおっ!? 俺を投げただとぉーっ!?」

 しかし、本物の宇宙人と戦えるほどではなかった。懐に入ったカカオに放り投げられ、自身が投げ飛ばした選手たちの後を追う事になった。

 

「よくやったカカオ! これでやっと本気で戦えるぜ!」

「はっ、リベンジマッチのつもりか? 返り討ちにしてやるぜ!」

 そして、他の選手を攻防の余波や流れ弾で殺してしまう可能性が無くなったため、アボとナッパは本気を出して戦い始めた。

 

「カカオっ、ナッパの相手は俺がやる! お前は援護に徹しろ!」

「ンダ!」

「なにぃっ!? テメェ等、二対一とは卑怯だぞ!」

「バトルロイヤルはそう言うルールなんだよ!」

 

 指示通り、ナッパと激しくぶつかり合うアボ。彼の戦闘力は双子のカドと同じ31万7千、そしてカカオは2万2百まで上昇していた。しかし、ナッパも育児修行だけしていたわけではない。

 

「はっ! まあいいぜ! 丁度いいハンデだ!」

 ナッパの戦闘力は43万5千。原作ナッパの百倍以上に至っている。アボとの肉弾戦にも、余裕があるようだ。

「って、今気が付いたが、サイボーグが出場していいのかよ!?」

「バーニアを使わなけりゃ問題ないってよ! 見てみろ、今も使ってないだろ?」

 

 しかし、その余裕のあまりナッパはアボに促されるまま視線を一瞬だがカカオに向けた。その瞬間を見逃さなかったカカオが、「ンダー!」と叫びながら激しく発光する。

「うおっ!? 太陽拳か!」

「引っかかったな! くらいやがれ!」

 

 視覚を封じられたナッパに拳と蹴りのラッシュを叩き込むアボ。しかし、ナッパのタフさと戦意は目が見えなくても衰えない。

「いい気になるんじゃ……ねぇ!」

 クンっと指を動かすと、強力な衝撃波が放たれた。

 

「ンダ~っ!?」

 アボは僅かに後退するだけで済んだが、ナッパの5%以下の戦闘力しかないカカオは場外まで吹き飛ばされてしまった。

 

「カカオ! ちくしょうっ、やりやがったな!」

「太陽拳!」

 そして、カカオを倒された事に怒ったアボが向かってきたのを気の動きで察して太陽拳を放つ。「ぐわっ!?」と悲鳴を上げてアボが目を手で覆う。

 

「これで条件は同じだ! なら、俺の勝ちだ!」

 視覚を封じられた者同士、相手の気の位置を頼りに攻撃を仕掛ける。

「チ、チクショウ! アカに合体できればお前なんて……!」

 そして競り負けたアボは、悔し気にそう言うと意識を失って倒れ伏し、ナッパが予選を通過したのだった。

 

 

 

 Jグループで行われたバトルロイヤルでも最初に起きたのは有象無象の選手の排除だった。

「ぐわ~っ!?」

「は、歯が立たねぇ! なんて強さだっ!」

 加減した気弾を放ち選手達を次々に場外へ吹っ飛ばしながら、ラカセイは含み笑いを漏らした。

 

「クックック、悪く思うなよ。これもお前らのためって奴だ」

 そして、くるっと振り返ると今度は愛想笑いを浮かべる。

「タイツの姉さん! 露払いは終わりやしたぜ!」

「フッフッフ、ご苦労……じゃなくて! その姉さんって言うのどうにかならないの?」

 

 ラカセイに姉さんと呼ばれているタイツは、そう言って顔を顰める。

「またまた、まんざらじゃねぇんでしょう?」

「何度言ってもカカオ以外止めてくれないから諦めただけよ、別に気に入った訳ではないからね」

「いや、カカオは最初から『ンダ』以外しゃべらねぇだけでしょうに」

 

「ホッホッホ、姉さんか。こりゃあ所帯を持つのも時間の問題じゃな」

 そして、ラカセイとタイツを入れてJグループに残った三人の最後の選手、亀仙人がそう感慨深そうに笑った。

「しょ、所帯って、あたしとターレスはまだそこまでの関係じゃ――」

 

「儂、ターレスが相手だとは一言も言っておらんが?」

「うっ!」

「ほっほっほ、あんな小さかったタイツがのぅ、時が経つのは早いも――」

 

「ラカセイっ、この意地悪な亀のお爺ちゃんをやるわよ!」

「へいっ!」

「なにっ!? 老い先短い老人に、二人がかりとは卑怯じゃぞ!」

 

 亀仙人はそう叫び返しながら、正面から向かってくるタイツを迎え撃つために構えを取った。その側面からラカセイが本気の気弾を連射するが、亀仙人はそれを全て回避する。

「チィッ!」

 ラカセイの戦闘力は、双子の弟のレズンを僅かに上回る1万9300にまで上がっていた。

 

「お主は下がっておれ! どどん波!」

 だが、亀仙人の戦闘力は7万4100。ギニュー特戦隊隊員を大きく超えている。ラカセイは亀仙人が放ったどどん波を回避できず、「ぎええっ!?」と悲鳴を上げて場外まで吹っ飛ばされてしまった。

 

「行くわよっ、あんまりしつこいと界王拳も使っちゃうから!」

 ラカセイが敗れた事に構わずタイツが間合いを詰めて殴りかかった。

「そのサービスは嬉しくないのぅ。ちょっとは加減せんか!」

 何とかタイツの攻撃を掻い潜り、受け流す亀仙人。防戦一方だが、タイツの戦闘力は33万5千。大きな差があるため、正面から肉弾戦をしたらたちまち負けてしまう。

 

「十連どどん波っ!」

 何とか距離を稼ごうと、亀仙人は両手の十本ある指の全てからどどん波を放った。

「くっ、いつの間にこんなにどどん波を使いこなして――」

 

「流派合流は伊達ではないぞい。ほっ、かめはめ波ーっ!」

 そして、なんと足からかめはめ波を放つと、加速しながらタイツに向かって体当たりを試みた。

 

 原作で悟空が天下一武道会で放った技に似ているが、原作の悟空は手からかめはめ波を放っているのに対して亀仙人は足から放っているためより加速が増している。

「凄いけど、当たってあげない!」

 しかし、タイツは瞬間移動で亀仙人の右側面に移動。無防備になった亀仙人の脇を蹴り上げ、体がくの字に曲がって吹っ飛ぶ彼にどどん波を放って止めを刺した。

 

「イタタ……若い世代が育っているのはいい事じゃが、もうちっと年寄りに花を持たせても良いと思うんじゃがな」

 場外に落ちた亀仙人はそう言って、勝利を宣言するタイツの姿を見上げた。

 

 

 

 Kグループではタロ、リーク、アックマン、そしてクリリンが戦っていた。

「太陽拳っ!」

「ぐおっ!? こいつっ、他の選手に隠れて太陽拳を!?」

「こうでもしないと、俺に勝ち目なんてないからな!」

 

 原作では一回戦でチャオズに勝利し、準決勝で悟空と戦ったクリリンだが、この歴史で彼が予選を勝ち抜くのは難しいだろう。

 クリリンの現時点での戦闘力は、5980。フリーザ軍でも中級兵士として通じる腕前だ。

 

「チィっ! リーク、勝負はクリリンや他の選手を放り出してからだ!」

「そうですね、流れ弾が怖いですから!」

 しかし、同じKグループには戦闘力23万のタロと、13万9千のリーク、そして今は太陽拳で視覚を封じられているが8万4千のアックマンがいるからだ。

 

 彼等からするとクリリンは戦う相手ではない。他の有象無象の選手と同じく、安全のために本気で戦う前に舞台場から排除しておくべき存在だ。

 武道家としては悔しい評価だが、「まあ、当然だよな」と思っている自分もクリリンの中にはいた。実際、本気を出した三人が適当にはなった気弾に当たるだけで死にかねない程、彼等とクリリンの差は大きい。

 

(でも、簡単に舞台からは降りないぜ! 俺だって遊んでいただけじゃない!)

「行くぞっ、気円……弾!」

 気を集中して掲げた手の先に、円盤状の気弾が出現した瞬間リークがぎょっとして声を上げる。

 

「うわっ、試合でなんて技を!」

 クリリンが放ったのが気円斬だと思ったリークは、とっさにそれを破壊するためにフォトンシールドを張る。回避してもいいが、他の選手が軌道上に居たら掠っただけで大惨事になると考えたためだ。

 

 しかし、気円弾はリークのフォトンシールドにぶつかると大爆発を引き起こした。

「あれ? まさか、あれはただの平べったい気弾?」

「かめはめ波ーっ!」

 驚きと困惑で動きが止まったリークに向かって、クリリンはすかさずかめはめ波を放つ。

 

(やったか!?)

 隙を突いて場外に落とす。クリリンが自分よりはるかに上の相手に勝つには、これしかない。

「驚いた。でもそんな簡単には負けてやらないぞ!」

 だが、リークはシールド発生装置のシールドに叩きつけられるよりずっと前にクリリンのかめはめ波から抜け出すと、高速で間合いを詰めて彼を掌で突いて押し出した。

 

「う、うわぁ~っ!?」

 シールドにまで吹っ飛ばされてクリリンが目を回して失神したのを確かめると、リークは空を見上げた。そこではタロとアックマンが高速でぶつかり合っていた。

 

「界王拳かっ、便利な技を使いやがって!」

「フンッ、満月を見るだけで十倍の強さに成れるお前達サイヤ人には言われたくないな! 4倍!」

「ぐはっ!?」

 

 アックマンが叫ぶと彼の体を覆っていた赤いオーラが一段と強くなり、スピードとパワーが上がって一気にタロを引き離した。拳を叩き込み、衝撃で動きが一瞬止まったタロを後方に蹴り飛ばして距離を取る。

「アックバスター!」

 そして気弾で止めを刺した。

 

「どどん波!」

「そう来る事はお見通しだ! アックショット!」

 アックマンはリークが地上から放ったどどん波を回避すると、彼に向かって急降下してラリアットを放ち薙ぎ払う。

 

「止めだ!」

 そしてそのまま空中に飛び上がり、拳のラッシュを浴びせて場外に叩き落として勝利したのだった。

「ふはははっ! 今年こそこの正義の悪魔アックマン様が三度目の優勝を飾るのだ!」

 

 

 

 Lグループのバトルロイヤルでは、早々に場外に落とされたパスタが空を仰いでいた。

「手配が解かれたからって、似合わない事はするもんじゃないな。まあ、仕事だから仕方ないけど」

 そこに彼女を場外に落とした張本人のメーネがやって来た。

 

「思ったより元気そうだな。ほら、控室に戻るぞ」

「……あんたも負けたんだ」

「あの二人に勝てる訳ないだろ。サタンの坊やが勝ち抜いたBグループなら望みもあったんだけど」

 メーネはパスタにそう答えながら、彼女を強引に立たせると肩を貸して控室に戻っていった。

 

 そして舞台に残っているのは、あの二人……トテッポとターレスだけになった。

「スーパーサイヤ人にはならないのか?」

「なって欲しけりゃ、界王拳を使っている俺を圧倒してみせろよ、おっさん!」

 

 珍しく喋ったトテッポに、ターレスは挑発的に答えた。

「……まだ、ベジータ王と違ってすぐに変身できないのか」

「チッ、図星を突かれちまったか」

 スーパーサイヤ人に初めて変身してから約一年、鍛錬を重ねてきたターレスだがまだ自在に変身するには至っていなかった。

 

 戦闘力は39万5千と、神精樹の実を食べた効果もあって一年前の三倍以上強くなり、フリーザも第一形態なら来年には超えているだろう。しかし、スーパーサイヤ人への変身には僅かな時間が必要だった。

「だが、7倍界王拳でも十分やれるぜ!」

 

「ウガアアア!」

 対してトテッポの戦闘力は279万。フリーザの第三形態の戦闘力を大きく超えている。ターレスが7倍界王拳を使ってやっとほぼ互角だ。

 

「なんだ? 今日の分の言葉は品切れかよ?」

「ウオオオオ!」

 ターレスに言葉ではなく拳で答えるトテッポ。その猛烈な戦い方は、まるで大猿になったかのようだった。

 

「くっ!」

 トテッポの大振りの右拳を防御したものの、ターレスは衝撃で後ろに大きく下がる。そこに、トテッポの左手から放たれた気弾が襲い掛かり、ダメージが蓄積していく。

 

「アングリーボンバー!」

 そして必殺技を放って勝負を決めようとする。右手から放たれる巨大な気弾がターレスに迫るが――。

「界王拳、10倍! フォトンウェイブ!」

 アングリーボンバーが当たる寸前に界王拳を十倍まで引き上げたターレスが、気功波をぶつけて彼の必殺技をトテッポ自身に向かって跳ね返した。

 

「ウッ、オッ、グオオオオ!?」

 何とか耐えようとしたトテッポだったが、耐えきれずに爆発に飲み込まれ、意識を失って場外まで吹き飛ばされた。

 

「悪いな、スーパーサイヤ人はまだ消耗が激しいんでな。明日に響かないよう界王拳で勝たせてもらったぜ」

 

 

 

 次のMグループの予選でも、界王拳の使い手がいた。

「ぐはっ! くっ、力の差が大きすぎたか」

「まさか、この俺が一撃貰うとはな。幻星拳、たいした技だ」

 

 陳大拳は場外の芝生の上で、そう言うラディッツの姿を悔しそうに見上げた。ジャガーに奥義を伝えた事で、陳大拳は武道家として、一流派の伝承者として、満足感を覚えていた。後は、息子の小拳をしっかり鍛え技を教えれば十分だと思っていた。

 

 彼の戦闘力は去年の御前試合の頃の倍、1千に到達している。だが、この強さに至った大きな要因である神精樹の実エキスのカプセルも、純粋に強くなりたかったから飲んだのではない。またこの前のように歴史改変者の魔の手がワンタン王国に及んだ時に戦えるようにと考えて飲んだのだ。

 

 しかし、ジャガーに誘われてこの天下一武道会に出場して思った。もっと強くなりたいと。

 幻星拳を仕掛けて、ラディッツに一撃を入れる事は出来た。だが、それはラディッツにとって「殴られた」のではなく、「拳で触れられた」程度でしかない。痛みどころか衝撃すら感じていないだろう。

 

 若者に、息子の小拳に託せばいい。そう説く自分に、陳大拳は「いや、私が……私自身が幻星拳に恥じない力を手に入れたい! 強くなりたいのだ!」と答えた。

 圧倒的に格上の相手であるラディッツにも、陳大拳の幻星拳は通じたのだ。後足りないのは、陳大拳自身の強さだ。

 

「次は、必ず……!」

 陳大拳がそう言った時には、ラディッツは舞台で強敵と戦っていた。

 

「狼牙風風拳!」

 その強敵とは、ヤムチャだった。

「ぬおおおおっ!」

 赤いオーラに包まれ、サイレンに似た音を響かせながらヤムチャが鋭い連続攻撃を仕掛ける。ラディッツは回避を諦めて両腕で防御し、筋肉の鎧でそれを受け続ける。

 

「くっ、今のが効かないなんて流石悟空の兄貴だな」

 最後に放った一際強力な拳を受けても、後ろに下がるだけで倒れなかったラディッツにヤムチャはそう称賛の言葉を送った。

 

「フンッ、効かなかっただと? ベジータの組手相手をしていなければ今のでやられていたぜ」

 ラディッツの戦闘力は、59万6千。変身していない、フリーザの第一形態を上回っている。

「10倍界王拳を使っても狼牙風風拳に耐えられちゃ、褒められている気がしないぜ」

 そしてヤムチャの戦闘力は6万3300。だが、10倍界王拳の効果で63万3千にまで上がっている。

 

「悪いが目で追えない攻撃はベジータで慣れている。そら、もう一度かかってこい!」

「後悔するなよ! 狼牙……風風拳!」

 再びヤムチャの動きが加速し、ラディッツの視界から消える。

 

「ハイハイハイハイ、ハイィーッ!」

 そして防御の上からでもお構いなしに繰り出される、高速連続攻撃。全身に気を漲らせて防御に徹しながら、ラディッツは舞台の角に向かって後退していく。

 それはヤムチャの猛攻に耐えかねたラディッツが、じわじわと追い詰められているようにも見えたが……。

 

「今だっ! 太陽拳!」

 それは、ラディッツが仕掛けた罠だった。スピードで自分に勝るヤムチャに太陽拳を当てて動きを止めるために、わざと狭い角に移動して彼を誘い込んだのだ。

 

「しまったっ! だがっ――」

 ヤムチャは咄嗟に後ろに飛びのいてラディッツの反撃に備えて距離を取ろうとした。10倍界王拳の発動中は彼の方が気の大きさでラディッツを上回っている。視力が回復するまで耐え切れば、再逆転も可能だと踏んだのだろう。

 

「俺が誰の組手相手をしていたか忘れたか? スピリットブースト!」

 だが、ラディッツの気が倍増した。なんと、ベジータ王子だけではなく彼もスピリットブーストを習得していたのだ。

 

「うおおおっ! カカロットやベジータに続くのはこの俺だ!」

 戦闘力が118万にまで膨れ上がったラディッツが、今までのお返しだとばかりにヤムチャに向かって気弾を連射し、回避するために体勢を崩した彼に殴りかかる。

 

「もってくれよ、俺の体! 界王拳20倍だぁ!」

 だが、ヤムチャは視界が封じられた状態で戦闘力が倍増したラディッツと戦う為に、なんと自身が発動中の界王拳の倍率を倍にした。

 

「なんだと!? 貴様、死ぬつもりか!?」

 ラディッツの拳に耐え、彼の腕を逆に捕まえるヤムチャ。

「もちろんそんなつもりはないさ。だが、ピンチの時こそ前に出ろってね! どどん波!」

 そして、ラディッツの腕を掴んだままもう片方の手でどどん波を放った。爆発に飲み込まれる二人。

 

「ぐおおっ!」

 ラディッツが呻き声を上げながら煙から脱出する。

「それなのにさっきは後ろに下がっちまったからな。今度はそうはいかないぜ! かめはめ波―っ!」

「くっ、ギャリック砲!」

 下がったラディッツの気を目印にしたヤムチャのかめはめ波と、ラディッツのギャリック砲がぶつかり合った。凄まじい気の塊はお互い譲らず押し合い……ラディッツがその場に留まれず押し出された。

 

「ぐっ……うおおおおおっ!」

「はっ!」

 そして、ラディッツが場外に押し出された瞬間ヤムチャはかめはめ波を爆発させた。その衝撃でラディッツが場外に転がる。アナウンサーが高らかにヤムチャの勝利を宣言した。

 

「くっ、何故かめはめ波を俺に直接当てなかった? そうすれば確実に勝てたはずだぞ」

 倒れたまま尋ねるラディッツに姿を見せないまま、ヤムチャの声が答える。

「あの時にはもうスピリットブーストが解けてただろ? 直撃させたら殺しちまうかもしれないからな」

「……チッ、試合で不完全な技を使うもんじゃないな」

 

 ラディッツのスピリットブーストは不完全だった。発動は出来るが、持続時間が短く肉体にかかる負荷も大きい。だから勝てると確信するまで使わなかったのだ。

「ピンチの時ほど前に出るというのは、亀仙人の教えか?」

「いや、彼女の前でかっこつけるための心得さ」

「……はぁ、呆れたぜ。ところで手を貸せ、スピリットブーストの反動で立ち上がれそうにない」

 

「フッ……悪いな。俺も、二十倍界王拳の反動で一歩も動けそうにない」

『両選手、動かないで下さーい。今救護班が向かっています!』

 そして予選を勝ち抜いたヤムチャは、ラディッツと共に仲良くメディカルポッド行きになったのだった。

 

 

 

 そしてNグループの予選では、早々に決着がついた。

「ヤムちゃんに負けないように、あたしもカッコいいところを見せないとね~っ!」

 勝利のVサインを高らかに挙げて観客にアピールするマロンの背後で、他のNグループの選手達が倒れている。

 

「か、勝てるとは最初から思っていなかったが……」

「良い所が、全く無しとは思わなかったよ」

「く、くじ運が無かったと思うしかありません」

 その中に豹牙天龍、ラズリ、コレンが含まれていた。

 

 それぞれ豹牙天龍は1300、ラズリは3800、そしてコレンは4万と地球全体でみれば強者に入る。特に、エリートの血筋を引くサイヤ人のコレンはBグループの予選を勝ち抜いたサタンよりもずっと強いので、くじ運次第で本戦に進む事が出来ただろう。

 

 しかし、戦闘力に換算すると422万の力を持つマロンの相手は無理だった。力を適切に加減してコレン達に重傷を与えず戦闘不能にしたマロンの技量を褒めるべきだろう。

 

 

 

 Oグループでは、ボラが十人以上の選手を倒した後、チャパ王によって場外に叩き落とされた。

「フッ、悔いはない」

 カリン塔に登って修行を受けたボラだが、彼は聖地カリンの守護者だ。戦闘力は630にまで高まり、気の感知はまだ精度が低いが制御は出来るようになった。

 

 かつての自分とは比べ物にならない程強くなった自覚はある。だが、「その程度」では天下一武道会では通じないだろう事も理解していた。その上で、自分の実力を確かめるために出場したのだ。その答えを得られてボラは満足していた。

 

 もちろん、これからも聖地の守護者として己を鍛え続けるのだが。

 

「これはまた王と名乗るのを止めなければならんかな?」

 そのチャパ王も、自分を遥かに上回る相手との戦いに苦戦を強いられていた。北の界王様の修行を受けて、戦闘力はこの宇宙全体でも上位に入るはずの5万4千にまで高くなり、習得した界王拳も10倍まで使用している。大会のために新たに編み出した奥義も何もかも使っているが、全く相手にならない。

 

「そこまで気にするもんじゃないよ。亀の爺さんと違って、弟子にするわけにもいかないしね」

 その強敵、セリパはそう答えた。去年の段階で戦闘力に換算して1000万を超える実力の持ち主だったが、今は1640万にまで力を高めている。

 

「純粋な技じゃ、あたし達よりあんたの方が上だからさ」

「では、私の弟子になってみるかね?」

「……そうだね、界王拳の技を盗めるかもしれないし、考えておいてやるよ!」

「では、よく見ているがいい。界王拳、15倍!」

 

 今自身が使える限界まで界王拳の倍率を高めて、チャパ王が再びセリパに仕掛ける。

「ああ、悪くはなかったよ」

 しかし、セリパのカウンターを受けてチャパ王の意識は途切れたのだった。

 

 

 

 予選最終グループのPでは、有象無象の選手が場外に叩き出された直後、ボンゴとナムの対決が始まった。

「メテオボールっ!」

「どどん波!」

 お互いの必殺技がぶつかり合い、爆発。その爆炎を縫うように肉弾戦を繰り広げる。

 

「いつの間にクラッシャー軍団の技を盗んだ?」

「盗んじゃいない。悪党同士話が合ったんだよ」

 牛魔王やアントン程ではないが巨体のボンゴから繰り出される拳を、やせ形のナムが受け流し貫手でカウンターを仕掛ける。

 

「ぐぅっ、全く、きつい仕事だぜ!」

 ボンゴとすでに敗退しているパスタが天下一武道会に出場したのは、雇い主であるレッド将軍からの命令と、ゲロからの依頼があったからだ。

 

 警備員とは別に、参加選手の立場で大会開催中に何かあったら……参加選手の中に変装したピッコロ大魔王やその手先が混じっていたり、歴史改変者が何か仕掛けてきたりしたら……対処して欲しいと言われたのだ。

 

 レッド将軍とゲロも、ボンゴとパスタが数々のセキュリティを突破して潜入した魔族の存在を見抜く事や、歴史改変者の犯行を防げるとは考えていないだろう。せいぜい、数ある保険の中の一つでしかないはずだ。

 しかし、雇われ者のボンゴとパスタに選択肢はない。

 

「そう言う割に、楽しんでいるように見えるが?」

 しかし、ナムが指摘した通り武道家としての側面もあるボンゴは、この仕事を嫌ってはいなかった。嫌っていたら、この大会のために新たな技を習得したりはしない。

 

「いつまでも悪党気分では困ると、会長も言っていたぞ!」

「悪党は悪党だろうが! 改心した覚えも無ぇ! サイヤ人やフリーザ軍のやってることと比べりゃあ、確かに俺達は小悪党だろうがな!」

 戦闘力にして5100のボンゴと、8530のナムの攻防は続いたが、やはりナムの方が始終優勢だった。

 

 その二人の頭の上を、悟空達の幼馴染で若き戦士タイプのナメック星人ムデンが吹っ飛んで行った。

「がはっ! それが噂の戦闘形態ですか。あなた達地球人の科学力には敵いませんね」

「ううん、あまり褒められている気がしない。改造されている間、あたしは寝ていただけで意識もなかったからね」

 

 20倍界王拳が解け、場外に落ちたムデンを見下ろすバイオレット大佐は戦闘形態のまま複雑そうな顔をした。

 その戦闘力は、目覚めたばかりの頃は100万だったが、今は280万……戦闘形態の今は2千8百万に到達している。最終形態のフリーザの背中に埃をつけられるまでもう少しと言う驚異的な強さだ。

 

 ムデンも戦闘力28万5千まで強くなり、20倍界王拳で570万にまで気を高めたが、戦闘形態になった彼女にはまったく敵わなかった。

「改造もされていないのにこんなに強いあんた達の方が凄いと思うよ」

「フフ……素直に褒められたと思っておきます」

 

 バイオレット大佐は意識を舞台上に戻すと、ボンゴとの戦いに決着をつけたナムの首筋に軽く手刀を入れて失神させ、勝利したのだった。

 

 こうして天下一武道会の本戦に進む十六人の選手が出そろったのだった。

 




・戦闘力推移

・ナッパ:36万 → 43万5千 原作ナッパの百倍以上の強さに至った。
・アボ:19万7500 → 31万7千
・カカオ:12600 → 20200 原作キュイを越えた。相変わらずンダとしかしゃべらない。太陽拳を習得。

・ラカセイ:1万2千 → 19300 原作キュイを越えた地球で最も強い双子。
・亀仙人:5万5800 → 7万4100 実は牛魔王に追い越されているが、弟子が成長していると言う事なので、それはそれで満足。
・タイツ:25万3千 → 33万5千 二十倍界王拳を使えば670万。

・タロ:19万 → 23万 バーダックチームと子供世代の成長が著しいので、負けて堪るかとトレーニング中。
・リーク:11万9千 → 13万9千 ギニュー隊長を僅かに超えたが、もうすぐ悟空に追い抜かれそうで、「さすがバーダックさんの次男だ」と思っている。

・アックマン:4万7800 → 8万4千 桃白白に続いて界王拳を習得。8倍まで大きな負担なく使用でき、基本的には15倍まで使用できる。短時間しか戦えなくなるが、無理をすれば20倍まで使える。
・クリリン:4480 → 5980 ラズリとのデートだけではなくちゃんと修行もしていた。

・トテッポ:231万 → 279万 大猿化すると2790万で、最終形態のフリーザの背中に埃をつけるまでもう少し。
・ターレス:29万7千 → 39万5千 二十倍界王拳で790万、スーパーサイヤ人化で1975万。

・パスタ:3250 → 4230 原作ナッパよりも強くなった。
・メーネ:3万 生前は2千未満だったが、地獄でのトレーニングと、生き返ってから受けた潜在能力解放や、超神水や神精樹の実の飲食によってだいぶ強くなった。

・陳大拳:500 → 1千 この宇宙の平均的な種族のトップクラスの戦士になった。神精樹の実エキスを服用し、ジャガーに幻星拳を伝授した代わりにどどん波等を教わった。
・ヤムチャ:3万2800 → 6万3300 北の界王の修行を受けて界王拳を習得した。

・ラディッツ:40万8千 → 59万6千 スピリットバーストの特訓をするベジータに付き合った事で、フリーザの第一形態を越えた。

・マロン:366万 → 442万 パンプアップすると884万。
・豹天龍:900 → 1300 異なる歴史の自分との戦いを経験して、一層強くなった。
・コレン:4万 生き返った事や潜在能力解放、超神水や神精樹の実の飲食とトレーニングによって生前と比べて十倍以上強くなった。
・ラズリ:2860 → 3800 クリリンとの関係は進んだが、ちゃんと修行はしていた。

・ボラ:630 ヤシシや刀を持った謎の野生児と組手をし、カリン塔を登って超神水や神精樹の実エキスを飲んで強くなった。
・チャパ王:3万800 → 5万4千 北の界王様の修行を受けてギニュー特戦隊員並みに強くなった。界王拳も10倍まで負担なく使える。

・セリパ:1331万 → 1640万 大猿化すると1憶6400万。最終形態かつフルパワー時のフリーザを上回る。

・ムデン:23万5千 → 28万5千 ネイルと共に北の界王様の修行を受けて界王拳、元気球を習得。界王拳は20倍まで使える。その場合の戦闘力は570万
・ナム:7060 → 8530 サイヤ人襲来編のベジータ戦時の悟空並みに強くなった。
・ボンゴ:4235 → 5100 
・バイオレット大佐:100万 → 280万 戦闘形態になると2800万。



・アントン・ザ・グレート

 第22回天下一武道会の予選でクリリンと戦った巨人レスラー。原作コミックでは名前も呼ばれなかったが、原作アニメではヤムチャが名前と経歴を説明した。
 元世界プロレスチャンピオンで、岩をも砕く400キロの握力の持ち主。そのあまりの強さに戦える相手がいなくなり、地下プロレスで暴れまわっていたらしい。

 その怪力でクリリンを握りつぶそうとしたが、あっさりと抜け出されて敗退した。強さは、亀仙人の修行を受ける前の悟空(ピラフ城の牢の石壁を拳で破壊できなかった)よりは強いだろうが、亀仙人の修行を受けた後の悟空やクリリンよりは弱いと思われる。
 そのため、戦闘力は20から30ぐらいではないかと推測しました。

 この作品では、GCGの影響がプロレス業界にまで及んだためにアントンと試合が出来るレスラーが複数人いたため地下プロレスに落ちる事無くチャンピオンであり続けている。
 戦闘力は100。しかし、気の制御や感知能力はない。他のプロレスラーも戦闘力が80や70の強者が何人かいる。



・気円弾

 クリリンが編み出した技……と言う程のものではない。気円斬に似た形状になるよう円盤型にした気弾。当たると普通に爆発する。ただ、軌道が気円斬とほぼ同じなので避けやすい。
 気円斬を警戒する相手を引っかけるためだけの技。



 excite様、ぱっせる様、ダイ⑨様、PY様、ヴァイト様、佐藤東沙様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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