ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

127 / 143
127話 スラッグ一味の(痕跡)消失、天下一武道会一回戦開始!

「リクームイレイザーガン!」

「クラッシャーボール!」

 ある惑星で、強大な力がぶつかり合っていた。立ち枯れた木と動物の骨、乾いた土だけの大地だけが広がり、薄くなった大気が乾いた風となって吹いている。

 

「……クソっ、なんて頑丈な樹なんだ。まだ立ってるぜ」

「ああ、俺達ギニュー特戦隊の必殺技を受けても枝が落ちる程度とは、大した樹だぜ」

 モヒカン頭で巨漢のリクーム、そして赤い肌に白い髪のジースは自分達の必殺技を受けても尚折れない立ち枯れた神精樹を見て舌打ちをした。

 

「二人ともだらしねぇな。グルドはどうだ?」

「いくら俺の超能力でも無理に決まってるだろ、こんなバカでかい樹!」

 その様子を見ていた青い肌の巨漢バータが、四つの目を持つ小柄で緑色の肌のグルドに尋ねるが怒鳴り返されてため息を吐いた。

 

「天下のギニュー特戦隊が枯れ木の始末も出来ねぇとはな」

「バータ! そう言うお前はどうなんだよ!? さっきから見ているだけじゃないか!」

「俺がいくら宇宙一のスピードを誇る戦士でも、動かない枯れ木相手じゃ意味が無いからな」

「まあ落ち着けよ、ジース。バータ、お前の態度も良くないぞ」

 

 彼等、フリーザ軍の精鋭エースチームであるギニュー特戦隊はフリーザの命でスラッグ一味を追跡していた。しかし、追跡はなかなか進んでいなかった。

 ギニュー特戦隊は情報収集のスペシャリストと言うわけでは無かったため、スラッグ一味が神精樹の苗床にした星やその痕跡を追って、地道に行うしかなかったからだ。

 

 そのため着実にスラッグ一味の追跡は続いているが……慣れない仕事が続くとストレスが溜まるし、体が鈍る。

「やれやれだな。大猿化したベジータとクラッシャー軍団のアボとカドは、この神精樹に大穴を空けて活動停止に追い込んだというのに。お前達ときたら枝切りハサミの代わりにしかならんのか」

 それでギニュー隊長は隊員達のレクリエーションも兼ねて、空いた時間を利用して神精樹の枯れ木を的にした訓練を実施したのだった。

 

「こんな事では今日のおやつは抜きだな!」

「ええーっ!」

「そりゃないですよ、隊長!」

 口々に不満を表す部下達に、ギニュー隊長は厳しい口調で叱責した。

 

「ベジータはこの神精樹を駆除しただけじゃなく、枯れ木を利用して新しい町まで造っているんだぞ! なのに俺達は枯れ木を倒す事も出来ない! 情けないと思わんのか!?」

「そ、そりゃあ、まあ……」

「で、でもあいつらサイヤ人は大猿になると戦闘力が十倍になるんだし、ズルいっすよ」

「それに、クラッシャー軍団もいたんでしょ? 他の連中はともかくアボとカドは隊長に次ぐ戦士じゃないですか」

 

 ギニュー特戦隊の面々にとって、クラッシャー軍団とベジータチームは、自分達に次ぐフリーザ軍の精鋭チームと言う認識だった。

 しかし、クラッシャー軍団はアボとカドのワンマンならぬツーマンチームだと彼らは考えていた。何故なら、アボとカドの戦闘力はリクーム達を大きく上回る9万(だと思っている)だが、他のメンバーはダイーズ以外1万に満たない中級兵士だけのチームだからだ。

 

 一方、ベジータチームには戦闘力こそ自分達より下だが、ナッパの戦闘力が1万を超えた事で全員上級兵士になっている。しかも、地球人よりはるかに長命なギニューたちにとっては短い十年と言う期間で戦闘力を大きく上昇させている。

 特にベジータに対しては、ギニュー隊長を超える事は無いだろうが後十年もすれば自分達に匹敵する……もしかしたら超えるのではないか? と言う危機感をリクーム達は覚えていた。

 

 そうしたらギニュー隊長がベジータ達を特戦隊の新メンバーにスカウトするかもしれない。新メンバーなど必要ないと考えるジースとバータにとって、それは受け入れがたい未来だった。

 特に、二年前にベジータの戦闘力が4万に達したという報告を聞いてからはそんな未来が現実にならないようダンスのレッスン以外にもトレーニングを始めている。

 

「しかし、あのベジータちゃんがフリーザ様から星を貰って王様になるとはねぇ。そう言う事に興味があるようには見えなかったから意外だったぜ」

「フンッ、どうせ十年も持たずに星を荒廃させてフリーザ軍に出戻るか、親父の二の舞になって終わりさ」

 

 リクームの言葉に、特戦隊の中でも特にベジータを嫌っているグルドがそう吐き捨てる。

「だけどグルド、ベジータが貰った地球って星には希少な資源があって、フリーザ様も注目しているって噂だぜ」

「それに、視察に行ったザーボンの報告だとかなり栄えているらしい。ザーボンと部下を気前よく城に泊めて、ご馳走でもてなしたそうだぜ」

 

「どうせ賄賂だろうけど、あのベジータにそんな事が出来るとはどうにも信じられねぇ。ラディッツやナッパ以外に、内政が得意な手下でもいるのか?」

 

 ベジータに対して危機感は持っていても、ベジータチームの動向を逐一調べている訳ではなければ技術職でもないグルド達はゲロやカカロットの存在を覚えていなかった。地球に留まっている彼らの名前が、宇宙を飛び回るギニュー特戦隊の耳に入る事は滅多にないし……当時は余り興味が無かったから覚えなかったのである。

 

 キコノの復帰やその助手のトワの存在についてはフリーザ軍内でも噂になっていたので知っているが。

 

 しかし、特戦隊を率いるギニュー隊長の耳にはそれなりに情報が入っていた。

「確か、ラディッツの生き別れの弟以外にゲロと言う科学者が新しい部下にいたな。おそらく、手を回したのはそいつだろう。

 それとザーボンの報告では、地球では今頃武闘大会を開いているらしい。地球人やサイヤ人達に強くなる目標意識を持たせるために、高額の報奨金をかけているらしい」

 

「へえ、良いですね。隊長、この任務が終わったら俺達も参加して賞金を総取りして小遣いにするってのはどうです?」

「ベジータちゃんの星は飯も美味いって聞くぜ。俺、賞金でパフェ食べちゃおうかな~!」

 

「馬鹿者! 賞金と言ってもベジータの星だけで通じる通貨だぞ! そんな物よりフリーザ様からボーナスを頂くために任務に集中だ!」

「「「「はいっ、ギニュー隊長!」」」」

 

 地球からやや離れているため、今年の天下一武道会には間に合わなかっただろうが、ギニュー特戦隊の地球観光というイベントはひとまず回避されたのだった。

 しかし、地球にとって良い事ばかりではなかった。

 

「どういうことだ? スラッグ一味の痕跡が途絶えただと?」

 任務に戻ったギニュー特戦隊が痕跡を辿っていると、それが突然途絶えたのだ。

 

「ギニュー隊長、奴等、俺達の追跡に気が付いて逃げ出したんじゃないですか?」

「いや、奴らが俺達の追跡に気が付くはずはない。探査機も何もなかったからな。

 奴らは今まで惑星フリーザNo.79がある方向に向かっていたはず。なぜ急に姿を消した?」

 

 スラッグ一味追跡の任務のために貸与された宇宙船の中で唸るギニュー隊長だったが、手掛かりが残っていない宇宙空間を睨んでいても何にもならないと、一旦最寄りの基地に帰還して情報を集める事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 本戦へ出場する選手の数が原作と比べて倍であり、原作に出場していない選手が存在する時点で原作通りの展開にはならないと思ってはいた。

 そのため、天津飯やクリリンが予選落ちした時もこの儂、天才科学者のドクター・ゲロは驚かなかった。……歴史改変者に塩を送ってしまったなと額に手を当てたが。

 

 まあ、原作開始の時期から二回目の天下一武道会なので慣れたものだ。

「今日は現れませんね」

「ドクター、宇宙は異常なし。各地の曹長達やイエロー大佐も何も異常は確認できないって」

 4号と8号がそう述べる。儂等が気にしているのは、ピッコロ大魔王一味や歴史改変者についてだ。

 

「まだ一日目じゃから気は抜けないが、今日の所は何事もなく終わりそうじゃな」

 儂と4号、それに前々回優勝者のギネが出場していないのは彼等を警戒するためだ。そのために、サイボーグのカカオと違って完全な機械ベースであるため天下一武道会に出場できない8号まで協力してもらっている。

 

 そして天下一武道会以外の場所で何か起きた場合に備えて、ムラサキ曹長の兄弟達やイエロー大佐やオレンジ大佐達レッドリボン旅団、そしてナメック星のネイルに警戒に当たってもらっている。

 ……チチの母で人造人間5号のサンもこの場にはいないが、彼女は前回大会優勝者としてテレビ番組にゲストとして出演しているからだ。

 

「それにしても本当に動くのかな? 特にそのピッコロ大魔王って奴。今となっちゃ、大したことのない敵なんだろ?」

「ギネ、確かにその通りじゃが歴史改変者が背後にいる以上昔のままとは思えん」

 

 ……歴史改変者がピッコロ大魔王やコーチンをこのまま飼い殺しにして、「孫悟飯(子)が産まれる時期になってもピッコロ大魔王が死なず、マジュニアが存在しない」という地味だが大きな歴史改変を企んでいたら、その限りではないが。

 

「そう言うもんか。バーダックはどう思う?」

「チッ、トーマ達め。何時に成ったらスーパーサイヤ人に成りやがるんだ? 見ちゃいられないぜ」

 ギネが視線を向けたのは、このボックス席にいる五人目の人物、バーダックだった。しかし、彼の意識はつい先ほど終わった大会の予選に向けられていた。第三子のラニを抱いたまま、気難しそうな顔つきで選手がいなくなった舞台を睨んでいる。

 

「体が疼いて仕方がないみたいだね。そんなに出たかったなら、強がらないで出場すればよかったのに」

「そう言う訳にもいかねぇだろ。結果が分かっている試合程つまらねぇものはねぇ。それに、大会の途中で出番が来たら棄権しなきゃならねぇだろ」

 

 バーダックが天下一武道会に出場しなかったのは、自身と他の選手の力の差が大きすぎるから、そしてタイムパトローラーの仕事のためだった。

 ただ、分かっていても観戦しているとサイヤ人の血が疼くようだ。

 

「さて、今日の試合も終わった事だし皆と合流して食事にでも行くとしようか」

 この時、儂はフリーザ軍の情報も盗んで見ていたため、ギニュー特戦隊がスラッグ一味の痕跡を見失った事も知っていた。

 

 そのため惑星クルーザーごと歴史改変者の魔術によって地球の近くに瞬間移動したのかと警戒していたが、地球の周りに配置した光学迷彩機能付き監視衛星で確認できる範囲で異変は確認できなかった。

 そのため、単純にギニュー特戦隊が見失っただけである可能性が高いと思っていた。……スラッグ一味は、ギニュー特戦隊の調査では地球が存在する宙域に向かっていたようなので、注意していないわけではなかったのだが。

 

 なお、フリーザ軍にも地球で武道大会を開いている事は地球人を鍛えて兵士として使うための練兵の一環として、報告している。映像を見たいと言われた時のために、事前に収録したブルー大佐やムラサキ曹長、ターレス達の模擬戦の様子の背景を編集した物が用意してある。

 ギニュー特戦隊やフリーザが万が一出場してみたいなんて言い出す事は……まあ、本気で態々辺境の星に来て武道会に出場しようとはしないと思うから、大丈夫だろう。多分。

 

 

 

 

 

 

 次の日、実はこの第七宇宙全体と比べてもハイレベルな試合が行われた天下一武道会の観客達は、今日の試合が始まる前から熱気が高まっていた。

『観客の皆様、おはようございます!』

 その観客達に、アナウンサーが語り掛ける。

 

『昨夜は予選とは思えない迫力満点の試合を観戦し、興奮のあまり眠れなかった方もいるのではないでしょうか? ですが、本日から始まる本戦に進んだ選手達は昨日以上の試合を我々に見せてくれるはずです! 決して居眠りなどなさらぬよう!

 ……もし眠ってしまっても、テレビ放送を録画したり、後日発売されるビデオをお買い上げいただければ見られますが。あ、最近はDVDって言うのでしたか』

 

 ちなみに、原作コミックやテレビでこのエピソードがやっている頃、現実の地球ではDVDは存在しなかったが、この歴史では我がGCコーポレーションが技術を開発して世間にも普及し始めている頃だ。

 レンタル店の多くの面積をまだビデオテープが占めており、DVDはまだ一部のコーナーでしか取り扱われていないが、あと数年以内に逆転し、近い将来完全に入れ替わる事だろう。

 

 まだ辺境にはテレビが一台もない村が残っているので、やや急ぎすぎかもしれないが。取り残される者がいないよう、全体を底上げするというのは儂が思っていたより難しい。

 

『では、選手の入場と本戦の組み合わせ抽選を行います! 一番手はご存じ、地球一のヒーロー、天津飯選手との兄弟弟子対決を制した桃白白選手です!』

 観客からの歓声に手を振って応えながら入場した桃白白が、抽選用の箱の中に手を入れる。ちなみに、もちろん超能力で組み合わせを操作などはしていない。

 

「ふむ、13番だ」

『桃白白選手は一回戦第七試合です!

 次に、去年の事件で彼の名前を知った人も多いでしょう! しかし大猿だったので顔はまだまだ知られていない。武天老師様の五番弟子、サタン選手!』

 

「うおーっ!」

 両拳を上げてポーズをとるサタン。なお、実家の両親には手紙を送って家を黙って出た事を謝り、和解したようだ。テレビや雑誌で顔を知られるようになったし、これ以上秘密にしておくのは無理だと思ったのだろう。……実際には、亀仙人がとっくに連絡を取っていたのだが。

 

「15番。ふうっ、良かった」

 そして桃白白と当たらない事に安堵していた。

『サタン選手は、一回戦第八試合です!

 次の選手は、ドクター・ゲロの人造人間12号トーマ選手! 前々回大会優勝のギネ選手と同じサイヤ人出身です! いやー、今大会には予選で敗退してしまったランファン選手を含めると七名の人造人間が出場しておりますが、勝ち抜く自信はおありですか?』

 

「勝つつもりが無いのに出場はしないさ。お前らもそうだろ!?」

「無論だ」

「ふ、ふふふっ、勝負は時の運と言いますからね」

 

 トーマに同意を求められた二人は頷いたものの、内心は彼と当たりたくなさそうだった。実際、14号のバイオレット大佐までいる儂の人造人間達の中では、トーマが一番強いのでその反応も無理はないだろう。

 

「12番だ。後半の番号が続くな」

『トーマ選手も第六試合です。

 次は武天老師様の兄弟弟子にしてGCGの指導者、鶴仙人選手です!』

 

「いや~、観客の皆様には亀との対決を是非見てほしかったが、残念じゃわい」

 そう言いながら鶴仙人は儂等がいるボックス席の方に視線を向けながら、口の片端を吊り上げる。

「まったくいくつになっても厭味ったらしい爺じゃわいっ!」

 視線を向けられた亀仙人がそう言って青筋を立て、クリリンに「まあまあ、武天老師様落ち着いて」と宥められている。

 

「ほう、8番じゃ」

『鶴仙人選手は一回戦第四試合です!

 次は前々回優勝者のギネ選手の次男、前回大会も本戦に出場した孫悟空選手です! いやー、ターレス選手と違って三年前と変わりませんね』

 

「そっか? 少しは背が伸びたはずなんだけどな。おっちゃんこそ変わらねぇな」

『ははは、私の背はこれ以上伸びませんからね。さ、抽選をどうぞ』

「おうっ! 3番だ!」

 

『悟空選手は第二試合です! 

 次の選手は実は人造人間だったランファン選手や魔王のシュラ選手相手に勝ち抜いたサイヤ人のプリンス、ベジータ選手です!』

 

 名を呼ばれたベジータ王子は観客の声援にも表情を変えず、ややおざなりに小さく手を振る以上の反応は示さずクジを引く。

「ザーボンの案内をした時と違い、芝居をする必要もないのにベジータがここまで愛想がよくなるとは……心境の変化と言う奴か」

「愛想が良い!? あれで!?」

 しみじみとした口調のラディッツの言葉を聞いて、普段からファンサービスを欠かさないパンプットが驚いて声を上げている。

 

「ほう、16番だ。良かったな、サタン。明日からは観客席でゆっくり出来るぜ」

「あ、相手には不足無し……です、はい」

『ベジータ選手、一回戦第八試合! 第八試合はサタン選手対ベジータ選手に決定しました!

 続いての選手は謎の格闘家ギン改め、人造人間13号にして、レッドリボン旅団大佐のシルバー選手です! 去年の神精樹事件の映画で出演が内定しているそうですが、本当でしょうか?』

 

「悪いがノーコメントだ、公式発表を待ってくれ。……5番だ」

『それは残念。シルバー選手、一回戦第三試合です!

 次の選手は前回大会も出場、鶴亀仙流のランチ選手です!』

 

「よろしくお願いしまーすっ! あ、縁起が良い、1番です!」

 青髪の方で入場するランチ。掲げた番号に観客も「おぉ」と歓声を上げる。

『ランチ選手は一回戦第一試合! 選手入場とこの抽選が終わった直後の試合ですね!

 では、ナッパ選手の入場です!』

 

「おうっ! 予選落ちしたラディッツの分も暴れてやるぜ!」

 ノッシノッシと軽快な足取りで入場したナッパは、意気揚々とした様子でくじを引き……出た数字を見て真顔になった。

 

「に、2番だ」

『おおっ、ナッパ選手2番です! 一回戦第一試合はランチ選手対ナッパ選手に決定しました!

 続いては今大会の優勝候補の一人、タイツ選手です! 武天老師様を下しての堂々の本戦出場、おめでとうございます』

 

「ありがとう、アナウンサーさんも久しぶりね」

『その予選で行われた会話に気になる話題があったようですが、質問しても?』

「あたしは9番! 一回戦第五試合ね! はい、次の人ーっ!」

『あ、ちょっ、マイクを返してくださいっ!』

 

「ん? 何を揉めているんだ? 観客の皆っ! 天下一武道会優勝経験二回のアックマンだぞー!」

 入場したアックマンは、戸惑いながらくじを引いた。

『6番! 一回戦第三試合はシルバー選手対アックマン選手に決定しました!』

 

「フッフッフ、相手にとって不足はない。……メディカルポッドは空けておけよ」

「ヤムチャと同じ無茶はよしてくれよ」

 強がるアックマンに、釘を刺すシルバー大佐。永久エネルギー炉とフリーザ一族の生命力、そしてナメック星人の再生力を持つ彼にメディカルポッドは必要ないので、誰が使うつもりでアックマンが言ったのかは言うまでもないだろう。

 

『観客の皆さん! 前回大会準優勝者ターレス選手の入場です! 今大会の優勝最有力候補……と言いたいところですが、前回大会以上に強豪揃いの今大会、果たして決勝戦まで勝ち進めるでしょうか!?』

「さあて、ベジータ王子やトーマさん達は強いですからね。でも、全力を尽くしますよ」

 猫を被ったまま答えるターレスに、アナウンサーは続けて質問した。

 

『そう言えば前回大会に比べてだいぶ背が伸びましたね。サイヤ人の生態だそうですが、そうなると悟空選手やチチ選手、ブルマ選手の背も次回の天下一武道会が開かれる頃には伸びているのでしょうか?』

「そうなると思いますよ。個人差があるので、どれくらい伸びるのかは分かりませんが。

 7番、縁起の良い数字ですね」

 

「儂にとっては不吉な数じゃわい」

『ターレス選手、7番! 一回戦第四試合はターレス選手対鶴仙人選手に決定しました!

 続いて予選で最も重傷を負いながらも本戦に勝ち抜いたヤムチャ選手の入場です!』

 

「昨日はどうも、失礼しました」

 深夜までメディカルポッドに入っていたおかげで全快したヤムチャが、苦笑いをしながら入場する。ちなみに、彼とラディッツが4号の治療ではなく時間のかかるメディカルポッドの治療になったのは無茶をした反省を促すためである。

 もちろん、亀仙人から無茶をし過ぎだと説教を受けている。

 

「11番だ。こりゃあ……無茶しても勝ち目がないかも」

「まあ、ほどほどにやろうぜ」

『ヤムチャ選手11番! 一回戦第六試合はヤムチャ選手対トーマ選手に決定しました!

 続いてそのヤムチャ選手のガールフレンド、圧倒的な強さで予選を勝ち抜いたマロン選手です!』

 

「は~い! 皆よろしく~!」

 手を振りながら入場してくるマロンからは、おおよそ緊張感は感じられない。しかし、予選で彼女が見せた強さを知っている観客達からはやじの類は殆ど飛ばなかった。

 

「14番! って事は、えーと?」

「組み合わせでは私とだな」

『マロン選手、14番! 一回戦第七試合は桃白白選手対マロン選手に決定しました!

 続いて入場するのは大会優勝経験者チャパ王選手に勝利した期待のルーキー、人造人間11号、セリパ選手です!』

 

「ルーキーか。そう呼ばれたのは久しぶりだね」

「あはは、セリパちゃんオバサンっぽい事言ってる~」

「ぶっ殺すよ、義理の姉貴。……4番だ」

 セリパはマロンを睨みつけてから、引いたクジの番号をアナウンサーに見せた。

 

『セリパ選手4番! 一回戦第二試合は孫悟空選手対セリパ選手に決定しました!

 最後の入場選手は、スミレ改め人造人間14号バイオレット選手です!』

 

「よ、よろしく。ええっと、クジは……」

『あ、もう10番しか残っていないから引かなくても大丈夫ですよ。一回戦第五試合はタイツ選手対バイオレット選手です!』

「あちゃ~。今回も優勝は難しいかも」

 

 タイツがそう言って口元を引きつらせて、抽選は終わった。

 そして早速一回戦第一試合が行われた。

 

「手加減はしてやらないぜ、ナッパのオッサン」

 抽選から試合開始までの間にくしゃみをして青髪から金髪に代わったランチが、そう言って凄みをきかせる。

「フンッ、この俺を舐めていると痛い目を見るぜ」

 しかし、ナッパも怖気づいた様子は見せずランチを睨み返した。

 

『一回戦第一試合、ランチ選手対ナッパ選手。試合開始です!』

 身構えて向かい合う金髪ランチとナッパ。試合開始の合図の後先に動いたのはナッパだった。

「まずはあいさつ代わりだ!」

 人差し指と中指をくんっとナッパが立てると、ランチに向かって強力な衝撃波が放たれる。

 

「はっ、随分と気の抜けた挨拶だな!」

 しかし、金髪ランチが腕を振っただけで衝撃波はかき消されてしまった。ランチの戦闘力は377万、対するナッパの戦闘力は43万5千。その差は大きく、ナッパが正攻法で勝つのはまず無理だ。

 

 何かしらの奇策が必要になる。

 

「うおおおおっ!」

 衝撃波が不発に終わった事を気にした様子もなく、ナッパは両腕に気を纏わせて金髪ランチに向かって突進した。そしてフェンシングの剣士を思わせる動きで金髪ランチに向かって突きを放つ。

 

「ちょっ、技の殺傷力が高すぎるだろ!?」

 ナッパの腕が纏った気によって、巨大な刃と化している事に気が付いた金髪ランチは慌てて回避する。

「腕の一本や二本軽く生やせんだろ? だったら気にするんじゃねぇぜ!」

 大振りな横薙ぎや上段からの振り下ろしではなく、無駄な動きと隙の少ない突きを主体とした攻撃は鶴仙人から武器術を学んだ成果が出ている。

 

「フンッ!」

 そして突きの合間に強力な足払いで金髪ランチの足元を狙う。ガリガリと舞台を削るような蹴りに、金髪ランチは鼻を鳴らした。

 

「そんな蹴りが通用するかよ!」

 金髪ランチはナッパの足払いを避けずにその場で踏んばって耐え、突きもナッパの肘を掴んで止めて見せた。

「ぬぐっ!」

 蹴りが当たっても金髪ランチはびくともせず、右腕は押しても引いても動かせない。呻き声を上げながら、ナッパは残った左腕に纏った気を爆発させた。

 

「チッ! 埃を巻き上げて煙幕のつもりかよ? 悪足掻きしやがって!」

 しかし、金髪ランチはナッパの右肘を掴んだまま離さない。動きを封じた彼に蹴りを叩き込んで勝負を決めようとする。

 

「くしゅんっ! ……あれ?」

 しかし、舞い上がった埃がランチの鼻孔を刺激して、彼女はくしゃみをしてしまった。その瞬間、髪が金から青に変わり人格が入れ替わる。

 

「今だ! くらいやがれーっ!」

 ナッパが勝機を見出したのは、ランチの人格がくしゃみによって入れ替わり、状況を把握するまでにかかる僅かな時間を利用する事だった。

 

 青髪ランチが呆然としている間に、彼女を場外に押し出そうとした。

「えっ? きゃーっ!? 何するんですか!?」

 しかし、ナッパに驚いた青髪ランチは状況が分からないまま腕を思い切り振り回して彼を振り払った。

 

「うおおおっ!? チ、チクショーッ!」

 結果、ナッパは猛烈な勢いで吹き飛ばされ観客席を守るシールドに叩きつけられ場外負けを喫したのだった。

 ランチがくしゃみをする可能性を少しでも高めるために衝撃波で埃を舞い上げたり、足払いを繰り返すふりをして舞台を削って塵を作ったりと、小細工を弄して掴んだ千載一遇のチャンスだったが活かす事は出来なかったようだ。

 

 ランチは普段は装着しているスカウターを利用して人格が突然変わっても状況やそれまでの自分の行動を把握できるように注意している。しかし、天下一武道会では頑丈な地球製スカウターを装着して出場する事は禁止されているため、ランチもスカウターをつけていなかった。

 そのため、狙い自体は悪くなかったと儂も思う。悪かったのは、運だ。

 

『ナッパ選手場外! ランチ選手の勝利です!』

「あ、はい。ありがとうございます?」

 気が付いたら勝利していた青髪ランチは、まだ何が起きたか理解していない様子だった。

 

 

 

 一回戦第二試合、舞台に入場した悟空は困っていた。

「参ったな。どうすれば勝てるのか分からねぇ。元気玉は完成する前にやられちまうだろうし」

「あんたね、試合で元気玉なんて使おうとするんじゃないよ」

 対戦相手のセリパにそう言われ、「やっぱりダメか」と頭に手を当てて笑った。

 

 悟空の戦闘力は10万6400、対するセリパの力は戦闘力に換算して1610万。悟空が20倍界王拳を使っても、その差は圧倒的だ。

 

 しかも、セリパにはランチにあったような弱点も存在しない。

 

『それでは一回戦第二試合、孫悟空選手対セリパ選手、試合開始!』

「パンブーキンに勝ったご褒美に少し稽古をつけてやるよ。来な」

 しかし、その圧倒的な力の差故にセリパは悟空を直ぐに倒すつもりはなかった。それではつまらないし、普段の模擬戦ではあまり使わない界王拳を間近で見られる機会でもある。

 

(一昨日までは殊更盗んでやろうと思っちゃいなかったが……悪人には教えられなくても、勝手に盗まれる分には北の界王様とやらも文句は言えないだろ。

 まあ、気の無いあたしに気の出力を倍増する技が使えるのかは分からないけど、それは技を盗んだ後考えればいい事さ)

 

「おうっ! 界王拳十倍!」

 まずは小手調べと、悟空は気を十倍の106万4千に引き上げ、セリパに挑みかかっていく。

「確かに戦闘力が十倍になってるね。力も速さもだ」

 大気を裂くように高速で拳や蹴りを繰り出すが、セリパはそう言いながら片手で簡単に受け止めていく。

 

「くぅ~、やっぱ強ぇな! 十倍じゃ全く勝てる気がしねぇ。パンブーキンのおっちゃんと戦った時みてぇにやるしかねぇか」

「二十倍でも勝てるとは限らないけどね」

 

「へへ、分かってる。でも、せっかくの武道大会だからな。ちょっとくらい無茶してでも戦わねぇと、もったいねぇからな!

 二十倍だ!」

 

 悟空から吹き上がる赤いオーラの勢いが倍増し、自分の体が軋む音が聞こえる。使用した後一歩も動けなくなったヤムチャ程ではないが、体に大きな負担がかかっているためもう長くは戦えない。

「ダダダ!」

 だから試合の後の事は気にせず思い切りやろうと、セリパに向かって至近距離から気弾を放つ。

 

「意気込みは良いけど、焦り過ぎだね!」

 悟空が連射する気弾は、全てセリパをすり抜けて通り過ぎていった。残像拳だと悟空が気づいた時には、視界いっぱいにセリパの脚が迫っていた。

 

「うわぁぁっ! くっ、気が無ぇのが厄介だな。はっ!」

 後ろに蹴り飛ばされたが、舞台上で何とか踏みとどまった悟空が再び気弾を放つ。

「いくら気弾を放っても通じないよ! ビビってるわけでもないだろう!?」

 回避した気弾が背後で爆発するのを聞きながら、セリパは内心首を傾げた。戦い方が普段の悟空とは違っていたからだ。

 

(何か狙ってるのか? 連射した気弾が実は空中に留まっていて……って、さっきから景気よく爆発しているし、それはないか)

 そう悟空の界王拳によって変化した気の様子を観察する片手間にそんな事を考えていると、彼が不意に両手を頭の上にあげた。

 

「集まれ!」

 まさか本気で元気玉を使うつもりか!? そう驚くセリパだったが、悟空の頭上に向かって次々に気が集まって大きな気弾を形成していく。

 

「元気玉にしちゃ速い? まさか、さっきから撃っていた気弾!?」

 そう、セリパが回避した気弾の内爆発していたのは三分の一以下。残りは煙に紛れて空中に留まっていたのだ。悟空は元気玉を応用して自分自身が放った気弾を再び集めて一つの気弾にしたのだ。

 

「行くぞっ、かめはめ……波―っ!」

 悟空は全身全霊の力を込めたかめはめ波を放ち、気弾を押し出しセリパに向かって放つ。

「なるほど、頭を使ったじゃないか。でも、それで負けてやるほどあたしは優しくないんだ」

 セリパはそう言うと右手にエネルギーを収束させる。

 

「ライオットジャベリン!」

 なんと、セリパもバーダックの技のライオットジャベリンを習得していた。どうやら、ギネから教わっていたようだ。

 

 悟空の全力が込められた大気弾とかめはめ波は、セリパのライオットジャベリンと正面からぶつかり合った。拮抗したのはほんの数秒で、ライオットジャベリンに貫かれるように裂かれて悟空を吹き飛ばした。

 

「イテテ……やっぱり勝てなかったかー。次の大会までに、オラもターレス兄ちゃんみたいにスーパーサイヤ人に成れっかな?」

 場外に落ちた悟空はそう言いながら立ち上がろうとするが、ダメージと二十倍界王拳による消耗が激しくてよろけてしまう。

 

「それともっと地力を鍛えるんだね。今のあんたじゃスーパーサイヤ人に成ってもあたしには勝てないよ」

 再び倒れそうになった悟空を掴み上げ、二回戦への勝ち抜きを決めたセリパは控室に戻っていった。

 




〇ギニュー特戦隊から見たクラッシャー軍団やベジータチームの評価

 どちらも、自分達の方が上のチームだと思っているが、ベジータチームの方が(自分達にとって脅威となるという認識が)評価が高い。

 クラッシャー軍団は既にチームリーダーになっているアボとカドを除けば、ダイーズ以外は中級兵士のザコ。そしてダイーズも実力では自分達に到底及ばないので、とって代わられる事はないと考えている。
 アボとカドが合体できる事を知ったら評価は変わりそうですが。

 ベジータチームはサイヤ人であるため大猿に成れば、チームで最も弱いナッパでも自分達を超えるし、特戦隊の面々から見ると短い時間で戦闘力を上昇させているため、「うかうかしていると追い越されるのではないか?」という危機感を抱いている。
 もしベジータチームが独自のファイティングポーズを生み出したら、近い将来ギニュー特戦隊の地位を脅かす存在になるかもしれないと危惧しているのかもしれない。



〇サイボーグは天下一武道会に出場できるのか?

 カカオが予選で戦っている場面を書いている時にこの問題に気が付きました(汗
 しかし、原作でもメカ桃白白が出場出来ていたので、多分可能なんじゃないかなと思い直しました。バーニアを使わなければOKと言うのは、原作でメカ桃白白が腕に仕込んだ刃物を出した途端反則負けになったので、「持っていても使わなければOK」だと思ったからです。




 excite様、ぱっせる様、翡翠314様、PY様、ダイ⑨様、泡銭様、変わり者様、佐藤東沙様、くるま様、kubiwatuki様、ダイ⑨様、ヴァイト様、gsころりん様、Acoknight様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。