ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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128話 一回戦第三試合から二回戦第一試合

 天下一武道会の試合会場では、一回戦第三試合が始まっていた。

「ぬおおおっ! この俺の空中殺法をいともたやすく……!」

 戦い続けられるギリギリの倍率である15倍界王拳を使用して、8万4千の戦闘力を126万にまで高めたアックマンは、背中の翼で空中を縦横無尽に飛び回った。そして手と尻尾から気弾を放って対戦相手のシルバー大佐を翻弄しようとしたが、上手く行かなかった。

 

「空中戦は、人造人間になってからトーマ達に嫌と言う程叩き込まれたからな!」

 人造人間になる前は空を飛べなかったシルバー大佐にとって、空中戦は弱点だった。それを克服する協力をしたのがバーダックチームと同じ人造人間の面々だった。

 

 おかげで経験を積むことができたシルバー大佐は、アックマンの機動力にも対応する事が出来た。そして、対応する事さえできれば、戦闘力にして594万相当の力を持つ彼がアックマンに負ける事はあり得ない。

 

「どどん波!」

「アッ、アックバスターっ! くっ、だ、ダメだーっ!」

 シルバー大佐のどどん波をアックバスターで防ごうとしたが、力が足りずアックマンは爆発に飲み込まれ舞台上に落下。その後、カウント負けとなり大佐の二回戦進出が決定した。

 

 

 

 続く一回戦第四試合。

「ふんっ! てやぁーっ!」

 気合の声と共に気を解放し、更にプラズマブーストを発動して身体能力を倍増し、マシンガンを連射したかのように鋭い連続突きを放つ。

 

「最初から飛ばすじゃねぇか、爺さんっ!」

 被っていた猫を脱いだターレスは、小柄な老人から一瞬で全身に分厚い筋肉を纏ったマッチョへと姿を変えた鶴仙人の攻撃を、正面から迎え撃った。

 

「出し惜しみしてはあっという間に負けてしまうからな」

 鶴仙人の戦闘力は素の状態で5万800、気を解放して一時的に約10万まで引き上げ、更にプラズマブーストで身体能力のみを20万相当にまで高めた。

 しかし、それでもターレスとの差は大きい。ここまでしなければ、鶴仙人は彼と戦いらしい戦いが出来ないのだ。

 

「まったく、あの坊主が立派になったもんじゃわい」

「へえ、嬉しい事を――が!? 爺っ! テメェっ!?」

「ほっほっほ、儂も萬國驚天掌を使う事が出来るのを忘れたか? 技のちょっとした改良ぐらい軽いものじゃ」

 

 自身の気の性質を電気に変える萬國驚天掌、それを格闘技に改良した萬國驚天拳。ナッパが使っていた技だが、鶴仙人も同じ改良技が使えるようになっていたようだ。

「やるじゃねぇかっ!」

 しかし、ターレスは腕の痺れを強引に無視すると、フォトンシールドを展開した。鶴仙人よりも大きな、壁のような盾を作り出す。

 

「ぬおっ!?」

「場外まで飛んでいけっ! フォトンウェイブ!」

 気功波に押されて自らに迫るフォトンシールドを避けられず、鶴仙人は場外のシールド発生装置のシールドに叩きつけられ場外負けとなった。

 

「油断しちまったぜ。二回戦が明日からで助かった」

 痺れて感覚が鈍くなった両腕を見下ろしながら、ターレスは自身の勝利を告げるアナウンサーの声と観客の歓声を聞いた。

 

 

 

 一回戦第五試合では、タイツが開始直後から20倍界王拳を使って対戦相手のバイオレット大佐に先制攻撃を仕掛けた。

「い、いきなり瞬間移動で不意打ちは卑怯じゃない!?」

 戦闘形態に変身して、後頭部を狙ったタイツの蹴りを腕で防御する事に成功したバイオレット大佐に、タイツは「残念」と息を吐いた。

 

「戦闘形態に変身する前に一気に勝負を決めようと思ったのに」

「……次の試合から、変身してから入場する事にするよ。じゃあ、反撃だ!」

 悪びれる様子の無いタイツに青筋を立てたバイオレット大佐は、彼女に向かって激しく殴りかかった。

 

 タイツの素の戦闘力は33万5千で、20倍界王拳を使った状態で670万。だが、バイオレット大佐の力は通常形態でこそ280万だが、戦闘形態になると2800万に膨れ上がる。20倍界王拳を発動したタイツの四倍以上だ。バイオレットが戦闘形態に変身する前に勝負を決めようとしたのも当然だった。

 

「イタタ、こうなったら……っ!」

 瞬間移動を駆使してスピードを補っても、バイオレットの攻撃を受けてダメージが蓄積されていく。タイツは覚悟を決めると、スピリットパワーを発揮して一瞬で巨大化した。

 

「っ!?」

 タイツが巨大化出来る事は知っていたバイオレット大佐だが、一秒もかからず巨大化出来るようになっていたとは知らなかったため、自分より大きな拳を避けるのが遅れてしまった。

 

「うぐっ。だけど、それは悪手だ」

 大きな衝撃を受けたバイオレット大佐だが、空中に踏みとどまるとすぐに反撃に転じる。巨大化した事で力は倍増したタイツだが、代わりに小回りが利かなくなってしまった。さらに、舞台の広さは変わっていない。

 

「場外に落ちろっ、どどん波!」

 しかし、それはタイツも理解していた。バイオレット大佐がどどん波を放った瞬間、彼女の背後に瞬間移動で回り込む。

 

「そう来ると思っていた!」

 しかし、バイオレット大佐はタイツがそう来る事を読んでいた。素早く身を翻して、どどん波を打ち切り両手の親指と人差し指をくっつけた独特の構えを取る。

 

「気功砲!」

 そして放ったのはなんと気功砲だった。永久エネルギー炉が搭載されたバイオレット大佐は、疲労しない。そのため生身では寿命を削りかねない程の力を使う気功砲も、限界未満の威力に抑えれば消耗せず使う事が出来るのだ。

 

 この気功砲は溜め無しで撃ったため全力で撃った時の三分の一に満たない程度でしかない。しかし、その攻撃範囲は広く巨大化して小回りが利かなくなったタイツは避け切れなかった。

『うっ――!』

 巨大タイツは気功砲の直撃を受けて場外まで吹き飛ぶ……前に掻き消えた。

 

「なっ!?」

「スーパーどどん波!」

 驚くバイオレット大佐の背後にタイツが現れ、その背にスーパーどどん波を放った。

 なんと、巨大タイツはタイツが四身の拳で作り出した分身だったのだ。

 

 タイツはまず巨大化し、バイオレット大佐に一撃を与えて巨大タイツに意識を向けさせる。そして四身の拳で巨大化したままの、しかし気を低く抑え界王拳の倍率を下げた分身と元の大きさに戻った本体に分かれる。そして本体は巨大タイツの後頭部に張り付くようにして隠れる。

 

 そして、バイオレット大佐の背後に瞬間移動し、彼女が巨大タイツに気を取られている隙に本体が背後を取って攻撃して場外に押し出す作戦だったのだ。

 

「ゆ、油断した……」

 悔し気に呻くバイオレット大佐。スーパーどどん波によるダメージ自体は背中が少しヒリヒリする程度だが、彼女の脚は地面に触れていた。

 

『バイオレット選手場外! タイツ選手の勝利です!』

 なんとこの天下一武道会本戦出場者の中で、暫定的にだが最も高い戦闘力を誇るバイオレット大佐にタイツが勝利した。バイオレット大佐よりタイツの方が様々な技や舞空術を駆使した超人の戦闘経験を積んでいた事を考えても、かなりの大番狂わせだ。

 

「ふう。20倍界王拳を使っても小細工に頼らないと勝てないなんて……次の大会はスーパーサイヤ人に成れないと予選落ちかもしれないわね」

 

 

 

 タイツが作戦勝ちを収めた第五試合に続く、一回戦第六試合では早々に決着がつきそうだった。

「新、狼牙風風拳!」

 10倍界王拳を発動し、ヤムチャはこの大会のために改良した狼牙風風拳をトーマに向かって放った。

 

「ハイハイハイハイハイっ!」

「やっぱりスピードは大したもんだな! だけど、どのあたりが新なんだ? まさか、足技を取り入れただけじゃないだろうな?」

 しかし、トーマは高速で放たれるヤムチャの拳と蹴りを全て回避した。

 

 昨日20倍界王拳の反動で瀕死になった影響で、ヤムチャの戦闘力は6万3300から7万9100にまで上昇した。さらに10倍界王拳によって、フリーザの第一形態を超える79万1千に達したヤムチャだが、トーマの力は戦闘力にして2053万。桁が二つ違う。

「それは……ここからだ! はっ!」

 至近距離から気弾を放つヤムチャだったが、それもトーマにあっさりと回避されてしまう。

 

「今だ!」

 しかし、ヤムチャは尻尾の先端から気功波を放った。手から放った気弾に意識が削がれ、注意が薄くなった下からの攻撃。

「ほう、脚だけじゃなくて尻尾と気功波も組み込んだのか」

 だが、それもトーマに避けられてしまった。それでも諦めず蹴りを繰り出そうとするヤムチャに向かって、そろそろ自分の番だとトーマが拳を握る。

 

 その時、ヤムチャの右手の人差し指と中指が「くいっ」と動いた。

「っ!?」

 背後に衝撃を受けたトーマが目を見開き、その腹にヤムチャの蹴りがめり込む。何と、ヤムチャはトーマに避けられた気弾と気功波の軌道を操って、彼の背中を攻撃したのだ。

 

 ヤムチャが新狼牙風風拳に組み込んだのは足技と尻尾、そして繰気弾だった。

「くっ!」

 技を決めたヤムチャだったが、その顔に勝利の笑みは浮かんでいなかった。

 

(なんて手応えだ。まるで硬質なゴムの塊を蹴ったような……蹴ったはずの脚の方が痺れてきそうだぜ)

「なかなかだ。一撃で決めるんじゃなくて、複数の攻撃で攻めるやり方は面白いぜ。だが、今度こそ俺の番だ!」

 ヤムチャにしてやられたトーマだったが、ダメージは殆ど受けていなかった。反射的に防御を固めたヤムチャに向かって激しい拳のラッシュを浴びせる。

 

「ぐあぁーっ!」

「おっと、痛がっている余裕はないぜ! ファイアバレット!」

 腕を抑えて悲鳴を上げたヤムチャに向かって、止めのファイアバレットを放ち倒したのだった。

 

「ところで、なんで昨日の予選でラディッツにはその技を使わなかったんだ?」

 アナウンサーがテンカウントをとって試合が終わった後、ヤムチャを起こしてやりながらトーマがそう尋ねた。

「はは、そりゃあ……10倍界王拳を使って体に負担がかかっているのに、繰気弾なんて集中力が必要な技を使ったら操作を誤って自爆しかねないからだよ」

 

「10倍って、今日も使ってただろうが」

「武天老師様に怒られたから、20倍界王拳は使えないだろ? だからその代わりに別の無茶をしただけさ。上手く行っただろ?」

 ヤムチャはやはり今日も無茶していたらしい。まあ、素の力で三百倍以上の差がある相手と試合をする時点で無茶だとは思うが。

 

 

 

 そして一回戦第七試合では、ヒーローがピンチに陥っていた。

「ふふん、どう? あたしも結構やるもんでしょ?」

「むぅっ、筋は悪くないな」

「やだ~、負け惜しみ? カッコワルイ~」

 

 地球一のヒーロー桃白白と人造人間10号マロンの試合では、やはり地力で勝るマロンが優勢に試合を進めていた。

「恰好悪くなどない! 私はメチャクチャ格好良いのだ!」

 20倍界王拳を既に発動している桃白白の戦闘力は、14万5700の20倍で291万4千。フリーザの第三形態を大きく超えている。

 

「う~ん、なんか変な感じ。ねえ、なんであたしの攻撃が当たっているはずなのに、手応えが無いの?」

 しかし、マロンの力は戦闘力に換算して442万。今の桃白白よりも百万以上高い。

「それこそ技の違いだ。伊達に二百年以上生きてはおらん。……半分以上サラリーマンをしていたがな」

 だが、桃白白には兄である鶴仙人から伝えられた技があった。それによってマロンの拳を受け流し、蹴りが当たる瞬間に後ろに下がって衝撃を逸らし、受けるダメージを最小限に抑えている。

 

「そっか。じゃあ、これはどう?」

 マロンは肉弾戦で桃白白に押し勝つには時間がかかると踏み、バックステップで間合いを取った。そして、舞台上に十人近いマロンが現れた。

 

「四身の、いや、多重残像拳か! 小癪な真似を」

 気の感知技術を持つ者にとって、残像拳を見破る事は通常なら簡単だ。しかし、人造人間であるマロンには感知する気が無い。

 だが、桃白白はすぐに策を思いついた。

 

「太陽拳っ!」

 無数のマロンに向かって太陽拳を放った。距離があるので彼女の視界を封じる程の効果は期待できない。

「そこだっ!」

 しかし、実体のない残像にはできない影によって桃白白は本物のマロンの居場所を見抜き、気弾を放った。

 

「きゃっ!? ばれちゃった。じゃあ、今度は……連続繰気弾!」

 マロンは気を集中させると、手から繰気弾を連続で放った。

「むぅ、もしや、ヤムチャ以上に繰気弾を使いこなしてはいないか?」

 まるで独立した意志を持っているかのように、別々の方向から複雑な軌道で追いかけて来る繰気弾の群れを掻い潜り、桃白白は反撃の機会を伺った。しかし、マロンは攻撃の手を緩めない。

 

 右手の人差し指に気を収束し、桃白白に向かって突きつける。

「デスレイザー!」

 フリーザ一族のチルドの必殺技、デスレイザーだ。去年よりもさらに技の完成度が上がっている。

 

「くっ、しまったー!?」

 素早いが直線的な三条の気功波を避ける事に成功した桃白白だったが、それによって生じた隙を繰気弾は見逃さなかった。

 繰気弾の体当たりを受けた直後爆発に飲み込まれ、桃白白は倒れたのだった。

 

 

 

 そして本日最後の試合、ベジータ王子対サタンの一回戦第八試合は一方的な展開だった。

「ローリングアタックサタンパンチ!」

 高速で回転して勢いを増したサタンの拳を、ベジータ王子は片手で受け流した。

 

「うおおおおおっ!」

 しかし、サタンはめげずにベジータ王子に拳や蹴りを叩き込み続ける。

(くっ、まるで歯が立たない! いくら攻撃しても手応えが全くない。悪夢の中で幻と戦っているかのようだ!)

 サタンの戦闘力は1万80。フリーザ軍でも上級兵士に成れる程の強さに至っている。しかし、ベジータ王子の戦闘力は146万。

 

 タフネスや経験、そしてセンスのように戦闘力に現れない強さもあるが、流石に百倍以上の差があってはサタンがそう思うのも無理はない。

「どうした、息が上がってるんじゃないのか? もっと打ってこい!」

 一方、ベジータ王子はサタンを勝負の相手とは既に見ていなかった。どうせ試合はしなければならないのだから、サイヤ人のよしみで稽古の一つもつけてやろうと考えていたのだ。

 

 後天的にサイヤ人とのハーフになったサタンとサイヤ人の王子であるベジータ王子は、普段はほぼ付き合いが無い。ベジータ王子が社交的な性格ではない上に、実力が違い過ぎてお互いに組手相手にならないし、トレーニングも別々に行っているからだ。

 

(怖気づく様子もなく向かってくるところは見込みがある。ガキの頃、ラディッツのトレーニングに付き合ってやった頃の事を思い出すぜ)

 そして、交流が無いから評価していないという訳でもなかった。

 

「フッ、戦闘力1万にしては悪くない腕だ。褒美に、サイヤ人の王子であるこの俺が遊んでやる、せいぜい喜ぶんだな!」

「っ!? う、うおおっ!?」

 ベジータ王子はサタンがギリギリ反応出来る程度に抑えたスピードで、反撃を開始する。

 

 一瞬で勝負を決めず、格上相手の戦闘を経験させている分ベジータ王子にしては優しい対応だろう。そしてサタンが消耗した頃合いを見計らって場外へ蹴り飛ばして勝負を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 フリーザ軍での生活は、トワにとって予想通りだった。戦闘力は彼女本来の力と比べると圧倒的に低く報告したが、キコノの助手兼弟子という立場であるため、他の兵士から舐めた態度を取られる事もない。

 それにさっそく成果を上げてフリーザに評価されているため、居心地も悪くない。……他の研究者や非戦闘員からの妬み等はあるだろうが、そうした事は魔術で操っているキコノを盾にしているため、彼女に影響はない。

 

「……モチベーションが上がらないのは、問題だけれどね」

 そう本業は歴史改変者であるトワはため息を吐いた。いつか兄であるダーブラを救出し、暗黒魔界を復活させる事が目的の彼女にとって、フリーザに評価されても何も嬉しくない。給料が上がろうが、昇進しようが、彼女にとって大きな意味と価値はないからだ。

 

 それはフリーザ軍の科学者として取り組んでいる仕事についてもいえる事だ。トワは暗黒魔界の魔女であり科学者だ。研究と開発、新しい技術を発明する事は嫌いではない。

 しかし、実のところフリーザ軍でトワが行っているのは研究開発や発明ではない。盗作である。

 

 歴史改変者である彼女は、他の歴史の未来に行く事も出来る。そこで、未来の技術を解析してそれを自身の研究成果として提出しているのだ。

 従来よりも高機能なスカウターやメディカルポッド、宇宙船その他の開発も未来の先取りである。……ただ未来から現代に持って来ただけではなく、途中でそのメカニズムを自分でも理解してから渡しているので苦労はしているが、盗作には違いない。

 

 ミラのような強力な人造人間を作り出す天才科学者の一人であるのに、トワは何故そんな事をしなければならないのか。それは、彼女が持つ暗黒魔界の技術とフリーザ軍の科学技術が、全くの別のものだったからだ。

(魔術を使えばいくらでも同じ物が作れるというのに……! 魔術が使えない連中に合わせるのは手間がかかる)

 

 トワに魔術的な技術を使わず、科学だけで研究開発を行えと要求するのは、普通の科学者に「科学を使わず魔術を使え」と要求するに等しかった。……それでも未来にある現物を解析して仕組みを理解し、自分でも開発できるようにする事が出来るのは、トワも天才的な頭脳の持ち主だからこそなのだが。

 

 仕事をするのが面倒なら、何故身分を偽ってキコノの助手兼弟子としてフリーザ軍に加わったのか? それはフリーザの近くで彼を魔術で都合良く誘導するため、そしてゲロ達に自分の存在をアピールしてフリーザにしばらくの間手を出させないようにするため。つまり、十分なキリを手に入れるために大きな歴史改変を行うためである。

 

 そして、そのための準備と魔術無しの科学を学び直していては時間がいくらあっても足りない。そのため、前者を優先するのは当然だった。

 

(これまでのように事件毎に横槍を入れるだけでは、限界がある。バーダックは取り返されるし、ドミグラには引っ掻き回され、挙句にただの現地住民のはずのゲロには邪魔をされる始末!

 暗黒魔界復活のためにも、必ず奴らを出し抜き、ドミグラやメチカブラに先んじて必要なキリを手に入れなければならないというのに)

 

「どうしました、トワさん? 眉間にしわが寄っていますよ」

「っ! キコノ様、なんでもありませんわ」

 意識を己の内に向けていたトワは、キコノの存在に気が付かず驚いたがすぐに平静を取り戻した。魔術の影響下にある彼になら、もし何かを勘づかれて怪しまれてもどうとでもできるからだ。

 

「そうですか? 何か焦っている事があるのなら、一息ついて落ち着いてから考えた方がいいですよ」

 トワの魔術によって、彼女を自分の助手兼弟子だと思い込んでいるキコノは、黄色いカエルに似た顔に柔和な表情を浮かべて彼女にそう助言した。

 

「宇宙の帝王であるフリーザ様の期待を背負うのは、若いあなたには大変なプレッシャーでしょう。しかし、焦る必要はありません。我々がいくら焦っても、機器がそれに応じて早く結果を出してくれるなんて事はありませんからね」

「はい……ありがとうございます、キコノ様」

 別にフリーザからのプレッシャーなんて感じてはいないが、そう誤解している方がトワによって都合がいいので素直に頷いた。

 

「ええ、それで結構。なに、フリーザ様は寛大な方です。それに我々を無意味に急かしても成果は上がらない事はよくご存じだ」

 ユーモラスな外見のキコノだが、フリーザに対して戦力が減るからとサイヤ人を滅ぼす事に異議を唱えつつも、それはそれとして惑星ベジータを滅ぼす準備を進めていた、冷淡さを持ち合わせている。

 

 しかし、彼の冷淡さは常に発揮されるものではない。自身の助手であり弟子、つまり優秀な後継者であるトワに対してはそれなりに気を配り言葉をかけるぐらいの情は持ち合わせていた。

 そしてキコノの助言はトワにとって確かに有効だった。

 

(たしか、そろそろピッコロ大魔王をドミグラ一味が動かす時期ね。スラッグ一味に神精樹を与えたのも奴等でしょうから……しばらくは高みの見物をしながら、漏れ出るキリを集めるのが得策ね。

 以前邪魔された借りがあるけれど、だからと言ってゲロに送ってやる塩はないわ)

 

 とはいえ、残念に思う事が無いわけでもない。

 

(もうすぐ、何もしなくてもキリが稼げる時期は終わりね)

 取り返しがつかないほど歴史が変化して分岐し、時の指輪が増える時が近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 天下一武道会三日目、今日は二回戦と準決勝が行われる。

『多くの優勝候補がルーキーによって散っていった波乱の一回戦から一夜明け、一回戦を勝ち抜いた出場経験者とルーキーが残り、天下一武道会は新たな時代を迎えました!

 この二回戦で敗れた選手は明日の五位決定戦へ、勝った選手は午後からの準決勝へ進む事になります!』

 

 一回戦は組み合わせ抽選の結果、力に差がある選手の試合になったからか、格上の相手を倒せたのはタイツだけだ。そのため、アナウンサーは『新たな時代』と評したようだ。

『それでは二回戦第一試合を行います! ランチ選手、セリパ選手、両選手前へ!』

 そして、この試合でも選手間の力の差は大きい。

 

「彼氏とイチャついているだけじゃないってところを見せてもらおうか」

「か、彼氏じゃありません! セリパさんこそ、トーマさんとはどうなんですか!?」

「う、煩いよっ! 試合に集中しな!」

『え~、よろしいですか? では、試合開始です!』

 

 口論をしていた二人だが、試合が始まった瞬間直ぐに意識を切り替えた。

「やーっ!」

 青髪ランチは金髪ランチの分身を出すと同時に、セリパに向かって気弾を連射する。

 

「青髪の方もすっかり思い切りが良くなったね」

 そう言いながら気弾の雨を回避するセリパ。だが、ランチが気弾を連射した目的は攻撃ではなく牽制だ。

「行くぜっ!」

「はいっ! アタックです!」

 

 複数人の気を一つの気弾に合わせる排球弾。金髪ランチが作り出した気弾を、連射を止めた青髪ランチがセリパに向かって打ち出した。

 

「どどん波っ!」

 ランチの排球弾をセリパはどどん波で撃ち落とした。爆発によって大気が震え、閃光と煙で視界が遮られる。

「「はっ!」」

 その煙を貫くようにしてセリパに向かって拳が繰り出された。ナメック星人の細胞によって手に入れた伸縮自在の腕を活かした遠距離攻撃だ。

 

 しかし、セリパはランチの拳を叩き落とし、その先に居るはずの彼女に向かって飛び出した。

「そう来ると思ったよ!」

「さすがは姉御だです! でも……かーっ!」

 煙の向こうでは既に不完全同化してブランチになっていた。そして、口を開けて魔口砲を放つ。

 

「チッ、畳みかけて来るじゃないか!」

 魔口砲に対して、咄嗟に両腕を交差させて防御したセリパにブランチは接近戦を仕掛ける。亀仙人から修行を受け、天津飯と技を磨いた彼女の武術はベテラン戦士であるセリパの格闘術に勝るとも劣らない。

 

「うぐっ!?」

「でもまだまだだよ!」

 しかし、戦況はセリパに傾きつつあった。ランチの力は戦闘力に換算して377万。ブランチになる事で倍の754万にまで高めている。しかし、セリパの力は1610万だ。

 

 しかも、二人とも人造人間で永久エネルギー炉を搭載しているため疲労しない。結果、技量が互角である以上地力がものを言う。

「くっ、こうなったら!」

 疲労は無くてもダメージは蓄積する。激しくなるセリパの攻撃に追い詰められたブランチは、巻き返すために巨大化を試みた。

 

「ハンティングアローっ!」

 セリパはその隙を見逃さなかった。巨大化し始めたブランチに矢のように鋭い気弾が突き刺さって爆発した。

 

「とどめだっ!」

 さらに、ダメ押しの気功波でブランチを場外に向かって吹きとばす。

「きゃぁぁぁ!?」

「うわぁぁっ、クソ、解けちまった!」

 それによって空中で不完全同化が解け、青髪はそのまま吹っ飛び、分身の金髪は消えてしまった。

 

『場外っ! セリパ選手の勝利です!』

 順当な結果だが派手な内容の試合に、観客席から歓声が上がる。

「ドクター、悪い知らせ」

 しかし、監視衛星と通信していた8号が深刻な顔つきで儂に声をかけて来た。どうやら、何者かが地球に迫っているようだ。

 

 おそらくスラッグ一味だろう。今日までの穏やかな日々は、やはり嵐の前の静けさによるものだったようだ。

 しかし、我が社が地球や火星の周囲に配置している監視衛星の有効範囲は広い。スラッグの惑星クルーザーがどんなに早くても、対処する時間はいくらでも――。

 

「たった今、地球と火星の近く……宇宙船で一日ぐらいの距離に見た事の無い星が出現した。多分、スラッグ一味って奴等だと思う」

「……歴史改変者の仕業じゃな」

 嵐にしても、もう少し距離感と言うものを読んでもらいたいものだ。

 




〇127話のズノー様への質問の順番

 ズノー様への質問の順番が回ってくるのは作中の時間で三年後の、マジュニアが天下一武道会に出場した後でした。すみません、該当箇所は修正しました。



〇戦闘力推移

・ヤムチャ:6万3300 → 7万9100 20倍界王拳の反動で瀕死になった事でパワーアップした。10倍界王拳で79万1千、20倍で158万2千。




 両生金魚様、nou様、翡翠314様 wtt様、 いっちにっ様、ぱっせる様、-SIN-様、PY様、龍爺様、くるま様、excite様、翁飴様、名無しの過負荷様、佐藤東沙様、葵原てぃー様、gsころりん様、壬生谷様、ヴァイト様、汁ダーク様、T〇M〇K〇TA/こたね様、gsころりん様、太陽のガリ茶様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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