ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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129話 天下一武道会二回戦と、スーパーサイバー攻撃だ!

 自分の元に下らず逃げたロベルを始末するために地球へ向かっていたスラッグだったが、彼の本拠地であると同時に移動手段である惑星クルーザーは彼の期待に応えられなかった。

「地球に到着するのは、ロベルの宇宙船より一年以上遅れる見込みです」

 魔族の技術者ギョーシュが震えながらそう報告すると、スラッグは不機嫌そうに唸った。

 

「フリーザ軍の基地の索敵に引っかからないよう進むには回り道をするしかなく、また地球は辺境に位置しているため、効率よく進める航路が未発見で――ギャッ!?」

 そして、言い訳を終える前にスラッグに粛清された。カクージャが「ひぃっ!?」と悲鳴を上げる。

 

 ギョーシュは間違った事は言っていない。スラッグが神精樹の糧にするためにフリーザ軍の縄張り内の星をいくつも滅ぼしているため、フリーザ軍のスラッグ一味に対する警戒度は格段に増していた。そして、惑星クルーザーは宇宙を自在に移動できるが通常の宇宙船とは比べ物にならないほど巨大なので、目立つ。

 

 スラッグ一味がこれまでフリーザ軍に捕捉されなかったのは、フリーザ軍の縄張りへの出入りを短期間で繰り返すなどして、上手く立ち回って来たからだ。

 しかし縄張り内に長期間留まっていては、そうもいかなくなる。スラッグはフリーザ軍を恐れてはいないが、本格的に事を構えるのは面倒な相手だと認識しているため、これまでは避けるよう命令していた。

 また、ロベルとその主だというドミグラを始末するのを優先しているため、今もその命令は撤回していない。

 

 そして、惑星クルーザーの欠点はギョーシュ一人でどうにか出来るものではない。

 

「さて……どうするか」

 ギョーシュを粛清したところで問題は解決しない。それはスラッグも分かっているが、彼を粛清した事に微塵の後悔もなかった。……戦闘要員ではないギョーシュの代わりはいくらでも新しく生み出せるからだ。

 ……地球へ逃走したと見せかけて実は近くに姿を消して潜伏しているロベルは、「少し目を離した隙に……」とため息を吐く事になるが。

 

「ふんっ、面倒だ。ドラゴンボールを使うぞ」

 そして、スラッグが考え付いた解決策はスラッグ星のドラゴンボールで地球の近くに惑星クルーザーごと移動するというものだった。

 

 そして願いを一つ使って惑星クルーザーを地球の近く、アタックボールで一日かかる程度の距離に移動する。

「ほう。地球とは俺が想像していたよりも若く、そして美しい星だな」

 初めて見る地球の姿に、スラッグは大きく感心した。特に、スラッグ星のドラゴンボールによって太陽を克服していた彼にとって、太陽に照らされた地球は青く輝く宝石のように見えた。

 

「ロベル達を始末するついでに、神精樹の苗床にするつもりだったが……気が変わった。あの地球を新しい惑星クルーザーに改造する!

 神精樹の苗床にするのは、地球の隣にある星でいいだろう」

 

 そしてスラッグは地球を新たな本拠地に、代わりにテラフォーミングが進んでいる火星を神精樹の苗床にする事に決めた。

 長年本拠地として使ってきたスラッグ星を捨てるという決定に彼の配下達は衝撃を覚えたが、「確かにあの星の方がいいな」と思い直す者が殆どだった。

 

 太陽が弱点だった時は快適だったスラッグ星も、克服した今ではそうではなかった。若く美しいだけではなく、生命に溢れた地球こそ宇宙の支配者であるスラッグの、その配下である自分達の本拠地に相応しいと考えたのだ。

 

『おい、二つ目の願いはまだか?』

 その時、スラッグ星を瞬間移動させたスラッグのドラゴンボールの神龍が口を挟んできた。二つ願いを叶えられる彼は、スラッグ達の関心が初めて見た地球の美しさに集まっていたため存在を忘れられていたのだ。

 

「ん? おお、そうだったな。さて……」

 何を願うかなと、スラッグは腕を組んで悩んだ。もっとも欲しかった若さも、永遠の命も手に入れた。長年煩わされた日光も克服した。他に欲しい物はすぐには思いつかない。

 

 もちろん、「ロベルとその主人を目の前に連れてこい」とか、「ロベルが知っている他のドラゴンボールを消せ」だとか、「フリーザや他の邪魔ものを殺せ」等の願いはドラゴンボールで叶えるつもりはなかった。

 何故なら、それらはスラッグ自身が己の力で果たさなければならないからだ。

 

 ドラゴンボールは便利だが、それに全て任せてしまったら、スラッグは「強大な力を持つ支配者」ではなく「強大なドラゴンボールを持つ支配者」になってしまう。スラッグが実際にどれくらい強いのかは、この場合問題ではない。重要なのはイメージだからだ。

 

 ドラゴンボールに頼っていては、「ドラゴンボールさえ盗み出してしまえば、スラッグなど恐れるに足らず」と考える者達が必ず出て来る。それは彼の支配の障害になる。

 それになにより……自分の手で殺せるのなら殺したい。若さを取り戻した自身の力を振るう相手として、スラッグはロベルと彼女の主、そしてフリーザは丁度良い相手だと思っていた。

 

 ……もっとも、もしスラッグがそう思わなかったとしても、彼の身近に潜伏しているロベルによって魔法で思考を誘導され、実行する事は出来なかっただろう。

 

 

「そう言えば、フリーザは宇宙空間でも活動できるそうだな。よし、俺と手下共を宇宙空間でも活動できるようにしろ」

 結果、ふと思いついた願いを口にした。

 

『容易い願いだ』

 そして神龍の目が光り、スラッグ達は宇宙空間でも活動できるようになったのだった。

 願いを叶え終えた神龍がドラゴンボールに戻り、飛び散る前に部下達が回収する。それを見届けてから、スラッグは自身の玉座に戻った。

 

「スラッグ様、地球から宇宙船で二十日くらいの場所にフリーザ軍の基地があります。おそらく、我々の事を察知したかと」

「放っておけ。奴らが何かしにこちらに来る頃には、全ては終わっている。……いや、地球を新たな惑星クルーザーに改造し、隣の星で神精樹を育てた次はそのフリーザ軍の基地がある星を襲うとしよう。目障りなフリーザを始末する手始めだ」

 ドラゴンボールと神精樹を手に入れ力を増した影響か、スラッグは以前の彼よりも増長していた。

 

「地球を惑星クルーザーに改造するのに、どれくらいかかる?」

「は、はい。十日……いえっ、三日っ! 三日あれば十分です、はい!」

 問われたカクージャは、答える途中でスラッグの目つきが不機嫌そうになったのを見て、慌てて期限を短縮した。その甲斐あって、スラッグは彼を処刑することなく満足そうな頷きを返した。

 

「し、死ぬ気でやります」

 ほっと安堵したカクージャだが、三日で地球を惑星クルーザーに改造しなければならない重責がどっと乗りかかり肩を落とした。

 

 同僚のギョーシュはついさっき死んでしまったので、作業の指揮は彼一人でやらなければならない。一般兵士を動員できるとはいえ、きつい仕事だ。しかも、失敗すればカクージャの後を追う事になるのだから、言葉通り死ぬ気でやるしかない。

 

 いっそドラゴンボールに願えば改造作業は一瞬で終わるのではないかとも思うが、それを口にしたら自分がどうなるのかカクージャはよく理解していた。「なら、貴様は用済みだ」と言われてやはりギョーシュの後を追う事になるのだ。

 悲痛な覚悟を決めるカクージャだったが、スラッグは彼から視線を外すと、控えているドロダボ達に命じた。

 

「神精樹の種を植えろ。ロベルは油断ならん奴だ、始末する前に万全を期す」

「はっ! ではさっそく宇宙船で向かうダボ!」

「待て、どこへ行くつもりだ」

 火星に向かおうとするドロダボ達を呼び止めたスラッグは、自身の足元を指さして言った。

 

「神精樹を植える星なら、丁度用済みになった星がここにあるではないか」

 

 

 

 

 

 

 儂がスラッグ一味の出現を聞いた十分後、天下一武道会二回戦第二試合、シルバー大佐対ターレスの試合は何事もなく始まった。

 

「ドクター、皆を避難させなくていいのか?」

「構わんじゃろう。スラッグ星が現れたのは地球から一日ほど離れた宙域じゃし、今のところ静止している。国王様やレッド将軍に報せれば十分じゃ」

 不安そうにしている8号に、儂はそう答えた。

 

 原作劇場版と違い、スラッグ星は地球に迫ってきてはいない。スラッグの背後にいるだろう歴史改変者が何を考えているのかは分からないが、原作と同じ展開にはならないだろう。

 これから地球に向かってくるにしても、約一日の時間がある。人々がパニックに陥る危険を冒してまで急いで避難させるより、段階的に行う準備をした方がいいだろう。

 

「それに、皆の弛まぬ努力のお陰で戦力的にも余裕がある。とりあえずスラッグ一味に対しては警戒を厳にしておけば、今は十分じゃ。

 ……むしろ、フリーザ軍に対してどう対応するか考えねばならん」

 

 スラッグ一味が普通に近づいて来ただけなら、惑星フリーザNo.79の基地が察知する前に瞬間移動で攻め込んで星ごとスラッグ一味を始末し、後は何もなかったふりをするという手が使えた。

 ギニュー特戦隊も痕跡を見失っていた以上、スラッグ一味が宇宙の藻屑となって消えても儂等が怪しまれる事はなかっただろう。

 

 しかし、地球や火星から一日ほどの距離に現れたと言う事は、フリーザ軍の警戒網の範囲内に入っているはずだ。とりあえず、今はレッド将軍が対応してくれている。

 現段階では「突然謎の惑星が出現したので、対応を急いでいる」という曖昧な報告をするに留めているようだ。

 

「幸いなことに、ギニュー特戦隊やフリーザがいるのは地球から離れた場所です。最新の宇宙船を使っても、彼等が地球やスラッグ星に着くのは十日以上先の事です。

 ただし、トワが何もしなければですが」

 そう語る4号に、儂は乾いた笑い声で答えた。

 

「トワがフリーザを使って首を突っ込んできた場合は、儂等では止められんからな」

「その時は俺達に任せてもらおうか」

 バーダックが楽しそうにそう言った。天下一武道会の試合を見て血が疼いている時に、タイムパトローラーとしての出番が来そうなので楽しみで仕方ないのだろう。

 

「とはいえ、こっちも今のところは様子見のようだがな。おっと、そろそろ始まるぜ」

 バーダックに言われて視線を舞台に戻すと、両選手は既に入場しており、アナウンサーが「試合開始です!」と叫ぶところだった。

 

「できれば、孫悟空とやりたかったんだがな!」

「昔やられた仕返しか? 意外と根に持つタイプだな」

 赤いオーラに包まれたターレスに殴りかかったシルバー大佐は、レッドリボン旅団が軍だった頃に孫悟空に敗れた事を忘れてはいなかったようだ。

 

「フッ、俺が負けた事には納得しているが、その後妙な仮面を被らされたからな! 一度、組手や模擬戦とは違う舞台でやり直したいと思っていたのさ!」

 元ボクサーらしいフットワークでステップを踏みながら、パンチを連続で放つシルバー大佐。ターレスが間合いを詰めればジャブやエルボーが、離れようとすれば鋭い踏み込みと共にストレートの追撃が彼を襲う。

 

「ボクシングだったか? 蹴りや気功波を使わず戦うなんて、今時流行らねぇぜ!」

 シルバー大佐の攻撃に対して両腕を使って防御し、時には回避しながら憎まれ口を叩く。だが、シルバー大佐は挑発に乗らず攻撃を続ける。

 

「スタイルは流行りで決めるもんじゃないからな。だが――!」

 シルバー大佐は人造人間化によって生えた尻尾を、ターレスの足首に巻き付かせて動きを止める。

「どどん波!」

 そしてすかさずどどん波を至近距離から放った。

 

「チィ! スタイルは流行りじゃ決めないんじゃないのかよ!?」

 とっさに体を捻って直撃は回避したターレスだったが、どどん波が掠った肩がヒリヒリと痛み戦意がますます滾り、お返しに気弾を連射する。

 

「まったく取り入れないと言った覚えはない! 柔軟さが生き残るコツさっ!」

 気弾を全て両拳で撃ち落とすシルバー大佐。二人の戦いはほぼ互角だった。戦闘力に換算して594万の力を持つシルバー大佐に対して、ターレスは十五倍界王拳で39万5千の戦闘力を592万5千にまで高めて戦っていた。

 

「コツね。確かに、良い手応えだぜ。ボクシングってのも悪くねぇかもな。だが、お前相手に殴り合い続けちゃ先に俺がバテちまう」

「スーパーサイヤ人か? そうはさせるか!」

 一層激しい攻勢に出るシルバー大佐だが、拳の雨に耐えながらターレスが叫んだ。

 

「20倍だ!」

 ターレスの戦闘力が790万にまで上昇し、吹き上がった赤いオーラに押されるようにシルバー大佐の拳の速さが鈍る。

 

 だが、それはターレスの戦闘力が一気に上昇した事で感じる錯覚だ。シルバー大佐のスピードが鈍ったのではない。ターレスのスピードが爆発的に高まったのだ。

「がっ!?」

 カウンターの右ストレートを頬に受けたシルバー大佐が、堪らず後ろに下がる。

 

「キルドライバーっ!」

 さらに円盤状に広がる気功波を放って間合いを取るターレス。その目論見通り、シルバー大佐は回避が間に合わずキルドライバーに接触し爆発に巻き込まれた。

 

 だが、シルバー大佐は爆発によって生じた煙からすぐに飛び出してきた。

「小賢しいぜ!」

 しかし、ターレスはシルバー大佐を軽く蹴り飛ばしたが、その途端彼は霞のように消えてしまった。四身の拳で作り出した分身を使った囮だ。

 

(見抜かれたか! だが……!)

「かめはめ波ーっ!」

 煙の中から気を探って狙いをつけたシルバー大佐のかめはめ波が、猛烈な勢いでターレスに迫る。

 

 それに対してターレスはニヤリと笑うと、気を収束させた両手を交差させた。

「バスターウェイブ!」

 ターレスが放った気功波とシルバー大佐のかめはめ波は正面からぶつかり合うが、拮抗したのは一瞬だった。ターレスのバスターウェイブが、かめはめ波を押しきりシルバー大佐を飲み込む。

 

「ま、まだっ……!」

 気功波の勢いと爆発を耐えきったシルバー大佐は、闘志を漲らせてファイティングポーズをとる。

「いいや、終わりだ!」

 だが、そこにターレスが20倍界王拳を維持したまま突っ込んだ。回復する間は与えないと、一気に畳みかけて場外まで弾き飛ばす。

 

『二回戦第二試合、シルバー選手の場外負け! ターレス選手の勝利です! 準決勝第一試合はセリパ選手対ターレス選手に決定しました!』

 

「聞いての通りだ。スーパーサイヤ人は、準決勝に温存させてもらったぜ」

 

 試合を観戦した儂は、ターレスが儂の開発した新必殺技バスターウェイブを使いこなしているのを確認して、満足げに頷いた。

 あの技はゲーム『ドラゴンボールファイターズ』で人造人間21号が使っていた技を参考にそのまま再現したものだ。

 

 フォトンウェイブよりも発動までにかかる時間が長く、生じる隙も大きいし、消費するエネルギーの量等も多い。しかし、それらの欠点を補う威力と貫通力がある。かめはめ波やギャリック砲と正面から打ち合っても負けはしない。

 

「ボクシングか。妙な戦い方だが、悪くはねぇな」

「バーダック、感想はともかく時の界王神様からの連絡は?」

「ああ、タイムパトロールとしては、スラッグには直接手を出せないってよ。小難しい理由を言ってたが……」

 ギネに促されたバーダックが、時の界王神様からの連絡を教えてくれた。

 

「スラッグ一味自身はこの歴史の住人で、キリで強化されている訳でもないからタイムパトロールが干渉する訳にはいかない、と言うところか?」

「ああ、そんなような事を言ってたぜ」

「なるほど。スラッグはキリで強化されていないのか」

 

 だとしたら、どれくらい神精樹の実で強くなっているかにもよるが儂等で倒せるかもしれん。

「そう言えば、さっきからあんたの分身とあいつらは何をやってんだ?」

 ボックス席の後ろの方でブリーフやピラフ大王、そして四身の拳で出した儂の分身三体が、8号と作業している事に気が付いたのか、バーダックが尋ねてきた。

 

「ああ、先ほどの試合中からピラフ大王が思いついたのだが、8号と協力して、スラッグ星にサイバー攻撃を仕掛けている」

 地球の近くで止まっているのだから、仕掛ける時間はいくらでもあるからな。

 

「もし上手く奴らの惑星クルーザーのシステムを乗っ取る事が出来たら、そのまま太陽に突っ込ませるのもいいかもしれんな。ああ、ベジータ王子は戦いたがるだろうから、秘密にしてくれ」

「……あんたら、とぼけた顔で恐ろしい事を考えるな」

 

「いやぁ、それほどでもないよ。でも、歴史改変者とやらが背後にいるなら、太陽に突っ込ませるのは難しい気がするけど」

「ブリーフ、照れている暇があるなら手を動かせ! この儂の火星の未来がかかっているのだぞ! おい、ブルマっ! 貴様も手伝わんか!」

 

「ええっ、あたしも~? もうすぐ姉さんの試合が始まるのに~」

「当たり前だ! シュウ、マイっ、レズンとラカセイを呼んで来いっ、奴等にも手伝わせるのだ!」

「「はいっ! ただいま!」」

 スラッグ一味の目的が何だったとしても、地球の近くにある火星が無傷で済むとは思えない。そのため、儂等よりピラフ大王の方が危機感を募らせているようだ。

 

 

 

 二回戦第三試合、タイツ対トーマの試合では、開始すると同時にタイツは即座に20倍界王拳を発動させた。

「出し惜しみなしか! いいねっ!」

 トーマは赤いオーラを激しく放出するタイツに殴りかかるが、彼女は瞬間移動で回避すると同時に背後に回り込み蹴りかかる。

 

 しかし、トーマはそれを読んでいたかのように屈んで回避する。そして立ち上がりながらアッパーを放つが、タイツは再び瞬間移動で回避した。

 

「よく避けられるな。もしかして、宰相の爺さんやバーダックみたいに未来予知の超能力に目覚めでもしたのか?」

「そんな訳ないじゃない。あんたこそなんであたしの攻撃を避けられるの?」

「経験の差って奴さ!」

 

 20倍界王拳を発動させたタイツの戦闘力は670万で、2057万のトーマとは大きな差がある。しかし、どんなに差があっても瞬間移動に速さでは追い付けない。

 そこでトーマはタイツが消えた瞬間、死角から攻撃されると先読みして反射的に動いていたのだ。高速で動き気功波を放ち、超能力等様々な特殊な力を持つ宇宙人達と戦ってきたベテラン戦士だからこそ可能な戦術だった。

 

 兵器を使用する軍人としての戦闘経験は豊富でも、超人的な力を持つ肉体と気を武器に戦う経験ではトーマ達に及ばなかったバイオレット大佐にはとても真似できない。

 

 試合はそのまま暫く互いにチャンスを待ちながら攻防を繰り返す展開が続いたが、勝利の女神が微笑んだのはトーマに対してだった。

「当たった! このまま勝たせてもらうぜ!」

 タイツに彼が放った裏拳が当たった。手応えは軽かったが、そのダメージでタイツの集中力が乱れ、再び瞬間移動するのが遅れてしまった。

 

 その隙をトーマは逃さず、威力よりも当てる事を重視して拳や蹴りによる攻撃を繰り出した。

「くっ! このっ、馬鹿力!」

 スピード重視の軽い攻撃だったが、素の力の差が大きいためにタイツには防御の上からでも大きなダメージが蓄積される。

 

 乱れる精神を鎮め、瞬間移動で離脱して態勢を立て直そうと試みるが――。

「どどん波!」

 そうはさせないとトーマが放ったどどん波によってタイツは場外のシールドまで吹き飛ばされ、トーマの準決勝進出が決定したのだった。

 

 

 

「ほーっほっほっほ、ベジータさん、このボクが相手をしてあげましょう……なんちゃって」

「チッ、ふざけた女だ。ゲロの野郎、改造した時に頭のネジを締め忘れたんじゃないだろうな?」

 似ていないフリーザではなく、チルドのモノマネをするマロンにベジータ王子は顔を顰めて舌打ちをした。それにしても風評被害が酷いな。

 

『えー、では午前中最後の二回戦第四試合、マロン選手対ベジータ選手の試合を開始します。よろしいですね? ……試合、開始!』

 

 緊張感の無い二人の様子に困惑した様子のアナウンサーが、試合開始の合図をする。その途端、スイッチが切り替わったように二人の気配が変わった。

「やーっ!」

 マロンが体ごと回転して尻尾を横薙ぎに振るい、ベジータ王子はバックステップで回避しながら指からマシンガンを連射するように気弾を放つ。

 

「そんな小技、効かないよ~だ! 繰気弾!」

 マロンは右手でフォトンシールドを張って小気弾の連射を防ぎながら、左手で操気弾を放ってベジータ王子を狙う。

 

「チッ! 小技ばかり出しやがって。さっさと本気を出しやがれ!」

 繰気弾が弧を描いて迫ってくるのに気が付いたベジータ王子が、気弾の狙いをマロンから繰気弾に変更する。

「えー、王子様も全然本気じゃないじゃん。あたしにだけ本気になれなんてズルくない?」

 繰気弾を打ち落とされたが、マロンは気に留めず今度はフォトンシールドをフリスビーのように投擲、そして自らも駆け出す。

 

「くっ、はああ!」

 戦闘力に換算して442万のマロンに肉弾戦を挑まれては堪らないと、ベジータ王子はほぼ我流で習得したスピリットブーストを発動し、戦闘力を146万から292万に引き上げた。

 

「はっ!」

 そしてフォトンシールドを手で弾き飛ばし、マロンの拳や鞭のような尻尾の一撃を回避する。

「わぁ、王子ちゃんもやるぅ。桃白白ちゃんみたい!」

「サイヤ人は戦闘民族だ! 数年前に人造人間になった貴様が、ガキの頃から戦闘を繰り返してきた俺に技で追いつける訳があるまい!」

 

「そっかー。じゃあ、パワーで対抗しようかな。ふんっ!」

 ベジータ王子への攻撃の手を止めて息を大きく吸うと、マロンの肉体が一回り以上大きくなる。首や四肢が太くなり、肩が盛り上がり腹筋が割れ、観客席から驚愕の声が上がった。

 しかし、大きくなったのは筋肉だけではない。マロンの力も倍の884万に膨れ上がっている。

 

「少し荒っぽくいくわよ、たーっ!」

 丸太のように逞しくなった脚の回し蹴りを受けたベジータ王子は、防御したにもかかわらずその場に留まれずボールのように蹴り飛ばされる。

 

「デスレイザー!」

 さらに空中で身動きが取れないだろうベジータ王子に向かって、ダメ押しの気功波を放つマロン。これで勝負が決まるかと思われたが、ベジータ王子は気功波を放ってその反動で無理やり自身の軌道を変更し、デスレイザーを回避する。

 

「ふざけるなよ! このベジータ様に勝てると思うなーっ!」

 ベジータ王子はそう怒鳴りながら、空中で体を回転させて勢いを逸らし姿勢を立て直すと、今度は彼の方からマロンとの間合いを詰めようとする。

 

 その白目を剥いた様子は激高して我を失ったか、自暴自棄になったように見える。

「えっ!? 何? 急に強くなってない!?」

 だが、ベジータ王子の気は一瞬でマロンを大きく超えた。その上昇率は大猿化の倍以上だ。

 

「ダダダダダダッ! ギャリック砲!」

 マロンの目にも映らない程高速で間合いを詰めたベジータ王子は、拳のラッシュを彼女に叩き込み、至近距離からギャリック砲を放って彼女を吹き飛ばした。

 

「んきゃぁ~っ!?」

 急激なパワーアップを遂げたベジータ王子に対応できず、マロンは踏みとどまる事が出来ずそのまま場外に吹き飛ばされてしまった。

 

「……はぁ、はぁ。チッ、トーマとあたるまで不完全スーパーサイヤ人は温存しておきたかったんだがな」

 なんと、ベジータ王子は感情を高める事で不完全スーパーサイヤ人に、ある程度自由に変身できるようになっていた。

 

 ……いや、まだ不完全なスーパーサイヤ人にしかなれていないというべきかもしれないが、それでも変身時の戦闘力は素の二十五倍だ。

 不完全スーパーサイヤ人化を上手く使えば、ベジータ王子が優勝する事は不可能ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 その頃、惑星スラッグでは何者かのサイバー攻撃を受けてカクージャが内心で悲鳴を上げていた。

(だ、誰だ!? 我々のシステムに侵入しようとするなんて!? フリーザ軍か!? いや、そんな事はどうでもいいっ、なんとか防がなくては……私がスラッグ様に殺されてしまう!)

 

「お、お前達! 何をぼうっとしている! さっさと手伝えっ、スラッグ様に殺されたいのか!?」

「は、はいっ!」

「ですが、何処から手をつければいいのか分かりません!?」

 近くにいた兵士を怒鳴りつけて手伝わせるが、彼等はただの下っ端。数頼みの戦闘から惑星の改造作業まで、雑用なら何でもするが、逆に言うと雑用しかできない者達だ。

 

 宇宙船の機器を使って通常の操作をする事は出来る。しかし、サイバー攻撃への対応に必要な高度な技術と専門知識は持ち合わせていなかった。

 スラッグ一味では人材が育たない。「戦士が必要なら戦士を、技術者が必要なら技術者を、新たに生めばいい」と言う、人材を育てる気が全くない方針を取っている事、そして失態どころか失言だけで幹部クラスの部下でも簡単に粛清してしまうのが原因だった。

 

 ……少なくともカクージャは自分の明日も危ういのに、手間をかけて人材を育てようなんて気にはならない。他の手下達も、中途半端な知識と技術を身に着けた事が原因で失態を犯しては堪らないので、新しい事にチャレンジしない。

 

(せ、せめてギョーシュが生きていれば! スラッグ様、早く新しい技術者を増やしてさい!)

 内心でそう叫びながら、カクージャは必死に指を動かした。しかし、彼の必死の抵抗をあざ笑うかのように侵入者はシステムを侵していく。

 

「退きなさい、私がやります」

 その時、カクージャの隣の席に座っていた兵士を退かせて何者かが作業に加わった。

「お前は!?」

 その何者かはある意味カクージャにとって見慣れた姿をしていた。自分や、今は亡きギョーシュの色違いだったからだ。

 

「スラッグ様に新しく生み出された、ロドージャだ。そんな事より指を動かせ、エレガントに侵入者を撃退するぞ」

「おおっ……! 分かった!」

 新たな同僚の姿に光明を見たカクージャの士気は上がり、それまで以上の速さで指を動かしシステムの防衛に取り組んだ。

 

(まさかサイバー攻撃を仕掛けて来るとは思いませんでした。このスラッグ星や他の手下が死んでも、ドミグラ様の策はスラッグさえ生きていれば最低限達成できますが、悪足掻きはさせてもらいましょう。

 

 ミスター・スラッグがギョーシュを殺さなければ、まだ何とか出来たのですが)

 一方ロドージャ……技術者魔族に魔法で変装したロベルは、やはり魔法を駆使してブリーフ博士やピラフ大王のサイバー攻撃に対抗するため指を動かした。

 




・バスターウェイブ

 『ドラゴンボールファイターズ』で21号が使う必殺技。フォトンウェイブの強化版のような技だと思われる。
 ゲロはそう考えて編み出し。完成した後4号やターレス達に教えている。



・カクージャ

 スラッグ一味の技術者。ギョーシュとほぼ同じ姿をしているが、かけている眼鏡(目?)の色が違う。
 原作劇場版では、地球を惑星クルーザーに改造するのに十日かかると答えたため、スラッグに粛清されてしまった悲劇の技術者。仕える上司が悪かったと言えばそれまでだが、彼の場合上司=生みの親でもあるので、就職先を選ぶ機会もなかっただろうと考えると、生まれつき不運だったとしか言いようがない。

 しかし、意外な事に戦闘力は2千ぐらいではないかと推測できる。これは、同僚のギョーシュの戦闘力が公式(カードダス)で2千だったため。
 なので、一般の兵士(戦闘力100)よりはだいぶ強い。

 また、この作品では神精樹の実を睡眠時間を削る長時間労働に耐えるために食べているので、戦闘力は4千まで上昇していたが……スラッグの処刑を逃れる事は出来なかった。

 名前の由来は学者だと思われます。



・ギョーシュ

 スラッグ一味の技術者。原作ではカクージャが殺された後、三日で地球を改造できると言ってスラッグに処刑されずに生き残った。しかし、改造作業中にスラッグと悟空の戦闘のとばっちりを受けて死亡してしまう。
 上司と親が悪かった……。

 戦闘力は公式で2千。この作品ではスラッグ一味が神精樹の実を手に入れているため、カクージャと同じ理由で戦闘力が4千まで上昇している。
 名前の由来は助手、業種かもしれません。



・ロドージャ

 ロベルが技術者魔族に変装する際名乗った偽名。由来は労働者から。




 
 PY様、変わり者様、ぱっせる様、excite様、佐藤東沙様、h995様、gsころりん様、ヴァイト様、リースティア様、ダイ⑨様、都庵様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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