ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
スラッグ一味の痕跡が途絶えたというギニュー特戦隊の報告を聞いてから数日と経たず、スラッグ一味の惑星クルーザーが地球の近くに出現したと聞いたフリーザは、思わず「なんですって!?」と聞き返した。
いくらスラッグ一味が神出鬼没に宇宙を移動するため捕捉しにくいとはいえ、監視可能な宙域に惑星が、それも宇宙船で一日ほどの距離まで接近するまで気が付かないとは、あり得ない事だからだ。
惑星フリーザNo.79の基地やベジータに仕えている参謀(と、フリーザは報告を受けている)のレッドと言う男からの報告に目を通してから、フリーザは地球へ通信を入れ状況を確認した。
「つまり、スラッグ一味は何らかの方法でテレポーテーションを可能にしたと?」
『はっ。ゲロはそう推測しています』
ベジータの答えを聞いたフリーザは、「なるほど、オペレーターの怠慢ではなかったわけですか」と内心で呟いた。……この通信を惑星フリーザNo.79のオペレーター達が聞いていたら、安堵のあまり失神したかもしれない。
「しかし、それにしては妙ですね。何故テレポートした後、スラッグ一味は沈黙しているのです?」
『テレポートは奴等にとっても不完全な技術であり、使用した事で何らかのトラブルが発生しているのか、ゲロ達のサイバー攻撃が功を奏しているのかと』
「サイバー……なんですって?」
聞きなれない言葉を耳にして、思わず聞き返すフリーザ。そう、フリーザ軍ではサイバー攻撃……いわゆるハッキングやクラッキングを敵対勢力や侵略対象に仕掛ける事は今までほぼなかったのだ。
フリーザ軍も含めてこの宇宙の科学文明はかなり高度な水準に達している。しかし、現在宇宙で大きな勢力を持つフリーザ軍やクウラ軍の侵略手段は、強力な兵士を送り込んで生身で戦闘を仕掛けるというもの。
さらに、侵略対象とする星はフリーザ軍と比べて科学技術が大きく劣っている事が殆どなので、高度な電子戦に発展する余地がなかったのだ。
「……なるほど。面白い事をしますね」
控えていたキコノから短い説明を受けたフリーザは、そう評すると話題を戻した。
「それで、これからどうするつもりですか? そのサイバー攻撃で私が地球に到着するまでの時間を稼げるのなら、それで構いませんが」
スラッグが地球を再び狙うかもしれないが、そう思わせておいて他の惑星フリーザ……フリーザ軍にとって重要な惑星を狙う作戦かもしれない。
そう考えていたフリーザは、地球を意識しつつも他の惑星フリーザにも駆けつけられるよう、調整していた。その結果、フリーザの高性能な宇宙船でも、地球に向かうには全速力でも一週間かかる宙域にいる。
スラッグ一味がいくら神出鬼没でも、自軍の監視システムが有効な宙域に近づいてくれば捕捉できる。それから向かえば十分間に合う。
その目論見の裏をかかれてしまった形だ。……敵が自分達でも不可能なテレポーテーションを、惑星規模で行う事が出来るなんて想定するのは無理があるだろうけれど。
『それが……クラッシャー軍団のアボとカドから作戦を提案されました』
「ほう、あの二人がですか?」
『はい、ご説明します、フリーザ様!』
『実は、我々は地球滞在中に新しい技を開発しまして――』
ベジータに代わって話し出したアボとカドが提案した作戦は、フリーザにとって満足いくものだった。
サイバー攻撃でスラッグ一味の防衛網を妨害し、その間にアボとカドを中心にした精鋭を小型宇宙船でスラッグ星に送り込む。
そして、攻撃でスラッグ一味の宇宙船と、惑星クルーザーを航行不能にする。あわよくば、アボとカドがアカに合体し、スラッグを倒す。
アボとカドが合体する事で戦闘力180万(とベジータ達は報告した)の戦士になる事が出来るとは驚いた。後々増長して自分に逆らう事がないよう対処する必要があるが、スラッグを始末するには丁度いい。
どの道、アカでスラッグを倒せなければフリーザも最終形態になる必要があるだろうから、そこは諦めるとしよう。
「なるほど、いい作戦ではありませんか。期待していますよ、アボさん、カドさん」
『『ははーっ!』』
「ああ、でも無理はしないでくださいね。あなた達は我がフリーザ軍の貴重な戦力なんですから、ベジータさんも、そこに居ないゲロさんも、いざとなったら地球から脱出しなさい」
その言葉は、半分以上建前だった。確かに、ベジータチームやクラッシャー軍団はフリーザ軍の中でもギニュー特戦隊に次ぐ戦力だ。一度に全員失うのは痛い……痛いが、フリーザ軍にとって致命的と言う程でもない。
また、長命薬についても同じことが言える。フリーザ自身は既に服用している以上、新たな長命薬が手に入らなくなっても、本業である星の地上げビジネスで十分稼ぐことが出来る。
もちろん、それらを犠牲にしてスラッグ一味を始末できる事が前提だが。
それに、そうなったらフリーザ軍のメンツに傷がつき、失った人材を補う為にギニュー特戦隊やドドリアチームの負担が激増する。「フリーザ軍も落ち目だ」と舐めた事を考えて動き出す連中をフリーザが直接始末して回る羽目になるかもしれず、それは不愉快極まりないからできれば避けたい事態ではある。
(ゲロの技術には興味がありますからね)
フリーザが本気で失うのは惜しいと考えているのは、なんとゲロだった。
長命薬の受け渡しと視察を兼ねて地球へ赴いたザーボンが提出した報告書、その中にゲロが地球の参謀のレッドに行った身長を伸ばす施術について書かれていた。
ザーボンが報告書にそれを書いたのは、それを自分が嫌っている変身後の醜い姿を変える事が出来るのではないかと考えたからだろう。しかし、報告書を読んだフリーザはこう考えた。
(ゲロなら、私の身長を伸ばせるのではないか?)
フリーザは小柄である。父であるコルド大王はもちろん、兄のクウラと比べても。それに対して彼は自分で自覚している以上のコンプレックスを抱いていた。
ただ、今まではそれが表に出る事は無かった。普段過ごしている第一形態は、仮初の姿。もっとも弱い形態に過ぎないからだ。
しかし、近年ベジータ達が強くなった事をきっかけに、第二形態や第三形態を部下達に見せてしまった。このまま部下達が強くなれば、反発を事前に防ぐために最終形態も見せる事になるかもしれない。
(もっとも、最終形態の小柄な外見から「弱くなった」なんて思う無能や、あまつさえチビなんて口に出すお馬鹿さんは私の部下にはいないでしょうけどね。
しかし、それでも背を伸ばせるなら興味はあります)
『慈悲深いお言葉に感謝いたします、フリーザ様!』
『では、我々は作戦の準備がありますので失礼してもよろしいでしょうか?』
そうしたフリーザの内心を知らずに頭を下げるアボとカド、そしてベジータに「ええ、頑張ってくださいね」と言葉をかけ、フリーザは通信を切った。
「さて……既に地球へ向かっていますね? ザーボンさん、スケジュールの調整は任せましたよ。細かい事は、本軍のベリブルさんと相談なさい」
「畏まりました」
「あ、フリーザ様、我々もこのまま地球に向かうのでしょうか?」
「あなた達を降ろしている間が惜しいですからね。ちょっとした旅行だと思ってゆっくりしていきなさい。それとも嫌ですか?」
「いえ、ドクター・ゲロには前々から興味がありましたから、会うには良い機会かと」
戦闘力に乏しいキコノだったが、フリーザがいるなら何も心配する事はないと考えていた。研究活動には若干支障が出るが、自分がフリーザ軍に復帰するきっかけになったゲロと言う地球人の科学者に会えるなら、むしろ好都合だ。
(しまった。まさか奴らに直接会う事になるとは……)
不都合があるのはキコノの傍らに控えるトワだ。しかし、まさか自分だけ船から降りる訳にはいかないし、フリーザ達を操って地球行きを止めさせるわけにはいかない。
彼女の思惑では、フリーザ軍でいくつかの歴史改変を起こす予定なのだ。一回利用して終わりではなく、継続して何度も歴史改変を行うためには、ここでフリーザの意思を強引に捻じ曲げると後々支障が出る恐れがある。
今の段階では誘導に抑えておきたい。
(こうなったのもドミグラが手の込んだ策を仕込むからだ。仕方がない、なんとかボロを出さずやり過ごすしかないわね)
自分の事は棚に上げて競争相手に恨みを向け、トワは内心の憂鬱さを押し隠してキコノと今行っている研究開発についての相談を始めた。
「クックック、頑張ってくださいね、か。フリーザの野郎、笑わせてくれるぜ」
通信を切った後、ベジータ王子は堪えきれずに笑い出した。
天下一武道会の準決勝でスーパーサイヤ人に覚醒した彼は、既に最終形態のフリーザを倒せる力を手に入れていた。それを隠してフリーザに頭を下げ続けるのは気に食わなかったが、やってみるとそう不快ではなかった。
いつまでも自分を下に見て、真実を見抜けないフリーザの間抜けっぷりに笑いを堪えるのが大変で、苛立つ暇も無い。
「おいおい、嬉しいのは分かるがあまり調子に乗るなよ、ベジータ」
「そうだぞ、スーパーサイヤ人に成っても、全力を出したフリーザの方がまだ強いんだろう?」
「貴様等に言われなくても、そんな事は分かっている! だが、すぐに超えてやる。フリーザだけじゃない、他の奴等もだ!」
気持ちよく増長していると、アボとカドが水を差してきたがそれでもベジータ王子は止まらなかった。
スーパーサイヤ人に成った彼の戦闘力は、7300万。最終形態になり、全身の筋肉が膨張したフルパワー時のフリーザの1憶2千万には及ばない。それは分かっている。
だが、ベジータ王子にはフリーザも、その兄のクウラも、そしてバーダックや歴史改変者もいつか超えられるという確信があった。
目下の目標はフリーザ……ではなくトーマだが。今のままでは彼がスーパーサイヤ人に目覚めたら、また逆転されてしまう。増長していても、それを忘れるベジータ王子ではなかった。
(奴らがスーパーサイヤ人に成る前に……いや、なったとしても俺はスーパーサイヤ人のさらにその先に至ってやる!)
「だが、これでフリーザの天下はもう長くはない。貴様等もその後の身の振り方を考えておくんだな」
「へっ、言われなくても考えてらぁ!」
「お前こそボスに足を掬われないよう精々気を付けるんだな!」
背後にアボとカドの怒鳴り声を受けながら、ベジータ王子は通信室を後にした。
「それこそ言われるまでもない。この俺がスタミナ切れで負けると思っているのか」
スーパーサイヤ人に変身する事で体力を消耗する事は、今日の試合で実感していた。去年、ターレスが目覚めた後もしばらくはすぐに変身できなかったのも納得だ。
しかし、当時のターレスと今のベジータ王子では地力の桁が一つ違う。変身する事は出来ると彼は確信していた。
今は明日の決勝戦と、あるかもしれない有事に備えて休息を取り、体を休ませるのが先決だ。
そのため、ベジータ王子は通信室があるキングキャッスルから天下一武道会の会場や、今日泊まる予定のホテルがあるパパイヤ島へ向かった。
空を飛び、泊まる予定のホテルの屋上に直接降り立つ。そして自分の部屋に向かおうとした。
「あら、ベジータじゃない。フリーザ軍への連絡が終わったの?」
廊下でブルマと偶然出くわした。彼女も自分の部屋に戻るところだったのだろう。
「お爺ちゃんは手が離せなかったみたいだけど、上手く誤魔化せたんでしょうね?」
「当たり前だ。それより、俺に何か言う事があるんじゃないか?」
ベジータ王子はブルマをからかってやるつもりでそう聞き返した。
「ああ、おめでとう。凄いじゃない、土壇場でスーパーサイヤ人になるなんて驚いたわ。カッコよかったわよ」
「な、なんだと?」
そのため、ブルマが素直に自分を褒めだしたのに戸惑って固まってしまった。
「何? 照れてんの? 珍し~、あんたも褒められて照れる事ってあるのね。まあ、トーマさんは残念だったけど、初出場で三位決定戦に出られるんだから、予選敗退のあたしよりはよっぽどマシよね。
でも明日の決勝戦で油断するんじゃないわよ、頑張ってね」
そして、ベジータ王子の様子が面白かったのか、ブルマはそう笑いながら言うと彼の肩……には手が届かないので、腕に軽く触れると自分の部屋に入っていった。
「ん? おい、ベジータ、どうした? 何かあったのか?」
そしてブルマが部屋に入った後も呆然としていたベジータ王子に、通りがかったナッパが声をかけた。
「……何を考えているのか、さっぱりわからん」
声をかけられたベジータ王子はナッパの方を見もしないで、呆然とした様子でそう呟くと自分の部屋に入っていった。
「あいつ、疲れてるのか? まあ、俺もそろそろ寝るか」
ナッパは一人取り残される事になったが、深く気にすることなく自分も眠る事にした。
その頃、儂はサイバー攻撃を四身の拳で出した分身三体やブリーフに任せて休んでいた。スラッグ一味のシステムは儂等が想定していたよりも強固で、システムを完全に乗っ取る事は出来なかった。
時の界王神様に相談したところ、どうやら向こうのコンピューターの時間だけが加速しているらしいと教えてくれた。時の界王神様が使う、時を止め、もしくは加速や減速させる事が出来る時空術と同じものを何者かが……歴史改変者が使っているようだ。
そんな事をしたらコンピューターに不具合が出そうだが、その辺りは上手く調整しているか……後々不具合が出ても今を乗り越えられればそれで構わないと考えているのかもしれない。
「こうなると、儂等が粘ってもシステムを完全に乗っ取るのは無理じゃな」
「妨害工作を仕掛けるので限界だろう」
「君達も休んではどうかね?」
儂の分身達がそう提案するが、ブリーフは「いやいや、もうしばらく粘ってみるよ」と答えた。
「明日戦う君とは違って、ぼく達は観戦するだけだからね」
「こっちは地球よりも無防備な火星を守らにゃならんのだ! やっと手に入れた儂の国、手出しさせてなるものか!」
「宇宙の壊し屋とクラッシャー軍団が恐れられるのは、宇宙だけではなくサイバー空間も例外じゃないって教えてやるぜぇ!」
「俺達は地球人とは違って、一日ぐらい寝なくても問題ねぇから休みたくなったらいつでも言いな!」
途中から加わったレズンとラカセイも、笑いながら複数のキーボードを高速で操り、サイバー攻撃を繰り返している。
「頼もしいが、ほどほどにな。儂は分身だから寝る必要は無いが、君達は生身なのだから無理はしないように」
そして儂の分身達は全員四妖拳で腕を増やしてやはり複数の端末を操っている。しかし、ここまでしても時間操作の差を埋める事が出来ないとは……今後は高性能コンピューターの開発も行うべきか。
原作劇場版『極限バトル!! 三大超サイヤ人』で、原作の儂の死後も動き続けて人造人間13号達を完成させたコンピューターのようなものを開発するべきかもしれん。8号やこれから実際に開発する16号、そして地球製スカウターの支援システムとして。
ちなみに、時間の加速や減速、停止はいわゆる歴史改変には当たらない。やっている事はギニュー特戦隊のグルドの時止めや、第六宇宙の殺し屋のヒットの時飛ばしのようなものだ。
時間の操作ではあるが、歴史の操作ではない。そのため、いくらやっても時の指輪は増えないのでタイムパトロール的には問題ない行為らしい。
銀河パトロール的には重罪なのだろうが……まあ、それはどうでもいいだろう。彼らが歴史改変者をどうにか出来るとは思えんし。
翌日、天下一武道会ではまず五位決定戦が行われた。
「が、頑張りますよ!」
セリパに敗退した青髪ランチ。
「紅一点ならぬ黒一点か」
やれやれと拳を握るシルバー大佐。
「いいじゃない、女性ファンを独り占めできて」
彼にそう声をかけるタイツ。
「よ~し、賞金ゲット目指して頑張るぞ~」
そしてベジータ王子に敗退したマロンの四名が、バトルロイヤル形式で争う事になる。
『いや~、決勝戦はターレス選手対ベジータ選手になりましたが、天下一武道会では前回に続いて相変わらず女性選手が強い! 果たして五位の座に輝き、賞金とグッズ販売の権利……後者はもう形骸化している気がしますが……ともかく、栄光を手にするのは誰になるのか!
試合開始です!』
アナウンサーの掛け声と同時に、まずマロンが動いた。
「どどん波!」
両手でどどん波を放ち、ランチとタイツを狙う。ブランチへの合体や界王拳の発動を終える前に倒そうというのだろう。
「そう来ると思ってました!」
しかし、青髪ランチはどどん波を回避し、タイツは瞬間移動で逃げた。
「行くぜっ!」
しかも、シルバー大佐がまず狙ったのはマロンだった。
「ええっ、あたし狙いなの?」
「ああ、お前にパンプアップされるときついんでな、その前に倒させてもらう!」
シルバー大佐の戦闘力は594万で素の力では四人の中で最も強い。しかし、彼に次ぐ442万のマロンがパンプアップして戦闘力を倍増すると884万になり、大きな差をつけて逆転されてしまう。
「ええ~っ、もうちょっと優しくしてくれても良いんじゃない? 同じレッドリボン旅団の仲間じゃない」
「悪いがあまり接点が無かったからな! 優しくしてほしければ、ブルーにでも頼んでくれ!」
じゃれ合いのような会話を続けながらも、鋭い攻防を繰り返す二人。シルバー大佐はジャブの連打でマロンの出鼻を挫いて反撃を封じ、マロンは尻尾でシルバー大佐の足元を狙う。
「20倍界王拳! さっきのお返し!」
そこに20倍界王拳で戦闘力を33万5千から670万に跳ね上げたタイツが、どどん波でマロンを狙う。
「きゃんっ!? 危な――いいっ!?」
シルバー大佐も巻き添えになるのを恐れて下がったためマロンもどどん波から回避できたが、彼女の長い尻尾を掴む者がいた。
『へへっ、捕まえました!』
金髪ランチと不完全融合して戦闘力を754万まで高めたブランチだ。彼女は伸ばした腕でマロンの尻尾を掴み、自分の方に引っ張った。
『魔口砲!』
そして動きが取れない彼女に向かって口から気功波を放つ。マロンの悲鳴が爆音にかき消された。
「ちょっとっ! 集中狙いはひどくない!?」
しかし、煙を引き裂くようにしてパンプアップした姿で現れた。これで彼女の戦闘力は884万、舞台上の選手の強さの順がこれで大きく変化した。
『先に狙ってきたのはテメェです!』
「バトルロイヤルって言うのは、そう言うもんでしょ!」
「チッ、これで俺が最下位か」
腕の長さを元に戻したブランチとタイツがマロンに言い返しながら気弾や気功波の応酬を始め、シルバー大佐は三人の的にならないよう立ち回ろうとする。
しばらく拮抗状態が続いたが、それを最初に破ろうとしたのはマロンだった。
「もう怒った! 操気弾! やーっ!」
自ら放った操気弾を追って駆けだし、舞台の端に逃げていたシルバー大佐に向かって突進する。
「こらえ性の無い奴め、太陽拳!」
マロンの視覚を封じ、その間に逃げるために太陽拳を放ったシルバー大佐。しかし、マロンは迷わず彼に向かって走り続ける。
(こいつ、目を瞑っているのか!? どうやって俺の位置を掴んだ!?)
なんと、マロンは走り出す前から目を瞑っていた。それなのに彼女はシルバー大佐の位置を把握しており、慌ててその場から駆け出した彼を迷わず追った。
「やっ!」
左手を素早く動かすと、それに合わせて操気弾の軌道が変わり、シルバー大佐の足を一瞬止める。
「がはっ!?」
その一瞬で追いついたマロンの蹴りがシルバー大佐の脇腹にめり込む。場外に蹴り飛ばされまいと踏みとどまろうとした彼だったが、そこに戻って来た操気弾が頬にめり込む。
「ぶっ!?」
衝撃に意識が遠のくが、シルバー大佐に移植されたサイヤ人の細胞によって強化された闘争本能はそんな状態でもマロンに反撃を可能にした。
操気弾に殴られた反動を利用して体を翻し、裏拳を放つ。それはマロンの頬を打ったが、闘争本能が強化されているのは彼女も同じ。顔を攻撃されて怯むより先に、とっさに操気弾を爆発させた。
「っ!?」
頭部の近くで衝撃を受けたシルバー大佐に、ダメ押しでマロンの拳が入る。彼女の蹴りを受けて崩れた体勢を立て直す事が出来なかった彼は、ついに場外に落ちていった。
「フフンッ、勝った!」
マロンが彼女同様に気の無いシルバー大佐の位置を視覚に頼らず捉えられたのは、彼女に移植されたナメック星人の細胞によって強化された五感……特に聴力によるものだ。
気の無い人造人間でも、呼吸はしている。その音を耳で捉えて位置を把握していたため、彼女はシルバー大佐の大まかな位置が分かったのだ。
しかし、マロンはまだ勝っていなかった。
「隙ありっ!」
「えっ? きゃっ!?」
瞬間移動で突然彼女の足元に現れたタイツが、彼女の足を払ったのだ。彼女も、集中すれば誰かの気を目印にしなくても瞬間移動する事が出来るようになっていたのだ。
そして転倒した彼女に向かって手を突き付ける。
「フォトンウェイブっ!」
「くっ、イタ~イ!」
至近距離で放たれたタイツの気功波を、マロンは咄嗟に両手で受け止めようとした。かなり両手が痛み悲鳴を上げたが、そこはフリーザ一族の生命力とサイヤ人の頑丈さで耐え、持ちこたえる。
しかし、これはバトルロイヤルである。
『かめはめ波ーっ!』
「えっ? ちょっ、きゃぁぁぁ!?」
ブランチのかめはめ波を横から受けて、堪らず場外まで吹っ飛ばされるマロン。シルバー大佐には有効だった戦法だが、瞬間移動が出来るタイツには聴力に頼る戦い方は通用しなかった。
『これで残っているのはあたしとお前の二人だけです。そろそろ疲れて来たんじゃないですか?』
「まだまだ、丁度体があったまってきたところよ!」
そしてブランチ相手に強がるタイツだったが、20倍界王拳で通常以上に体力を消費している。その状態で集中力を使う瞬間移動を使っているため、精神的な疲労も小さくない。
「あたしもスピリットパワーの強制分離まで出来たらよかったんだけど……無い物ねだりしても仕方ないか!」
思考を切り替えると、タイツはブランチに向かって両手を組み腰だめに構える。
『かめはめ波? いつの間に……だけど、正面からの力比べじゃ負けないです!』
対してブランチも気を収束させた両手を腰だめに構え、タイツと同時に前に向かって突き出した。
「キルドライバーっ!」
『かめはめ波ーっ! って、おいっ!?』
なんと、タイツが放ったのはかめはめ波ではなくキルドライバー……ターレスが開発した輪状の気弾だった。
ブランチのかめはめ波は、タイツのキルドライバーの輪を潜り、そのままぶつかり合わずに彼女に向かって直進する。
「バイバイっ」
しかし、既にキルドライバーを放ち終わっているタイツはかめはめ波が着弾する前に瞬間移動で消える。
『くっ、引っかけやがったですね!』
ブランチはかめはめ波を放つのを中断し、自分のその場から逃げようとする。
「どどん波!」
しかし、その上空に現れたタイツのどどん波を受けて動き出すのが遅れ、キルドライバーの直撃を受けてしまった。
『や、やるじゃねぇですか……』
爆発によって発生した煙が薄らいだ時、ブランチは立っていた。しかし、一言タイツを褒めるとよろめいて、不完全融合が解け、二人に戻って倒れた。
分身である金髪ランチの方はアナウンサーがカウントを取っている間に消えたが、問題は無い。
『テーン! タイツ選手の勝利です! 今大会五位はタイツ選手に決定しました!』
「ふう。あいつに技を教えてもらっておいてよかったわ……イテテ、界王拳を使い過ぎたかも」
そう言ってタイツは額の汗を拭い、筋肉痛のような痛みを訴える自分の体を摩ったのだった。
人里から離れたどことも知れぬ場所で、巧妙に擬装されたハッチが開いた。
「ふぅ……こうして外に出たのは何百年ぶりか。クックック、かつては何とも感じていなかった太陽さえ愛おしく見えて来る」
中から現れたのは、ピッコロ大魔王だった。改造手術と魔神精樹の実を食らう事で強化した肉体は若々しく、その目にはギラギラとした邪悪な輝きが宿っている。
しかし、彼は不似合いな事に妙な機械がバックルのベルトを締め、黒いマントを羽織っていた。
「封印を解かれた時には、この隠れ家の中だったからな。お前達はどうだ? 外が懐かしいか?」
ピッコロ大魔王がそう問いかけたのは、彼に続いてハッチから現れたピアノ、そしてタンバリンだった。
「大魔王様、我々は大魔王様によってこの隠れ家の中で生み出されて以来、一度も外に出た事がありません。ですので、懐かしいというよりは新鮮でございます」
「ええ、これが映画やゲームでしか見た事が無かった空、そして太陽の輝き、そして風……」
周囲を見回すピアノに、翼を広げて伸びをするタンバリン。彼らの後から出て来たシンバルとドラムも同じように、初めての外を堪能する。
彼等もピッコロ大魔王と同じベルトとマントを身に着けている。
「早く町に行きたいです、大魔王様」
「俺は海や砂浜を見てみたいです」
外界に対する好奇心を隠さない魔族達。しかし、彼等はやはり魔族だった。
「早く血の……人間の血の臭いを含んだ風を浴びたい」
「へへへ、人間共の町をぶっ壊して遊ぶのが楽しみだぜ。あいつらが好きな映画の悪役みたいにな」
「シンバル、お前は謙虚過ぎるぜ。俺は映画の悪役よりも容赦なく、残酷に、人間共を苦しめて、奴らの血で海を真っ赤に染めてやるぞ!」
自然の美しさに対する感動と、邪悪さは両立するようだ。そんな我が子達の様子を、ピッコロ大魔王は頼もしいと感じた。
「さすがは儂の子供達だ。しかし、あまりはしゃぐなよ。これから我々は大博打を打つのだからな。そうだろう、コーチン?」
「その通りだ、ピッコロ大魔王よ」
最後にハッチから現れたドクター・コーチンは、魔族達の中に混じっていても違和感がないほど邪悪さを纏っていた。
「儂が開発した対スカウター装置は、戦闘力1万までなら着用者のエネルギーをスカウターに検知されないよう隠す事が可能だ。それと光学迷彩マントを使い、天下一武道会に潜入し……ぶち壊す。愚かな人間共を地獄に叩き落とすのはその後だ」
「その通りだ。時が来るまでは潜まねばならん。目の前に人間がいても息を殺し、気の制御を乱すな。手出しするのは論外だ」
「それと予備のバッテリーと、何より魔神精樹の実を忘れずに持ったな? 忘れたからと言って戻る訳にはいかんのだ、注意するのだぞ」
『ははっ!』
「よし、ではパパイヤ島に向かうぞ! コーチン、貴様は特別に儂が運んでやろう。貴様の足に合わせていては、三年後の大会にも間に合わんかもしれんからな!」
「な、何を言うピッコロ大魔王。無理を言って付いて行くのだ、儂はこの反重力装置を使って――ぬわぁ!?」
ピッコロ大魔王はコーチンを掴み上げると、光学迷彩装置を起動して空に飛び上がった。その後をピアノ達が追う。
恐ろしい大魔王の軍勢の進軍は、鳥やゲロが放ったスパイロボットも気が付かない程密やかにパパイヤ島に迫っていた。
〇フリーザのコンプレックス
ナメック星編やその前の段階では、フリーザの身長に対するコンプレックスは不老不死への欲求程強くないと推測しました。それは、変身タイプの宇宙人であるフリーザにとって本来の姿は最終形態であり、普段活動している第一形態は仮の姿であるため、その姿が他人からどう思われても関心が薄かったからだと推測しました。
コンプレックスが強かったら、レッド総帥のように世界征服や不老不死ではなく身長を伸ばす事を最初から願おうとしただろうと思ったので。
ただ、この作品のフリーザはまだドラゴンボールの存在を知らず、ゲロの長命薬を飲んだので不老不死への欲求がそれほど強くありません。
また、ベジータ達を含む部下に第三形態まで見せており、将来は最終形態も見せる必要に迫られるかもしれないと考えているため、「自分の身長の低さ」を原作より強く意識しています。
〇時空術
時の界王神や一部の歴史改変者が使う事が出来ると思われる術。時間を止める事や加速する事が可能。
〇対スカウター装置
着用者の気(戦闘力)をスカウターや気の感知技術を持つ者に感知されないようにする装置。
気を消している状態と違い、戦闘力1万までなら気を出しながら活動できる。
例えると……戦闘力9千の原作バーダックがこの装置をつけたら、エネルギー波を撃とうが他のサイヤ人と全力で殴り合いをしようが、スカウターは無反応。悟空達でもバーダックの気に気が付かない。
しかし、戦闘力1万2千の原作ベジータ王がこの装置をつけた場合は何の意味もない。スカウターが反応するし、悟空達も気を感知できる。
そのため、この装置を戦闘力1万1以上持ち主が使う場合は、気を制御して1万以下に気を抑える必要がある。
なお、製作者のコーチンは永久エネルギー炉を作る事が出来ないためバッテリー式。
ロイク様、excite様、PY様、闇谷 紅様、ダイ⑨様、佐藤東沙様、名無しの過負荷様、ぱっせる様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。