ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
五位決定戦でタイツが勝利した後、セリパ対トーマの三位決定戦が始まった頃に儂等はスラッグ一味に対するサイバー攻撃を継続しつつ、襲撃の準備を進めていた。
フリーザ軍に対する偽装としてスラッグ星を大きく囲むように人工衛星を設置して光学迷彩を施し、宇宙船を出発させた。
そして、その頃になってようやく危険な事態が進行中である事に気が付いた。
「なんと、奴ら自分の星に神精樹を植えたのか! どうりで地球の傍に現れた後動かないはずだ」
スラッグ星から巨大な樹が生え始めたのだ。あの山のように巨大な樹は、神精樹以外にない。
「ば、馬鹿な! 奴らは何を考えているんだ!?」
驚愕するピラフ大王に、レズンとラカセイはコーヒーカップを片手に持ったまま納得した様子で答えた。
「なるほど。あいつら、地球か火星を新しい惑星クルーザーに改造して乗り換えるつもりか」
「だから古い星はいらねぇって事だろう」
「そう言うものか? 自分が生まれ育った星に愛着は無いのか? スラッグはナメック星人だから違うとしても……」
「まあ、自分の星を大切にする連中なら、他人の星を侵略したりはしねぇだろうぜ」
「俺達が言うのもなんだけどな」
ピラフ大王は納得できない様子だったが、レズンとラカセイが言うように自分の星に愛着を持たない者もこの宇宙には存在する。スラッグもその一人だったと言う事だ。
「どうします、ドクター? 星ごと破壊すると光学迷彩でも誤魔化しきれませんが」
「……作戦を進めよう。これ以上搦手を使っても、スラッグ一味に歴史改変者が干渉している以上、無駄になりかねん。
では、宇宙船に先駆けてスラッグ星に乗り込むとしよう。全員簡易宇宙服のホイポイカプセルは持ったな?」
何らかのアクシデントで宇宙空間に放り出されても、気を体に纏えば儂のような地球人でも一分程なら耐えられる。その間にホイポイカプセルから簡易宇宙服を出して着れば、その後しばらくは安心だ。
「ああ、問題ない」
儂が尋ねた一人、戦士タイプのナメック星人のネイルはホイポイカプセルを確認して頷いた。
本来ナメック星で最長老様の護衛をしているネイルが、スラッグ一味襲撃作戦に参加する事になったのは、彼自身が希望したからだ。
「かつての同胞が銀河に広く災いを為す悪党となり、この地球にまで牙を剥こうとしている。なら、我々ナメック星人が討たなければ……犠牲者達に申し訳が立たない」
善人であるナメック星人達は、先祖がスラッグ星に送り出したスラッグがこの宇宙に巣食う巨悪の一人になってしまった事に胸を痛め、彼を討つ事を協力したいと申し出てくれたのだ。
最長老様の護衛には、ネイルの代わりにムデンがついているので大丈夫だろう。……今のナメック星の戦力は、フリーザやクウラ本人が来ない限り、まず撃退できるからな。
「うむ、では直接スラッグ星に降り立つので儂に触れてくれ。よし、……行くぞ!」
スラッグ星の気を探り、適度に離れた場所にいる兵士らしい気を目印に瞬間移動する。
「ん? だ、誰だ!?」
「し、侵入者? だが、スラッグ様に似ている奴が混じっているぞ!?」
初めて聞く声と吸う空気。狼狽えている兵士達の姿が見える。瞬間移動成功を確信すると同時に、儂はスパイロボットを放った。
「歴史改変者に邪魔される事は無かったようだな。では、作戦通りに。連絡はスカウター、もしくはテレパシーで」
「おうっ!」
「分かっただ!」
「なんだか戦闘員時代を思い出すね」
それぞれ分かれて別行動をとろうとする儂等に、兵士達は「やはり侵入者だ!」、「殺せ!」と叫んで殺到しようとするが、特に構わず跳ね除けていく。
「うわーっ!?」
「ぜ、ゼエウン様達を呼べ! 俺達じゃ敵わねぇ!」
兵士達の戦闘力は、およそ百。地球人のプロレスチャンピオンや優秀な警備員と同じくらいの強さだ。原作劇場版でも確かこの程度だったはずなので、どうやらスラッグ一味は下っ端兵士にまでは神精樹の実を与えていないらしい。
いや、気を探ってみると離れたところに2百や3百ぐらいの大きさの気がいくつかいる。兵士にも多少は食べさせたようだが、彼等の数は数千人程いるようだから、全員に神精樹の実を分けられなかっただけかもしれん。
それはともかく、兵士達は儂等が少し本気で動くだけで勝手に吹っ飛ばされ、壁や床に叩きつけられて戦闘不能に陥っていく。もし彼らの攻撃が当たっても、儂等には蚊に刺されたほどのダメージも与えられないので敵どころか障害物ですらない。
「ふむ? 星を覆う雲が無いし、兵士達がヘルメットを被っていないな。ここは宇宙船内だが、窓から日光が入るはずだが」
宇宙船の窓から見える地球とは異なる空には、太陽が輝いている。スラッグ一味は日光に、三十分ほど浴びると命を落とすほど弱かったはずだが……? それとも、この宇宙船の窓は特殊な材質で作られているのだろうか?
「それはともかく……スパイロボットによるとサーバールームに相当する部屋はあっちか」
儂の役目はスラッグ一味のシステムに直接侵入……もしそれが不可能ならサーバーを物理的に奪ってデータを手に入れる事だ。道中覚えた疑問の答えも、ここのデータに含まれているかもしれん。
儂はスカウターに表示された方向にある、兵士と比べるとだいぶ大きな気を頼りに瞬間移動した。
「アンギラ達は何をやっているのだ!? ここの機械を破壊されたら、仕事が出来なくなって我々はスラッグ様に殺され……ヒィィッ!?」
気の主はスラッグ一味の技術者……確かカクージャかギョーシュと言う名前の人物だったはずだ。
どうやら、彼はここでブリーフ達のサイバー攻撃からシステムを守っていたらしい。
「お初にお目にかかる。儂は君達がこれから侵略しようとしていただろう星の住人で、天才科学者のゲロと言う者だ。早速だが、ちょっとデータを頂いて良いかね?」
「ふっ、ふざけるなっ! そんな事をされたら我々は殺されてしまう! ロドージャ、こうなったらコンピューターを破壊するぞ! スラッグ様にはこいつの仕業だと報告すれば許してくださるはずだ! ……多分」
「ロドージャ、とは誰の事かね? この部屋にいるのは君だけのようだが」
「な、なにっ!?」
狼狽えた様子で技術者魔族が振り返るが、そこには空の椅子があるだけだ。儂のスパイロボットがこの部屋を見つけた時から、この部屋にいるのは彼だけだった。
「ば、馬鹿な。私は、幻を見ていたのか? だが、しかし……」
衝撃を受けた様子の技術者魔族の様子を見ながら、儂は彼にロドージャと名乗っていたのが歴史改変者だったのだと察した。
儂等のサイバー攻撃の妨害をするために変装までして技術者魔族を手伝うとは……よほどシステムを乗っ取られると都合が悪かったのだろう。今は姿を消しているから、状況が変わったか何かの都合でサイバー攻撃が成功しても構わないようだが。
「それはともかく、どうかね? スラッグから儂等に鞍替えするつもりはないかね?」
スカウターで計測したところ、魔力や神力は検知されなかった。機械に施された時空術は解けているようだから、システムの乗っ取りとデータの引き抜きはブリーフ達に任せて構わないだろう。
儂は技術者魔族の仕事を妨害するついでに、せっかくなのでスカウトに挑戦する事にした。
「な、なんだと? 馬鹿を言うな! 貴様らがスラッグ様に勝てるはずが無い!」
「儂等に鞍替えすれば、命を保証するのはもちろん一日八時間労働、七日間の内二日の休日を保証。やむを得ず残業や休日出勤を頼むときは地球の通貨で別途報酬を支払おう。むろん、年二回のボーナスと有休休暇も保証する」
「な、なに? ゆう、きゅう?」
儂の提案に敵意を消し、戸惑った様子を見せる技術者魔族。彼ら魔族のスラッグへの忠誠心は、鳥の刷り込みに近いものだと推測できる。
それはあの世との交流試合で会った元スラッグ一味の幹部から話を聞いたので、ほぼ間違いない。
なら、技術者魔族は頭が良いはずであるし、彼は見たところ生まれてからそれなりの年月を生きているように見えるから、刷り込まれた忠誠心に無条件に従うのではなく自身の身の振り方を考える頭があるかもしれない。それならこちらに引き込む望みもあるだろう。そう思ったのだが……。
「ゆう……きゅう……ボ……ナス?」
まさか、有休休暇やボーナスの意味が分からなくて困惑している訳ではないだろうな? 儂がそう考えていると、スカウターに通信が入った。これは地球のブリーフからだ。
『ゲロ、ちょっといいかい? ついさっきシステムを乗っ取ってデータをコピーし始めたんだが、それによると彼らはドラゴンボールを新たに作り出したらしい』
「ドラゴンボールを、作る? ……ああ、そう言えば作れたな。ナメック星人なら」
ドラゴンボールは、龍神ザラマとナメック星人なら作る事が出来る。ただ、スーパードラゴンボールの欠片と言う特別な材料があれば、だが。
そのため、儂はスラッグが独自にドラゴンボールを作る可能性を全く考慮していなかった。
「歴史改変者か。やれやれ、失念していたわい」
まさか歴史改変者が態々希少な材料を調達して、スラッグにドラゴンボールを作らせるとは……。
『ああ、どうやら彼らが地球の近くにテレポートできたのもドラゴンボールの力らしい。他に叶えた願いは……』
『スラッグの不老不死と、日光の克服。それに宇宙空間での活動を可能にした。こいつら、宇宙船を破壊してもいざとなったら自力で地球まで飛んでくるぞ! まあ、距離があるから下っ端は途中で力尽きるだろうが』
「叶えた願いの内容も面倒だが、やはりドラゴンボールが厄介だな。神精樹の実を繰り返し食べ、神力を増したスラッグが創造者なら、地球やナメック星のドラゴンボールより大きな願いが叶えられるはずだ」
もしスラッグのドラゴンボールに「自分を地球の支配者にしろ」と願ったら、ピラフ大王が地球のドラゴンボールに願った時とは違い、『容易い願いだ』と叶えられてしまうかもしれない。
判明しているスラッグの性格から推測すると、いきなりドラゴンボールを使う事は考えにくい。しかし、儂等によって追い詰められた後なら、躊躇わずドラゴンボールを使おうとするだろう。
……それに、スラッグがドラゴンボールを乱用して原作よりずっと早く邪悪龍が誕生したらそれこそ終わりだ。バーダックでも一星龍や四星龍にはまだまだ勝てないじゃろうし。
『皆、作戦を一部変更する。スラッグはドラゴンボールで若返った上に、不老不死になっているため抹殺は不可能。致命傷を何度か与えて弱らせてから魔封波で封印する』
儂はスカウターとテレパシーで、作戦変更を伝えた。魔封波はネイルも含めて、アボとカド以外全員習得している。スラッグが不老不死になった事は、殺さないよう加減する手間がなくなったと考えれば好都合だ。
『しかし、スラッグ本人より優先してスラッグのドラゴンボールを確保する必要がある。儂はこれから一旦地球に戻ってドラゴンレーダーを取ってくる。
もし皆が先にドラゴンボールを見つけた場合は、最低でも七つの内一つだけでも奪取……難しければ破壊して構わん』
スラッグ本人を魔封波で封印しても、生き残った配下がドラゴンボールでスラッグの解放を願ったら、封印を解かれてしまう。
ドラゴンボールは創造者が封印されていても、生きていれば使える。スラッグを殺せない以上、儂等がボールを一つ以上奪取するか、神龍を殺害するか、木っ端みじんに破壊するしかない。
スカウターとテレパシーから、皆の了解という返事が返ってくる。
「お、おいっ! 貴様、我々のドラゴンボールをどうするつもりだ!?」
そして、儂が通信している間に我に戻った技術者魔族が驚いた様子で怒鳴ってくるが、まだ敵側の彼にそれを答えるつもりはない。
「やや事情が変わったので、儂はこれで失礼する。この予備のスカウターを渡しておくので、返事はこれで連絡するか、儂の知り合いに伝えてくれ」
「だ、だから、貴様らがスラッグ様に敵うはずが無いと言っているだろう、こんな物いら……ぬおぉぉっ!? 押し付けて来るな~っ!」
予備のスカウターの内一つを、抵抗する技術者魔族の懐に強引にねじ込む。その時、大きな気が一つこちらに近づいて来た。
「おい、カクージャ! 侵入者は……ここに居やがったか!」
扉を蹴り破って入ってきたのは、頭に二本の角を生やし肩当てと逞しい体にベルトをX型に巻き、レスラーパンツをはいた魔族だった。名前は……確か、ゼエウンと言ったか。劇場版で悟空達と戦わずにスラッグに処刑されてしまったのが前世の儂にとって衝撃的だったので、記憶に残っている。
スラッグ軍の幹部の始末は作戦上、優先順位が低かったからな。偶然野放しになっていて、情報を求めてここに来たのだろう。
「死ねぇっ!」
そして、ゼエウンは恐ろしい事に儂に向かって手加減なしのエネルギー弾を放って来た。
「貴様っ!」
儂は短く怒鳴りながらカクージャを放し、ゼエウンが放った気弾を受け止めるとフォトンシールドで包み込み、爆発を強引に抑え込んだ。
「ほう、爺の癖になかなか――」
そして、ブリーフ達が情報を吸い出している途中の貴重なコンピューターと、ついでにカクージャを爆発から守った儂は、ゼエウンにタックルし、彼を宇宙船の外に瞬間移動で連れ出して強引に戦う場所を変えさせた。
「ぐはっ!? な、なんだ?」
「自分達の貴重な設備や仲間ごと攻撃するとは、どういうつもりじゃ?」
「あぁ? カクージャを攻撃していたのはテメェだろうが。もしかして、まだあいつ生きてたのか?」
どうやら、部屋に入って来たゼエウンにはカクージャが儂に攻撃されているように見えたらしい。
「だが、そんな事はどうでもいい! さっさとお前らを殺さないと、スラッグ様に俺達が殺されちまう!」
しかし、ゼエウンにはカクージャの生死を気にしている余裕はないようだ。恐怖と怒りが混じった叫び声を上げると、儂に向かってエネルギー弾を今度は連射してくる。
「神精樹の実を食らい、フリーザに匹敵する強さを得た俺に殺される事を光栄に思え!」
「ふむ、戦闘力39万か。フリーザ(第一形態、戦闘力53万)に匹敵は言い過ぎだが、大した数字だ。しかし――」
ゼエウンのエネルギー弾は一発で背後の宇宙船のサーバールームを吹っ飛ばしかねない威力があるため、儂は彼が放ったエネルギー弾を全てスラッグ星の空に向かって弾き飛ばした。
「しかし、奇遇じゃな。儂の戦闘力も39万でな」
「な、なんだと!?」
遅ればせながら儂の戦闘力を測ろうと、自身が付けているスカウターを操作するゼエウン。しかし、当然だがスカウターは儂の戦闘力を計測できず爆発してしまった。
「ば、馬鹿なっ! あり得んっ! スカウターの故障だ! そうに決まっている!」
「なら、先ほど君が放ったエネルギー弾を弾いたのはどう説明するのかね? 君と互角の戦闘力が無ければできない芸当だったはずだが」
「……くっ! だが、戦闘力が互角ならこんな爺に負けるはずがねぇ! 本気を出せば俺の勝ちだ!」
焦り狼狽えるゼエウン。彼をからかうのは面白いし、たとえ彼が本気になっても負ける気は全くしないが、儂にはドラゴンボールを探すという用がある。
「そう言う訳で、太陽拳!」
儂に向かって間合いを詰めようとしていたゼエウンに太陽拳を放つ。幸いな事に、日光を克服した彼らも光への耐性は地球人並みだったらしい。
「ぐわっ!? この爺!」
怒り狂って出鱈目にエネルギー弾を放とうとするゼエウン。しかし、次の瞬間彼の姿は真横に吹っ飛ばされた。
「後はおらに任せるだよ、会長さん!」
「礼を言う、サン。では頼んだ」
駆けつけてゼエウンを蹴り飛ばしてくれたサンに礼を言って、儂は瞬間移動で地球に戻った。
なに、心配は要らない。何故なら、気を消せないスラッグ一味の強さは既に把握済みだからだ。……ゼエウン達が神精樹の実を食べたり、歴史改変者が介入してきたらどうなるか分からんので、急ぐに越した事はないが。
「久々のクラッシャー軍団としての仕事だぜ!」
「オラオラ! 伐採してやるぞ!」
その頃、アボとカドは破壊の限りを尽くしていた。二人は惑星クルーザーの機能を破壊する役割だったが、彼等が来た時には既に神精樹の根がクルーザーの推進部にも絡みつき、見た限りではまともに動きそうになかった。
「カド、スラッグ星が何割か削れそうだが構わねぇよな!?」
「アボ、星を爆発させなければいいってゲロが言ってたから大丈夫だろ!」
そのため、彼等は破壊する目標を神精樹に切り替えていた。幹を直接攻撃するのではなく、大地ごと根を切断し、スラッグ星を抉り取るように神精樹を抜こうとしているのだ。
「それより、実が熟す前にやるぞ! そろそろ花が散って実が出来る頃だ!」
「それじゃあ、俺達が実を食っちまうのはどうだ?」
「それもいい……っておいっ! 勝手な事をしてどやされたら割に合わねぇぞ!」
「それもそうだな。この星で育った神精樹じゃあ、実の効果もたかが知れてるだろうし」
誘惑を振り払った二人は、改めて気功波を放ってスラッグ星の大地を抉る。そうしている間もスラッグ一味の兵士達が二人を止めようと、エネルギー弾やミサイル、レーザーを放ってくるが、アボとカドはほとんど意識せずそれらを叩き落とし、逆に気弾を放って兵士達を吹っ飛ばしている。
兵士達の中には幸運にも神精樹の実を食べる事が出来た者も混じっていたが、戦闘力百が2百や3百になったところで、二人にとっては大差ない。
「ん? なんだ、妙な気がいくつか神精樹の枝から……」
「スラッグ一味の幹部にしちゃあ気が小さいな。この星の小動物か?」
疑問には思ったが、やはり神精樹を切り離すのが先だろうと二人は気弾を撃つことに集中する事にした。
「いい加減逃げ回るのを止めて、戦うか降参するか選びなよ!」
「いい加減しつこい小娘だな!」
その頃ギネは、逃げ回るメダマッチャに手を焼いていた。
(こいつらを見つけた時は、ついてると思った。小娘の担当になっちまったが、サイヤ人なら多少は楽しめるだろうと思ったら……なんなんだ、こいつの強さは!?)
メダマッチャは必死に逃げていた。神精樹の実を食べ続け、以前の戦闘力の十倍の42万にまで強くなった自分の攻撃が、全く通用しなかった。
「じゃあ、次はあたしの番だね」と笑うギネに、メダマッチャはその場で土下座して命乞いをした。そして、ギネが戸惑って動きを止めた隙を突いて逃げ出したのだ。
「中途半端が一番やり辛いんだ! 降参するなら口をきいてやるし、戦うなら付き合ってやるから、はっきりしなよ!」
「ふざけるなっ! 貴様らフリーザ軍になんか降参したらスラッグ様に殺される! それにお前と戦っても勝てないだろうが! どっちにしても俺に死ねと言っているようなもんだぞ、恐ろしい女だな!」
ギネがサイヤ人であるため、フリーザ軍の一員に違いないと考えそう怒鳴り返すメダマッチャ。だが、彼がまだ生きているのはギネが彼に情けをかけているからだ。
もしメダマッチャの前に立ちはだかったのがベジータ王子、そしてバーダックやセリパだったとしても、彼が命乞いをした直後に逃げ出した際に容赦なく殺していただろう。
しかし、いくらギネでも情けに限度はある。
「仕方ない。供養はしてやるから、一度地獄で反省してきな!」
逃げ回るメダマッチャに向かってどどん波を放った。既に宇宙船から出ていたが、スラッグ星を大きく破壊しないように爆発力は抑えている。
「クソっ、まだかっ!? ケケーッ!」
まだ地獄に堕ちた事が無いメダマッチャは、必死に生にしがみ付く。咄嗟に分身を生み出し、なんとそれを身代わりにしてギネのどどん波から逃れた。
(このまま煙に紛れて時間を――ヒィッ!?)
「グゲェッ!?」
ギネの拳を受けて、濁った悲鳴を上げながら吹っ飛ばされるメダマッチャ。
気を感知できるギネが、メダマッチャの大きな気を見失う事はない。彼が逃げ続けられたのは、本当にギネが彼に情けをかけていたからに過ぎない。
「ケケッ!」
しかし、救いの女神の手を蹴ったメダマッチャに幸運の女神が僅かにほほ笑んだ。殴り飛ばされた先で、兵士達と同じ程度のエネルギーしか持たない弱い分身が彼に駆け寄ったのだ。
「やったっ! 間に合ったか!」
「あ、それはっ!」
メダマッチャが分身から受け取った実を見てギネが声を上げたが、彼女が何かする前にメダマッチャは実を齧って飲み下す。
その瞬間、メダマッチャの筋肉が音を立てて膨張し肉体が一回り、そして気が三倍程大きくなる。
「ケケケーッ! まだ青いが、神精樹の実を食べた今の俺の戦闘力は百万を超える! これで形勢逆転だっ、他の連中やスラッグ様の所にも、今頃実が届いているだろうからな! 命乞いをしても無駄だぞ、小娘!」
精神が高揚した事で増長したメダマッチャはそう勝ち誇ると、エネルギーを両手に収束させる。
「消し飛べっ、エビルコメット!」
左右の手から弧を描く軌道でエネルギー弾を放つ自身の技で、ギネは跡形もなく消し飛ぶとメダマッチャは確信していた。
「はぁーっ!」
しかし、ギネは自身に迫るエビルコメットを左右の手でそれぞれ受け止めると自身の気でかき消してみせた。
「ば、馬鹿なっ!?」
「悪いんだけど、百万ちょっとじゃ足りないんだよね。でも、あんたに降参する気が無いのは分かったよ」
戦闘力126万にまで強くなったメダマッチャだが、ギネの戦闘力はフリーザの第三形態を超える210万だった。幸運の女神の微笑程度ではどうしようもない。
しかし、数万程度の戦闘力を計測するのがやっとのスカウターしかないスラッグ一味の幹部で、気の感知技術も持たないメダマッチャにはそれが分からなかった。
「そ、そんな……! ヒ、ヒィーっ!」
引きつった悲鳴を上げながら逃げ出したメダマッチャに、ギネは憐れみを覚えたが……彼が向かおうとしているのが神精樹である事を見逃しはしなかった。
「地獄でベジータ王に鍛え直してもらうんだね。ライオットジャベリン!」
ギネの手から放たれた気功波が、メダマッチャを背中から貫き断末魔の悲鳴も残さず消し飛ばしたのだった。
〇戦闘力推移
・ゲロ:32万3千 → 39万 実は素の力ではターレスと同じくらい。
・ギネ:178万3千 → 210万 フリーザの第三形態よりやや強い。
〇ゼウエン
赤毛に逞しい体付きの魔族。映画のパンフレットによると残忍な性格で、Z戦士と戦っていたらただでは済まなかっただろうというような事が描かれていた。
しかし、原作劇場版ではうっかりスラッグの事を「お歳だ」と年寄り扱いする失言をしたため、機嫌を損ねたスラッグによって地球に乗り込む前に処刑されてしまった。
ゲームではエビルインパクトと言う、マッスルカタパルトに似た必殺技を使う。
原作劇場版では戦わなかったが、カードダスによると戦闘力は3万9千。スラッグ一味の幹部の中では実は最も弱い。……他の幹部とあまり大きな差は無いが。
この作品では神精樹の実を食べ続けた影響で、カードダスの十倍の39万にまで強くなっている。
〇メダマッチャ
スラッグ一味の幹部の中でも、見た目は最もナメック星人に近い人物。柔軟な腕を使って奇妙な軌道を描くエネルギー弾や、自分の分身を生み出して敵に張り付かせエネルギーを吸収する等、搦手が得意そう。なお、分身が吸収したエネルギーを自分が利用して戦闘力を高める、と言うような事は出来なかったようだ。
ドラゴンボールを一時間以内に集めろとスラッグに命令された時は、思わず聞き返してしまい、ゼウエンの二の舞になる所だった。
原作劇場版ではアンギラと組んで悟飯、さらにピッコロを倒している。しかし、悟空にはあっさり負けてしまった。
原作での戦闘力はカードダスを参考にすると4万2千と、原作ネイルと互角であり、幹部の中ではアンギラとツートップの強さ。ゲームではエビルコメットと言う技を使う。また、ゲームでは人気投票では上位にランクインした事がある。……性能が良かったからだろうか?
この作品では戦闘力はカードダスの十倍、42万にパワーアップしている。さらに、青い神精樹(スラッグ星産)の実を食べた事で戦闘力が126万まで上昇した。
〇スラッグ軍の兵士
数千人と数が多いため、神精樹の実を食べていない者の方が多い。
神精樹の実を食べさせ続ければ戦力としてある程度使えるようになるのはスラッグも分かっているが、やらなかった。その理由は、戦闘力100の兵士を戦力として使えるようになるまで実を食べさせるより、戦闘力数万の配下を新たに産む方が、若返った今となってはずっと簡単であるため。
なのにスラッグがまだ新しく幹部を増やしていないのは、自分も強くなったし、そこまでしなくてもフリーザに勝てるだろうと考えているため。
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