ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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133話 3位決定戦と追い詰められるスラッグ一味 ☆

 激戦だった五位決定戦で所々傷んだ天下一武道会の舞台が、職員達によって手際良く新しい物に変えられていく。

 傷ついた部分をホイポイカプセルに戻し、新しい舞台のパーツを逆にカプセルから戻す。

「よっと。しかし、相変わらず頑丈な土台だな。鋼鉄の塊も粘土みたいに歪む、大会参加者の踏み込みを受けても壊れるのは石材で出来た表層だけで、土台は全く歪んでいない」

 

「なんでも、カッチン鋼って言うとんでもなく硬い金属でできているらしいぞ。聞いた話じゃ、この地球のどんなものより硬いらしい」

「へえ、そりゃあ凄い」

 

「皆さん、私語は止めて舞台の交換をしっかり頼みますよ」

「ウッス。よっと……」

 注意された職員は百キロ程の重さの石材のブロックをやや重そうに、しかし一人で運んで、カッチン鋼製の土台にはめ込んでいく。彼らの腕力も十分超人的なのだが……最近の地球人にとって、彼等程度の身体能力の持ち主は「ちょっと珍しい」程度になりつつあった。

 

『それでは舞台の整備点検も終わったので、三位決定戦を行います!』

 スラッグ一味が地球や火星に迫っている事、そしてそのスラッグ一味を今まさにゲロ達が襲撃している事を知っている者は限られる。そのため、天下一武道会のスケジュールは通常通り進んでいた。

 

『なんと、今大会の三位決定戦はどちらも初出場の選手の対戦となります。人造人間11号セリパ選手、そして人造人間12号トーマ選手です!』

 舞台に入場したニューフェイスの二人に、観客席から歓声が上がる。二人とも、既に多くのファンを獲得しているようだ。

 

「お前と戦うのは、決勝戦でだと思ってたんたけどな」

 セリパと向き合ったトーマはきまり悪そうにそう言った。

「まあ、あんたの場合はそうだね。ただ、あたしの場合は十分あり得る結果だったと思うよ。次やる時はあたしが勝つけどね。

 じゃあ、切り替えていこうじゃないか」

 

 そう答えてセリパは身構えたが、トーマは一向に構えようとしない。しばらく棒立ちのままで、訝しく思ったセリパとアナウンサーが構えるよう促そうとした時、懐に手を入れた。

「セリパ……この試合に俺が勝ったら結婚を前提に付き合ってくれ!」

 そして、懐から掌に納まる程度の箱を出しながら、なんと告白を行った。これまでデートの度に告白してもなかなか合格点をくれなかったセリパに対して、彼は考えた末に一世一代の大勝負に出たのだった。

 

『な、なんとっ、トーマ選手告白です! それも結婚を前提とした交際の申し込みです! 試合開始の前に、相手選手へ告白したのは、長い天下一武道会の歴史の中でも初めての出来事ではないでしょうか!?』

 驚いて試合開始前に実況を始めるアナウンサー。一方、セリパはトーマが取り出した小箱を開いて指輪を見せても頬を赤らめたまま硬直していた。

 

「トーマ……あんた……」

 そして、震える声でトーマを呼び、手を伸ばして……拳を作った。

「ふざけるんじゃないよ、このバカ!」

「えっ!? いや、だ、ダメだったか!?」

 オーラが放たれ、風が起きるほどの怒りを露わにするセリパに、思わず後ろに仰け反って慄くトーマ。セリパは彼をさらに怒鳴りつけた。

 

「当たり前だよ! それじゃあ、試合であたしが負けないと、あんたと結婚するのが嫌って事になるじゃないか!

 それとも、俺と結婚したければ負けろって言うつもりかい!?」

「あっ、しまったっ!」

 

 セリパが激怒したのは、トーマが告白したのが大勢の観客やボックス席で観戦している身内の見ている前だったからでもなければ、この告白が全国にテレビ放送されているからでもない。そしてもちろんトーマと結婚を前提に付き合うのが嫌なわけでもない。

 

 セリパが気に入らなかったのはただ一点、彼女が対戦相手の試合に「勝ったら結婚を前提に付き合ってくれ」と言う点だった。

「え、ええっと、じゃあ、試合が終わった後で改めて告白するから、今のは無しってことで……」

「チッ、締まらない男だね。あんたが勝ったらそれでいいけど、あたしが勝ったらお預けだからね!」

 

「それじゃあ、負けられねぇな。おい、これ持っていてくれっ!」

『わたたたっ!? わ、分かりました! それでは、試合開始です!』

 小箱を投げ渡されたアナウンサーが試合開始を宣言した途端、トーマに向かってセリパの手が迫って来た。

 

「加減はしないよっ!」

 激しい連続突きを、トーマの周囲を高速で飛び回りながら放つセリパ。

「はっ、良い手応えだぜっ、惚れ直すねぇ」

 無駄の無いコンパクトな動きで繰り出され続ける攻撃を、トーマは両腕を巧みに使って受け流し防御する。

 

「勝手に言ってなっ」

「へへっ、そうするぜ!」

 拳だけではなく蹴りも交えた激しい攻防を続ける二人。普通なら息が切れるところだが、二人とも永久エネルギー炉搭載の人造人間であるため、疲労は全くない。その気になれば、日が暮れるまでこのまま戦い続ける事が可能だ。

 

 しかし、そうなると戦闘力の差が現れ始める。トーマの戦闘力は2057万、それに対してセリパの戦闘力は1610万。約4百万の差が、ヒットする攻撃の数やその度に蓄積されるダメージの量に現れる。

「太陽拳!」

 それで戦況が決定的に傾く前に、セリパは太陽拳を放ってトーマの視覚を封じようとした。

 

「そうはいくかっ!」

 セリパが閃光を放った瞬間、トーマは彼女から離れて目を逸らした。しかし、すかさずセリパの気弾が撃ち込まれる。

「残像拳かっ!」

 セリパが気弾で撃ったのは、トーマの残像拳だった。同時に、舞台上に無数のトーマの残像が出現する。

 

「多重残像拳で目くらましか。器用な真似をするようになったじゃないか。だけどね、気を探れなくても残像と本体を見分ける方法はあるんだよ。

 はっ!」

 

 セリパは四身の拳を発動させ、四人に増えた。そして自分の四分の一、戦闘力約4百万の分身三体が指から小気弾を乱射し始める。

 舞台やその上空を構わず放たれる小気弾は、トーマの残像達を瞬く間に消していく。

 

「おいおい、見分けるって言ったくせに力押しかよ」

 あぶり出された本物のトーマは、片手で小気弾を弾きながらもう片方の手に気を収束させる。

「フレイムバレット!」

 性質を炎に変化させた気弾を放つが、長年トーマとチームを組んできたセリパにとっては見慣れた技だ。十分距離も離れているので、難なく避けられる。

 

「弾けろ!」

 そう思ったセリパだったが、トーマが叫んだ途端フレイムバレットが閃光と熱波を放って爆発した。

「くっ!?」

 不意を突かれたセリパは、反射的に防御を固める。熱波は彼女を飲み込み舞台の全てをも飲み込んだが、爆発によって拡散して威力は大分落ちていたため、防御の甲斐あってダメージは受けなかった。

 

「うおおおっ!」

 だが、その熱波を突っ切ってトーマがセリパに向かって体当たりを仕掛けて来た。自らが放った技の余波を受けても構わず突っ込んできた彼の特攻に、セリパは防御の上からでも響く大きな衝撃を受ける。

 

「くっ、場外に落とされて堪るか!」

「へっ、せっかく捕まえたんだ、そう簡単に放さないぜ!」

 正面からぶつかり合う二人は、お互いに同じ戦法に出た。

「「どどん波っ!」」

 尻尾の先端から相手に向けてどどん波を放ったのだ。当然、二人とも避けられず爆発に飲み込まれる。

 

「ぐっ……」

「ぐおおっ! はぁ!」

 だが、やはり地力の差は大きかった。ほぼ同じタイミングと距離で同じ技を受けても、セリパよりトーマの方がダメージは少なかったのだ。

 

 爆発に耐えたトーマは逆にダメージで意識が一瞬途切れたセリパを突き飛ばすと、空を舞う彼女に向かってダメ押しの一撃を加えて地面に落としたのだった。

 

『セリパ選手場外っ! トーマ選手の勝利です! 今年の天下一武道会三位はトーマ選手、四位はセリパ選手に決定しました!』

 アナウンサーの宣言を聞いて、地面に倒れたセリパは「チッ」と舌打ちをした。

 

「あんたの詰めが甘かったら逆転勝利してやったのにさ」

 トーマに突き飛ばされた時には、実はセリパの意識は戻っていて、逆転するために右手から気弾を放とうとしていたのだ。

 

「だと思ったぜ。流石、俺が惚れた女だ」

 トーマはセリパが勝負を諦めていない事を察して、容赦なくダメ押しの一撃を入れたのである。

「おいっ、さっき預けたの持ってるよな!? こっちに投げてくれ!」

『あ、はいっ! どうぞっ!』

 

 アナウンサーから預けていた小箱を、「ありがとよ!」と受け取ったトーマは、それを開いて身を起こしたセリパに箱の中身を見せて言う。

「それでセリパ、改めて言うが……俺と結婚前提に付き合ってくれないか? 地球人に倣って指輪を用意したんだが……」

 

 箱の中には、シンプルなデザインの指輪があった。

「フンッ、せいぜい尻に敷いてやるから覚悟しておくんだね」

「おおっ! やったっ! やったぜっ!」

 セリパが指輪を受け取ると、トーマは彼女を抱き上げた。

 

「なっ、おいっ、放せ、自分で歩けるっ!」

「照れるなって! へへ、式場はどうする? 地球でも色々種類があるみたいだから迷うよな~、いっそ全部やっちまうか?」

「このバカっ、気が早いんだよ!」

 セリパをいわゆるお姫様抱っこしたまま、トーマが退場していく。その二人を観客達は拍手と「おめでとう」と言う歓声で見送ったのだった。

 

『な、なんとトーマ選手とセリパ選手の婚約が成立した……のでしょうか? ともかく、この天下一武道会で一組のカップルが成立したのはおめでたい事ですね!』

 そんなアナウンサーの言葉を聞きながら、観客席のトテッポは思わずつぶやいた。

 

「あいつら……結婚したのか」

「いや、結婚の約束をしただけで、まだ結婚はしてねぇんじゃないか?」

「だが、結婚するんだろう?」

「まあ、そうだな。じゃあ、結婚したのと同じようなもんか?」

 驚いた様子のパンブーキンと間の抜けた会話をするトテッポ。タイムパトロールの仕事が入りそうなので、時の巣で待機しているバーダックがこの場に居れば、彼も二人の仲間に入っていただろう。

 

「うわー、すごーい。ヤムちゃん、あたし達も天下一武道会で婚約しちゃう?」

「えっ?」

 一方、マロンに話を振られた今年二十歳になるヤムチャは、「天下一武道会で結婚って、後三年間はマロンと婚約もできないって事なのか!?」と動揺している。

 

「あれが嫁の貰い方か~。オラも次の大会でチチと当たったら、あれをやらねぇとダメかな?」

「あんまり参考に……いや、してもいいのか? チチも半分サイヤ人だし。あ、でもクリリンとサタンは参考にしない方が絶対にいいぞ」

「ウーロン、ミゲルちゃんは武闘家じゃないんだから、参考にするはずないだろ。そもそも、俺とミゲルちゃんはまだ何回かデートした事があるだけで、まだそんな関係じゃ……」

「お、俺だって、まだラズリさんとは……あれ? そう言えばラズリさんは?」

 

「トイレに行ったわよ。お爺ちゃん、はい、ドラゴンレーダー」

「うむ、助かった。では、トーマとセリパの未来のためにもスラッグ一味を退治するとしよう」

 ブルマはクリリンにラズリの行き先を答えると、瞬間移動で戻って来たゲロにドラゴンレーダーを手渡した。

 

『……まさかこんなバカバカしい試合を見せられるとはな。多少は人間共の心の機微とやらも分かったつもりだったが、相変わらず愛だのなんだのは分からん』

 そして、既に天下一武道会の会場に潜入していたピッコロ大魔王はそうげんなりしつつも、二人の強さを目にして内心苦い思いを抱いていた。

 

『儂等が忍び寄っている事に気がつかず浮かれおって。だが、流石はドクター・ゲロと言ったところか。儂とドクター・ウィローの研究を盗み利用しただけの事はある。あれだけ高性能な人造人間を造り出すとは』

 しかし、コーチンが悔しそうに認める通り、ピッコロ大魔王達が目にした二人の実力は本物だ。まともにやり合えば、ピッコロ大魔王でも勝ち目はない。やはり、魔神精樹の実を喰らって気が爆発的に高まっている間に勝負を決めるしかないだろう。

 

『ピッコロ大魔王様、こちらピアノ。配置につきました。シンバルも同様です』

『こちらドラム。ボックス席に潜入しました。ゲロは何処かへ行っちまいましたが、残りならいつでも始末できますぜ』

『こちらタンバリン、利用できそうな端末の目星がつきました。何時でもやれます』

『いいぞ、お前達。作戦は順調だな』

 テレパシーで連絡を取りながら、作戦を進めるピッコロ大魔王一味。彼らの策は、単純明快。天下一武道会の決勝戦で決着がついた直後に姿を現し、消耗している強敵やゲロ、そして彼に与する科学者や武道家達を不意打ちで始末し、残りを魔神精樹の実を食らってパワーアップしてから倒すというものだった。

 

 ゲロ達は気の感知技術を持つだけではなく、スカウターと言う優れた通信手段も持っている。そのため、一人ずつ始末するという方法は使えない。やるなら一度に出来るだけ大勢を始末し、ゲロ達が対応する前に一気に勝負を決める必要がある。

 

 できれば、死者の復活すら可能にするドラゴンボールも同時に確保したかったが……コーチンのレーダーには反応が無かった。

 おそらく、レーダーに反応しないよう特殊な容器にでも入れているか、ナメック星か何処か別の星に運んだのだろう。

 

(厄介だが、やるしかない。奴らを倒した後、生きていればコーチンの思考制御装置で操り、死んでいればやはりコーチンが狂暴戦士に改造して蘇らせる。これでドラゴンボールが向こうにあったとしても、儂等の戦力として取り込む事が出来るはずだ。……賭けになるが)

 

 ドラゴンボールで叶えられる願いがどこまでなのか不明である以上、思考制御装置や狂暴戦士への改造で対処できるかは賭けになる。

 だが、今回の作戦はもともと賭けだ。

 

(元々儂もコーチンも、命を懸けた博打を打ちに来たのだ。今更怖気づきはせん)

『では、決勝戦で決着がつくまでそのまま待機だ。事を起こすタイミングは儂に合わせろ』

『『『『ははっ!』』』』

 

『えー、では舞台の整備も終わりましたので……今大会の優勝者を決める、決勝戦を行います!』

 ピッコロ大魔王一味の存在に気が付かず、ゲロも不在なまま、天下一武道会のスケジュールは進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 時間はやや戻り、ゲロがドラゴンレーダーを持ち帰るまでの間、サンはゼエウンと戦っていた。

「地球に手出しはさせねぇだぞ!」

「地球はスラッグ様の新しい惑星クルーザーになる運命だ! 大人しく滅びの運命を受け入れろ!」

 激しく攻撃を繰り出すゼエウン。しかし、サンはいくら攻撃を受けてもダメージを受けた様子がなかった。ゼエウンの拳を腕で受け止め、気弾も素手で弾き飛ばしてしまう。

 

「ま、まさか、貴様! 俺より強いのか!? そんな訳がねぇ!」

 ゲロと互角の戦闘力39万にまでパワーアップしたゼエウンにとって、爺(ゲロ)や女に苦戦するのは……パワーやスピードで負けるのは屈辱だった。現実を認められず、焦りと恐怖から拳を繰り出す。

 

 しかし、ゼエウンの拳はサンの掌に受け止められ、逆に握りしめられた。

「ぎええええっ!?」

「ようやくわかっただか。なら、おめぇこそ大人しく降参するだ」

 拳を握り砕かれそうになり、ゼエウンは悲鳴を上げて身をよじった。しかし、サンの指は彼の拳に食い込んだままビクともしない。

 

「降参するなら、命だけは助かるように……できれば、命以外も助かるように、会長さんを説得してやっから。な?」

 いくら悪人でも、脳改造されてロボットみてぇになるのは忍びない。あの世との交流試合でスラッグ一味の幹部だった人物とも会った事のあるサンは、そう思って声をかけた。

 

「こ、このゼエウン様を舐めるんじゃねぇ!」

 しかし、ゼエウンの目にはサンの情けは侮辱と嘲りとしか映らなかった。彼女の顔に向かって気弾を放ち、指が緩んだ一瞬の隙に強引に抜け出す。

 

「エビルインパクト!」

 そして肩に気を纏い、サンに向かってプライドを賭けて必殺のタックルを繰り出す。

「こんのわからずやぁ!」

 しかし、気弾の爆発によって生じた煙から姿を現したサンは、ゼエウンに向かって回し蹴りを放った。

 

「ぎやぁぁぁ!?」

 イビルインパクトを防がれたばかりか蹴り飛ばされたゼエウンだったが、彼がサンから離れるタイミングを待っていたメダマッチャの分身が彼に駆け寄り、神精樹の実を渡した。

 

「こ、これがあれば……!」

 ゼエウンはまだ青い神精樹の実に齧りつく。その途端、疲労や痛みが体から消え、筋肉が膨張し、力が満ち溢れる!

 

「もう、あの爺はもちろん、お前のような小娘にも負けねぇ! あの星をさっさと捨てて逃げ出さなかった事をあの世で後悔させてやるぜ!」

 その戦闘力は三倍の、117万にまで上昇していた。

 

「エビルインパクトォ!」

 そして再びサンに向かってエビルインパクトを放つゼエウン。しかし、同じ技でも今度の勢いと威力は前の比ではない……はずだった。

 

「誰が、自分の星から逃げ出すもんかっ! おらの家族はこれからもあの星で暮らすんだべ!」

 サンは気を纏った脚で繰り出した蹴りをイビルインパクトを放ったゼエウンを弾いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「がはっ!?」

「あの世で後悔すんのは、おめぇだ! かめはめ……波ぁーっ!」

 そして、衝撃に耐え切れず動きが取れないゼエウンに向かって、必殺のかめはめ波を放つ。

 

 ギネには及ばないものの、サンの戦闘力は186万。最初からゼエウンの敵う相手ではなかったのだ。それに彼が気づいたのは、かめはめ波で消し飛ばされて閻魔大王の裁判を待つ列に並ばされた頃だっただろう。

 

 

 

「ぐおおおっ! お、俺の腕が~っ!」

 一方、4号はドロダボと戦っていた。ドロダボもスラッグ一味の幹部の例にもれず、戦闘力は神精樹の実を食べ続けた事で4万5百から40万5千に上昇し、一方4号はギネやサンよりも素の力では劣る。

 

 しかし、それでも4号の戦闘力は98万7千。降伏を勧告する自分に対して、舐めた態度でかかって来たドロダボを殴り返し、反撃しようと繰り出してきた腕を捻り上げる事は簡単だった。

「もう一度だけ言っておきます。降伏するつもりはありませんか? 命の保証はします」

「わ、分かったダボ! 降参だダボ、どうか命ばかりはお助けダボ!」

 即座に同意するドロダボ、しかし、考えている事はゼエウンと同じだった。

 

「引っかかったダボ!」

 4号が手を緩めた途端、足元に気弾を放って舞い上がった土煙を利用して後ろに下がり、そこに隠れていたメダマッチャの分身から神精樹の実を受け取る。

 

「こいつさえあれば、怖いもの無しダボ! くらえっ、エビルグラビティ!」

 神精樹の実を食った事で4号に捻られた腕も回復し、戦闘力も121万5千に上昇。これで勝てると確信した彼は、掲げた手の先に収束した気の塊を4号に向かって振り下ろすようにして投げつけた。

 

「2倍界王拳! どどん波!」

 しかし、ドロダボの気が自分を上回った事に気が付いた4号はすかさず界王拳を発動。戦闘力を倍増させ、197万4千まで高め、ドロダボの必殺技をどどん波でかき消した。

 

「ば、馬鹿な……はっ!? ま、待つダボっ、お、同じ魔族同士――」

 必殺技を防がれ戦意を喪失したドロダボは再び命乞いをしようとしたが、4号はギネやサン程甘くはなかった。彼が命乞いを言い終える前に、気功波を放って彼を消し飛ばした。

 

 

 

 しかし、スラッグ一味の幹部も一方的にやられてばかりではない。

「これ以上スラッグ様の神精樹を荒らさせるわけにはいかないんでな!」

「こいつ、なかなか強いぞっ!」

 現在生き残っている幹部の最後の一人、アンギラは神精樹をスラッグ星から排除しようとしていたアボとカドを止めようとしていた。

 

 アボとカドの戦闘力は31万7千、対してアンギラの戦闘力は42万。二対一でもそう簡単に勝負はつかない。

「それにしても、他の連中はどうした!? メダマッチャも、本体は何時まで経っても来やしない。まさかあいつら、やられたんじゃないだろうな!?」

 同僚達が一向に姿を現さない事に、焦りを露わにするアンギラ。対して、アボとカドは余裕の笑みを浮かべている。

 

「へへ、待っているのはお前の仲間の方だぜ」

「ただし、地獄でな! 行くぞっ、アボ!」

 アボとカドはそれぞれ実体のない分身を出し、アンギラへの逆襲を始める。

 

「分身っ!? クソっ、メダマッチャと違って幻か! スカウターが使えれば……!」

 合計六人になったアボとカド。しかし、その内四人は実体のない幻だ。気の感知技術を持っておらず、またスカウターもとっくに壊れているアンギラは、本物と幻を見分ける術がない。

 

 腕を伸ばして放つ拳も、口から放つ気弾も、幻をすり抜けてしまう。逆に、アボとカドの拳は面白いようにアンギラに命中する。

「うぐぐっ! こうなったら……ふんっ!」

 アンギラは腕をアボとカドではなく、神精樹の枝に向かって伸ばした。そして、腕の長さを戻した時にはその手に神精樹の実を握っている。

 

「これで……貴様等を纏めて吹き飛ばしてやる!」

 戦闘力を126万まで上昇させたアンギラは、四体のアボとカドを瞬く間に薙ぎ払った。

「やったぞっ! ……いや、本物はどこに行った!?」

 アンギラが薙ぎ払ったのは、アボとカドの幻だけで本体はいなかった。それに気が付いて慌てて周囲を見回す彼の前に、一人の巨漢が姿を現した。

 

『ここだぁ!』

 そこにいたのは、アボとカドが合体した戦士、アカだった。彼らはアンギラが神精樹の実を食べている間に分身だけを残して合体していたのだ。

 

「な、なんだ、貴様は!?」

『ワハハハ! 吹き飛ぶのはお前の方だ!』

 アンギラは巨大なアカの姿に驚愕しながらも、本能的には彼が強敵だと察し、生き延びるために必殺技を放った。

 

「エビルクエーサー!」

 アンギラの口から放たれたエネルギー波は、合体前のアボとカドだったら跡形もなく消し飛ばす事が出来るほど強力だった。

 

『ワハハノ波ー!』

 しかし、戦闘力31万7千のアボとカドが合体して誕生するアカの戦闘力は、634万。吹き飛ばされたのはアンギラの方だった。

 

「うぐぐっ……そんな馬鹿な! この俺が、神精樹の実を食った俺がそんな一方的に……!」

 しかし、アカが手加減したためアンギラは死んでいなかった。立ち上がる事が出来ない程のダメージを受けているが、致命傷ではない。

 

『さて、他の奴等も聞いているようだから一応言うぜ、降伏するつもりは――』

 他の幹部の気が次々に消えて言った事からも、こいつに降伏勧告を行っても多分無駄だろうと思いつつも、アカは一応アンギラに降伏を勧めようとした。

 

『ぐおおおおっ!』

 しかし、その時宇宙船の壁を破って巨大化したナメック星人、スラッグが現れた。

「スラッグさ――」

『あっ』

 

 そして、アンギラを踏み潰した。彼の気も同時に欠片も残さず消え、感じ取れなくなったので死んだのだろう。

 アカは生まれて初めて、殺し合いをしていた相手の死に心から同情した。

 しかし、アンギラを踏み潰したスラッグは彼の死に気が付いてもいない。

 

『この俺の真の姿を見た事を、冥土の土産に死ぬがいい!』

 そう怒鳴りつけられたネイルは、巨大化したスラッグを睨みつけながら口を開いた。

「やはり話し合いは無駄か。なら……界王拳!」

 




〇ファンアート


【挿絵表示】


阿井 上夫様から、凛々しいサンのイラストを頂きました! ありがとうございます!



〇コーチンの思考制御装置

 『この世で一番強い奴!』で、ピッコロ(マジュニア)が頭部に嵌められていた装置。……もしかしたらウィローが開発した可能性もあるが、この作品ではコーチンも開発していたと言う事にします。



〇戦闘力推移

・サン:154万 → 186万 フリーザの第三形態までもう少し。原作スラッグ(老)なら倒せる。
・4号:81万6千 → 98万7千 20倍界王拳を使うと1974万。
・アカ: アボ(31万7千) + カド(31万7千) 63万4千 × 10 =634万 



〇ドロダボ

 頭に角、そして背中に蝙蝠のような翼を生やした、太った体形の魔族。外見はドドリアに少し似ている。
 スラッグ一味の幹部の一人で、劇中ではピッコロと戦うも実力差は大きく、腕を折られた後、無人の店の中に隠れて待ち伏せをしようとしたら見破られ、最後はピッコロに「同じ魔族」だからと命乞いをするが、あっさり頭を吹き飛ばされて始末された。

 ゲームではエビルグラビティと言う必殺技を使う。
 原作の戦闘力はカードダスによると4万5百。この作品では神精樹の実を食べ続けた事で40万5千にまで上昇している。



〇アンギラ

 額に二本の角を生やしたギリシャ神話の登場人物のような恰好をした美形の魔族。
 スラッグ一味の幹部の一人で、髪の毛が生えている事等外見は最もナメック星人から遠い。しかし、腕を伸ばしたり口からエネルギー波を撃ったりと、能力的には幹部達の中では最もナメック星人に近い。

 劇中ではメダマッチャと組んで悟飯と彼を庇ったピッコロを倒している。しかし、孫悟空と戦った時は伸ばした腕を地面に潜らせて下から攻撃し、口からエネルギー弾を放ったが、あっさり負けてしまった。

 ゲームではエビルクエーサーと言う必殺技を使う。
 原作での戦闘力はカードダスによると4万2千。この作品では神精樹の実を食べ続けた事で、42万にまで上昇している。



 ぱっせる様、PY様、kubiwatuki様、excite様、ダイ⑨様、kubiwatuki様、変わり者様、ヴァイト様、MMZK様、佐藤東沙様、闇谷 紅様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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