ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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134話 優勝者決定! そして、動き出す大魔王

 ゲロ達と別れたネイルは、ゲロのスパイロボットの調査を待たず真っすぐスラッグの元へ向かった。宇宙船の構造を知らなくても、自分達以外で最も大きな気の場所を目指せばいいので迷いようがない。

 もちろん兵士達が立ちはだかろうとするが、彼等はネイルの歩みを一秒も止める事は出来なかった。横を通り抜ける時に指で軽く首の後ろや腹を突かれるだけで、バタバタと倒れていく。

 

「貴様、俺の手下ではないな。侵入者か」

 そしてネイルが見たのは、玉座に座る顔に傷跡があるナメック星人だった。

 

 その姿は若く覇気に溢れていたが、放っている気は余りにも邪悪だった。

「ゲロ達から聞いていたが、これ程とは」

 かつてベジータ王と初めて手合わせした時にも、彼から邪悪な気を感じてはいた。彼の息子のベジータ王子や、サイヤ人達、そしてクラッシャー軍団の面々からも。

 

 しかし、スラッグの気が発する邪悪さとは桁が違う。特に、サイヤ人達の気から年々邪悪さが薄れているだけに、ネイルにはスラッグの邪悪さが際立って感じられた。

 そして、それほど邪悪な気の持ち主が同じナメック星人である事にも内心で衝撃を受けていた。

 

「侵入者も止められんとは、役立たず共め。それにしても……貴様、俺に似ているな。魔族のようだが、何者だ?」

「私の名はネイル、魔族ではない。だが、私はお前と同じ星出身の同胞だ」

 一方、スラッグも突然現れた自分と同じ特徴の侵入者に興味を覚えたようで、ネイルの答えを聞いて「ほう」と応える。

 

「同族か。と言う事は、貴様等もドラゴンボールを作れるのだな? これは放ってはおけんな」

 しかし、それはただの郷愁や自分へのルーツに対する興味とは違った。

「おい、若造。俺と同じ種族がどこの星に居るのか教えろ」

 

「それを知って、どうするつもりだ?」

「決まっている、皆殺しにするのだ。素直に話した方が身のためだぞ、若造。そうすれば貴様だけは殺さないでやろう」

 

「……そうか、だが私もお前に提案がある。今すぐ悪事を止め、征服した星を解放して地球の近くから去り、宇宙の片隅で静かに暮らすがいい。そうすれば見逃してやる」

 この宇宙には分かり合えない者が存在する。それはゲロ達の言う宇宙に君臨する悪の帝王フリーザだけではなく、同族もその例外ではなかった。その事実をネイルは拳を握り締めながら認めた。

 

「ほう、それはつまらんジョークだ。そして、俺はつまらんジョークが嫌いでな」

 一方、スラッグはネイルの言動から自分の同族たちは随分と甘っちょろい連中らしいと知ったが、それ以上の感想は持たなかった。

 

 自分の種族とその居場所についても、自分のドラゴンボールを使って探ればいい。そう判断したスラッグは、ネイルに向かって部下を処刑する時と同じ気軽さでエネルギー波を撃った。

 これで侵入者は死んだ。スラッグと彼の周りにいる兵士達はそう確信したが――

 

「随分と間の抜けた攻撃だ」

 しかし、ネイルは掌でスラッグが放ったエネルギー波を受け止めていた。「なんだと」と、スラッグが驚く間もなく彼の視界にネイルの手が広がっていく。

 

「ぶっ!?」

 腕を伸ばしたネイルの張り手を顔面に受けたスラッグは、堪らず玉座から転がり落ちた。

「スラッグ様っ!?」

「馬鹿な、奴の戦闘力は……うおっ!? スカウターが爆発した!?」

 

 驚き狼狽する兵士達。ネイルは構えを取りながら、彼等に忠告した。

「巻き込まれたくなければ失せるがいい。さっき私が言ったように、今後一切悪事を働かないなら、見逃してやる」

「ヒッ、ヒイッ!」

 兵士達は引きつった悲鳴を上げると、倒れているスラッグを無視してその場から逃げ出した。

 

 彼等はスラッグを裏切ったつもりはなかっただろうし、ネイルの忠告に従った覚えもないだろう。高くても戦闘力が千未満の彼らに出来る事はない以上、巻き添えになって死ぬのを避けようとするのは無理もない判断だ。

「ギヤァァァ!?」

「ス、スラッグ様ーっ!?」

 だが、避難しようとした兵士達を背後からスラッグが放ったエネルギー弾が襲った。

 

「貴様!? 仲間では、自分が産んだ子ではなかったのか?」

「フンッ、役立たずは俺の手下にいらん。足りなく成れば貴様を殺した後でまた産めばいいだけだ!」

 自ら葬った兵士達の最期に視線も向けず、頬を張られた怒りと屈辱に顔を歪めたスラッグは立ち上がると、久しぶりに身構えた。

 

「クックック、処刑ではなく戦闘は久しぶりだ。光栄に思うがいい、この俺に殺される事をな!」

「貴様は倒すべき悪だ! 貴様が落ちるべき場所へ送ってやる!」

 そしてお互いに叫びながら攻撃を繰り出した。ネイルに向かって素早く間合いを詰めて殴りかかるスラッグ、だがネイルは身を低くしてスラッグの拳を掻い潜り、彼の脇に抉るように拳を叩き込み返した。

 

「ぐぅっ! 小癪な真似を!」

 唸りながらなおも拳を振るい、蹴りを繰り出すスラッグ。しかし、ネイルはそれらを無駄の無い動きで回避し、隙を突いて反撃を命中させていく。

 

「何故だっ、何故俺の攻撃が当たらん!? 俺の方が戦闘力では上回っているはずだ!」

 気の感知技術を持たないスラッグだが、直接拳を交わした手応えからネイルの力が自分を下回っている事は察していた。

 それは正解で、ネイルの戦闘力は350万。神精樹の実を食い、若返る前のスラッグだったら一方的に倒せていただろう。しかし、今のスラッグの実力は戦闘力にして520万。ネイルの戦闘力を上回っている。

 

 それでもネイルがスラッグの攻撃を掻い潜り逆に反撃を命中させ続けていられるのは、スラッグとネイルの経験の差だ。老いてもなお強大な力を持っていたスラッグは、長い間処刑は幾度となく行っていたが戦闘は数えるほどしかしていないし、組手をする相手もいない。

 

「私は日々己の務めを果たすため精進してきた。その差だ!」

 だが、ネイルはこれまで最長老の護衛として鍛錬を積み、北の界王の修行を受け、己を鍛え続けて来た。それがスラッグには無い技を彼に培わせてきたのだ。

 

「がっ!? お、おのれぇ、この若造が!」

 背中にネイルのエルボーを受けたスラッグは、怒りのあまり頭に血管を浮き立たせた。ネイルから受けた攻撃で負ったダメージは、どれも致命傷には程遠い。神精樹の実を喰らい続け生命力を増した彼にとって、戦闘に支障が出ない程度でしかない。

 

「貴様、楽には死ねんぞ!」

 だが、スラッグに反撃に耐えて堅実に戦う事が出来る忍耐力はなかった。怒りによる爆発力を内側に溜めこみ、一気に体を巨大化させる。

 

『ぐおおおおっ!』

 自らの玉座や宇宙船を破壊しながら外に出た巨大スラッグは、運悪く足元に居たアンギラを踏み潰し、その事にも気が付かない様子で怒鳴った。

 

『この俺の真の姿を見た事を、冥土の土産に死ぬがいい!』

 巨大化した事でその力と耐久力は倍増し、1040万相当になっている。その分小回りが利かなくなったが、圧倒的なパワーは生半可な技では超えられない差を生み出す。

 

 同じナメック星人のネイルにも同じ事は可能だが、彼には技があった。

「界王拳!」

 ネイルの体が、赤いオーラに包まれた。

 

 

 

 ドミグラの忠実な配下、大剣を背負った魔神シャメルはスラッグ星での戦いを見下ろしながら、作戦が破綻せず進んでいる事に内心で安堵していた。

「俺達にとって都合が良い時もあるが……いざ策を実行に移すとなると、予想外の動きばかりする面倒な爺だ」

 ドミグラ一味にとって、ゲロ達がスラッグ星のシステムにサイバー攻撃を仕掛ける事や、スラッグ一味を地球で迎撃するのではなくスラッグ星を襲撃する事は想定外だった。

 

 そのため、本来ならロベルがするはずだったスラッグ星での作戦進行に、こうしてシャメルも手伝いに来ているのだ。

「しかし、このままだとスラッグが殺されるか封印されるな。仕方がない……」

 シャメルはキリでメダマッチャの分身を僅かに強化し、操る。本体が死んでもしばらく存在を保てるようにして、スラッグ、そしてついでに他の幹部達の元に神精樹の実を届けさせる。

 

 これぐらいならタイムパトロールも気がつかないだろう。そう考えたシャメルだったが、その判断は甘かった。

「よう、久しぶりだな。今回は出番なしかと思ったぜ」

「タイムパトロールだ! 魔神シャメル、お前達の好きにはさせない!」

 ほぼ即座に現れたバーダックとトランクスの姿を見て、シャメルは息を吐いた。

 

「まあ、いいだろう。お前達が邪魔に来る事もドミグラ様の想定内だ。だが、残りの二人はどうした?」

「お前が知る必要はない!」

「そうか、ロベルやドミグラ様に備えて待機しているのか。妥当な判断だ」

 

 シャメル一人を確実に倒すために戦力を全員投入するよりも、まだ姿を見せないロベルやドミグラに備えてベジータと悟空を温存する。それが時の界王神の判断だった。

「……お前一人くらい、俺達で充分というだけだ」

「とてもそうとは思えないがな」

「なら、試してみるか? こっちは秘密兵器を用意してきたんだ、驚かせてやるぜ」

 

 スラッグ星の上空でも、激しい戦いが始まった。

 

 

 

 スラッグ星に戻った儂が最初に見たのは、大穴が空いた宇宙船と巨大化したスラッグと戦うネイルの姿だった。

「ふむ……戦闘は順調なようだな」

 とっさに気で皆の位置を確認する。ネイルはもちろん、4号、サン、ギネ、アカに合体したらしいアボとカドの気は健在で弱まっている様子もない。逆に、ゼエウン達の気は感じられない。それぞれサン達に倒されたのだろう。

 

 やはりクラッシャー軍団の時のように、説得に成功したケースの方が稀と言う事だな。彼らの事は地獄の閻魔大王とベジータ王に任せよう。……もしかしたらあの世との交流試合でまた会えるかもしれんな。

 それに、サンプルはスパイロボットのお陰で入手出来ているので問題ない。

 

 それに、幸いカクージャの気も健在だ。死んでしまったら、返事を聞くのが手間になるからな。スラッグを倒した後でまた連絡を取ってみよう。

「さて、それでボールは……ん? 反応なしじゃと?」

 

 ブルマから借りたドラゴンレーダーを作動させるが、画面に反応はなかった。ドラゴンレーダーは地球以外でも性能に変化はない。そして、ドラゴンボールは地球の物以外でも……たとえナメック星と同等の大きさのスーパードラゴンボールであっても、同じ特殊な電波を発している。

 

 それがレーダーに反応しないとなると考えられる可能性は二つ。しかし、スラッグ一味はボールの位置を特定できるレーダーが存在する事は知らないはず。レーダーを警戒して、ボールが発する特殊な電波を遮断する容器を発明する動機はないはずだ。

 

 なら、答えは一つだ。

『ネイル、ドラゴンボールはスラッグの体内だ!』

 グルメス王のような例外を除いて、ドラゴンボールの発する電波は生命体に遮られてしまう。そして、ナメック星人は体内に物を飲み込んで確保する事が出来る。

 

『なんだとっ!? よく入ったな。……いや、ナメック星のボールより小さいのか』

『ブリーフ達が手に入れたデータによると、地球のボールよりは大きいがナメック星のボールよりは小さいようじゃ。それはともかく、倒すときは気を付けてくれ』

 

 追い詰められたスラッグが、体内のドラゴンボールを使って神龍を呼び出して願いを叶えようとするかもしれないからな。

 

『分かった』

「界王拳、5倍!」

 界王拳の倍率を上げたネイルの体から吹き上がるオーラの勢いが増し、彼の気がスラッグを上回る。

 

『なんだと!? ぐぼぁっ!?』

 儂の肉眼では追い切れない速さに至ったネイルの体当たりがスラッグの腹に炸裂する。ボディーブローを受けたように体をくの字に折り曲げる彼の口から、オレンジ色の球体が覗いていた。

 

『ぐっ! おのれ、小癪な!』

「やはりドラゴンボールは貴様の体内にあるようだな。はあっ!」

 口から飛び出しかけたドラゴンボールを慌てて飲み込んだスラッグの顎を、ネイルが再び体当たりで殴る。

 

「魔口弾!」

 そして仰け反ったスラッグの上半身に向かって、気弾を連射する。

『おのれぇっ!』

 堪らず左腕で自身を守りながら、大きく振った右腕から複数の気弾を放つ。ネイルを牽制し体勢を立て直す隙を作る事を狙ったものだろう。

 

 しかし、ネイルは溜めも狙いもいい加減なスラッグの気弾を苦も無く回避する。

『ワハハノ波!』

 そして、星に被害を与えそうな流れ弾はアカが撃ち落とした。

 

『気の収束が碌に出来てねぇ! この程度なら、本当に俺でも倒せたかもな!』

「巨大化する前なら、ほぼ確実に勝てたでしょう。ドクター、地球はどうでしたか?」

 スラッグ一味の幹部を倒した4号達が儂の近くに集まって来た。

 

「三位決定戦はトーマの勝利じゃった。それと、二人は婚約したぞ。結婚を前提にした交際を始めるそうじゃ」

「やっとか~。セリパが中々素直にならないからちょっと心配だったんだけど……え? もしかして試合中に告白したの?」

「あんな大勢の前で告白なんて、大胆だべな。帰ったらお祝いしねぇと!」

 

 儂等がそう呑気に話していると、ネイルに吹っ飛ばされて仰向けに倒れたスラッグの口元に小さな影が出現した。すると、スラッグはその影……メダマッチャの分身をなんと口に入れるとそのまま飲み込んでしまった。

『フハハハっ! 妙な技を使うようだが、これで俺の勝ちだ!』

 その瞬間、スラッグの気が爆発的に高まった。どうやら、メダマッチャの分身は神精樹の実を持っていたらしい。……だとしても、亡き部下の分身ごと食ったのには驚かされたが。

 

 メダマッチャの忠誠心と献身に感心するべきか、スラッグの行動に引くべきか。実はシャメルがメダマッチャの分身を強化していた事を知らなかった当時の儂は、とりあえず前者にしておいた。

 

『叩き潰してやる!』

 立ち上がると同時にスラッグは拳を振るい、とっさに下がって避けたネイルに向かって口から気弾を吐き出す。

「界王拳、10倍!」

 しかし、ネイルはすぐに界王拳の倍率を上げてスラッグのパワーアップに対応する。戦いはすぐに決着を迎えそうだった。

 

 

 

 

 

 

 スラッグ星で激戦が繰り広げられている頃、天下一武道会でも決勝戦が始まろうとしていた。

「おい、初めから全力で来い。ちんたらやるつもりなら、観客の前で無様を晒す事になるぞ」

「ご忠告痛み入るねぇ。せいぜい善戦させてもらうさ」

 睨み合うベジータ王子とターレスだが、ベジータ王子には余裕があるがターレスはプレッシャーを感じていた。

 

『天下に武名を轟かせるのは前回大会準優勝者のターレス選手か、それとも初出場ながらここまで勝ち上がってきたベジータ選手か!? ともに地球を救った英雄同士、歴史に残る一戦が始まります! 皆さん、心の準備は宜しいですか!?

 では……試合開始!』

 

 アナウンサーが試合開始を宣言すると同時に、二人はスーパーサイヤ人になると激しいぶつかり合いを始めた。

「どうした? それが全力か!?」

「チッ、たった一日でスーパーサイヤ人に慣れちまいやがって。俺が自由に変身できるようになるまで、どれだけかかったと思ってやがる!」

 

 しかし、やはりターレスは劣勢を強いられていた。同じスーパーサイヤ人でもあまりに地力が違い過ぎるのだ。

 戦闘力39万5千のターレスはスーパーサイヤ人になった事で、戦闘力1975万になった。しかし、ベジータ王子の戦闘力は146万から7300万に上昇している。ターレスの三倍以上だ。

 

「当り前だ! 俺はサイヤ人のプリンスだぞ!」

 そう言ってベジータ王子が繰り出す拳一発でも、ターレスはまともにくらう訳にはいかない。気を抜けばすぐにやられてしまう。その緊張感が……スリルとなって戦闘民族サイヤ人の本能を刺激した。

 

「知ってるさ。だが、素直に負けてやるつもりはないぜ! 俺もクラッシャー軍団のボスらしいからな!」

「っ!? 止めろっ、貴様死ぬつもりか!?」

 ターレスが力んだのを見て、ベジータ王子は最初界王拳を使うつもりかと肝を冷やした。スーパーサイヤ人のまま界王拳を使えば、抑えが利かず危険な段階まで気を放出して死んでしまうと思ったからだ。

 

 しかし、ターレスも試合で自爆になりかねない技を使うつもりはなかった。

「プラズマブースト! はっ!」

 ターレスの体から赤いオーラではなくスパークが放たれ、動きが加速したようにベジータ王子には見えた。

 

「心配ありがとよ、だがこの技で死ぬ事はないから安心しなっ!」

 いや、実際にターレスの動きは加速していた。プラズマブーストで神経と筋肉を刺激し、身体能力を通常の倍に……戦闘力3950万相当にまでたかめている。これで、ターレスは肉弾戦ではベジータ王子の戦闘力の半分以上の強さで戦う事が出来る。

 

「フンッ! だからどうした? たしかに驚かされたが、もうお前の動きに目が慣れて来たぜ!」

 ただ、所詮は半分以上六割以下。ベジータ王子はすぐにターレスの倍増したスピードに対応すると、彼の拳を弾き強力な蹴りを放った。

 

「ぐっ!?」

「それに、こうして離れてしまえば意味もないっ!」

 蹴りを受けて後ろに下がったターレスに向かって、ベジータ王子はさらに気弾を放って追撃を行う。プラズマブーストで倍増できるのは身体能力のみであるため、気弾や気功波の威力は上がらないのだ。

 

 そして、そうなればターレスが次にどう出るか。ベジータ王子は持ち前のセンスによって読んでいた。

(奴は瞬間移動で俺の背後を取り、不意を打とうとするはず。その時、逆にカウンターを入れて俺が勝つ!)

 気弾の爆発によって生じた爆発の中居るターレスの気をしっかりと捕捉して、ベジータ王子はその時を待った。

 

「はあああ……!」

 煙の中からターレスの声がすると同時に、彼の気が高まり両手に収束していくのが分かる。ベジータ王子も身構えながら片手に気を収束させ、いつでも背後を振り返れるように意識した。

 そして、ターレスの気が一瞬消えた。

 

「っ!? なんだと!?」

 反射的に身を翻したベジータ王子は、そこにターレスの姿が無く、彼の気が別の場所にある事に驚愕して声を上げた。

 

「技を借りるぜ、ナム!」

 ターレスが瞬間移動したのは、ベジータ王子の背後ではなく真上だった。上下さかさまになった彼はフォトンシールドを発生させ、両腕をX型に交差させる。

 

「天空×字拳!」

 プラズマブーストで身体能力が倍増した脚でシールドを蹴り、気を纏った両腕でベジータ王子の真上から仕掛けた。

 

「くっ、お、おのれぇぇぇ!」

 ベジータ王子も、一瞬反応が遅れたがすぐに気を収束させた手を掲げ、ターレスの天空×字拳を受け止めた。

 上下で拮抗する二人。

 

「ギャ……ギャリック砲!」

 しかし、ターレスが押し切る前に、ベジータ王子が翳した腕から放ったギャリック砲がターレスを押し返した。不意打ちに対応されてしまった時点で実は彼の敗色は濃厚だったのだ。

 

「くっ、まだまだ――」

「させるかーっ!」

 消耗しながらも体勢を立て直そうとするターレスに向かって、ベジータ王子は小気弾の乱れ撃ちを放つ。溜めや狙いをつける時間を惜しみ、数でターレスの体力を削り切る作戦だ。

 

「チッ、チクショウがーっ!」

 なりふり構わない攻撃によって、ターレスは体力を回復する間もなく爆発に飲み込まれてしまった。そして、舞台に落ちてきた時には変身やプラズマブーストは解け、意識はあるが消耗とダメージで動けない様子だった。

 

『カウントを取ります! ワーン! ツー!』

 アナウンサーがカウントを取る声が響き、ターレスも何とか立ち上がろうとしているようだが身を起こせないようだ。

 

「これはベジータ王子の勝ちだな」

「初優勝の表彰式で婚約発表出来なくて残念ね~」

「それは姉さんもターレス義兄さんも気にしないんじゃない? ベジータ王子がスーパーサイヤ人に目覚めなくても、トーマさんやバイオレット大佐が優勝する場合も十分あったし。それより、無茶しすぎなのが気になるわね」

 

 スラッグの宇宙船のデータをあらかた吸出しコピーし終えたブリーフ夫妻がブルマとそう言葉を交わす。三人とも「残念だけど次があるし、ベジータ王子の初優勝もそれはそれでめでたい」と言う態度だ。

「そんなに無茶をしているのかね?」

「ええ、瀕死って程じゃないけどかなり消耗してる。ヨン兄さんが帰ってきたら回復してもらった方がいいわね」

 

「貴様等、何を呑気な……まだスラッグ一味を倒したわけじゃないんだぞ! ハッチャン、貴様も何か言ってやれ!」

「う、うん……」

 スラッグ星と地球の通信を補助し、サイバー攻撃を手伝っている人造人間8号はピラフ大王にそう促されているが、何か気になる事があるのか落ち着かなさそうに周囲を見回している。

 

(セキュリティシステムに反応無し。何度確かめても、システムに侵入されたり、書き換えられたりした様子もない。でも、何かおかしい。……ん? 俺のセンサーに妙な反応がある。なんだ、これ?)

 

 一方、隣のボックス席で応援していた悟空はハッとして背後を振り返った。

「ターレスも惜しかったな。まあ、一回戦敗退の俺が言うのもなんだけど。どうした、悟空?」

「クリリン……」

 

「ああ、クリリンさん、とうとう決勝戦が終わるまで帰ってこなかっただな」

「ラズリを迎えに行くって出て行ったままか。まさかあいつら、二人で抜け出したんじゃないだろうな?」

 チチとラピスがふと気が付いてそう言うが、悟空は二人の方を見ないまま何処か呆然とした様子で呟いた。

 

「クリリンの……気が消えた」

「なんだって!?」

 驚いたヤムチャ達が咄嗟にクリリンや彼と一緒にいるはずのラズリの気を探るが、ラズリの気はあるがクリリンの気を見つける事が出来ない。

 

「っ! クリリンっ!」

「俺達も行くぞ!」

「待てっ、儂も行く! 天津飯っ、お前はチューボにこの事を伝えろっ! 国王陛下とレッド将軍の警護隊にも警戒を促せ!」

 

 桃白白は、飛び出していった悟空達の後を追った。アナウンサーのカウントは、ファイブにまで進んでいた。

 

「なんだ、何かあったのか?」

「妙な空気だね」

「スカウターやテレパシーでの連絡はまだ入っていないけど、ちょっと確認してみる?」

 選手控室で観戦していたトーマとセリパ、そして五位決定戦に出場していたタイツ達がそう話しているが、まだクリリンの気が途絶えた事には気が付いていない。

 

 そしてアナウンサーがテンカウントを終えた。

『ベジータ選手の勝利です! 第26回天下一武道会の優勝者はベジータ選手です!』

「クソッ、今回も準優勝かよ」

「フンッ、俺がナンバーワンになって当然だ」

 

 悔し気に舞台を叩くターレスに、変身を解いて彼に歩み寄るベジータ王子。

「いつまで地面に伏せているつもりだ。さっさと立ちやがれ!」

 そして、ターレスに向かって手を差し伸べた。彼の手を見て目を丸くしたターレスは、悔しさも忘れた様子でその手を取った。

 

「わ、悪いな」

 その時、場外に緑色の手が出現し、その手の上に小型の円盤状の光が発生する。同じ光がボックス席、そして選手控室にも現れる。

 

「ナンバーツーの貴様が無様な真似をすると、ナンバーワンの俺のプライドに関わるというだけだ!」

 そして、円盤状の光……普通の皿程度の大きさの気円斬がそれぞれのターゲットに向けて放たれた。

 




〇戦闘力推移

ネイル:290万 → 350万 20倍界王拳を使った場合は7千万。最終形態のフリーザをやや上回るが、フルパワー形態(1憶2千万)には及ばない。

バーダック:8億6900万 → 9億5700万 スーパーサイヤ人1で47億8500万、2で95億6千万、アルティメットで382億8千万。



〇スラッグ

 原作劇場版「スーパーサイヤ人だ孫悟空」に登場した強敵。ナメック星人の突然変異体で、悪の心しかなく戦士タイプと龍族の力を併せ持つスーパーナメック星人。
 幼い頃スラッグ星の神になるためにナメック星から旅立ったが、その力を持って銀河を征服する野望に目覚めてしまった。

 ナメック星人だがいつの間にか太陽が弱点になるなど体質が変化し、いつの頃か故郷の記憶や自身のルーツも忘れてしまったらしく、原作劇場版では地球に来るまでドラゴンボールの事も忘れていた。
 かなり短気な性格で、失言や口答え、期待に応えられない部下は幹部であっても挽回のチャンスを与えず容赦なく処刑してしまう。

 その戦闘力は、老体で155万。若返っても200万を超えるかは微妙なところで、フリーザと比べると桁が一つ小さい。
 必殺技はビックスマッシャーや、ゲームではエビルツイスターと言う技を使う。また、巨大化した姿を「真の姿」と評している。

 また、ゼノバース2でプレイヤーキャラの師匠に選ぶと、プレイヤーキャラに対してちょっとデレてくれる。自分の事を「一度歳を取って甘くなったか」と言いつつも、プレイヤーキャラに対して「唯一認めた人間」と評して自分の右腕に誘う。

 この作品では神精樹の実を食べ続けた事と若返った事で、520万にまで戦闘力が上昇している。巨大化すると力のみ1040万相当。
 また、スラッグ星で育った神精樹の実を食べた事で素の戦闘力は1560万、巨大化で力のみ3120万になった。



 マヤリス様、ダイ⑨様、ノリの人様、nou様、PY様、くるま様、佐藤東沙様、Paradisaea様、リースティア様、ヴァイト様、麦茶太郎様、秋人様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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