ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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136話 スラッグの消失

「くらいやがれーっ!」

 大猿化したバーダックが繰り出した拳を、シャメルは大剣で受け止めた。

「くっ、大猿がただの猿になった程度で調子に乗るなよ」

 だが、衝撃を受け止め切れず大きく後ろに下がった。苛立ちを露わにするシャメルに、スーパーサイヤ人となった未来トランクスが追撃を仕掛けてバーダックへの反撃を妨害する。

 

 その間に、バーダックは素早く移動してシャメルに隙が出来るのを待つ。彼の上には小さな満月が輝いており、手首には腕時計のような物が嵌められていた。

「そのただの猿にずいぶん苦戦してるじゃねぇか。魔神の名が泣くぜ」

 そして、牙を剥きだしにして笑うバーダックの大きさは、変身する前とほとんど変わっていなかった。

 

「それにしても大した発明品だぜ。帰ったら礼を言わねぇとな」

 バーダックが持って来た秘密兵器とは、ゲロが発明した大猿化後も理性を保つことができる薬剤に、ピラフ大王が発明した人工満月、そしてブルマの発明したミクロバンドだった。

 

 人工満月とは、火星のテラフォーミング事業で火星の地軸を安定させるための人工の月を開発した際、それからブルーツ波が出ている事に気が付いたピラフ大王が、「パワーボール代わりに使えるかもしれん」と開発したものだ。

 ホイポイカプセルから戻すと自動で宇宙空間まで飛んで、太陽の光を受けて地上に向けてブルーツ波を照射する。多くの場合回収できず使い捨てになるので経済的な問題があるが、パワーボールと違って体力を消費せず使えるので戦闘面では優れている。

 

 それで薬剤を事前に打っていたバーダックは大猿になると同時に、ミクロバンドを使う事で大きさを変身前とほぼ同じサイズに保つことに成功した。

 それだけなら、トーマ達がしていたように変身しない大猿化と同じだと思うかもしれないが……ミクロバンドは体を小さくしても、弱くならないという大きな利点があった。

 

 力も、頑強さも、そしてもちろん気も小さくならない。そのため、バーダックは大猿化によって倍増した力を、人間大の時と同様の素早さと小回りで振るう事が出来るのだ。しかも、老界王神による潜在能力の解放によって至ったアルティメット化はスーパーサイヤ人と違って体に大きな負担をかけず、体力の消費も抑えられる。

 

 今のバーダックの普段の戦闘力は9億5700万。アルティメット化で3835億。そしてアルティメット大猿化で3兆8350億、そして力だけなら7兆6700億相当。まだまだシャメルの相手を一人でするのはきついが、未来予知能力を活用しながら未来トランクスと連携すれば援護以上の役割を果たす事が可能になった。

 

「一人じゃ俺達の相手をするのが辛くなって来たんじゃないのか? 助けを呼んでもいいんだぞ!」

「ドミグラ様やロベルに会いたいのか? 同盟についての話なら、今からでも俺が聞いてやる」

「お前達とは組まないと言ったはずだ!」

 

 しかし、タイムパトロール側が優勢とも言い切れない。シャメルと剣で打ちあう未来トランクスだが、攻めきれずにいた。戦況は未来トランクスとバーダックが互いに反撃に転じようとするシャメルを妨害して、やっと互角の状態を維持している気が抜けない状況だ。

 

「そうか。口がきける内に話した方が利口だと思うがな」

「そうだな。降参するなら今の内だぜ!」

「お前の動きにはもう慣れた」

 シャメルの側面からバーダックが殴りかかったが、シャメルは未来トランクスの剣を弾いた反動を利用して下がって回避した……かと思われた。

 

「甘いぜ!」

 なんと、バーダックはシャメルの足首に尻尾を巻きつけていた。動きが止まった彼の頬に裏拳を叩き込み、体勢を崩した隙に、口から吐き出した気功波を浴びせる。

 

「ぐっ! ……どうやらお前達を舐め過ぎていたようだ。もう少し本気を出してやる!」

 爆発から抜け出したシャメルは、大剣を構え直すと再びバーダックと未来トランクスに向かって切りかかった。

 

 

 

 

 

 

 結界によって隔てられた空の上で激しい戦いが繰り広げられている頃、この儂、天才科学者であるドクター・ゲロはネイルとスラッグの戦いを見守っていた。

 巨大化したスラッグとネイルの戦いは、今も続いている。巨石のようなスラッグの拳がネイルに向かって振り下ろされ、スラッグ星の大地を穿つ。

 

「勝負はついたな」

 しかし、儂がそう言っても異を唱える者がいない程戦況はネイルに傾いていた。

『この俺こそが宇宙最強なのだ! 貴様のような若造に、負けるはずがない!』

 まだ青かったとはいえ神精樹の実を食べた事でスラッグの戦闘力は520万から三倍の1560万にまで上昇した。特に、巨大化した事で力は3120万相当になっている。

 

「上には上がいるものだ、この宇宙は貴様が思っているより広い!」

 しかし、スラッグの勘違いを指摘しながらも容赦なく彼の顎を蹴り上げるネイルは、10倍界王拳を発動して戦闘力を350万から3500万にまで高めている。

 

 さらに、ネイルは技量でもスラッグを上回っていた。若い頃から強大な力を持っていたため格下ばかり相手にしていただろうスラッグに対して、修行を欠かさなかったネイルが技で勝るのは当然の事だ。

「しかし、歴史改変者の横槍がありませんね」

「きっと、会長さんがいるから諦めたんだべ」

 

 4号が言うように、歴史改変者ならキリでスラッグを強化する事で戦況をひっくり返す事が出来る。ネイルが界王拳の倍率を10倍に留めているのもそれを警戒して余力を残しているからだ。

 儂等もただ観戦している訳ではなく、彼等が戦っている間に魔術妨害用のドローンをこっそり配置して歴史改変者が干渉してきた場合に備えている。

 

 歴史改変者……スラッグ達の口からロベルの名が出た事から、今回はドミグラ一味だろう……は、それを見て手出しを止めた可能性は確かにある。スラッグがここでネイルに負けて封印されても、十分歴史改変にはなるだろうからな。

 

「しかし、違和感があるな。ドミグラ一味が今回の一件にかけた労力と釣り合っていない気がする。まだ何か……っ?」

 その時、儂は妙な胸騒ぎを覚えて地球がある方に振り返った。そして感覚を研ぎ澄まして気を探る。

 

「どうした、皆に何かあったのかい?」

「詳細は分からん。だが、悟空達の気の大きさが数十倍になっている。それに、覚えのない巨大な気が複数現れた。それと……」

 ターレスの気が弱々しく、クリリンは気が全く感じられない。気を消しているだけかもしれないが、どうにも嫌な予感がする。

 

「ブリーフ、ピラフ大王、何かあったのか?」

 スカウターで呼びかけたが、返って来たのはノイズだけだ。どうやら何者かに妨害されているようだ。魔術によるものなら、スカウターが魔力を検知して反応するはず。と言う事は……。

 

「コーチンにしてやられたようだな」

 地球に居る科学者でスカウターの通信を妨害するような真似ができるのは、コーチンぐらいだ。

「4号、ここは儂とネイルに任せてギネ達を連れて地球に戻ってくれ」

 儂と4号の何方かがここに残らないと、ネイルがスラッグ星に取り残されてしまう。そして、地球で非常事態が起きているのなら、儂よりも界王拳を習得しており治癒能力も持つ4号の方が役に立つ。

 

「分かりました。テレパシーで連絡します」

 儂が言いたい事を察し、4号は精神集中を始め、ギネ達は素早く彼に掴まる。そして姿が消えた。

「痛っ!?」

「なんだ!?」

 そして、スラッグ星の空に現れた。何かに衝突したようにギネやアボが声を上げている。

 

「ドクター、結界か何かで妨害されています!」

「魔術か。儂のスカウターに検知されずに結界を張るとは見事じゃが、実に厄介な!」

 試しに空に向かって気弾を放ってみるが、気弾は結界に阻まれる事なく雲より高く昇って行った。どうやら、結界は通常空間には張られておらず、瞬間移動で通る空間……仮に亜空間とする……亜空間にのみ張られているらしい。

 

「よ、よし、一旦宇宙船に乗ってスラッグ星を離れてから地球に瞬間移動しようぜ!」

「カド、良いアイディアだがここまで儂らの帰還を妨害している歴史改変者が、宇宙船の離陸を見逃すとは思えん。ここは地球に残っている皆を信じて機会を待とう」

 

 儂等が分断された時のために、地球側には十分な戦力を残して来た。仙豆の備蓄も十分だし、龍族のナメック星人ツムーリも来てくれている。

 今は危険を冒して無理をするよりも、状況の変化に備えた方が得策だと儂は判断した。

 

「……そうだね。悟空達の気が大きくなってるなら、もしかしたらスーパーサイヤ人になっているかもしれないしね!」

「だったら、地球で何が起きていても安心だべな。きっと、皆金髪になって悪者をけちょんけちょんにしてるべ」

 

 ギネとサンも、子供達が心配なのを隠してそう納得してくれた。まだ一歳になっていないラニはラディッツが、そして四歳になるスイとモウは牛魔王が子守をしているはずだが、今のところ気は健在だ。

 

『ぬおおおおっ!』

 儂等が話している間に、ネイルとスラッグの戦いは決着が着きつつあった。スラッグが伸ばした腕を、ネイルの手刀が断ち切ったのだ。

 

 もちろんスラッグはナメック星人の再生力を活かして直ぐに新たな腕を生やそうとするが、その前にネイルが気功波を放った。

「アサルトフラッシュ!」

 それをまともに受けたスラッグは、地鳴りのように太い悲鳴を上げて仰向けに倒れる。

 

『ぐ、ぐうぅっ!』

 再生させた腕で立ち上がろうと足掻くスラッグだったが、思うように体が動かないようだ。神精樹の実を繰り返し喰らってきた事で生命力が増加しているはずだが、それも尽きるほどダメージが蓄積しているらしい。

 

 ……もしかして、ドラゴンボールで若さを取り戻しても不老不死までは願っていないのだろうか?

 

「どうやらこれで終わりのようだな」

『ま、待てっ! 俺を殺すより、手を組まないか!? 俺と貴様が手を組めば、フリーザを倒しこの宇宙の支配者になる事も容易いのだぞ!』

 とっさにそう命乞いをするスラッグだったが、当然ネイルは取り合わない。

 

「思い上がるな、上には上がいると言ったはずだぞ。そして、私の言葉を聞かない貴様と手を取り合う事は出来ない。だが、殺しはしない、ひとまず封印する!」

 そして魔封波の構えを取るネイル。体力を消費し気が小さくなっている今のスラッグなら、魔封波を仕掛けても彼が体力を使い果たして死ぬ事はないだろう。

 

「失礼、邪魔をさせてもらいます」

 だが、その時ネイルとスラッグの間に長い髪の女魔神、ロベルが現れた。

 

「貴様!?」

「ミスタースラッグが封印されてから盗み出しても良かったのですが……それもそれで手間ですので」

 驚くスラッグを背にロベルはそう言うと、何故かネイルではなく儂を睨みつけた。よく見ると、目の下に隈が出来ているような気がする。もしかして、サイバー攻撃の恨みか?

 

『ようやく出てきやがったな!』

『こいつはオ……オレ達が相手をするから、皆は気にしないでくれ!』

『貴様はしゃべるなと言ったはずだ!』

 

 だが、そのロベルの前に更に二人の謎の人物が現れた。頭にグレートサイヤマンのヘルメットを被っているから顔は見えないが……変装している他の歴史のベジータと悟空だろう。

「だ、誰だ!?」

「ネイル、その二人はタイムパトロールの隊員じゃ。言われた通りにしてやってくれ」

 

 儂がそう言っている間に、変装したベジータと悟空はロベルと戦いながらこの場から離れていく。だが、ロベルは囮だったようだ。

 ネイルが再び魔封波の構えを取ると、スラッグの姿が忽然と消えてしまったのだ。おそらく、まだ姿を見せていないドミグラの仕業だろう。

 

「消えたっ!? 逃げたのか?」

「スラッグの気が地球に移動している。地球で起きている事態にピッコロ大魔王が関わっているなら……不味いな。今なら結界も解けているかもしれん。儂等も地球に行くぞ!」

 

 儂等はカクージャ達僅かな生き残りだけが残るスラッグ星を後にして、瞬間移動で地球に帰還した。

 

 

 

 

 

 

 ピッコロ大魔王とベジータの戦いが始まる数秒前、ターレスは狙い通り医務室に居るツムーリの前に瞬間移動する事に成功した。

「ターレス! 待っていろ、すぐに治してやるぞ!」

「わ、悪いな。タイツの近くに妙な気を感じた。手早く頼むぜ」

 瀕死のターレスに手をかざし、傷を治し体力を回復させようとしたツムーリだったが、事態の悪化が続く。

 

「これは……邪悪な気が増大した。ターレス、お前の治療に時間をかけている余裕はないようだ。これを食え」

 ナメック星人の治療には数分かかるため、それを惜しんだツムーリは預かっていた仙豆をターレスに食わせた。

「っ! ふうっ、助かったぜ」

 痕も残さず傷が癒え、気力も体力もベストな状態に戻る。さらに、瀕死から回復した事でサイヤ人の本能が刺激されたのだろう。大幅に気が上昇する。

 

「残りの仙豆も持って行け」

「いいのか?」

「ああ、預かっている仙豆はまだある。同胞を止めて来てくれ」

 ツムーリが投げ渡して来た仙豆が入った袋を受け取ったターレスは、「助かるぜ」と言って再び瞬間移動をしようとした。

 

「これは……へへっ、こいつは参ったな。そんなに急ぐ必要はなかったようだぜ」

 その時、再び巨大な気が複数出現した。だが、それは気配に覚えがない邪悪な気ではなくターレスがよく知る者達の気だった。

 

 そして、ひとまず苦戦していそうな相手の所に瞬間移動した。

 

 

 

 強力な戦士達が同時に複数の場所で戦い、観客や職員が避難を開始した天下一武道会では混乱が深まりかねない事態が起きていた。

『人間を攻撃! 人間を攻撃!』

 無機質な合成音声でそう繰り返しながら、小柄なロボットが何体も現れて避難している途中の人々に攻撃を仕掛けたのだ。

 

「うわっ!? なんだ、こいつら!?」

「ま、まさかドクター・フラッペのロボット!?」

「いや、フラッペは宇宙人のロボットで、もう破壊されたんじゃ……?」

 

「皆さんっ、急いで退避してください!」

「ここは俺達の出番だ! 行くぞっ!」

 GCGの隊員達のチームを率いている天龍の弟、豹牙昇龍が観客とロボット達の間に立つ。

 

『人間を攻撃!』

 小柄なロボットと巨漢の昇龍、どちらが強そうかは明らかだった。しかし小柄なロボットは昇龍を上回るスピードで動き、見た目からは想像できない力で彼の頬に金属の拳を叩き込んだ。

 

「ぐおっ!? こ、こいつ、強いっ! お前らは観客の避難を優先しろ、こいつらの相手が出来るのは俺以上の実力者だけだ!」

 昇龍は自身が受けた一撃からロボット達の強さを悟り、部下を下がらせた。

 

「いいぞっ! ロボットマン達よ、愚かな人間共を攻撃し、恐怖と混乱をもたらすのだ!」

 その小型ロボット達に搭載しているカメラから事態を見ていたコーチンは、天下一武道会の会場の屋根の上で高笑いを上げていた。近くには、空になったコンテナが置かれている。

 

 小柄なロボット達の正体は、コーチンが開発した完全機械製の量産型狂暴戦士、名付けてロボットマンだった。

 ピッコロ大魔王が魔神精樹の実を食って増幅した神力によって創造した物資を使い、バイオマンを基に開発した存在で、完全な機械であるため気が全くない。さらに、機械だからホイポイカプセルにして持ち込む事も可能。

 

 開発のための時間が無かったため、強さはバイオマンと同じ戦闘力1千相当。装甲にドクター・ウィローのサイボーグボディと同じ合金を使っているので、頑丈さだけはあるがその重さのせいで活動可能時間は十分しかない。

 とはいえ、一般人や並みのGCGの隊員を狙って攪乱するには十分な強さだし、十分もあれば結果はともかく作戦は終わっている。

 

 急ごしらえにしては十分だ。

 

「くっ! こいつらなんて硬さだ。俺のどどん波も豹牙流拳法も通じない! せめてスカウターが通じたら応援を呼ぶ事も出来るのに。す、すまない、後を頼んだぞ、兄者!」

 こうなったら捨て身で組み付いて部下と観客が逃げる時間を稼ぐしかない。覚悟を決めた昇龍が走り出そうとしたその時、ロボットマンの背後に前触れもなく人影が現れた。

 

「機械の目も我が幻星拳を見破る事は出来ん」

 現れたのは、陳大拳だった。彼は振り返ろうとしたロボットマンに背後から手を回し組み付いた。

『ギッ!?』

 そして、関節部分を捻る。容赦のないサブミッションを受けたロボットマンから鈍い破壊音が響き、バチバチとエネルギーがショートして火花を散らす。

 

「す、すげぇ」

 自身が勝てなかった相手を苦もせず破壊した大拳を唖然とした様子で見つめる昇龍。

「昇龍、こいつらの体は硬く重いが、力そのものはそれほどでもない。組み付いて関節を捻るか、指をねじ込んで気功波を放てば内部を破壊できる。

 息子達の避難が終わるまで、協力させてもらうぞ」

 

「……おうっ! ロボットくらい俺達で対処しないとな!」

 そして立ち直った昇龍は、大拳と共に避難を妨害する他のロボットマンを倒すために駆け出した。

「まさかあの程度の雑魚に破壊されるとは。だが、まだまだロボットマンはいる!」

 それを察知したコーチンが舌打ちをするが、すぐに気を取り直して他のロボットマン達に攻撃を指示した。

 

 しかし、天下一武道会の会場にもまだまだ手練れの戦士達がいる。

「ただいまっ!」

「お嬢っ! 社長達は!?」

 ブリーフ博士達を連れて瞬間移動で避難したブルマが、チューボの気を目印に戻ってきたのだ。

 

「パパ達はキングキャッスルに置いて来たわ。やっぱりとんでもない事になってるわね。って、孫君やチチちゃんが凄い事になってるじゃない!?」

「あれってスーパーサイヤ人? これはあたし達も頑張らないとね、行くわよ、ブルー大佐」

「フンッ、そうでなきゃ国王様の期待を裏切る事になるものね。やれることはやってやるわよ」

 

 ブルマもただ戻ってきたわけでは無い。キングキャッスルで国王やレッド将軍の警護に当たっていたバイオレット大佐とブルー大佐を連れてきたのだ。

「ほんの少し前までクーデターを企てていたのに、我ながら随分立場が変わったものね」

「お爺ちゃん達は?」

 ブルー大佐の感傷を聞き流してブルマがチューボに確認するが、彼は首を横に振った。むしろ、キングキャッスルからでも連絡がつかなかった事に驚いている様子だ。

 

「そう、ならあたしがテレパシーで通信機の代わりをするから、バイオレット大佐はベジータの援護に行って、ブルーは避難と救助の手伝いをよろしく!」

「イエス、マム」

「ブルー大佐、北通路に向かってくれ!」

「了解よ」

 

 戦闘形態に変身してバリアーの内側に飛んでいくバイオレット大佐と、GCGの指揮を執っているチューボの指示に従って駆け出すブルー大佐。そして、ブルマは精神を研ぎ澄ませてテレパシーでこの場に居ないGCGの隊員を含めた主だった戦士達に呼びかけた。

 

『皆、聞こえる? あたしよ、ブルマ。今からあたしがテレパシーでスカウターの代わりに皆の通信を繋ぐから、言いたい事があったら頭の中で強く思い浮かべなさい! あたしが読み取って伝えるから!』

 

『ブルマ殿。 ナムです、会場には魔族以外にも妙なロボットが観客を狙って暴れています!』

『奴ら強い! 私では硬くて歯が立たない、助けてくれ!』

『分かった、今向かうでっせい!』

『陳大拳だ。力と速さは私と互角程度。組み付いて関節の隙間を狙えば倒せるはずだ』

 その瞬間、コーチンによって通信手段を妨害されていた戦士達の情報が共有され一気に動き出した。

 

「早く助けてくれ~っ!」

 しかし、ブルマがテレパシーで繋ぎ忘れた者がいた。正確には、彼にテレパシーを繋ぐ必要があると認識していなかったのだが。

 

「誰か~っ! 助けて~っ! 死にたくないよ~っ!」

 二体のロボットマンに攻撃されているのは、通路を塞ぐ金属の壁だった。侵入者を防ぐ隔壁のようにも見えるが……隔壁は泣きわめいて助けを求めている。

 

『なんだ、こいつっ!?』

『硬すぎる!』

 しかし、ロボットマンの特殊合金製アームで何度殴っても、壁に傷一つ付ける事が出来なかった。逆に、いくら殴っても元気に泣きわめき続ける壁に、ロボットマン達の無感情なはずの機械の顔に困惑が浮かぶ。

 

 その背後に、忍び寄る二つの影。

「今だっ!」

 金属棒を構えたボンゴとパスタだ。二人は背後への注意が疎かになっていたロボットマンに襲い掛かると、それぞれ足を払って倒し、首や腰の関節部分に金属棒を突き入れた。そして内部を破壊して機能停止に追い込む。

 

「た、助かった~」

 それを見ていた金属壁……ウーロンは変身を解くと、安堵のあまり地面に座り込んだ。その後ろには、GCGの隊員が数人倒れていた。

 ウーロンが逃げ出さずにカッチン鋼の板に化けて通路を塞いでロボットマン達の足止めをしていたのは、失神している隊員達を守るためだったのだ。

 

「まさかお前が命がけで人を守ろうとするとはな、すっかり良い子になったじゃないか」

「お前らだってすっかり警備員が板について来てるじゃないか。礼は言わねぇけど、これで昔の恨みは忘れてやるぜ!」

「恨みって……昔はあんたも悪党だったじゃないか。それと、あたし達は警備員じゃなくて軍人だよ」

 

 ほんの数年前までグルメス王国を荒廃させた悪党だったボンゴとパスタ。二人が部下達と受けたドラゴンボール探しの任務の過程で退治された村々を荒らしまわっていた悪党のウーロン。

 しかし今は王立国防軍レッドリボン旅団所属の軍人に、変身能力を活かした俳優、昔とはすっかり立場が変わっていた。

 

「う、ううっ」

 その時、失神しているGCGの隊員の一人から、小さな呻き声が聞こえた。ヘルメット越しでややくぐもっていたが……。

「もしかして、そいつ女か? ボディースーツのせいで外見じゃわからなかったが……」

「じゃ、じゃあ俺はこの娘達を医務室に運ぶから、後は任せたぜ! 魔法の絨毯に変化!」

 

 ウーロンはボンゴに答えず、魔法の絨毯に化けるとGCGの隊員達の下に潜りこんで彼女達を乗せて、慌てた様子で運んで行った。

「……思ったよりも変わっちゃいなかったね」

「そうだな。よし、他に行くぞ。魔族連中に当たらないよう気をつけながら手柄をあげるんだ」

「そうだね、上司の目もあるし」

 

 ボンゴとパスタがさらに二体倒したが、コーチンが放ったロボットマンはまだまだ暴れていた。

「こいつら俺達を無視して観客や怪我人ばかり狙いやがって!」

「くっ、我が獅子牙流をな、ぐわ~っ!?」

「ヤシシ!? こいつら、ヤシシを狙っているぞ!」

 

 しかし、豹牙天龍やナム、チューボ達GCGの隊員達以外にも会場内には天下一武道会の予選や一回戦二回戦で敗退した武道家や戦士達が残っていた。

 

「皆、これから念動力で持ち上げて運ぶ、騒がず落ち着いて」

「怪我人は病院まで瞬間移動で運ぶからあたしに触れなさい。今日は女でも特別に我慢してあげるわっ!」

 そしてチャオズやブルーが超能力を活用して観客の避難は速やかに進めたため、早い段階で天下一武道会の会場から非戦闘員はいなくなった。

 

「クソッタレが。ロボットに弱い者扱いされるとはな」

「シュラ、君達が囮になってくれているお陰でロボットが避難した人達を追って外に出ずに済んでいるんだ。そう気に病まないでくれ」

 

「パンプットさんの言う通りですよ、頑張りましょうシュラさん!」

「……はぁ。魔王の名折れだな」

 パンプットとウパに諭されたシュラは、がっくりと肩を落とした。

 

「いや、お前は今からでも避難した方がいいだろ。怪我人を運ぶのが終わったら、ブルーに島の外まで運んで行ってもらえ」

 そしてウパにそう言った。避難が進んだ結果、ロボットマン達のターゲットは獅子牙流のヤシシやボラ、シュラ等、比較的実力の低い武道家や戦士しか残らず、戦士達にとってロボットマンの行動が読みやすくなっていた。

 

 そのお陰で、攪乱はコーチンが期待したほどの成果は上がっていなかった。

 

 そして、戦闘力1万以上のクラッシャー軍団達でも打撃や気功波では破壊する事は出来ないロボットマン達だが、彼等の頑丈さを苦にしない戦士達も観客席には複数いた。

 

「チィッ、目障りなガラクタ人形めっ! 俺に近づくな!」

 観客席で妹のラニを抱えたラディッツが、ロボットマンに気弾を放って破壊した。

「はっ、このナッパ様がスクラップにしてやるぜ!」

 気を纏わせたナッパの手刀がロボットマンを切断した。他にもパンブーキンやトテッポがロボットマンを追いかけては叩き潰していた。

 

「みんなスゲェだな。おっとう、オラ達も戦いてぇだ!」

「悪いロボットを退治するべ!」

「おめぇ達にはまだ早ぇ。今は見稽古しておくんだべ」

 ロボットマン達がラディッツやナッパに向かってくるのは、ラニやスイがいるからだった。彼らはコーチンのプログラムに従い、「弱い」はずの赤ん坊や幼児を狙っているのだ。……モウは体が大きいので、幼児と認識されていないようだったが。

 

「このロボット達を作った奴は、残酷さはサイヤ人に匹敵するな」

「まったくだぜ。それより、カカロット達の所に駆けつけたけりゃあ、預かってやろうか?」

 上空でタンバリンと戦う弟達の様子をラディッツが気にしているのを察して、ナッパがそう提案したが彼は首を横に振った。

 

「ありがとよ、ナッパ。だが、今の俺が駆けつけたところで足手まといにしかならん。それに、せっかく親父から子守の番が回って来たんだ。存分にラニの世話をさせてもらうぜ」

「キャッキャ! にぃにっ、もっとっ!」

「よし、見てろよ、ラニ。あのガラクタ人形を花火にしてやるからな」

 

 衝撃波で空中に吹き飛ばしたロボットマンを、気弾で撃ち抜いて爆発させるラディッツの様子を見て、ナッパはふと頬を緩めた。

「あの鼻たれ坊主が立派になりやがって。俺も歳をとるはずだぜ」

 

『ちょっとっ! もっと静かに倒しなさいよね!』

 しかし、ブルマの怒鳴るようなテレパシーで感傷に浸るどころではなくなってしまった。

「は、破片も残さず塵にしたから問題はないだろう!?」

「そ、それにそんな事まで気にしながら戦うなんて出来ねぇぜ」

 

『避難している人達が怖がったらどうするのよ! それに、二人ならそれぐらい簡単でしょ!』

「ぐ、わ、悪かった」

「仕方ねぇな。次から気を付ける」

 

 ブルマがラディッツとナッパを叱っている間に、パパイヤ島全域で警報が鳴り響き、街頭スクリーンは深刻な顔をした国王に映像が切り替えられた。

『パパイヤ島の皆さん、我々政府はパパイヤ島からの全島民の避難を決定しました。最低限の荷物を纏め、家族で港や空港に向かってください。全島民を乗せる十分な数の船と飛行機を用意しています。

 不満や不安を抑え、今は命を守る事を優先してください』

 

 気弾の流れ弾一発で町どころか島全体が消し飛ばされかねないため、避難区域が天下一武道会会場からパパイヤ島全土に拡大された。

 実際には、ピッコロ大魔王を倒さない限り島どころか地球そのものが物理的に消滅する危険もあるのだが、流石に全地球人を火星に運ぶ体制はまだできていなかった。

 

「ぐわぁぁぁっ!?」

 その時、会場の壁を突き破ってドラムが現れた。

「こいつ、急に強くなりやがった!?」

 魔神精樹の実を食って戦闘力を本来の十倍の1800万にしたドラムは、その力で天津飯やチャパ王に襲いかかろうとした。その場に居たアックマンも、これほど力の差があってはアクマイト光線を放つ間もなく殺されてしまっていただろう。

 

「俺、お前をやっつける!」

 8号はそれを察して最終モードへ移行し、力を30万から百倍の3千万相当へと引き上げたのだ。ただ、最終モードを発動すると8号の機体は耐えられず短時間で崩壊してしまう。カッチン鋼の装甲は残るが、内部の機械が出力に耐え切れないのだ。

 

「おい、あいつまさか!」

「無理をするな、8号っ!」 

 観客席からこちらを見上げて叫ぶナッパやラディッツ……精神と時の部屋で二年分の時間を共に過ごした友達に気が付いて、8号は笑みを浮かべた。

 

「大丈夫。俺、怖くない!」

「恐れて震えろっ! 気円斬!」

 魔神精樹を食べた今の状態で放つ、全力の気円斬なら効くかもしれない。そんなドラムの希望的な予想が正しいかどうか確かめられる事はなかった。

 

「ヘルズフラッシュ!」

 片方の手首を外した8号が放ったヘルズフラッシュが、気円斬ごと彼を飲み込んだからだ。

「ピ、ピッコロ大魔王様、万歳!」

 そして、生みの親の大魔王を讃える言葉を残して閃光の中に消えていった。

 




〇戦闘力推移

・バーダック:8億6900万 → 9億5700万 アルティメット化で3835億。アルティメット大猿化で3兆8350億、力は7兆6700億。

・ターレス:39万5千 → 49万4千 20倍界王拳で988万。スーパーサイヤ人化で2470万。ピッコロ大魔王の気円斬で瀕死に陥り、仙豆で復活した事でパワーアップ。

・8号:30万 → 3千万 最終モード発動によって機体が崩壊するまでの間通常時の百倍の戦闘力を発揮する事が出来る。



〇人工満月

 ピラフ大王の発明品。ホイポイカプセルから戻すと、自動で宇宙空間まで飛び上がり、太陽光を反射してブルーツ波を照射する人工衛星。大きさはアタックボールぐらい。
 一応オートパイロット機能が搭載されているが、宇宙空間まで飛んで行ってしまうので多くの場合帰還に失敗し、回収できないため実質使い捨てになってしまう。

 ただ、パワーボールと違い体力を消費せず使えるという利点がある。



〇ミクロバンド戦法

 ミクロバンドを使用する事で、パワーが倍増する利点はそのままに巨大化の欠点を克服した戦法。なお、ミクロバンドのベルト部分は戦闘服と同じ素材を使用しているため、小さくなるタイミングが遅れてもベルトが切れてミクロバンドが手首から外れる心配はない。

 小さくなっても気が変わらない事は、魔人ブウ編でベジットがブウに飴にされた後もブウを圧倒した事から推測しました。
 ただ、当然だがルール有の試合では使えない。



〇亜空間

 劇場版『激突!!100億パワーの戦士達』で、悟空とメタルクウラが瞬間移動しながら戦っていた空間を想定しています。



〇ロボットマン

 コーチンが開発した完全機械型の量産型狂暴戦士。見た目はメタリックなバイオマンで、強さも同じ戦闘力1千相当。しかし、ピッコロ大魔王が神力で物資をいくらでも出してくれるため装甲だけはウィローのサイボーグボディと同じ合金を使っている。そのため、原作劇場版で界王拳を使用した原作悟空に殴られても耐えられる防御力を誇る。

 防御力では、生産性を上げるため性能を落としているウィロー合金を上回る。
 ただし、装甲が重いため活動可能時間は十分程。また、装甲は硬くても関節部分が弱く、組み付いて関節部分を攻撃すると意外と簡単に倒せる。……それでも戦闘力が千近く必要。



 ダイ⑨様、ぱっせる様、名無しの過負荷様、佐藤東沙様、excite様、mnsk様、PY様、変わり者様、ヴァイト様、コロナb様、トリアーエズBRT2様、ずわい様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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