ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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137話 復活の合体! ピッコロ大魔王とスラッグ!

 心地よい浮遊感と頭に残る不快な鈍痛を同時に覚えたラズリは、小さく呻きながら目を覚ました。

「あ、ラズリさんが起きましたよ!」

「よう、大丈夫か?」

 前を歩いていたラピスに声をかけられ、ラズリは手で頭を押さえながらプーアルが変化した魔法の絨毯から身を起こした。

 

「ああ、多分ね。何があったんだ……クリリンは……っ!? なんだい、これは!?」

 最初は状況が分からなかったラズリだが、ぼんやりしていられる状況ではなかった。気配に覚えがない強大な気に、彼女が知っている大きさの五十倍程に巨大化している悟空達の気に、建物の中まで響いて来る轟音。

 

 緊急事態である事は明らかだった。

「クリリンは? 無事なんだろ?」

 そして近くにクリリンの気が無い事にも気が付いた。嫌な予感を覚えつつもラピスに尋ねると、普段の彼らしくない沈痛な表情で視線を落とした。

 

「俺達が駆けつけた時は、手遅れだった」

「手遅れって……!」

 ラズリがハッとして周囲を見回すと、GCGの上着を上にかけられた小柄な人物が彼女と同じ魔法の絨毯に乗せられていた事に気が付いた。

 

 身を起こした時偶然背中を向けていたから、何より気が全くなかったから気が付かなかったが、あの手は……。

「そんな、嘘だ……なんでっ!?」

「落ち着け!」

 信じ難い出来事に感情が爆発しそうになったラズリを、ラピスは一喝した。

 

「ドラゴンボールでクリリンは生き返らせる事が出来る。奴らを退治した後でならな。だから、お前まで飛び出したりするなよ」

 ラピスもラズリの気持ちは分かる。しかし、彼女の感情をそのまま爆発させる訳にはいかない。何より、彼女は悟空達より圧倒的に弱い。クリリンの仇を取ろうと飛び出しても、足手まといにしかならないだろう。

 

「ああ、分かってるさ。だから……」

 ラズリも双子の弟に一喝されて冷静さをやや取り戻したのか、悔しそうに顔を顰めつつも魔法の絨毯から飛び出そうとはしなかった。

 

『ターゲット発見!』

 そこに、通路の壁を破壊しながらロボットマンが現れる。

「チッ、俺が引き受けるからその間に――」

 とっさに前に出ようとするラピスの横を一条の光が通り過ぎ、ロボットマンの目に相当するカメラを貫いた。

 

『ター……げっと……は……』

 機能を停止させ倒れるロボットマンを見下ろしながら、どどん波を放ったラズリは魔法の絨毯から降りた。

「だから、さっさと終わらせるよ」

「ああ、ひとまずプーアル達を会場の外まで送るぞ」

「お、お願いします!」

 

 サイヤ人の細胞が移植されていたら、スーパーサイヤ人になっていたかもしれない程の怒りを抱えたままラズリも避難誘導に参加したのだった。

 

 

 

 

 

 

 サタンの気円斬によって片翼を失い、機動力が下がったタンバリンだったがそのまま空で悟空達と肉弾戦を続けていた。

「調子に乗るなよ、宇宙人共が!」

「おめぇだって似たようなもんじゃねぇか!」

「悟空さは地球育ちで、おら達は地球で生まれたから地球人だべ!」

 

 地球外にルーツがある者は世代を超えても宇宙人なのか、それとも地球で生まれ育ったら種族が宇宙人でも地球人とされるのか。

「難しい問答は後にしろっ! 受け取れ、悟空っ!」

 その時、屋上にいるヤムチャが悟空に向かってホイポイカプセルを投げた。しかし、それにいち早く気が付いたタンバリンは、カプセルの中身が何であれ見逃す理由はないと悟空が受け取る前に気弾で消し飛ばそうとした。

 

「チィッ! うっとおしい奴め!」

 だが、サタンが放った気円斬が弧を描いて飛来したため、身をもってその切れ味を知っているタンバリンは慌てて回避しなければならなかった。

 

 邪魔をされた怒りが籠った目をサタンに向け、気功波を放とうとしたタンバリンだが彼を殺すのを躊躇った。

(こいつを……こいつらを殺す事は容易いが、殺して本当に大丈夫なのか!?)

 それはもちろん良心が芽生えたからではない。サタンを殺す事で、また誰かがスーパーサイヤ人になってパワーアップするのではないかと考えてしまったからだ。

 

 ついさっき、彼がクリリンを殺した時のように。

 

 魔神精樹の実を食ったタンバリンの戦闘力は1500万。幸い、スーパーサイヤ人となった者達は最も強くても悟空の約5百万。本気で狙えばすぐに殺せる程度だった。

 しかし、悟空達を殺した事でもしタンバリンより強いスーパーサイヤ人が誕生したら?

 

 自分が殺されるだけならまだしも、ピッコロ大魔王の脅威になるのではないか。

(たしか、悟空の母親は前々回の、こっちのチチの母親は前回の天下一武道会優勝者だ。観客席には、こいつらの身内もいる。奴らがスーパーサイヤ人にでもなったら……チクショウ! なんて面倒な奴等なんだ!

 仕方ない、こいつらを殺さずにあしらいながら作戦通り攪乱を続けるしかない!)

 

 一方、ヤムチャが投げたホイポイカプセルを受け取った悟空は、「なんだ、これ?」と思いながらもスイッチを押して中身を出した。

「あっ、如意棒! そうだ、天下一武道会の前にゲロのじっちゃんに改造してもらったんだった!」

 愛用の武器を受け取った悟空は嬉しそうに如意棒を振り回し、具合を確かめる。

 

「ちょっと重くなったけど、今のオラには丁度いいぐれぇだ。よし、行くぞっ!」

「武器を手に入れたぐらいで、この俺に勝てるつもりかぁ!」

 そう怒鳴りながらも、タンバリンは悟空ではなく彼の背後に広がる街並みを狙って気功波を連射した。建造物を瓦礫に変えて障害物を作り、観客や島民の避難を妨害するつもりだ。

 

「つもりではなく勝つのだ!」

 そこに駆けつけた桃白白が刀で気弾を切断し、弾き飛ばした。

「悟空、少しは頭が冷えたのなら無茶をするなよ!」

「分かった! 伸びろ、如意棒!」

 

 桃白白に叱責された悟空が、タンバリンに向かって如意棒を伸ばした。しかし、タンバリンは回避ではなく攻撃を選んだ。

「改造だか何だか知らんが、俺の拳でぶち壊してやる!」

 武器なら全力で殴っても問題ないだろう。そう判断したタンバリンは、気を込めた拳を自身に向かって来る如意棒の先端に向かって拳を突き出した。

 

 しかし、砕けたのはタンバリンの拳の方だった。

「ぐあぁっ!? な、なんだとぉっ!?」

 ゲロが如意棒に施した改造とは、両端にカッチン鋼のコーティングを行う事だった。悟空の突きや如意棒の伸びる勢いだけなら、それでもタンバリンの拳は無事だったはずだ。しかし、行き場を失った彼自身の力が彼の拳を砕いてしまったのだ。

 

「っ!? ドラム!」

 さらに、下ではドラムが8号のヘルズフラッシュで消し飛ばされてしまった。

「くっ、よくも兄弟を!」

 利き手の拳を砕かれた激痛と、ともにピッコロ大魔王に生み出された兄弟の死がタンバリンの自制を上回り、彼の意識を怒り、そして殺意で埋め尽くした。

 

「勝手な事言うんじゃねぇべ! おめぇだってクリリンさんを殺したでねぇか!」

 額から気功波を放ちながらチチが怒鳴り返すが、タンバリンはそれを回避してさらに言い返した。

「それがどうした!? 敵をぶっ殺すのと仲間を殺されるのが同じわけないだろうが!」

 チチとタンバリンの価値観には大きな違いがあり、それは拳を交えただけで理解できるものではなかった。

 

「手加減してやれば調子に乗りやがって! いいだろう、サービスタイムは終わりだ、お前ら全員消し飛ばしてやる!」

「っ! 皆っ、オラに合わせてくれっ!」

 激高したタンバリンが、上から悟空達に向かって気功波を放とうとしているのに気が付いた悟空は、チチとヤムチャ達がいる屋上に戻った。

 

「死ねぇっ! ミスティックブレス!」

 口から光線を吐き出すタンバリン。これが悟空達に当たっても外れても、余波で天下一武道会会場が半分は消し飛ぶだろう。皮肉なことに、シールド発生装置で区切られている舞台やこことは反対側の……コーチンがいる会場は無事で済むだろうが。

 

「かぁ~めぇ~っ!」

「はぁぁめぇぇ……!」

「「「「波っ!」」」」

 それを防ぐため、悟空達はかめはめ波で迎え撃つことを選んだ。スーパーサイヤ人四人で力を合わせたかめはめ波がミスティックブレスにぶつかり合う。

 

「バカめぇ! いくら力を合わせても俺に敵うものか!」

 しかし、タンバリンがそう嘲笑う通り悟空達が力を合わせても敵わない。四人のかめはめ波がミスティックブレスに押し負けていく。

 

(そう言えば、桃白白はどこに行った? 命惜しさに逃げたか?)

 激高のあまり視野が狭まり、いつの間にか意識の外に置いていた男の存在を思い出して周囲の気を探るが、気配を感じ取れない。

 

(まあいい、どうせ俺の脅威ではない。こいつらを殺した後で探し出して奴の息の根も止めてやる!)

 

「くっ、こうなったら界王拳を使うしか……!」

「ダメだべ、悟空さっ! そんな事したら悟空さまで死んじまうだ!」

「えっ、そうなんですか!?」

 じわじわと迫ってくるミスティックブレスに悟空が苦渋の選択をしようとし、チチが慌てて止める。

 

 四人の中で唯一界王拳をまだ習得していないサタンは気が付かなかったが、スーパーサイヤ人となって気の出力のコントロールが難しくなっている。この状態で界王拳を使えば、限界以上に気を放出して死んでしまう可能性が高い。

 それをチチ達は本能的に察していた。

 

「でもよ、このままじゃ!」

「ああ、確かにこのままじゃみんな死んじまう。だが、やるならそれはこの中で兄弟子の、それも大人な俺の役目だぜ!」

「ヤムチャっ!? おめぇ本気か!?」

 

「ああ、未成年に美味しいところはやれないからな! でも、もし死んじまったらクリリンと一緒に生き返らせてくれよ! 界王――」

「おっと、悪いが俺も混ぜてもらうぜ」

 ヤムチャが決死の覚悟を決めて無茶をしようとした時、その背後に頼もしい援軍が現れた。

 

「ターレス兄ちゃん!」

「できればクリリンの弔い合戦の邪魔はしたくなかったが、そうも言ってられねぇからな」

 仙豆で回復したターレスが気を探った結果、最も苦戦している戦場は悟空達だった。なお、ベジータ王子もピッコロ大魔王相手に苦戦しているが、そこはターレス一人が加わっても戦況を変えられないので最初から考慮していない。

 

「行くぜっ、キルドライバー!」

 そしてスーパーサイヤ人となったターレスが放ったキルドライバーが、悟空達のかめはめ波とタンバリンのミスティックブレスを輪に通してタンバリンに向かっていく。

 

「ま、拙い!」

 突然現れたターレスの気は、スーパーサイヤ人になった事でタンバリンを大きく超えている。このままキルドライバーを受ければただでは済まないと、タンバリンは咄嗟に逃げようとした。

 

「気功砲!」

「うおぉっ!?」

 そこに、背後から強い衝撃を受け、タンバリンの動きが止まった。気を消して機会を窺っていた桃白白だ。

「貴様っ!?」

「フッ、不意を突いて刀で斬りかかろうと思っていたが、その必要もないようだったのでな」

 

 不敵に笑う桃白白。彼の気功砲はタンバリンを驚かせ衝撃で体勢を崩しただけで、大きなダメージは与えていない。しかし、翼が片方切断されていた彼にとって致命的だった。

「チ、チクショーッ!!」

 キルドライバーの爆発に飲み込まれ、ミスティックブレスが途切れる。そこに悟空達のかめはめ波も直撃し、タンバリンは黒焦げになって地面に落下していった。

 

 

 

 

 

 

 ピッコロ大魔王の攻勢にベジータ王子は苦戦を強いられていた。

「クソッ、どいつもこいつも神精樹に頼りやがって! 自力で強くなろうという気概はないのか!?」

「フンッ、人造人間を作り続ける科学者と手を組んだ貴様が言えた事か!」

 

 魔神精樹の実を食べたピッコロ大魔王の戦闘力は8千万。しかし、スーパーサイヤ人になったベジータ王子の戦闘力も7300万で、その差は圧倒的と評すほどではない。

「重箱の隅を突くのは気にしている証拠だな。何より、貴様は組手不足だ!」

 しかも、ベジータ王子には生まれ持ったセンスと同等の戦闘経験によって磨かれた技量がある。

 

 技量は自身の力とスピードを制御し、思い描いた通りの動きを可能にする。

「俺も神精樹の実は食った。食ったが、それで増した力を扱うためのトレーニングを欠かした事はない。貴様はどうだ、大魔王さんよ!」

 ピッコロ大魔王が繰り出す拳を逸らし、反撃の拳をベジータ王子が叩き込む。

 

「グッ……ククク、貴様等と違って思い切り体を動かす事が出来る環境ではなかったからな。確かに、技では貴様に劣るかもしれん。だが、想定済みだ!」

 しかし、ピッコロ大魔王はベジータ王子の腕を掴んで動きを止めると触角から光線を放った。

 

「がっ! は、放しやがれ!」

 ベジータ王子も掴まれている方の手から小気弾を連射する。

「儂から離れたいのか? いいだろう」

 だが、ピッコロ大魔王は至近距離から放たれる小気弾を無視して、もう片方の手に気を収束させた。

 

「あの世まで消し飛ばしてやろう!」

「チィ!」

 ピッコロ大魔王が片手から気功波を放つと、ベジータ王子もそれに応戦して自由な方の腕から気功波を放った。激しくぶつかり合う気功波だが、押し切ったのはピッコロ大魔王の気功波だった。

 

「くおおっ、ク、クソッタレが!」

 とっさに自身が放っていた気功波を爆発させて直撃を避けたベジータ王子だったが、衝撃がダメージとなって蓄積していく。

 戦闘力では劣るものの圧倒的な差はなく、技量では勝る彼が劣勢である理由は疲労だった。

 

 ターレスとの決勝戦で深手を負う事なく勝利したベジータ王子だが、体に負担のかかるスーパーサイヤ人への変身を連続で行いベストコンディションを保てる程の体力はなかった。

「まだ倒れんとはタフな奴め」

 一方、魔神精樹の実を繰り返し喰らってきたピッコロ大魔王の生命力と体力は戦闘力以上に肥大していた。今までベジータ王子の攻撃が何度も当たっているのに、息が切れる様子もない。打たれ強さならナッパをも凌駕しているだろう。

 

 しかし、追い詰められつつあるのはピッコロ大魔王の方だった。ベジータ王子以外にも、まだまだ強敵はいる。魔神精樹の実の効果が続いている内に、それらを皆殺しにしなければ彼の勝利はない。

「素直に殺された方が身のためだぞ。死体が原形をとどめていれば、狂暴戦士となってこの儂の配下に成れるのだからな!」

 だからこそ、ベジータ王子の命に手をかけんと文字通り手を伸ばした。

 

「貴様の手下になるなんぞ願い下げだ! はっ!」

 ベジータ王子は伸びて来たピッコロ大魔王の腕を回避すると、手刀で彼の腕を切断した。ナッパが使っているのと同じ気を纏った手刀である。

 

「フッ……何っ!?」

 紫色の血が迸り、してやったりと口元を吊り上げるベジータ王子。しかし、切断面から一瞬で新たな腕が再生して彼の頬を殴りつけた。

 

「腕一本程度で勝ったつもりか? 馬鹿め!」

 殴りつけたベジータ王子の戦闘服を掴み、そのまま腕を引き戻し勢いをつけて彼の胴体に膝蹴りを叩き込む。

「がはっ!」

 膝から伝わる肋骨が折れる手応えと、ベジータ王子の髪が金色から黒に戻るのを見てピッコロ大魔王は己の勝利を確信した。

 

「さあ、止めだ!」

「待てっ、ピッコロ大魔王! 儂等の顔に見覚えはないか!?」

 その時、シールドを飛び越えて二人の老人が現れた。コーチンに見せられた映画や、過去の天下一武道会の特集番組などから二人が亀仙人と鶴仙人である事はすぐに分かった。

 

 しかし、ピッコロ大魔王は二人が気の大きさからみて取るに足らない雑魚だと判断した。実際、亀仙人と鶴仙人の戦闘力は10万にも至らない。明らかにベジータ王子に止めを刺す事を優先するべきだろう。

(ん? たしかに、言われてみればあの爺共、見覚えがあるような……っ!)

「まさかっ!」

 封印される前の記憶が閃き、思わず声を上げるピッコロ大魔王。亀仙人と鶴仙人は、それを見て不敵に笑いながら独特な構えを取った。

 

「そら、魔封波じゃ!」

 この歴史で起きたグルメス王国(現公国)での事件でグルメス王(現在公爵)は魔封波によって封印された事があった。しかし、映画では「映像を見た人が万が一魔封波を習得してしまったら事故が起こるかもしれない」という理由で、映画化される時もそのシーンは別の方法で封印し拘束したように見せていた。

 

 そのため、ピッコロ大魔王は鶴仙人達が魔封波を使える事を知らず、魔封波返しのような返し技を編み出していなかった。

「う、うおおおっ!」

 そのため、ピッコロ大魔王は封印された過去を思い出して動揺し、発生した気の渦から逃れようと反射的に後ろに下がった。ベジータ王子をその場に放り出して。

 

「な、なんだと!?」

 だが、魔封波が絡めとったのはピッコロ大魔王ではなくベジータ王子の方だった。

「はっ! それ、早く仙豆を食わせるんじゃ!」

「言われんでも分かっとるわいっ!」

 

 そして、ベジータ王子を封印するのではなく自分達の近くに落とし、急いで仙豆を食べさせる二人の仙人。彼らの狙いはピッコロ大魔王の封印ではなく、ベジータ王子の救出だったのだ。

「っ! ……礼は言わんぞ」

 仙豆で意識を取り戻し回復したベジータ王子にそう言われても、鶴仙人と亀仙人は気にしなかった。

 

「なあに、構わん、構わん。儂はピッコロ大魔王に一泡吹かせてやりたかっただけじゃからな」

「それより早く倒してしまえっ! 亀、儂等はさっさと下がるぞ!」

 素早く離れていく二人を振り返らず、ベジータ王子は自分を憎々し気に睨むピッコロ大魔王を睨み返した。

 

「さて、仕切り直しと行こうか。殺し合いにルールはないと言ったのは貴様だ、文句は言うなよ!」

 そして三度目のスーパーサイヤ人に変身する。その気が自分を数段上回っている事に気が付き、ピッコロ大魔王は顔を顰めた。

 

 この時点で、ピッコロ大魔王一味の勝利は絶望的になったと言える。

 

 その時シールド発生装置の外、観客席の方で激しい閃光が瞬いたかと思うと、彼の耳に断末魔の悲鳴が届いた。

「ドラム、やられたか」

 さらに、選手控室の方で激しい爆発が起こり、壁や屋根に穴が空く。

 

「ぐわぁぁ!」

 そして穴から一瞬シンバルの姿が見えた次の瞬間、爆発に飲まれて消えていった。それを追うようにピアノの気も消えている。

 

「シンバル、ピアノ、そしてタンバリン、お前達もか」

 次々に消えていく配下達の気。そして、逆にピッコロ大魔王の前には彼らが抑えていた強敵が集結しつつあった。

「よう、王子。仙豆はもう必要なさそうだな」

「何なら替わってやろうか? パワーボールを上げてくれたら、一分でズタボロにしてやるよ」

 

 魔神精樹の実によって戦闘力8千万にまで至ったピッコロ大魔王だが、戦闘力1610万のセリパや2057万のトーマが大猿化すれば一気にひっくり返されてしまう。

「いらん。俺一人で充分だ、貴様等は下がっていろ!」

 しかし、今となっては二人が出るまでもない。仙豆によって回復したベジータ王子の戦闘力は146万から194万に上昇し、スーパーサイヤ人になって今は9700万で、ピッコロ大魔王を上回っているのだ。

 

「ピッコロ大魔王、残念だがここまでのようだ」

「コーチンか。いつになく弱気ではないか」

 いつの間に居たのか、ピッコロ大魔王の後方にコーチンが姿を現した。光学迷彩が施されたマントを地面に落とし、ため息をつく。

 

「弱気にもなるわい、ロボットマンは大した成果も出せず全滅。タンバリン達も先に逝ってしまった。最早儂等に打つ手はない」

「そっちの爺は話が早くて助かるぜ。どうする? 大人しく降伏するなら痛い思いをせずに済むぞ」

 

 説得というより挑発や恫喝をするように尋ねるベジータ王子を無視して、ピッコロ大魔王はコーチンに話しかけた。

「確かに、ここから儂等が逆転するのは無理だろうな。だが、打つ手は残っているぞ。……最後に貴様の願いを叶えてやろう」

「なんだと? ピッコロ大魔王、まさか……!」

 

 気を収束させた手を、ピッコロ大魔王は大地の奥深くを狙って振り上げた。

「さあ、地球よ! このピッコロ大魔王と共に滅ぶがいい!」

「おお、そうだっ、それでこそピッコロ大魔王だ!」

「っ! させるかっ!」

「やべぇっ!」

 

 ピッコロ大魔王の残された手、それは自分達ごと地球とそこに存在する全生命体を道連れにする事だった。

 喜悦に顔を歪めるピッコロ大魔王とコーチン、彼等の狙いに気が付いてその前に気功波で吹き飛ばそうとするベジータ王子やターレス。

 

 果たしてどちらが勝つのか。

 

「失礼、邪魔をするぞ」

 だが、その結果が出る事はなかった。突然現れた歴史改変者、魔神ドミグラがピッコロ大魔王の手を掴んで止め、もう片方の手に持った杖を振るいベジータ王子達が放った気功波を弾き飛ばしたのだ。

 

「貴様、何者!?」

「おい! 貴様、ナメック星人だな!?」

 ドミグラに食って掛かるピッコロ大魔王に、彼の足元に転がされたナメック星人……起死回生の手段を見つけて歪んだ笑みを浮かべたスラッグが話しかけて来る。

 

「この俺と合体しろ! 俺と貴様が一つになれば、究極のパワーを手に入れる事が出来るぞ!」

「何っ!?」

 ネイルと戦うまで自身がナメック星人である事を知らなかったスラッグが、合体の事を知っているはずはない。おそらくドミグラが彼を地球に来るまでの間に教えたか、魔術で細工したのだろう。

 

「美味い事を言って儂を吸収するつもりではないだろうな?」

「嫌なら勝手にするがいい。強い方が弱い方を吸収し、主導権を得る。それだけだ」

「……いいだろう」

 ドミグラが放した方の手でスラッグの手を握るピッコロ大魔王。この間も、ベジータ王子達の気功波が撃ち込まれ続けているが、全てドミグラによって防がれている。

 

「待て、ピッコロ大魔王! 危険すぎる、最悪の場合そのナメック星人に飲み込まれてしまうぞ!」

「心配するな、コーチン。それに、それ程分の悪い賭けとも思えん。究極のパワーとやらを頂くのは、この儂だ!」

 そして、二人の悪のナメック星人が合体した。ただ、原作のピッコロとネイルが合体した時と違い、二人とも自分こそが主体だと主張し、相手を強引に吸収しようとする共食いのような合体だった。

 

「いいぞっ! 今まで手間をかけた甲斐があったというものだ!」

 ドミグラが企んだ歴史改変とは、ピッコロ大魔王をスラッグに吸収させる事だった。これでピッコロに当たる人物がもし生まれる事になっても、原作のピッコロとはナメック星人である事以外何もかも異なる人物になる。

 

 誤魔化しも修正も効かない、一時的ではなく未来にまで大きな影響が出る大改編だ。

 

 しかし、この時ドミグラの想定を超える事態が起きた。

「クックック……確かに、究極のパワーを儂は手に入れたようだ!」

 なんと、主導権を握ったのはピッコロ大魔王の方だった。お互いに譲らない悪のナメック星人同士の合体は、戦闘力の強弱ではなく精神力による戦いだった。

 

 だからこそドミグラはスラッグが勝つと踏んでいたのだが……ネイルに予期せぬ敗北を喫した直後のスラッグは死にたくない、力を得たいというただただ利己的な欲望一心で戦った。

 そうした欲望はピッコロ大魔王にもあった。だが、それよりも自らの子である配下達の死を無駄にしないため、そしてコーチンと共に育んだ野望のためにスラッグの精神に立ち向かった。

 

 悪人同士の歪んだ、しかし絆と呼ぶには十分な繋がりがピッコロ大魔王を勝利に導き、スラッグを吸収する事に成功したのだ。

「素晴らしい、素晴らしいぞ、ピッコロ大魔王! いや、超魔王よ! 今この瞬間、宇宙一の魔王が誕生したのだ!」

「野郎、なんて気の大きさだ! おい、王子、もう俺一人で充分だなんて言っている場合じゃないぜ」

「チッ!」

 

 狂喜するコーチンに、目前にしていた勝利が遠のいたことに動揺するトーマやベジータ王子達。今戦いを再開すれば、ピッコロ大魔王にも勝機があっただろう。

 

「おい、貴様の手の上で踊ってやったのだ。茶番劇の出演料代わりに手を貸せ! 仕切り直しだ」

 だが、ピッコロ大魔王は戦闘の再開ではなく態勢を立て直し仕切り直す事を選んだ。何故なら、この時の彼は消耗していたスラッグとの合体によって地力は上がったものの、魔神精樹の実によるパワーアップ効果が切れてしまっていたからだ。

 

 その戦闘力は1億4300万。実はまだ大猿化したセリパやトーマの相手をするには心もとなかったのだ。

 

「いいだろう。タイムパトロールも退いたようだからな」

 想定外の結果になったが、スラッグが吸収されてもドミグラにとっては十分な成果だった。時の界王神も歴史が決定的に分岐した事でこの歴史にとって何が改変になるのか確かめるために、タイムパトロールを一時撤退させたようだ。

 

 今頃各宇宙の界王神が管理する時の指輪は、一つずつ増えている事だろう。

 

「遅かったか!」

 その時になってようやくゲロ達がスラッグ星から帰還したが、まさに一歩遅かった。

「くらえ!」

 ベジータ王子達に向かってピッコロ大魔王が置き土産代わりの爆発波を放った直後、ドミグラは彼とコーチンを連れ、彼等と入れ替わりでスラッグ星にワープしたのだった。

 




〇戦闘力推移

・ベジータ:146万 → 194万 スーパーサイヤ人化で9700万。

・スラッグ:520万 → 未成熟な神精樹の実 → 550万

・ピッコロ大魔王:800万 → 魔神精樹の実 →880万

・ピッコロ超魔王

 ピッコロ大魔王がスラッグを吸収合体した状態。
 ナメック星人の合体は本来当人同士の同意だけでなく、どちらが主体になるか決めてから行われる事が多いが、ピッコロ大魔王とスラッグの合体は、同意はあってもどちらが主体になるかは決めていない状態で行われた。

 結果、ピッコロ大魔王とスラッグの精神が争いピッコロ大魔王が勝利し、スラッグの力と経験、知識を吸収した。

 戦闘力は(880万 + 550万) ×10 = 1憶4300万 原作フリーザの最終形態とフルパワー状態の戦闘力を、キリで強化されていないのに超えている。



 excite様、ダイ⑨様、ぱっせる様、PY様、名無しの過負荷様、メリス様、マヤリス様、ずわい様、ヴァイト様、佐藤東沙様、MMZK様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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