ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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138話 武道家は死んだ時こそ修行する 地球の神代理の4号

 ピッコロ大魔王が置き土産に放った爆発波。シールド発生装置がまだ作動中であるため天下一武道会の会場や町は守れるが、儂等はそうもいかない。

 もちろん、瞬間移動では間に合わん。

 

「皆っ、伏せて!」

 とっさにベジータ王子達が気功波を放って相殺させて防ごうとするが、それよりも前に動いた者がいた。

「8号っ!?」

「ハッチャン!」

 

 そう、この中で最も強固な肉体を持つ8号がピッコロ大魔王の放った爆発波に向かって体当たりをしたのだ。

「フォトンシールド!」

 8号の体当たりによって爆発し威力が拡散して弱まり、ターレスやタイツがフォトンシールドを張ったお陰で儂等はなんとか無事にやり過ごす事が出来た。

 

「ピッコロ大魔王は引いたようじゃな。気がスラッグ星に移動している」

「じゃあさっそく追いかけようぜ、って訳にはいかないんだよな?」

 一先ずシールド発生装置をオフにするよう遠隔操作した儂に、そう顔を顰めたトーマが言う。

「ああ、ドミグラがいるからの」

 

 居場所は分かっているし、そこまで向かうための手段もあるが、追撃に向かったところでドミグラには敵わない。最低でも兆単位の戦闘力の持ち主がいなければ、話にならん。

「それよりも今は――」

「おいっ、8号! 無事かっ!?」

 儂の言葉を遮って、観客席側にいたラディッツとナッパが膝をついている8号のボディに駆け寄り肩を掴んだ。

 

 しかし、8号のボディは何の反応も返さない。見た目は生体部品が何か所か傷ついているだけで大きな損傷はないように見えるが、既に彼の機能は停止していた。

「おいっ、お前の体はカッチン鋼製なんだろ? 俺達が傷一つ付けられねぇはずじゃないのかよ!?」

「狼狽えるな、ナッパ。大方、8号は最終モードとやらを発動したんだろう。そうでなければ、こいつがピッコロ大魔王の手下を圧倒する事は出来ん」

 

「最終モード……じゃあ、こいつはもう!」

「ああ、中身は壊れているはずだ」

「そんな……どうにかならねぇのか、ゲロのじっちゃん!? 天才科学者なんだろ!?」

 

 そう悟空やナッパが儂に問いかけて来たので、儂はこう言った。

「皆、心配せんでも8号は死んだわけでは――」

「皆、済まない。俺達が8号の足を引っ張ったばかりに……」

 しかし、絶妙なタイミングでやって来た天津飯の声に遮られてしまった。

 

「弟弟子を助けるどころか、その友に守られるとは……」

「8号、大した奴だ。本当に我が身に代えて大勢の命を守るなんて、なかなかできる事ではない」

 口々に己の無力を嘆き、8号を讃えるチャパ王とアックマン。

 

 それに触発されたのか、ラディッツとナッパの気が急激に高まっていく。

「野郎っ、許せねぇ!」

「ああ、好き勝手やりやがって! ただでは済まさん!」

 そして爆発的な勢いで金色のオーラが吹き上がり、ラディッツの髪とナッパの髭が金色に輝いた。何と、二人もスーパーサイヤ人に覚醒したのだ。

 

「おお、二人ともスーパーサイヤ人になっちまったのか!?」

「ラディッツはバーダックの倅だからいつかなるだろうとは思っていたが、ナッパもとは驚いたぜ」

「カカロットやタイツもスーパーサイヤ人になったようだし、千年に一人しか現れないはずの伝説の戦士が、どんどん増えてくね」

 

「ラディッツ、本当に8号と仲がよかったんだね」

 二人がスーパーサイヤ人になった事に驚き感心するバーダックチームの面々に、しんみりと目尻を拭うギネ。ラニは無邪気に金髪になったラディッツの周りを笑いながら飛んでいる。

 

「フンッ、まるでスーパーサイヤ人のバーゲンセールだな。まあ、いい。これで奴がどれほど手下を増やしても蹴散らせるだろう。

 ゲロ、さっさと8号を治せ。ドラゴンボールを使えば出来るだろう」

 

「ベジータ王子、ドラゴンボールを使わなくても8号は問題ない。何故なら――」

「貴様っ、出し惜しむつもりか!?」

「ちょっとちょっと、お爺ちゃんにくってかからないでよ!」

「そうよ、8号なら……ほら、もう来たわよ」

 

 ランファンが空の一角を指さした。その先には、なんとこちらに向かって空を飛ぶ8号の姿があった。

「8号っ!?」

「ハッチャン!」

 

「ただいま、皆。孫悟空、ラディッツ、ナッパ、皆とても強くなった。凄い」

 そして笑顔を浮かべて悟空達のスーパーサイヤ人への覚醒を喜ぶ。

「お、おい、お前、機能が停止したんじゃないのか?」

 まるで幽霊でも見ているような顔つきで尋ねるナッパに、8号は「うん」と頷いた。

 

「俺、最終モードを起動したからボディが耐えきれず壊れて機能が停止した。でも、データをこのドクターが作ってくれた新しい体に移したから大丈夫」

「まあ、通信妨害を受けていたから百パーセント確実にデータのやり取りができるとは限らなかったわけじゃが。

 それにしても、8号の新ボディの事は前にも説明しただろうに」

 

 8号の旧ボディを直す必要が無いと儂が言ったのはこのためだ。誤解が解けたためか、ベジータ王子はばつが悪そうに鼻を鳴らすと儂から視線を逸らし、ナッパとラディッツは大きく息を吐いてスーパーサイヤ人から戻った。

「そう言えば、そんな事を聞いたような気がするな。精神と時の部屋の中では外とデータのやり取りができないから、最終モードにはならないようにとゲロに注意されたと8号から」

「そんな事話してたか?」

 

「まあ、あんた達の主観だと精神と時の部屋にいた二年分を加えて、四年ぐらい前に聞いただけみたいだから、忘れていてもしょうがないかもね」

 ブルマ達がそう話しているのを聞いて、8号は何があったのかだいたい察したらしい。

 

「皆、心配をかけてゴメン。でも、俺のために怒ってくれてありがとう。俺、嬉しい」

「勘違いするな! 俺はただサンドバックが減るのは困ると思っただけだ!」

「おめぇ照れてんのか? 素直になれねぇ奴だなぁ」

「カカロット! 貴様、スーパーサイヤ人になったからと言って調子に乗るなよ! それよりもゲロ、これからどうする? フリーザの野郎にも何か誤魔化す必要があるんじゃないか?」

 

 ベジータ王子は自分が照れている事を指摘され、それを誤魔化すために話題を逸らそうとそう言ったようだが、確かにその通り。このまま雑談に興じている訳にもいかない。

「そうじゃな。まずは――」

『神様、ポポ、聞こえますかな?』

 儂はまず、テレパシーで地球の神様とポポに呼びかけた。

 

『ゲロか。事態は見ていた、まさかピッコロ大魔王があれほどの力をつけているとは……』

『では、速やかにポポに預けてある神力増幅装置を装着してください』

『なに? 何故そんな必要があるのだ?』

 

『ピッコロ大魔王と合体したスラッグは、独自に作り上げたドラゴンボールを持っていました。それは今、ピッコロ大魔王の手にあるはずです』

『そのドラゴンボールで、儂をどうにかするかもしれんと言う事か。分かった。ポポ、手伝ってくれ』

『はい、神様』

 

 スラッグが作ったドラゴンボールがどれほどの願いを叶えられるのか不明だが、地球の神様をスラッグ星に呼び寄せ、何らかの方法で封印する事が可能かもしれないからな。用心するに越した事はない。

 ……神力増幅装置でそれを絶対に防げるとは、限らないのだが。

 

「ふんっ!」

 そして次に儂は四身の拳を応用して分身を一体作り出した。

 

「チューボやブルー大佐、GCGとレッドリボン旅団の面々は分身の儂とここに残って怪我人の収容や事態の収拾、その後に国王様やレッド将軍と行う記者会見などにあたってくれ。

 フリーザ軍に対しては、ひとまず作戦継続中と伝えておこう。下手な事を言うとこの後、スラッグ星に行ったピッコロ大魔王の行動によっては矛盾が生じてしまうからな」

 

「それで、肝心の俺達はどこに行くんだ? それに……」

「パパっ! 早くクリリンを生き返らせよう! いつまで死んだままにしておくつもり?」

「ああ、それもある。なので、ドラゴンボールがある地球の神様の神殿に向かおう」

 

 そして本体の儂は皆と共に地球の神の神殿に瞬間移動で向かった。なお、ヤシシやボラ、陳大拳やシュラはGCGに協力を申し出てくれたので地上に残った。

 

 

 

「よお、お互いしてやられたな」

「バーダックっ!」

「親父っ!」

 地球の神様の神殿に移動した儂等を最初に出迎えたのは、神様でもポポでもなくバーダックだった。

 

「聞いたぜ、カカロット。ダチは残念だったな」

「……ああ」

「だが、仇はとってやったんだろう? なら、さっさと生き返らせてやってこい」

 

「ああ、分かった! ポポ~っ! 神様~っ! ドラゴンボール貸しておくれ~!」

「おい、悟空、ちょっと待て! 肝心のクリリンの体を忘れてるぞ!」

「それと、生き返らせるのはクリリンだけじゃないかもしれないんだからな!」

 

 かけていく悟空を慌てて追いかけるラピスやヤムチャ達。その背中を見ながら、バーダックはしみじみとした口調で言った。

「俺はあまり話した事はないが、クリリンってガキは大した奴だな。伝説のスーパーサイヤ人を四人も増やしちまった」

 

「ああ、まったくだ。ところでバーダック、時の界王神様の方はどうなった?」

 儂がそう尋ねると、バーダックは肩をすくめて答えた。

「悲鳴を上げてたぜ。特に、チチやヤムチャや、サタンがスーパーサイヤ人になった時と、ピッコロ大魔王とスラッグの野郎が合体した時にな」

 

「ラディッツとナッパがスーパーサイヤ人になった時には悲鳴を上げなかったのか?」

「その時は静かなもんだったぜ、指輪が増えたって言って白目を剥いて失神してたからな」

「そうか……ついに時の指輪が増えてしまったようじゃな」

 

「らしいな。それで一旦退避だってよ。この歴史がどんな未来を辿るのか確かめてからじゃねぇと、動けないそうだ。何が改変になるか分からないって言ってたぜ」

 どうやら、だいたいドミグラが言っていた通りの状況のようだ。

 

 歴史が分岐して時の指輪が増えてしまったため、この歴史の未来は時の界王神様が知っていた未来とは別物になってしまった。そのため、時の界王神様は今頃この歴史の未来を調べているのだろう。

 原作を知る儂にとっても未来に起きる出来事が予想しにくくなったが……まあ、原作知識が役立つかどうか分からない状態は前から続いていたので、時の指輪が増えたからと言って儂が気にする必要はないだろう。

 

「なんでクリリンを生き返らせるのを待たなきゃならないんだ!? どういうことか説明しろ!」

 っと、バーダックと話している時間に何かあったようだ。それまで冷静さを保っているように見えたラズリが、神力増幅装置を着用しているため重装甲に見える地球の神様に食ってかかっている。

 

「落ち着け、クリリン本人が『まだ生き返らせないで欲しい』と言っているのだ」

 しかし、神様の口から飛び出した説明も驚くべき内容だった。

「クリリンが!? どういうことですかな、神様? クリリンはピッコロ大魔王の手下、つまり魔族に殺されたはず」

「魔族に殺された者はあの世に行く事が出来ないはずでは?」

 

 驚いた亀仙人と鶴仙人が続けて尋ね、神様も若干戸惑った様子で「その通りだ」と頷いた。

「しかし、界王様が態々連絡してくださったのだ。クリリン本人の声も聞いた。あの世に居る以上、否定は出来ん」

『あー、こちら界王じゃが、皆揃ったようじゃな。では、クリリンから話があるから、聞くように』

『ありがとうございます、界王様。えーと、ラズリさん、皆、無事だよな?』

 

 その時、儂等が神様の神殿に集まるのを待っていたのか、界王様に中継されたクリリンの声が儂等の意識に直接響いた。

「クリリン! あんた、生き返りたくないってどういうことだい!?」

『ラズリさんっ! 良かった~、生きてて』

「良くないっ! 説明しろって言ってるだろ!」

『は、はいっ! 俺、このまま界王様の所で修行しようかなって思ってて……』

 

「それなら生き返ってからでも出来るじゃないか! 悟空達だって生きたまま修行に行って帰って来ただろ!」

『そ、そうなんだけど、その後、修行をつけてくれるって言う人が声をかけてくれてさ』

 ラズリに大声で尋ねられたクリリンの言葉が気になり、儂は思わず口を挟んだ。

 

「あの世で修行をつける? もしやベジータ王か?」

『ほう、良い勘だな、ゲロ』

『ボクの事も忘れちゃ困るね』

 するとベジータ王、そしてなんとチルドの声も響いて来た。どうやら、彼等もクリリン達と一緒にいるらしい。

 

『クリリンが死んだと鬼達から聞いたのでな。せっかく死んだのだから生き返るまで儂のところで、文字通り地獄の修行をつけてやろうと思ったのだ。丁度、今年は地獄一武道会も開かれるからな』

『君達のお友達を痛めつけて遊べるチャンスを逃す手はないからね』

 あの世との交流試合でクリリンを知っていたベジータ王とチルドは、彼が死んだと聞いて迎えに行ったらしい。

 

『あ、はははっ、俺って思ってたより人気者みたい』

『そう言えば聞いたぞ、ベジータ。ついにスーパーサイヤ人に覚醒したそうだな。これで儂も安心して隠居できるというものだ。

 それとも、ピッコロ大魔王とやらを倒すためには儂が地獄からでしゃばらねばならんか?』

 

「フンッ、親父、あんたに頼る必要などない。今の俺は既に親父を超えたのだからな!」

『クックック、それは頼もしい。来月の交流試合が楽しみだな』

『ところでベジータ王、スーパーサイヤ人になったのはお前の息子だけではなく、タイツ、そして悟空とチチ、ヤムチャ、それにサタンと言う若者とラディッツ、ナッパと言うサイヤ人もだぞ』

 

『それは本当か!?』

『なんだとっ!? ふざけるなよ、サイヤ人共!』

『ええっ、悟空、皆スーパーサイヤ人になったのか!?』

 界王様から悟空達の覚醒を知らされ、驚くベジータ王とチルド、そしてクリリン。

 

『カカロットとラディッツはバーダックの倅であるし、成長も目覚ましいのでその内と思っていたが……ハハハハ! 宇宙に再びサイヤ人の名が響き渡る未来も近いな!』

『スーパーサイヤ人は千年に一度現れる伝説の戦士じゃなかったのか!? それとも貴様等にとっての伝説は、バーゲンセールの特売品と同じ扱いなのか!?』

 

『二人とも喧しい! 耳元で大きな声を叫ぶな、シャットアウトしてしまうぞ!』

 高笑いを上げるベジータ王と激高した様子のチルド。二人はどうやら声に出して喋っているらしく、界王様がそう叱責していた。……もしかしたら、叫ぶ(シャウト)とシャットアウトをかけたジョークかもしれないが。

 

『凄いじゃないか! 悟空やチチさん、ラディッツさんだけじゃなくて、ヤムチャさんやサタンさん、ナッパまで!』

「おいおい、までって言う事はないだろ」

「ははは、まあ、俺も自分がこんなに早くなるとは思わなかったけどな」

 

「ああ、オラ達おめぇがやられたって知って、頭に血が上っちまってよ」

「俺達は別口だがな」

『そっかぁ……俺って皆に好かれてたんだな』

 そう照れた様子のクリリンの声が響き、悟空達も安心した様子でそれを聞いている。こういう時に悲壮感が無いのは、年に一度あの世との交流試合でベジータ王達元気いっぱいな死者と技を競い合っているからだろう。

 

 悟空達は閻魔大王の宮殿までは、界王様の所に修行に行く際に通っているし。

 

「それで、その皆の所に戻るより地獄で修行を選ぶってのか?」

 ただラズリは不機嫌そうなままだ。

『いや、地獄じゃなくて界王様より偉い大界王様の所にいる武道家の人が、俺に修行をつけてくれるって言ってくれてさ』

 

「大界王様の所で修行している戦士が修行をっ!?」

「そ、それってとてつもなくすごい事なんじゃないか!?」

「あいつらか……メチャクチャ強かったよな」

 ネイルとギネ、そしてバーダックチームの面々が思わず声を上げた。界王様の所で何年も修行したネイルや、丸くなる前のベジータ王が閻魔大王に起こした反乱を鎮圧したところを見たギネ達は、大界王星で死後も修行している戦士達の強さを知っている。

 

 純粋悪となった魔人ブウやジャネンバには歯が立たなかったが、今のこの宇宙で最も強い戦士達であるのは間違いない。

 しかし、いったい誰がクリリンに指導してくれるのだろうか?

 

『それで、俺って今のままじゃ皆の足手まといだろ? だからその……今度は、死なずにラズリさんを守れるくらい強くなりたいんだ!』

「クリリン……」

 

 そう力強く決意を口にするクリリンに、彼の言葉を繰り返すラズリ。

 儂はこの時、「そんなに強くなりたいなら、ラズリとラピスの次に人造人間19号として改造しても構わないが」と提案するか迷ったが、空気を読んで黙っておくことにした。

 

「……言いたい事がまだあるけど、直接顔を見て言いたいから今は納得してやるよ。交流試合には絶対出ろよ!」

『ああ、分かった! じゃあ、ラズリさん、悟空、皆も頑張れよ!』

 こうしてクリリンとはつかの間の別れとなった。ピッコロ大魔王に勝てば一か月後、占い婆の宮殿で再会する事が出来るだろう。

 

 

 

「終わったか? 全く、死者の裁判をしている横で好き勝手騒ぎおって」

「いや~、すまんすまん」

「界王様ではなくてそこの二人に言ったのです! ほれ、さっさと地獄に戻れ!」

 

「言われなくても戻るさ、一か月後の交流試合までに雨後の筍のように増えたスーパーサイヤ人共を叩きのめさなきゃならないからね」

「果たしてそう上手く行くかな? クリリン、交流試合であの世チームとしての活躍を期待しているぞ!」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 地獄に戻るチルドとベジータ王を見送るクリリン。その背後で、北の界王はこの場にいたが一言も発さなかった人物に視線を向けた。

 

「良かったのか? 言葉を交わす時間ぐらいはあったと思うが」

「はい。二人とも立派に成長し、今は自ら弟子を鍛える立場。私が今更でしゃばる事はない」

「名前くらい名乗ってやっても良かったと思うがの。まあ、いい、気が変わったら言うんじゃぞ」

「お気遣い、感謝いたします」

 

 その武道家は、クリリンに修行をつける事を申し出たにもかかわらず、まだ彼に名乗っていなかった。背は高くないがどっしりとした逞しい体付きをした総白髪の老人で、見た目からすると地球人らしい事ぐらいしか分かっていない。

 

「では、八か月後に参ります。それまで孫弟子を頼みます」

「任せておけ。しかし、残り約四か月で充分な修行が出来るのか?」

「問題ないかと。大界王様が地球にあるという精神と時の部屋と似た部屋を作ったそうで、その部屋を使う許可を頂いておりますので」

 

「そうか、それは安心だ。では、またな。

 お~い、クリリン、さっそく修行を始めるぞい。まずはこの背負子で儂を背負って蛇の道を界王星まで走るのじゃ」

 

「は、はいっ! って、この背負子メチャクチャ重いっ!? 何で出来てるんですか!?」

「ほれほれ、急がんと夕飯に間に合わんぞ」

 こうしてクリリンのあの世での修行は始まったのだった。なお、界王様をジョークで笑わせる試練は既にクリア済みである。

 

 

 

 一方、地球の神様の神殿では、クリリンの復活を願うのが約一年延期された事で、若干余裕が出来ていた。

「チューボによると、今のところ天下一武道会の会場でクリリン以外の死者は確認されていない。速やかな避難と皆の奮闘のお陰だ」

 

「へへ、まあな」

「ウーロン、おめぇも何かしたのか?」

「おう あの変なロボットを一度に二匹も相手どってやったぜ!」

 

 コーチンが放ったロボットマン達が会場中で暴れまわったが、その目的は攪乱だったため標的を即死させるような攻撃は控えていた。そのため、不意を突かれてGCGの隊員に多くの怪我人を出してしまったが死者は今のところ出ていない。

 

 ただ、コーチンはロボットマン達に「即死させるような攻撃を控えさせた」だけだ。適切な処置をしなければ一時間以内に心肺停止に陥るような怪我をしている者もおり、仙豆のストックやGCGの隊員達や武道家達の奮戦が無ければ大勢の死者や重傷者が出ていただろう。

 

 それに、タンバリン達を速やかに、そして巻き添えも出さず倒せたのが大きい。本当によくやってくれた。

 

「なら、今のところドラゴンボールは使わずに済みそうだな」

「そうか。では、先に儂の頼みをきいて欲しい。ヨン・ゴウ、この一件が終わるまで儂に代わり地球の神を務めて欲しい」

 すると、地球の神様がそう言いだした。

 

「それは、ピッコロ大魔王が現れたからですか?」

「そうだ、スラッグなる者と合体したようだが、主がピッコロ大魔王である以上奴が儂と一心同体である事は変わらん。

 お前達はピッコロ大魔王を殺さずに封印しようとするだろうが、奴は封印されるより死を選ぶようだからな」

 

 なるほど、もしピッコロ大魔王がスラッグに吸収されていたら地球の神様と一心同体ではなくなっていたのか。

 

「貴様、まさかヨン・ゴウに神を交代したら自殺するつもりじゃあるまいな? だったら承知せんぞ!」

 地球の神様と4号の話に、そう凄みながらベジータ王子が割って入った。確かに、神は自殺できないそうだが、神でなくなれば自殺してピッコロ大魔王を道連れにするという選択肢も可能になる。

 

「それも考えなかったわけではないが、騙すような方法で若者に次代の神の役目を押し付けるような事はしたくはない。

 しかし、意外だったな。お前が儂を真っ先に引き留めるとは」

「ポポ、驚いた。目が丸くなって戻らない」

 

「勘違いするなよ。俺は奴と戦う機会が無くなるのが嫌なだけだ。次は必ず止めを刺してやる! それと貴様の目は最初から丸いだろうが!」

「おい、ベジータ。止めは刺すなよ、封印するんだぞ、封印」

「分かっている!」

 

「では、懸念も無くなったので一時的に神様の仕事を引き受けましょう。ドクター、申し訳ありませんがしばらく戦闘から離れます」

「もちろんだ。重要な役目だ、頼んだぞ」

 

 そして地球の神様と4号が手を握ると、淡く輝いた。

「これでヨン兄さんが神様になった? なんだかあっさりしてるわね」

「見た目も気配も、変わった様子はないな」

「神力の扱い方は、ドクターの神力増幅装置の実験を行う為に習っていましたからね」

 

 タイツとターレスに、4号は感覚を確かめるように手を動かしながら答えた。

 

「では、しばらくの間頼むぞ。もっとも、ピッコロ大魔王の出方次第では長引くかもしれんが」

「そっか。ピッコロ大魔王がスラッグ星に居るんだったら、そのまま宇宙のどこかに逃げちゃうかもしれないのよね。もしかして、今の内からヨン神兄さんって呼んで慣れておいた方がいい?」

 

 地球の神様の言葉に、ブルマがそう言いだす。

「いや、ブルマの姉御、スラッグ星の推進装置は俺とカドがかなり壊しておいたぜ。神精樹を切り離す方を優先したから、気弾を何発か撃っただけだったけど」

「いや、アボ、ピッコロ大魔王以外にもあのコーチンって地球人の天才科学者がいる!」

 

「でもカド様、いくら科学者でも異星人のテクノロジーで作られた大規模な機械を修理するなんて簡単には……でも地球人だしな」

「そうだな。しかも、天才科学者らしいしな」

「天才科学者だったら、一日もあればやっちまうかもな」

『ンダ』

「チッ、敵に回すと厄介な奴等だぜ、地球人の天才科学者は」

 

 そう言いながら、何故か儂とブルマを見るクラッシャー軍団の面々とナッパ。まあ、言いたい事は分かるし、確かにコーチンならスラッグ星の修理も可能かもしれない。

「ちょっと、睨まないでよね。それに、コーチンって科学者に修理させないでも、あいつらが持っているドラゴンボールを使って直したら、一瞬で元通りになるじゃない」

 

「その通りだが、恐らくピッコロ大魔王が地球から離れる事はないじゃろう。仕切り直しと言った通り、体勢を立て直したら再び攻撃を仕掛けてくるはずじゃ」

 しかし、儂はブルマが言うようにピッコロ大魔王がこのまま逃げるとは考えていなかった。

 

「え? なんで? 合体した後は確かにパワーアップしていたけど、大猿化したセリパさんやトーマさんには勝てなさそうだったわよ、あいつ」

「それは地球にはピッコロ大魔王と一心同体の……正確には今は違うが識別が面倒なので神様と呼ぶが……神様がいるからじゃよ」

 

「俺達が神様を殺す事で奴を倒そうと考えるかもしれないと、奴が考えると言う事か? チッ、舐められたもんだぜ」

 ラディッツの言う通り、ピッコロ大魔王からすると儂等が地球の神様を絶対に殺さないと信じる事は難しいだろう。だが、それだけではない。

 

「ピッコロ大魔王とコーチンはスラッグと違い、儂等が時間とともに急速に力をつけている事を知っている。時間を置いて戦力を充実させても、その時には儂等がそれ以上強くなっているかもしれないと考えるはずだ。実際、その通りだったのだからな」

 

 儂の想定を超えて強くなったピッコロ大魔王一味だが、それでもターレスやベジータ王子、ブリーフ達の暗殺を狙った。それは正面から戦ったのでは勝ち目が薄いと理解していた証拠だ。

 

「……ピッコロ大魔王も随分変わったものだ。奴の配下に殺されたクリリンがあの世に行けたのが、その証拠。コーチンと言う科学者を協力者として置いている事で、奴らに何か変化が起きたのかもしれんな」

 神様がそう呟いたが、その時の儂の耳には届かなかった。

 

「とはいえ、ピッコロ大魔王も勝ち目も無く攻めてはこないだろう。ドミグラも協力しているようだしな。

 それを儂等が座して待つ事はない」

「じゃあ、精神と時の部屋で修行か?」

 

「それもいいが……実は、儂も人工衛星を使った実験で、神精樹を栽培していてな。万が一の時のためにこんな物を用意してある」

 儂はそう言いながら、神精樹の実のエキスカプセルを収納したホイポイカプセルを取り出し、スイッチを押した。




戦闘力推移

・ラディッツ:74万5千 → スーパーサイヤ人化 → 3725万 最終形態のフリーザの背中に埃をつけられる強さ。
・ナッパ:43万5千 → スーパーサイヤ人化 → 2175万 髪は無いが髭が金色になる。



〇真8号

 データを旧ボディからダウンロードしたため、中身は同じ。永久エネルギー炉搭載で、装甲はカッチン鋼製。関節部分が弱点だったコーチンが作ったロボットマンと違い、カッチン鋼の加工技術を高めたゲロが時間をかけて設計したため致命的な弱点という程ではない。

 気を感知するパワーレーダーや魔力やキリ、神力を感知する各種センサーを搭載。スカウターとの通信も可能。
 さらに手にエネルギー吸収装置も搭載されている。ただ、動力がエネルギー吸収型ではないため吸収できる限界は低い。吸収したエネルギーは、一時的なパワーアップに使える。

 ただし外見は劇場版『最強への道』と同じ巨体バージョンのまま。

 最終形態フリーザがフルパワーになった時よりも戦闘力では弱いが、永久エネルギー炉によって疲労せず、更にカッチン鋼の装甲とエネルギー吸収装置があるため、一対一なら確実にフリーザに勝てる。

 なお、旧ボディに使われていたカッチン鋼は、16号用のパーツにリサイクルされる予定。


 excite様、ナインボール77様、ぱっせる様、PY様、ダイ⑨様、MMZK様、ヴァイト様、佐藤東沙様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。返信が遅れてすみません。
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