ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
ピッコロ超魔王とコーチンは、ドミグラの手によって地球からスラッグ星に降り立った。
「ここは、あのナメック星人がいた星か? あれは神精樹か。そのせいか、見るからに滅びかけている。こんな星に儂等を連れてきてどうする気だ?」
「それはお前達が考える事だ」
コーチンに問われたドミグラは普段通りの口調で、しかしきっぱりと彼等との間に距離を置いた。
「私は茶番劇への出演料代わりに、ほんの少し協力しただけに過ぎない。お前達の仲間になった覚えはない」
「なんだと!? 貴様……!」
「構うな、コーチン。儂もこいつを仲間や手下だとは思っておらん。妙な奴が気まぐれを起こしているだけだ、利用しても信用するつもりはない」
気色ばむコーチンを制止するピッコロ超魔王。しかし、何かあればすぐさまドミグラを殺そうと考えているのは明らかだった。
(それで構わん。今しばらくは時間が必要だからな)
歴史が分岐した事で大量のキリを手に入れる事に成功したドミグラだが、まだ歴史改変を止める気はなかった。そのため、彼も時の界王神と同じくこの歴史が辿るべき未来について知る必要があった。
ドミグラがこうしてピッコロ超魔王と行動をともにしている間も、シャメルがこの歴史の未来について調べている。……ロベルは泥のように眠っているので、彼が頼りだ。
(私はもう少しピッコロ超魔王に手を貸してやるか。せっかく起きた歴史改変だ、簡単に終わっては起こした甲斐が無いからな)
ピッコロ超魔王一味がゲロ達に勝たなくても構わないが、善戦はして欲しい。ドミグラがそう考えていると、ピッコロ超魔王が「ゴフッ!」とせき込みながら何かを吐き出した。
「この石の球は何だ?」
「儂に吸収されたスラッグが、そこのドミグラの配下の口車に乗って作り出したドラゴンボール……のはずだったのだがな」
「なんと、この星にも伝説のドラゴンボールがあったとは!」
ピッコロ超魔王が吐き出したのは、スラッグのドラゴンボールだった。かつて地球で伝説を耳にしていたコーチンはしげしげとそれを見つめるが、しかし七つのボールは全て石に変わってしまっていた。
「どういうことだ? 貴様の手下がウソを言ったのでなければ、儂が死なない限りボールは使えるはずだが?」
「ロベルの名誉にかけて、その通りだ。だが、正確にはお前ではなく、スラッグが死なない限り、だがな」
「フン、同じ事だ。スラッグは儂の一部となって生きている」
「残念ながら、ドラゴンボールにとってはそうではないのだ。合体の結果主体になったのが、スラッグだったら石にならずそのままだったのだがな」
ドラゴンボールは創造者の死以外でも、創造主が合体によって他者の一部になった場合でも使えなくなってしまう。原作でも、人造人間編でピッコロが地球の神と融合したためドラゴンボールが使えなくなってしまった。
ロベルはドミグラの策ではスラッグがピッコロ超魔王を吸収する予定になっていたため、その事を彼に伝えていなかったようだ。
「では、どうすれば再びドラゴンボールが使えるようになるのだ?」
「お前がこの星の新しい神に成ればいい。それでドラゴンボールは蘇る」
そう語るドミグラに、ピッコロ超魔王は顔を顰めて言い返した。
「簡単に言ってくれるが、本当に儂が神に成れるものなのか? そもそも儂が地球の神と別れたのは、奴が神に成るためだったのだぞ」
かつて地球の神は、師である先代地球の神から僅かに悪の心を持っている事を見抜かれ、それ故に後継者にする事は出来ないと言われていた。そのため、彼は修行によって自身の中の悪の心を追い出す事に成功し、地球の神となった。
その悪の心が実体化した存在であるピッコロ超魔王にとって、自分のような悪人が神に成れるというドミグラの言葉には、うさん臭さしか感じなかった。スラッグの記憶があってもだ。
「それは地球の神の選考基準が厳しいだけだろう。止める者もいないのだ、構わず就任すると良い」
しかし、ドミグラの言う通り止める者がいなければ、悪人でも神に成る事は可能だ。だからこそ、先代地球の神のように弟子に対しても厳しい選抜が行われる。
「いいだろう。たしか……こうだったな」
スラッグの記憶を探り、手を挙げ何かを掴むようにして拳を握るピッコロ超魔王。その途端、彼の体が淡く輝き、石の球だったドラゴンボールが元通りの輝きを放った。
「石の球がドラゴンボールに戻ったぞ! どうやらウソではなかったようだな!」
「では、さっそく神龍を呼び出すとするか。出でよ、神龍!」
呼び出された神龍は、創造主が変わった事に特段の反応は示さず、『さあ、願いを言え』とスラッグに呼び出されていた時と同じ要求を口にした。
「では、儂と一心同体の地球の神をここに呼び寄せろ!」
ピッコロ超魔王がまず考えたのは、自身の命の確保だった。いくら彼が若さを取り戻し強くなっても、片割れである地球の神が死ねば彼も死んでしまう。
これまでしなかったのだから、地球の神が自殺する事は無いと思いたいが、確実ではない。それに、人間達がナメック星人について知っているのだ、地球の神も自身のルーツについて知っているだろう。
(地球の神が後継者をナメック星人から見つけ、神の座を継がせた後に自殺するかもしれん)
神でなくなれば自殺できる。ピッコロ超魔王も4号と同じ懸念を持っていた。
そして呼び出した後は拘束してコーチンに洗脳改造させ、自分同様に若返らせようと考えていた。
『……残念だが、その願いを叶える事は出来ない』
しかし、いきなり出鼻が挫かれてしまった。
「なんだと?」
「馬鹿な、どんな願いでも叶えられるのではなかったのか?」
『私は創造者……今はお前だが、お前の力を超える願いを叶える事は出来ない。お前の片割れの力……神力はお前を超えている』
「馬鹿な。魔神精樹の実を喰らい続けたピッコロ超魔王が、貴様を創造したスラッグを吸収したのだぞ! 並みの神を超えられぬはずが無い!」
そう断言するコーチンに、ドミグラが「いや、思い当たる事がある」と口を挟んだ。
「おそらく、ドクター・ゲロの仕業だろう。奴は装着者の神力を増幅できる装置を発明していたはずだ」
「神力を増幅だと!? そんな事が可能なのか? 俄かには信じ難い……」
「私も同感だが……事実だ」
かつて時の界王神に成ろうとしたドミグラにとっても、ゲロが神力を増幅する装置を発明した事は信じ難い出来事だった。初めて知った時は、思わず歴史を繰り返し確認したほどだ。
「なんと言う事だ。奴の科学力は神の領域にまで踏み込んでいるというのか。まさか、人造の神でも創るつもりなのか!?」
戦慄するコーチンだったが……その頃地球では、人造人間4号が神代理に就任していた。
「なら、儂の片割れを不老不死にする事も不可能か?」
『本人が抵抗した場合は不可能だ』
「ふん、ならば仕方あるまい。奴をどうにかする方法は後で考えるとしよう」
ピッコロ超魔王はそう言って思考を切り替えた。地球の神に言う事を聞かせる方法については、ゲロ達に勝った後で地球人類を人質に迫ればなんとかなるだろうと漠然と思い描いている。
なお、ゲロやブリーフ達をドラゴンボールで召喚し殺す事も考えたが、成功したとしてもコーチンが死者を狂暴魔族戦士に改造して復活を防ぐ策はばれているので、手を打たれる可能性が高いと考え止める事にした。
「なら、まずはあの宇宙船とこの星を破壊される前の状態に戻せ、あの神精樹も含めてな」
『容易い願いだが、神精樹を元に戻すとこの星は結局滅びてしまうぞ』
「構わん。それとも、この星が滅ぶとまた石になってしまうのか?」
『いや、この星が滅びても私には問題ない。いいだろう』
創造者や神がいなければ石になってしまうドラゴンボールだが、創造された星が滅ぼされても問題なく使う事が出来る。原作でも魔人ブウ編で地球が魔人ブウに破壊された後も、デンデが生存していたためドラゴンボールは使用可能だった。
神龍の目が光り、まるで時間が巻き戻されていくかのように破壊された大地が戻り、神精樹の根が大地に繋がり、宇宙船に開いた穴が塞がる。
「宇宙船や星を直して宇宙に旅立つつもりか? つまらないが妥当な判断だな」
星や宇宙船を直したピッコロ超魔王の意図を、ドミグラはそう読んだ。この惑星クルーザーなら、ゲロが気を感知できる範囲や人工衛星の監視網から逃げる事も、勝てる算段が付くまでの間の拠点にも最適だったからだ。
「馬鹿め、儂等がそんな下らん真似をするわけがあるまい」
「勝算は重要だが、それを得るためとはいえ奴等相手に時間をかけるのは悪手だ。奴らは恐ろしいスピードで力を蓄えるからな」
しかし、それはドミグラの思い違いだった。時間をかければかけるほど、ゲロ達は強くなっていく。
それが今日仕掛けた暗殺作戦までに何年も時間をかけた、ピッコロ超魔王とコーチン共通の認識だった。
「だが、戦力が足りないのは事実だ。よって神龍よ、死んだ儂とスラッグの手下を生き返れるだけ生き返らせろ! もちろんこの場にだ!」
『容易い願いだ』
神龍の目が輝き、殆ど生き物がいないスラッグ星に魔族達の集団が現れた。
「お、おおっ! ピッコロ大魔王様!」
「俺達は生き返ったのか!?」
その先頭に居るのはもちろんピアノやタンバリン、つい先ほど悟空達に敗れた魔族四名だ。彼らはクリリンより幾分後で死んだため、まだ閻魔大王の宮殿の前で並んでいて、裁判を受ける前に生き返った。
「こ、ここはスラッグ星ダボ! 俺達は地獄行きになったはずじゃなかったダボか!?」
「馬鹿な、俺達は死んだんじゃなかったのか!?」
「そうかっ、スラッグ様がドラゴンボールで俺達を生き返らせてくれたんだ!」
「やったぜ! スラッグ様万歳! ……ん? スラッグ様はどこだ?」
「ひ、ひぃっ、またスラッグ様に殺される! もう殺されるのは嫌だーっ!」
そして、ピアノ達の次に現れたのが最近死んだドロダボやメダマッチャ、そして兵士を含めたスラッグの部下達だった。彼らはスラッグが自分を生き返らせてくれたと誤解して歓声を……ギョーシュは悲鳴を上げている。
彼らはクリリンより先に死んでいたので、既に閻魔大王の裁きを終えて地獄に向かう途中だった。スラッグに踏み潰されたアンギラや処刑されたギョーシュ、そして兵士達は魔族に殺されたため、そもそもあの世に行っていない。
「ここはいったい?」
「ぐ、ぐぁぁっ! た、太陽の光がっ!」
そしてドロダボ達の次に現れたのは、以前死んだスラッグの部下やピッコロ超魔王が封印される前に生み出した魔族達の内、生まれ変わっていない者達だった。
ただし、このままだと日光を浴びてスラッグの部下はまた死ぬ事になるが。
「チッ、日光は克服したのではなかったのか?」
「スラッグがどう神龍に願ったのかまでは知らんが、既に死んでいる部下までは対象外だったのだろう」
「仕方がない。再び出でよ、神龍!」
また死なれては面倒なので、ピッコロ超魔王は二つ目の願いを叶えてボールに戻っていた神龍を再び呼び出した。
『さあ、ね――』
「こいつらに光に対する耐性をつけさせろ! 地球人と同じ程度で構わん!」
『容易い事だ』
そして神龍の口上を遮って願いを叶えさせた。そのお陰で、目を抑えて苦しみのたうち回っていたスラッグの部下達が再び死ぬ事は防がれた。
『さあ、二つ目の願いを言え』
そして、神龍に二つ目の願いを言うよう促され、ピッコロ超魔王は考え込んだ。「二つ目の願いは無い」と言ってボールに戻しても構わないのだが、つい何かないかと探してしまう。
「コーチン、貴様が心酔していたウィローとやらを生き返らせたらどうだ?」
ピッコロ超魔王が思いついた願いは、ドクター・ウィローの復活だった。コーチンが復讐を優先しており、いつしかウィローの名を口に出す事も少なくなっていたため、彼の中では印象が薄く今まで忘れていた。
しかし、余った願いの使いどころとしては妥当ではないかと思ったようだ。
「ウィローと言うと、コーチン様が真の天才と称する科学者!」
「それほどの天才なら、ピッコロ大魔王様の役に立つことは確実! さあ、あの世から呼び戻してやろうぜ!」
ピアノ達も賛成し、コーチンにウィローを生き返らせるよう促した。
「いや、ドクター・ウィローを生き返らせてはならん」
だが、コーチンは神妙な顔つきで目を閉じ、首を横に振った。
「何故だ? お前が儂の封印を解き、地球を地獄に叩き落とそうとしたのは、そのウィローを殺され研究が奪われたからだったのではなかったのか?」
「そうだ、ピッコロ超魔王。儂は今でもドクター・ウィローを敬愛している。彼以上の頭脳は存在しないという確信は揺るがん。
だが、それだけに分かるのだ。ドクター・ウィローが復活したらピッコロ超魔王、必ずお前の肉体を手に入れようとするだろうとな」
世界で最も優れた頭脳であるウィローは、世界で最も強い肉体を求めていた。そしてピッコロ超魔王は現在コーチンが知る中で最も強い肉体の持ち主。ウィローが野望を忘れていなければ、確実に彼の肉体を狙っただろう。
二つの巨悪が真の意味で並び立つことは無いのだ。
「それでも昔の儂なら構わなかっただろう。いや、むしろお前をウィローに差し出そうとしたかもしれん。だが……今の儂はそれよりも見たくなったのだ。ピッコロ超魔王よ、儂が心血を注いで改造したお前がこの世に作り出す地獄が! そしてお前が何処まで行くのか、その行く末を!」
地球の神は片割れであるピッコロ超魔王が変わったと言っていたが、それはコーチンにも当てはまる事だった。
以前はドクター・ウィローの従順な信奉者だったコーチンは、復讐をきっかけに己の野望を抱くようになり、一人の悪党としての自我を確立していたのだ。
「だからドクター・ウィローを生き返らせる必要はない。願いは……そうじゃな。地球に置いて来た儂の研究機材と魔神精樹をここに持ってきてくれ」
『容易い願いだ』
神龍の目が光り、地球の隠れ家に置いて来た研究機材や魔神精樹が現れる。だが、ピッコロ超魔王の口元に浮かんだ満足げな笑みはそれらが手元に戻った事ではなく、コーチンの言葉によるものだった。
「よくぞ言った、コーチン。それでこそ我が頭脳、我が右腕だ!」
「魔族の王と悪魔の科学者が組めば、地球だけではなくこの宇宙全てを支配する事も夢ではないでしょう!」
コーチンが精神的にもウィローの信奉者ではなく、ピッコロ超魔王の同盟者となった事で彼等の士気は劇的に高まったのだった。
「はぁ、はぁ……し、死ぬかと思った。いや、待てよ? 俺はスラッグ様に殺されたはずじゃなかったのか?」
「い、生きてる。俺達は生きているぞ!」
一方、生き返ったスラッグの部下達はようやく落ち着いたのか、それぞれ周りを見渡したり自身の体を確かめるなどして、やっと状況を把握し出していた。
スラッグの部下の内幹部クラスの者の大半は、魔族であるスラッグに処刑されて死んだためあの世に行っていなかった。フリーザ軍の前身であるコルド軍と宇宙の支配者の座を争っていたスラッグ一味だが、直接コルドやギニュー特戦隊、クウラや直属の機甲師団の面々とぶつかりでもしない限り、4万前後の戦闘力を持つ幹部クラスが敗退する事は滅多になかったからだ。
そしてギョーシュのような技術者魔族の死因は、九割以上がスラッグの機嫌を損ねて処刑された事だったので、あの世に行っていなかった。一人か二人作業中の事故や戦いに巻き込まれて死んでいるが、彼等はそれほど悪事を犯す前に死んだため、既に生まれ変わっており生き返る事が出来なかった。
(ク、クソが! やっとチームリーダーに出世したばかりだったのに! 生き返らせるなんて余計な真似をしてくれたのはどこのどいつだ!?)
あの世……地獄に居た数少ないスラッグ一味の元幹部にして、ベジータ王率いる地獄自警団の一員、ドロメはカメレオンに似た顔に浮かびそうになる怒りを全力で押し隠していた。
だが、すぐに怒っている場合ではないと悟った。地獄で気の感知技術を習得した彼はピッコロ超魔王達が自分より圧倒的に強い事に気が付いたのだ。
(あいつらが俺達を生き返らせたのか。スラッグの姿が無いのが妙だな。……また、あいつの下で働かなくてもいいのは助かるが)
地獄で刑罰を受けているだけだったら、ドロメも生き返る事が出来た事を素直に喜べただろう。しかし、ベジータ王率いる自警団に入って、刑罰の代わりに仕事をするようになると生活は一変した。
少なくとも、生きていた時よりずっと待遇が良い。評価もされるし、昇進もある。生まれた時から地位が固定化され、処刑される事はあっても評価される事は無いスラッグ一味だった時よりも、よほど「生きている」という充実感があった。
なので、ドロメの脳裏に「このまま自分の頭を気功波で撃ち抜いて、地獄に戻ろうか?」という考えが過るのはごく自然な事だった。
しかし、生物の本能として死を忌避する気持ちもあった。それに、死ぬ事はいつでもできる。もし地球が危機に瀕しているなら、なんとしても守らなければならない。
地球はドロメにとって重要な星だった。地球を守るためなら、もう一度死んでも構わない。何故なら――。
(地球が滅びでもしたら、あの美味い供え物が二度と食えなくなる! それだけは、それだけはベジータ王や同僚達のためにも防がなければ!)
何故なら、地球が滅ぶとゲロの秘密研究所がある島に建てられた慰霊碑も破壊されてしまい、供え物が届かなくなってしまうからだ。
ドロメが硬い決意を固めながら様子を伺っていると、彼にとって見慣れない魔族のピアノが声を張り上げた。
「静粛に! 貴様等を蘇らせた偉大なる魔族の王、ピッコロ超魔王様よりお言葉がある」
(ピッコロ超魔王? 聞いた事の無い名だ。……いや、そう言えば交流試合で聞いた覚えがあったな。確か、地球の魔族の親玉だったか?)
ドロメ達がよく見えるようにだろう、ピッコロ超魔王が空を飛び彼らを見下ろしながら語った。
「儂が貴様等を蘇らせたピッコロ超魔王だ。貴様等の前の主、スラッグはこの儂が吸収した! よって、この儂が貴様等の新たな支配者だ! 貴様等にはこれから儂の手足となり、サイヤ人と戦い地球を征服するために戦ってもらう!」
「スラッグ様を吸収しただと!?」
「馬鹿な、あのスラッグ様が!?」
ピッコロ超魔王の宣言に、動揺を露わにするスラッグの部下達。特に、神精樹の実によってスラッグが若い頃以上に強くなった事を知っているメダマッチャやアンギラ達は、とても信じられないといった様子だった。
(そうか、あのスラッグが……。地球の連中にちょっかいを仕掛けたのか。それで負けた後、どういった経緯でピッコロって奴に吸収されてこうなったのかは分からんが、そう言う事だろう)
ドロメにとってスラッグが負けたという事実に衝撃は覚えたが、「まあ、地球にちょっかいをかけたのなら負けるよな」と納得した。
生前は気の感知技術を未修得で、百万以上の戦闘力を計測可能な機器も無かったドロメだが、交流試合で地球の戦士達……特にサイヤ人や人造人間の強さを見ていた。彼らにスラッグが勝つ姿は、全く想像できないので、ピッコロ超魔王の言葉は十分納得できた。
「そんな与太話を信じられるか! スラッグ様と同じ種族のようだが、関係ねぇっ! この俺が叩きのめしてやる!」
しかし、納得できない幹部達の内一人……ゼエウンがピッコロ超魔王に向かっていった。
「待て、ゼエウン! そいつからは得体のしれない気配を感じる、迂闊な真似は寄せ!」
「俺に指図するな、アンギラ! その得体のしれない気配の正体も、俺が確かめてやる!」
同僚の制止も振り切って、ピッコロ超魔王の前に立つゼエウン。彼と違って気を測る事が出来るタンバリン達はその蛮勇を鼻で笑った。
「ほう、身の程知らずがいるものだ。どうします、大魔王……いえ、超魔王様?」
「フッ、威勢の良い奴は嫌いではない。特別に、一度だけこの儂に歯向かう事を許してやろう」
気の感知能力や高性能なスカウターを持たないスラッグの部下達に対して、自身の力を思い知らせるデモンストレーションに丁度いいと考えたのか、ピッコロ超魔王はゼエウンに向かって顎をしゃくるだけで構えようともしない。
「死ねぇっ、イビルインパクト!」
その態度によほど腹が立ったのか、ゼエウンはいきなり必殺技を放った。気を纏って仕掛けるショルダータックルの勢いに、神精樹の実を手に入れる前の世代のスラッグの部下達がどよめく。
「ふむ、見た目通りの技だな」
しかし、ピッコロ超魔王はそれを指一本で受け止めていた。
「ば、馬鹿な!? たとえスラッグ様でも俺のイビルインパクトを指一本で受け止めるなんて不可能なはず!」
目を剥いて驚愕するゼエウンだが、彼の戦闘力は青い神精樹の実を食った事で若干上がって42万9千。だが、ピッコロ超魔王の戦闘力は1憶4300万。桁が三つ異なれば、必殺技を指一本で止めることぐらい簡単だ。
「信じられんか? なら、頬を抓る代わりにしゃっきりさせてやろう。ほれ」
そう言うと、ピッコロ超魔王はゼエウンを指で弾いた。
「ぐぼあっ!?」
それだけでゼエウンはボールのように飛んで行き、先ほどまで彼が立っていた地面に墜落した。
「そんな、ゼエウンが……いくらなんでも指一本で」
「う、ううっ」
慄くメダマッチャや直ぐに立ち上がれず呻き声を上げるゼウエンを見下しながら、ピッコロ大魔王は忠誠を誓う事を迫った。
「さて、これで儂と貴様等の力の差は理解できただろう。ただ、儂も気が長い方ではないのでな。二度目は無いぞ。
それで、何を言えばいいのか分かるな?」
「ちゅ、忠誠を誓います。今からあなた様がボスです、ピッコロ超魔王様!」
「どうか、命ばかりは、お助けを!」
「ピッコロ超魔王様万歳! ピッコロ超魔王様万歳!」
ピッコロ超魔王に慌てて膝をつき頭を下げるメダマッチャに、なんとか起き上がったが態度を百八十度翻し命乞いを始めるゼエウン、そして残りのスラッグの元部下はピッコロ超魔王の名を讃え彼の部下になった。
ドロメもとりあえず周りに合わせてピッコロ超魔王の名を叫ぼうとした時、見覚えのある顔を見てハッとした。
(あいつは、たしかゼーダン!)
死んだ時代は違うが、生前は同じスラッグの配下だったため顔と名前を憶えていた。しかし、ゼーダンはドロメと違いベジータ王率いる自警団に参加せず、ドロメの事を裏切り者呼ばわりしていた奴だ。
そしてドロメが気づいたとほぼ同時にゼーダンも彼の存在に気が付いたようだった。そして、彼を指さして口を開こうとする。
「ピッコロ超魔王様、こいつはサ――」
「こいつはサイヤ人の手先、裏切り者だ!」
とっさに、ドロメはゼーダンの声を掻き消そうと大声で叫びながら彼に向かって殴りかかった。
「な、なにっ!? 裏切り者は貴様の――ごふっ!?」
「言い訳は見苦しいぞ、この裏切り者めっ! ピッコロ超魔王様が手を下すまでもない、俺様が始末してやる!」
抵抗するゼーダンだったが、ドロメは彼に濡れ衣を着せながら拳を叩き込む。元々は殆ど実力に差が無かった二人だが、自警団に参加して地獄の刑罰並みに厳しいトレーニングを重ね、交流試合や同僚との組手で技を磨いたドロメに、ゼーダンは歯が立たない。
「ギャーッ!?」
「チ、チクショウっ、この裏切り者め!」
「黙れ、貴様こそ裏切り者だっ!」
「ネタは上がってるんだよ、お前らがサイヤ人の手先だってなぁ!」
ドロメとゼーダンだけではなく、元スラッグの部下達が争いだしていた。それは自警団に参加していた者達が、ドロメに倣って参加しなかった元スラッグの部下に襲い掛かっているからだった。
「クソがっ! また地獄に堕としてやるぜ! イビルキャノン!」
ゼーダンが必殺の気弾を放つ。
「地獄に出戻るのはお前の方だ! イビルラッシュ!」
しかし、ドロメが両手から連射した気弾に貫かれ、ゼーダンは爆発の中に飲み込まれてしまった。
「それで、死んでいたはずの奴等がサイヤ人の手先と言うのはどういうことだ?」
だいたいの決着がついてから、ピッコロ超魔王は勝ち残ったドロメ達の方に尋ねた。
「はい、あいつらは地獄でベジータ王というサイヤ人の手先になっていたんです」
「何? 地獄でそんな事が? ……あの世と言うのは、儂が考えている場所とは異なっていたようだな」
地球の神の分身であるピッコロ超魔王だが、彼が地球の神から分離したのは、彼が神に就任する前。そのため、あの世に関する知識は一般人と同程度だった。
(とりあえず騙せたか。後は、同僚達と協力して宰相殿やベジータ王子と連絡するチャンスを伺うとするか)
そう安堵するドロメや他の地獄自警団のメンバーだったが、この場にはゼーダン達以外にも全てを知っている者がいた。
(とりあえず、黙っておいてやるとするか。ピッコロ超魔王が勝つか負けるか、どちらが我々にとって都合が良いか見極めてからでも遅くはない)
しかし、ドミグラは沈黙を選んだ。
「さて、一度は負けた貴様等をそのまま使っても地球人やサイヤ人に勝てる見込みは少ない。そこで神精樹の実を食って力を底上げするだけではなく、この儂自らが貴様等の潜在能力を起こしてやろう」
そして、ピッコロ大魔王は蘇ったタンバリン達やスラッグの元部下達を手早くパワーアップさせる作業に入った。
「スラッグ様が負けた……奴の言う通りになった」
一方、ドロメが待っているチャンスを懐に忍ばせている男がこっそりとギョーシュ達の中にちゃっかり混じっていた。戦士ではない彼らは、自然とアンギラやドロメ達からやや離れた場所に集まっている。
「カクージャっ! お前も生き返ったのか」
「ギョーシュ、私はお前達と違って殺されていなかった。……それで、お前達に話がある」
カクージャはゲロによって懐にねじ込まれたスカウターを服の上から押さえて、同僚や先達達に話しかけた。
「私と一緒に、寝返らないか?」
〇戦闘力推移
・ゼエウン:39万 → 42万9千
・ドロダボ:40万5千 → 44万5千
・メダマッチャ:42万 → 46万2千
・アンギラ:42万 → 46万2千
未成熟な神精樹の実を食べた事で、戦闘力が一割アップ。
・ドロメ:4万 → 5万 約二年半前に地獄の自警団入りし、トレーニングを積んできた事で生前よりもパワーアップ。必殺技のイビルラッシュは、握り拳大の気弾を連射する技。
〇神に成るための選考基準
これについてはこの作品独自の設定、もしくは妄想になります。
〇ゼーダン
オリジナルキャラ。
コルド軍の精鋭によって殺された事で、あの世に行く事が出来たスラッグ一味の幹部だった人物。地獄に堕ち、ドクター・ウィローの反逆や地獄一武道会を経験するが、ベジータ王の自警団に入る事を良しとせず、入ったドロメ達を逆恨みしていた。
必殺技は巨大な気弾を放つイビルキャノン。スラッグ一味の必殺技の名前には、「イビル」の文字がは入っていたため参考にしました。
名前の由来は星団。
nou様、秋人様、闇谷 紅様、PY様、ダイ⑨様、佐藤東沙様、ヴァイト様、麦茶太郎様、MMZK様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。