ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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141話 ドラゴンボール奪取作戦

 地球でピッコロ超魔王一味と地球側の戦士達との戦いが始まっている頃、スラッグ星から飛び立ったスラッグ一味の宇宙船では、技術者魔族達が裏切りの機会を窺っていた。

「おい、もうそろそろじゃないか?」

「……分かった。

 むっ! 何者かがこの宇宙船に向かって来ているぞ! 凄まじい勢いだ!」

 

 ギョーシュに声をかけられたカクージャは、手筈通りに侵入者がいると出まかせを叫び、手動で警報を鳴らした。

「何者かが本船に接近っ!?」

「モニターに出せ!」

「センサーに反応はあるが、姿は見えない! おそらく光学迷彩か何かで姿を隠しているんだ!」

 

 騒ぎ出す護衛の幹部達に、そう怒鳴り返す。スラッグが健在だった頃は、この時点で殺されていたかもしれない。

「奴らめ、きっとドラゴンボールを狙っているに違いねぇ! 外に出て迎え撃つぞ!」

「おうっ!」

 そして護衛の幹部達は急いで宇宙船の外に向かった。ドラゴンボールによって宇宙空間でも活動可能な体質になっているため、その動きに迷いはない。

 

 そして宇宙空間に出て宇宙船の周りを見回す。

「スカウターに反応がない? 敵はどこだ!?」

「おい、カクージャ、姿は見えなくてもセンサーに反応はあるんだろ!?」

 外に出た幹部達はカクージャにそう尋ねるが、答えは返ってこない。その代わり、突然宇宙船が加速を始め彼等から離れ始めた。

 

「なっ!? おい、カクージャ、ギョーシュ、何故加速した!?」

「俺達を置いてきぼりにするつもりか!?」

 宇宙空間で活動可能になったとはいえ、広大な宇宙に置いてきぼりにされて嬉しいはずが無い。幹部達は慌てて宇宙船を追いかける。

 

「まさか奴等、ピッコロ超魔王様を裏切ってドラゴンボールを持ち逃げするつもりか!?」

「いや、もしかしたら俺達が死んでいる間に受けたって言うサイバー攻撃とやらのせいかもしれないぞ!」

 裏切りか敵の攻撃か、どちらにせよしてやられた事に気が付いた幹部達は、ピッコロ超魔王からの叱責を受ける事の恐怖に青くなりながら宇宙船を追いかけるが、じりじりと差が広がっていく。

 

「このまま逃がして堪るか!」

 そして幹部の一人が宇宙船を止めるためにエネルギー弾を放とうとする。加減と当たり所によっては宇宙船が轟沈して爆発四散してしまうが、カクージャ達が裏切ったなら処刑は当然。もし無実だったとしても、後でドラゴンボールを使って生き返らせればいいと彼は思っている。

 

「止めろっ! 船内にはドラゴンボールがあるんだぞ! ボールが宇宙空間に飛び散ったら、どうやって探し出すつもりだ!?」

 しかし、そのドラゴンボールが船内にある事を思い出した別の幹部が慌てて止めに入った。

 彼等はドラゴンレーダーの存在や性能について、ほとんど知らされていない。だが、それで正解である。

 

 コーチンが開発可能なドラゴンレーダーの精度はブルマが開発した物より低く、何より一つの惑星内で使う事を前提にしている。広大な宇宙空間をカバーする事は不可能だ。

 もしドラゴンボールが宇宙空間に飛び散ってしまったら、ピッコロ大魔王一味が自力で探し出すのは難しかっただろう。

 

「ならどうする!? このまま指を咥えて見てろってのか!?」

「こういう時のためのこいつだ。おい、裏切り者共! 宇宙船の中に入って止めてこい! 絶対に爆発させるなよ!」

 幹部の一人にそう怒鳴りつけられたのは、先日ドロメに裏切り者の濡れ衣を着せられ口封じされたはずの元スラッグ一味の幹部、ゼーダン達だった。

 

『ワカッタ』

 無機質な声で返事をすると、ゼーダン達は急加速して宇宙船に見る見るうちに追いついていく。何と、彼はドロメに再び殺された後死体をコーチンに改造され、狂暴魔族戦士として復活させられていたのだ。

 

 ピッコロ超魔王やピアノ達を改造した経験を活用し、コーチンは短い時間で裏切り者(とされている)ゼーダン達の死体を強化改造して手駒に加えていた。その結果、急造であるためピアノ達には無い人格や改造前の記憶の喪失や欠損という大きな副作用が出ているため、単独での運用は危険と判断され他の幹部の指揮下に置かれる事になった。

 

 その半分程が、ドラゴンボールの護衛に割り当てられていたのだ。

 

「カクージャ、このままだと追いつかれるぞ!」

「ランデブーポイント通過まであと五秒だ!」

「いっそドラゴンボールに願って、地球に運んでもらうのはどうだ!?」

「宇宙船の中で神龍を呼び出すつもりか!?」

 その頃カクージャ達は宇宙船を必死に操作していた。有給休暇や残業手当という概念すら持たなかった彼らは、ホワイトな職場で第二の人生を始めるために命をかけている。

 

(迎えに来たぜ、って言っても思ったより忙しそうだな)

 そしてきっかり五秒後、カクージャ達の意識に聞き覚えの無い女の声が響いた。

(追っ手はあたし達が引き受けるから、あなた達はそのまま火星の方へ行っちゃって。座標はスカウターに送信しておいたから)

 

「わ、分かった! 後を頼むぞ!」

 カクージャがそう叫び返していたまさにその時、ゼーダンが宇宙船に追い付いたところだった。そのまま壁に穴を空け、内部に入ろうとする。

 

『グオ!?』

 その時、彼方から飛来した拳がゼーダンを殴り飛ばし、宇宙船から引きはがした。

 

「へへっ、まさか宇宙船をハイジャックできるなんて腕がなるぜ! オラオラ、動くんじゃねぇ!」

 ゼーダンを殴り飛ばした金髪ランチは伸ばしていた腕を戻すと凄みのある笑みを浮かべて気弾をマシンガンのように連射する。

 

「こういうのって、ハイジャックって言うのかしら? まあ、細かい事を気にするよりも楽しみましょ」

 ランファンも宇宙船を追跡している魔族達に向かって気弾を乱射した。狙いを殆どつけずに放たれた気弾の命中率は高くなかったが、ランファンの戦闘力は255万、ランチは377万。ピッコロ超魔王によって強化された元スラッグ一味の幹部でも、一発受けただけで致命傷になってしまう。

 

「ぎゃっ!?」

「っ! よ、避けろっ! 当たったら死ぬぞ!?」

 運の悪い同僚が一人爆発四散したのを見て、慌てて回避行動をとったために他の幹部達は生き延びる事に成功した。しかし、その間に宇宙船はランチ達の横を通り過ぎ、遠のいていく。

 

『ナンダ、アイツラ!? 殺ス!』

 殴り飛ばされたゼーダンに構わず、他の狂暴魔族戦士達は攻撃してきたランチに対して短絡的に敵意を向け、宇宙船を止めるという本来の役目を忘れ去ってしまった。

 

「ま、待てっ! 先に宇宙船を……ええいっ、邪魔者を始末するぞ! 魔神精樹の実を食えっ!」

 そして元スラッグ一味の幹部達もランチ達をどうにかしなければ宇宙船を止めるどころではないと判断し、持たされていた実を口にする。

 

 それによって、彼等の戦闘力は66万から70万に跳ねあがった。

「うおおおっ、これでもう恐いものは……ぎゃーっ!?」

 しかし、全身に漲るパワーに酔って回避行動を止めた元スラッグ一味の幹部は、ランファンの放った気功波によって体に風穴を空けられて倒された。

 

「馬鹿なっ、パワーアップした俺達をただのエネルギー弾、それも一発で!?」

『邪魔ダ!』

 驚愕する魔族を追い抜いて、殴り飛ばされたゼーダンが戻って来た。彼も魔神精樹の実を食ってパワーアップし、ダメージからも回復している。

 

『死ネェ!』

 そして、戦闘力も十倍の400万にまで上がっている。

「きゃっ! この人達の相手はきついかも!」

 自分より戦闘力が百万以上上の相手に接近され、緊迫した声をあげるランファン。だが巧みな動きでゼーダンの拳を掻い潜り、尻尾で彼の足首を払って反撃まで加えている。

 

「オレはこれぐらいでちょうどいいんだけどな!」

 一方、金髪ランチは四人の狂暴魔族戦士と互角の戦いを繰り広げていた。

 

 力任せに拳や蹴りを繰り出す者や、四肢を鞭のようにくねらせて変則的な攻撃を行う者がいて、なかなかバラエティに富んでいる。

 彼らはゼーダンと同じかそれよりやや上の戦闘力の持ち主で、実は戦闘力がランチより一割ほど高い。それなのに戦況が互角なのは、彼等がまるで連携をしていないからだ。

 

『俺ノ前ニ出ルナ!』

『オ前コソ目障リダ!』

『ガッ!? テメェ、俺ヲ攻撃シタナ!?』

『知ルカ!』

 

 狂暴魔族戦士達は、元は地獄に居たスラッグ一味の幹部達だが彼らは同じ一味出身というだけで生きていた時代はバラバラだ。そのため、連携して戦った経験が無い。しかも、コーチンの改造によってパワーアップした代償に知能が下がっている。

 

 そのため、四対一という有利な状況を全く活かしていないどころか同士討ちを多発する始末になっていた。

(そんな悠長なことは言っていられないでしょ。時間までに倒さないと、フリーザ軍に気がつかれるかもしれないじゃない。後ろから撃ってくる奴らも面倒だし)

 だが、ランファンの方はゼーダンの後方から隙を見ては元スラッグ一味の幹部達が必殺技……「イビルフラッシュ!」や「イビルレーザー!」や「イビルカノン!」を放って来ていて、なかなか苦戦していた。

 

(そう言う訳で、さっさと終わらせるわね!)

「太陽拳!」

『グアァ!? 目、目ガァ!』

 ランファンはテレパシーでそう金髪ランチにそう告げると、太陽拳を放ってゼーダンから間合いを取る。ドラゴンボールによって日光という弱点を克服した魔族達だったが、それはあくまでも通常の生物並みに日光への耐性を獲得しただけに過ぎないため、太陽拳の閃光を受ければ一時的に視覚を失うのは避けられない。

 

『ヨ、ヨクモヤッテクレタナ!』

 激高して殴りかかるゼーダンだったが、彼が視覚を取り戻すまでの間にランファンは神精樹の実エキスのカプセルを飲んでいた。

 

「もうあんたじゃ相手にならないわ! せいっ!」

 戦闘力が倍増し510万になったランファンは、ゼーダンの拳を弾くとがら空きになった胴体に拳のラッシュを叩き込み、止めに投げキッス……ではなく魔口弾を放った。

 

『ガ、ガハァッ!? イ、イビルキャノン!』

 ハート形の気弾を受けて大きく後ろに吹き飛ばされたゼーダンだったが、改造によって増した耐久力のお陰かまだ生きていた。そして、必殺技で起死回生を狙う。

「アサルトフラッシュ!」

 だが、彼の気がまだ消えていない事を察知していたランファンは、同時にネイル直伝の必殺技を放っていた。

 

 断末魔の悲鳴をあげる間もなく閃光に飲み込まれるゼーダン。それを見たスラッグ一味の元幹部達は、決死の覚悟を固める。

「クソッタレが! なんとしても奴らを殺すか、せめて宇宙船を止めるんだ!」

「死を恐れるな! ピッコロ超魔王様に忠誠を誓った俺達は、何度死んでも生き返れる!」

 ドラゴンボールでの復活を経験し、ピッコロ超魔王に忠誠を誓った彼らは死を恐れない。恐れるとしたら、ピッコロ超魔王に見限られて復活できなくなる事だろう。

 

「これはこれでやり難いかも!」

 捨て身でランファンに攻撃を仕掛ける者や、それを囮に離れていく宇宙船を追おうとする者を次々に撃破するランファンだったが、彼等の気迫には押されるものがあった。

 

(たしかに、遊んでる暇はねぇな!)

 元スラッグ一味の幹部達の戦闘力は十倍になっているため、宇宙船に追い付く事は難しくない。また、気弾が掠っただけで宇宙船は航行不能になってしまう。

 金髪ランチは狂暴魔族戦士達で遊ぶのを止め、隙を突いて間合いを取ると懐から綿棒を取り出し自分の鼻先をくすぐった。

 

『……何ヤッテンダ、アノ女?』

 金髪ランチの突然の行動の訳が分からず、思わず呆気にとられる狂暴魔族戦士達。

「くしゅんっ! 四身の拳!」

 だが、くしゃみによって青髪ランチに変化し、四身の拳によって金髪ランチが再び現れたのを目にして驚きを露わにした。

 

 

『カ、数ガ増エタゾ!』

『狼狽エルナ! 俺達モ二手ニ分カレルゾ!』

 ただ数を増やすだけなら、ランチにとって悪手だ。彼女が狂暴魔族戦士達と互角に戦っていられたのは、彼等が同士討ちを頻発させていたからだ。二手に分かれれば、それだけ同士討ちになる可能性が減り狂暴魔族戦士達が戦いやすくなってしまう。

 

「いくぞっ!」

「はいっ!」

 しかし、それはランチ達も分かっているのですぐさま不完全融合によって、一人に戻る。

『ついでだ!』

 そして神精樹の実エキスのカプセルを口に放り込む。これで彼女の力は戦闘力にして1508万に跳ね上がった。

『ナンダ? 一人ニ戻ッタゾ』

『何ガヤリタカッタンダ?』

 しかし、気を感知する技術も高性能なスカウターも無い狂暴魔族戦士達は、ブランチの実力を直ぐに理解する事は出来なかった。

 

『何がやりたかったのかって? 見せてあげます!』

 そして、四人の狂暴魔族戦士を一方的に倒したのだった。

 

 

 

 

 

 

 ピッコロ超魔王が配下に襲撃を指示したポイントは、主要な都以外はゲロ達に縁のある場所だった。とはいっても、彼等の情報収集はテレビや雑誌などのメディアに頼りきりだ。そのためゲロの妻の遺体が保存されている秘密研究所はノーマークだった。

 

 代わりに狙われたのは、テレビ番組や映画撮影で取り上げられた場所だ。しかし、ゲロ達はカクージャからピッコロ超魔王が地球の各地を襲撃するつもりだと情報提供を受け、戦力を各地に配置していた。

「まさか勇者と共闘してこの国を守る事になるとはな!」

「どうせならこのまま君も勇者をやってみるかい、シュラ?」

「遠慮する。魔王の方が気楽だからな!」

 クレス王国では、かつては国を荒らした魔王シュラがゴラやメラを引き連れ、パンプットと共に現れた元スラッグ一味の兵士達と戦っていた。

 

「カプセルを飲んだからと言って油断しないでくださいよ!」

 そして幹部は細身のサイヤ人リークが恋人のメーネの援護を受けながら相手をしていた。

 

 

 

「ここに俺達を配置したのは、きっとあの爺の差し金だ」

「ああ、だろうね」

「いや、うちのレッド将軍も関わってますぜ。そのせいで俺までここにいる訳で……」

 その頃グルメス公国では、脛に傷を持つボンゴとパスタ、そしてオレンジ大佐までが元スラッグ一味の兵士から人々を守っていた。

 

「俺、大佐なんだけどな~」

「大佐や将軍も前線に出るレッドリボン軍に就職したのが運の尽きだったな。ほれ、もっと周りに注意を向けんか。

 天津飯! 最初から飛ばし過ぎるでないぞ!」

「はい、鶴仙人様!」

 そしてぼやくオレンジ大佐を注意する鶴仙人と、天津飯が幹部の相手を受け持っていた。

 

 

 

 映画やドラマの舞台にはなっていないがアックマンが天下一武道会に出場しているために、占い婆の宮殿も狙われる事になった。

「地獄に帰れ! アクマイト光線ーっ!」

「ぎやあああああっ!?」

 しかし、悪の心に満ちた元スラッグ一味の幹部達はアックマンにとってアクマイト光線の格好の的だった。

 

「おっと、貴様等は地獄に堕ちた事が無いんだったな。だったら今度こそ安心確実にあの世に送ってやろう!」

「初めて見たが恐ろしい技だぜ。間違っても俺に当てないでくれよな」

 そして生前はスラッグ一味の幹部だったが、死後地獄でベジータ王率いる地獄自警団の一員になったドロメもここにいた。もっとも、彼は現れた次の瞬間には他の幹部を攻撃していたが。

 

「安心しろ、コントロールも磨いている!」

「ドロメ! 貴様、裏切り者だったのか!?」

 アックマンに続いて、裏切られた事に気が付いた同僚が激高してドロメに怒鳴りながら攻撃を繰り出してくるが、彼は悪びれた様子もなくその攻撃を掻い潜った。

 

「ああ、詫びに新しい就職先を紹介してやる。イビルラッシュ!」

 同じ元スラッグ一味の幹部でも、地獄自警団でトレーニングを積んできたドロメがあの世にも行けず漂っていた者に負ける道理はない。

 

「紹介状は慰霊碑に供えてやるから、地獄で受け取ってくれ」

 断末魔の悲鳴をあげて塵になって消えていく元同僚を、ドロメはそう言って見送った。

 

 他にもウィンタースポーツの一大観光地となりつつあるジングル村では、シルバー大佐やムラサキ曹長ズ、そして真8号が魔族達や狂暴魔族戦士を薙ぎ払っていた。

 チャパ王の宮殿やワンタン王国にも魔族は現れたが、前者はチャパ王本人とその弟子達が、後者は陳大拳やジャガー・バッタ、豹牙天龍とその弟の昇龍が立ち向かう。

 

 東の都では、ナッパが魔族達を迎え撃っていた。

「っ! ここにも敵が!?」

「ピッコロ超魔王様が言っていたサイヤ人か!?」

 狼狽える魔族達に向かって、ナッパがニヤリと笑いながら気を高めていく。

 

「ピーピーうるせぇ奴等だぜ。碌に挨拶も出来ねぇのか? だったら、このナッパ様が見本を見せてやるぜ!」

 クン! と指を上げると同時に巻き起こった衝撃波が魔族達を襲い、兵士達は魔神精樹の実を食べる間もなく木の葉のように翻弄されてしまう。

 

『ブッ殺ス!』

「その程度で俺達を倒せると思うなよ!」

 しかし、幹部や狂暴魔族戦士は魔神精樹の実を喰らいナッパに襲い掛かろうとする。

 

「なかなか活きが良いじゃねぇか。さ~て、どいつで遊んでやるかな」

「おい、ナッパ。俺達の分も残しておいてくれよ」

 だが、スーパーサイヤ人に変身したナッパと彼に続くタロやコレンは臆することなく彼らを迎え撃った。

 

 他にもフライパン山では牛魔王や孫悟飯、パンブーキンが。南の都では亀仙人にサタン、桃白白が。神精樹の枯れ木を利用した建造中の町では、アボとカド率いるクラッシャー軍団の面々が。火星ではマイやラズリとラピス、マロンが。そして各地で多くの戦士達が魔族に立ち向かっていた。

 

「ええい、目まぐるしいわね! もっと詳細な情報は手に入らなかったの!?」

「全部あのピッコロ超魔王が悪いのよ! サイバー攻撃を仕掛けてもコンピューターに情報が無いし!」

「ブルー、ブルマ、文句を言っても仕方ない。頑張れ」

 そして、瞬間移動が使えるブルー大佐、ブルマ、チャオズが戦力の不足している場所に戦士達を届け、場合によっては自ら戦ってピッコロ超魔王一味の侵略を食い止めるのに大きく貢献していた。

 

 今回の侵攻作戦はピッコロ超魔王一味にとってもたった一日で考えた作戦なので、魔族達を送り込む場所はピッコロ超魔王とコーチンの頭の中にしかなく、情報提供者のカクージャも全てを知らなかった。また、コンピューターにサイバー攻撃を仕掛けても無駄だった。

 そのため、彼等三人がいなければ戦士を配置しきれなかった町や村で大きな被害が出ていたかもしれない。

 

 

 

「スラッグめ、手下に与える力を惜しみおって。おかげで地球人共が調子づくではないか」

 地球各地に放った魔族達の気が次々に消えていくのに気が付いたピッコロ超魔王は、そう言って顔を顰めた。

 ピッコロ超魔王がピアノやタンバリンを産む際、戦力が欲しかった彼は「自身の命と力に影響が出ない範囲で」という前提でだが、出来る限り大きな力を与えた。その後、コーチンの改造手術や魔神精樹の実によって差は出たが、少なくとも与える力を惜しんだことは無い。

 

 しかし、スラッグは部下に与える力をかなり惜しんでいた。アンギラやメダマッチャを生み出した時には既に老齢で全盛期に比べると弱っていたが、それを差し引いてもそうとしか考えられない。

 何故なら、スラッグは老体であっても150万以上の戦闘力を持っていたのに、生み出したアンギラ達の戦闘力は4万前後。彼の3%にも届かない力しかない。

 

 これはピッコロ超魔王が部下を戦力と見なしていたのに対して、スラッグは手下を替えの利く手駒程度にしか考えていなかった事の表れだろう。……それに、あまり力を与えると簡単に処刑できないからという理由もありそうだ。

 

 実際、もしスラッグがメダマッチャ達幹部だけでも自身の三割ほど力を与えていたら、このドクター・ゲロもやすやすとは襲撃できなかっただろう。

 

「フンッ、ご自慢の軍勢も大したことは無かったようだな!」

 そんなピッコロ超魔王の顔面に向かって拳を繰り出すベジータ王子。しかし、彼はそれを回避すると逆にベジータ王子の胴体にジャブを叩き込んだ。

 

「ぐぉっ!」

「さっそく調子に乗りおって。奴らは雑兵に過ぎん。ドラゴンボールさえあれば、何度でも蘇らせる事が出来るのだからな。貴様もその一員にしてやろう。

 そのために、一度息の根を止めねばならんがな!」

 

 呻いて前のめりになったベジータ王子の頭部に、エルボーを叩き込もうとするピッコロ超魔王。

「だから、さっさとカプセルを飲めって言っただろ!」

「意地を張るのはここまでだよっ!」

 そこにトーマとセリパが割って入った。二人とも既に姿を変えずに戦闘力のみ十倍にする変身をしている。

 

 トーマがピッコロ超魔王に向かって気弾を放ちながら殴りかかり、セリパがベジータ王子を後方に向かって放り投げる。

「その力は、大猿化か。パワーボールとやらが放たれている様子は無いが……あれか!」

 トーマの気弾を弾き、拳や蹴りを捌きながらピッコロ超魔王は、夜明けの空の一角に存在しないはずの満月が輝いているのに気がついた。

 

 ベジータ王子のパワーボールではなく、ピラフ大王が火星から飛ばした人工満月だ。トーマから連絡を受けたピラフ大王が、一晩で何とか二号機を組み上げてくれたのだ。

「チッ、ここからでは遠いな」

 地球の大気圏内で輝くパワーボールと違い、人工満月は宇宙空間で輝いている。そのため地上から、それも戦闘中に撃ち落とすのは難しい。

 

「簡単に強くなりおって、貴様等が地球に来たお陰で、世界征服がどれほど難しくなったか分かるか?」

「それはこっちのセリフだぜ! どうやって俺より強くなりやがった!?」

 満月を見た事で戦闘力にして2億程の力を発揮しているトーマの拳を受けても、大きなダメージを受けている様子のないピッコロ超魔王。

 

 彼の戦闘力は、地球に降り立った直後は1億8600万。ナメック星編で初めてスーパーサイヤ人になった悟空より若干強いが、満月を見たトーマには及ばない。だが、ベジータ王子と戦っている間に懐から取り出した魔神精樹の実を食べた直後、なんと2億7900万にまで上昇した。

 

 神精樹の実は、未熟な神が力を得るための物だ。そのため、憶単位の戦闘力を持つ者はたとえ地球を苗床にしたものでも神精樹の実を食べて戦闘力を上げる事は出来ない。

「何を不思議がっているか分からんな。儂等がこの実で強くなった事は貴様等も知っていたはずだが?」

 しかし、ピッコロ超魔王達が食べている神精樹の実はその限りではないらしい。

 

 ターレスダークと共に他の歴史から来た神精樹ダークのように、キリで強化されている訳ではなさそうだ。そのため、コーチンが何らかの改造をした結果ピッコロ超魔王達魔族の体質にあった神精樹に変化したのかもしれない。

 

 これでこちらの最大戦力であるトーマをも超える強敵になったピッコロ超魔王だが、儂等も彼の好きにやらせるばかりではない。

『ピッコロ超魔王っ! ドラゴンボールを運んでいる宇宙船との通信が途絶した!』

 ドラゴンボールによって地球に来て早々姿を消してどこかに潜んでいるらしいコーチンが、カクージャ達の裏切りに気が付いたのだ。

 

「なんだと?」

『護衛につけた狂暴魔族戦士の反応も消えておる。おそらく、この場に居ない人造人間かサイヤ人の仕業じゃ!』

「チッ、体力を消費してでも新たな子を産み護衛につけるべきだったか」

 ドラゴンボールの性質上、願いを叶えた後飛び散る事は変える事が出来ない。そのため、ドラゴンボールの願いで地球に移動したピッコロ超魔王はスラッグのようにドラゴンボールを飲み込んで守る事が出来なかったのだ。

 

「どうした? 元々悪い顔色が更に青ざめてるぜ!」

 神精樹の実カプセルを飲んで、スーパーサイヤ人時の戦闘力が9700万から1億9400万に倍増したベジータ王子が戦線に復帰する。

 

「はっ! たいした事はない、貴様等の顔を土気色にした後で奪い返せばいいだけの事よ!」

 だが、ピッコロ超魔王はドラゴンボールを奪われた動揺を見せずベジータ王子とトーマ、そしてセリパの三人を一度に相手取って全く引かない。

 

 キングキャッスル前の戦闘は厳しさを増すばかりだった。

 

 




〇戦闘力推移

・元スラッグ一味の幹部 3万9千から4万2千 → 潜在能力解放&スラッグ星の神精樹の実 → 6万6千から7万 →魔神精樹の実 → 66万から70万

・ランファン:255万 → 神精樹の実エキスのカプセル → 510万
・ランチ:377万 → ブランチ化した場合 → 754万 → 神精樹の実カプセル → 1508万  

・ドロメ:5万 → 潜在能力解放&神精樹の実 → 8万5千 → 魔神精樹の実 → 85万

・ピッコロ超魔王:1億4300万 → 潜在能力解放 → 1億8600万 →魔神精樹の実 → 2億7900万 潜在能力解放によってフルパワー時のフリーザを越え、ナメック星編時のスーパーサイヤ人悟空とほぼ互角になったピッコロ超魔王。魔神精樹の実を食べる事で、一時的に戦闘力を1.5倍にする事が出来る。



〇狂暴魔族戦士ゼーダン

 コーチンによって死体を改造され、復活した。戦闘力は生前の約十倍にまで増大している。だが、その代償として生前の人格や記憶を喪失、もしくは欠損するという副作用が出ている。
 ただ、コーチン達はゼーダン達を裏切り者だと思い込んでいるため、人格や記憶が損なわれた方が手駒として扱いやすいと考えている。

 戦闘力はゼーダンの場合は4万から40万に上がっており、魔神精樹の実を摂取すると400万になる。他の狂暴魔族戦士の戦闘力は39万から42万で、実を摂取後は390万から420万。



〇神精樹の実エキスのカプセルの効果。

 滋養強壮、疲労回復、戦闘力増大。
 服用すると一時的に、素の戦闘力が1万未満の場合10倍、1万以上100万未満の場合5倍、そして100万以上1千万未満だと2倍、1千万以上の場合は変化なし、となる。

 持続的な戦闘力の増強は、戦闘力1万未満は5割増し、1万以上100万未満は3割増し、100万以上1千万は1割増し、1千万以上だと増強効果は無しとなります。



〇スラッグの手下

 ピッコロ大魔王の手下に比べて、スラッグの手下は親に対する戦闘力の比率が低すぎると作中で書きましたが、他にも「原作ピッコロ大魔王(老)の戦闘力は230で、1割や2割では武道家の容易く倒されてしまいかねないので、5割前後の力を与えなければならなかった」という事情もあったのかなと思いました。

 また、スラッグも平均的な種族の最強の戦士の戦闘力は1千程と言う宇宙を荒らしまわるなら、手足となる手下に与える力は、4万前後もあれば十分だった、という理由もありそうです。
 ライバルのフリーザ(コルド)軍にも、万単位の戦闘力を持つ者は少数だったようですし。



 ot3様、佐藤浩様、ダイ⑨様、両生金魚様、鱸の丸焼き様、変わり者様、PY様、 gsころりん様、タイガージョー様、リースティア様、ヴァイト様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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