ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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18話 牛魔王の奥様は人造人間

 悟空と会い、パオズ山から西の都に帰った数日後、悪もまた動きだしていた。

「そろそろのはずだが……」

 背の高いスキンヘッドの黒人、ブラック補佐は街から離れた谷に護衛の兵士と共に取引相手を待っていた。

「ブラック補佐っ、上です!」

 その護衛の兵士の一人が、音もなく谷を降りてくる人影に気が付いた。

 

「ペッペッペ……時間通りに来ていただけて喜ばしいばかりだッペ」

 そこに居たのは、もっさりしたアフロヘアにサングラスをかけた小太りな男だった。

「……ドクターフラッペ、お初にお目にかかる。だが、兵士たちをあまり驚かせないで欲しい」

 

「ペッペッペ、これは失礼。取引に応じていただき、感謝しているっペ」

 そう、彼こそがドクターフラッペ。天才科学者であるゲロがレッドリボン軍とコンタクトを取るために作った、本当は存在しない悪の科学者である。

 

(今にして思うと、キャラを作り過ぎたかもしれんな)

 なのでもちろんその正体はこの儂、天才科学者のドクターゲロである。変装用の特殊なカツラにボイスチェンジャー付きマスク、スーツを装着しているため、まず見ただけでは……いや、直接触れ検査機器で調べたとしても、まずばれる事は無い。……かなり気合を入れて開発したからの。

 

「空を飛んでいたようだったが?」

「それは反重力装置だッペ。欲しければ、次回の取引で売っても構わないッペよ?」

 このボイスチェンジャーは、儂の声を自動的にフラッペ訛りに変換してくれる便利仕様となっている。反重力装置と言うのは嘘だが。

 

「いや、今は結構。それで、我がレッドリボン軍に戦闘用ロボットを売りたいそうだが……何故だ?」

「ペッペッペ、恥ずかしながら資金難だッペ。桃白白に勝てる新型ロボットの構想は既にボクの頭の中にあるっペが、実際に開発するには十分な資金が必要不可欠だッペ」

 と言う筋描きである。

 

「なるほど……それで、開発したロボットも次の取引で我が軍に売ってくれるのか?」

「それはチミ達次第だッペ。それに、まずは最初の取引に対して誠実さを見せてほしいッペ」

「分かった。おいっ」

 ブラック補佐が兵士たちに向かって顎をしゃくると、彼らが乗ってきた軍用トラックの内一台が儂(フラッペ)の横で停車する。

 

「荷台に代金の百億ゼニー相当の貴金属が入っている」

 一つの取引で百億ゼニー……前世の通貨に換算して百億円。世界的超企業の会長をしていなければ、想像も出来ない大金だ。

 しかし、戦車やジェット戦闘機より高性能な戦闘用ロボット数十機の値段としては格安だろう。しかし、貴金属?

 

「現金を指定したはずだッペ」

「すまないが、大量の現金を用意するのに手間取ってしまった。迷惑料代わりに一割ほど上乗せしてある」

 悪びれもせずそう言うブラック補佐だが、おそらくフラッペが貴金属を換金する際に自分達が追跡出来る物を幾つか混ぜているのだろう。

 

 それでフラッペの正体を探り、判明した情報を交渉材料にして次回以降の取引を有利に進めようというのだろう。

「……なら、構わないッペ」

 ただ、儂は今回の取引で手に入れた資金はレッドリボン軍が壊滅するまで寝かせておくつもりだから、何を企んだとしても構わんが。発信機が紛れ込んでいたとしても、ジャミングするので問題ない。

 

「では、これが約束の品だッペ」

 そして儂は用意していた旅行鞄を二つブラック補佐の部下に手渡す。中には戦闘用ロボットを合計数十機分収納したコンテナのホイポイカプセルが入っている。

 以前桃白白が倒したロボットと、全く同じ性能なので、普通の軍では太刀打ちするのに五倍の戦力が必要になるはずだ。

 

 もう一つの旅行鞄には、ロボットを操作するためのリモコンや操作や整備のためのマニュアルが入っている。

「では、さらばだッペ。次の取引を希望するなら、連絡してほしいッペ」

 そして儂は、反重力装置(サイコキネシス)で軍用トラックを持ち上げ、谷の上に戻っていったのだった。

 

 そして、十分離れたところで軍用車両から代金を回収してホイポイカプセル化し、瞬間移動でアジトに帰還し、代金を念のために検査する。すると、貴金属の中にリッチストンが含まれていた。

 

「これは確か、リッチストンじゃったな。この世界一の宝石と呼ばれている……なるほど、レッドリボン軍もセンスが良いな」

 ルビーをややピンクにしたような大粒の宝石、リッチストンはこの世界ではダイヤモンドよりも価値のある宝石だとされる。

 売れば莫大な額が手に入るが、間違いなく足が付く。かといって、売らずに死蔵すれば、資金難の解決は難しい。

 

 まあ、儂の「資金難」はただの口実なので、やはり死蔵するが。

 

「さて、では研究所に帰るとするか」

 なお、戦闘用ロボットはレッドリボン軍と利益が競合している他の傭兵団や犯罪組織相手に猛威を振るったようだが、その力を一般人に向けようとした際に街の警備に雇われていたGCGの隊員達によって破壊される事になったようだ。

 

 

 

 

 

 

 孫悟空が地球に飛来してから三年が経つ頃、我がGCコーポレーションの医療部門とバイオ部門は期待の新人を迎え、より進歩しようとしていた。

「会長、ブリーフ社長、この実験結果を見てください」

 そう言って書類を見せてくる一見地味な顔立ちをしているごく普通の青年。彼がその新人、コリー博士である。

 

「ほう。失敗続きじゃが、これで次の可能性を検討出来るな。レポートは完成しているかね?」

「はい、こちらです」

「次の研究の準備は出来ているのかい?」

「はい、次はこの条件で実験を行う予定です」

 

「ほほう、これは面白い」

「結果が出たらまたレポートを読ませてくれ」

「はいっ!」

 

 まだ若く、博士号を取ったばかりだが、彼もまた天才科学者の一人だ。特に、医療やバイオ技術に対する知識が深い。……劇場版の『超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』に登場した、ジャガー・バッダに雇われてバイオ戦士やバイオブロリーを創り上げたコリー博士と同じ名前なのじゃが、本人かは不明である。……何せ今は彼が登場する劇場版の三十年以上前だ。彼はまだ二十代の青年である。

 

 おそらく本人だろうが……『超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』は起きなくても困らないので、優秀な人材であるコリー博士はこのままGCコーポレーションに骨を埋めてもらおう。

 やりがいのある研究とポスト、十分な報酬を用意し、他社からの引き抜き……バッダ男爵家に注意しなければな。

 

 そして儂の方の研究では……ついに人造人間5号、サンが完成した。

 

 

 

 

 

 

 アラームが鳴る音を聞きながら、サンは緩やかに意識を覚醒させた。

(……もう朝だか?)

 うっすらと瞼を開けると、そこは液体で満たされたポッドの中だった。ガラス越しに、外に誰かがいるのが見える。

 

(そうだ。そう言えばオラ、人造人間ってのになったんだべ)

 そう思っているとポッドの中に満ちていた液体が抜かれ、次に人肌より少し暖かいシャワーが天井から出てきて、サンの体に残っていた液体を洗い落とした。

 

『マスクを外してください』

 スピーカーから流れてきたアナウンスに従ってサンがマスクを外すと、やっとポッドが開いた。

「オハヨウゴザイマス、さんサン。私ハ人造人間2号デス。コチラヲドウゾ」

 すると、ポッドの外に立っていた人にバスタオルを差し出された。

 

「ありがとうだよ、2号さん」

 受け取ったバスタオルで濡れた髪や体を拭こうとして、ハッとする。

「2号さんっ、オラ、人造人間になったんだべ!?」

 

「ハイ、貴女ハ人造人間5号トなんばりんぐサレテイマス」

「だったら教えてけれ! オラの体にどこか変なところはねぇか!?」

 自分で見て触れられる範囲では、頭にネジが付いている事も、手がドリルやC型のマニュピレーターになっている事も、両足がキャタピラになっている事もない。しかし、それでも誰かに確認を取らずにはいられなかった。

 

「変ナ所デスカ? ソレナラ、ソコノ姿見デゴ確認クダサイ」

 そう言って2号が指さした先には、姿見と入院着、スリッパが用意されていた。サンはバスタオルを抱くように抱え、恐る恐る姿見の前に立った。

 

「あ、あんれまぁ……」

 姿見に映ったのは、記憶にある自分と何も変わらない姿だった。背中を映してみても、ネジやドリルは当然だが、妙なアンテナやボタンもなく、関節が蛇腹になっている様子もない。

 

 そして、肌が緑色や白に変色していたり、触覚や尻尾が生えている事もない。外見は完全に地球人の二十代の女性だ。

「ドウデスカ?」

 そう尋ねる2号に、サンは鏡を見たまま自分の頬を触れながら答えた。

 

「変なところどころか、オラ、美人になってねえだか?」

 肌は肌理細やかで、しっとり艶々。顔の気になっていた小皺は消え、艶がなくなっていたはずの髪にはキューティクルが復活して光沢も戻ってきている。

 

 青白く細かった手足や腰回りには健康的な肌色と肉が戻り、それでいてきゅっと締まって……。

「に、2号さん! 社長さんはオラに整形とか豊胸とか、そんな手術をしてねぇか!?」

 自分のプロポーションまで改善されていることに気が付いて慌てて確認するサンに、2号は微笑みながら答えた。

 

「どくたーハ整形手術ハ、手術痕ヲ消スタメノ施術以外ハシテイマセンヨ。タダ、手術ノ結果貴女ガ自分本来ノ美ヲ取リ戻シタノデショウ」

 ゲロは改造手術のためにサンの体に何度もメスを入れ、手術痕を消すための施術も行っていた。しかし、美容整形や豊胸手術の類は一切していない。

 

 長い闘病生活で体が弱かった彼女が、改造手術によって健康体となり、ポッドの中で眠っている間に2号の言うように本来の美貌を取り戻したのである。

 

「これがオラ本来の……」

 そう言われて、思わずうっとりと鏡に映った自分の姿を見つめるサン。……実はB細胞移植の結果、肌や血管、内臓や骨格などの年齢が改善し、免疫系や新陳代謝なども強化され、永久エネルギー炉によって活力も漲った状態になっているという要因もあるのだが。

 

 しかし、美容整形や豊胸手術はしていないのは本当である。

 

「あの、おっとうやチチは……?」

「ゴ家族トノ再会ハ、どくたーノ診断ヲ受ケタ後ニナリマス。治療ニ万全ヲキスタメニモ、ゴ協力クダサイ」

「分かっただ」

 病院着を着てスリッパを履いて2号に促されて部屋を出ると、そこに緑色の男が立っていた。

 

「ひゃっ!? あんたも改造されたんだか!?」

「こうして話すのは初めてですね。私は人造人間4号、もしくはヨン・ゴーです」

「ヨン? もしかして……社長秘書さんだか?」

 

 サンはゲロと出会った時には既に意識不明の状態だったので、彼女は4号と話した事は無い。しかし、常に覆面を被っている謎の社長秘書の存在はある意味有名だったため、彼女も知っていた。

 

「そうです。私はあなたの義理の兄、という事になりますね」

 正確にはナメック人ベースの4号には性別は無いが、男性とした方が自分の姿や性格や口調にはしっくり来ることを彼は学習していた。

 

「秘書さんも人造人間だったんだか。それでそんな姿に……まるで宇宙人みたいだべ」

「サン、私は異なる宇宙人の細胞から作られた人造人間です。地球人の細胞は含まれていないので、地球育ちの宇宙人と言う事になります。緑色は元々ですよ」

 

「そうなんだべか!?」

「ええ、ドクターの方針で宇宙人と交流がある事はまだ秘密にしていますから、あなたが驚くのも無理はありません」

 

「でもオラってば失礼なこと言っちまって……申し訳ねぇだ」

「気にする必要はありませんよ。私だって、顔色が緑の地球人を見かけたら『大丈夫ですか?』と声をかけるでしょうから」

 

 そう話しながらサンが4号の後をついて行くと、病院の診察室を広くしたような部屋に案内された。そこで見覚えのある――とはいえ、やはりサンが肉眼で彼を見るのは今回が初めてだが――老人が待っていた。

「おはよう、サン。体の調子はどうかね」

 

「おはようございます、社長さん。体の調子は信じられねぇぐらい良いべ」

 ここまで歩いて来た間に、サンは自分の体が健康体に戻っている事を確信していた。ふらつかずに歩き、疲れもしない。気分は良く、吐き気も頭痛も眩暈もしない。

 

「体が羽みてぇに軽くて、入院する前に……いや、入院する前よりも調子が良いぐらいだべ! この通りだべ!」

 それが嬉しくて、気分が高揚したサンはその場で軽くジャンプした。

 

「ま、待つのじゃ!」

「へっ?」

 そして、次の瞬間頭に衝撃を覚えたと思ったら、目の前が真っ暗になって動けなくなった。ああ、これは夢だったのか。こんな都合のいい事が本当に起こる訳がなかったのだとサンが思ったが……。

 

『あー、サン。今君は天井に頭から突っ込んで、上半身が屋根裏に突き刺さっている状態じゃ。今から降ろすので、落ち着いて待っていてくれ』

 夢ではなく、単に勢い余って天井に突き刺さってしまったらしい。

 

 

 

 

 

 

「は、恥ずかしいところを見せちまって……」

 すぐに天井から救出されたサンは、自分が空けた穴からやや離れたところに移動して儂の診断を受ける事になった。もう一度シャワーを浴びてはどうかと勧めたが、その時間を使うより話を先に進めたいようだ。

 

「まあ、身体能力が上昇したのは改造手術が成功した証拠じゃからな。

 さて、自分の身に何が起きたのか興味は尽きないと思うが、それを説明する前にいくつかの質問に答えてほしい。これは君の記憶や精神に改造手術の影響が出ていないか確かめる重要なものなので、協力してくれ」

 

「でも社長さん、オラが慌ててさっきみたいに天井や壁に突っ込んじまったら……」

 サンとしては心より、劇的な変化があった体の方が重要ではないかと思っているようだ。まあ、軽くジャンプしたつもりが天井に突き刺さる事になった挙句、それで怪我一つなく傷みすら感じなかったのじゃからそう思うのも当然か。

 

 しかし、そうではない。

「体の方は慣れれば加減が出来るようになるものじゃ。ほれ、牛魔王も歩く度に床を踏み砕いたり、食事の度に食器を叩き割ったりはしなかったじゃろう?」

 

「そう言われれば……」

 サンの夫である牛魔王は、武天老師こと亀仙人の二番弟子だ。その力は常人と比べれば同じ地球人類とは思えない程大きい。しかし、彼は病院で床を踏み砕く事もなかった。サンの記憶によれば、少し力を入れただけで折れてしまうだろう箸も器用に使いこなしていた。

 それは牛魔王が普段から日常生活に支障がないよう、力を加減する事に成功していた事を表している。

 

「だが、精神や記憶に問題がある場合は早めに把握して対処しなければ良くならない」

「分かりましただ。オラ、どんな質問にだって答えて見せるべ」

「そう気負う事はない。最初の質問は、自分の名前と生年月日が何時かだ」

 

 まずは記憶の欠落がないかのチェックだ。自分や家族の生年月日や夫婦の馴れ初め等、サンが覚えているだろう事を尋ねる。そして次は写真を並べ、その中で「武天老師は誰か?」等、視覚情報を覚えているかの確認。

 最後に思考能力の確認。これはまあ、脳の状態はスキャンして確認してあるので本当に確認程度だが。

 

 それらに問題は無かったので、次は精神……主に情緒に関する質問だ。これは移植した宇宙人の細胞が精神に与える影響が想定範囲内か外かを確かめる、重要なテストである。

 しかし、幸いなことにサンはそれらのテストに合格し、改造手術が成功した事を証明してくれた。実に素晴らしい。

 

「では、さっそく君の体がどうなったかだが、まず先ほどの事で気が付いていると思うが、君の力は常人の二百倍程になった。とはいえ、そう言われても実感はわかないじゃろう。

 これを見てほしい」

 

 儂はデスクに設置してあるモニターに、幾人かの顔写真を表示させた。

「武天老師様に、映画スターの桃白白さんに、オラに……マネキン?」

「最後の胴着を着たマネキンは、平均的な格闘技の選手を表している。さて、彼らの総合的な強さを数値で表したもの……いわゆる戦闘力は、こうじゃ」

 

 平均的な格闘技の選手、5。桃白白、140。そして武天老師こと亀仙人、270。なお、桃白白と亀仙人は最後に計測した数字である。

 そして、人造人間5号ことサンの現在の戦闘力は……1000。

 

 フリーザ軍の兵士やナメック星人と比べると低い数字に思えるが、戦士どころか病弱な地球人の成人女性を素体にして、平均的な宇宙人の種族一の戦士と同等の戦闘力にまで仕上げたのだから、まあ及第点じゃろう。

 

「せ、千!?」

「うむ、今の儂の技術ではこれが限界じゃった」

 サンを改造する際、最も重視したのは外見の変化を抑える事だ。目標としたのは、生まれつき尻尾が生えておらず外見は地球人と同じ原作の孫悟天やトランクス、第六宇宙のサイヤ人達である。

 

 改造手術を提案した際には色々思うところもあったが、患者本人と家族の意思があれだけはっきりしているのに、重要視しないのは問題だと思い直したのだ。

 それで外見に変化が起きないようバランスに注意して細胞を融合させた結果、想定より戦闘力が落ちてしまった。もちろん、永久エネルギー炉の出力不足も原因の一つだが。

 

「尻尾が生えたり肌の色が緑や白に変化したり、頭に触覚や角が生えてもいいなら、半年ほどかけて再強化手術を行う事も可能じゃが、どうする?」

「絶対イヤだべ! そうじゃなくて、オラはそんなに強くなっちまって大丈夫なんかなって、驚いただけだべ! もしおっとうやチチを抱き潰しちまったら……」

 

「まあ、そうじゃな。さっきも言ったが、自分の力を把握して慣れればどうとでもなる。実際、君はその入院着を破かず着られているじゃろう?」

 落ち込みだすサンだったが、儂は彼女の入院着を指して言うと、ハッとした様子で顔を上げた。

 

「それは清潔なだけの、極普通の素材で作られた衣服じゃ。今の君がその気になれば、紙のように容易く引き千切る事が出来るはず。それを破らず着替える事が出来た事が、日常生活に支障をきたさない力加減が出来るようになる事を示している」

 

「分かったべ! オラ、加減を覚えるだ! 社長さん、そのためにはオラ何をすればいいだか!?」

「うむ、良い意気込みじゃ。とりあえず、体を動かす事から始めよう。スポーツで体を動かし、武術の基礎を4号と儂から習い、料理や洗濯などをやってみて器具や食器を壊さず出来るようになれば合格じゃ」

 

 そうして始まったサンのリハビリじゃが、危なっかしい様子を見せたのは初日と二日目ぐらいで、三日目からは驚くほど早く今の自分の身体能力に順応して見せた。

 初日ではサッカーボールを蹴り割り、食材をまな板ごとテーブルまで両断していた。だが、三日目にはボールをパンクさせ、まな板に深い傷をつける程度になり、洗濯では衣服を端切れに変えていたのを少し傷む程度に抑えられるようになった。

 

 そして四日目には、ボールをパンクさせずにサッカーが出来るようになり、器具や衣服を傷つけず料理や洗濯が出来るようになった。

 それでいて儂や4号との組手では戦闘力通りの力を発揮できているので、ただ力を抑えるのが上手くなった訳ではない。日常生活と戦闘、それぞれ異なる適切な力を加減して出すことが可能になったのだ。

 

 そのリハビリの間にサンが眠っている間に約三年が過ぎている事、儂が社長から会長になっている事等を説明すると、「浦島太郎になった気分だべ」と驚いていた。

 しかし、彼女が最も驚き喜んでいたのは夫である牛魔王が悪事から足を洗い、フライパン山となった涼景山の周辺で農業を始めまっとうに生活している事だった。

 

 そして四日目の終わりに合格とし、五日目には彼女達が望んでいた瞬間が訪れた。

 

「サンっ! 治ったんだなっ!」

「おっかあ! 会いたかっただよーっ!」

「おっとうっ、チチっ、ただいまだべ!」

 

 再会を喜ぶ牛魔王一家。当然だが、サンが牛魔王とチチを強く抱きしめすぎるようなことは起きていない。

(ドクター、彼女もこうなるといいですね)

(うむ。夫は生死不明じゃし、息子の内長男は宇宙のどこかで戦闘員をしていて、次男は記憶喪失ではあるが)

 その感動的な光景を見ながら4号とテレパシーで話しているのは、人造人間6号になるギネの事だ。

 

 既に彼女の改造は開始しており、手術の準備も済んでいる。サンから実働データを得て、永久エネルギー炉の改良も僅かだが進められるだろう。

 しかし、問題は彼女の家族だけではない。

 

(それに、改造後の戦闘力がどれほどになるかも問題だ)

 武術の心得の無い病弱な女性であり、しかもブルマ方式で作り出した細胞の移植を加減したサンが完成したてで1000にまでなった。

 

 非戦闘タイプとはいえ、重力が地球の十倍である惑星ベジータで日常生活を過ごしていたギネは、サンとは元の力の桁が異なる。

 彼女に改造手術を施せば、完成した時の戦闘力は数千……もしかしたら一万を超えるかもしれん。

 

 もちろん強くなりすぎないよう加減する事も不可能ではないが……最強の人造人間を目指している儂が、故意に弱い人造人間を作っては本末転倒。

 それに、彼女はサイヤ人の中では温厚で情に厚い性格らしい。原作の情報を絶対視するのは危険だが、サイヤ人に変装した儂の命を助けてくれたのは確かじゃから、深刻には考えていないが……。

 

 改造手術後のリハビリで、力加減をうっかり間違えた彼女に殴り殺されかねない状態は避けたい。

(それに、主に儂が原因で原作改変が進んでおる。その影響でラディッツやベジータが早めに地球に来るなどした時、ナメック星人に頼りきりになるのは如何なものかと思うしの。

 ギネの改造手術を夏前に終えたら、細胞の融合を待つ間、儂等も修行に力を入れる必要があるな)

 

(ギネさんの状態に何かあった場合、すぐに研究所に戻る事が出来るので、私もそれが良いと思います)

 儂と4号は、長く滞在するなど位置が分かっている場所には、気を探知しなくても瞬間移動する事が出来るようになっている。そして、スカウターの技術を応用した通信機器で太陽系外の惑星とも間を置かずに通信する事が可能だ。

 

 これならギネの経過に異常がないか見ながら、遠く離れた場所で修行をする事が出来る。

「少し提案があるのだが、良いかね?」

 そして儂は落ち着いたらしい牛魔王一家に話しかけた。

 

「良ければ今年の夏に、儂等と一緒に修行兼レジャーにいかんかね? 場所は……ナメック星と言うのじゃが」

 そして、牛魔王一家も連れて行けばサンも修行出来て実戦データを取る事が出来る。ナメック星なら、稽古相手には困らんし。

 

 それに、次の天下一武道会で使いたい装置の実験をネイル達に頼むという用もある。




・コリー博士

 劇場版『超戦士撃破!!勝つのはオレだ』で、ジャガー・バッタに雇われてバイオ戦士やバイオブロリーを創り出した博士。
 この作品ではまだ二十代で博士号を取ってから何年かの若き研究者で、書いた論文に興味を覚えたゲロが出向いてスカウトした。

ゲロとブリーフに将来を有望視されている、若き天才科学者。



・人造人間5号 サン

 ゲロが改造した初めての地球人を素体にした人間ベースの人造人間となった、牛魔王の妻。
 改造される前は病によって瀕死だったが、改造後は溢れんばかりの健康美を手に入れた。将来的にはその年齢不詳差でパンチ―夫人に並ぶものと思われる。

 B細胞による細胞融合、生体パーツで作られた永久エネルギー炉の移植手術、ナメック星人と同じ核作成手術などを受けているが、その際の手術痕はゲロによって奇麗に消されている。
 その戦闘力は改造完了後目覚めたばかりの状態でなんと1000。現時点では武術の経験が浅く、その力を普通に使いこなしているだけで、技は未熟。

 リハビリをして多少体を動かせるようになったが、まだ動きに無駄が多い。当然、気功波を撃つこともまだできない。
 そして、反重力装置やパワーレーダーは搭載されていないため、飛行や気を感知する事も出来ない。
 ただ、これから修行を受ければ強くなる事は確実。

 改造を受けた本人としては、警告されていた外見の変化も起こらず健康体を手に入れられたので不満は無い。



・人造人間2号

 ゲロがサンが目覚めた時のために、女性看護師の代わりに来てもらった。4号も正確には男性ではないが、ナメック星人を知らないサンにそれを理解無理な話であるし、パンチ―夫人に頼むとサンが万一力加減を間違えたら危険なため、彼女が抜擢された。



・リッチストン

 ドラゴンボールワールドの地球で、世界一の宝石と評される濃いピンク色の宝石。劇場版第一弾「神龍の伝説」で登場する。

 酷糖様、ノーデンス様、kimesawa様、雪凪ハーメルン様、黄金拍車様、酒井悠人様、オオアカ様、変わり者様、たまごん様、さっとん様、あんころ(餅)様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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