ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
ナメック星での修行は順調に進んでいた。
重力トレーニング室での基礎トレーニングを行い、シールド発生装置を使用して四方と地面をシールドで隔てて作ったフィールドで、ナメック星の自然を守りながら実戦形式の稽古を行う。
人造人間5号となったサンは亀仙人の指導を受け、儂や4号、そしてナメック星人達相手に経験を積み、メキメキと実力を高めていった。
「おっとうっ! 武道ってこんなに楽しかったんだべな! オラ知らなかったべ!」
一週間で戦闘力を1千から1千5百に高めたサンに、牛魔王は「あの病弱だったサンがこんなに元気になって」と喜びつつ、一層修行に打ち込んだのは言うまでもないだろう。
なお、サンが修行を楽しいと感じるのは移植したB細胞の内サイヤ人の細胞の影響だと思われる。
「こうやって稽古をつけてもらってると、オラ、ワクワクしてくるだよ!」
まさかの「オラ、ワクワク」発言に、儂もつい「やっちまった」と思ったが……まあ、当人が楽しそうだし、チチも「おっかあ、凄ぇだ!」と瞳をキラキラさせているから大丈夫だろう。
サンのお陰で生体パーツ製永久エネルギー炉の実働データも手に入れる事が出来て、大変助かっている。
潜在能力を覚醒させてもらった4号、そして儂の戦闘力も順調に伸びている。やはり、カリン様や地球の神様の元での修行のように、トレーニング中心の生活を続けると伸びが違う。
もちろん儂等以外の地球人組の成長も著しい。この分なら、来年の天下一武道会の頃には大人は全員ピッコロ大魔王を超える事だろう。
とはいえ修行以外何もしていないわけではなく、長期休暇を取った名目であるバカンスらしいこともしている。主にブリーフ夫妻がだが。
パンチー夫人にサンオイルを塗る権利を亀仙人と鶴仙人が争って熾烈な戦いを繰り広げたり、ターレスと悟空達が狩り対決の再戦を行ったり、ビーチバレー対決で天津飯はバレーボールが得意である事が分かったり、ナメック星人達がパオズ山の湧水を絶賛したりと、中々楽しい時間だったと思う。
そうして三か月が経った頃、鶴仙人とブリーフ博士が地球へ帰る事になった。
「指導者として雇われておるからには、GCGの隊員達をあまり放っておくわけにもいかんだろう。それに、GCGにも重力トレーニング室はある。
天津飯、チャオズ、タイツ、ブルマ、ターレス、儂が居なくても修行をかかしてはならんぞ」
鶴仙人はGCGの隊員達を指導するために、弟子たちを残していく事になった。……ちゃっかりブルマまで自分の弟子に含めているのが彼らしい。
「そろそろ副社長が帰って来いって言ってきそうだから、帰る事にするよ。ここでの実験データは、とりあえず十分出来たし。レポートは地球から送るから、修行の合間に見てくれればいいよ」
「ゲロちゃん、娘達をよろしくね~」
そしてブリーフ夫妻は会社経営のためである。まあ、二人は名目ではなく七割以上バカンスでナメック星に来ていたのだが。
ちなみに、パンチー夫人もGCコーポレーションの化粧品や健康食品などのCMに出演するなどしているので、仕事がないわけではない。
そしてナメック星への滞在が4か月を過ぎた頃、修行の合間にギネの術後の経過や、ブリーフやコリー博士のレポートや論文に目を通し、こうしてみたらどうじゃろうと提案する。そして時間が空けば、人造人間8号の構想を練る。7号と9号以降の人造人間は、5号のサンと6号のギネのデータを収集してから設計する予定なので、決まっているのは機械式の8号と16号だけなのだ。
(確か、フランケンシュタインの怪物のような外見で、しかしネジは頭に刺さっておらず……当時の原作悟空の倍以上だったから二・五メートルといったところか? あと、腰のバーニアで空を飛べたはず……いや、これは劇場版だけだったか?)
そんな有意義な時間を過ごしていた時だった、ツムーリ達ナメック星人から驚きの報せを受けた。
「なんと、ドラゴンボールを使う!?」
「ああ、最長老やムーリ長老達には許可を取ってある」
なんと、ナメック星のドラゴンボールを使って願いを叶えるというのだ。
「それは是非とも見てみたいが……いったい何を願うのじゃ?」
ナメック星人は無欲で善良だ。そのため、ドラゴンボールを持ちその力を知っていながら神龍を呼び出して願いを叶えてもらう事は殆どしなかった。
そんな彼らがこのタイミングで何を願うのか、純粋に興味がある。
最長老の若返り等ではないだろう。不死鳥による不老長生も亀仙人から提案されていたが、遠慮されていた。曰く、「私が戦士なら若さを保つ意味もあったかもしれません。ですが、私は最長老です。私が何時までも居座っていては、私の子供達が何時まで経っても独り立ちできません。すでに私と同じ事が出来る者は育っており、戦士はネイル達が居ますから、お気持ちだけ頂いておきます」という事らしい。
最長老と同じように心や記憶を読み、潜在能力の解放させることが出来るナメック星人が他にいるとは初耳だったので、ネイルに聞いたところ、心や記憶を読むのはムーリ長老が、潜在能力の解放はツーノ長老が出来るそうだ。……元々そのつもりだったが、ベジータはしっかり確保しておこう。ツーノ長老の死亡フラグを折るために。
話を戻すが、儂は最長老の若返り以外で彼らがドラゴンボールを使ってまで叶えたい願いに、心当たりがない。それで率直に質問してみると、驚くべき答えが返ってきた。
「ここに居るツムーリ以外の十人全員を、龍族から戦士タイプに生まれ変わらせてほしいと願うつもりだ」
なんと、彼らの願いは戦士タイプへの生まれ変わりだという。
「それは驚きじゃが……覚悟は出来ているのだな」
戦士タイプへの生まれ変わりは、ナメック星人にとって生き方が大きく変わる事を意味する。
ナメック星人は生まれつき、龍族と戦士タイプに分かれている。龍族は他者を癒す治癒能力や、他者の心や記憶を読み、潜在能力を覚醒させるなど様々な特殊能力を身に付ける事が出来、何より口から卵を産んで種族を増やすことができる。
ただ、その分戦闘には向かない。正確には、地球人を含めた他の宇宙人と比べると十分以上に強いが、戦士タイプのナメック星人とは素質に圧倒的な差がある。
それは戦士タイプのネイルの戦闘力が13万に至っているのに対して、同じ年月修行しているツムーリやマイーマ達が1万数千にしか至っていない事からも明らかだろう。
その戦士タイプは、龍族と比べると圧倒的な戦闘力を誇る。その力は、原作ネイルが優れた指導者による教授や実力の近い稽古の相手もなく、重力トレーニング室もなく、敵との命がけの激闘も経験していないだろう環境で、4万2千もの戦闘力に至った事からも明らかだ。
そして、この世界では儂等が提供した重力トレーニング室やトレーニングスーツで修行した結果、13万という原作の三倍を超えるまでに至っている。
ただ、その代わり戦士タイプのナメック星人は龍族のナメック星人と違い、子孫を残すことが出来ない。その役目は他のナメック星人を守る事だからだ。
そのため、龍族から戦士タイプに変化するという事は、己の生き方を大きく変える事を意味する。
「覚悟は出来ている。
ゲロ、お前とブリーフに修行の協力をしてもらい、最長老様に潜在能力を起こしてもらったが、それでも我々の力は一定の段階で上がり難くなった」
「お前達が作ったスカウターの数値で、だいたい1万を過ぎたあたりからだ。それが龍族の限界なのだろう」
確かに、以前シールド発生装置の実働データを得るために彼等にも協力してもらった時、ツムーリ達の戦闘力は1万から1万5千だった。
「それでも、僅かずつ力を高める事は出来ている。力だけではなく気のコントロールと技を磨けば、まだまだ強くなれるだろう。だが、今のネイルでさえ敵わないとお前が言う悪の帝王との戦いにはとても間に合わない。
そうだろう?」
「うむ。採取した奴の細胞を解析したところ、悪の帝王フリーザは変身タイプの宇宙人で、戦闘力は6千万を超えるはずじゃ」
儂は細胞を解析した結果分かったという形で、原作の情報をツムーリ達に提供した。その数字の大きさに、彼らはやはりなと納得したように頷く。
「長老達も戦士タイプのナメック星人を何人か新たに産んでいるが、彼らに期待を押し付けるのも気が引ける」
「それに、ネイルも口には出していないが修行が行き詰っているようだ。我々に彼の稽古の相手が務まるようになれば、それも解消出来るかもしれない」
そういう理由で、彼らは戦士タイプに生まれ変わろうとしているようだ。しかし、二つ気になる事がある。
「ところで、戦士タイプがツムーリ以外なのは何故じゃ? それに、何故儂に話を?」
「それは、皆が戦士タイプに生まれ変わると傷を癒せなくなるからだ。修行をしていない者や長老に激しい戦闘を掻い潜ってもらい、怪我人を癒してもらうのは危険すぎる。だから私は戦士タイプにならない事にした」
「ツムーリは我々の中で最も強い。彼なら、龍族のままでも治療要員として動く事が出来るはずだ」
「そしてゲロ、お前にこの話をしたのはポルンガが我々の願いを叶えられなかったときに、お前の科学力を当てにしたいからだ」
ドラゴンボールを管理してきたナメック星人達だが、実際にポルンガを呼び出したのは遥か昔の事だ。どの程度の願いまで叶えてくれるのか、その限界は不明。
そのため、もし戦士タイプへ生まれ変わる事が出来なかった場合は、儂に改造してほしいという事だろう。
「なるほど。数か月から一年ほどかかるかもしれんが、なんとかなるだろう」
細胞を移植する方法で、ナメック星人達を強くすることは可能だ。施設は、非常時にネイルクローンを作るために用意している場所を使えばいい。
「そうか、助かる。
それと、残りの願いを使って欲しいのだが」
「何っ!? 良いのかね?」
ポルンガは地球の現時点の神龍と違い、一度の使用で三つの願いを叶えてくれる。願いが難しい内容なら、一つ二つや三つ分の力を必要とするため、叶えられる数が減るが、そうでなければツムーリ達は儂に願い二つ分の権利を譲ると言っているのだ。
「ああ、我々の願いは一つだけだ。ゲロ達には世話になっているから、残りの願いを譲る事に誰も反対しなかった」
「それに、願いを叶えた後飛び散ったドラゴンボールを集めるのにも手を借りたいから、その礼の前渡しだと思ってくれ」
「そうか……ありがとう」
まさか、ナメック星のドラゴンボールを使う機会がこんな形で巡ってくるとは思わなかった。そう言われると、願いの心当たりが二つほどある。一つは、本当にただの思い付き、叶えてもらえればラッキーだが、ダメでも問題はない。事前にネイルと最長老には話しておくが。二つ目の願いは、今でなくても構わないが手に入れば8号の建造以外にも、様々な役に立つ素材の入手だ。
なお、ナメック星のドラゴンボールでも病死や寿命で死んだ者は生き返せないのは同じなので、アルマは生き返せない。
そしてドラゴンボールを各村の長老達が持ち寄り、いよいよ儀式が始まる。
儂やナメック星人達に加えて、サン達も修行を中断して集まってきたところで、ムーリ長老がナメック語でポルンガを喚び出した。
「なんだべ、急に夜になっちまった!」
「はて、この星には夜は無いと聞いていたが……」
ドラゴンボールが明滅を繰り返し、夜がないはずのナメック星の空が俄かに暗くなる。そして、神龍ポルンガが現れた。
ナメック星人達が初めて見るポルンガの姿にどよめき、感嘆の息を吐いた。地球人組も、儂と4号以外はポルンガの迫力に度肝を抜かれている。
『さあ、願いを言え。どんな願いも、三つだけ叶えてやる』
ポルンガの低く迫力のある声に緊張しながら、ムーリ長老が「ここに居る若者達を、龍族から戦士タイプに変えてほしい」とナメック語で一つ目の願いを述べる。
『容易い願いだ』
そう応えるポルンガの眼が光り、次にマイーマ達十人のナメック星人の体が光り出した。
「これは……力が湧いてくるようだ」
「分かる、自分が生まれ変わったのが……以前の俺と違う事が分かる!」
「俺は絶大なパワーを手に入れたぞ!」
口々にそう言いだすナメック星人達。どうやら、戦士タイプへの生まれ変わりは成功したようだ。
気の大きさは変化していないが、潜在能力的なサムシングや伸びしろが追加されたのだろう。
「会長さんが前に言ってたドラゴンボールの伝説は、本当だったんだべ。もしかしなくても、あん時オラがちゃんと話を聞いていたら、サンはもっと早く治ってたんだべか……」
「気にする事ねぇべ! オラ、会長さんに改造してもらったお陰でこうして元気になって、チチ達を乗せて空を飛んだり、おっとうと同じ武道を習う事が出来たんだべ!」
サンの改造手術を提案する前に儂が口にしたドラゴンボールの伝説が真実だったと知って、落ち込む牛魔王。サンは彼をそう言って元気づけている。
「それに病気だけ治してもらっても病弱なままだったら、また他の病気にかかっちまったかもしれねぇべ」
「そうだべかな……?」
おそらく、もうすぐ立ち直る事だろう。
『さあ、二つ目の願いを言え』
ではと、儂は久しぶりにナメック語を使って話した。
『北の界王様に話を繋いでもらいたい』
『北の界王、だな? 話を繋ぐだけなら、容易い事だ』
『ん? いったい誰じゃ?』
すると現世では聞き覚えはないが、原作アニメや劇場版で幾度も聞いた声がする。
「北の界王様ですかな? 突然失礼致しました。儂は地球人のドクターゲロと申します。話を聞いて頂けますか?」
『ドクターゲロと言うと、閻魔を困らせているという、あの地球人か。しかし、そこはわしの管轄外の星のようじゃが……まあ、いい。して、ドラゴンボールを使ってまでわしに呼びかけるとは、何の用じゃ?』
悲報、儂の悪名はあの世で既に知れ渡っている模様。……まあ、そのお陰で界王様は閻魔か地球の神様経由で、儂が自分の事を知ったのだろうと勝手に納得してくれたらしいが。儂は要件を伝えた。
「このナメック星人のネイルに、修行を付けてやってくださいませんか?」
そう、儂の狙いは北の界王様にネイルの修行を付けてもらう事だ。もし悟空が死ななくても、そして原作よりも早い時期にフリーザや劇場版の敵達と戦う事になっても、ネイルが今から界王様に弟子入りし、界王拳や元気玉を習得する事が出来れば、取れる手段が多くなる。
何故ネイルなのかと言うと、彼が儂等の中で最も強く、そして元気玉を使う事が出来るだろう善人であるから。そしてツムーリ達が言っていたように、ネイルの修行が行き詰っていたからだ。
もちろんネイル本人と最長老様にも話は通してある。
ネイルは最初ナメック星から離れる事に難色を示したが、最長老様がポルンガへの一つ目の願いが叶えば、戦士タイプのナメック星人が一気に増える事になる。彼らに交代制で護衛をしてもらえば大丈夫だと、彼を説得してくれたので了解を得る事が出来た。
『ふむ……ここから探る限りでは、かなりの気の持ち主のようじゃが、あの世にいるわしにまだ生きている者を弟子にとって欲しいとは何故だ?』
「界王様ならば、悪の帝王フリーザの名は聞いたことがあるはずですな?」
『フ、フリーザじゃと!? まさか、フリーザに手を出すつもりか!? いかん、絶対にいかんぞ! 奴に手を出してはならぬ!』
フリーザの名前を出すと、界王様は予想通り狼狽した様子でフリーザに関わる事を否定した。彼からしてみれば儂等がフリーザに勝てるとは思えないだろうから、この態度も当然だろう。
「ご安心ください。我々もいたずらにフリーザと関わろうとは考えておりませぬ。ですが……フリーザが我々の星に牙を向けぬとは限りませぬ」
『むっ……しかし、ナメック星は天変地異に見舞われた後は復興も道半ばの状態、地球に至っては宇宙の辺境も辺境のはずだが?』
「確かにその通り。フリーザにとって地球とナメック星に侵略する価値は、特別高くはないでしょう」
地球の食べ物の美味さに目を付ければ、リゾートか食料生産に特化した開発をするために侵略しに来そうではあるが。
「しかし、地球とナメック星にはフリーザが欲しがりそうなものがあります」
『……そうか、ドラゴンボールか』
「ええ、そしてそれを欲してフリーザが攻めてきた場合、言われるままにドラゴンボールを渡したとしても、冷酷さで知られるフリーザが地球やナメック星の人々を生かしておくかわかりませぬ」
『むっ、確かにそう言われればそうじゃが……』
「生きとし生ける全ての存在にとって、生き続ける事は当然の願い。そのための努力を、どうかお認めください」
『……いいだろう』
儂があくまでも自衛のためだと説得すると、界王様も納得してくれた。
『しかし、わしの弟子となるには試練がある。ネイルと言ったな?』
「はい、北の界王様」
『ネイルよ、わしを納得させるようなギャグを言ってみせるのじゃ! この試練を乗り越えられれば、お前を特別にわしの弟子にしてやろう!』
「ギャグを……」
ネイルは界王様の言葉に数秒躊躇い、迷うような仕草をしてから覚悟を決めて口を開いた。
「ネイルが……寝入る!」
その瞬間、ナメック星に冬が到来した。なお、そのギャグは儂が事前に「界王様の弟子になるにはギャグを言う必要になる」と教えた時、一例として言ったギャグだ。
どうやら、ネイルは他のギャグを思いつかなかったらしい。
「…………寒」
ブルマのつぶやきに、思わず視線を伏せるネイルと儂。
『ね、ネイルが寝入る……! ぷ、ぷくくく、ははははは! 見事、見事合格じゃ! ネイルよ、お前が来るのを界王星で待っておるぞ!』
しかし、界王様には大ウケだったため、ネイルの弟子入りは受け入れられたのだった。
『では、三つ目の願いを言え』
「カチカッチン鋼を採掘可能な星を教えて欲しい。人がいない無人の星だと助かるのだが」
そして最後に儂が願ったのは、カチカッチン鋼のありかだった。
カチカッチン鋼とは、この第七宇宙でしか産出されないカッチン鋼の上位金属である。ドラゴンボール超の力の大会で武舞台を作るのに使われた金属だ。億を優に超え兆に至っている戦士同士の激闘が繰り広げられても、ボロボロにはなったが消滅はしなかったという物質だ。
おそらく魔人ブウでも簡単には壊せないのではないだろうか?
『……残念だがその願いは不可能だ。私の力を超えている』
しかし、不可能だったようだ。
そのまま出すのは無理だろうと思って、カチカッチン鋼そのものではなく産出する星の位置を願いにしたのだが、無理だったか。
「では、カッチン鋼ならどうじゃ?」
そのため、一段下げてみた。カチカッチン鋼よりも一段落ちる、カッチン鋼に願いを変更した。
『カッチン鋼の産出する星の場所だな? 容易い願いだ』
すると、儂の頭の中にいくつかの星の位置と詳しい情報が流れ込んでくる。これなら瞬間移動で行く事が出来る。
カッチン鋼はカチカッチン鋼の下位互換だが、素材としては十分だ。考えてみれば、カチカッチン鋼は儂では加工技術を確立するまでに時間がかかり過ぎるかもしれん。
カッチン鋼を重力トレーニング室や、機械ベースの人造人間のパーツ、プロテクターの素材などに使えば性能は数段上がるはずだ。
『採掘の方法はサービスだ。願いはかなえてやった。さらばだ』
そしてポルンガは消えると、七つのナメック星のドラゴンボールは飛んで行ったのだった。
その後、儂は他のナメック星人達とつかの間の別れを済ませたネイルを連れて瞬間移動で地球へ連れて行き、地球の神様に頼んで閻魔の元まで連れて行ってもらった。そして、その日の内に飛んで直ぐに蛇の道の先にある界王様の星へたどり着き、さっそく修行を開始しているそうだ。
一方儂等はさらに一月ほどナメック星に滞在した後地球へ戻り、各々修行を続けた。儂は修行だけではなく、瞬間移動で無人の惑星にカッチン鋼の採掘に赴いたり、採掘できたカッチン鋼を解析して加工法を研究したりと、時間は早く流れていった。
そして修行を終えた桃白白が戻ってきたので、彼も天下一武道会へ誘った。もちろん、彼もナメック星に連れて行って、試しにという事でツーノ長老に潜在能力を起こしてもらった。
そして、天下一武道会がついに始まった。
今回の天下一武道会は、始まる前から盛り上がりを見せていた。テレビでは過去の大会のダイジェストや、優勝者の特集番組が組まれ、雑誌は彼らの写真で表紙を飾り、アイドルやスターのように扱った。
それはGCコーポレーションが天下一武道会の会場や舞台となるパパイヤ島の開発を進め、前回よりもいっそう大規模な大会になるからだけではない。
優勝経験者でもあるGCコーポレーション会長ドクターゲロ、彼が優勝した時の準優勝者の会長秘書ヨン・ゴー、そしてその後の大会で準優勝し、その次の戦いで優勝したアックマンが、出場する事を早期に宣言したからだ。
そして、アックマンが出場する事を聞いたチャパ王が出場を決め、桃白白の兄であり師匠であるという鶴仙人、そして前回大会優勝者である武天老師の二番弟子、牛魔王も名乗りを上げた。
まさにレジェンド。世界の地球の格闘技好きな人々が素晴らしい大会になる事を期待するには、十分すぎるニュースだった。
さらに、修行の旅に出ていた桃白白もまた出場する意思を表明した。
「桃白白も出場するなんて……今度の大会はきっとすごい大会になるぞ!」
そうテレビ画面を夢中になって見つめる少年も、そんな人々の一人だった。
『ブリーフ社長、今回の天下一武道大会では初めて導入される装置があるそうですが、ついに審判にロボットを採用されるのですか?』
『いやいや、導入するのはもっと地味な装置じゃよ。口で説明すると長くなるので、映像でご覧入れよう』
すると、GCコーポレーションの社長であるブリーフ博士と番組司会者がいるスタジオから、屋外の荒野へ映像が切り替わった。
「桃白白だ!」
荒野では修行の旅から帰った桃白白がピースサインをしてポーズをとっており、彼の前には同じくらいの岩が二つと、奇妙な装置が一組置かれている。
『テレビの前の格闘技ファンの諸君。諸君たちは天下一武道会で私達の迫力満点の試合を期待している事だろう。私達もそうだ』
そう言いながら、ピースサインを止めた桃白白は目でスタッフに指示を出す。すると、画面の端から巨大なハンマーを持った大男が現れた。
『ふんぬっ!』
彼は勇ましい掛け声をあげながらハンマーを振り上げ、二つある岩にそれぞれ叩きつけて見せた。しかし、岩は砕けるどころかヒビも入らない。
『さて、この岩が本当に硬い事は伝わっただろうか? だが、我々が全力を尽くして戦うという事は――』
二つある岩の内奇妙な装置が前に無い方の岩に向き直り、大男が慌てて岩から離れる。
『波っ!』
そして、気合の声と共に手を岩に向かって突き出し、気功波を放った。
爆音が轟き、煙が晴れると岩は粉々に砕け、跡形もなくなっていた。
『ふぅ。このように、観戦する者にとって大変危険な状態となる。しかし、天下一武道会のメインスポンサーであるGCコーポレーションは、諸君らに迫力ある試合観戦と同時に安全を提供する事を望んでいる。そこで、ゲロ会長とブリーフ博士はこの日のために心血を注いで、ある装置を開発した』
実際には片手間で作った物だが、副社長がそう言った方が観客は安心できると判断し台本を変更した、という事情を少年は知らない。
『それがこのシールド発生装置だ!』
桃白白がそう言った瞬間、奇妙な装置が作動して岩の前にバリアを展開する。
『では、さっそく試してみよう。……波ぁっ!』
桃白白がバリア……シールドに向かって再び気功波を放つが、爆音の後煙が晴れた時、今度はシールドもその後ろの岩も傷一つついていなかった。
桃白白はテレビ受けするよう、岩に穴が開くだけのどどん波ではなく、故意に気の収束を甘くして岩を爆砕させる気功波を撃ったため、技としての威力は下がっている。しかし、それに気が付いていない少年は、「すげぇ」と思わずつぶやいていた。
『GCコーポレーションは、このシールドを観客席の前に二重に展開する予定だ。絶対に安心だから奮って観戦してくれ。私達も君達と会場で会えるのを楽しみにしているぞ』
その後、映像はスタジオに戻り、ブリーフ博士がシールド発生装置の説明をしたり、司会者が彼の長女やゲロが養子に取ったターレスが出場する事について質問していたが、少年の耳には入らなかった。
「俺も、俺も桃白白みたいな正義の武道家になるぞ!
父さん、俺、道場に通いたい!」
瞳をキラキラと輝かせた少年は、リビングに入ってきた父親にさっそく習い事を強請りに行った。
「道場って、サタン道場の事か? 大丈夫か、マーク? 投げ出したりしないか?」
「もちろんだよ、父さん! 俺は強くなって桃白白みたいな正義のヒーローになるんだ!」
マーク少年のヒーローへの道は、まだ始まったばかりだ。
・ナメック星の神龍ポルンガ
創造者の力を超える願いはかなえられないのが、ドラゴンボールのお約束。それはナメック星の神龍ポルンガも例外ではないはず。そのドラゴンボールで、戦闘力一万越えのナメック星人達を戦士タイプへ生まれ変わらせることができるのか? この作品では可能とします。
根拠は、地球のドラゴンボールで神龍が劇場版でガーリックJrを不老不死にしたり、スラッグを若返らせるなど体に大きな変化が起きるはずの願いを叶えているからです。
そのため、ドラゴンボールは願いの対象が自らの創造者の力を超える存在だったとしても、「不老不死」や「若がえり」のような、対象の強さにとってプラスに働く願いなら叶えられるとこの作品では解釈します。
人造人間編で18号や17号を人間に戻せなかったのは、創造者の力を超える対象を弱くする、対象の強さにとってマイナスに働くためだと思われます。
なお、このプラスかマイナスかは本人達の意思には関わらないと考えます。
・長老たちが産んだ戦闘タイプの子供達
原作アニメでネイルがフリーザと戦う前に駆けつけた、戦闘力1万程の戦士タイプの若者達を想定しています。現在はまだ子供で、修行では主に4号やサン、そしてゲロの稽古相手となっている。
・ネイル
ゲロの思い付きによって、北の界王様への弟子入りが決定した。界王様は総重量数十トンの重りなども作る事が出来るので、修行相手がいないマンネリからも解放される事だろう。
そして蛇の道を一瞬で飛び越えたので、蛇姫(アニメオリジナルキャラ)とは遭遇しなかった。
・マイーマ、ナメック星人の若者達十名
ツムーリ以外はポルンガに願う事で戦士タイプに生まれ変わった。戦闘力そのものは変化しなかったが、今後の修行で上昇する予定。
彼らの修行が上手くいけば、ドドリアやザーボンがフリーザの見ている前でボコボコにされたり、ベジータがツーノ長老の村の若者にボコボコにされたりするかもしれない。
・北の界王様
突然ドラゴンボールによってゲロに話しかけられた、第七宇宙の北を納める界王。ゲロの説得によって、ネイルを弟子として受け入れる。
なお、ゲロがナメック星が彼の管轄ではないのに北の界王への弟子入りをネイルへ勧めたのは、他の東西南の界王が界王拳や元気玉を使えるか分からなかったのと、彼らの性格をいまいち把握していなかったから。
弟子入りのための試練としてダジャレ以外の、「俳句を読め」や「歌と踊りを披露してもらおうかしら」などと言われたら困る・その上、もし元気玉を知らなかった困るどころではすまないためである。
・カッチン鋼
第七宇宙でのみ産出される硬く、そして密度も高いと思われる重い金属。塊に叩きつければ、ゼットソードもへし折れる硬さ。
多分、「復活のF」以前のフリーザでは壊すことはできないと思われる。
ゲロはこれを8号や16号等機械ベースの人造人間の材料や、重力トレーニング室、防具の材料として使う事を想定している。
・マーク少年
格闘技ファンで、自らも正義の武道家になる事を夢見てサタン道場に通う少年。将来は顎髭が濃くなりそう。
ぶっちゃけると原作の世界チャンピオンが、リングネームの「Mr.サタン」を名乗る前の少年時代。
なお、彼は原作クリリンと同い年で、悟空達の一つ上である。
路徳様、たまごん様、神龍馬様、sugiyan様、一読様、変わり者様、h995様、レッド!!!!!!様、錆鑢 七実様、タクサン様、ほす様、路傍の案山子様、たかたかたかたか様、酒井悠人様、ヒロシの腹様、竜人機様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。