ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
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天下一武道会参加メンバーを大勢描いて頂きました! 渋い亀仙人に鶴仙人、そして桃白白、 カッコイイ天津飯と4号、そしてターレス、凛々しくてセクシーなサン、逞しい牛魔王、可愛いタイツ、そしてセンターのゲロ!
とても素晴らしいので、ぜひご覧ください!
また、頂いたソロイラストは後書きに掲載しております。
この儂、天才科学者であるドクターゲロは天下一武道会の選手控室で試合を観戦していた。儂の試合は今日の最後じゃからな。
『第一試合、天津飯選手対ヨン・ゴー選手』
天津飯は4号と向き合い、緊張した様子だったがすぐに呼吸を鎮めて構えをとった。
「胸をお借りします!」
「良い試合をしましょう」
『始め!』
実況のアナウンスとほぼ同時に、天津飯は4号に向かって間合いを詰めると、拳と蹴りによる怒涛のラッシュを仕掛ける。その動きは弱冠十歳にして常人を超えており、相手が並みの武道家だったらとっくに吹っ飛ばされているだろう。
『天津飯選手、開始早々に怒涛の攻勢! しかし、ヨン・ゴー選手も真っ向から受けて立つ!』
しかし、彼と4号には正面からの勝負では埋められない圧倒的な力の差がある。4号はあっさり勝負を決めず、稽古のように天津飯に経験を積ませるつもりのようだ。
「はぁ!」
気合を入れた天津飯の右ストレートが、4号の腹にめり込む……かに見えたが、その瞬間4号の姿が掻き消えた。
「っ!?」
「目に頼り過ぎです」
残像拳に引っかかった天津飯に向かって、大ぶりな蹴りを放つ4号。4号の狙い通り天津飯は両腕で蹴りを防御し、後ろに大きく下がった。しかし、ダウンする事はなかった。
「太陽拳!」
「っ!」
それだけではなく、太陽拳を使って4号の視界を封じて見せた。そして、伸ばした人差し指で4号を指す。
「どどん波!」
なんと、天津飯はいつの間にかどどん波を撃てるようになっていたのだ。
『あれはっ、桃白白選手の必殺技、どどん波! 天津飯選手、十歳にして鶴仙流の奥義を既に習得していたー! だが、なんと4号選手、天津飯選手のどどん波を手で受け止めたーっ!』
「良いタイミングですが、気の収束がまだ甘い。はっ!」
4号はどどん波を受け止めた腕を、そのまま伸ばして天津飯を掴み、そのまま場外へと押し出した。
『場外! 4号選手の勝利です! しかし、ヨン・ゴー選手は腕を蛇のように伸ばせるんですね。勝因は、やはり手の速さでしょうか?』
「ははは、そんなに手は早くありませんよ。彼がどどん波に力を入れすぎて、撃った直後に気が抜けていたのでその隙を突いただけです。普段の彼なら避けていたでしょう」
『なるほど。天津飯選手、敗れはしたものの将来を感じさせる試合内容でした!
それでは第二試合、チューボ選手対ギラン選手の試合を始めます!』
そして、第二試合。我が社のGCG部長であるチューボは、ナメック星で修行はしていないが、重力トレーニング室とトレーニングスーツを使用して修行を重ねており、カリン塔へ赴く前の桃白白を超える実力を身に付けている。
対して怪獣ギランは、いくつもの格闘技大会で優勝を掻っ攫ってきた大会荒らしとして知られている。しかし、儂が感じられる気は常人よりも多少大きい程度……数字にして9ぐらいだ。これは試合開始早々終わるだろう。
『それでは、一回戦第二試合……始め!』
「ぐおおおおおおおっ!!」
だが、実況の青年が試合開始を告げた次の瞬間、ギランが目を見開いて苦しみだした。まさか急病か!? そう思って身を乗り出した儂だが、ギランの気は小さくなるどころか急激に大きくなった。その増幅率は、サイヤ人の大猿化を超えている。
『おおっと、ギラン選手! 突然叫び出したと思ったら、尋常ではない迫力を醸し出しております! これがギラン選手の本気なのでしょうか!?』
実況の青年は気を感知できないはずだが、それでも感じ取れるほど今のギランは異様な気配を発している。
「な、なんだ、この異様な気は……?」
「グルルルゥ……死にたくなければギブアップするんだなぁ。口が利けるうちにな!」
ギランはそうチューボを脅すと、猛然と攻撃を仕掛けた。間合いを詰めて殴りかかり、そのまま体を半回転させて尻尾でチューボを薙ぎ払う。
「くっ!」
吹き飛ばされたチューボは、舞空術で体勢を立て直して落下を免れる。だが、ギランは背中の翼を羽ばたかせて飛び上がり、空中戦を仕掛けようとしている。
しかし、チューボはGCGに入社して十年以上経験を積み重ね、鶴仙流の修行を受けてきたベテランの武闘家だ。身体能力頼りのギランとは、培った技が違う。
「グルグルガムを喰らえぇ!」
「はあぁ!!」
勝負を決めようとギランが吐き出したグルグルガムを、気で弾き飛ばす。
「なんだと!? なら、これはどうだ! ガァ!!」
大きく翼をはためかせて後ろに下がったギランが大きく息を吸ったかと思うと、なんと口からエネルギー波を吐き出してきた。その様子は彼の容姿も相まって、ドラゴンのブレスのようだった。
「どどん波!」
だが、チューボが鶴仙流の修行によって習得したどどん波は、ギランのエネルギー波を貫いて彼に到達した。
「ぐわぁ~っ!?」
爆発し、煤と埃に塗れたギランが武舞台に落下する。
「ワン、ツー……テン! チューボ選手の勝利です!」
取り敢えず、無事チューボが勝利した。ギランも気絶しているが、気は安定しているので怪我自体は重くないだろう。
しかし、あの時のギランの様子はただ事ではない。
「あの不自然な気の増幅はいったい……隠していた実力を発揮しただけ、と考えるには不自然じゃな」
「ああ、気を隠していただけにしては、気配が変わり過ぎていた」
亀仙人や桃白白も異変に気が付いているようだ。
「会長、何か心当たりはないか?」
「……ある。しかし、確実にそうだと断言できる程、根拠はない」
ギランの不自然なパワーアップ。考えられるとしたら、原作に介入する存在であるゲームの登場人物、ダーブラの妹のトワや、ドミグラの仕業だろう。
しかし、儂は彼らの存在は知っているが、コミックの単行本を読んだだけなので詳しいとは言えんのだよな。
そもそも、この世界の歴史に彼等が干渉してくるとしても、儂は原作が開始してから……それも、いわゆる無印ではなくZになってからのことだと思っていたので、まだ十分な備えをしていない。
誰が原作開始前に歴史を改変しようとすると思うだろうか? ん? しまった、それは儂だ。
まあ、原作が開始前に変わっているのだから、トワやドミグラがコミックになかった行動をとってもおかしくはないな。……ゲームのイベントはざっくりとしか知らんから確かな事は言えないが。
「儂の心当たりが当たっているかは、会場に仕掛けてある解析機器の結果次第だ」
正直、ギランが気功波を放った時点でトワかドミグラの介入があったのは確実だと思う。しかし、何故このタイミングでギランを強化したのか、その理由は分からんが。
なお、二人以外のゲームオリジナルの登場人物であるメチカブラとその配下に関しては、暗黒ドラゴンボールが出現しておらず、そしてもう一人の可能性のある人物であるハーツは、異なる宇宙を移動しても歴史は移動していなかったと思うので、おそらく違うだろう。
もしかしたら他にも歴史改変者が存在するかもしれんが、儂は知らないのでこれから調べるしかない。
ところで、一応解析機器は仕掛けてあるが……歴史改変の際に発生する「キリ」と言うエネルギーはどうすれば検出できるのじゃろう? 強者が戦った際に発生するダメージエネルギーは、日々のトレーニングを解析した結果検出する事に成功している。しかし、キリの方は実験のためにはタイムマシンを開発して時間を改変しなければならんので、今まで試したことがないのだ。
「そうか。では、防ぐ方法はないのか?」
「今のところは不可能ですな。シールドの外からギランに干渉したようですし」
「分かった。各々、注意して試合に臨むように。ゲロはまた何か起こった時は、尻尾を掴むのじゃぞ」
儂等は不穏な空気を感じつつも、この段階では深刻な事態には至っていなかったため、警戒するだけに留めたのだった。
……問題なのは、今の段階で尻尾を掴んだとしても、犯人が儂の知る歴史改変者だった場合、開き直って暴れられたら止められんと言う事じゃな。実力差があり過ぎて、下手に魔封波を仕掛けたらその瞬間に体力の消費量に耐えきれず死んでしまうじゃろうし。
一方、ギランを少量のキリで強化する実験を行ったトワも深刻な顔で黙り込んでいた。
(成功しても小さな歴史改変にしかならなかったはずだけど、発生したキリが予想より少ない……いえ、私が回収する事が出来たキリが少ない。発生したキリの何割かを、誰かが横取りしている? それとも、この歴史が不安定なせいで、上手く回収できないとでもいうの?)
実験対象にギランを選んだのは、歴史全体を見ればあまり重要な存在ではなく、対戦相手のチューボは本来の歴史では無名で終わるはずの人物だったからだ。キリで強化しても、時の界王神や自分達以外に存在するかもしれない歴史改変者に察知される事はないだろうと考えて実行してみたが、手に入れる事が出来たキリは彼女が予想したよりもずっと少なかった。
何故、手に入ったキリが予想を下回ったのか……それを確かめる必要がある。
「ミラ、もう一度実験を行うわ。念のために警戒を続けて」
「トワ、見られているぞ」
「なんですって?」
返ってきたミラの言葉に、ハッとしてトワは彼の視線の先を見た。しかし、そこにあった物を見て苦笑して肩の力を抜いた。
「ミラ、監視カメラは気にしなくていいわ。この時代には、私達の存在を知っている者はいないのだから」
実験に集中するため、トワは姿を消したり偽ったりする魔術を使っていなかった。自分達の事を知る存在のいない歴史なら、必要ないと判断したのだ。
天下一武道会の後ろの方の観客席に紛れ込んだ二人を誰かが見たとしても、肌の青いモンスター型地球人のカップルとしか思わなかっただろう。
「そうか、分かった」
なお、後で監視カメラの映像を確認したゲロは観客席に座っている二人を見て噴き出すことになる。
『第三試合、アックマン選手対チャパ王選手! 両選手ともかつての優勝者同士であり、因縁のある相手です!』
かつて自身を打ち破った相手を前にしたチャパ王の顔には、緊張と静かな喜びがあった。
「一回戦から貴様と戦う事が出来るとは……神は私の祈りを聞き届けてくれたらしい」
「フン、俺の祈りは無視されたようだがな」
リベンジを望んでいた相手と一回戦からぶつかったチャパ王に対して、アックマンは決勝戦まで勝ち進めなければならない。しかも、勝ち進んだとしても桃白白かゲロ、そしてターレスの誰か一人としか対戦できない。
「なに、気にすることは無い。貴様はここで私に打倒されるのだからな」
「確かに、ここで敗退する貴様に愚痴っても意味はないな」
『一回戦第三試合、始め!』
試合が始まっても構えたまま睨み合っていた両者だったが、まずはチャパ王が仕掛けた。舞うような、しかし鋭い動きで技を繰り出す。
「噂には聞いていたが、チャパ王とやらかなりやりおる。カリン塔を登る前だったら、楽には勝てんな」
「確かに動きは悪くないが、気のコントロールが全く出来てないぜ。空を飛んで気功波を連射すれば楽勝だろ」
「ターレス、それでは観客からは弱い者苛めをしているかのように見えて、イメージが良くない。相手がヒールでない限り、試合ではやるべきではないな」
「ほう、なるほどなぁ。なら、厄介な相手だな」
桃白白とターレスの話の後半はともかく、前半のチャパ王に対する批評はその通りだった。
アックマンへのリベンジを誓って九年の間独自の修行を続けていたチャパ王の実力は、かつての桃白白を上回るまでに至っていた。
しかし、同時に彼独自の修行は気のコントロールに行きつく事が出来なかった。
「腕を上げたな! だが、敗北を糧としたのは貴様だけではない!」
「くっ、八手拳!」
次第に繰り出す技をアックマンに捌かれ反撃を受けるようになったチャパ王は、ついに必殺技の八手拳を繰り出した。
「つあおーっ!」
「焦りで動きが大雑把になっているぞ!」
「がっ!?」
だが、アックマンに動きを見切られ、足払いを受けたチャパ王は大きく体勢を崩してしまった。
「恨むなよ。敗北を知る事も修行だ! アック――」
チャパ王に向かって、アックマンが気を集中させた手を振り下ろす。まさか、アクマイト光線を放つつもりかとゲロと亀仙人が身を乗り出した。
「ショット!」
だが、アックマンが放ったのは対象の悪の心を増幅させ体を破裂させてしまうアクマイト光線ではなく、気功波だった。
十二年前に天下一武道会で受けた桃白白のどどん波、そして三年前にターレスのフォトンウェイブを見たアックマンは、独自の修行を重ねてオリジナルの気功波を放つまでに至っていたのだ。
「ぐおっ!?」
握りこぶし大の気功弾を受け、さらに体勢を崩すチャパ王。
「アックショット連射!」
そこに、アックマンがアックショットを連射する。
「ぐ、ぐあああああっ!?」
気功弾の連射に、チャパ王は踏み留まる事が出来ずに武舞台から転落して場外負けとなってしまった。
『チャパ王選手、場外負け! リベンジならず、アックマン選手の勝利です!』
「くっ、また届かなかったか。だが、次は負けんぞ」
「なら、占い婆様の宮殿に訪ねてこい。他に挑戦者がいない時なら、いつでも相手をしてやる」
「占い婆の宮殿だと? 噂に聞いたことがあるが……そんな所にいたのか」
どうやら、チャパ王は見当違いの場所ばかり探していたらしい。アックマンは通常は五人目の選手で、大半の挑戦者がその前に敗退するため、あまり知られていないからだろう。
『第四試合、牛魔王選手対鶴仙人選手! 前へ!』
次の試合、牛魔王と鶴仙人が武舞台へ現れる。
身長四メートルの巨人に対し、鶴仙人は小柄な老人にしか見えない。彼が桃白白の兄であり師匠である事をアナウンスされた観客達も、牛魔王の圧勝を予想してしまう。
「来い、貴様の修行の成果を儂が確かめてやろう」
「鶴仙人様、胸をお借りしますだ」
しかし、当人達の認識は観客とは真逆だった。強敵を前に緊張を隠せない牛魔王に対して、鶴仙人はまったくの自然体だ。
『一回戦第四試合、始め!』
まずは牛魔王が仕掛けた。猛牛のように激しく、しかし隙の無い動きで鶴仙人に蹴りかかり、飛び上がって避けた彼に拳を繰り出す。
「ふん、動きの雑さは取れてきたな。力に頼りきる癖も、改善がみられる。だが……」
しかし、鶴仙人は牛魔王の猛攻を掻い潜り、胴体に突きや蹴りを命中させて彼の体力を削っていく。
「ぐはっ! うおおおっ!」
「疲れて足元が留守になっているのは、いただけんな!」
足払いを受けた牛魔王が転倒すると、鶴仙人は距離をとった。牛魔王は実況がカウントを取るよりも早く立ち上がり、構えをとる。
「かぁ~めぇ~はぁ~めぇ~……波ぁ!!」
肉弾戦では相手にならないと悟った牛魔王は、必殺のかめはめ波で勝負を決めようとしたのだ。
『なんと、武天老師の奥義かめはめ波を牛魔王選手も習得していた! 鶴仙人選手、牛魔王選手のかめはめ波に成す術もなく飲みこ――き、消えた!?』
残像拳に引っかけられた。それに気が付いた牛魔王だったが……。
「技に集中するあまり、気の感知を怠ったのが敗因じゃ」
自分の真横に出現した鶴仙人の声と頭部の衝撃を最後に、彼の意識は途切れたのだった。
「だがまあ、修行を再開する前の儂やナメック星に行く前の亀よりはずっと強い。せいぜい精進する事じゃな」
『テン! 鶴仙人選手の勝利です! さすが鶴仙流開祖! さすが桃白白選手の師! 圧巻の試合内容でした!
続きましては第五試合、武天老師こと亀仙人選手対桃白白選手の対戦です!』
「おっとうっ! 負けたけど頑張っただぞっー! 武天老師様、頑張れーっ!」
「桃白白様ーっ! 頑張ってーっ!」
観客席からそんなチチとブルマの声援が届いているのかいないのか、亀仙人と桃白白は真剣な顔つきで向かい合った。
「さて、図らずもカリン様と神様、二人の師の兄弟弟子となった訳だが……遠慮はいらんぞ」
「もとより、全力で仕掛けさせていただこう」
『試合開始!』
「どどん波!」
試合開始の合図と同時に、桃白白はどどん波を放った。
「いきなりか、飛ばすのう」
亀仙人は驚きもせず右に回避しながら、多重残像拳を展開。武舞台に何人もの亀仙人の姿が現れる。
(先ほど兄者がして見せたように、気を抑えながらの残像拳か。だが、私は引っかからんぞ)
「あっ! 超色っぽいピチピチギャル!」
「何!? どこじゃ、超色っぽいピチピチギャルは!?」
なんと、桃白白が明後日の方向を指さして叫んだ嘘を真に受けて、本物の亀仙人が動き出してしまった。
「そこだっ!」
「ぐわ~っ! おのれ、なんと狡猾な手を!」
現代のスーパーヒーローと生ける伝説のコミカルなやり取りと高度な技の応酬に、観客が思わず言葉を無くす。
しかし、肉弾戦では徐々に地力の差が明らかになり始めた。
「チィ! 武術の神は健在か!」
「ほっほっほ! まだまだ若い者には負けんぞい!」
「貴様と私はそれほど離れていないがな!」
地球の神の神殿での修行を終え、ナメック星で潜在能力を覚醒させてもらった桃白白だが、重力トレーニング室での修行を半年以上続けた亀仙人には数段及んでいなかった。
「かっ!」
このままでは防御を打ち破られ、大きなダメージを受ける事は避けられない。そう思われたが、なんと桃白白は目から怪光線を放った!
「なんとっ!?」
怪光線をギリギリで回避した亀仙人だったが、大きく体勢を崩してしまった。その隙に、桃白白は第二の技を放つ。
「スーパーどどん波!」
「しまっ――」
地球の神様の神殿で新たに編み出した必殺技、スーパーどどん波。どどん波を上回る威力の爆発に、亀仙人の姿が飲み込まれる。
桃白白も含めて、誰もがこれで勝負は決まった。そう思った。
「かめはめ――」
だが、煙を吹き飛ばして現れた亀仙人は、倒れ伏すどころか今まさに奥義を放とうとしていた。
「波ぁっ!!」
「なっ!? うおおおおおっ! 馬鹿なぁぁぁ!」
スーパーどどん波を放った直後にかめはめ波を受けた桃白白は吹き飛ばされ、空中で爆発。そのまま場外へ落下して試合終了となった。
桃白白まさかの一回戦敗退だったが、試合内容から「さすが武術の神様、武天老師! その武天老師相手に食い下がった桃白白は凄い!」という評価になり、彼の評価はむしろ上がった。
「やれやれ、ヒーローも大変じゃな。あの目から出したのは、ナメック星人の技じゃな?」
「ふん、ナメック星人の子供達が使っていたので、教えてもらったのだ。意表を突けると思ってな」
「やれやれ、全く油断も隙も無い。こりゃあ、これからが楽しみじゃわい」
そう亀仙人は桃白白に手と肩を貸して、控室に戻っていった。観客は、惜しみない称賛の言葉で二人を見送った。
『天下一武道会の歴史に残る。素晴らしい試合でした! 続いては、一回戦第六試合、ランファン選手対孫悟飯選手です!』
この試合も観客のおおよそ半分は桃白白と亀仙人の試合同様に盛り上がった。
「ぱっふん。いかが、可愛いお爺ちゃん?」
何故なら、孫悟飯が師匠程ではないがスケベな事を見抜いたランファンが自ら服を脱いで下着姿になったからである。
「い、色仕掛けなど……この孫悟飯、そんな手には――」
「お爺ちゃ~ん、こっちへ来て~ん」
「は~いっ!」
孫悟飯はナムと違い、ランファンに近づくこともできなくなるという事はなかったが、逆に誘われるままスキップで近づいて彼女の攻撃を受けている。
「あの女、すっげぇな。じっちゃんが手も足も出ねぇ」
「でもそんなに強そうには見えねぇべ。会長さんみたいな超能力だべか?」
「なるほど、女の武器ね。後十年もしたらあたしもいけるかしら?」
「ブルマ、何のこと?」
「あなた、ちょっと撮影に気合を入れすぎじゃない?」
「いや、これはゲロに頼まれたんだよ」
「ゲロちゃんが? まあ、嘘が下手なんだから」
観客席では、悟空達が困惑していたり、ブリーフ夫妻が子供達に教育的配慮をするのを忘れていたりする。
(悟飯め、相手の色香に惑わされるとはなんという未熟者じゃ! お嬢さん、遠慮はいらん、叩きのめしてやってくれい!)
「ええぞ、ええぞー! 何なら全て脱いでしまえー!」
「そうじゃ、そうじゃ! 悟飯も何をやっとる、それでも我が鶴仙流のライバル亀仙流か! ブラの一つも剥ぎ取って……反撃の一つもしてみせい!」
「二人とも、本音が駄々洩れですね」
「おっとうっ! 鼻の下さ伸ばして情けねぇだぞ! そんなに十代の若い女の肌が良いだか!?」
「すまねぇ、サン。だども、おめぇも若けぇし、格好もそんなに変わらねぇべ。だから大目に見て……」
「下着とビキニは別物だ!」
「あの女、何を考えてやがる? あの服が特別重いようには見えないし、脱いで動きが素早くなったようにも見えない。それに悟飯の爺さんもなんだ、ありゃ? 遊んでるのか? それともあの下着が奴の戦闘服なのか?」
「ふう、男って幾つになってもスケベよね。お爺ちゃんもあの女が脱ぎだす前からガン見しているし」
控室も大騒ぎである。鶴亀コンビは本音と建前が逆転していたり、隠せていない。牛魔王夫妻は夫婦げんかに発展している。静かなのはスケベ心の無い4号以外は、桃白白とゲロぐらいだ。
「天津飯、今のうちから慣れておけ。試合で色仕掛けをかけられても、動揺しないようにな」
「た、桃白白様っ、私にはまだ早いです!」
もっとも、桃白白は真面目な顔をしているだけでランファンの下着姿を網膜に焼き付けようとしているかの如く、凝視していたが、
「ふむ……仕掛けてはこないのか?」
一方、ゲロは瞬間移動で自分の研究室から持って来た機器でランファンを計測していた。
試合の方はランファンの「こっち来てくれたら、お爺さんにだけ見せてあげる」攻撃などで悟飯が何度か拳や蹴りを受けたが、両者の実力差は圧倒的。悟飯が本気だったら、攻撃した方であるはずのランファンが拳や脚を傷めていただろう。
「お嬢さん。悪い事は言わない。この辺にしておきなさい」
「っ……!」
ランファン自身、何度も攻撃を当てているはずの悟飯が平気な顔をしている事から、実力差から目を逸らす事が出来なかった。
「まだまだ、よっ!」
しかし、素直にそれを認める事も出来なかった。しかし、その時前触れもなく力と攻撃衝動が溢れ、意識が戦う事一色に塗りつぶされる。
「な、なんと!?」
孫悟飯から見た彼女の変化は一目瞭然だった。禍々しいオーラのようなものを発したと思ったら、気が何十倍もの大きさに膨れ上がったのだ。
「はあっ!」
「ぬうっ!? こ、これは第二試合と同じ……!?」
格好は下着姿のままだが、速さもパワーも段違いに上がっている。悟飯でも油断すれば攻撃を捌ききれずに受けてしまう。
『おおっと! お色気攻撃から一転して激しい攻勢に出たランファン選手、凄まじいスピードです! これが彼女の真の実力なのでしょうか!?』
はた目にはランファンが隠していた実力を見せたようにしか見えないため、試合は続行され、観客は大きく沸いた。
だが、亀仙人の一番弟子である孫悟飯も拳法の達人である。
ランファンの急激なパワーアップに動揺し守勢に回ったが、彼女の動きに慣れれば拳を受け流し、蹴りを掻い潜って、反撃を出る。
「くっ! お爺ちゃんの癖に! 年寄りの冷や水もいい加減にしなさいよ!」
強化され狂暴さが増しているランファンも、悟飯が攻勢に出れば手数の多くを防御に回さなくてはならない。それに苛立ち焦った彼女は、空に飛び上がって悟飯から大きく距離をとった。
『なんと、ランファン選手も空を飛行する技を身に付けていた!? しかし、空中に逃げてどうするのでしょうか!? まさか――』
「ダダダダダダダ!」
実況の予想通り、ランファンは気功弾を……それもマシンガンのように乱射し始めた。
ランファンの気功弾は、一発では悟飯に大きなダメージを与えられない。しかし、今の二人の気の差は大きくない。連続で何発も受ければ、悟飯も無視できないダメージを負う事だろう。
そして、一目散に場外に逃げた実況のように、悟飯も隠れる物が無い武舞台の上から逃げる事しかできない……かと思われた。
「はあっ!」
なんと、悟飯もランファンを追って地を蹴ったのだ。
「いかんっ! 動きの取れない空中で狙い撃ちにされるぞ!」
亀仙人が弟子にそう叫び、ランファンがニヤリと笑う。だが、なんと悟飯は自由自在に空中を舞い、ランファンの気功弾を避けながら彼女に近づいていく。
「なんと、舞空術を習得していたのか!」
鶴仙人が驚く間にも悟飯は間合いを詰め、プレッシャーに耐えきれなくなったランファンは気功弾の連射を止め、大技を放った。
「こ、来ないで~っ!」
掛け声は悲鳴のようだが、強力な気功波がランファンの突き出した手から悟飯に向かって放たれる。しかし、悟飯は紙一重でそれを回避すると、ランファンに一気に接近。
「ここまでじゃ、お嬢さん!」
そして手刀で首の後ろに一撃を入れ、ランファンの意識を刈り取る。う゛っ! と呻いて瞼を閉じた彼女をいわゆるお姫様抱っこをして、悟飯は武舞台に降りた。
ランファンからは、もう異様な気も禍々しい気配も感じられない。
『あのー、悟飯選手。ルール上、ギブアップか場外に出すか、カウントを取らないと勝敗が決められないのですが?』
「あ、こりゃすまん」
そして、武舞台に気絶したままのランファンを静かに降ろしてカウントをとり、第六試合の勝者は孫悟飯に決まったのだった。
〇戦闘力の推移
・天津飯(十歳):6→70 ナメック星で重りを身に付けての修行を始めた事で、大幅パワーアップ。太陽拳とどどん波を習得。
・4号:3千→8千 ナメック星で潜在能力を覚醒してもらい、修行した事で大幅パワーアップ。
【挿絵表示】
・ギラン:9 原作で登場する約六年前だが、強さは多分変わらない。
・ギランダーク:135 トワによってキリで強化されたギラン。狂暴になったうえに、気功波を放つことも出来るようになっている。
チューボ:100→160 GCGの誇る設備と装備、そして鶴仙人の指導によって腕を磨いた。舞空術を習得し、どどん波も打てる。……もう戦車だろうと戦闘機だろうと彼の警備を止める事はできない。
・アックマン:190 アックショットなどの必殺技を編み出し、なんと連射でチャパ王に勝利した。
・チャパ王:145 なんと戦闘力では原作桃白白より高い。しかし、気のコントロールも感知もまだできないので、原作桃白白と戦っても、善戦はできても勝つのは難しいだろう。
・牛魔王:140→450 潜在能力覚醒とナメック星での修行で大幅パワーアップ。原作アニメのようにチチからピッコロ大魔王を倒してくれと言われたら、「分かったべ、ちょっくら行ってくるだ」と出かけ、勝って日帰りできるぐらい強い。また、劇場版でガーリック三人衆やガーリックジュニアに背後から不意打ちを受けても、一撃なら耐えられそう。
・鶴仙人:210→700 潜在能力覚醒とナメック星と地球での修行で大幅パワーアップ。打倒、亀仙人目指して修行を続けている。
・亀仙人:354→930 潜在能力覚醒とナメック星での修行で大幅パワーアップ。サイヤ人襲来編でベジータ達を迎え撃った時のチャオズよりやや強い。
【挿絵表示】
・桃白白:140→650 トレーニングスーツ着用状態でカリン様と地球の神様の修行を受けた後、ナメック星で潜在能力を覚醒させてもらい、鶴仙人には及ばないものの大幅パワーアップ。
【挿絵表示】
・ランファン:6 ただの女性武道家。原作の六年前なので現時点では十八歳。試合時間が一分の天下一武道会の予選を、色仕掛けだけで勝ち上がったとは思えないのと、それらしい動きは出来ていた事から、常人の内だがそれなりに強い方だと思われる。
・ランファンダーク:420 トワにパワーアップされたランファン。ギランよりも強めに強化されている。
・孫悟飯:145→470 潜在能力覚醒とナメック星での修行で大幅パワーアップ。今なら大猿になった悟空に踏まれてもへっちゃら。さらに、舞空術を習得している。
【挿絵表示】
snodra様、変わり者様、Othuyeg様、路徳様、酒井悠人様、ひね様様、黄金拍車様、たまごん様、ヒロシの腹様、太陽のガリ茶様、勇(気無い)者様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。