ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
『女性選手とちびっ子選手の活躍が顕著だった今大会ですが、準決勝に残ったのは全員男性! そしてその内三名はシニアとなってしまいました! 私、関連グッズの売り上げが心配になってきました!』
「大きなお世話じゃ!」
「桃白白だって儂等と百も離れておらんぞ!」
実況に食ってかかる二人の仙人だが、確かにグッズの売り上げを考えるなら桃白白やサンが勝ち残っている方が良かったかもしれん。
『ですが、これも勝負の厳しさ! 天下一武道会準決勝第一試合を始めます! ヨン・ゴー選手、鶴仙人選手!』
そして始まった4号と鶴仙人の試合は、4号が手加減した事で白熱した試合になった。
「やはり、儂では本気を引き出すのは無理か」
ただ、戦っている鶴仙人は4号の実力を知っているので、手加減されている事にはすぐ気が付いたが。
「本気を出した方がいいですか?」
「是非、今のままで頼む。ヨン殿に本気を出されたら、あの世まで吹っ飛ばされてしまうわい」
4号が触角から放った光線を、どどん波で迎え撃ちながら鶴仙人が言う。
「だが……ぎゃふんと言わせてやるぞ! ふんっ!」
そう言った瞬間、鶴仙人の体が二回り以上膨れ上がった。あの細身だった鶴仙人の体は、はち切れんばかりの筋肉で覆われている。
「あやつ、儂の気の解放を真似たな!」
亀仙人がそう叫んだ通り、鶴仙人は試合前に抑えていた気を一気に解放して燃焼させ、本来の実力以上に気を高めているのだ。
「スーパー……どどん波ぁ!」
そして、その高めた気を右手に収集させ桃白白が一回戦で放ったのと同じスーパーどどん波を放った。
「っ!! はあああ!」
4号は手加減を止め、スーパーどどん波を気合で受け止める。
「……危なかった。手加減をしたままだったら、武舞台の外に落とされていたでしょう」
そして、4号は受け止め切った。
「ふぅ、ぎゃふんとは言わせられたようじゃな。今回はここで満足するか。
降参じゃ! 儂は降ろさせてもらう!」
そして、鶴仙人は元通りの大きさに戻った体でため息を吐くと、自ら試合を降りたのだった。
そして続く準決勝第二試合、亀仙人対この儂、天才科学者ドクターゲロの試合も白熱した内容となった。
「お前さん、だいぶ疲れているようだが大丈夫か?」
「実は、さっきの試合でだいぶ無理をしましてな!」
試合で四身の拳の劣化バージョンである二身の拳を使い、分身を囮にしてサンに勝利した。だが、気を半分分けた分身をサンに消された事で、儂は気や体力を半分失ってしまったのだ。
試合に勝った後、出来るだけ体を休め回復に努めていたのだが……。
「しかし、これも戦いの厳しさ! 儂に必要なものなので、容赦は無用!」
知っての通り、天才科学者である儂の本分は研究と開発だ。そのため、トレーニングや実戦形式の稽古や組手の経験はあるが、本物の実戦というものを経験していない。
儂もサンに偉そうに言える立場ではないのだ。だからこそ、少しでも実戦に近い経験を積む機会は逃せない。
「その覚悟や良し。では、容赦無用で行くぞ! 太陽拳!」
「むぅっ!」
亀仙人が放った閃光で視界を塞がれた儂は、舞空術で飛んで距離を取った。気を感知できるとしても、目が見えているのと同じように肉弾戦が出来る境地にはまだ至っていないからだ。
「ほっほっほっ! 容赦は無用と言ったじゃろう!」
だが、なんと亀仙人も飛んで儂に追撃を加えてきた。
「ぐっ、いつの間に舞空術を!?」
「旅の間にな。子ガメラに乗っても良いが、酔いやすいからのっ!」
なんと、亀仙人は旅の利便性を高めるために舞空術を習得していた。
「くっ、フォトンシールド!」
儂は亀仙人の攻撃から身を守るために、儂は体をすっぽり覆うシールドを前方に張り巡らせた。それによってようやく、亀仙人の攻撃が止んだ……かに思えた。
「守りに徹するのは悪手じゃぞ! かめはめ波!」
だが、亀仙人の狙いは守りに徹して動きが止まった儂をシールドごと吹き飛ばして、観客席の前に張られているシールドにぶつけて場外負けにする事にあったようだ。
「っ! フォトンウェイブ!」
儂はそれを防ぐため、後ろに向かって、全力でフォトンウェイブを放った。目が見えない状態で気功波を当てるのは難しいが、相手が放っている気功波を遡る事はそれを可能にする勢いがあれば可能だ。
「ぬわっ!?」
そして、儂は全力でフォトンウェイブを放った甲斐あって、なんとか亀仙人のかめはめ波を遡って彼にシールドごと体当たりをして、逆に弾き飛ばすことに成功したのだった。
『場外! ゲロ選手の勝利です!』
「や、やれやれ。年寄りをもっと労わらんかい」
「いやいや、労わっていたら負けていたのは儂の方でした」
立ち上がった亀仙人に手を貸して武舞台に引き上げる。観客席からは、武術の神様と呼ばれるに相応しい戦いを見せた亀仙人に惜しみない称賛が贈られたのだった。
そしてこの日の試合は終わり、ホテルに引き上げたわけだが……観客席に仕掛けられた防犯カメラの映像を全て確認しても、トワとミラの姿はなかった。
試合でも手出しをしてこなかった事から推測すると、他の時代に移動か何かしたのだろう。
暗黒魔界の復活と言う彼女達の目的から考えると、小規模な介入だったが……おそらく、今回は何かを試しただけだったのだろう。
試したのがキリによる強化だったのか、魔術か何かだったのか、タイムパトロールが現れるか否かだったのかは、不明だが。
ギランとランファンでそれが済んだのなら、明日の決勝戦や三位決定戦、そして五位決定戦にもトワ達は現れないと思われる。これで一安心だが……将来的には全く安心できない。
将来起きる戦いを勝ち進むためのハードルが、儂の知る原作以上に高くなることが確実だからだ。
ナメック星編でフリーザを倒すだけでも大変なのに、兄のクウラまでナメック星に現れるとしたら……考えるだけでため息が出る。
(これからは、『これで何とか倒せるだろう』と思える程度では難しい。『これで絶対に楽勝だ』と確信できるほど準備をして、やっと勝算が生まれる。これぐらいの覚悟が必要だ。
まあ、レッドリボン軍やピッコロ大魔王はよほどの事が起きない限り心配はいらんと思うが……サイヤ人襲来編はまだ怪しい)
地球に襲来したラディッツが原作通りの実力だったとしても、キリで強化された後大猿化したら、ネイルに助けを求めても危ういかもしれん。
やはり8号にはカッチン鋼を使用し、動力源は永久エネルギー炉を使うしかないな。原作では、永久エネルギー炉を動力源に使用した人造人間は16号からだったという設定だったと思うが、構うまい。
そんな事を考えていた次の日、天下一武道会は最終日となった。
まずは午前中から五位決定バトルロイヤルが行われた。二回戦で敗北した四人が一度に戦い、百万ゼニーの賞金を受け取る五位を決めるのだ。
チューボ、アックマン、孫悟飯、そしてサンの四人で争ったのだが……結果は想像の通りだ。
「やったべ~っ!」
圧倒的な試合内容でサンが勝利した。試合開始直後は孫悟飯がサンをその技で翻弄したが、彼女は儂の試合の時とは逆に距離を取って気弾を連打した。そのため、孫悟飯は持ちこたえる事が出来ず敗退。
そしてチューボとアックマンに彼女を止める事ができる訳はなく、瞬く間に倒されてしまったのである。
逆に、その次に行われた三位決定戦は白熱した戦いになった。
「そろそろ降参したらどうじゃ、中途半端ハゲ!」
「貴様こそ年寄りの冷や水はよしたらどうじゃ、ツルッパゲ!」
準決勝で敗れた亀仙人と鶴仙人の、仙人対決となったからだ。
「鶴仙流の舞空術を師弟揃って真似しおって!」
「ほっほっほ、技に著作権はないと言うではないか。それに貴様だって儂の真似をしたじゃろが!」
「ふんっ、あれは我が流派の気の制御を高めたら、偶然似ただけじゃ!」
「ええい、貴様の口から出るのは詭弁ばかりか!?」
そんな口論を続けながら、広い武舞台を縦横無尽に駆け回り、拳と蹴りと気功波でお互いの力をぶつけ合う、高度な戦いを展開する。
「フォトンシールド!」
そして舞空術を使っての空中戦の最中、鶴仙人がフォトンシールドを展開してなんと亀仙人を球体状のシールドの中に閉じ込めた。
「ぬっ!?」
「飛んでいくがよいわっ、スーパーどどん波ぁ!」
そしてシールドに閉じ込めたまま、亀仙人をスーパーどどん波で場外に向かって吹き飛ばそうとした。
「かめはめ波!」
だが、亀仙人もシールドの中でかめはめ波を放つ。内外からの圧力に耐えきれずシールドが砕け散り、かめはめ波とスーパーどどん波がぶつかり合う。
「波あああ!!」
「ば、馬鹿なーっ!?」
勝利の女神が微笑んだのは、亀仙人だった。鶴仙人は亀仙人のかめはめ波に吹き飛ばされ、空中で爆発。力尽きて場外に落ちてしまった。
『亀仙人選手の勝利です! 今大会三位は亀仙人選手! 四位は鶴仙人選手です!』
「イエーイ! ほっほっほ!」
両手にピースサインで喜ぶ亀仙人。こうして武天老師の伝説は今も健在であると示したのだった。
なお、この試合をテレビで見ていたマーク少年は、亀仙人の弟子になりたいと言い出した。何故なら、鶴仙人が指導者となっているGCGに入れるのは十五歳からで、まだ七歳の彼では無理だからだ。
しかし、当然だが両親に「もっと大人になってからにしなさい」と止められてひとまず断念したのだった。
そして儂と4号の決勝戦だが……。
「ドクター、私の成長を改めてお見せします」
「うむ。サンにも言ったが、全力で来い」
戦闘力の差は、4号が8千に対して儂が4千。サイヤ人襲来編での原作悟空とナッパと同じ差がある。
しかも、4号はサンと違って試合の経験が豊かで、気の感知も儂と同程度。超能力も使える。付け入る隙が全く見当たらない。
4号がサンに劣る点は永久エネルギー炉を搭載していないため、スタミナ切れがあり得る事だが……気が倍ほども違うので、結局持久戦では儂が負ける確率が圧倒的に高い。
『それでは、天下一武道会決勝戦……開始!』
なので、儂は試合開始の合図と同時に速攻で仕掛けた。
「プラズマブースト!」
地球の神様の神殿で編み出した、気を生体電気に変換し思考と動作のタイムラグをゼロにし、筋肉を刺激し身体能力を増幅させる技を発動し、間合いを詰めて4号に肉弾戦を挑む。
この時、儂の力と速さは4号と互角だった。しかし、4号はナメック星での修行で自分と同格以上の相手との試合に慣れている。動揺せずに儂の拳を受け止め、蹴りを掻い潜り、儂に拳や膝を打ち込む。
その4号の姿が儂の前から掻き消えた。
「どどん波!」
「外れです、ドクター」
背後に瞬間移動で現れた4号に向かって、右手で左の脇を通してどどん波を放った。だが、4号はそれを読んでいたようで、瞬間移動で現れる位置を調整していた。
それがきっかけで、儂の猛攻は徐々に4号に通じなくなり、最後は4号の回し蹴りを受けて意識を失い、カウント負けとなったのだった。
まあ、4号の成長を直接確認できたので悔いはない。
こうして4号は天下一武道会優勝者と成り、テレビ番組や雑誌でインタビューを求められるなど仕事が増えたが、地球人の宇宙人に対する認識は大きく改められるきっかけになった。
……復活したピッコロ大魔王が世間を知ったら、仰天する事だろう。自分や神と同じ特徴を持った4号がトーク番組や、ミネラルウォーターや浄水器のCMに出ているのだから。
今回の天下一武道会の優勝者は4号、準優勝者が儂、ドクターゲロ。三位が亀仙人で、四位が鶴仙人、そして五位がサンとなった。
実況が心配していたグッズの売り上げだが、4号とサンが大いに貢献してくれたので収益は無事黒字に。結果、杞憂に終わったそうだ。
そして天下一武道会が終わった後、儂等は各々自分の生活に戻った。とはいえ、儂や4号、ブリーフ達は西の都にいるわけだが。
天津飯やタイツ、そしてターレスは次の大会ではもっと勝ち進んでやると一層修行に打ち込み、悟空やチチはそれぞれの家族とフライパン山やパオズ山に帰った。
鶴仙人の誘いを断ったアックマンは、ブリーフからトレーニングスーツをもらって占い婆達と宮殿に帰っていった。
亀仙人は弟子になったチャパ王あらため……もう面倒だからチャパ王でいいか。チャパ王を連れ、修行をするために大陸にある家に向かった。とりあえず、トレーニングスーツの上に亀仙人が神様からもらった重い服の予備を着せて牛乳配達から始めるらしい。
牛乳配達のコースで、暫くの間アロハシャツを着たチャパ王の姿が見られるだろう。
ギランとランファンもそれぞれの生活に戻った。
特にランファンは、記憶が途切れた後の事をテレビで知り、「あたしには隠れた才能があったんだ!」と自分に起きた異変を好意的に解釈して、今度はその隠れた才能を開花させるための武者修行の旅に出てしまった。
あれは潜在能力や才能とは関係ない、トワの術で強化されただけだと思うのだが……。
チューボは桃白白と共に一か月ほどナメック星で修行をしていた。初日こそ自分の勤める会社が宇宙人と交流していたことに、改めて驚いていたがすぐに慣れたようだ。
桃白白はナメック星で修行をした後、三本目の主演映画の話を受けて制作を進めているようだ。
そして初夏から夏へ季節が移る七月の初旬に、人造人間6号ギネの改造が終わった。
荒涼とした大地に血の池に針の山。燃え盛る炎に包まれた山があるかと思えば、極寒の吹雪に包まれた雪山もある。
そこで罰として労働に従事する悪人達の一人、セリパは深くため息を吐いた。
「やれやれ、どうせ働くなら派手に暴れたいもんだよ」
「セリパ、それが理由であたし達ここに落とされたんだよ?」
「分かってるよ。全く、他の星を侵略したぐらいで地獄行きなんて、厳しすぎなんじゃないか?」
サイヤ人に母星を侵略された宇宙人が聞けば激怒しそうなことを言うセリパだが、彼女は本気でそう思っている。彼女達サイヤ人の主な仕事が他星の侵略だったのだから、それも当然ではある。
種族や時代や文化が違えば、善悪の価値観は異なって当然だ。サイヤ人は、その極端な一例と言えるだろう。
「またそんなこと言って。そうした事に自分で気が付くのも、人のあるべき姿だって裁判の時言われたじゃない」
だが、価値観が異なるからといって死者を裁く基準を著しく変えては意味が無い。そのため、サイヤ人達は「そうした価値観が正しいとされ、それ以外の生き方が難しい環境だった」という事情を考慮され、減刑はされたが無罪にはならなかった。
行われた減刑も、セリパのように惑星への地上げを数えきれない程行った戦闘員にとっては、誤差の範囲である。
そしてサイヤ人の戦士達が減刑された分、サイヤ人をそのように積極的に治めてきたベジータ王の罪は重く罰せられている。責任者は、死後も責任を取るのが仕事になるようだ。
「そりゃそうだけど、こうも毎日同じことの繰り返しじゃねぇ。フリーザやドドリアの野郎も、相変わらず景気良くやってるようだしさ」
チッと舌打ちをするセリパ。彼女がフリーザ達の動向を知っているのは、地獄でも現世の情報は意外と手に入れる事が出来るからだ。特に、フリーザ軍のような悪人の巣窟の情報は。
失態を重ねてフリーザや幹部に粛清された、もしくは侵略しに行った星で返り討ちにされたフリーザ軍の兵士が、年に何人も地獄にやってくるため、情報源には困らない。
セリパとしては自分達を切り捨てたフリーザや、直接彼女とチームの仲間を殺したドドリアが順調に勢力を伸ばしている事が分かり、不快で仕方がない。
「あたしはラディッツが上手くやってるのが分かるから、嬉しいけどね」
ただ、ギネとしては新顔の死者の話から息子のラディッツが生きている事を知る事が出来るので、悪い気分ではなかった。
ラディッツは惑星ベジータの破壊に巻き込まれる事なく生き延び、同様に生き延びたベジータ王子率いるサイヤ人達と一緒にフリーザ軍の戦闘員として働いていると彼女達は聞いていた。
今はベジータ王子と、ナッパと言うサイヤ人の中ではエリートだった男の三人でチームを組んでいるようだ。
「フリーザの手下としてだろ? 何時あたし達みたいに『用済みだ』って消されるか分かったもんじゃないよ?」
「まあね。でも、ベジータ王と違ってベジータ王子はフリーザに忠誠を誓っているらしいし、意外と大丈夫なのかもしれないよ?」
ギネ達の情報源はフリーザ軍の兵士なので、ベジータが実際に腹の底で何を考えているのかは知らないのだった。
「それよりも、あたしはラディッツが何度も無茶をやって、遠征から帰ってくる度にメディカルポッドの世話になっているらしいのが心配だよ。まったく、そんなところまでバーダックに似なくてもいいのに」
「はいはい。しっかし、そのバーダックは何処をほっつき歩いているのやら」
ギネだけではなく、セリパ達チームの仲間はバーダックの生存を信じていた。何故なら、この地獄で彼を見かけていないからだ。
サイヤ人として多くの星を侵略してきたバーダックは、死ねば間違いなく地獄行きになるはずだ。同じチームのセリパやトーマはもちろん、戦闘員からすぐに非戦闘員へ転向したギネも地獄にいるのだから。
それなのに惑星ベジータが滅ぼされてから、約六年経つ今も地獄でバーダックの姿を見ないのだから、まだ生きているとしか思えない。
「いったいどうやって生き残ったのかは知らないけど、フリーザ軍にいる様子もないしね」
「バーダックの事だから、カカロットを迎えに行ったか、他のサイヤ人の生き残りを集めてフリーザを倒すつもりなのさ!」
「他の生き残りねぇ。あたし達が地獄に来た時にビーツって奴から聞いたけど、何年か前に失踪したって話のパラガス大佐と、飛ばし子にされたパラガスの息子もここにはいないし、あり得ない話じゃないね」
小惑星バンパでパラガスに殺されたビーツは、地獄に突然増えた同族に驚きながら、バーダックを探すセリパ達に自分の身の上を聞かれるままに話してくれた。
そのため、彼女達はベジータ達やカカロット以外にもサイヤ人の生き残りがいる事を知っている。
ただ、ターレスの事は知らなかった。パラガスの場合は大佐という地位に就いていたため、それなりに知られている。ビーツという証言者もいた。しかし、ターレスは当時保育器を出たばかりの子供だった事と、実の両親すら彼の事を探していなかったので、ターレスというサイヤ人の子供の存在自体が知られていなかったのだ。
「そう言えば、あんたが死ぬ前に助けた爺さんもいないらしいね?」
逆に、変装していたゲロの事はギネがしっかり覚えていた。
「うん。でも、見るからに弱そうだったし……もしかしたら、ずっと非戦闘員だったから、地獄に落ちないで浄化装置で浄化されてもう生まれ変わったのかも」
ただ、重要視はされていなかったようだ。
「おーい、そろそろ飯にしようぜ!」
そこに、トーマ達がやって来た。
「今日は差し入れがあってよ、お前達にも分けてやるぜ!」
「おう!」
パンブーキンとトテッポがうれしそうな様子で、何かの燻製肉や果物の入った袋や酒瓶を掲げて二人に見せる。
「へえ、毎度のことだけどありがたいね! しっかし、誰なんだろうね、あんた達二人の墓を建てて供え物をしてくれる物好きは」
セリパが言うように、差し入れとはお供え物の事である。どういう理屈かは不明だが、現世でお供え物やらなんやらをされると、こうして地獄に届くのだ。
物品だけではなく、供養の儀式なども何となく届いている。閻魔はそうした「生者が死者に対して行う弔いや供養」を考慮して裁判の結果を決め、既に地獄に落とした死者にも減刑を行っているのだ。
そして、サイヤ人には死者を悼む文化はほぼない。知識としては知っているが、それを実行する者は殆どいない。そもそも、サイヤ人は惑星ごと滅亡している。まさか、フリーザ軍に二人の墓を建てて供養してくれる奴がいる訳もない。
だというのに、パンブーキンとトテッポには供え物が何度か届いている。
「やっぱりバーダックだよ」
それを行っているのはバーダックだと主張するギネだが、トーマ達は揃って首を横に振った。
「ギネには悪いけど、墓を建てるだけならともかく、あいつがこんなにまめに供えてくれるかね?」
「だったらパンブーキンとトテッポだけじゃなくて、俺やセリパに供え物が無いのが妙だ」
「それにバーダックが俺達を供養するなら、真っ先にギネ、お前に花なり食い物なりを供えるだろ」
トテッポも三人の意見に頷いている。
「じゃ、じゃあ誰がパンブーキンとトテッポの供養をしているのさ?」
「うーん、実はミート星をフリーザから買ったどっかの宇宙人が、偶然パンブーキンとトテッポの死体が埋まっている場所に先祖の墓でも建てたんじゃないか?」
「それで、その宇宙人の先祖への供え物のおこぼれが俺達に届くって事か。あり得なくはねぇな」
普通ならあり得ない事だが、彼等にはそれぐらい心当たりがなかったのである。
「そうかなぁ……」
「まあ、難しい事は考えず、さっさと仕事を終わらせて食っちまおうぜ。また他の連中が来たら面倒だ」
彼らは死人であるため、日々食事をとる必要はない。だが、飢えも刑罰の一つだ。それに、生前と同じ味覚もある。
そしてパンブーキンとトテッポの元に贈られてくる供え物は、サイヤ人達が食べた事がないほど美味かった。それが知られるようになってから、彼等から供え物を奪おうとする者が現れるようになっていた。……主にベジータ王とその取り巻きが。
そしてセリパとギネが労働を終えると、車座に座ってさっそくお供え物を食べ始めた。
「相変わらず美味いなぁ。生きていた頃にはこんな美味いもん、食えなかったぜ」
「ベジータ王が寄越せって言うぐらいだからな。次また狙ってきたら、今度こそ返り討ちにしてやる」
「ベジータ王と言えばさ、また反乱とか起こさないもんかな?」
惑星ベジータが滅亡して地獄に落ちた後、ベジータ王は部下のサイヤ人を集めて早い段階で閻魔に対して反乱を企てた。彼が一度死んだくらいで反省して大人しくなるなんて、あり得なかったのである。
ベジータ王はパワーボールを使って理性を維持したまま大猿化して獄卒達を蹴散らし、部下のサイヤ人達は大猿にならないよう注意しながら他の亡者や逃げ遅れた鬼達を倒して、閻魔を倒そうとした。
「ちょっと、セリパ、縁起でもない事を言わないでおくれよ。あの時は皆ボロボロにやられて大変だったんだからね!」
「あれ? そうだったっけ?」
「ははは! 俺達は途中でベジータ王の取り巻き共にやられて寝てたからな! 大変だったのは看病してくれたギネだけだぜ!」
そして、ギネ達はベジータ王の反乱を止める側に回った。死んだ後にまでベジータ王に従う理由はないと思ったのと、彼に従って地獄の鬼と戦うよりも逆らって彼らと戦う方が楽しめそうだったからだ。
……結果的には怪我人の看護に回ったギネ以外はベジータ王に惨敗し、気絶している間に閻魔大王が要請した救援が来て反乱を鎮圧してくれたので、事なきを得たが。
生前多大な功績を上げたため死後も肉体と修行の場を与えられている戦士達の前には、大猿化したベジータ王も敵わなかったのだ。
「あれは楽しかったよな。ついでに刑期も短くなったしよ」
「ああ、お陰であと数億年もお勤めすりゃあ生まれ変われるぜ!」
「おっと、短くなっても大差なかったな! ガハハハハ!」
酒が回ってきたのか、肩を組んで笑い出すトーマとパンブーキン。そんな二人に全くとため息を吐く。
「ただでさえバーダックとカカロットが何処で何をしているか分からないのに、しょっちゅう反乱なんて起こされちゃ堪らないよ。地球人の悪人も、滅多に見かけないってのに」
ギネは刑罰の合間にバーダック、そして地球へ飛ばし子として送った次男のカカロットに関する手がかりを地獄で探していた。
しかし、広い地獄で地球の悪人に出会う事は滅多になかった。チョビ髭の偉そうな男とその部下達にあったくらいで。だが、彼は何十年も前に死んだ独裁者だったので、手掛かりにはならなかった。
「カカロットが飛ばし子として命令通り地球で暴れているなら、この地獄でも地球人が増えないとおかしいけど、気にする事ないよ」
「だな。もしかしたら、誰かに拾われて、月を見る機会がないまま暮らしているかもしれないぜ。地獄に落ちてないんだから、生きてるのは確実なんだしよ」
そうギネを慰めるセリパとトーマだが、カカロットが既に死んでいる可能性はあえて考えないでいた。
地球に到着する前に宇宙船が故障したり、銀河パトロールに見つかって撃ち落とされたりしていれば、ただの赤ん坊の死者として扱われて地獄に落ちるどころか、もう生まれ変わっているかもしれない。
「あ、地球と言えば面白い話があるぜ。この前、知り合いの鬼が地球人の妙な婆さんを連れてきて――」
「うお!?」
「おい、トテッポ、俺が話してる途中だろ。なんかあったのか?」
珍しく声を出したトテッポに話を遮られたパンブーキンが彼に顔を向けると、彼はギネを指さして叫んだ。
「ギネが、消える!」
なんと、ギネの姿が急に薄くなり始めたのだ。トテッポが叫んでいる間にも、彼女の向こうの景色が透けて見えるようになってしまった。
「えっ!? ええっ!? な、何!? あたしどうして――」
「ギネ!」
「どうしちまったんだ!?」
セリパや酔いの醒めたトーマが慌てて手を伸ばすが、その手が届く前にギネは彼女達の前から消えてしまったのだった。
・サンの一張羅
原作チチ(子供)が来ていたビキニアーマー。イメージとしては、大人になったチチがビキニアーマーを着ている状態。某フィギュアかもしれない。
・マッチョ鶴仙人
亀仙人と同じように気を解放した鶴仙人。瞬間的に気を高める事が出来る。スーパーどどん波同様、今大会のために彼が用意した切り札。
・亀仙人の舞空術
弟子探し兼修行の旅を続けていて筋斗雲に乗れないのなら、多分覚えるだろうと思いました。
なお、習得したのは鶴仙人と和解した後。
・地獄のあれこれ
完全に捏造、よく言えば作者の勝手な設定です。
・地獄の死者の肉体
地獄の死者は、1:肉体がない魂だけの死者 2:肉体がある死者 の二つに分かれており、前者は「天国には行けないが、浄化装置で浄化されてすぐ生まれ変わる。後者は、生前に重い罪を犯しており、地獄で長期間罰を受けると思われる。
劇場版『復活のフュージョン』で某チョビ髭の方をモデルにした過去の独裁者等も地獄から蘇っていただめ、肉体のあるなしに強さは関係なさそう。……現代兵器に頼っていた事から、彼が生前優れた武道家だったとは考えにくい。
なので、地獄の死者が肉体を持つ条件は、重い罪を犯している事だと思われる。
・地獄での生活
地獄での生活は、日本の仏教における地獄よりずっと快適だと思われる。ゲーム『ドラゴンボールファイターズ』でセルが地獄で修行をしており、『ドラゴンボールGT』でドクターゲロが研究開発を続けることが出来た事から、地獄の死者にもプライベートな時間と空間が保証されているのかもしれない。
それを考えると、『復活のF』でフリーザが処されていた「身動きできない状態で、妖精や小人のパレードを見せられる」刑は、自由や自分の時間が一切無いのでかなり重い罰なのかもしれない。
もっとも、地球という惑星一つを破壊しかけただけのセルと、いくつもの惑星を破壊し、原住民を皆殺しにするよう部下に命じてきたフリーザ。どちらの罪が重いかというと、圧倒的に後者だと思われるが。
また、セルが修行している事から、地獄にいる間でも修行すれば強くなる事は可能らしい。
・お供え物が地獄に届く
そうだったら良いなという捏造設定です。地球の仏教でも死者に対する供養によって死者の裁きが変わるそうなので、あり得るかなと。
・ビーツ
劇場版『ブロリー』に登場。非戦闘タイプのサイヤ人の技術者。宇宙船の整備などをしていたため、サイヤ人の中では罪を犯していない。
また性格も穏やかで、大猿化した経験が一度もないらしい。
息子を探すパラガスに連れていかれたのが運の尽き。惑星バンパで無事ブロリーを発見するも、宇宙船が壊れてバンパから脱出不能になっていたので食料の消費量を抑えるためにパラガスに殺されてしまう。
裁判後地獄に落ち、数年後にサイヤ人の罪人が一気に増えて驚く事になった。
なお、戦闘員の経験がなかったためギネよりも刑が軽く、この話の時点で既に生まれ変わって転生している。
・チョビ髭の偉そうな男
劇場版『復活のフュージョン! 悟空とベジータ』で地獄から蘇った独裁者。戦車に乗り、部下の兵士を指揮していたが、悟天とトランクスに退治された。
多分、モデルはあの方。
時系列的に彼は原作前に死亡してまだ地獄にいるはずなので、地球の悪人の死者の例として出してみました。
雪凪ハーメルン様、中島ゆうき様、JtR0000様、路徳様、葵原てぃー様、nicom@n@様、変わり者様、あんころ(餅)様、竜人機様、ヒロシの腹様、 so-tak様、gsころりん様、六四様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。