ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
閻魔大王がゲロ達と戦うための強い戦士を探す占い婆に、バーダックチームを紹介したのはごく自然な成り行きだった。
トーマとセリパは、そして彼らと一緒にいるギネは正確な日時は不明だが将来的にはゲロの手で人造人間に改造され、生き返るはずだ。それより前に会う事になっても構わないだろうと。
それに彼らは危険なサイヤ人だが、ベジータ王が反乱を起こした際には地獄側に立って死にかけるまで戦ってくれた。動機はサイヤ人らしかったが、それだけに現世に行っても一日だけ、それも人里離れた場所で戦うだけなら余計なトラブルも起きないし、起こさないだろうと思われた。
そして占い婆はバーダックチームの内、たまたま直ぐに会えたパンブーキンに話を持ち掛け、そこで彼らにターレスや悟空と同じように尻尾が生えている事に気が付き、彼らの事を話した。だが、悟空がカカロットである事は知らなかったので話してはいない。
そしてパンブーキンは、彼らの内一人が……おそらく悟空と言うサイヤ人っぽくない名前の子供がカカロットではないかと予想した。そして予想が外れたとしても現世、それも地球に行けるならカカロットについての手掛かりが手に入るのではないか、と思った。何なら、報酬代わりにカカロットやバーダックがどこにいるのか占ってもらってもいいかもしれない。占い婆の自己申告だが、百発百中らしいし。
占い婆の要求している五人の戦士も、自分を含めたバーダックチームの四名とギネでちょうど五人になる。ギネを戦士と言い張るのは無理があるかもしれないが、彼女も昔は戦闘員をしていた。それにパンブーキンの知識では地球は「強い奴がおらず、文明も劣った星」なので、彼女が一人混じっても問題ないだろうと思ったのだ。
しかし、その話をしようとした日にギネは消えてしまった。パンブーキン達はもちろん慌てて近くにいた居た鬼に事情を話し、ギネの身に何が起きたか心当たりがないか尋ねた。
「消えたオニ? なら、多分生まれ変わったか生き返ったんだと思うオニ」
すると、そう答えられた。ビーツのように生涯非戦闘員だったならともかく、ギネは戦闘員の経験もあるので刑期が終わって生まれ変わったとは思えない。しかし、生き返るなんてことがあるのかと続けて尋ねると、鬼はあっさり答えた。
「すごく珍しいけど、あり得ない事じゃないオニ。たしか、地球のなんとかって科学者がそれで閻魔大王様を困らせているらしいオニ」
そう教えてくれた。
誰が何のためにギネを生き返したのか? そして彼女は今どうしているのか? もしかしてバーダックが関係しているのか? 気になる事は多かったが、それ以上地獄で調べまわってもしょうがない。
それに、ギネが危険な状況にいるとも考えにくい。彼女が消えてからセリパとトーマにも供え物が来るようになった。さらに、聞いた話では何者かがサイヤ人全体を供養しているらしい。
おそらく、生き返ったギネと彼女を生き返らせた何者かのお陰だろう。トーマ達に供えられた料理の中に、ギネが得意だったバーダックの好物があった事からも、それは確実だ。死人を弔う余裕があるのだから、それなりに安全な場所にいるのだろう。
それに、以前からパンブーキンとトテッポに供えられていた物とセリパとトーマに供えられるようになった物は、同じ星の食材らしいと味で分かった。
バーダックチームの四人は話し合い、とりあえず占い婆の依頼を受けようと決めた。ギネが居なくなって空いた枠は、バーダックと何度か組んだ事のあるリークやタロに声をかけるつもりだった。
しかし、何故かそこでベジータ王が割り込んできた。どこで話を聞いたのかは不明だが、「強い戦士を求めているなら、サイヤ人最強の戦士であるこの儂を無視するのは筋違いだろう」と言って来たのだ。
どうやら、ベジータ王も自分達を弔っているのが何者なのか興味を覚え、その手掛かりを得るために占い婆の依頼を利用したかったらしい。
生前より強くなったバーダックチームの面々だが、まだベジータ王にはとても勝てないので、渋々彼の参加を認めるしかなかった。
そして、最初に声をかけられてから半年近く経ってから……その間に占い婆の方で一度に五人まで生き返せるよう施設を増設し、力を高める修行をしていたらしい……バーダックチーム+ベジータ王で地獄から地球へ降り立った。
そして対戦相手と顔を合わせたのだが……その瞬間、バーダックチームの目的の半分は解決した。
「ギネッ! ギネじゃないかっ!」
「あんた、やっぱり生き返ったんだね! 供え物にあんたがよく作ってた料理があったから、もしかしたらって思ってんだよ!」
「トーマ、セリパ! パンブーキンにトテッポっ! 婆さんが言ってた戦士って皆だったんだね!」
なんと、対戦相手の中にギネがいたからだ。
「あっ! このバーダックそっくりなガキのどっちかがカカロットか! う~ん、こっちか?」
「俺はターレスだ。まったく、俺はバーダックって奴によっぽど似ているらしいな」
「バーダックってのは、オラの父ちゃんだって母ちゃんが教えてくれたぞ」
そして、ギネとバーダックの次男であるカカロットもその場にいたからだ。
「それでバーダックは……姿が見えないって事はいないのか?」
「そうなんだよ。それで、ここの占い婆に占ってもらったら分かるかなって思って」
だが、バーダックはいなかったが……彼は強いのでトーマ達はあまり心配していなかった。
「我が息子ベジータ達やパラガスとその息子以外にも、まだ生き残りがいたのか……! しかも、何故あのギネと言うバーダックの妻が生き返っているのだ? それに、あのサンという女は何者だ? サイヤ人の血を引いているようだが……以前にも地球に飛ばした子供がいたのか?」
一人、そうした事情をほとんど知らずに参加したベジータ王はただただ困惑していた。
「なんじゃ、お主ら知り合いか。なら、試合の前に話を済ませておくのじゃぞ。試合に集中できないのでは困るからな」
「占い婆様! ならその間、桃白白に挑戦したい! 構わんな、桃白白!」
「アックマン! その前に俺と戦ってもらうぜ!」
「私は了解していないが……受けて立ってやろう」
「では、私は治療を行うとしよう」
こうしてギネ達が話を済ませる間、アックマンの提案で彼らとターレスや桃白白の試合が行われる事になった。
ちなみに、儂も彼らと話をするために武舞台から離れている。
「爺さんが俺達を弔ってくれてたのか! なんでだかは知らないが、ありがとよ!」
「美味かった!」
「気に入ってもらえたようで何よりじゃよ」
まずは、パンブーキンとトテッポから弔いの礼を言われた。……こうして会う機会があるとは思わなかったので、複雑だ。
「へえ、あんたが庇ったっていう爺さんが実は地球の科学者で、恩返しにあんたの死体を改造して生き返した……地球って、文明が劣っている星じゃなかったんだね」
「しかも、恩返しに死体を改造か。まあ、生き返してくれるなら恩返しか? 地球人ってのはずいぶん変わってるんだな」
「いや、ゲロ爺さん達が変わっているだけで他の人は……考えてみれば、まだ普通の地球人を見た事がないかも。
でも、セリパとトーマの二人は他人ごとじゃないよ。だって――」
「え、あたし等も人造人間に!? 死体も保存してある!?」
「しかも、フリーザの細胞を移植されるのか!?」
「「……まあ、強くなれるなら文句はないけど。生き返してもらえるらしいし」」
セリパとトーマはギネから自分達も人造人間に改造予定だと聞いて驚いた様子だったが、改造をすぐ納得してくれた。
「おい、俺達はどうなんだ?」
「いや、すまんが二人の遺体は損傷がひどくて人造人間にする事は出来なかった。だから墓を建てたのじゃよ」
「そうか……これもドドリアの野郎のせいだ! 野郎が地獄に来たらボコボコにしてやろうぜ!」
「おうっ!」
「おいおい。今のお前らじゃ、ドドリアの野郎が地獄に来ても、返り討ちにされるのがオチだぜ」
「それにしても、この爺さんが将来生みの親になる訳か……供え物の礼もあるし、手加減してやろうか? こっちも仕事だからわざとは負けてやれないけど」
「いやいや、殺し合いと大猿化は無しだが、それ以外では本気で頼む。歴戦の戦士と戦えるまたとない機会じゃからな。儂らは実戦経験を必要としておる」
そう言うと、セリパ達は驚いた顔をしていた。
「あんたも戦うのか? 科学者なのに?」
「地球人はやっぱり変わってるな」
サイヤ人やフリーザ軍では、戦闘員と非戦闘員の役割がはっきり分けられており、科学者や技術者は後者の仕事とされている。そのため、儂のように戦える科学者の存在は珍しく感じたのだろう。
「おい、ゲロとやら」
そう話していると、ベジータ王までこちらにやって来た。さっきまで少し離れたところで困惑している様子だったが、儂等の会話に聞き耳を立てて情報を収集し現状を把握したようだ。
要件は、やはり自分を人造人間に改造して生き返せと要求する事だろうか?
「貴様が儂達を慰霊……だったな。慰霊をしている男で、サイヤ人の生き残りを世話し、さらには人工的にサイヤ人の細胞を持つ者を増やそうとしている科学者か。
フッ、気に入ったぞ!」
どうやら違うらしい。ベジータ王は儂を指さし高らかに宣言した。
「まず、この地球を新たな惑星ベジータ……新惑星ベジータとする!」
「なんと!?」
地球をグモリー彗星が衝突しそうな名に改名しろと!?
「そして我が息子ベジータを王として迎え、新たなサイヤ人の王国とするのだ! ゲロよ、事がなった暁には貴様を宰相と迎えるようベジータに遺言を残しておいてやろう!」
は、話がとんでもない方向に向かっていく。ギネ達も、そして武舞台の上で戦っていた桃白白とアックマンも、「マジか!?」と言う顔でこっちを見ているのが視界の端に見えた。
「行く行くはベジータを中心に力を高めたサイヤ人の戦士達で憎きフリーザを倒し、今度こそ我々戦闘民族サイヤ人が宇宙の支配者に――」
「あー、すまんが儂、サイヤ人の再興に協力しているつもりはないのじゃが」
「なんだと!?」
「儂には儂の目的があり、その目的達成のためにはサイヤ人の細胞が必要だったというだけじゃ。期待させたのならすまんが」
儂がそう言うとベジータ王はひどく驚いた顔をして押し黙ったが、ギネ達は「そうだよね」と安堵した様子で会話や試合に意識を戻した。
ちなみに、ドラゴンボールの事はベジータ王やバーダックチームの面々には話していない。知ったとしても、死後一年以上過ぎている彼らはナメック星のポルンガで、一つの願いで一人ずつしか生き返れない。
だが、原作でムーリ長老が一つの願いで大勢を一度に生き返せるようにパワーアップさせていた。その後なら、サイヤ人の王国を復活させるのは願い一つで出来てしまう。それはかなり拙い。
パンブーキンやトテッポと話してみて、彼らが気の良い……敵ではなく仲間の妻が世話になっている人物等、友好的な相手に対しては気の良い人物だと分かった。分かったが、ベジータ王を生き返すのは危険だ。
サイヤ人の中では珍しい知略家であるため、いつ裏切られるか分からんからな。
「まあ、将来的にはフリーザを打倒する事を目指しているが……それで納得してくださらんかな?」
「……まあ、いいだろう。ただし、供え物は欠かすなよ」
そして、妙に素直に引き下がった。表面上は供え物を強請る事で納得したように見せかけようとしているが、知恵が回る彼らしく腹の底で何か企んでいるのかもしれない。
「では、試合の前に間違っても大猿化しないようこのブルーツ波遮断目薬を使っていただこう。それとデータ収集のために戦闘力を計測させてもらう。ただ、儂等だけスカウターがあるのは不公平じゃから、そちらにも渡しておこう」
気の大きさは感知できているが、戦闘ではなく研究には感覚的な大小ではなく数字で表さなければならない。それに、ベジータ王達は気の感知が出来んはずだからな。
ゲロにせっかくの提案を蹴られた儂は、とりあえず引き下がる事にした。あのままごねても、仕方がない。
現世にいるギネとその息子やターレスと言う子供も、儂よりもゲロの方に従っているようだ。ゲロが作った人工サイヤ人(サン)は言うまでもない。
現世にいられるのが今日一日と言う短い時間で、しかも手足となって動く部下もいないのでは、出来る事は限られる。この儂、ベジータ王だったとしてもだ。
下手に機嫌を損ねて、奴が供え物を供えなくなったら大問題だ。それなら譲歩したように見せた方がマシだろう。
それに、将来的にはフリーザを打倒しようとしているという情報を得た。これは儂の地獄における権勢を維持するのに使える。
残念ながら、儂は閻魔大王に対して行った反乱に一度失敗している。そのため、部下のサイヤ人の間に儂を侮る者が出るようになり、統率が緩んだ。
王である儂の方が部下よりも圧倒的に強いのは今も変わらんが、生きていた頃のように恐怖政治を敷く事は不可能だった。閻魔大王が絶対的な力を持つ地獄で、反乱の敗者である儂が何を言っても説得力がないからだ。……それに、やり過ぎて閻魔大王が呼んだ援軍がまた来たら、儂は再び無様に負ける事になる。そうなれば、今度こそ部下共は儂を見限るだろう。
そのため、恐怖政治以外の方法で部下の忠誠心を得る方法として儂が考えだしたのが、儂に逆らったパンブーキン達から食料を奪い、部下の前で食って一部を下げ渡してやる事だ。地獄で同じ亡者から奪える財産はそれぐらいだからな。
そうして部下の忠誠心を維持していると、儂を含めた全てのサイヤ人の元に供え物が送られてくるようになった。一人一人の量は少ないが、今の儂等は死人だ。食事は嗜好品でしかないから少なくても構いはしない。
生き残った息子のベジータが、墓に供えているとも考え難い。幼い時に辺境の惑星に飛ばしたターブルは、儂達が死んだことにもまだ気が付いていないだろう。
なら、この供え物は誰が送ってきているのか?
その疑問は一日だけ現世に行けるという話に割り込み、訪れた地球で氷解した。ただ、この情報を部下共にそのまま話すつもりはない。
部下共には、ゲロと言う男が我々サイヤ人の再興に力を貸している事、供え物が届くようになったのもその男によるものである事、そしてそれはこのベジータ王の意向によるものだと告げるつもりだ。
嘘は言っていない。儂はゲロに「供え物は欠かすなよ」と要求し、奴は要求を飲んだのだからな。
さらに、「我が息子ベジータが他の生き残りとゲロを率いてフリーザを打倒し、宇宙最強は戦闘民族サイヤ人であると明らかにし、栄光を手にするだろう」と言えば完璧だ。
この儂の地獄における権勢は絶対のものとなる。後は、あの化け物……閻魔大王が呼んだ援軍と衝突しないよう立ち回ればいい。
問題は本当にフリーザを打倒できるかだが……我が息子ベジータの素質は絶対。奴なら必ず超サイヤ人になり、フリーザを倒せるはずだ。
さて、儂の目的はもう済んだが、態々早く地獄に戻ることはない。報酬の食事を楽しむためにも、試合とやらには出てやろう。もっとも、儂に出番が回ってきたとしても食前の軽い運動にもならんだろうが。
「お、トーマ、8800だってさ。バーダックとほとんど並んだじゃないか」
「最後に計測したバーダックの戦闘力と、だな。あいつの事だから、今頃はドドリアやザーボンを超えているかもしれないぜ」
「セリパも4400か! トテッポは8000、それで俺は?」
「7000」
「こいつは凄ぇ、下手なエリートより戦闘力が高くなったぜ!」
生前からバーダック共々使える連中だったが、今は下級戦士とは思えない高い戦闘力を持っている。こいつらだけでも地球人達に勝つことは容易だ。それに加えて……。
「おい、儂の戦闘力を測れ」
「へいへい、分かりましたよ。1万6千か、チッ、腐っても王は王か」
そして儂は1万6千。生前は1万2千だったが、反乱に失敗した時に半殺しの目に遭い、それから回復する事で戦闘力が伸びたのだ。
「ふっ、天才科学者と名乗ったのは伊達ではないという事だな」
儂が生きていた頃のスカウターなら、計測しきる前に爆発していた数字だ。その地球製のスカウターで、前座の試合をしていた地球人や、カカロットとターレスを計測したが、たいした数字ではなかった。
地球人達が戦闘力を上下させる事ができる事も、見て分かっている。瞬間的に戦闘力を上げる事が出来るようだが、それでも倍程度。前座で戦っていた中では、あの亀仙人や鶴仙人と言う爺や桃白白という男以外はその倍程度に高めた戦闘力でも、強化サイバイマン(原作でナッパが出したサイバイマン)で充分相手できる数字だ。
サイヤ人の生き残りであるターレスとカカロットに関しては情けないと思うが、しょせんは偶然生き残っただけの下級戦士。しかも、片方は飛ばし子にされたような奴だ。あまり多くを期待するべきではないだろう。
しかし、それでもサイヤ人だ。ターレスの方はこのまま育てば、それなりの戦士にはなるだろう。カカロットも何度か半殺しと治療を繰り返せば、使い物にはなるはずだ。あのバーダックの次男なのだからな。ベジータに付いているらしい長男程には強くならないだろうが。
それはともかく……肝心の俺達の対戦相手の戦闘力は、ゲロが1700、ヨン・ゴーというナメック星人が3000、サンという女が4000、ギネが5000、そしてツムーリと言うナメック星人が5300だ。
「ギネが5000っ!? ギネが、あたしより戦闘力が高いなんて……あの爺さん、ギネにどんな改造したのさ?」
「信じらんねぇ。死ぬ前のトーマと同じかよ」
「騒ぐな。地球人は戦闘能力を上下させることが出来る種族のようだ。戦闘が始まったら、今の数値の倍の数値を出すはずだ。地球人と一緒にいるナメック星人と、ゲロに改造されたギネも同様だろう。油断して、儂の出番を早めるなよ」
前座の試合をあまり見ていなかったらしい連中は「戦闘力を上下!?」と驚いていた。忠告してやらなければ危ないところだったな。
だが、地球人やナメック星人の戦闘力が倍ほど増えたとしても、この戦闘民族サイヤ人の王である儂の敵ではない。
「とはいえ、地球人もなかなかだ。辺境の未開の惑星、とはもう言えんな」
この惑星を、飛ばし子を送る星の候補にしたのは間違いだったと認めざるをえない。儂が直接そう指示した訳ではないが……。
並の惑星で、種族トップクラスの戦士の戦闘力が1000。それを基準に考えれば、地球の戦力はかなりのものだ。我がサイヤ人の戦闘員でも、満月のタイミングを計って侵略しなくては……いや、ブルーツ波遮断目薬なんてものを発明していた以上、大猿化は通じないか。
大猿化したサイヤ人に目薬を差すのは無理だろうが、霧状にして広範囲に噴霧すれば儂のように大猿化して理性を保てる王族ならともかく、下級戦士共は構わず暴れて霧が目に入り、大猿化が解けてしまうだろう。
「このスカウターといい、死人を生き返す技術といい……辺境の惑星とは思えんな」
そして、前座の試合が終わりいよいよ儂達の試合が始まった。
試合形式は五対五の勝ち抜き戦。意図的に殺すような攻撃は不可、四方のシールドに体が触れるか戦闘不能になると負け。サイヤ人にとってはまどろっこしいルールだったが、まあいいだろう。
「露払いに励めよ」
儂達は戦闘力が低い順に、セリパ、パンブーキン、トテッポ、トーマ、そして儂の順だ。
向こうも、戦闘力の低い方からゲロ、ヨン・ゴー、サン、ギネ、ツムーリとなっている。
「へいへい」
生前なら家臣が「無礼な!」と怒鳴っていそうな態度で、セリパが舞台に上がる。
「本当に、本気でいいんだね、爺さん?」
「うむ、頼む。ああ、あとできればこの勝ち抜き戦が終わったら、今度はチーム戦方式の試合を申し込みたいのじゃが」
「あんた、本当は地球人に変装したサイヤ人じゃないだろうね? ここまで戦いたがる科学者なんて聞いたことがないよ」
セリパがそう呆れ顔で言った後、試合が始まった。今のセリパの戦闘力は4400。ゲロの戦闘力が倍になっても千の差がある。さらに、セリパは女でもバーダックチームの一員で戦闘経験は豊かだ。侵略した星は数えきれない。
多少は苦戦するかもしれないが、油断しなければセリパが勝つだろう。そう思っていたが……なんとゲロの戦闘力が約三倍の5000に跳ね上がった。
「なんだと!?」
思わず声が出るほど驚いたが、儂以上に驚いたはずのセリパはそれで動きが鈍くなることはなかった。ゲロと激しい拳と蹴りの応酬を繰り広げる。しかし、地力の差が出始めた。このままでは押し切られると思ったのか、セリパはゲロの攻撃を、防御を固めた腕で故意に受けとめ、その勢いを利用して距離を取る。
「エナジーバレット!」
そしてエネルギー弾を連続して放つが、ゲロはシールドを張ったそれぞれの腕でエネルギー弾を叩き落としながら間合いを詰めようとする。
「ハンティングアロー!」
そのゲロにセリパはより威力の高いエネルギー弾を放った。これで勝負が決まるか? と思ったが、ゲロは瞬間的にセリパの真横に移動した。儂の目にも映らぬ、驚くべきスピードだ。
「どどん波!」
「がっ! ま、まだだぁ!」
そしてセリパの脇腹にエネルギー波を放ったが、下級戦士と言えどサイヤ人らしくそれで倒れなかった。しかし、粘った甲斐の逆転は出来ず見苦しく舞台に転がった。
「さ、さっきのは……なんだい? あんな早く動けるなら、最初からやればいいじゃないか」
「君の真横に移動したのは、瞬間移動。いわゆるテレポートじゃよ」
「テレポートって……地球人ってのは、なんなんだ」
進んだ科学力に高い戦闘力を操作する能力に、超能力。地球人とは、恐るべき種族のようだ。その一端を引き出しただけでも、下級戦士の割にはよくやったと褒めてやるべきだろう。
「これじゃっ! こういう戦いを儂は見たかったのじゃ! アックマンや桃白白の試合も見応えがあったが、これは格別じゃわい!」
占い婆がやかましいが、この婆が満足するという事は報酬が保証され、あわよくば色を付けてくれる可能性もあるので悪い事ではない。
「ドクターは試合を続けるそうなので、セリパさんだけ治療します。リラックスしてください」
一方、セリパはナメック星人が妙な能力で治療していた。怪我人が出てもすぐ治療すると言っていたから、メディカルポッドでもあるのかと思っていたが、ここでも驚かされた。
「へっ、手加減しなくても死ななそうで安心したぜ! だが、俺達無敵のバーダックチームを舐めてかかると怪我するぜ!」
次の試合はパンブーキンだ。試合開始と同時に、猛烈な勢いでゲロにタックルを仕掛けた。
「マッシブカタパルト! 受けてみ……うおっ!?」
しかし、パンブーキンは間抜けにも残像に惑わされ、得意技らしいタックルを外してしまった。
「フォトンウェイブ!」
「ぐおおおっ!?」
逆に、後方に姿を現したゲロのエネルギー波を背中に受けてしまう。
「や、やりやがったな! ワイルドボンバー!」
だが、下級戦士でも歴戦のサイヤ人がこの程度で倒れるはずはない。爆炎から素早く飛び出たパンブーキンは、ゲロに大型のエネルギー弾を放つ。
遠距離戦は不利と見たゲロは、瞬間移動だろう、また儂の目にも見えない速さでパンブーキンの真横に移動して不意を撃とうとした。
「そう来ると思ったぜ!」
だが、パンブーキンはゲロが瞬間移動を使うのを読んでいた。ゲロの不意打ちを左手で叩き落とし、そのまま激しい肉弾戦で奴が瞬間移動する暇も与えず畳みかける。
「ぬぅ、プラズマバースト!」
たいしてゲロは体格が一回り巨大化したように見えるほど筋肉を膨張させ、パンブーキンとの肉弾戦に応じる。その動きはスカウターに表示されている奴の戦闘力以上に速かったが、体力を著しく消費する代償に身体能力を引き上げる技だったのだろう。次第に動きが鈍くなっていった。
「これで終わりだっ、爺さん!」
「ぐぼあ~っ!」
パンブーキンがゲロの猛攻を耐えて消耗を待ち、奴の腹に拳を叩きこんだ後、強烈な蹴りで場外へ叩きだした。
「会長さん、無茶しすぎだべ」
「い、いや。か、格上との戦いやダメージを受ける事にも今のうちに慣れておきたい」
「爺さん、そんなに強い奴に負けたいなら、あたし達とやり合うか、ナメック星に行けばすぐじゃないか」
「様々な戦い方をする戦士達との実戦経験は、貴重なのじゃよ。特定の相手とだけ戦うと、偏る」
「とりあえず治療するぞ、ゲロ」
ゲロがツムーリと言う方のナメック星人に治療されている間に、舞台にヨン・ゴーが上がる。
「あなたも続けるのですか? だいぶ消耗されているように見えますが」
「消耗? 何言ってやがる、やっと体が温まってきたところだぜ!」
そう強がりを言うパンブーキンだが、試合が始まると戦闘力を3000から1万に跳ね上げたヨン・ゴー相手に多少粘った程度で負けてしまった。
「これで奴らの戦闘力は全員三倍になると分かったな。普段は戦闘力を抑えて体力を温存し、戦闘時に全力を発揮するという事か。
この分じゃ、儂に出番が回ってくるのは避けられんな」
そう儂が言っている間に、トテッポとヨン・ゴーの試合が始まった。
「アングリーキャノン!」
「くっ! ドクターの言う通り、これは貴重な経験だ」
戦闘力では上でパンブーキン相手に消耗した訳でもないヨン・ゴーだったが、トテッポ相手に苦戦していた。
戦闘経験が浅いようには見えないが、動きが上品すぎる。おそらく、奴本人も奴のトレーニング相手も殺し合いの経験が無いのだろう。
やはり、純粋な戦闘民族サイヤ人がナメック星人に劣っている訳ではないようだ。
そしてトテッポとの試合には勝ったが、ヨン・ゴーの消耗は大きかったようで試合は棄権した。
「ようやく出番だべ!」
「どうせあんたも試合が始まったら、戦闘力が上がるんだろ? ……思いっきり楽しませてもらうぜ!」
トーマの予想通り、サンと言うサイヤ人の血を後天的に混ぜられた人造人間とやらの戦闘力は1万2千に跳ね上がった。
さすがは我がサイヤ人の細胞を移植しただけはある。尻尾が無いのが残念だが。
この強さの地球人を量産できるなら、宇宙の覇権をフリーザから奪う事も容易いだろうに……。
そう儂が残念に思っている間に、試合は進む。トーマはサンの動きがまだまだ荒い事を見抜き、隙を狙って上手く立ち回った。何度も有効打を与えていたはずだが、サンは凄まじいタフネスでトーマの攻撃に耐えきった。
「フレイムバレット!」
「かめはめ波!」
最後はエネルギー波の打ち合いに押し負け、トーマが吹き飛ばされて敗退した。
「フンッ、倒せたのは二人だけか。露払いも満足に出来んとは……だが、生前の儂と同じ戦闘力の相手に善戦した事は誉めてやろう」
「けっ、別にテメェのためにやったんじゃねぇよ! いててっ!」
近くに飛んで来たトーマを掴み上げ、ナメック星人の方に放り投げる。そして、奴に代わって舞台に上がった。
「貴様らに見せてやろう。サイヤ人の王ベジータ三世の力をな!」
・バーダックチーム
惑星ミートでドドリアにやられて地獄に落ちた後、ベジータ王が閻魔大王に対して反乱を起こした際大王側で戦い、一度全員死にかけた。そして、供え物争奪戦でベジータ王やその取り巻き相手に戦いを繰り広げていたため、生前よりパワーアップしている。
以下の数字は、生前→今話の試合前の数値とします。
セリパ:2500→4400
パンブーキン:4000→7000
トテッポ:4500→8000
トーマ:5000→8800
また、ベジータ王が起こした反乱では大王側で戦ったため、地獄の鬼達からはそれなりに好意的に扱われている。
・ベジータ王
劇場版『ブロリー』でベジータ三世である事が明らかになった。そのため、ベジータ(息子)と分けるため、彼の事はベジータ王、もしくはベジータ三世とこの作品では呼称します。
また、一人称はゲームで「儂」となっていたので、「儂」にしました。
地獄に堕ちた直後に閻魔大王に対してサイヤ人を率いて反乱を起こすも、何れかの界王が送った救援によってあっさりと倒されてしまい、以後は閻魔大王に対しては大人しい。
ビルスが評していた通りのセコさを発揮して、パンブーキン達から供え物の強奪を働いていたが、ゲロが慰霊碑を建立して彼を含めたサイヤ人全体に供え物を供え出してからは、その必要もなくなったため止めている。
なお、彼が思っているよりも息子のベジータに対する影響力はずっと小さい。原因は親子のコミュニケーション不足によるものであると考えられる。
『ドラゴンボール超』で、ベジータの口から親であるベジータ王からも戦闘の師事を受けたことは無かったとい事が明かされている。
そんな事だから、幼い頃にはビルスに足蹴にされているのを見た時は「パパを苛めるな!」と助けようとするぐらい慕われていたのに、何年か後に惑星ベジータごと死亡した際には悲しむそぶりもなく「王になり損ねた」と言うだけになるのだと思う。
なお、彼が知っているフリーザは第一形態(戦闘力53万)のみとします。
ベジータ王:1万2千→1万6千
・地球側チームの戦闘力
ゲロ:4000→5200 前回の天下一武道会から地道に修行した結果。日常モードでは約三割の1700
4号:8000→1万 ゲロと同じく地道に修行し、サンとギネのスパークリング相手も務めた結果、1万に到達。日常モードでは3000。
サン:7000→1万2千 ナメック星で潜在能力覚醒を受け、修行に打ち込んだ結果、生前のベジータ王と並ぶ。
ギネ:5000→1万5千 潜在能力は未覚醒だが、人造人間6号として改造された体を鍛えた結果、バーダックや生前のベジータ王を超えるまでに至った。
ツムーリ:1万5千→1万6千 戦士タイプにならず治癒能力を維持したまま、ゆっくり力を伸ばしている。
・サイヤ人が死の淵から生還した際に上がる戦闘力の数値
原作でベジータは1万8千から2万4千に上昇したが、普通のサイヤ人の上昇幅はもっと少ないと思われる。
一度生還するだけで数千も戦闘力が上がるなら、戦闘力が低い下級戦士を瀕死の重傷にした後メディカルポッドに放り込むという作業を一度すれば、全員ナッパ以上の戦士になる。それをサイヤ人がしない理由がないと思われるため。……実行すると、少なくない数のサイヤ人が瀕死の重傷にする過程でやりすぎて死にそうだが、気にしないだろうし。
また、何度も死にかけて戦闘力をあげてきたはずのバーダックの戦闘力が、10000程度である事からも、一度の瀕死パワーアップで数千も戦闘力は上がらないと考えられる。
個人ごとの才能や素質や潜在能力にもよると思われるが、瀕死になる前の戦闘力の約三分の一から四分の一ぐらいの数値が増えるのではないか、と作者は推測しています。
例をあげると、ベジータが死の淵から生還した場合は、戦闘力が1万8千の戦闘力の三分の一である6千上がって2万4千になったが、ラディッツの場合は同じように生還しても1500の三分の一の500以下しか上がらず、高くでも2000にしかならない。
以上のようにこの作品では考えています。
・惑星ベジータが健在だった頃の地球の評価
この作品ではゲロやブリーフが早い段階で宇宙へ行っており、さらにゲロと4号(覆面)、桃白白が天下一武道会に出場して気功波を撃ったり空を飛んだりしているが、サイヤ人達の地球に対する評価は原作と同じ「文明が劣り、強い奴のいない星」でした。
ゲロ達は宇宙に行ったが、それで他の宇宙人と交流を始めた様子は公には見られず、宇宙人の存在にも言及していない。また、天下一武道会をサイヤ人の調査部署が調べていたとしても、戦闘力百数十程度がトップレベルの惑星としか考えなかったため。(平均的な星で最も強い戦士の戦闘力は1000)
そのため、飛ばし子を送る候補の惑星の一つとされた。
・強化サイバイマン
惑星ベジータが健在の頃、子供だったベジータ王子がトレーニング相手として使い、複数匹を瞬く間に倒してしまった。
ベジータ王が生きていた頃には、「強化サイバイマン」と呼ばれていたが、原作のサイヤ人襲来編の頃には技術の進歩などによって頭の「強化」の文字が取れ、ただの「サイバイマン」と呼ばれるようになったとこの作品では考えます。
錆鑢 七実様、Ademun様、五郎八様、梛沙紀廃棄様、べるさん様、16色のレイン・コーラス様、ノーデンス様、kimesawa様、ほす様、路徳様、ひさなぽぴー様、サトウカエデ様、ウルト兎様、変わり者様、カド=フックベルグ様、あんころ(餅)様、so-tak様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。