ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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28話 激闘バーダックチーム+α

「本当に半殺しにされたのは久しぶりだが、治癒された後の清々しさは格別だな」

 折れた手足の骨や肋骨が元通りになり、消耗していた体力が短期間で回復する体験は素晴らしい。

「ですが、サイヤ人ではないので復活しても私と同じように戦闘力は上がっていません。気を付けてください」

「うむ、分かっておる。……次のチーム戦では儂『一人』ではセリパにも勝てなくなる事だしな」

 

 敗退して治療を受けた儂等がギネやツムーリと共に視線を向ける先では、サンとベジータ王の試合が始まっていた。

「くっ、紛い物が生前の儂と互角とは生意気だと言うべきか、次代のサイヤ人として頼もしいと喜ぶべきか!」

「オラはサイヤ人じゃねぇ! 地球人だ!」

 

 激しく争いながら、サンが原作悟空と同じセリフを言っている。どうやらベジータ王は、サンを人造人間ではなく人工サイヤ人としか見ていないようだ。……彼女には他の宇宙人の細胞も入っているのだが、説明し忘れただろうか?

 

「ふんっ! その地球も我が息子、ベジータ四世がいずれ新惑星ベジータと名を改める! その暁には遠慮せずサイヤ人を名乗るがいい!」

「あんた、それ本気で言ってたんだか!? そんな事させるもんか! 地球は地球だ!」

「なんだと!? 我はサイヤ人の王、ベジータ王なるぞ!」

 

 激しくぶつかり合う二人だが、サンが必死な様子なのに対してベジータ王には余裕が……いや、だんだんなくなってきたな。

「チィ! スタミナは侮れんな!」

 どうやら、サンの動きに疲れが見られない事に焦りを覚えているようだ。

 

 サブシステムとして搭載されている永久エネルギー炉によって、サンは激しい戦闘中でも常に体力が回復し続ける。ベジータ王の今の気分は、原作でベジータが18号と戦った時と近いのかもしれない。

 

「遊びの時間は終わりだ! 一気に片を付けてやる!」

 だが、どうやら残りの試合のために体力を温存するのを止めて勝負に出たようだ。

「っ! あぐ!?」

 ジャブで顔面を狙われたサンが、反射的に両腕で防御を固めようとして視界が狭まった瞬間、ベジータ王は高速で彼女の後ろに回り込むと、両手を組んでハンマーのようにして彼女を叩き飛ばした。

 

「まだまだ行くぞ!」

 そして、飛ばされた先で舞空術を使い体勢を立て直そうとするサンの背後に再び高速で移動したベジータ王が現れ、強烈な蹴りを放って彼女を弾き飛ばす。そして、弾き飛ばされた先にもベジータ王が現れ、三度攻撃を行う。

 ドラゴンボールのゲームでよくある、敵で行う一人キャッチボールのような光景だ。

 

 そして最後はシールドの壁に叩きつけられそうになり、その寸前に踏みとどまったサンに気弾を放って押し出し、ベジータ王の勝利となった。

「おっ母~っ!」

「大丈夫だっ! ヨンやツムーリが治してくれる!」

 サンの手酷い敗北にチチが涙目になるが、悟空の言う通りヨンの治療によってサンはすぐに立ち上がった。

 

「く~っ! 悔しいだっ、次のチーム戦では目にもの見せてやるべ! チチ、おっ母は大丈夫だぞ~っ!」

 その元気な様子と比べると、舞台上で息を整えているベジータ王の方が負けたように見えてしまう。

 

「随分苦戦したじゃねえか、ベジータ王!」

「ギネー! こいつが疲れている内にやっちまいな!」

 しかもチームメイトからヤジを飛ばされていて、若干可哀そうに見えてきた。……まあ、元々の人間関係を考えればこれで妥当なのだろうが。

 

 次のギネとベジータ王の試合では、最初からベジータ王がギネに対して猛攻を仕掛けた。

「貴様も人造人間になったのなら、あの異様なスタミナの持ち主なのだろう?」

「試してみればいいじゃないか!」

「ふっ、感謝するがいい! 貴様のような下級戦士が、サイヤ人の王である儂の本気を体で味わう事が出来るのだからな!」

 

 しかし、言葉ほどにはベジータ王の優勢にはならない。二人の戦闘力は千しか差がなく、ベジータ王は前の試合で若干体力を失っている。さらに言えば、ベジータ王自身の戦闘技術はバーダックチームの面々と比べるとそう高くない。

 

 もちろんバーダックチームの面々の動きも粗削りだが、ベジータ王の戦い方はそれ以上に力任せな喧嘩殺法に見える。バーダックチームにあるような、戦闘を繰り返すうちに磨かれたテクニックが彼にはないのだ。

 ギネ相手に優位に戦えているのは、ベジータの父親らしく戦闘センスが高いからだ。……いくらサイヤ人とはいえ、王が最前線で頻繁に戦闘を経験するのは無理だろうから、仕方ないだろうが。

 

「踏ん反り返っている間に、勘と体が鈍ったんじゃない!?」

「言わせておけば!」

 ギネに図星を突かれたベジータ王は彼女が放った蹴りを掻い潜り、なんと彼女の尻尾を掴んだ!

 

「うっ、こいつっ、放せ!」

「ほう、元非戦闘員のクセに尻尾を克服していたか。だがっ!」

 ベジータ王はギネの尻尾を掴んだまま、彼女を振り回すと繰り返し舞台に叩きつけ始めた。

 

「あがっ! こ、このっ!」

 ギネは繰り返し叩きつけられながらも、体を捻って自ら尻尾を切断し脱出する。

「フッ、その思い切りの良さだけは誉めてやろう! キングズブレイザー!」

 しかしベジータ王はそれを読んでいたようで、ギネを振り回している間に溜めていたらしい気で、必殺技を放った。

 

「ライオットジャベリン!」

 だが、ギネはベジータ王のキングズブレイザーにライオットジャベリンをぶつけた。

「あれは、バーダックの!」

「ギネの奴、いつの間に使えるようになったんだ!?」

 

 そう、ギネはナメック星の修行で尻尾を克服しただけではなく、記憶の中にある夫の技、ライオットジャベリンを習得していたのだ。まあ、形になったのはごく最近の事だが。

「ぬおおおおっ! この儂が、エネルギー波で押し負けるなど!」

「はああああっ! うわぁっ!?」

 永久エネルギー炉を搭載したギネだったが、プライドにかけて全力を注ぎこんだベジータ王には敵わなかった。押し負け、爆発の中に飲み込まれる。

 

「か、母ちゃん!」

 ベジータ王が勝利の笑みを浮かべ、悟空が思わず身を乗り出してギネを呼ぶ。

 

「まだだよ!」

 その悟空の声に応えるように、ギネは爆炎の中から飛び出すとベジータ王に肉弾戦を仕掛ける。

「チィ! 夫に似てタフな女だ!」

 キングズブレイザーに全力を注ぎこんでいたベジータ王は、それでもギネを迎え撃とうとするが……。

 

「ぶっ!? 馬鹿な!? 貴様の尻尾はさっき――」

 蹴りをフェイントに放った尻尾の一撃を顔に受け、思わず仰け反ってしまう。

「ついさっき生やしたのさ! おりゃーっ!」

 ナメック星人の再生力を持つギネは、四肢同様尻尾も瞬間的に再生する事が出来るのだ。それを知らなかったベジータ王は体のバランスを崩したまま彼女に天高く蹴り上げられ、さらに気弾の連射を受けて爆炎の中に姿を消し……数瞬遅れてから地面に落下した。白目を剥いて、完全に意識を失っている。

 

「母ちゃんが勝った!」

「凄いっ、本当にベジータ王に勝っちまった! 本当にすごいよ、ギネ!」

「こいつはバーダックもびっくりだな!」

 ギネの勝利に沸き立つ悟空とバーダックチームの面々。ギネは息子と仲間達に向かって笑顔を向けて胸を張った。

 

「へへ、母ちゃんは凄いだろ、カカロッ……ト」

 そして、力尽きて倒れた。ダメージが蓄積している状態で、尻尾を再生させそれなりの体力を一度に消耗したので、限界に達したのだろう。

 

「母ちゃん!? 大丈夫か!?」

「ギネ! せっかく生き返ったんだから死ぬんじゃねえぞ!」

「縁起でもない事を言うんじゃないよ、この馬鹿! ナメック星人! こいつは後でいいから、さっさと治しな!」

 

「これは、ドローじゃな」

「しかし、ゲロチームにはまだ大将のツムーリが残っておる。よって、ゲロチームの勝利じゃ!」

 こうして、勝ち抜き戦は儂等の勝利となった。そして、二人がヨンとツムーリの治療を受けて治ったところで、チーム戦である。

 

「行くぞ、下級戦士共! 負けたままでは、戦闘民族サイヤ人の王としてのプライドが許さん!」

「ベジータ王のプライドはどうでもいいが、やらない手はないよな」

「すぐに傷を治して体力も回復してくれるんだ。楽しまなきゃ損だぜ」

 っと、向こうの戦意も申し分ない。

 

「では、作戦会議といこう。時間は、チャオズ対ドラキュラマン、悟空、チチ、ブルマの三人対透明人間のスケさんの試合が終わるまでだ」

 

 ただ見学するだけでは暇だろうと、今回は子供達にも試合を用意している。

 そしてその試合では、チャオズがドラキュラマンに順当に勝利した。身体能力だけではドラキュラマンが上だが、チャオズは超能力で彼を腹痛にして動きを止め、怒涛のラッシュを決めて勝利をもぎ取った。

 

「僕、勝ったよ、天さん! 鶴仙人様!」

「凄い、凄いぞ、チャオズ!」

「うむ、よくやったぞ、チャオズ! しかし、この勝利に驕ることなく修行を積むのだぞ」

「はい!」

 ふと気が付いたが、これで原作ではなかったチャオズの初勝利になったようだ。

 

 次に、悟空、チチ、ブルマの三人対透明人間のスケさんの試合。さっそく悟空とチチがピンチに陥った。

「ど、どこだ!? 全く見えねぇ! イテ!?」

「ここだかっ!? 痛っ! こっちだか!? さてはそっちだべ!」

 案の定、見えない相手に悟空とチチが狼狽えている。

 

「二人とも落ち着きなさい! あたしと背中を合わせて円陣を組んで、気を読むの!」

 だが、二人よりも幼い頃から気の感知力を磨き続けたブルマには、スケさんの位置は丸分かりだった。そして彼女の指示でスケさんを撃退して勝利したのだった。

 

 その間に儂等とバーダックチーム+αはそれぞれ作戦会議を行った。とはいえ、バーダックチームは会議らしい会議を全くせず、すぐに年少組の試合で声援やヤジを送って見物していたが。

「地球人ってのは妙な力を使う奴が多いんだな。そう言えば、三つ目族って昔に滅びたんじゃなかったか?」

「生き残りが地球に移住したんだろ。俺はカカロットの方が気になるぜ。あの分じゃ、将来尻に敷かれるぞ」

「……どっちのだ?」

「まだ七つのガキだよ、バカバカしい。それより、そろそろ二戦目が始まるよ!」

 

 そして、五対五のチーム戦が始まった。ルールは、全員が場外負け又は戦闘不能になった方が負け。ただし、試合中にツムーリとヨンの治療は、対象選手が致命傷を受けている場合以外は不可、というものだ。

 

「フンッ、せいぜい露払いに励むがいい!」

「ケッ、こっちに流れ弾を飛ばしたら承知しやしねぇぞ!」

「ギネ! 今度も叩きのめしてやりな!」

 

 バーダックチーム+αの作戦は、シンプルだ。+αのベジータ王が単独でギネを狙い、バーダックチームが連携してギネ以外の相手をする。

 同じチームを組んで戦っていたバーダックチームに、不在のバーダックの代わりにベジータ王が人数合わせで参加しているだけ。しかも、双方に仲間意識はほぼ皆無。そのため、この方がお互いにやりやすいのだろう。

 

「ベジータ王の相手はあたしが!」

「任せただぞ!」

 対して、ベジータ王が単独で動く事になるだろうと読んでいた儂等は、ギネがベジータ王と一騎打ちを行い、残りの四人でバーダックチームを迎え撃つ形になる。

 

「先ほどはやられたが、今度はそうはいかんぞ!」

 瀕死から復活した事で、ベジータ王の戦闘力は2万1千にまで上がっている。

「何度でも負かしてやる!」

 だが、ギネの戦闘力も2万にまで上昇した。数字の差は前と同じ千だが、ほぼ互角と言っていいだろう。

 

 ただ、戦闘力が上がったのは二人だけではない。

「マッシブカタパルトォ!」

 まず飛び込んで来たパンブーキン。7000から8800に上昇。

「させねぇだ!」

 それを真っ向から受け止めるサン。1万2千から1万5千に上昇。

 

「はっ!」

 そしてサンに受け止められ動きが止まったパンブーキンの後頭部を、瞬間移動で彼の背後に移動した4号が攻撃して意識を奪おうとする。

 

「やらせるかよっ!」

「うおお!」

 だが、トーマとトテッポが駆けつけてパンブーキンの背後を守る。トーマが8800から1万1千、トテッポが8000から1万に上昇している。

 

「くっ!」

「下がれ、ヨン!」

 そこにツムーリが前に出てカバーに入る。

「さっきは暇だったろ! 治療してくれた礼に、全力で楽しませてやるぜ!」

「なるほど、お前達が戦闘民族と呼ばれる訳がよく分かった!」

 

 戦闘力1万の4号が、もうバーダックチームに対して一人では優位に立てない。これがサイヤ人の強さの一つだ。もしかしたら、サイヤ人が同族同士でも容赦なく殺し合うのは、止めを刺さないと倒した同族が確実に強くなってしまうからかもしれない。

 

 儂? 今の儂は双方のチームで最も戦闘力が低くなってしまった。

「今度は望み通り、負けさせてやるよ、爺さん!」

「負けたいとまで言った覚えはないぞ!」

 セリパが戦闘力4400から5500に上がったので、彼女と儂の数値は逆転してしまっている。なお、チーム戦での役割は攪乱と援護、つまりサポーターだ。どうやら、セリパも同じらしい。

 

 しかし、強さは戦闘力の数値だけでは測れん。まずは数の力だ。

 

「二身の拳!」

 まず、儂は二身の拳で二人に増える。本当はもう四身の拳もできるのだが、二分の一までが丁度いい。

「なっ!? 二人に増えた!?」

 儂の分身に驚くセリパ達だが、戦闘力(気)が半減している事に気が付けば獰猛に襲い掛かってくることだろう。だが、儂もただ質を落として数を増やしたわけではない。

 

「「プラズマブースト!」」

 儂は生体電気に変換した気で、身体能力と神経スピードを倍増させる。これで気功波を放たなければ、戦闘力5000の儂が二人になったのと同じじゃ。

 

「「行くぞ!」」

 それからの戦いは熾烈を極めた。儂が二人になって五対四になったが、バーダックチームの連携は巧みで戦闘力でトーマより五千高いツムーリでも攻めきれなかったのだ。

 

 彼等の強さは長年戦闘を繰り返し、何度も死線を超えてきた事で培われたチームワーク。そして集団で戦うと強さを発揮するというサイヤ人の特性が関係しているのだろう。

 まさに、戦闘力の数値では測れない強さだ。……原作では度々この特性を、特にベジータが無視するが。サイヤ人の王子としてそれでいいのだろうか?

 

 二人の儂はそれぞれ瞬間移動でスピードを補い、サイコキネシスでトーマやパンブーキンの動きを妨害した。さらに、瞬間移動と残像拳を組み合わせたフェイントが上手くいった。

「そこだ! き、消えた!?」

 瞬間移動でトーマやトテッポの視界の隅に移動し、残像拳で作った残像を残し、再び瞬間移動を使ってすぐに離れる。

 

 すると、トーマやトテッポの攻撃はその場に残った儂の残像に当たる事になり、逆に隙を作ってしまうのだ。

 これを残瞬拳と名付けよう。

 ……厳しい戦闘中に新しい技を編み出せるとは、やはり実戦経験は重要じゃ。適度な運動は脳を活性化させ、閃きをもたらしてくれる。

 

 そうした儂の活躍に、ツムーリとサンがバンブーキン達を抑えている間に4号も瞬間移動を多用するヒット&アウェイ戦法に切り替えた事で、なんとかバーダックチームを倒す事が出来た。

 そしてベジータ王相手にほぼ互角の勝負を続けていたギネにツムーリが合流して彼を倒し、儂等のチームが勝利した。

 

「も、もう一度だ! もう一度勝負しろ! まだ時間はあるはずだ! 勝ち逃げは許さんぞ!」

 だが、治療が終わったベジータ王がそう言いだした。

「それは構わんが……そろそろ昼飯にせんか?」

 午前中から戦っている儂等だが、もう正午はとっくに過ぎて昼下がりになりつつある。

 

「……いいだろう」

 そして、ダメージだけではなく体力も4号とツムーリの治療で回復しているが、腹は普通に減る。ベジータ王も食欲には勝てなかったようだ。

 

「おい、ゲロ。儂は一食分ぐらいしか用意しておらんぞ。夕飯はどうする?」

「では、今からデリバリーを頼むとしましょうか」

「じゃあ、わしがやっとくよ」

 昼は占い婆が報酬として用意していたご馳走を皆で食べ、夕食はブリーフが出前を頼むことにした。当然、飛行機をチャーターして、料理人と食材を運び、ここで料理してもらう金持ち御用達のデリバリーである。

 

 そして食事をとった訳だが……やはりサイヤ人の胃袋は違う。占い婆が雇っている料理人が慌てて追加の料理を用意して、それでやっと腹八分目だった。

「……次にサイヤ人の戦士を雇う時は、豚ではなく恐竜の丸焼きを人数分用意せなばならんな」

 占い婆は彼らの猛烈な食欲を目にして、そう呟いていた。

 

「死者を現世に連れて来られるのは、一日、それも一度だけだと思っていたのですが?」

 ふと気になったので、そう尋ねると占い婆は「そうじゃよ」と答えた。

「だから、別のサイヤ人の戦士を雇おうと思っての。むっ、さてはあの世の妻を現世に呼んでデートしようとか考えておるな!?」

 

「まあ、それも考えていない訳ではないですが……」

 しかし、アルマを現世に連れて来られるのは一度、最大二十四時間だけ。後に彼女の頭脳が事態の解決に必要不可欠な局面があるかもしれないと考えると、そうそう占い婆に頼めない。

 

「ですが、供え物があの世にも届くらしいと分かりましたので。しかし、食品以外も届くのか不確かなので、墓前に供えた科学雑誌や論文が妻に届いているか、確認してもらえますかな? 後、手紙も渡していただきたい」

「それぐらいなら良いじゃろ。お前達に任せた夕飯の用意だけでも、占い数回分の料金がかかっていそうじゃし」

 

「あと、バーダックというサイヤ人がどこにいるのかも占っていただきたい」

 バーダックに関して占ってもらうのは、念のためだ。遠い過去にタイムスリップしていたり、タイムパトローラーになっていたり、トワに洗脳され仮面のサイヤ人にされていた場合は、占い婆の占いでも分からないだろう。つまり、占いで分からなければそうなっている可能性が高いという事だ。

 

 そして、それらの場合は……ドラゴンボールでもどうにもならない可能性が高いな。タイムパトローラーの場合は、連絡ぐらいはつけられるかもしれんが。

 

「それは、サイヤ人達の報酬の一部として請け負っておるから構わん」

 試合の報酬について話が付いた頃に、ブリーフが手配してくれた料理人達が到着した。

 彼らは歴戦の戦士のような面構えで、さっそく調理を始めた。戦闘民族サイヤ人の胃袋に挑む彼らの戦いは、今まさに始まったのだ。

 

 その横で、舞台では天津飯とミイラ君が腕試しの組手をしていた。原作では亀仙人に「今までの悟空では勝てん」と言わしめ、ヤムチャを倒したミイラ君。彼は、アックマンの組手相手をしているらしい。

 そんな彼が前回の天下一武道会に出なかった理由は、全身に巻いている包帯が防具扱いされるのではないかと思ったからだそうだ。彼の包帯は鋼鉄より硬いらしいから、妥当な判断である。

 

「くっ、俺はまだまだと言う事か!」

 そして、天津飯はミイラ君に一本も取る事が出来なかったが、それでも確かな成長を感じさせてくれた。

 

 そして始まったチーム戦第二戦は予想通り……儂等が敗退した。

 バーダックチーム+αは全員一戦目で瀕死になってパワーアップしているのに対し、サンとギネは瀕死にまでは至らなかったのでパワーアップしていないからだ。

 

「ごはっ!?」

「へっ、もう惑わされねぇぜ!」

「ぐわあああぁぁぁ……」

 まず、儂の残瞬拳がパワーアップして戦闘力が上がったトーマに見破られた。そして分身がかき消され、残った本物の儂もセリパに捕捉されエナジーバレットの連射を受けて脱落。

 

 儂が抜けた穴を補うために、4号も二身の拳を使って分身を出した後、プラズマブーストで身体能力を倍増させて数を維持するが、バーダックチームは4号に捕まらないように動き回る。

 

「このままでは……ヨン、サン、排球波を使うぞ!」

 ツムーリが戦況を変えるために、ナメック星で天津飯が教えたバレーボールを参考に考案した連携技の使用を決断する。

 

「何をするつもりか知らねぇが、させるかよ!」

「いえ、させてもらいます! カァ!!」

 パンブーキンがそれを妨害するべく殴り掛かるが、そこに4号の分身が立ちはだかり、彼を巻き込んで自爆する。

 

 当然二身の拳で作った分身の方だが、まさか自爆するとは思っていなかったパンブーキンは爆発の衝撃をまともに受けて動きを止めてしまう。

 その間にツムーリが組んだ両手の上に気功弾を作り出す。

「ワン!」

 そして、それを真上に打ち上げると、ツムーリ本人は4号の消えた分身に代わってパンブーキン達を抑えにかかる。

 

「ツー!」

 そして打ち上げられた気功弾を、さらに4号が高く跳ね上げる。その際、気功弾に触れた瞬間同調させた気を込めて威力を増す。

 

「アターックだべ!!」

 そしてサンが、下方のバーダックチームに向かって気弾を叩き落す。同時に、4号がツムーリを連れて瞬間移動で退避。

 

「ウオオオオ!」

「チィ! トーマ、セリパ、後は任せるぜ!」

 しかし、三人の力を合わせた排球波にトテッポとパンブーキンが身を挺して突撃して相殺させた。直撃したら耐えられないだろうセリパと、最も強いトーマを残すためとはいえ思い切った事をする。

 

「似合わない事をするんじゃないよ!」

「やってくれたな、お返しはさせてもらうぜ!」

 仲間の献身に奮い立った二人を倒しきれないでいる間に、ギネを倒したベジータ王が二人に合流。分身を失って気を大きく落とした4号をセリパが倒し、残ったツムーリとサンは粘ったが最終的には敗れたのだった。

 

「はははっ! 勝ったっ! 勝ったぞ! やはりこのベジータ王こそが最強なのだ!」

「リーダー不在でも、一回くらいは勝たないとな!」

 そう勝ち誇るベジータ王と、なんとか格好がついたと笑うトーマ。

 

 儂等はいつの間にかナメック星人の龍族の治癒能力を習得していた地球の神様に治療してもらったが、さすがに四戦目をする気力はなかったため、時間的にも丁度良かったのでそのまま宴会となった。

 

「やはりこの星の食料は美味い! この星は我がサイヤ人に支配されるべきだ!」

「おい、ゲロさんよ! あのプラズマブーストって技を教えてくれよ! あれは絶対俺に合った技だ!」

「構わんが、時間がないのでテレパシーで感覚を直接伝えるぞ。そら」

「うおおおおおっ!? 頭に何かが流れ込んでくるぅぅぅうっ!?」

「あっはっはっは! パンブーキン、なんて顔をしてるんだい。あたしはそれより、あの排球波ってのに興味があるね。三人であの威力だったんだ、あたし達とバーダックでやったらどれだけの威力になるのか試してみたいよ」

 

「うおーい、セリパちゃんやい、儂と一緒に生ハムメロンでメロメロんに――」

「止めんか、亀! 死ぬぞ!?」

 

「あの、私の先祖の事を知っているのですか?」

「ん、ああ、三つ目族の事かい? かなり強くて、妙な技で何度も侵略に行った連中を返り討ちにしたけど、結局最後は皆殺しにされたって……言っておくけど、あたし達の仕業じゃないよ?」

「そうそう、三つ目族が滅亡したって話は、ベジータ王がコルド大王と組むずっと前の話だからな」

 

「いいか、ギネよ! バーダックが見事生還し、この新惑星ベジータに帰還した暁には、我が息子ベジータに仕える将軍の地位を与えると伝えるのだぞ!」

「えぇ……再会した途端そんな話したくないんだけど」

「だから地球は地球だって。あんたもしつけえだなぁ」

 

「そしてターレスとカカロットよ! お前達はラディッツと共にベジータの直属の家臣となるのだ! 喜ぶがいい! 本来なら下級戦士出身の貴様では就けない地位だ!」

「丁重にお断りする。付き合ってられねぇぜ」

「おっちゃん、カシンってなんだ?」

 

「悟空君、気にしなくていいわよ。ちょっと、あなた達の王様が変なこと言ってんだけど、どうにかしてくれない?」

「悪いな、地球人の嬢ちゃん。死んでも治らないから、俺達じゃどうしようもねえんだ」

 

「下級戦士は似た顔が多いとはいえ、見れば見るほどバーダックそっくりだな」

「おい、俺はターレスだ。バーダックの息子はこっちだぜ」

「そんなに似てるんか、オラと父ちゃん?」

「おう、そっくりだぜ。坊主より目つきが悪かったけどな」

 

「サイヤ人は冷酷で残忍な戦闘民族だと聞いていたが……今日でその印象が変わりそうだ」

「それは間違ってないぜ。ただ、冷酷で残忍なサイヤ人の中にも仲間意識を持っている連中がいるってだけさ」

「おう、治療してくれて助かった」

 

 ワイワイと、全体的には楽し気な宴会が行われた。

 ベジータ王も酒が入ったせいか、息子のベジータを頂点としたサイヤ人再興計画を語り始めて、ギネとサンに呆れられ、ターレスに相手にされず、タイツに苦情を入れられたトーマが代わりに謝っている。

 

 バーダックチームは悟空とターレスにバーダックの事を話していた。地球人組とは戦闘力の差が大きい事と、ベジータ王の言動が不穏過ぎるせいで距離があったが、酒に酔った亀仙人がセリパをナンパしようとして鶴仙人に止められたり、その隙を突いたという訳ではないだろうが天津飯が彼女に三つ目族の事を尋ねたりして、若干だが交流があった。

 

 なお、試合を見たカリン様は自身も修行をする事を決断し、逆に神様は神殿に来る者との組手等は主にポポに任せ、自分は指導監督に専念する事にしたそうだ。

「残念だが儂は歳だ。今から修行をし直しても、たいして強くはなれん。隠居する訳ではないが、組手などの指導は主にポポに任せる事にする」

 後継者がまだ決まっていないのに、激しい修行をして寿命を削る訳にはいかないので正しい判断だろう。

 

 そして宴もたけなわになった頃、ベジータ王はいつの間に書いたのか、儂に分厚い封筒に入った手紙を渡してきた。

「これを我が息子、ベジータに渡せ。貴様と協力してフリーザを倒し、地球を新たな母星とするよう書き記しておいた」

「……それだけにしてはかなり分厚いですな」

 

 まるで札束でも入っているかのような封筒の分厚さを指摘すると、ベジータ王はフッと笑った。

「なに、父親として息子に思いを伝える最後のチャンスだからな。つい冗長になってしまったのだ」

 封筒が分厚くなった理由は、中身の手紙に絶対地球を新惑星ベジータにとか、儂を利用して人工サイヤ人を増やすとか、そうした計画について書いたからだと思うが……。

 

「まあ、そう言う事にしておこう」

 野望を息子に託すのも親心だろう。託された息子が応えるかは別として。

 ベジータが手紙を読んだとしても、書かれた指示に従うとは考えにくいため手紙をそのまま預かる事にした。どの道、手紙を渡す前か後にベジータ達とは一度戦う事になるだろうし。

 

「俺達もバーダックに手紙でも残すか? トーマとセリパは生き返れるが、俺達は無理だそうだし」

「俺はもう、ギネに預けた」

「いつの間に!? おい、ちょっと待て、俺も書くからよ!」

 

 ベジータ王に触発されたのかトテッポとパンブーキンも手紙を残す事にしたらしい。

 なお、彼等にはまだドラゴンボールの事を伝えていない。サンや亀仙人はナメック星のドラゴンボールを使うところを見ているはずだが、まだ人を生き返したことは無いので「ドラゴンボールで生き返る方法がある」と気が付いていないようだ。

 

 儂としてはベジータ王を生き返すのはやはり危険だと思うので、このまま教えずにいる予定だ。トテッポとパンブーキンは……トーマとセリパを人造人間化する時期に、ナメック星のドラゴンボールで生き返すのもいいかもしれん。

 考えてみれば、ドラゴンボールで願いを叶えると邪気が溜まり、それが限界に達すると邪悪龍が現れるはずだが、その検証をしていなかった。

 

 ドラゴンボールに溜まる邪気を検出できるのか、検出できたとして願いの内容によって溜まる邪気の量は変わるのか、邪気を抽出する事は可能なのか、興味はある。幸い、邪気を浄化するのに必要な時間は、精神と時の部屋を利用すればいくらでも用意できる。

 そう儂が内心で考えている事は知らないまま、バーダックチームと誇り高きサイヤ人の王は夜遅くまで宴会を楽しみ、あの世に帰っていったのだった。

 

「あ、スカウターを返してもらうのを忘れた。……まあ、構わんか」

 




・戦闘力の変化

 勝ち抜き戦時→チーム戦時→チーム戦二戦目時の数値→地獄に帰る前

 セリパ:4400→5500→7000→8700
 パンブーキン:7000→8800→1万1千→1万4千
 トテッポ:8000→1万→1万2千5百→1万5千6百
 トーマ:8800→1万1千→1万3千5百→1万7千

 地獄に帰る前に、四人全員でかかればドドリアが相手でも十分に勝算がある強さに。原作のナメック星編で体が鈍った状態のドドリアなら、まず勝てる。

 ベジータ王:1万6千→2万1千→2万8千

 変身後のザーボンに迫る強さに。生前にこの強さにまで至っていれば、ベジータからの尊敬もある程度維持できていたかもしれない。



 勝ち抜き戦時→チーム戦一戦目&二戦目時→勝負終了後の数値

 サン:1万2千→1万6千→2万1千 サイヤ人襲来編時の原作ベジータやキュイを超え、ドドリアに迫る強さ。
 ギネ:1万5千→2万→2万6千 夫どころかドドリアやザーボン(変身前)を超える強さ。

 悟空(七歳):6→9 もう少しで原作開始時の強さに到達! 現時点で原作初登場時のヤムチャよりも強い。怪獣ギランと互角。かめはめ波も習得している。
 チチ(七歳):5→8 常人の女性武道家にはもう負けない。舞空術も習得。
 ブルマ(七歳):5→7 超能力が使える分総合的には悟空よりも強い。太陽拳も放てる。
 チャオズ(六歳):3→5 平均的な地球人並みの身体能力に、超能力も使えるので、実は悟空より強い。

 天津飯(十一歳):70→90 来年度には、俺もカリン塔へ上るんだ。と修行に励んでいる。



・残瞬拳

 瞬間移動→残像拳→瞬間移動のコンボ技。瞬間移動が使えないと習得不可能な技だが、効果は高いのではないかと考察する。

 故意に相手の視界の隅に現れる事で、相手は無視する事が難しく、「本物かもしれない」と相手が思う程、気を探ったりスカウターが反応するのを待つ間もなく反応してしまう。
 ただ、あまりに実力差がある場合や、瞬間移動する場所を完全に読まれていた場合は、残像拳を使う間もなく攻撃されてしまう。



・ミイラ君

 原作で、亀仙人に「今までの悟空では勝てん」と言われるほどの強者。まず常人では勝てない。……ターレスにはあっさり負けてしまったが。
 この作品ではターレスに敗れる前から、アックマンの組手相手をしており、その分やや強くなっている。

 ただ、身に纏っている、数千年の経年劣化にも耐える鋼鉄と同じ硬度を持つ包帯が防具と見なされる可能性が高いため、天下一武道会の出場は見送った。

 この作品での戦闘力は130。アックマンの修行をサポートしているため、原作より数段強い。



・三つ目族滅亡の経緯

 この作品独自の設定です。ただ、サイヤ人は関わっていなかったとは思います。
 サイヤ人が宇宙をまたにかけた地上げ業を始めたのは、ベジータ王がツフル星人にクーデターを起こした後のはずなので、昔に滅びた三つ目族にサイヤ人は関わっていないと思われるからです。



・ベジータ王

 原作よりもベジータの事を考えているのは、自分が死んだ事による影響で生き残った者について考えるようになったから。現世の天下は、死体が残っていないので人造人間として復活する事が出来ない自分ではなく、生き残った息子に託すしかないから、託そう、と考えているようだ。

 ドラゴンボールの存在を知ったら気が変わるかもしれませんが。



・排球波

 三位一体の連携技。お互いに気の性質を合わせられる者達しか使う事は出来ない。
 天津飯がナメック星人に伝えたバレーボールからヒントを得て、ナメック星人達が開発した技。これを見て、天津飯は一人でもできる排球拳を編み出す……のかもしれない。

 イメージしにくい場合は、ドラゴンボール超の力の大会でクリリンと18号が気功弾のキャッチボールをしながら威力を高めていった技を参考にしていただければ幸いです。


 N2様、酒井悠人様、雪凪ハーメルン様、nicom@n@様、ノーデンス様、変わり者様、くるま様、TOMOKOTA様、竜人機様、六四様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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