ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
テレビで中継されている式典で、王立国防軍とGCコーポレーションの警備部門、通称GCGとの協力関係を樹立する事を国王が発表すると、世界の様々な場所で歓声があがり、拍手が巻き起こった。
「これでもっと住みやすい世の中になるな!」
「桃白白様が街を守ってくれるって事でしょ? 素敵!」
「いや、桃白白が街を守ってくれているのは前からだろ」
人々の多くは国王の決断を支持しており、GCGが王立国防軍と協力する事を歓迎していた。歓迎していないのは主にギャングやチンピラ……。
「チッ、やりづらくなるな。しばらく都会とはおさらばするか」
そして金髪の美しい、しかし瞳に狂暴な輝きを宿した少女ぐらいだろう。
もしゲロの前世が生きていた『地球』なら一企業が力を持ちすぎる事を危険視する勢力が政府以外にも存在するはずだが、この地球にはそれがない。
何故なら、このドラゴンボールの地球は統一国家だからである。グルメス王国等、国としての名を残している自治区は存在するが、独立国ではない。
自治区は軍を持っているし、レッドリボン軍のような傭兵団も存在するが、王立防衛軍が最も規模が大きいためクーデターや独立戦争等は(今のところ)起きていない。しかも、この歴史では原作よりレッドリボン軍の軍事力が下がっている。
西の都等、都会では治安が悪いが、その治安もGCGの活躍で年々向上しつつある。……最近では支給されたボディアーマーのお陰もあって、平隊員でもマシンガンに撃たれたぐらいでは傷を負わない。課長クラスに至っては、銃弾を当たり前のように素手で掴み取って見せる。
つまりは、地球国の人々の大部分はある意味で呑気なのである。
ただ都会から離れた村では、人間の犯罪者と遭遇する確率は減るが、人間以外の脅威……いわゆるモンスターや魔族の脅威に晒される事になる。
「これで村の暮らしも良くなるといいんだがのう」
「GCGを雇うのに、国から補助金が出るようになると嬉しいんだがな」
そのため、この国王の発表は大歓迎だった。
何故なら、王立国防軍は都から遠く離れた村を守るために常駐してくれないし、万が一来てくれたとしても生半可な数ではモンスターや魔族に勝てない。しかし、GCGは既定の料金を払えば、モンスターや並みの魔族ぐらいなら楽々倒せる警備員が常駐してくれる。
必要な金額は高いが、そこはGCコーポレーションも考えており、低金利の分割払いや、農業支援などの経済援助と合わせて行う無理のない契約を心がけている。
そのため、田舎でもGCGとGCコーポレーションの評判は良かった。
「実は、パパは昔ゲロ会長の教え子だったんだぞ」
「ええ、本当!? じゃあ、パパも空を飛んだりビームを撃てたりするの!?」
「はっはっは、それは無理だ。ゲロ会長がゲロ先生だった頃、大学で講義を受けていただけだからな!」
そんなゲロが一般の人々にとってどんな人物として認識されているのかと言うと……副社長を雇って起業する前は殆どの人に知られていなかった。
彼は昔から天才だったが、その考え方から学会では異端とされ、しかしあまりに天才的である事から無視できず、学会から追放されなかった。そのため、自身の研究所を構えつつも大学で時折臨時講師として雇われ、科学雑誌の表紙を飾り論文が何度も掲載されても、教授にはなれなかった。
そのため、当時のゲロは科学者や科学に関心を持っている人々には知られていても、それ以外の多くの一般人の記憶には残っていないという程度の知名度だった。
それは、ゲロがゲロ・コーポレーションの社長になってからもあまり変わらなかった。都会でゲロと言う名前を知らない者はいなくなったが、顔まで知っている者はそう増えなかったからだ。
何故なら、起業したばかりのゲロはメディアにあまり露出しなかったからだ。それが変わったのは、ゲロが起業した数年後、彼とブリーフ博士夫妻が宇宙へ旅立った頃からだった。
メディアは二大企業の社長とその妻の三人が護衛のロボット(人造人間3号)を連れて宇宙へ旅立つと、連日報道した。
そして約三年後、ゲロ達の死亡説を報じる週刊誌が出始めた頃、無事帰還しナメックガエルなどの異星の生命体を持ち帰った。
これでゲロとブリーフ博士、パンチー夫人の知名度は急激に上昇した。当時は宇宙人との接触は伏せられたが、ナメックガエルだけでも、人々の宇宙に対するロマンを刺激するには十分すぎたのだ。
そして、その後の躍進……失った手足や指、目を取り戻すことができる再生医療、天下一武道会優勝、再びの宇宙への旅、GCGの創設、そしてカプセルコーポレーションとの合併、田舎への経済援助、ナメック星やヤードラット星等の異星との交流。
メディアの露出も(ドクターフラッペとして活動するためのアリバイ作りなどのために)大幅に増え、一年前には天下一武道会で準優勝に輝き、今年公開予定の『桃白白VS復活のピッコロ大魔王 地球大決戦!』にも出演している。
さらにはそのメディア業界にも進出している。もはや、GCコーポレーションと無関係な業界はないと言える。
人々にとって桃白白がヒーローなら、ゲロはヒーローを指揮する長官のような認識で、つまるところ彼もスーパースターの一人として認識されているのである。
なお、ゲロを忌避していた学会関係者は彼から復讐されるのではないかと恐れ戦いていたが……ゲロは彼らの存在を全く意識していなかった。
式典を終え、食事会を済ませた国王は帰りの飛行機で考えていた。これでよかったのかと。
「……いっそ、国王を交代するとか、ゲロを私の養子にして後継者に指名するとか、もっと踏み込むべきではなかっただろうか? 話してみたが、本人もなかなかの人格者のようだし」
「国王様っ! お気を確かに! 自棄にならないでください! それにゲロ会長はあなたより年上です!」
ゲロ本人も喜ばない国王の座を譲る発言に、宰相が大慌てで諫める。
しかし、国王の気は確かで、冷静さを失っている訳でも、自棄になっている気もなかった。
「私は自棄になどなっていない。確かに、私よりゲロ会長の方が民の人気はあるが、民とはそういうものだ。それに……当然だという思いもある」
国王は自身の政治的手腕に自信があった、よりよい統治を志してきた自負もあるし、経験も知識も実績も積んできた。自分にできる最善を尽くしているという自信はある。
しかし、最高の統治をしているかと問われれば首を横に振るしかない。
都ではマシンガンやバズーカ砲で武装した犯罪者が毎週のように現れ、地方では夜な夜な魔族が跳梁するのを止められない。そのための努力はしてきたつもりだが、成果が全く出ていない。
……ゲロがこの場にいれば、「いや、やらなければならない事が多岐にわたる政府ではどうしようもないだろう」と言って宥めただろうが。
実は、魔族と言っても人里離れた地に出没して村人を襲うような下位の魔族なら、王立国防軍の兵士でも十分対抗できる。下位の魔族の多くは平均的な人間よりやや強い(戦闘力6相当)くらいで、銃火器があれば勝つ事も不可能ではない。
しかし、一対一では敗れる事も多く、武器弾薬が切れれば戦えない。そのため、全ての村に軍を常駐させることは難しく、上位の魔族では戦車や戦闘機を出しても倒すのが難しいため地球から危険な魔族を一掃する事も不可能だ。
それに王立国防軍は、地球が統一国家となった事で弱体化の一途を辿っている。兵士一人一人の質はそれほど下がっていないが、年々下がる予算の影響で装備の質と量が悪化しているのだ。
そのため、各地に点在する村々全てを守るには人員と装備がとても足りないのだ。
そんな状況を改善したのが、GCGだ。彼らは軍を動かすよりも格安の経費で、絶大な治安維持力を発揮する。平の隊員一人いれば、一撃で熊でも恐竜でも殴り倒し、下位の魔族では束になってかかっても敵わない。
それどころか、今ではGCGがいると聞けば魔族達が尻尾を巻いて逃げ出すほどだ。
もちろん、それでも地球の辺境全てを魔族から守る事は出来ないが、料金以上の成果を出している。
「それに、王立国防軍の将軍はそんなことは無いと言っているが……GCG顧問の鶴仙人氏一人で、王立防衛軍を全滅させる事ができる。
軍事力が一企業の警備部門の足元にも及ばん軍に、民の血税を使う価値はあるのだろうか?」
実は、前回の天下一武道会に王立国防軍に所属するプロの軍人が何名か名前を偽って出場していた。目的はゲロ達の情報を収集するためだったのだが……全員が予選で敗退したため、ゲロ達の記憶に残る事もなく消えていった。
ランファンかギランと同じ予選ブロックに当たっていれば、本戦出場の可能性もあったが……彼らは運が悪かったようだ。
そんな彼らの意見を聞いて、国王は「分かり切っていたが、GCGの戦力の前には王立国防軍はあまりに弱すぎる」と考えていた。
「だからこそ、王立国防軍とGCGの協力体制を樹立したのではありませんか! これからは、我らが王立国防軍の兵士の中からも超人的な力を持つ者が次々に現れるはずです!」
「だとしてもだ、宇宙人はどうする? 宇宙人から見れば、もうゲロ会長が地球の代表ではないだろうか?」
戦力の差以上に国王を悩ませていたのが、宇宙人との関係だ。今はナメック星人とヤードラット星人と言う、善良な宇宙人達とGCコーポレーションが交流している状態だが、他に宇宙人がいないとは限らない。中には、国家として地球全体との交流を求める宇宙人や、地球へ移住する事を希望する宇宙人、そして侵略戦争を仕掛けようとしたり、資源を盗もうとする凶悪な宇宙人も存在するだろう。
そうした時、本来なら異星間外交を先頭に立ってするべき国が、未だに狼狽して外交責任者を誰にするかすらまだ決められないままだ。地球が統一国家に統治されるようになって、外交は形骸化して久しいとはいえ情けない。
王立防衛軍が侵略戦争から地球を守れるか否かは、考えるまでもない。平均的な敵性宇宙人を、天下一武道会に優勝したヨン・ゴー以下だと考えても、一方的に蹂躙される光景しか思い浮かばない。
そもそも外交を行おうにも異星人と会うための宇宙船を手に入れるには、GCコーポレーションから購入するしかない。
「そ、それは……ゲロ会長を特別宇宙外交大使に任命してはどうでしょうか!? そうすれば彼は政府の人間でもあるという大義名分が――」
「民間人にそんな重責を担わせて国王の椅子を守る事に、何の意味があるのだろうか?」
「国王様~っ!?」
悲鳴をあげる宰相。国王は日々の政務と、責任感から自分を責めてしまう事で積み重なる心労……彼は疲れていたのである。
もし国王がもっと狡く賢ければ、ゲロとGCコーポレーションに国防や治安、そして宇宙人との外交を様々な名目で外注し、上手く立ち回って国王の椅子を維持しようとしただろう。ゲロ自身は、国王の地位を必要としていないのだから。
そして、ゲロが個人の天才科学者や格闘家なら王位を譲るなんて最初から考えなかった。どんなに優れた人物でも個人ではやれる事に限界がある。政治の世界ではなおさらだ。
しかし、国王は責任感が強く、原作通り善良な人物。そしてゲロは世界的な超企業の会長で、軍を軽く上回る戦力を保有している。
「やはり、どう考えても……」
「国王陛下、もっと自信を持ってください!」
ゲロの知らないところで地球の未来を左右する戦い(議論)が繰り広げられていた。
……結果、なんとか宰相が勝利し、ゲロには宇宙外交の特別宇宙外交大使就任が打診される事になったのだった。
ちなみに、もっと早く動くべきだったという意見もあるだろうが……ゲロが宇宙人の存在を明らかにしたのは去年の天下一武道会が初めてだ。そして何より、この世界の地球は統一国家であるためある種の平和ボケ……つまり能天気になっていたのである。
式典のテレビ中継が終わった頃に、時間はしばし巻き戻る。
不機嫌である事を隠さずに、レッド総帥は唸りながらリモコンを操作してテレビを切った。
「ふんっ! 何が表彰だ! 協力体制の樹立だ! そんなにGCコーポレーションが好きなら、王位も譲ってしまえ!」
そう激高するが、ブラック補佐が咳払いをして視線で客人を指すと、今が会談中だった事を思い出した。
「……さて、これでお互いにやり難くなる事は確実だ。儂としては、此方も協力体制とやらを樹立するべきだと考えるが?」
「確かに、魅力的な提案だっぺ」
客人……ドクターフラッペはレッド総帥にそう答えつつもすぐに頷く様子はなかった。
「しかし、協力体制を組みたいのなら、取引の度に悪戯を仕掛けるのは考え物だっぺ」
「ふんっ、リッチストンや発信機の事か。それは貴様の正体が不明過ぎるからだ。取引相手の事を調べるのは当然だろう」
取引で代金に足が付きやすいリッチストンを混ぜたり、発信機を付けようとしたり、レッド総帥はこれまでドクターフラッペの正体やアジトの場所を探ろうとしてきた。
しかし、その事を指摘されても彼は悪びれた様子も見せない。
「だが、貴様の頭脳は儂も認めている。既に壊されてしまったが、貴様から購入した戦闘用ロボットの、そしてこの前買ったバトルジャケットの性能は確かだった。この際、多少怪しくても目を瞑るべきだと考えたが、貴様はどうだ?」
レッドリボン軍からすれば、フラッペの協力は喉から手が出るほど欲しいものだった。
レッドリボン軍には、レッド総帥がミスを犯した部下の粛清をしなかった(できなかった)ため、結果的に経験豊かな兵士が多く所属している。質では、平和ボケしている王立国防軍を上回っているという自負もある。
資金面も、ギョーサン・マネーからの資金援助と、グルメス王国への工作の成果によって今は潤沢だ。
このまま勢力を拡大していけば、世界征服の夢も不可能ではない。そのはずだったが、ここに来て王立国防軍とGCGが協力体制を樹立してしまい、全ての前提が崩れた。
「貴軍の作戦では、GCGが民間警備会社である事を利用して、ターゲットを王立国防軍とキングキャッスルに絞った電撃作戦で占領するつもりだったが、それも難しくなったという事だっぺか」
GCGがどんなに強力でも、民間警備会社である以上軍や国王の居城を警備することはない。なら、軍と国王だけを狙えば、GCGに活躍の余地を与えず王位を簒奪できる。
レッドリボン軍はそう考えて作戦を練っていたのだが……。
「そうだ。王立国防軍の連中がGCGの隊員並みになるとは思えんが、指導者が出向しているだけで我が軍では手も足も出せない。
そこで貴様だ! 貴様の兵器があればGCGと渡り合う事も夢ではない!」
フラッペが提供した戦闘用ロボットは一機で戦車を上回り、バトルジャケットは操縦したレッド総帥にこれがあれば桃白白も倒せると思わせる性能を示した。
「ドクターフラッペよ、儂の手を取るなら貴様は我がレッドリボン軍が世界征服をしたのちに世界一の天才科学者の名声を得るだろう! どうだ!?」
「分かったっぺ。GCGが王立国防軍と手を組めば、私一人だけではいくらロボットを作ってもいずれ圧殺されるのは目に見えているっぺ」
そして、ここにレッドリボン軍とドクターフラッペが手を組んだのだった。
「おお、ではさっそくより高性能な戦闘用ロボットとバトルジャケット、あと潜水艦や戦闘機の設計を頼みたい! 桃白白を倒すような新兵器を期待するぞ!」
「ああ、それは無理だッペ」
「な、なにっ!?」
いきなり期待を裏切られたレッド総帥だったが、続くフラッペの言葉ですぐに機嫌を直した。
「ロボットでは限界があると分かったっぺ。やはり、物を言うのは兵器を操る人間の腕……兵士の練度だっぺ。もちろん、ロボットの開発も総帥のご要望なら進めるっぺ」
「ふふ、分かっているではないか。ブラック、ドクターに研究所と必要な人員を用意して差し上げろ」
ロボットよりも重要なのはレッドリボン軍の鍛え上げられた兵。しかし、総帥の意思なら従う。そう言われた事で総帥としての自尊心が刺激され、さらにフラッペが自分に従う姿勢を見せた事にレッド総帥は深い笑みを浮かべた。
「ではドクター、此方に。必要な機材などを言ってくだされば、すぐに用意します。助手は我が軍の技術者から選別なさいますか?」
「感謝するっぺ、ブラック補佐。しかし、アジトから機材を持ってくるからスペースさえもらえれば十分だっぺ。助手は不要だっぺ。
しかし、頼みたい事があるっぺ」
「なんでしょう?」
「若く健康な人間の遺体を回収したら、それをそっくりそのまま研究室まで届けてほしいっぺ。ドクターゲロが研究しているという人造人間……それが私にも可能か、試してみたいっぺ」
「い、遺体ですか。分かりました」
そう答えつつも、ブラック補佐は目の前のどこかユーモラスな姿の男がマッドサイエンティストである事を、改めて認識したのだった。
式典とレッドリボン軍との会談を終えたこの儂、天才科学者のドクターゲロは秘密研究所でほっと一息ついていた。
「やれやれ。四身の拳を使っても、お偉いさんの相手は肩が凝る」
「ドクター、ドクターもそのお偉いさんだと思いますが?」
「四身の拳を解いて一人に戻るときに、記憶だけではなく疲労も引き継いでいるのだろう」
「はっはっは、その通りだな。4号、桃白白」
そう、今ここには4号だけではなく桃白白もいる。儂は、自身がドクターフラッペである事を既に彼に明かしていた。
桃白白が我が社のGCGの顧問に就任してから、もう数年が経つ、ここまで関係者になった以上、彼にドクターフラッペの正体を隠し続けてもいずればれる可能性が高い、そう判断した儂は、彼に打ち明ける事にしたのだ。
真実を知った当初は大いに驚き、困惑した桃白白だが一時間ほどで納得してくれた。
「……冷静になって考えてみると、ドクターフラッペが襲うのは犯罪者ばかりで、民間人に被害を出したことは一切なかった。警察に捜査協力をしている時も、ロボットは警官ではなく私ばかりを狙っていた……なるほど、偽善ではなく偽悪か。
だが、いったい何故こんな事をしているのか、説明はしてもらうぞ。まさか、お遊びのつもりだったとは言わんだろうな、会長?」
「訳か。実はな、超能力の一種で未来を予知した時、レッドリボン軍が重要な役割を果たすと分かったのだが、当時既に起業していた儂がならず者集団と関わる訳にはいかん。そこで、ドクターフラッペと言う架空の悪の科学者を作り出し、接触しようとしていたのだ」
「なるほど、私が関わったのは、その悪の科学者を演出するために起こした、偽装事件か」
「うむ、全くの偶然じゃったが。しかし、その肝心の未来予知も、儂自身の行動で歴史が変わり過ぎて当てにならなくなりつつあり……今も続けているのは念のため、と言う感じじゃな」
「……もう潰してしまってもいいのではないか? レッドリボン軍を」
「それは考えたが、今のところそこまで凶悪な集団ではないからな。それに、一応まだ未来予知も完全に外れたわけではないので、続けようと思う。
何らかの理由でレッドリボン軍が何者かによって壊滅してもそれはそれで構わんし、場合によっては儂自ら退治するが」
主に儂のせいで歴史が変わったため、レッドリボン軍は今のところ原作に比べるとだいぶ大人しい。主な被害者は同じならず者同然の傭兵団やマフィアやギャングなどの犯罪組織で、部下の粛清もしていないようだ。
それに、当人達に自覚は無いだろうが、辺境においては魔族の跳梁跋扈を防ぐ戦力としても機能している。ならず者の集団でも、女子供の生き血を啜り、肉を喰らう魔族よりはマシだろう。
つまり、今のレッドリボン軍はこの世界にいくらでもいる悪党の内の一つでしかないという事だ。最終的には世界征服を目指しているが、まだ実行段階からはほぼ遠い。……野望にもっと実現性が帯びてきたら、潰すが。
「それは、例えば修行の旅に出ている武天老師が偶然レッドリボン軍を退治しようとしても、止めないという事だな? それなら構わん」
「納得してもらえて何よりじゃ」
「ところで、最後に奴らにした要求は、人造人間の材料の調達か? 必要なら、悪党を捕まえるなり、病院で希望者を募ればいいのではないか?」
儂とレッドリボン軍関係者の会話は、フラッペの変装セットに盗聴器を仕込んであるため、桃白白と4号も聞いている。
「いや、患者だと本人の意向も気にしなければならないが、悪人……それも死んだ後なら遠慮せず改造できると思ってな。
それに、レッドリボン軍と協力体制を築いた今なら、改造前のデータも手に入るだろうから便利なのじゃよ」
新装備の試験とか、そう言った理由でブルーに協力を願ったりできる訳だ。
「それに、彼らの中に興味深い人物がいるのじゃよ」
「そいつを攫うだけではいかんのか?」
「やっている事が微妙でな。まだそれほど悪事を犯していないので、無理やり拉致して人造人間に改造するには抵抗がある」
すでにブルー将軍がレッドリボン軍に所属している事は分かっている。階級はまだ将軍ではなく、大佐だが。超能力を使える強力な戦力として、原作以上に頼りにされているらしい。
しかし、原作とは違いレッド総帥が部下の粛清を極力控えているので、ブルー大佐も原作のように鼻をほじったから等のくだらない理由ではもちろん、砲手が目標を連続で外したから等の理由でも粛清をしていない。
なので、悪人ではあるが極悪人とまでは言えないという程度で踏み留まっているのだ。
「ふむ……会長には、それぐらいの自重は必要か」
「いや、儂はただの天才科学者で、ただの会長なのだが」
桃白白の納得の仕方に、儂は思わず苦笑いを浮かべた。社会的にどんなに偉かろうと、しょせんは人だ。絶対的な権力者ではない。
部下に高圧的な態度で当たればパワハラ、性的な嫌がらせをすればセクハラ、暴力を振るえば傷害犯だ。それが露見すれば社会的な地位など消し飛ぶし、犯罪の証拠を押さえられれば豪邸から家賃ゼロ円の集合住宅へ強制的に引っ越しだ。だから、フラッペの正体を隠しているのだし。
それが前世の『地球』の記憶を持つ儂の認識だったが……それはこの地球ではあまり当てはまらないらしい。
「ドクター、ご自身の地位と権力と財力をもっと自覚するべきだと思いますよ」
4号にまでそう言われてしまったので、そう言う事なのだろう。……思い返してみれば、我がGCコーポレーションの影響力は絶大だ。前世のどの企業と比べても。
それはこの世界の地球が統一国家である事も影響しているが、前世と同じように考えるべきではないのかもしれない。
「それにドクター、もし国王が『人造人間を作るのを禁止する法律』を施行したらどうします?」
「その時は関係者に札束や若返り薬を使って買収を試みて……それでだめなら世界を征服するしかないな」
儂の人生の目標の障害となるならば、致し方がない。極力流れる血は少なくし、国王は王位から退いてもらうが官僚として活躍してもらうのがベストじゃ。
落としどころとしては、国王かその親類から適当な者を選んで儂の養子にして、形だけでも王家と同一になれば国民、そして何より亀仙人達も納得してくれるだろう。まあ、国王側の出方と態度によって変わるが。
「うむ、自重は大切だな。国王が会長に配慮する事を彼らのために祈っておこう」
しかし、儂が世界征服を選択肢の一つとして具体的に考えている事に気が付いたのか、桃白白は冷や汗をかいていた。
「いやいや、あくまでも仮定の話じゃよ」
とはいえ、現実になったら世界征服も躊躇わんが。……無理そうだったら、秘密研究所やナメック星やヤードラット星に逃げ出すしかないな。
そう話していた数日後、国王の名で儂に特別宇宙外交大使なる役職を与えたいと打診された。とりあえず、世界征服はしなくて済みそうだ。
なお、正式な就任は企業経営者である儂が現役のまま政府の役職に就く事を可能にするために、特別法を整備する必要があるとかで一年後になるそうだ。
占い婆の宮殿でのバーダックチームとベジータ王との戦いの後、式典とレッドリボン軍との取引以外での動きだが、まずバーダックの所在は占い婆の占いでも分からなかった。
彼女が閻魔大王に確認したところ、死んでいないので生存しているのは確実になったが……仮面のサイヤ人かタイムパトロールになっている場合は、ドラゴンボールでもどうしようもないだろう。
ズノー様にでも聞けば分かるかもしれんが……年単位で待たねばならんからな。それに、歴史改変者が存在すると分かった以上、バーダックがどちらにいたとしてもいずれ遭遇する事になる。
いや、もしバーダックがそのどちらでもなく、何らかの理由で地球から離れた他の界王様の管轄の銀河の辺境の星で隠れ住んでいる可能性もないわけじゃない。
ギネはバーダックの行方が分からなくて気落ちしていたが、確実に生きている事が分かったのは良かったとすぐに立ち直った。
やはり、ズノー様を探して予約を入れておくか。超のアニメや漫画では、地球からそう離れていない位置に彼がいる惑星があるようだし。
魔人ブウの細胞を安全に採取、保管する方法など、儂も聞いておきたい事がある。……正直に言うと、ズノー様に答えをもらうのではなく、自分で解析して答えを出したいところだが、その時間と余裕があるか不明じゃからな。
背に腹は代えられん。アルマが最強の人造人間にできなくなったら、それこそ儂のプライドに関わる。
それで話は戻るが、妻への手紙は前回と同じように届けてもらった上に返事までもらってきてくれた。お互いの近況と研究を報告し、儂が供えた科学雑誌や論文なども届いていることが判明した。
これで儂の方からだけなら、手紙を送るのに占い婆に頼む必要はなくなったな。彼女に毎回頼むのは気が引けたので、朗報である。
戦いの後に起きた変化としては、バーダックチームとベジータ王の強さを肌で感じた皆がより一層修行に励むようになった。
自分達より圧倒的に強い相手としては、4号達人造人間やツムーリ達ナメック星人がいるが、仮想敵としてバーダックチームとベジータ王の戦いを見たのが大きかったようだ。
今のサンとギネならドクターウィローにも多分勝てるが、歴史改変者が横槍を入れてくる可能性がある。キリで強化すれば、ウィローの力を倍にする事も難しくはないはずだ。
幸いすぐに対処しなければならないような、切迫した事態ではないので、もう少し皆が強くなってからでいいだろう。
そして肝心な人造人間研究だが、8号の設計が終わった。後は実際に組み立てるだけだが、あまり早く組み立てるとレッドリボン軍より先に悟空と会いそうじゃしな……いや、もういっそレッドリボン軍に送り込む必要もないかもしれん。
というか、メタリック軍曹を作るのもやめよう。
ただのロボット程度ならともかく、あまり人工知能を発達させると人造人間と区別がつかなくなってしまう。つまり、壊されるために作るのが不憫に思えてくるのだ。
三年後、悟空が十一歳になった頃にどれくらい強くなっているかで考えよう。
あと7号と9号以降の人造人間だが、今のところ確保している素体はセリパとトーマの二人だけだ。しかし、せっかくのサイヤ人の素体なので、生体部品製永久エネルギー炉を完成させてから完成させたい。
しばらくはサンとギネに実験に付き合ってもらい、データ収集とその解析を続けてから7号については考えるとしよう。
他には、亀仙人の所の不死鳥が食中毒で緊急入院したぐらいじゃ。急に彼の気が弱まりだしたので、儂が急いで瞬間移動して我が社の病院に連れて行った。
処置が早かったおかげで、幸い命に別状はなく三日ほどで退院する事が出来た。これで彼の死亡フラグは完全に折れただろう。
そして地味に大きな変化として、GCGに就職する際のトレーニングに耐えきれずリタイアした者や、様々な理由で辞めた者が指導者として既存の道場やジムに就職するか、自分で道場を開く例が増えてきた。
GCGに就職できなかった者でも、ある程度トレーニングに耐えられていた場合、その戦闘力は平均的な地球人の数値である5を超える。正式採用後に辞めた者なら、なおさらだ。
彼らが各地で弟子や門下生を鍛える事は、地球人全体の戦力アップに繋がるので実に喜ばしい事だ。辺境で跳梁跋扈する魔族対策だけではなく、将来的に起こるかもしれない地獄の死者が復活する事件などで、フリーザ軍の兵士やサイバイマンは無理だとしても、地球人の死者に対しては自衛できるようになるかもしれない。
まあ、「ドクターゲロの直弟子」とか「秘伝の奥義を教わっている」等の嘘をまことしやかに喧伝し、騙して人を集めようとした者もいたそうだが、そうした場合は我が社のイメージを損なうので警告を出して止めさせている。
それに、大部分は真面目にやっているようだし、問題無いだろう。
もちろん、そうして武術を広めれば弟子の中には悪事に走る者が出るだろうが、それを恐れては武術を広める事はできない。各指導者には弟子に技だけではなく、心も教える事を期待しよう。
それに、警察の武術指南にも元GCGの隊員が就職している者がいるので、多分大丈夫だ。
そして、天津飯が聖地カリンへ旅立ったころ、儂は我が社が経営する病院から連絡を受けた。妻と同じ病気にかかった双子の姉弟がいると。
・一般人からのゲロのイメージ
空を飛び、光線を放ち、宇宙に何度も行って宇宙人と交流し、様々な発明で人々の生活を豊かにし、環境にも配慮した経済支援を行い、しかもGCGを設立し自分と同じ超人を増やしている。
そのため、一般の人々からのイメージは実は桃白白と同じようなヒーロー、もしくはヒーローの総指揮官のような存在かなと思います。
もちろん意図した事ではなく、本人は微妙に自覚していません。有名人で人気もある事は自覚していても、そこまでだとは気が付いていない、と言う感じです。
・下位の魔族
劇場版『魔神城の眠り姫』に登場した、銃火器で武装した魔族達を想定しています。
劇場版では亀仙人の修行を受ける前の悟空やクリリンにも一対一では勝てず、数で攻める戦い方をしていた。これぐらいなら現代兵器が通用すると思われる。
・地球国
通信学習制度を充実させ教育の地方格差を抑えるなど、内政的にはそれなりに優秀なのではないかと思われる。
しかし、治安が中々良くならなかったり、魔族の跳梁を防げなかったり、レッドリボン軍の犯罪(ジングル村を武力制圧して村人に強制労働を強いる、ブルー将軍の部下の処刑、イエロー大佐の聖地カリンでの強盗行為)に気が付かず捜査しない、原作ゲロを指名手配していない等々……。
原作桃白白やピッコロ大魔王のような、常人にはどうにもできない存在はともかく、色々と頼りない点もある。やはり多分、地球統一国家になったために色々と緩んでいるのではないか? と推測しています。
国王が民思いで善良なのと、地球人の人口が爆発していない、そして科学力の問題なのかコロニーは建設していませんが……していたら独立戦争を仕掛けられていたかもしれません。
もっとも、地球国の捜査組織や諜報組織がしっかりしていたら、まず悟空達が睨まれて、映画や海外ドラマばりの「超人と常人の確執」が起きる気しかしませんが(汗
・地球国からみたゲロのイメージ
その気になればすぐに世界征服を成し遂げられる武力と経済力を持ち、国民の人気もある天才科学者。しかも、ゲロ本人が生身で戦闘機を上回る機動力、ミサイルの直撃を受けても耐える耐久力、街の一つ程度なら一瞬で壊滅できる攻撃力を持つ。
しかも、異星人と交流している事から、地球外に拠点を持っている可能性が高いと思われる。……GCコーポレーションから宇宙船を買わないと宇宙に行く事も難しいため、地球国関係者が追跡、調査するのは困難。
そして若返り薬を開発し、富裕層の味方も多い。
もうお手上げ状態。
本来ならここまでゲロの力が強くなる前に監視体制を整えるとか、逆にがっちり手を組んでおくとか、色々するべきだったが……彼らは現実の地球と比べて呑気だったのだ。
・レッドリボン軍
失敗した者には死を……が出来なかった時代が長かったせいか、潤沢な資金力を誇る今になっても部下を簡単に粛清できなくなってしまった。
おそらく、「もしまた貧乏になったら」と考えてしまうせいだと思われる。
結果的に、常人の枠の内だが経験豊かな将兵が育っている。
なお、ゲロが異星人と交流している事については、地球国の国王達が為政者や政治家、官僚であるのに対して、レッド総帥達が軍人であるため、知識として知ってはいるがあまり重視していない。
・ブルー
現在二十歳程。原作通り超能力を使うオネエで、身体能力も常人を大きく超えている。この作品の歴史では桃白白が殺し屋をしていないので、レッドリボン軍の切り札的存在。そのため、この若さで大佐の地位にある。
レッド総帥達にとっての真の切り札はバトルジャケットだが、乗り込んで操縦しなければならない機動兵器であるバトルジャケットに作戦指揮能力はないため、貧乏性が染みついたレッド総帥達に重宝されている。
ドラゴンボールの奪取に失敗してもレーダーを持ち帰ったり、ドラゴンボールを幾つか拾い忘れてきたりした程度なら、挽回のチャンスをもらえると思われる。
・ズノー様
ドラゴンボール超で登場した、福助人形に似た姿の宇宙人。ジャコによると、「会った事もない奴のパンツの柄まで知っている」そうで、実際にブルマのバストサイズを言い当てている。
知識として知っているというより、超能力や特殊能力の類ではないかと思われる。
質問するのに必要な代価は頬にキスする事で、それで男性は一回、女性は複数回の質問が可能。女性の場合は年齢や容姿、ズノー様の好みなどによって回数が変わる。(ブルマの場合は三回だった)
また、質問の定義が厳しく、会話しているだけでその気はないのにカウントされてしまう事がある。
また、アニメだと予約が必要で七年待ち。漫画だと予約は必要ないが、一度質問回数を使い切ると、次に質問できるのは一年後と言うルールがある。
ドラゴンボールの神龍や、ポルンガのような親切さはないようだ。その分、予約を入れれば誰でも質問に答えてくれる確実さはあるが。
宇宙に広大な勢力圏を持つはずのフリーザ軍が彼の事を利用した形跡は、今のところない。しかし、ズノー様のいる惑星は地球に(宇宙規模で)近い位置にある。つまり、辺境にあるためフリーザ軍はズノー様の存在を知らないと思われる。
ズノー様の頬にキスするのが嫌だから、と言う訳でもないだろうし。フリーザなら部下に予約させて質問させて来させる事も容易いはず。
「ザーボンさん、ズノー様にこのメモに書いた質問をしてきなさい!」
「そ、そんなっ!? フリーザ様、どうかお考え直しください!」
「フリーザ様、このドドリアにお任せください」(へへ、ザーボンに代わって手柄を立ててやるぜ)
「ド、ドドリア……」(この嫌な役目を代わるというのか!? な、なんて良い奴なんだ)
しかし、上記のように部下にキスを強要するようなやり取りはなかったと思うので、やはりフリーザ軍はズノー様の存在を知らないと思います。
・金髪の美しい少女
いったい何ランチさんなんだ……。
匿名鬼謀様、中島ゆうき様、クウヤ様、完投労務層様、路徳様、あんころ(餅)様、カカオチョコ様、酒井悠人様、ヒロシの腹様、竜人機様、誤字報告ありがとうございます。遅れましたが修正しました。