ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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31話 天才科学者の予定は未定

 サイヤ人の合同慰霊碑とバーダックチームの墓の墓前に、それぞれホイポイカプセルの入ったケースを供える。

「……これであの世に同じ物が届くと考えると、不思議なものじゃな」

 供え物と言っても、墓の前にそのまま放置して朽ちるに任せるわけではない。お焚き上げもしていない。花などはそのまま飾っておくが、それ以外は墓参りが終わったら下げる。

 

 そして食べ物は自分達で食べ、雑誌や論文は丁寧に保管し、器具は大切に使用する。少なくとも前世の儂はそうしていたし、この世界の仏教っぽい宗教でもそれで問題ないそうだ。

 そういう訳で、供えたホイポイカプセルの入ったケースも回収して大切に使用する。なお、中身のカプセルに入っているのは、百倍にまで設定可能な重力トレーニング室に、戦闘服やトレーニングスーツの入ったクローゼット、メディカルポッドに、メディカルポッド用薬剤の大型タンク。そしてデータ収集用の撮影機器等々と、それらの取扱説明書だ。

 

 もちろん、地獄でのトレーニング用である。

 別にベジータ王やバーダックチームにねだられた訳ではない。こうして供えるだけで送れるのでコストがかからないし、サイヤ人の豊富なデータが得られるので儂に損はないので送りつけているだけだ。

 

 それに、ベジータ王は気が付いていないが、儂等なりベジータなりがフリーザを打倒するという事は、フリーザが地獄に堕ちてくる可能性があるという事だ。

 儂はフリーザを殺さず脳改造を施して完善体メカフリーザにするつもりだが、儂の思い通りに物事が進むとは限らない。歴史改変者達の横槍が入って止めを刺しきれずに逃げられるか、逆に止めを刺してしまう事も考えられる。……改造に失敗した場合は脳だけ取り出して仮死状態のまま保存するという生殺し状態にするつもりだが。

 

 そしてフリーザが死んだ場合、超では他の死者がいないお花畑で、ミノムシ状態で木から吊るされていた。しかしドラゴンボールZのアニメでは、他の死者と一緒に地獄にいるフリーザの姿が確認されている。

 フリーザが何時お花畑へ連れて行かれたのかは不明だが、魔人ブウ編までは地獄にいたようだ。

 

 そうなると、ベジータ王は十年以上フリーザと地獄にいる事になる。地獄は広大なようだから棲み分けは難しくないだろうし、地獄では所詮フリーザもベジータ王と同じ囚人でしかない。悪人同士で好き勝手に殺し合いをすることが可能だとは思えないが……フリーザも閻魔大王に反乱を起こしそうだしな。

 少なくとも、ベジータ王が地獄での権勢を維持するには、フリーザに舐められない強さになっておく必要がある。

 

 そこで、修行に使える機材を送ったのである。もちろん、セリパ達にも今から修行すれば人造人間として復活した時により強くなっているかもしれないという期待もある。

 

 閻魔大王には占い婆に頼んで連絡し、前もって了解をもらっている。既にベジータ王達は地獄の鬼達や自分では相手にならない。だから、多少強くなっても自分達にとっては大差ない。そして、フリーザに勝てる程度では大界王様達の所にいる銀河の戦士達には敵わないので、構わないそうだ。

 

 それと、儂がサイヤ人全体の慰霊を行うようになってからのベジータ王達が大人しくなったので、その功績も考慮して頷いてくれたようだ。

 

「さて、ではさっそく患者の元へ行くとしようか」

 そして、儂は病院へ瞬間移動した。

 

 

 

 

 

 

 儂の妻アルマは、遺伝性の心臓病で急逝した。特殊かつ珍しい病で、問題の双子が受診するまでアルマが唯一の症例だった。

 この心臓病は、発病するまで症状らしいものは一切ない。心臓の形状や機能に異常は一切見られず、激しい運動をしても全く問題はない。しかし、発病すると心臓の機能が急速に低下し、数日のうちに急逝してしまう。そんな恐ろしい病だ。

 

 アルマも亡くなる数日前までは健康そのものだったが、発病してから一気に体調を崩し、心臓病である事が判明した時にはもうどうしようもなかった。

 前もって分かっていれば心臓移植や人工心臓で命をつなげる事も出来ただろうが……。

 

 しかし、妻の死から二十年以上経ち医学も進歩した。血液検査の際、遺伝子を調べる事で発病前に発見する事が出来る。双子が心臓病である事が分かったのも、そのお陰だ。

 二人は我がGCコーポレーションが運営している孤児院で暮らしている孤児で、今は病院に検査入院している。

 

「失礼、君達の主治医だが今後の事について説明したい」

 病室の扉をノックしてそう言うと、中から「入れよ」とぶっきらぼうな声で返事があった。言葉通り儂が入ると、それぞれベッドに腰かけた金髪の少女と黒髪の少年が儂の顔を見て驚いたように固まっていた。

 

「あ、あんた村人の……」

「違うだろっ、ここの会長だ!」

 二人の姿は、ドラゴンボールの人造人間編で登場した人造人間17号と18号の子供の頃はこんな感じになるだろうと思えるものだった。

 

 それはそうだろう、本人なのだから。

 この双子の姉弟の名は、姉がラズリ、弟がラピス。名前と姿が一致している事から、二人とも間違いないだろう。

 

「なんでそんな偉い奴が俺達の主治医に? 何かの冗談か、そっくりさんじゃないのか?」

「いや、儂は天才科学者にしてGCコーポレーションの会長のドクターゲロ。本物じゃよ」

「じゃあ、空を飛べるのか?」

「飛べるとも、ほれ」

 儂が舞空術で浮かんでみせると、それまでクールな様子だった二人が初めて子供らしい表情を見せた。

 

「凄いな、本当に飛んでる」

「でも、どうしてその会長さんがあたし達の主治医になるんだ?」

 しかし、18……いや、ラズリは弟のラピスよりもしっかり者のようで、すぐに興奮から立ち直って質問をぶつけてきた。

 

 しかし、儂もカバーストーリーぐらいは作ってある。

「君達二人の病気は、儂の妻がかかった病気と同じでな。今の儂の科学技術で治せるのか、実証したいのじゃよ」

 珍しい病気故に、今後もそう出てこないだろうからこう言っても問題ない。もちろん、当時の病気の存在もアルマが発症するまで気が付かなかった昔の儂ならともかく、今の儂にはこの病を完治出来るアイディアがある。

 

「それって、俺達は実験台って事か?」

「呑み込みが早いな、ラピス君。しかし、この病気にかかった者は今のところ三名のみ。君達以外には、儂の妻しかいない。そして、君達の病気は遺伝性じゃ」

 

「……治療するには実験台になるしかないって事か」

 ウィルス性や細菌性の病気ならマウスに感染させるなどして動物実験が可能だが、遺伝性ではそれも不可能じゃからな。

 

「うむ、ラズリちゃんも呑み込みが早くて助かるわい」

「ちゃん付けは止めろよ、呼び捨てでいい」

「俺も」

 

「うむ、分かった。

 まあ、やろうと思えば君達のクローンを作って実験台にする事も可能だが……どうするかね?」

「それは絶対止めろっ!」

「ああ、これ以上自分と同じ顔の奴は増えなくていい」

 

 やはり却下されたか。まあ、やると閻魔大王に怒られそうだから、儂も実行する気はあまりなかったのだが。

「それで、治療のためのプランを四つ用意してきた」

 なお、普通に研究を進めて普通の治療法を発見する、と言う世間一般で言う普通の方法はこのプランには含まれてはいない。それは儂でなくても着手する事が出来るし、儂自身は申し訳ないが人造人間研究の方を優先しなければならんからな。

 

「一つ目のプランは、伝説のドラゴンボールを使う方法じゃ。ドラゴンボールと言う七つの球を集める事で龍の神様を召喚し、どんな願いも――」

「爺さん、悪いけど俺達もう十歳なんだ」

「おとぎ話を聞かせたいなら、他を当たりなよ」

 ……うむ、予想通りの反応じゃな。

 

「では、二つ目のプランじゃが、それは心臓移植を行う事だ。遺伝子の型が適合するドナーから提供してもらった遺伝子から心臓をクローン培養し、移植手術を行う。心臓をクローン培養する以外は昔ながらの方法じゃ」

 これが最も手っ取り早い治療法だ。遺伝性の病気で発病すると心臓の機能が低下するのだから、遺伝子に問題の無い他人の心臓を移植すればそもそも発病しない。

 

「臓器移植って奴か? まだやってる病院があるのか?」

「たしか、何年か前にあんたの会社が大きくなってから激減したって聞いたけど?」

 ただし、我が社の医療分野進出でドナーから臓器の提供を受ける移植手術が行われる事は、今ではほとんどなくなっている。今の主流は、患者自身の遺伝子から臓器のみクローニングしてそれを移植する、クローン臓器手術だ。

 

 今実験中の、家畜の肉のみのクローニングと技術的には同じだ。これならクローンを作っても魂は宿らないので閻魔大王を怒らせなくて済む夢の技術である。

 

「その通り。君達の場合は心臓をそのままクローニングが出来ん。遺伝性の病気じゃからな。発病する度に心臓を取り換える事になる。

 それで、ドナーに遺伝子を提供してもらい、クローニングしたドナーの心臓を移植する事になるが……免疫抑制剤などを使用しなければならないので、術後のケアが必須になる」

 

 このあたりは前世の地球と同じだ。免疫抑制剤を飲み、細菌やウィルスに注意して生活しなければならない。

 

「なので、今行うのはドナーの選定と遺伝子の提供で、移植手術は発病後すぐに行えるよう用意しておく、と言う事になる。

 二人の病気は、発病するまでの潜伏期間は健康体と何も変わらんからな」

 発病する前に移植手術を行った結果、生活が不自由になっては本末転倒じゃからな。

 

「だったら、俺達の遺伝子で俺達の発病する前の心臓をクローニングして移植した方が良いんじゃないか? それでまた発病するまで十何年もあるかもしれないんだろう?」

「それで移植した直ぐ後に発病したらヤバイだろ」

「それもそうか。それに、発病した時に不幸な偶然で手術が間に合わなかった、なんてことになったら死んじまうし……爺さん、三つ目のプランは?」

 

「三つ目のプランは、機械式の人工心臓を移植する方法じゃ。これなら、何年かに一度メンテナンスを受けるだけで普通の生活を続けることができる」

 前世の地球以上に進歩した我が社の医科学なら、完全な人工心臓を開発する事は難しくない。動力は出力を極力抑えた永久エネルギー炉を使えば、完全内蔵式にする事が可能だ。

 免疫抑制剤の服用も、重いバッテリーを持ち歩く必要もない。

 

 二人も、二つ目より三つ目のプランの方に興味がありそうだ。

「ただ、個人的には四つ目のプランの方がおすすめじゃ。

 四つ目のプランは……儂に改造され、人造人間になる」

 

 かつての予定では、原作通りには人造人間17号と18号を作らないはずだった。原作のように、双子の不良姉弟を誘拐し、無理やり人造人間に改造しなければならない必要性が儂にはないからだ。それは今も変わらない。

 

 しかし、二人が改造手術を受けなければ助からない病気にかかっているのなら、そもそも前提条件が異なる。

 本人達に方法を提示し、了解を得て人造人間にするのなら問題ない。

 なお、何故三つ目のプランよりおすすめなのかと言うと、人造人間化の方が術後の生活に悪影響の出る可能性が低いからだ。機械の人工心臓を埋め込むより、生体部品で作った永久エネルギー炉を埋め込む方が望ましいに決まっている。

 

 そもそも、人造人間研究を儂が研究している理由の一部は、この遺伝性の病気を完治する方法だからだ。明らかに、世間一般で言う普通の治療よりも効果的で術後の悪影響がなく、健康で何百年と長生きできる素晴らしい治療法ではないか。

 

 それに、三つ目のプランでも体を改造する事に違いはないのだ。心臓だけ改造手術を受けるか、心臓以外も改造手術を施すか、これだけの違いである。

 いや、必要な費用が違うか。まあ、それぐらいの違いだ。

 それなのに体を改造せず治療する方法に拘る意味があるとは、思えない。

 

「人造人間って、天下一武道会で言ってたあれか? 宇宙人の細胞を移植するっていう……」

「うむ。4号は地球人ベースではないので、前回の天下一武道会で五位だったサンを参考にして欲しい。詳しくは、この冊子を参照してくれ」

 

 そう言って、儂は人造人間に関して説明するために創った子供向けの冊子を二人にそれぞれ渡す。しかし、弟のラピスは冊子を受け取っても開かず、瞳をキラキラと輝かせている。

「決めたぞ。爺さん、俺を人造人間にしてくれ!」

「ラピス、あんた何を言ってんだい!?」

 

 さっきまで斜に構えた生意気な様子だったのに、プレゼントを喜ぶ純真な子供のような様子で人造人間にしてくれと言うラピスを、姉のラズリが慌てた様子で引き留める。しかし、ラピスは彼女の制止を聞く様子はなかった。

「何を言ってるって、人造人間だぞ、ラズリ。空を飛んで、ビームを出せて、ヒーローみたいに戦えるようになるんだ。こんなチャンスを逃す手があるか?」

 

 なるほど、「人造人間にならないか?」という問いかけは、子供からすれば「ヒーローにならないか?」と言われたのと同じだったのか。

 これは気がつかなかった。儂も、前世で「かめはめ波を撃てるようになりたくないか?」と問われたら、「なりたい!」と答えただろうし。

 

 それに、この歴史では人造人間とそれを研究する儂自身のイメージが良いのもラピスがすぐ頷いた理由だろう。ドラゴンボールの地球では格闘技ファンの割合が多く、その格闘技ファンたちが注目する天下一武道会で4号は優勝、5号のサンは五位入賞している。まあ、サンの方は人造人間である事を隠していないが、ことさら強調もしていないので、知らない者の方が多いようだが。

 

二人とも、今年公開された映画にも出演しているし。

 

「ラズリは興味ないのか?」

「ないとは言わないけど……そんなの人造人間にならなくてもGCGに入れば出来るようになるだろ?」

「おいおい、GCGの訓練は過酷なんだぞ。プロの格闘家や武道家が訓練を受けても、耐えて正規隊員に成れるのは三割ぐらいだって評判だ」

 

「随分詳しいね……そう言えば、あんた前から調べてたっけ」

「まあな。それに、心臓移植をした後の俺がそんな過酷な訓練に耐えられるか分からないからな。それなら、人造人間になるのはチャンスだろう?」

 

「それはそうだけど、人造人間になった後どうするのさ? ヒーローなんて一銭にも……」

「桃白白は儲けているじゃないか。映画も大ヒットしてるし」

「う~ん、それもそうだけど……」

 どうやら、ラズリはラピスより現実的に自分達の将来について考えているらしい。確かに、人造人間になった後放り出されたらと考えると不安じゃろうな。

 

 しかし、その辺りももちろん考えている。

「人造人間への改造手術を受ける場合は、お前さん達は儂の養子になってもらいたいと考えている。人造人間に改造するまで時間がかかるし、改造後に放り出すような無責任な真似もしたくない。もちろん、お前さん達の意思を尊重するが」

 

 儂がそう説明した途端、今度はラズリの瞳が輝いた。

「それ、本当だろうねっ!?」

「う、うむ、本当じゃ」

「分かった。あたしも人造人間になるっ! パパっ!」

「パっ!?」

 

 原作とは違うと知っていながら、ラズリにパパと呼ばれるとは思わず、衝撃で固まる儂。

「おい、ラズリ、どういうつもりだ? さっきまで反対していたじゃ――」

「ちょっとこっちへ来なっ!」

 その間に、困惑した様子の弟を部屋の隅に連れて行き、小声で何事か相談を始める。……とはいっても、病院の個室なので距離はたかがしれているし、声も聞こえている。

 

「よく考えてみなよ、ラピス。GCコーポレーションの会長の養子だよ? シンデレラ顔負けのビッグチャンスじゃないか」

「それはそうだが、堅苦しいだけじゃないのか?」

「多少の堅苦しさは我慢しろ。あんただって自分の部屋が欲しいって言ってたじゃないか」

「……まあな」

 

 どうやら、ラズリが儂の養子になりたがったのは損得勘定からだったようだ。三つ子の魂百までと言うが、18号らしい動機で安心した。

「あー。養子と言ってもお前さん達を儂の後継者にするとか、厳しい教育を課すとか、そうしたつもりはない。もちろん望むならその限りではないし、今や将来に悩みがあるなら相談に乗るし、力になろう」

 

 そもそも二人を養子にするのは、二人に身寄りがないからだ。二人の養育と人造人間に改造した後の責任を儂が持つのに、他人のままではやや面倒だからの。

「それに、どうしても嫌なら儂以外の里親を紹介するが……」

「いやっ、あたしパパが良い!」

「……はあ、仕方ないな。でも俺はパパなんて呼ばないからな」

 

 姉の様子にラピスも諦めたように頷いた。

「爺さんでも(じじい)でも、好きなように呼んで構わんよ。ターレスも、カメラの無いところでは儂を爺さんとしか呼ばんしな」

 

「そうか、安心したぜ」

「パパ、さっそくだけどあたし服が欲しい!」

「やれやれ、言っておくが儂は甘やかさんぞ。とりあえずは、上下それぞれ十着……いや、二十着までにしなさい」

「やった!」

「爺さん……あんた顔に似合わずチョロすぎじゃないか?」

 

 こうしてターレスに同い年の弟妹が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 ラピスとラズリを連れ帰り、そのターレスに紹介したが、彼は「まあ、同じ養子同士仲良くしようや」と二人を受け入れた。

 二人の内ラピスは一見クールに見えたが、実は好奇心旺盛でノリの良い性格だったようで、ターレスに気功波を撃って見せてもらったり、4号に腕を伸ばして見せてもらったり、一通り見せてもらった後は彼らと打ち解けた。

 

 一方、姉のラズリは打ち解けるのに若干時間がかかったが……。

「いたっ、ラズリ!」

「ラズリっ、ママがショッピングに行こうって!」

「あたしは遠慮するって言ってるだろっ! 娘のあんた達が一緒に行けばいいじゃないかっ!」

「そんなこと言わないで、お願い一緒に付き合ってっ!」

「僕は娘じゃない!」

 

 タイツとブルマ、そしてチャオズとはすぐ仲良くなった。

 

 きっかけはパンチー夫人で、ラズリが服やアクセサリーを好む事を知って、喜んでショッピングに連れまわすようになったのだ。

 最初はラズリもそれを喜んでいたのだが、夫人のショッピング熱が過熱するようになってからは逃げ回るようになった。

 

「冗談じゃないっ、あんなフリルが何段も重なったドレスや着ぐるみなんて着てられるか!」

 何故なら、着せ替え人形どころかお姫様やぬいぐるみにされるからだ。お姫様のような生活に憧れていたラズリも、絵本に描かれていたお姫様のような格好で日常を過ごしたい訳ではなかったようだ。……他にも熊の着ぐるみのような服や、十二単っぽい着物を着せられて帰ってきたことがある。

 

「あたしも嫌よっ、空を飛んだらパンツが見えちゃうじゃない」

「あたしも! ママに火をつけたのはラズリなんだから、責任取りなさいよねっ!」

「僕はペンギンやパンダの着ぐるみ嬉しい。でも、二人がラズリも連れてくって言うから」

「ちょ、ちょっとパパっ、助けてよ!」

 

「では、前回は4号がついて行ったから今回は儂が荷物持ちをしようか。……はっ!」

 儂は四身の拳で分身を作ると、その内一体で彼女達のショッピングに同行する事にした。

「あら、今回はゲロちゃんも付き合ってくれるの? じゃあ、新しいお帽子を選んであげようかしら」

「ラズリに可愛さ最優先で普段使いにくい服や、着ると自力では動けない着物を選ばれると困るからの。と言うか、君もたまには自分の夫を誘ったらどうかね?」

 

「あの人はダメよ。白衣しか着ないんだもの。その点ゲロちゃんはラズリちゃんが来てから、ファッションにも興味を覚えるようになったからいいわ。荷物もたくさん持ってくれるし」

「やれやれ、ブリーフにも一言言っておくか。そんな事だから、未だに儂と君の不倫疑惑が定期的に週刊誌に載るのだ」

 

 なお、儂のファッションに関する知識はファッション雑誌の受け売りである。パンチー夫人の言う通り、ラズリを養子に迎えてから多少の知識は必要だろうと雑誌を読むようになった。

 

「はあ……助かった」

「ヨン兄さんだと、『似合っていますよ』か『動きにくそうですが、大丈夫ですか?』しか、言ってくれないのよね」

「ラズリが着物を着せられていた時は、『加重トレーニングですか?』って言ってたし」

 

 こうして、ラズリは女子とチャオズから仲良くなっていき、次第に男子とも打ち解けるようになっていた。

 

「ところで爺さん、俺達をいつ人造人間にするんだ?」

「おや、説明していなかったか? 手術の予定は発病しない限りだいぶ先になる。できれば、二人が大人になってからが望ましい」

 心臓を永久エネルギー炉に入れ替えるので、出来れば体の成長がだいたい終わった頃が望ましいのだ。それに、まだ永久エネルギー炉の出力も目標値に到達しておらん。

 

「それまでに気が変わったら気兼ねなく言うのじゃぞ。ドラゴンボールで治す方法に替えたいとか」

「分かったよ。それと、四身の拳なのに三人なのはなんでだ?」

「うむ、残りの一人は別の場所(レッドリボン軍の基地)で地道な作業をしているからじゃよ」

 と言うような日常を過ごしていた。

 

 そのほかの出来事は……まずラピスとラズリを引き取る前に上映が開始された桃白白の三本目の主演映画、『桃白白VS復活のピッコロ大魔王 炎の涼景山』は、予想以上の大ヒットを迎えた。

 前作と前々作以上のアクションに、殆どの天下一武道会出場者が出演しているという豪華さが話題になったようだ。儂としては、やはりプロの俳優や女優をもっと起用するべきではないかと思い、その旨を監督に尋ねてみたのだが……逆に諭されてしまった。

 

「会長、あんな激しいアクションシーンに耐えられるのはあんた達だけだから。普通の人は近くにいるだけでも危ないから」

 そう監督から言われて、目から鱗が落ちる思いだった。確かに、CGを使わず迫力のあるシーンを演出するために激しくぶつかり合う桃白白達の近くに普通の人間がいたら、危険極まりない。まさかシールド発生装置を使う訳にもいかんだろうし。

 

 ちなみに、撮影スタッフはアクションシーンではGCGの隊員がカメラを構えているか、高性能な撮影機材を使って離れた場所から撮影して安全を確保している。

 

 肝心の映画の内容は以前にも記した粗筋に加えて、涼景山に封印されていたピッコロ大魔王を何者かが解放し、封印を代々守っていた牛魔王と妻の羅刹女(サン)を洗脳してピッコロ大魔王の僕にしてしまう。

 それを桃白白が解決するために戦い、ピッコロ大魔王の手下(ギラン)を倒し、牛魔王夫婦の洗脳を解く事に成功。しかし、ピッコロ大魔王(4号)が自分に修行を付けてくれた仙人を名乗る宇宙人(4号)と姿が瓜二つだったことに驚く。そして、仙人とピッコロ大魔王は双子の兄弟だったという衝撃の事実が明かされる。

 

 そして、桃白白はピッコロ大魔王からギリギリで勝利をもぎ取るが、そこにドクターフラッペが現れる。なんと大魔王の封印を解いたのはドクターフラッペだったのだ! それを自ら桃白白に告げたドクターフラッペは、ピッコロ大魔王を回収し、「次のゲーム開始を待つがいいっぺ」と言い残して、体力を使い果たして動けない桃白白の前から去っていく。

 桃白白はドクターフラッペを追い、今度こそ大魔王共々倒すために平和を取り戻した村の皆から見送られ、再び旅立つのだった……と言う内容である。

 

 ちなみに、だいたいの撮影は予定通りだったが、儂だけ大幅に変えられた。元々の台本では、儂は修行のために訪れた桃白白に、「ここは涼景山の麓にある、涼景村じゃよ」と「牛魔王様が治めている平和な村じゃ」と教えるシーン。そして映画後半で炎に包まれた山に向かう桃白白に向かって「に、逃げるんじゃ。殺されてしまうぞ」と呼び止めるシーンの二つだった。

 

 しかし、儂の演技力がゴミだったせいか、前天下一武道会準優勝者の儂がか弱い老人の役をするのは無理があったのか、監督が「リアリティを感じない」と判断し急遽脚本が変更された。

 儂が本来演じるはずだった役割はブリーフがやる事になり、儂はピッコロ大魔王の手下から他の村人達を守りながら桃白白に「ここは儂には任せて、あなたは先に行ってくだされ!」と先に進むことを促す役になった。

 

 ……メインスポンサー企業の会長がこんなに出張っていいのだろうか? おかげでラピスとラズリもしっかり儂の事を覚えていたようじゃし。

 

 なお、次回作はもう決定していて、タイトルは『帰ってきた桃白白、逆襲のメカピッコロ大魔王』だそうだ。

 あと、撮影中にギランが桃白白に相談を持ち掛け、助言を受けてトレーニングをしていた。元々武道家と言うより、武道大会に出場しただけのゴロツキの類だったはずのギランにどんな心境の変化があったのかと興味を覚えて尋ねてみたら、意外な答えが返ってきた。

 

「実は……故郷の舎弟共が、大会で俺が口から吐いた光線をまた見せてくれって煩くて困ってるんだよ」

 歴史改変者のトワにキリで強化されギランダークになったギランは、試合で口からドラゴンのブレスのように気功波を口から吐いていた。

 彼の舎弟(アニメに登場した彼の色違いの怪獣達)は、その様子を見て「兄貴、凄え!」とより一層彼を敬うようになった。

 

 しかし、本来ギランが口から出せるのはグルグルガムだけである。もう一度光線を吐いて見せてほしいと言われても、本人はキリで強化されている間の記憶もないため感覚から再現する事も出来ない。

 今までは「軽はずみに見せる技じゃない」とか、「今日は秘密の特訓(実際はしていない)で疲れているからまた今度な」と言って誤魔化してきたが、真実がばれるんじゃないかと思うと不安で仕方がない。

 

 なら、出せるようになればいいと考えて、桃白白に助言を求めたそうだ。しかし、桃白白からは「簡単に出せるような技はない。まずは基礎からしっかり鍛えるしかないだろう」と言われ、渋々トレーニングを始めたそうだ。

 それならGCGの訓練を受けてみないかと誘ったが、「警備員なんて性に合わねぇよ」と断られてしまった。ならばと、元GCGの隊員が開いた格闘技ジムを紹介しておいた。

 

 そして儂がラピスとラズリに会いに行く前に、天津飯が聖地カリンへ旅立ち、カリン塔を登った。カリン様にもう一度塔を往復するよう言われたが、その後は修行を続けているそうだ。

 チャパ王とチューボは神様の神殿で引き続き修行をしている。チューボは有給休暇が切れたので、研修名目だが。

 

 そして儂は四身の拳を使って、四分の一でフラッペを演じつつ、残りの四分の三で研究と修行に励んでおる。儂の四身の拳は最大で三日間効果が持続する。その上、分身も超能力を使えるのでテレパシーで連絡を取り合い、隙を見て瞬間移動で戻り、新しい分身と入れ替えること等が出来るので便利だ。

 

 ある日の一例をあげると、四分の一がレッドリボン軍基地でフラッペを演じ、残りの四分の三は西の都で普段の生活をする。しかし、急用が出来たので四分の一の分身を更に出してパンチー夫人たちのショッピングに付き合い、残りの四分の二で研究と修行を続ける。

 そんな感じだ。

 

「会長程四身の拳を使いこなす者は現れんだろうな」

「ああ、それに四分の一だと組手の相手に丁度いい!」

「「やれやれ、少しは加減してほしいものじゃな」」

 

「なに、どうせ分身なのだから構わんだろう?」

「違う、分身は鶴仙人の相手をしている方で、お前の相手をしている儂は本物だ!」

 

 この四身の拳のお陰で書類仕事の効率も何もかも向上したし、研究も修行もはかどるのじゃが……精神的な疲労が増したような気がする。




・遺伝性の心臓病

 発病するまでは無症状だが、発病後数日で死に至る恐ろしい病。
 なぜこんな病気になったのかというと……こんな病でなければゲロなら妻を治療してしまいそうだから。

 有効な治療法は、心臓移植か人工心臓への交換、そして人造人間への改造手術である。



・ラズリ、ラピス姉弟

 原作では人造人間18号と17号になる双子の姉弟。年齢はターレスと同じ十歳。(悟空の二歳年上)
 この作品では孤児院育ちで、遺伝性の心臓病を抱えている。このまま育っていたら、自分達以外に親しい者がいない環境と、いつ発病するか分からない病の重圧から非行に走っていたかもしれない。

 ラズリは孤児院育ちで自分だけの所有物が少ない環境から金銭に対する執着がやや強く、幼い時に読んだ絵本のお姫様や、テレビで見たファッションモデルの影響を受けて、服を欲しがる傾向が強い。
 ラピスは一見子供らしくないクールな少年に見えるが、実は好奇心旺盛でノリがよく、情に熱い性格。GCGに興味を持っていた。

 人造人間になる動機は、ラピスは空を飛び光線が撃てるようになるから。ラズリはゲロの養女になる事が出来るから。そして共通する動機に、病気が完治するからと言うのもある。
 それと、この作品の歴史だと人造人間のイメージが4号やサンのお陰で良い状態で保たれているというのもある。

 特に武闘の才能が豊かという訳ではない、普通の双子の子供であり、戦闘力は常人並み。



・ゲロ

 17号と18号は作らないと言ったな? あれは結果的には嘘になった。すまん。予定は未定である。当人は甘やかさないようにしているつもりだが、お察しの通り滅茶苦茶甘い。

 四身の拳をフル活用してフラッペに変装しながら、研究と修行と日常生活を過ごしている。
 現在の彼は分身に込める気を四分の一から三まで調節し、数も最大三体まで調節できる。分身が存在できる時間は最大三日で、超能力も使えるためテレパシーや瞬間移動を駆使して活動する事が可能。

 なお、未だにパンチー夫人との不倫疑惑が定期的に週刊誌で取り上げられるが、事実無根である。



・ギラン

 トワの被害者。トワのお陰で武道家としての道を歩まされたという、複雑な状況にある怪獣。
 本来の彼よりも十数倍強い彼がテレビ中継されてしまったため、出来る自分を舎弟たちに演出し続けなければならなくなった。それに悩んでその日同じシーンに出現した桃白白に助言を求めると、答えは修行するしかないという者だったので、渋々修行する事にした。

 映画の撮影が終わった後は、ゲロから紹介された元GCGの隊員が開いたジムでトレーニングに励んでいる。
 なお、何故チューボに相談しなかったのかと言うと……試合開始直後にトワに操られたため、ギランにはチューボと戦った記憶がなく、彼に対して親しみも何もなかったためである。



・『桃白白VS復活のピッコロ大魔王 炎の涼景山』

 この年の大ヒット映画。一部の評論家からは「演技力に難がある演者がちらほらおり、アクションシーンの派手さと知名度のある武闘家を起用しただけのB級映画。もっとプロの俳優や女優を起用するべきだった」と酷評する者もいる。

 しかし、逆に「ピッコロ大魔王の正体が宇宙人だったなど、伝説を大胆に改変したオリジナリティのあるストーリー」や、「激しいアクションシーンを撮影できる実力も演者の力とするなら、彼ら以上のプロはいない」と称賛する者もおり、芸術的評価は両極端。

 だが大衆からは大人気で公開期間の延長が決定され、グッズ販売も大好調だった。



 N2様、ロイク様、路徳様、あいのる様、虚気様、ヨシユキ様、PY様、変わり者様、黄金拍車様、カド=フックベルグ様、SERIO様、酒井悠人様、ヒロシの腹様、 竜人機様、クラスター・ジャドウ様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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