ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
「なんか、変な感じだね」
「変な感じどころか、オラ、おっかなくなってきたべ」
「え、実験の前はあんなに楽しそうにしてたのに? 星に囲まれるなんて宝石のプールみたいでロマンチックだべ~って」
「や、やめてけれ、ギネさん。だって実際泳いでみたら暗くて広くてフワフワして、地球を見てねぇとどうにかなっちまいそうだ!」
「落ち着きなって。大丈夫だよ、これくらい」
そう話すギネとサンが何をしているのかと言うと、宇宙遊泳である。宇宙服も酸素ボンベも命綱すら無しで。ただ、通信機であるスカウターは装着しているが。
普通の人間なら……サイヤ人でも宇宙空間に出れば死んでしまう。まあ、サイヤ人は地球人よりは耐えられるかもしれないが、真空状態に耐えられる生態はしていない。
しかし、フリーザの細胞を移植した人造人間5号のサンと6号のギネなら難なく耐えられる。
『あー、二人とも、慣れたら模擬戦を開始してもらえるかね? ああ、もちろん地球へ気功波を落とさないように』
今回の実験を兼ねた訓練は、宇宙空間での活動と戦闘である。
なお、儂は生身の人間なので、地球の静止軌道上に浮かべてあるGCコーポレーションの宇宙ステーションから二人に指示を出している。
「そんなこと言われても、オラ達自身が地球へ落ちちまったらどうするだ!?」
『舞空術で飛べば問題無いはずじゃよ。方向感覚を失いやすいだろうから、注意するように』
二人の力なら、大気圏に生身で突入しても、意識があれば舞空術で宇宙空間へ戻ってくることができるから、そう怯える必要はないはずなのだが。
「爺さん、サンが宇宙に慣れるまで実験は待ってもらっていいかい?」
『そうじゃな。今日は無重力空間での移動に慣れる事を優先しよう』
ギネは戦闘員だった時、星から星へアタックボールで旅した経験から、宇宙に慣れている。しかし、サンが彼女と同じように慣れるにはもう少し時間が必要なようだ。
まあ、それも貴重なデータだ。今後に生かせるだろう。
『そう言えば、戦闘服はどうかね? 宇宙空間で凍ったりはしていないね?』
「大丈夫だよ。凍るどころか地上と同じように伸びるし」
ついでに、戦闘服の宇宙空間での着心地の実験も行っていた。
その頃、地上ではギネについて来た孫悟飯と悟空が双子と出会っていた。
「へへっ、おめえ達、オラとターレス兄ちゃんみたいにそっくりだな」
「ああ、俺達は双子だからな」
「双子じゃないお前がターレスそっくりなのが驚きだよ」
「もしかして、実はターレスじゃないだろうな?」
「オラ、孫悟空だ。ほら、髪形が違うだろ?」
「いや、その前に肌の色だろ」
「それに、よく見ればターレスより少し背が低いな」
悟空は初めて17号……ラピスと会った時、18号……ラズリとそっくりである事に気が付き、嬉しそうだった。おそらく、二人が自分とターレスと同じようにそっくりである事で親近感を覚えたのだろう。
「双子か~、それでどっちが姉ちゃんでどっちが妹なんだ?」
「おい、俺は男だぞ」
「ええっ!? じゃあ、二人とも男なんか!?」
「ちょっと待ちなよっ、なんであたしまで男だと思うんだ!? あたしは女だっ!」
「ええっ!? おめえ達そっくりなのにラズリは男じゃなくて女で、ラピスは女じゃなくて男なんか!? オラ、訳が分かんねぇぞ」
しかし、ラズリとラピスの性別の事で悟空は困惑してしまったようだ。元々男女を見分けるのが苦手である上に、ラピスとラズリは外見がそっくりでまだ今年十歳になる少年と少女だ。ラピスはまだ声変わりをしていないので、間違えても無理はないが。
「俺はお前が何を言っているのかが分からないぞ」
「……そう言えば、昔はあんたみたいに勘違いされる事があったような気がするよ」
実際、悟空以外にも間違えた者がいるらしい。もしかしたら、ラズリが服を欲しがる理由の一端は性別を間違われる事が子供心に嫌だったからかもしれない。
「じっちゃん、そう言うもんなんか?」
「そういうものじゃ、悟空。こうして自分の目で見て、頭で悩み、考え、学んでいく。これもまた武術じゃ」
「おう、わかった! ラズリが女でラピスが男、これでいいんだな!」
「「だから、そうだって言っているだろう」」
原作開始約三年前の春、孫悟飯もカメハウスで暮らす不死鳥も死んでいないが、フリーザ軍やスラッグが地球に来襲したり、ドクターウィローが目覚めたりと言った原作の流れが大きく変わる気配もない。
まあ、三年後の夏にブルマが夏休みを利用してドラゴンボール集めをするか分からないのだが。ブルマは既に高校の卒業資格を取得しているが、まだ大学には進んでいないし。
なお、姉のタイツは大学生である。単位制なので、のんびりと卒業まで過ごすつもりらしい。
「やれやれだ。武術も教えてもらって、少しは男らしくなったつもりなんだがな。それとも、ラズリも武術を始めたから差が出てないからか?」
「あたしだって空を飛んだり光線を撃ってみたりしたいからね。……年下のブルマに守られてばっかりじゃ格好がつかないし」
「ラピス、気にする事ない。僕も時々間違えられる」
「チャオズ……お前はその着ぐるみのせいだろ」
パンチー夫人に買ってもらった白いアザラシの着ぐるみのような服を着ているチャオズに慰められても、ラピスはあまり喜べないようだ。
「そういえばおめえ達、病気じゃないんか?」
「ああ、病気だ。でも、発病するまでは健康体だから大丈夫なんだとさ。だよな、爺さん?」
「うむ、天才科学者の儂が保証しよう」
ラピスとラズリは遺伝性の心臓病を抱えているが、発病するその瞬間まで心肺機能に異常は見られないので、激しい運動をしても悪影響はない。
まあ、スーパーサイヤ人化したり気功砲を撃ったりすれば分からんが、それ以外なら問題ない。
心臓は筋肉で出来ている鍛えられる臓器なので、むしろ運動をした方が発病した後死に至るまでの時間を延ばせるかもしれない。
そのため、ラピスとラズリはGCG鶴仙流の訓練を受けていた。もちろん、まだかなり初歩的なもので武術の訓練と言うよりスポーツと評した方が良いだろうと言う段階だが。
そう言えば、今日は原作ドラゴンボールZではなかった悟空とラピス(17号)との会話が起きた貴重な一日かもしれない。
そんな事を西の都で儂の本体が思っている時、ドクターフラッペに扮してレッドリボン軍に潜入している儂の分身は大きな出来事に遭遇していた。
お求めの人造人間の素材にできそうな死体が手に入った。そう報告を受けた儂は最初訝しく思った。
ならず者傭兵団のレッドリボン軍だが、毎日他の勢力や傭兵団と争っている訳ではない。ドラゴンボール探し等の目標がない今は、勢力圏内の見回りや兵の訓練を行う時間の方が多い。
もしくは、メインスポンサーのギョーサン・マネーの護衛や、彼の要望で軍事パレードを行う等の平和的な仕事に従事している。いずれも、人が死ぬような仕事ではない。……儂の前世が生きた地球では訓練でも死ぬときは死ぬが。
「はて? どこかの鉄砲玉が返り討ちにでも遭ったっぺか?」
「見ればわかる。さっさと引き取ってくれ」
そして儂を案内しているのは、虎の獣人のイエロー大佐だ。彼はこの時期から大佐だったらしい。そして案内された部屋で、冷凍保存された三人の遺体と資料を渡された。
「うちのシマで起きた銀行強盗で出た死人だが、その中の一人が天下一武道会の出場者だと気がついたんでな。残りの二人は、銀行強盗と巻き込まれた観光客だが、まあついでだな」
「ほほぅ、これは興味深いっぺ」
儂は平静を保つのに、多大な努力を強いられた。何故なら、遺体になってしまった三人全員に見覚えがあったからだ。
それはランファン、青髪のランチ。そして大人になったブルマ……ではなくマロンだった。それぞれ名前や特徴が同じだけのそっくりさんである可能性もまだこの時はあったが。
資料とイエロー大佐の話によると事件の概要は、まず金髪の女強盗が金を奪うために銀行に現れた。そして、偶然居合わせたランファンがそれを取り押さえようとしたが、突然女強盗の髪が青色になったかと思ったら彼女が持っていた銃が暴発。女強盗自身に、彼女を取り押さえるために近づいていたランファン、そして運悪く居合わせた女性観光客に銃弾が当たり、三人とも死亡してしまったようだ。
……うむ、マロンはまだ分からんが、ランチは本人のようだ。銀行強盗をしに銀行に入ったが、肝心な時にくしゃみをして金髪ランチから人格が変わってしまい、驚いた青髪ランチが銃を暴発させてしまったのだろう。
ランチとマロン(仮定)の年齢が原作とは違うが、この歴史では儂がきっかけでタイツとブルマの年齢がずれている。同じような事が彼女達にも起きたのだろう。両親が出会う時期が早まったとか。
生まれる時期が十年以上遅れたタイツに比べれば、原作より数年早く生まれる程度なら十分あり得る。
しかし、何故レッドリボン軍の勢力圏にランチは来たのだろうか? ランファンは武者修行をしていたはずだから、偶然この辺りを通りがかっても不思議ではない。マロン(推定)も、刺激を求めて等そうした理由で観光に来ても不思議はない。この辺りはギョーサン・マネーとレッドリボン軍が幅を利かせているので、レッドリボン軍の兵士が起こすトラブル(強引なナンパ、喧嘩騒ぎ、店に対するツケの強要等)以外では意外と治安が良いのだ。
不可解なのは、そんな場所でランチが銀行強盗を働こうとした事だ。
「この女は銀行強盗だそうだっぺが?」
「ああ、調べてみたら金髪だった時は、『いただき』ランチって女強盗に似ているって言ってる奴がいたぜ。だとしたら、多分GCGの奴らのせいで仕事がし辛くなったから都からこの辺りに来たんだろうな」
イエロー大佐の推測を聞いて、儂は思わず自嘲的な笑い声を漏らしそうになった。
「なるほど、彼女達もドクターゲロの犠牲者と言う事だっぺか」
言われてみれば確かに、金髪のランチは悪人側だった。原作で悟空やクリリンと遭遇した時も、強盗か何かをして警察に追われて逃走していた。
街の治安を良くすれば、彼女が逮捕される事や……GCGがいない場所に移動する事は十分考えられた。
この分だと、原作では荒野で盗賊をしていたヤムチャも危ないかもしれんな。今までは前もって探し出そうとしていなかったが、所在を調査するべきかもしれない。
「犠牲者? ガハハハハ! たしかにその通りだぜ!」
儂が彼女達を犠牲者と評した事が、イエロー大佐の笑いのツボを刺激したらしい。しかし、儂は自分で言ったほど自分が悪いとは思っていなかった。
生きる事とは、それだけで他者に多かれ少なかれ迷惑をかけ、損をさせる事だ。
ある人物が生きているだけで、他の人が就くかもしれなかった仕事を奪ったり、他の人が当たったかもしれない抽選に当たったり、他の人が食べたかもしれない食べ物を口にする。
そのある人物が、どんなに善人であったとしても、そのつもりが無かったとしても、人間が生物である以上それは必然なのだ。
儂が再生医療を発展させた事で、割を食った医療関係者は少なくないだろう。
GCGが治安を良くした事で、悪事がし難くなった悪人はランチ以外にもいるはずだ。罪なき人々を喰い殺そうとして返り討ちに遭った魔族や、刑務所行きになった犯罪者は数えきれないだろう。
儂らが天下一武道会に出たせいで本来の歴史で優勝するはずだった者や活躍するはずだった者が、予選で消えていったかもしれない。
エネルギー問題を解決したせいで、他のエネルギー関連企業は脇に追いやられた。
例をあげればきりがない。そして、それを気にしていたら何も……自害する事すらできない。そして何を言いたいのかと言うと……結局は自分の思うように生きるしかないのだという事だ。
そして儂は、彼女達が死んだ事に対して好んで罪悪感を覚えているので、好き好んで自分なりの償いをする事にしよう。
「天下一武道会の本戦出場者に、名の知れた犯罪者なら素体には十分だっぺ。イエロー大佐、三体とも引き取らせてもらうっぺ」
それに、儂はドラゴンボールと言う作品やそのキャラクターが基本的には好きなのだ。もちろん、儂自身がこの世界の住人になった以上、フリーザのようにこの世界で生きていくのに放置すると危険すぎる存在は除くが。
「三体ともって、この旅行者もか? 軽く調べたが、ただの小娘だぞ?」
「実験台にはもってこいだっぺ。それにただの小娘を超強力な兵器にできれば、私の科学力の証明になるっぺ」
「そうかい。……おいっ、この遺体を運べっ!」
「はっ!」
こうしてイエロー大佐の部下に遺体を運んでもらい、儂は新たな人造人間の素体を手に入れたのだった。
レッドリボン軍のドクターフラッペの研究室に運び込んだ三人の遺体を、儂は精巧な偽物を作ってさっそく入れ替えた。クローンだと閻魔大王から苦情が入るかもしれないので、ドクターフラッペの変装キットのマスクと同じ技術を使って作った人形である。
本物そっくりとはいえ人形だが、冷凍庫から出して解剖でもしない限り分からないはずだ。レッドリボン軍の兵士はフラッペの事を気味悪がって近づかないから、大丈夫だろう。
それに、フラッペの人造人間開発はレッドリボン軍からの正規の仕事ではない。兵器の開発を行う余暇で進める、フラッペ個人の趣味という扱いだ。
なので、研究開発の過程を報告する義務はない。それでも口頭で「どうなっている?」と聞かれるだろうが、書類にして提出しなければならないわけじゃない。余ほど怪しい行動をしない限り、ばれないだろう。
そしてランファン、ランチ、マロン(推定)の遺体を秘密研究所に運び、保存用ポッドに入れて中を保存液で満たす。もちろん、遺体の損傷を再生させる薬剤を注入し、縫合できる傷は縫合してからだ。
「さて、三人の状態は……」
改めて三人の状態を確認すると……ランファンは眉間に一発銃弾を受け貫通。しかし、幸いなことに脳の損傷は運動機能だけを司る箇所だけなので、人造人間化した時に人格や記憶に影響が出る可能性は低いだろう。
問題の運動機能は、再生剤で脳組織を再生させれば回復するはずだ。
次にランチ。彼女の死因は驚いて暴発させたマシンガンの跳弾によって負った傷による出血性ショック死。運悪く弾丸が動脈を傷つけていたのが致命的だった。
これも人造人間化に問題はない。
そして最後にマロン(仮定)だが、見た目は彼女が一番派手にやられている。青髪ランチがマシンガンを暴発させたため、いくつもの銃痕が残っている。しかし、それらは主に胴体なので人造人間化には問題は……いや、地味にあるな。
「心臓の損傷が大きいな。修復剤で治るかは五分五分と言ったところか……まあ、心臓をクローニングすれば問題ないが……いや、これもいい機会だ。永久エネルギー炉で動く人工心臓を生体部品で作るとしよう」
マロンにラピスとラズリの実験台になってもらう訳だ。永久エネルギー炉をいつまでも未完成のままにするわけにはいかないので、二人の事が無くてもいつかは必要な事だったが。
「さて、そうなると人造人間7号を誰にするかだが……」
三人の遺体を眺めながら儂はしばらく迷った。永久エネルギー炉を完成させてから改造する必要があるマロンが、三人の中で最後なのは決まった。なので、問題はランチとランファン、どちらを先に人造人間にするかだ。
実は、この三人は原作キャラだが登場しなくても問題の無い登場人物に相当する。
ランファンは原作では天下一武道会に出場し、相手選手に色仕掛けを行ってジャッキー・チュンを興奮させ、その様子を見たヤムチャに彼の正体が亀仙人ではないかと疑念を抱かせるという役目がある。しかし、この歴史の亀仙人がジャッキー・チュンと偽名を使い変装してまで弟子に「上には上がいる」と教えようとするかは、疑わしい。
次にランチは原作の中では三人の中で最も出番が多いが……彼女がいなければ詰む展開と言うのは無い。悟空とクリリンが亀仙人に弟子入りした後の家事については、必要なら我が社のお手伝いロボットを一機リースすればいい。
劇場版『魔神城の眠り姫』でも、ランチがいなくても悟空とブルマが原作より強ければ問題ないだろう。特に、ブルマは超能力まで使えるので原作のように捕まっても自力で脱出できる。
さらにマロンだが、彼女は原作キャラと言ってもアニメオリジナルキャラクターだ。そのため、本当にいなくても問題ない。クリリンの青春が寂しくなるが、それぐらいである。
そのため、「いつまでに人造人間化させなければならない」といった時間的な縛りはない。そうなると……やはりランファンだな。
三人を素材として比べると、最も興味深いのがランチだ。多重人格は科学的に説明が付くが、人格が変わる事で髪の毛の色まで変わるのは何故なのか? かなり興味深い。なので、調べる時間が欲しい。
「では、君が人造人間7号だ、ランファン」
儂はさっそくランファンの細胞をベースに、B細胞と永久エネルギー炉を作るための生体パーツを作り始めた。
儂がランファンを人造人間7号にすると決めた後も、時間は過ぎていく。
まず、占い婆から修行先を紹介してほしいと打診された。
「……武道を始めるなら、アックマンか実の弟に相談されてはどうですかな?」
「ちゃうわ。武道ではなく、超能力の方じゃ。ほれ、ヤードラットがどうとか言っておったじゃろ?」
どうやら、占い婆は儂等の会話からヤードラット星人の事を耳に挟んでいたらしい。
「しかし、何故修行しようと思ったのですかな?」
「死者を一日だけ現世に戻す力を高めたくてな。ゲロ、お前にとっても利益のある話じゃ。当然協力してくれるじゃろう?」
どうやら、占い婆はバーダックチームとベジータ王が気に入ったらしい。あくまでも、ファンが格闘技の選手に向ける好意としてだが。
それで、彼らの戦いをまた見たくなったそうだ。
「分かりました。では、紹介料代わりに一仕事頼めますかな?」
そうして、あの世にいるランファン達三人に連絡を取ってもらった。人造人間にして生き返す事への同意が欲しかったのと、マロン(推定)が本当にマロンか確かめたかったからだ。
ランファンとマロン(推定)は天国に、ランチは地獄にいたそうだ。ランチはともかく、ランファンとマロンの二人は儂が人造人間に改造しようとしている事に閻魔大王が気づいて、肉体を与えてあの世に留めてくれたらしい。
閻魔大王には今度、菓子折りを供えさせてもらおう。
「お主、あの娘っ子達を本当に人造人間にするつもりか?」
そして、戻ってきた占い婆にそう言われてしまった。
「何かありましたかな?」
「あったとも」
そうして占い婆は、三人にそれぞれあった時の事を話してくれた。
まず、ランチは会った時は青髪状態で結果的に殺人を犯してしまった事を大いに反省している様子で、人造人間化の打診についても「私のような者が生き返っていいんでしょうか?」と殊勝な態度だったという。
占い婆もその様子に同情していたが、次の瞬間ランチはくしゃみをして金髪に変化した。
「おい、婆っ! ゲロって爺に伝えろっ、どんな事をしてもいいからあたしを生き返せっ、でないとぶっ殺すってな!」
占い婆の胸倉を掴み上げてそう脅してきたそうだ。通りがかった鬼が助けに入るまで、放そうとしなかったらしい。
「なるほど。どんな改造をしても構わないと……」
「あの娘は『自分』にどんな事をしてもいい、という意味で言った訳ではないと思うが……いいぞ、思う存分やってやれ。
それで天国にいた二人の方じゃが……ほれ、要望書じゃ」
そして天国のランファンとマロン(推定)は、占い婆にいろいろ言ったそうだ。
占い婆はランファンとマロン(推定)が二人一緒にいる時に出会い、人造人間化について話をした。それで、ランファンは当初生き返れるなら人造人間でも何にでもなると言っていたらしい。
「でも、生き返してくれるなら体の傷もちゃんと消してもらえると嬉しいわ。だって、傷痕が残ったら水着になれなくなっちゃう」
と、マロンが言い出した。それからも見た目をあまりごつくしない事だとか、ついでに黒子を取って欲しいとか、永久脱毛とかオプションはあるかと、色々聞いて来たそうだ。
「それにランファンも触発されて、それぞれ要望書を出してきたという訳ですか」
「ああ、まあ儂が代筆させられたのじゃがな」
「それは手間をかけました。まあ、外見を整えるのも重要ですが……傷跡を消すだけならともかく、まさか永久脱毛や豊胸手術を要求されるとは」
まあ、要望書の最後に「後はお任せします」と書いてあるので、尻尾が生えるくらいなら構わないという事だろう。
それに、占い婆から聞いた様子から考えると、マロン(推定)はやはり本人だろう。性格がそれっぽい。
その後、約束通り占い婆を瞬間移動でヤードラット星に連れて行き、紹介したのだが……。
「うん、わかった。ゲロ君もついでに修行を付けてあげよう」
何故か儂もヤードラット星人の長老、ピバラ様の修行をする事になった。
「いやいや、儂は別に……」
「昔は基礎だけ教えたけれど、いつの間にかスピリットパワーにだいぶ目覚めてきたようだから、極めるのはまだ無理でも次の段階に進む事ぐらいは出来るよ。
忙しいなら、分身を一人置いていきなさい」
そう言われて興味を覚えたため、四身の拳で作った分身をヤードラット星に一体配置する事にした。
すると、4号もヤードラット星で修行したいと言い出した。4号はサンとギネにあっさり追い越された事を、気にしていたらしい。
「私はドクターによって初めて創られた、初の人間ベースの人造人間です。将来的に、最新式の人造人間に追い付けなくなることは覚悟しています。しかし、それと諦める事は別の問題です」
と、旺盛な成長意欲を見せてくれた。ヤードラット星人も感心して「うん、二人見るも三人見るも同じだから、君も来なさい」と4号にも修行を付けてくれることになった。
ただ、その後ナメック星で最長老に潜在能力を起こしてもらったタイツ、それにブルマとチャオズもヤードラット星での修行に加わったが。
十三歳になって大人っぽくなったタイツと、九歳になったブルマと八歳になったチャオズは来年の天下一武道会でそれぞれ二回戦進出と本戦出場を目指しているらしい。
「来年はお爺さんにも負けないんだから!」
「あー、すまんがタイツ、儂は来年の出場を見送る予定でな。前の大会のように試合に介入しようとする者がいないか、警戒せねばならんからな。それに、客人の引率もある」
歴史改変者が再び現れた時のために、儂は警戒に専念する予定だ。……今の儂が歴史改変者を直接どうこうする事は出来ないが、前もって存在を確認し、気を感知できれば今後に活かせる。……存在を確認出来た場所で、抜け毛や皮膚片を採取できれば、人造人間にも活かせるかもしれんし。
それに、タイツには言えないが儂の四分の一がドクターフラッペをしているので、出場しても全力が出せないという理由もある。
「そうなの? じゃあ、決勝まで行ける確率が少し高くなったってことよね!」
しかし、タイツに武道会でリベンジできない事を残念がる様子はなかった。彼女にしてみれば、儂との手合わせはいつでもできるから、天下一武道会での試合に拘る必要はないという事なのじゃろう。
ちなみに、儂等がヤードラット星で修行している間も、他の者達は地球の神様の神殿やナメック星での修行を続けている。ブルマと同じく九歳になった悟空とチチは、やはり天下一武道会出場を目指しているし、天津飯も地球の神様の神殿での修行を仕上げにかかっているらしい。
桃白白やアックマン、チャパ王も追い込みにかかっている。サンとギネは言うまでもない。
なお、チューボは「そろそろ本業に戻りたいので」と言う理由で、今回は出場しないそうだ。会場全体の警備等仕事は山積みじゃから仕方ない。それに、チャパ王とは神殿で何十回と組手をしたので、それで満足したのだとか。代わりにGCG期待の新人、ナムを推したようだ。
亀仙人と鶴仙人も、「毎回出ると有難味がなくなる」と言って、牛魔王は農園の宣伝にはサンとチチで十分と言う理由で、孫悟飯も孫の成長が見たいと、それぞれ今回は観戦に回るようだ。……歴史改変者に対する警戒、というのも考えての事だろう。
また、4号は前回大会優勝者として、今大会優勝者とのエキシビジョンマッチを行うことになった。そのため、決勝戦で今大会の優勝者が決まるまで出番はない。
「だからこそ必死です。強くならないとサンやギネにあっさり負けてしまいますからね」
義理の妹達の成長は嬉しいが、ただ敗れ去るだけではあまりにも寂しい。4号が新たにヤードラット星で修行を望んだ理由の何割かは、それのようだ。
その代わりにという訳ではないが、ナメック星人から代表選手が一人出る事になった。バーダックチーム+α相手に同じチームで戦ったツムーリではなく、悟空達とよく遊んでいた若い世代の戦士タイプのナメック星人だそうだ。
実力的にはツムーリより少々上なので、ギネやサンと当たれば本人にとって良い刺激になるだろうと言っていた。
また、今回の大会ではナメック星人達が十数人観戦に来る予定だ。なんでも、試合の内容もそうだが武道大会自体に興味があるらしい。
おそらく、ナメック星で腕比べを行う大会を開く時のために参考にしたいのだろう。
地球人同様に気の制御が技術として伝わっており、再生能力が高く寒さにも暑さにも強い頑健な肉体を持ち、五感も鋭いナメック星人が、原作でネイル以外は戦闘力3000程の龍族の若者しかいなかったのは、環境の問題が大きいはずだ。
異星との交流がなくなったうえに、天下一武道会等強さを競う場がない。その結果、強くなる目標がナメック星人達の中からなくなってしまった。スポーツで例えれば、甲子園やインターハイ等の全国大会やオリンピックのような国際大会がなくなったのと同じ状態だ。
これでは、ある程度以上強くなる必要を感じなくて当然だろう。
また、技の創意工夫を行う意欲も薄くなる。しかし、占い婆の宮殿でツムーリが戦った時の映像を持ち帰り、それを見て刺激を受けたナメック星人達の間で技の開発がちょっとしたブームになっているらしい。
今回地球に来たのも、その影響で地球に対する興味が湧いたからだろう。
なお、彼らの引率は地球の国王から特別宇宙外交大使の位を授かった、儂の仕事だ。……いや、本当に儂は外交とかビジネスとか、そんなつもりはなかったのだが。
ナメック星人もヤードラット星人も、国という感じのコミュニティではなかったからなー。
そんな言い訳はともかく、年が明け春になり、天下一武道会の開催が近づいて来た。
・宇宙遊泳
無重力空間で殴り合いながら高速移動って、ドラゴンボールは地味にすごい事をしているなと、ふと思いました。
無重力状態で殴り合いなんてしたら衝撃でお互いに吹っ飛ぶし、気弾を放ったら衝撃でやっぱり自分も後ろに吹っ飛ぶでしょうし。
おそらく、飛行術を応用して姿勢制御を行っているのだろうなと思いますが。
・ゲロ
今、地球で最も忙しい天才科学者。この年は殆どの時間を四身の拳で四人に増えて過ごしており、本人と分身の一体がGCコーポネーションやナメック星に、更に二体目の分身がドクターフラッペに変身しており、そして最後の分身はヤードラット星で修行している。
・イエロー大佐
レッドリボン軍所属の虎の獣人。原作では聖地カリンでボラにドラゴンボールを渡すよう迫り、ウパを人質に取ったが、孫悟空の介入によって倒されてしまった。
階級は、この世界でも既に大佐。戦闘力は6から7(常人の内だが優秀な格闘家レベル)だと思われる。
・ランファン
前大会後、トワに強化されたのを自分の隠れた実力が発揮され結果だと勘違いしたまま、大会終了後に武者修行の旅に出た。しかし、その途中で辺境の街の銀行に立ち寄った際に銀行強盗に遭遇。
強盗犯は銃を持っているけど一人だし、強い格闘家の自分なら事件を解決できると挑んだ結果、強盗犯(ランチ)が突然銃を暴発させ、その銃弾が偶然眉間を貫通した事で死亡。
彼女が死んだのがレッドリボン軍の勢力圏の街の銀行だったため、遺体は彼女が天下一武道会出場者だと気づいた兵士によってイエロー大佐に報告され、ドクターフラッペ(ゲロ)の手に渡った。強盗犯(ランチ)と流れ弾で死んだ観光客の女性(マロン)の遺体もついでに。
ランファンが死んでいなかったら、二人の遺体は通常通りに処理されフラッペ(ゲロ)の手に渡らなかった可能性もある。
本人は死後天国におり、ほぼ同時に死亡したマロンの近くにいた。そのため占い婆の話をマロンと同時に聞き、人造人間に改造される事を了承した。
現在人造人間7号に改造中。
・ランチ
GCGのせいで都会では仕事(犯罪)がやり難くなったので、GCGの手が及ばない辺境のレッドリボン軍の縄張りで銀行強盗を実行した行動力溢れる「いただき」ランチさん。
しかし、行員に金をバックに詰めさせている間にくしゃみをして青髪の方に人格が変わってしまう。その拍子に背後から不意を打とうとしたランファンの攻撃を偶然回避。しかし、それに驚いて手に持っていた銃の引き金を引いてしまい、暴発させてしまう。それによって彼女本人とランファン、マロンの三人が死亡してしまった。
死後は青髪状態のまま地獄にいて反省していたが、話をしに来た占い婆の前でくしゃみをした事で金髪に変わり「絶対に自分を生き返せ!」とゲロに伝えるよう脅した。
原作では初登場時十七歳ぐらいだったらしいが、この作品では初登場時の約三年前の段階で、原作と同じくらいの年頃(十六~八歳)だった。おそらく、バタフライエフェクトでタイツやブルマとは逆に原作より早く生まれたと思われる。
なお、この作品のランチは魂が金髪と青髪と二つあるのではなく、一つの魂に二つの人格が宿っているとします。また、それは何らかの特異体質によるものであるとします。髪の色まで繰り返し変化する事が、精神的な理由だけとは考えにくかったので。
人造人間化はランファンの次の予定。
・マロン
スリルを求めて普通の観では訪れないような辺境の町に訪れたら、銀行強盗に偶然居合わせ運悪く死んでしまった大人になったブルマに似ている女性観光客。
彼女が胴体に銃弾を受けているのは、前天下一武道会本戦出場者のランファンが銀行強盗(ランチ)に背後から攻撃を仕掛けようとしたのを見て、思わず「やったーっ、これで助かる!」と身を起こし、その直後に銀行強盗(青髪ランチ)が銃を暴発させたため。
脳は無傷だったが心臓に大きな損傷を受けていたため、人造人間化は三人の中で最後になる予定。
死後は、通常なら特に善行も悪行も積んでいないため、すぐ(だいたい一年後には)生まれ変わるはずだったが、閻魔大王が彼女の遺体がゲロの手元にある事に気が付いたため保留に。それで大きな悪行も犯していないのに地獄で待たせるのは酷だから、天国で人造人間になるまで待たされることになった。
占い婆から人造人間化の話を聞いた時は、まず傷跡を完璧に消して元通りにする事を要求。
それは占い婆も理解したが、「ゲロってあのGCコーポレーションの会長の? じゃあ、ついでに色々頼んじゃえばお得よね!」と考え、黒子の除去や永久脱毛などの美容整形を要求した。……ちなみに、豊胸手術は彼女の要望ではない。
宇宙人の細胞を移植される事については、実は詳しく説明を受ける前に占い婆の話を遮って上記の要求を口にして話続けたため、あまり聞いていないし頭に残っていない。
説明書も渡されているが、多分読まない。
・スピリットパワー
以前いただいた感想で、「多分出さない」と返信したな。あれは結果的に嘘になった。すみません。
当時のプロット(一号)では、今頃とっくに原作に突入してサイヤ人襲来編に入っている頃で……つまり、プロットが代替わりして話が先延ばしになると同時に、ドラゴンボール超のコミックでスピリットパワーについて想定していたより早く明らかになったので、作品内に登場させることにしました。
・レッドリボン軍の勢力圏
辺境のいくつかの町や村を牛耳っている。ただ村長や町長、自治区の王様等公的な立場ではなく、「西部劇の町を支配するギャング」のように、彼らの支配は公然の秘密。表向きには公的な町長や村長、役人や警官が存在する。(ただし、全員レッドリボン軍と癒着している)
ただそれらの町や村では警察が頼りにならないため、レッドリボン軍が治安を維持し、魔族や(ランチのような)流れの犯罪者から住民を守っている。……警察が頼りにならなくなった大きな原因はレッドリボン軍なのだが、結果的に彼らの勢力圏では必要悪と化している。
路徳様、末蔵 薄荷様、ステルス兄貴様、KAIN様、あいのる様、PY様、匿名鬼謀様、酒井悠人様、変わり者様、椋鳥様、KJA様、ひね様様、カド=フックベルグ様、Othuyeg様、ソフィア様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。