ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

33 / 143
33話 第24回天下一武道会 衝撃の獅子牙流! スーパーギラン!

 半年程のヤードラット星での修行を一先ず終えた儂等は、地球に帰還した。

「まだ修行は半ばだから、まとまった時間が出来たら来るんだよ」

 とピバラ様に言われて。どうやら、儂等は原作ベジータ程の才能はなかったらしい。そう思っていたら、ヤードラット星人のピバラ様はすぐに否定した。

 

「君達全員に向き不向きはあるけどそれぞれ才能はあるよ。だけど、それぞれの理由で才能を活かしきれていないだけさ。

 まずゲロ君、君は頭で考えすぎる。君の場合は、武術の才能やセンスの無さを頭で補ってきたようだけど、それがスピリットパワーを扱う際には邪魔になっているんだ」

 と、助言を受けた。前にも似たようなことを言われた気がするが……。

 

「ヨン君、君も生みの親に似て考えすぎる傾向がある。もっと感じるままに己を高めなさい。タイツ君とブルマ君、それにチャオズ君は、まだ大人になっていないのが一番の理由かな」

「それってどういう事?」

「スピリットパワーに、大人も子供も関係ないんじゃないの?」

 

「心と体は揃って成長していくものだよ。なに、焦ることは無い。君達のセンスは、そこのゲロ君よりずっと高いからね。特にチャオズ君、君には才能を感じるよ」

「ふふん、才能!」

「自覚はしておりますが、あまり繰り返し言われると落ち込みますな」

「良いじゃないか。君は普段から他の才能を誇っているのだから」

 

 と言う事で、儂も4号もタイツもブルマも、スピリットパワーをマスターするにはまだまだと言う段階だ。ドラゴンボール超のモロ編のように切羽詰まった状況ではないので、時間を置いて続けるとしよう。

 

 そして儂らが地球に戻り、一か月ほど過ぎた頃に天下一武道会が始まった。

 日程は前回とだいたい同じで、一日目に予選、二日目に一回戦、三日目に二回戦と準決勝、そして四日目に決勝戦と三位から五位決定戦を行う。違うのは、四日目に表彰式の前にエキシビジョンマッチを行う事だ。

 

 大会の設備は大まかには同じだが、シールド発生装置の改良等細々としたところが改善されている。もっとも大きく変わったのはカメラだ。ビデオ判定用兼報道用に、スカウターの技術を応用したカメラを設置してある。これで選手が超高速で動いても、しっかり映像として残すことができる。

 ……トワが操るキリを感知するためのセンサー等を、そのカメラに紛らわせていくつも仕掛けておいた。

 

 そしてテレビでは宇宙船で地球を訪れた(と言う事になっている)ナメック星人達にインタビューしている様子や、トーク番組のゲストとして今年も出場する桃白白やサンを招き、雑誌では出場予定の有名選手の特集を組んで紹介した。

 

 そして予選当日、今回は儂や亀仙人達が出場しないと聞いて本戦出場のチャンスと見た武術家や格闘家が各地から集まり、前回以上の賑わいとなっている。

 そして、質もやはり上がっている。前回予選で敗退した選手の平均戦闘力は、小数点以下切り捨てで5。しかし、今回は6だ。

 

 数字にすれば僅か1の差だが、割合で考えれば僅か三年で参加選手の平均的な身体能力が二割増しになっている。

 これがGCGの入隊試験に落ちた者や、GCGを辞めた者達が既存の道場やジムに就職したり、自分で新たに開いたりした影響だとすれば、驚くべき速さだ。

 

 それに、前回大会でも本戦出場者以外では一人二人しかいなかった戦闘力7以上の選手も、十人程存在している。

 戦闘力で7は一般人から見れば十分に超人と呼べる存在だ。アクション映画の主人公のようなことが、現実でも出来る強さに相当するだろう。

 

 そして、そんな超人の一人が予選を勝ち抜いて本戦出場を果たした。

『ヤシシ選手、予選Iブロック勝ち抜き! 本戦出場!』

「フッ、獅子牙流師範の私なら、これぐらい当然だ」

 そう勝ち誇る拳法家の男性は、確か原作で悟空と予選決勝で当たった人物だったような気がする。原作では名前は出ていなかったと思うので、同門の似ているだけの別人かもしれないが。

 

 後の本戦出場者は全員顔見知りとナメック星からやって来た戦士タイプの青年で、番狂わせは起きなかった。

 それに会場のセンサー類とチューボ達警備員の目でも、トワ達の姿や痕跡は確認していない。一日目はひとまず平和に過ごす事が出来た。

 

 

 

 

 

 

『皆さん、待ちに待った第二十四回天下一武道会本戦を開催いたします!』

 サングラスをかけた金髪の青年実況が、高らかに開催を宣言する。

 なお、原作では悟空やクリリン達が最初に出場した天下一武道会が第二十一回だ。この差異は、GC(当時はゲロ)コーポレーションが大会のスポンサーになった事で、原作よりも早い段階で五年に一回から三年に一回へと開催時期が変更になったためだ。

 

 この歴史では、原作よりも多く天下一武道会が開かれているのである。

『残念ながらゲロ会長、亀仙人様、そして鶴仙人様は出場しておりません! しかし、その分若き選手が世界中から……いえ、遠いナメック星からも集まっています!

 お約束しましょう! 前回大会に勝るとも劣らない素晴らしい試合を皆様にお見せすると!』

 

 実況の声に応えて、観客席からは割れんばかりの歓声があがる。

「ま、まだ試合が始まっておらんのに、なぜこんなに盛り上がっているのだ? わ、我々はどうすれば?」

「長老、とりあえず地球人達の真似をするのはどうでしょう?」

「真似か。我々のせいでせっかくの大会が盛り下がっては申し訳ないからな。よし、やるぞ! ……ガンバッテ、桃白白様ー!」

「長老に続け! ……ぎらんノ兄貴ー! 応援シテマスゼー!」

「イイゾー! 早ク始メロー!」

 

 応援席のナメック星人達は、その優れた五感を活かして観客たちの歓声を聞き分けて適当に選び、真似をしていた。

「あー、別に真似はしなくても構いませんぞ。祭りを盛り上げる掛け声のようなものですから」

 そして、それをゲロの分身は遅ればせながら止めていた。

 

 なお、本物はもう一人の分身と共同で島中に仕掛けたカメラやセンサーから情報を収集して、歴史改変者等の不審人物がいないか警戒に務めている。

 

『それでは第一試合、チチ選手対ヤシシ選手!』

 武舞台に出てきた初出場の選手に観客達は様子を伺い、逆にチチへはさっそく声援を送る。

 

『チチ選手はなんと、牛魔王さんとサン選手の娘さん! 九歳と言う幼さながら、亀仙流の武術を習い日々修行に励む、天才美少女武闘家なのです!』

「そ、そっだら事言われたら、オラ照れちまうだよ~」

 実況にベタ誉めにされて、赤くなった頬を両手で抑えて恥ずかしがるチチ。観客達もそんな彼女にほのぼのとした視線を向けて頬を緩ませる。天才スポーツ少女だとか、天才少年クイズ王だとか、そうした才能ある少年少女が好まれるのは、世界共通のようだ。

 

『……ところで、その恰好はやはりご両親から?』

 なお、チチは原作初登場時の格好からヘルメットを除いた、つまりサンと同じビキニアーマーを着ていた。

「おっ父とおっ母が用意してくれた、一張羅だべ」

 屈託なく答える彼女の様子から、実況の青年は(もしかして、民族衣装とかそうした伝統的な格好なのだろうか?)と思ったが、試合前である事を思い出して口には出さなかった。

 

『対するヤシシ選手は、天下一武道会初出場ですが伝統ある獅子牙流拳法の師範代だそうです。自信のほどは如何でしょうか?』

「この私が、武術とはエンターテイメントのような浮ついたものではないと、この大会で示してごらんに入れよう」

『おおっ! 素晴らしい自信です! それでは、両者前へ!』

 

 武舞台の中央でチチと向き合うヤシシには、勝つ自信があった。

 何年か前に元GCGの隊員だという触れ込みのコーチを先代の師範が雇い、そのコーチが指示する地獄のようなトレーニングを耐え抜き、前師範を超える実力を手に入れたことが彼の自信の源だった。

 

 日々の修行は、裏切らない。それは絶対的な信念だった。それは開始の合図の前に対戦相手である自分にペコリとお辞儀をするチチを前にしても揺るがない。

 

『始め!』

「武天老師の孫弟子にあたるそうだが……なんちゅうひどい構えだ。隙だらけではないか」

 試合が始まっても、ヤシシはすぐには動かなかった。それは様子をうかがっているというよりは、彼の眼にはチチがただの子供のようにしか見えなかったからだ。

 

「私の獅子牙流がこんな小娘に負けるはずはない。よし!」

 そして、自らの勝利を確信して間合いを詰めてチチへ攻撃を仕掛ける。この時、ただの子供が自分と同じ予選を勝ち上がれるはずがない事に気が付けば、試合の展開も変わっていたかもしれない。

 

「なにっ!?」

 反応する事もできまいと思って放った彼の拳を、チチが簡単に避けたのだ。内心で驚愕しながら、足払いを仕掛ける。

 

「そっだら蹴り、当たる訳ねえべ!」

 しかし、チチの目は動揺したヤシシの動きこそ隙だらけである事を見抜いていた。足払いを軽くジャンプして回避し、逆に空中でヤシシの頭部に蹴りを放つ。

 

 子供の蹴りとは思えない衝撃にヤシシの意識が一瞬飛ぶ。だが、その間にチチは着地すると、拳を振り抜いた。

「ジャン拳、グー!」

「ぐわあああああーっ!?」

 そして、ヤシシをジャン拳で場外まで殴り飛ばしたのだった。

 

『ヤシシ選手場外! チチ選手の勝利です! いやー、短期決戦でしたが、素晴らしい試合でしたね』

「やっただーっ! オラ、勝っただよ、おっ母、おっ父っ!」

 チチは晴れ舞台での勝利を飛び跳ねて喜んだ。無理もないが、彼女は修行仲間の内では弱い方で、超能力も使えない。そのため、大人で流派の師範であるというヤシシが実力を隠しているのではないかと強く警戒し様子を見ていたのだが……その心配は杞憂だった。

 

 占い婆の宮殿で透明人間のスケさん相手に戦った時とは違い、一人で戦って勝利したこの試合の経験は、チチの中でたしかな自信となったのである。

 

 

 

『第二試合、ギラン選手対サン選手!』

 続く第二試合では、まずギランの姿を目にした観客達は……特に前回大会を観戦した者達はどよめいた。

『おおっと、ギラン選手! 前回大会や出演した映画で見せた姿とは、まるで別人のようなマッシブな身体になっています!』

 なんと、ギランがマッチョになっていたのである。

 

「フフッ、これが俺の二年間の成果よ」

 前回大会でトワによって操られキリで強化されていた間だけ気功波を撃てたギランだったが、素の彼はそんな事は出来ない。口から出せるのはグルグルガムだけだ。

 

 しかし、彼の舎弟達は「兄貴、またあれを見せてくださいよ!」とねだってくる。そんな彼らに正直に無理だと言えなかったギランは、ゲロに紹介されたジムに通いトレーニングをする事にした。

 

 武闘家ではなくゴロツキだった彼が、人生で初めて真面目に取り組んだ修行。その結果、元々素質に恵まれていた彼は劇的な成長を遂げたのだ。

 腕や脚は筋肉で太くなり、でっぷりと突き出ていた腹は引き締まってスマートに、しかし戦車のキャタピラのような腹筋で堅牢になった。……まだ気功波は撃てないが。

 

『対してサン選手は、前回大会同様の美貌を保っています! 彼女を見に来たという観客の男性陣も多いのではないでしょうか!?』

「いやだよ、実況さん。あんまり褒めねぇでけれ」

 

 逆に、サンは三年前と変わらない美貌で男性客から歓声を浴びている。……家族や恋人と観戦に来ていた者は、すぐに青くなって黙ったが。

 もちろん、着ているのも前回大会と同じビキニアーマーである。

 

『しかしギラン選手、だいぶ鍛え込んできたんじゃないですか?』

「へへ、まあな。前回一回戦で負けてから、生まれて初めて地道なトレーニングとやらを始めたのさ」

『生まれて初めて、ですか?』

「ああ、何せ俺様は生まれつき強かったからな。必要だと思わなかった。そんな俺がトレーニングによってどこまで強くなったのか……この試合で見せてやるぜ!」

 

 どこかの復活した宇宙の帝王のような事を言っているが、実際ギランは特に修行をしたわけでもないのに、喧嘩三昧の生活だけで戦闘力9と言う、地球人基準ではかなりの強さにまで至り、天下一武道会以外の大会で何度か優勝している。十分、天才と呼べる素質の持ち主だ。

 

 そんなギランが受けたトレーニングは、GCGの入隊希望者が受けるものと同じ、重りが本家より軽い亀仙流の修行である。それを生まれつき身体に恵まれた彼はあっさり耐えきり、更にきついトレーニングも成し遂げた。

 それによって得た力は、戦闘力にして90。約二年で以前の十倍強くなったのだから、誇るのも無理はない。

 

『では、一回戦第二試合……試合開始!』

「いくぜぇ!」

 その動きにも、身体能力頼みだった二年前と違い技があった。

 

「おお~っ、凄い強くなってるべ、ギランさん! 大したもんだ!」

 ジャブの連撃。翼で羽ばたくことで可能な下半身の力を使わない急バックで間合いを取ってから放つ、尻尾の横薙ぎ。さらに、翼を広げて相手の視界を塞ぎ、鋭い踏み込みからの拳の連打。

 

 だが、当然だがサンに通じるはずがない。映画撮影でギランと顔見知りだった彼女は、久しぶりに再会した親戚の子が大きく成長していたような、微笑ましい気分になりながらギランの攻撃を捌いている。

 しかしサンもただ捌くだけではなく、牽制程度に反撃もしているので観客には試合が成立しているように見えるが、彼女と向き合っているギランには手加減されている事が丸わかりだった。

 

(く、クソっ! やっぱりマジもんの羅刹女様だぜ、まるで敵わねえ! 光線が出せないままだから、こうなるんじゃねえかなって思ってはいたが……!)

 本来はそれほど無鉄砲という訳ではないギランは、必死に考えた。

 

(どうにかして、格好をつけたまま負ける方法はねぇか!?)

 自身の体裁を保つ方法を。そして、なんとかアイディアを捻りだした。

 

「俺様の必殺技、スーパーギラン砲を受けてみな!」

 間合いを取ったギランがそう叫び、大きく口を開ける。彼が気功波を撃てない事を知らないサンは、前の大会の彼の試合を思い出して、様子をうかがう。スーパーギラン砲と言う技の狙いが甘ければ避けて、そうでなければ受け止めて見せようとしたのだ。

 

(かかったっ! 恩に着るぜ!)

 

 だが、ギランの口から放たれたのは気功波ではもちろんなく、グルグルガムだった。

「な、なんだべっ!?」

 ギランのグルグルガムは前回の天下一武道会でも披露されたが、当時の対戦相手だったチューボにすぐ無効化されたので、あまり印象に残っていなかった。

 

 そのため、サンもゲロと4号以外の観客も一様に驚いた。そして、グルグルガムが気功波とは異なる軌道だったのと、この試合を真剣勝負ではなく指導の場として認識していたサンは対応を迷い、グルグルガムに巻き付かれてしまったのだった。

 

「へへ、あんたに今巻き付いたのはグルグルガム! 俺のスーパーギラン砲はエネルギーを大量に消費する(と言う設定)。一回戦で打つわけにはいかねぇからな、これで勝負を決めさせてもらうぜ!」

 そしてグルグルガムに巻き付かれたままのサンに殴りかかろうとするが――。

 

「そうだべか、なら……はあっ!」

 サンはあっさりグルグルガムを引きちぎって脱出した。ただの分泌物であるグルグルガムは、筋肉と違ってギランがいくら鍛えても丈夫にはならなかったのである。

 

(計算通りだぜーっ!)

 そして、自由になったサンに拳と蹴りを叩きこまれたギランは、「これで応援に来た舎弟共に見栄を張ったまま負けられたぜ」と安堵しながら場外へ吹っ飛んでいった。

 

『ギラン選手場外! サン選手の勝利です! いやー、ギラン選手も奮戦しましたが、サン選手の実力は美貌と違いギラン選手より大きく成長していたようです!』

 そのアナウンスを聞いたギランの顔は、どこか安らかだったという。

 

 

 

『一回戦第三試合、ブルマ選手対ムデン選手の試合です!』

 鶴仙流の胴着姿のブルマと、ナメック星人の衣装に身を包んだ若いナメック星人の青年が舞台に現れる。

 

『ブルマ選手はGCコーポレーションの社長、ブリーフ博士の次女で、タイツ選手の妹さんです。そして、既に数々の発明を成し遂げた天才でもあります!』

「ふふん、それほどでもあるわよ」

 

『そしてムデン選手はナメック星からやって来たナメック星人です! しかも、彼はなんとブルマ選手の幼馴染でもあるとか……本当ですか?』

「ええ、ブルマ姉さんやチチ姉さん、悟空兄さんやチャオズ兄さん達にはよく遊んでもらいました」

 ムデンと言う名のナメック星人は、ブルマ達がナメック星に遊びに行くようになってから生まれたナメック星人だった。彼が今回天下一武道会に出場する事になったのも、実力的に丁度いいからと言う理由以外にブルマ達の幼馴染だからと言う理由もある。

 

『ブルマ姉さん、ですか? 失礼ですが、ご年齢は……?』

「確か五歳よね」

「今年で六歳になります」

 

『ごっ!? ろく!?』

 地球人の感覚では十代後半の青年に見えるムデンの実年齢に、驚く実況の青年。彼にムデンとブルマは苦笑いを浮かべた。

 

「ナメック星人は地球人とは成長する速さが違います。特に、私は戦士タイプのナメック星人なので、大人になるのが早いのです」

「ナメック星人を紹介するドキュメンタリー番組にも、映ってたわよ。再放送する予定みたいだから、興味のある人は見てね」

 

『なるほど。では、ナメック星人に関して一つ賢くなったところで、両選手前へ! ……第三試合開始!』

 

「ムデン、ちゃんと手加減しなさいよねっ!」

「は、はいっ!」

 試合開始早々情けない事を大声で要求するブルマに、子供時代の力関係が今も有効であるため素直にうなずくムデン。実際、彼が本気を出したら一撃でブルマは木っ端みじんに爆砕してしまうので、間違ってはいないが。

 

 しかし、手加減を強く意識したムデンはブルマに攻撃を仕掛ける事が出来なくなってしまった。ブルマはそのムデンの背後に、ヤードラット星での修行で覚えた瞬間移動で移動する。

「っ!?」

 そして、動揺するムデンの肩に触れて、彼ごと再び瞬間移動をする。

 

 次に武舞台の外に現れるブルマとムデン。

「う、おおっ!?」

「あーんっ、惜しい!」

 ムデンは肝を冷やした様子で空中に静止し、ブルマは悔しそうに声をあげた。

 

 ブルマはムデンに手加減する事を強く意識させて隙を作り、瞬間移動で彼を武舞台の外に移動させた。そして、ブルマを振りほどこうとするだろうムデンの動きを予想して、その拍子に彼が場外に触れるよう計ったのだ。

 そして、ムデンは地面に触れる前に手を止める事に成功したのだ。

 

「あ、危ないところだった。ですが、もうその手は通用しません!」

 そして、そのまま自分の近くに浮かんでいたブルマを掴んでそのまま地面に押し付けようとした。だが、彼の手がブルマを掴むその瞬間に、消えてしまった。瞬間移動を行う時間はなかったはずなのに。

 

「そ、そんな!?」

 そして、今度は間に合わずムデンの手は地面についてしまった。

『ムデン選手場外! ブルマ選手の勝利です!』

 そして、ムデンが武舞台を振り返ると、そこにブルマが立っていた。

 

「お爺ちゃんの残瞬拳の応用よ。あんたと一緒に瞬間移動したのは、四身の拳で作ったあたしの分身で、タイミングを計って消したってわけ」

 なんとブルマは鶴仙流の技である四身の拳を習得し、使いこなしていた。これもヤードラット星でスピリットパワーの修行を行った成果である。

 

「なるほど……試合の相手が悟空兄さんやチチ姉さんではなく、ブルマ姉さんである事をしっかり意識して、用心するべきでした」

「ちょっと、言っておくけどズルはしてないわよ」

「もちろんですよ。おかげで自分の未熟さを知る事が出来ました」

 

 純粋な武術の試合とは言えない内容で負けたムデンだったが、悔しくはなかった。ブルマは彼女が言った通り、天下一武道会のルールを何一つ破っていない。むしろ、圧倒的に実力差のある相手に勝つために上手く立ち回ったと褒められるべきだ。

 

 そして、圧倒的に格上であるフリーザを打倒しようとしているムデン達にとって、ブルマの知恵は見習うべきものなのだ。

 

「ムデン君……そんな物分かりが良いと、悪い奴に騙されるわよ。幼馴染として心配になって来たわ」

「ブルマ姉さん、姉さんみたいに狡い人はナメック星には居ないから大丈夫ですよ」

 

 

 

『では続いて第四試合、タイツ選手対アックマン選手の試合です!』

「GCコーポレーションには借りがあるが……手加減はせんぞ!」

「別にいいわよ。あたしが勝つもの」

 

 そして始まった試合、アックマンは三年前よりも格段に強くなっていた。その戦闘力は550。三年前の彼の三倍近い。

「はっ! きえぃ! せやぁ! でえええい!」

「よっ、はっ、とうっ、てやぁ!」

 そのアックマンとタイツは正面から立ち技の応酬を繰り広げ、一歩も引かなかった。

 

「ぐおおっ!?」

 それどころか、明らかにアックマンが劣勢を強いられている。前回大会では五位決定戦にまで至った彼が、タイツの蹴りを受けて胸を抑えて後退を余儀なくされた事に、観客席からは驚きの声が上がる。

 

「逃がさないわよ!」

「ぬぅっ、しつこいぞ! があっ!?」

 そして、下がった彼の背後に瞬間移動で現れたタイツに、アックマンは尻尾を鞭のように振るって牽制するが、時間稼ぎにもならない。

 

「アックショット!」

 たまらず翼を羽ばたいて空に逃げながら、アックショットを連射して距離を取ろうとするアックマン。

「フォトンシールド!」

 タイツは足を止めて前面にフォトンシールドを展開。守りに入り、これでアックマンに体勢を立て直す時間が出来たと観客は思った。

 

「アターック!」

 だが、なんとタイツはシールドを張ったまま舞空術で空を飛び、アックマンに体当たりを仕掛けた。

「う、うおおおっ!? アックバスター!」

 アックマンはタイツに向かって大技のアックバスターを放ったが、彼女のシールドを破る事は叶わず逆に砕け散った。

 

「がはぁっ!」

 そしてアックマンはタイツに跳ね飛ばされ、観客席の前に張られたシールド発生装置の壁まで叩きつけられてしまった。

 

『アックマン選手場外! タイツ選手の勝利です!』

「ふふん、あたしだって強くなってるんだから」

 ヤードラット星での修行から帰ってきたタイツの戦闘力は、1030。三年前の彼女の五倍以上だ。アックマンが弱かったのではなく、タイツの成長が彼の実力を超えていたのである。

 

「アックマンも意地を張らないでカリン塔に登ったら?」

「くぅっ、正義の悪魔とは言え、俺が神の世話になる訳には……!」

「またそんなこと言って。カリン様も神様も気にせず来なさいって言ってくれてるんだから」

 タイツはアックマンとそう話しながら、場外に倒れた彼をサイコキネシスで控室に運んだのだった。

 

 

 

『では一回戦第五試合、チャパ王選手対ターレス選手です!』

「おい、王は止めたんじゃなかったのか?」

「師匠から免許皆伝の折に、再び名乗る事を許されたのだ」

 

『チャパ王選手は前回大会の後、なんと武天老師こと亀仙人に弟子入りし、免許皆伝を受けたそうです! それに対してターレス選手……三年前よりちょっと背が伸びましたか?』

 

 三年の修行を経たチャパ王は素人目にも風格や凄味といったものが増していたが、ターレスは当時の映像と比べると少し背が伸びた程度しか、外見に違いは見られなかった。

「やれやれ、これでも少しは背が伸びたんだがな」

 自分が十五歳以上にならないと大きく背が伸びないサイヤ人である事を知っているターレスは苦笑いを浮かべる。

 

「フッ、重要なのは身長ではなく実力だ。そうだろう?」

「違いねぇ」

『それでは……試合開始!』

 

 試合開始の合図とともに動いたのは、チャパ王だった。

「つえぃっ!」

 独特な掛け声とともに、気弾を放ったのだ。それは容易くターレスに拳で弾き飛ばされるが、そうなる事はチャパ王も分かっていた。

 

「挨拶代わりか」

「ふっ、気の感知と制御……しかと身に付けた。神殿で別れた時の私と同じとは思わぬことだ!」

 気弾や気功波を放てるようになった。それを知らしめた直後、チャパ王は鋭い踏み込みでターレスとの間合いを詰めた。

 

「八手拳!」

「チっ、いきなりか!」

 亀仙流の、そしてカリン様や地球の神様の元で修行をしたチャパ王の八手拳は、その速さも無駄の無さも、そして力強さも三年前とは別の次元に到達している。

 

 それをターレスはなんとか回避し、腕で防御してしのぎ続ける。二人の実力は三年前よりもずっと近くなっており、それだけチャパ王はこの三年で実力を伸ばしていた。

「俺もナメック星で早く潜在能力を起こしてもらいたいもんだぜ!」

 もっとも、二人の実力が近づいた原因は、ターレスがまだ潜在能力を起こしてもらっていない事も理由の一つだが。

 

「フッ、早く大人になりたいかね!? 我が修行仲間よ!」

「未成年相手に大人げないんじゃねぇか、チャパ王よ!?」

「なあに、若輩者に世の不条理さを教えるのも年長者の務めだ!」

 

 チャパ王に口だけではなく動きも合わせるように、ターレスの速さが増していく。二人の実力は戦闘力にしてチャパ王は900、ターレスは930。一般人にとって30は大きな数字だが、平均的な惑星の最強の戦士の域に到達しつつある二人にとっては、僅かな油断でなくなる程度の差でしかない。

 

 お互いに技をぶつけ合う短い、しかし濃密な時間が過ぎる。そのさなか、チャパ王の動きが変化した。

「なにっ!?」

 最初は疲れでも出たのかと思ったターレスだが、それは違った。チャパ王は舞うようなステップを踏み、それでいて無駄を削ぎ落とした洗練された攻撃を繰り出すようになったのだ。

 

 優雅な曲線の動きと、刃のように鋭い直線の動き。それを矛盾も破綻もなく同時に行う。その奇妙な動きを続けるにつれ、チャパ王の姿がぶれ始め……無数のチャパ王の幻影が現れた。

 

『こ、これは残像拳でしょうか!?』

「いや、これは亀仙人師匠の元で学んだ残像拳を私がさらに高度に昇華させた技。千手……いや、千人拳だ!」

「この動く残像のどれが本物の私か、果たして見抜けるかな!?」

「さあ、行くぞ!」

 

「クソっ、もう技じゃなくて仙術の類じゃねぇのか、それは!?」

 ターレスがそう罵るほど、チャパ王の千人拳は巧みだった。正面から間合いを詰めてきたチャパ王の攻撃を弾こうとすればすり抜けてしまい、逆に、残像だと判断したチャパ王が実は本物で攻撃を受けてしまう。

 そして反撃に転じようとしても、拳も蹴りも、そして気弾もすり抜けてしまい、本物を見分ける事が出来ない。

 

「どうした? ここまでか!?」

 そうターレスを挑発しながら、本物のチャパ王はターレスの周りで緩急をつけ舞うような動きを繰り返していた。

 実はこの千人拳で現れる無数のチャパ王は、全て残像であると同時に全て本物でもある。

 

 動く残像の正体は、残像拳の発動と残像の消去を繰り返す事で可能になる、残像拳のパラパラ漫画だ。それを行いながらターレスの行動に合わせて動き、元から残像であったかのように回避しているのである。

 それを可能にしているのが、チャパ王が地球の神様の神殿で習得した、ゲロのプラズマバーストである。ゲロが技を編み出すのを見ていたミスター・ポポから話を聞き、独学で習得したチャパ王は、それを己のスピードを強化するために使っていた。

 

 実力が近いためチャパ王とターレスが正面から戦えば、どちらが勝つか分からない。そのため、チャパ王は確実に勝つために千人拳でターレスを翻弄し、決定的な隙を生じさせ、それを突いて勝利を手にする算段なのである。

 

「見破る、ねえ……ふっ、悪いがそれは無理そうだ。だから、大雑把に行かせてもらうぜ!」

 だが、その決定的な隙を表す前にターレスは打開策を見つけた。彼は気を漲らせて球形のフォトンシールドを発生させた。

 

「まさか、守りに徹する事で凌ごうとでもいうのか?」

「いいや、こうするのさっ!」

 その瞬間、爆発したかのような勢いでフォトンシールドが膨張した。ターレスは、自分の周囲全てに向かってシールドを広げ、叩きつけたのである。

 

「くっ、しまった!」

 本人が言うように大雑把で、膨張したフォトンシールドが当たったところで大したダメージにはならない。しかし、シールドが当たった瞬間チャパ王は防御姿勢を取るために動きを止めてしまい、全ての残像が消えた。

 

「そこだぁ!」

 そして、姿を現したチャパ王に向かってフォトンウェイブを放つターレス。

「かめはめ……波ぁ!!」

 チャパ王はそれに対して、修行の末に習得したかめはめ波で迎え撃った。ぶつかり合う気功波は、直前にフォトンシールドを大膨張させるという無茶を行ったため、体力を消費していたターレスの分が悪いかに見えた。

 

「舐めるなぁ!」

 だが、ターレスはサイヤ人の底力を見せたのに対して、チャパ王は千人拳によって自覚していた以上に疲労していた。

 

「ぐっ、まだまだぁ!」

 チャパ王はかめはめ波を爆発させてターレスのフォトンウェイブを強引に散らし、プラズマバーストで強化したスピードで起死回生の賭けに出た。

 

「いいや、これでしまいだっ!」

 しかし、煙の中から躍り出たチャパ王を出迎えたのはターレスの拳だった。

 

『ワン、ツーっ、スリーっ…………テン! チャパ王選手、カウント負けにより、ターレス選手の勝利です!』

 

 そしてターレスの二回戦進出が決まったのだった。

 




〇一般人~超人

 この作品では、目安として戦闘力で10以上が超人とします。基準は初登場時の原作悟空ですが、彼と同じような動きが出来るなら、十分超人と呼ぶに値するだろうと考えます。



〇ヤシシ

 獅子牙流当主の拳法家の男性。原作コミックで悟空が予選3ブロックの決勝で戦った、No82本人。
 GCGの隊員と言う触れ込みで道場に就職した、GCGの入隊試験に落ちた格闘家のコーチによって、原作よりもだいぶ強くなり、三年早く天下一武道会に出場した。
 戦闘力は20で、マシンガンの銃弾を全て掴み取るのは難しくても、見て避ける事は出来そう。普通の天下一武道会なら、確実に優勝候補だった。

 なお、ヤシシという名前は獅子牙をGoogleで中国語に翻訳し、獅子と牙を逆にして命名した。……この話を書き終えた後、ゲームで「ランラン老師」と言う名前だったらしいことが分かったけれど、半ばオリキャラだからこのままでいいかなと思い放置中。



〇グルグルガム

 何気にこの作品では初使用。ただ、分泌物なので修行で強度があがることは無かった。
 なお、体から出したものなので天下一武道会のルールでは「道具」とは見なされなかった。原作のバクテリアンの痰等と同じような扱いである。



〇ムデン

 ブルマ達の幼馴染の戦士タイプのナメック星人。ブルマはもちろんチャオズよりも年下だが、ナメック星人であるため大人になった。
 原作アニメのナメック星編でネイルがフリーザと戦う前に、フリーザに倒された戦士タイプの戦士タイプのナメック星人を想定しています。名前は、デンデンムシをもじったもの。

 原作での戦闘力は1万でしたが、この作品では重力トレーニング室での修行や打倒フリーザと言う目標があるため現時点で2万に到達しています。

 オリジナルキャラです。



〇戦闘力の変化(今大会未出場者)

・ゲロ:5200→1万6千 ヤードラット星でスピリットパワーの修行を受けたおかげで、以前とは比べ物にならない程強くなった。なお、これは四身の拳を使っていないフルパワー時の数値。

 亀仙人:930→2200 チャパ王への指導を通じて自分の修行を見つめなおし、ベジータ王も戦士として認める強さに至った。サイバイマンよりも強く、ドクターコーチンの作った狂暴戦士に勝てるようになるまであと数歩。

 鶴仙人:700→1700 三年の修行で、サイヤ人襲来編でナッパと戦った天津飯より若干強いぐらいの実力に至った。

 孫悟飯:470→1050 修行の結果、サイヤ人襲来編でラディッツと戦おうとする悟空とピッコロの助太刀に行けるぐらい強くなった。平均的な惑星の最強の戦士と同じくらいの強さ。

 牛魔王:450→960 チチの修行を見ながら本人も修行をして強くなった。ガーリック三人衆を一度に相手にしても善戦できるはず。

 チューボ:160→750 カリン様と地球の神様とポポの修行で、地球最強の警備員に。キングキャッスルに彼が一人いれば、ピッコロ大魔王も占領する事は出来ない。



〇戦闘力の変化(大会出場選手)

・チチ:8→40 「そろそろもう少し本格的な修行に入っても大丈夫だべ」と判断した牛魔王によって、亀仙流の修行を始めた事で大幅パワーアップ。ただ、亀の甲羅は背負っていないので原作悟空やクリリンほどには強くなっていない。

・ギラン:9→90 某復活した宇宙の帝王の足元にも及ばないが、三年前と比べて圧倒的なパワーアップを遂げた。なお、二年間で90止まりなのは、ある程度強くなったところでギランがトレーニングを怠けだしたからである。まだ気功波は撃てないが、舎弟達には「あの技は体に負担がかかる、今の俺でも簡単には出せねぇ」と言って誤魔化している。
 また、舞空術は使えないが翼があるため、同じ戦闘力の者より素早く飛行できる。

・サン:2万1千→2万7千 ナメック星編のベジータ(初期)より3千強くなったサン。羅刹女役の女優として映画関係者にも知られている。

・ブルマ:7→40 鶴仙人の指導に、ヤードラット星でのスピリットパワーの修行でチチに追い付いた。超能力が使える分ギランや悟空よりも総合的には強く、多少格上の相手でも天下一武道会のルールならジャイアントキリングを狙える。
 瞬間移動や四身の拳も使えるようになった。

・アックマン:190→550 独自のトレーニングに加えて約二年前からゲロから買った重力トレーニング室での修行も行いパワーアップ。潜在能力解放も、カリン塔や地球の神様の神殿にも行っていない事を考えれば驚異的な成長率である。

・タイツ:180→1030 十三歳。カリン塔と地球の神様の神殿での修行に加え、ナメック星で潜在能力を解放してもらい、さらにおヤードラット星の修行で超パワーアップ。サイヤ人襲来編のチャオズより強くなった。
 十三歳になって、背でもターレスを超えている。

・チャパ王:900 三年前の約六倍の戦闘力。さらに、気功波を撃ち舞空術で空も飛べるようになっている。

・ターレス:930 十一歳。三年前の三倍以上の戦闘力。ただ、まだ潜在能力を覚醒してもらっていない。



〇ナメック星人の成長

 多分、他のナメック星人を守るのが役目の戦士タイプは、生まれてから数年で大人になるのではないかと。それだと、ピッコロさんが生まれてから約三年で大人になったのに対して、龍族のデンデがナメック星編から三年以上経っている人造人間編で大人になっていない理由になる気がしますし。



〇千人拳

 仙人の元で修行して編み出したので千人拳。
 残像拳を高速で繰り返して、無数の動く残像を作り出し相手を翻弄する技。見た目は優雅で幻想的な舞のような動きだが、実際には高速で動き続けなければならないため体力の消費が激しい技。

 大勢のザコや同格の相手には通用するが、格上の相手にはチャパ王が一人で踊っているよう見えるだけの技と化す。
 まだまだ問題の多い技で、改良の余地あり。


 くらねす様、ヨッシー7w76kxZ様、路徳様、ヨシユキ様、酒井悠人様、くろーろ様、二不二様、SERIO様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。