ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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 今年は「ドクターゲロに転生したから妻を最強の人造人間にする」をありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
 それでは皆様、良いお年を。


35話 第24回天下一武道会。ビッグな戦い、スピリットブースト!

『本日の試合も白熱した……微笑ましかった試合もありましたが、残り二試合を残すのみとなりました。これから行われる準決勝で勝った選手が明日の決勝で、そして負けた選手も三位決定戦で戦う事になります。

 それでは、準決勝第一試合サン選手対タイツ選手!』

 

「うーん、分かってはいたけど、実力差は圧倒的なのよね」

「遠慮しないで来るだよ、タイツちゃん」

 

『試合開始!』

 

 準決勝まで勝ち進み、平均的な惑星のトップクラスの戦士と同程度の実力に至ったタイツだが、サンの実力には敵わない。戦闘力の比率では、自分と妹のブルマとの差ほどではないが、それでも圧倒的な開きがある。

 数字だけで勝負が決まる訳ではないとしても、この実力差は大きい。

 

「やっ!」

 しかし、やはりタイツは諦めず気弾を撃ち始めた。接近戦ではターレスのように不意を突いて関節技に持ち込みでもしない限り相手にならないので、正しい判断といえる。

 

 しかし、当然サンにはタイツの気弾も通用しない。単調に連射するだけなので容易く避けられてしまい、牽制にもならない。

「でやーっ!」

「っ!」

 だが、サンが高速で接近した途端、タイツは瞬間移動で逃げてしまう。そしてまだ気弾を撃ち続ける。

 

(ちょっと妙だべ。タイツちゃん、何を考えてるんだべか?)

 サンが知る限り、タイツは単細胞に何も考えず戦うタイプではなく、ターレスのように色々と作戦を練って戦うタイプだ。その彼女が単調な攻撃を繰り返すだけ。それでいて自棄になった様子もない。

 とても妙だ。

 

 その時、ハッとした。今まで彼女が撃って自分が避けた気弾はどうなったのかと。

「っ! あれはなんだべっ!?」

 サンが避けた気弾の行方を目で追うと、彼女の背後に回った気弾はシールドにぶつかることなく上空へ飛び、そこで巨大な気弾の一部となっていた。

 

「あちゃ~、ばれちゃった」

 なんとタイツは、サンを気弾で攻撃しているように見せかけて、避けられた気弾を超能力でシールドよりも上空に集めて巨大な気弾を作っていたのだ。

 

『な、なんとタイツ選手、避けられたエネルギー弾を集めて空に巨大なエネルギー弾を作っていたー! タイツ選手自身はシールドよりも高く飛んでいないので、ルール違反ではありません!』

 という実況の言葉通り、ルールにも違反していない。正確には、穴をついた形だ。おそらく、次の大会では観客の安全を担保するために何らかのルール改定が行われるだろう。

 

「もっと溜めたかったけど仕方ない! サイコどどん波!」

 だが、今大会では何の問題もない。タイツがサイコどどん波を放つと同時に、巨大気弾が降下を開始する。

 一度に放てる気の上限は、界王拳でも使わなければ変わらない。そして界王拳の存在すら知らないタイツは、予め放った気弾を貯めておくことで、上限を超えた威力を出そうと試みたのだ。

 

 上から迫る巨大気弾に、前方から迫る超能力で軌道を操る事が出来るサイコどどん波。サンはそれに対して腰だめに両手首を向かい合わせにして構えを取った。

「かめはめ波!」

 サンが放ったかめはめ波は早く、タイツが軌道を操る間も与えずサイコどどん波を飲み込んだ。

 

「嘘ッ!? でもまだ……ええっ!?」

「でりゃあ!」

 そして、サンが両手を上に向かって振り上げると、なんとかめはめ波は向きを変えて上昇し、大きいが故に遅い巨大気弾を貫き、爆散させてしまった。

 

 しかも、それだけでは終わらず爆発して枝分かれし、無数の気功波となって雨のように地面に向かって降り注いでくる。

「うわわわっ!?」

 避け切れないと判断したタイツは瞬間移動で、安全地帯の武舞台の外の空中へ逃げる。しかし、そこには既に高速で移動したサンが待ち構えていて、彼女を軽く叩いて地面に落として勝利したのだった。

 

 

 

『それでは本日最後の試合、準決勝第二試合、ギネ選手対桃白白選手です!』

 日が紅く染まりつつあるが、観客の熱は下がる様子を見せない。同時に、ギネと桃白白にも消耗した様子はなく、お互いに戦意を滾らせていた。

 

「ふっ、ジャイアントキリング、というのを狙うとしよう」

「気は抜かないよ。ルール有の試合じゃ、油断が出来ないのはもう分かっているからね」

 桃白白は地球人だが、ギネが改造される前だったら勝てなかった程力をつけている。今の彼ならフリーザ軍でも下級兵士としてなら十分通用するだろう。

 

 しかし、今のギネは変身したザーボン相手でも勝てる程力を高めている。油断しなければこの試合の勝者は彼女だ。そうでなくても、全力を出せば桃白白を一撃で倒す事も容易い。

(でもまあ、油断しないのと力任せにぶちのめすのとは違うらしいし……これも武道ってやつだよね)

 だがギネはそう考え、油断はしないがある程度気を抑えて桃白白と戦う事で、戦闘の経験を得る事を優先する事にした。

 

 孫悟飯から亀仙流を、武道を教えられてギネは改めて戦いの楽しさを覚えるようになっていた。

『試合開始!』

「行くぞっ!」

 実況の宣言と同時に、桃白白が高速で動く。

 

「っ!?」

 想像以上のスピードで接近する桃白白の蹴りを、ギネはギリギリで回避した。しかし、胴着の彼のつま先が掠めた部分が僅かに切り裂かれる。

 

「な、なに、それっ!?」

 なんと、桃白白の脚が光り輝いていた。

「フッ! 気を脚に集中させた状態を維持しているのだ! 気功脚、とでも名付けようか!」

 なんと、桃白白は気を武具のように肉体に纏った状態を維持する技を編み出していた。

 

 元々は、地球の神様の神殿でゲロが編み出したプラズマブーストを習得しようとしたとき、偶然編み出した技だ。しかし、あまりに殺傷力が高い事から殺し屋ではなく武闘家兼ヒーローの道を歩む桃白白はこの技を封印した。……倒しても問題のない相手や、倒さなければならない悪、そして圧倒的に格上の相手以外には。

 

 そして、ギネは圧倒的に格上の相手である。

「このっ! 乙女の柔肌が傷ついたらどうしてくれるのさ!?」

 そして、ギネはバックラー状のフォトンシールドを腕に創り出して、桃白白の気功脚を捌き続けている。確かに格上の相手である。

 

「なに、貴様ならもし傷ついても四肢の一本ぐらいならすぐ新しいのを生やせると、会長から聞いているから遠慮はいらんと思ってな!」

「爺さん、余計な事を!」

 

 そんな掛け合いをしながらも、全力を振り絞っているのは実は桃白白の方だ。蹴りで攻めながら、攻撃を当てるチャンスを伺い続ける。

(地力で圧倒的な差のある相手にこの天下一武道会で勝利するには、場外負けに追いやるしかない! そのためには……今だ!)

 

「受けてみろっ!」

 桃白白は後ろに飛んで下がりながら、続けざまに鞭のようなしなやかな蹴りを放った。その蹴りは空を切るはずだったが、脚に纏っていた気が刃状の気功弾となってギネに襲い掛かる。

 

「当たるかっ、ってうわ!?」

 フォトンシールドを装着した腕で桃白白が放った気功弾を叩き落とそうとしたギネだったが、なんと気功弾はシールドに触れた瞬間爆発したのだ。

 

「スーパーど――」

 そして予想外の爆発に動揺して体勢を崩しているはずのギネに向かって、スーパーどどん波を放って場外へ落す。それが桃白白の狙いだったが……。

 

「マッスルカタパルト!」

 なんとそれより早く、ギネが煙を引き裂きながら猛然とした勢いでタックルを仕掛けてきた。

「――どん波っ!」

 動揺しながらもスーパーどどん波を放つ桃白白だったが、元の技の持ち主のパンブーキン同様に猛然とした勢いのギネのタックルの前に彼の攻撃は砕け散り、逆に場外まで吹っ飛ばされてしまったのだった。

 

『じょ、場外っ! 桃白白選手、場外負けです! 今回の天下一武道会は本当に女性選手の躍進が目覚ましい! 明日の天下一武道会決勝戦は、サン選手対ギネ選手の女性選手対決に決まりました!』

 

 実況のアナウンスを聞きながら、桃白白は立ち上がると服に付いた埃を払った。

「やれやれ、気功脚にもうちょっとビビるかと思ったが……」

「こう見えても戦闘民族サイヤ人の端くれだからね。それぐらいじゃ怯まないよ」

 その桃白白にギネが舞台上から手を差し伸べる。彼女の手を借りて舞台に戻った桃白白は人の悪い笑みを浮かべていた。

 

「フッ、会ったばかりの頃はいちいちビビっていた小娘が、言うようになったものだな」

「ちょっ!? ……子供の前なんだから、かっこ悪い試合は見せられないじゃないか。それに、そう言う桃白白こそ焦り過ぎだよ」

「確かにな。私とした事が、大舞台で舞い上がっていたのかもしれん」

 

 実は、圧倒的な実力差を前に緊張し、焦っていたのは桃白白だった。それに、永久エネルギー炉を搭載しているギネのタフさを知っている彼は持久戦が不利である事を知っている。

 それ故、勝負を焦って隙の大きさを見誤って仕掛けてしまったのだ。

 

「だが、次は……いや、次の次の大会では負けんぞ」

「ちょっと、そこは次の大会、って言わないと締まらないでしょ」

「無茶を言うな、三年程度で今の十倍以上強くなれるか」

 六年後でも今の十倍以上強くなるのは難しいのではないか。そう突っ込む者はいないまま、二人は観客の声援に送られて舞台を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして天下一武道会最終日。まず行われたのは五位決定戦。

『二回戦で敗退した四名の選手で行われる、天下一武道会本戦唯一のバトルロイヤル形式の試合です! 一対一の試合とはまた違う戦いで我々を魅せてくれることでしょう!

 戦うのはチチ選手、ブルマ選手、ターレス選手、そしてナム選手です!』

 

 四名の内三名が未成年という異例の試合だが、その試合内容はこれまでの天下一武道会の試合にはないものだった。

 

「おいおい、寄ってたかって一人を狙うとはひどくないか?」

「本当はそんなこと思ってないくせに!」

「白々しいべっ!」

「試合中は君を子供とは思わん!」

 

 なんと、ターレス一人にブルマ達三人が一つのチームのように連携して挑んだからだ。

「昨日二人でナム君に話しかけていたが、こういう事だったとは……二人ともよく考えているな」

「ちょびっとだけ卑怯な気がするが、まあ仕方あるまい。仲間と力を合わせて強大な敵に立ち向かうのも、また修行じゃ」

「うむ、相手は自分達より数が少ないとも、そして弱いとも限らん。それが武の、そして戦いの厳しさじゃ。ターレスにとっても良い経験になるだろう」

 

 一対三の戦いも、止めるどころか良い修行になると頷くゲロと亀仙人と鶴仙人。

 

「なるほど、地球人の修行は変則的ですな」

「こうして柔軟な発想が生まれるのか」

「参考になります」

 そして、参考になると頷き合うムーリ長老とツムーリとムデン。

 

 舞台上ではブルマが瞬間移動でナムとチチを移動させてフォローし、ターレスから距離を保ったチチとナムが気功波で遠距離攻撃を行っていたが……。

「そうか、ならこれはどうだ!?」

 だが、ターレスが四身の拳を使い、四人に増えた事で戦況は瓦解した。

 

『な、なんとターレス選手が四人に増え、瞬く間にチチ選手とブルマ選手を倒してしまいました! ナム選手も、場外です!

 ターレス選手の勝利です!』

 

 そして、五位はやはり順当にターレスに決定した。

 

 

 

 続いて三位決定戦。準決勝で敗れたタイツと桃白白の試合は、今大会では珍しい接近しての拳と蹴りの応酬となった。

「強くなったが、またまだ私には及ばんぞ、タイツ!」

「でも、あの気功脚って技は使わないの!?」

「フッ、私だって相手を選ぶ! 貴様が人造人間になったら使ってやろう!」

 

 サン対タイツや、ギネ対桃白白の試合程、タイツと桃白白の実力差は圧倒的ではない。しかし、1030と1800の差は小さくない。

 そのため、戦いは桃白白が優勢だ。そのまま押し切れないのは、タイツが念動力を巧みに使い、桃白白の打撃を逸らし、自分の体勢を上下左右に操作しているからだ。

 

「やあっ!」

 その時、タイツが仕掛けた。瞬間移動で桃白白の背後に現れ蹴りを放ったのだ。

「させん!」

 しかし、桃白白はそれを読んでいた。腰を落として蹴りを回避し、不意打ちが空振りして動きの止まったタイツに向かって、溜め無しのどどん波を放った。

 

 しかし、タイツは再び瞬間移動してどどん波を避け、なおも桃白白に攻撃を続ける。

「くっ、しつこいぞ! 瞬間移動とて、どこに現れるのか読めれば意味はない!」

 真後ろや死角に繰り返し移動するタイツの攻撃を避けつつも、桃白白はカウンターを成功させることが出来ず苛立ちが増していく。

 

「なら、後ろに回れんようにしてやろう! 二身の拳! プラズマブースト!」

 なんと桃白白も分身を出して二人になると、下がった気を補うためにプラズマブーストを発動した。

 これでもう一人の自分と連携して死角を消し、タイツを拳と蹴りで倒そうというのだろう。

 

「ふふっ、その位置に来てくれるのを待っていたのよ!」

 しかし、タイツは怯まなかった。それどころか、存在感をますます大きく……いや、本当に巨大化している!

 

「「な、なんだと!?」」

『なんとタイツ選手が! あの美少女だったタイツ選手が、どんどん大きく……もう十倍程に大きくなってしまいました!』

 

 なんと、タイツはヤードラット星の修行で身に付けたスピリットパワーの操作によって、巨大化を習得していたのだ。

「「ば、馬鹿な……!」」

 これはさすがに予想外だと、目を丸くしてタイツを見上げる二人の桃白白。そんな彼に向かって、タイツはニッと笑うと宣言した。

 

『これで終わりよ、桃白白様!』

「「し、しまった!?」」

 その時、桃白白は気が付いた。いつの間にか自分が舞台の中心から角の方に誘導されていたことに。普通の試合なら気にならない程度だったが――。

 

『やーっ!』

「くっ! うおおおおっ!?」

「ぬわああああっ!?」

 十メートル半ばのタイツ相手に戦うには、舞台の隅は狭すぎる。咄嗟に舞空術で空を飛んで逃げようとするが、驚愕によって初動が遅れたのが響き逃げ切れない。

 

「「ぐはっ!」」

 そして、巨大化した事で倍増したタイツの力は、桃白白の力を上回っていた。たまらず場外へ叩き落とされてしまう。

 

『じょ、場外! 桃白白選手、場外負けにより、タイツ選手の勝利です! いやー、これからはタイツ選手の事を美大女と呼ばなければならないのでしょうか?』

 

『大丈夫よ、すぐ元の大きさになるから。ほらっ!』

 そう言って、タイツはすぐに元のサイズに戻って見せた。なお、スピリットパワーによる巨大化は身に付けている服等も体に合わせて大きくなるので、サイヤ人の大猿化と違って服が破れるようなことはなかった。

 

 観客は桃白白が敗れた事と、それを為したのが巨大化という想像を超える技だった事に驚きながらも、他の大会では見られない摩訶不思議で白熱した試合に興奮し、歓声をあげていた。

 

 なお、タイツが桃白白に勝てたのは、原作の天下一武道会よりも舞台が広いからという理由があるのだが、それはゲロと4号しか知らない。

 

 

 

『長かった本大会も、決勝戦を迎えます。誰が天下一なのか、刮目して見届けましょう!

 決勝戦、サン選手対ギネ選手! 天下一武道会初の女性選手同士の決勝です!』

 

「いくだぞ、ギネさん!」

「ああ、負けないよ!」

 そして戦った女性選手同士の、そして亀仙流を中心に学んでいる者同士の戦いが始まった。

 

『それでは私はシールドの外で実況を続けます!』

 試合は、実況がすぐに舞台から避難するほど激しいぶつかり合いから始まった。拳と拳が、蹴りと蹴りがぶつかるたびに衝撃波が発生し、大気が震える。

 

 かと思えば、武舞台とその上空をフル活用した高速戦闘が行われ、二人の動きを肉眼で見る事が出来ない観客のためにスクリーンに映像が映し出される。

『ご覧の映像は特殊カメラで撮影したサン選手とギネ選手の戦いの模様のごく一部を、我々に見える速さで再生したものです! 僅か数秒の間に両選手がこれほどの攻防を繰り広げているとは……驚くほかありません!』

 

 まだ動きに荒っぽさが残るギネに対して、サンは亀仙流の自由奔放ながら研ぎ澄まされた動きでぶつかり合う。

「やああっ!」

 ギネが放った回し蹴り、そして蹴りに隠してはなった尻尾の一撃。その両方を潜り抜けて回避したサンは、そのままギネの軸足を逆に払って体勢を崩させる。

 

「だだだっ! でやぁ!」

 そしてギネをアッパーで上空に向かって殴り飛ばし、彼女が体勢を立て直す前に気功波を放つ。

「くっ……アングリーキャノン!」

 だが、ギネは無理やり体を捻って、迫りくるサンの気功波を夫の仲間のトテッポの技で迎撃する。

 

 激しい爆発と轟音。光に飲み込まれたギネの敗北を観客は予感した。

 しかし、矢のように鋭い気弾とそれに数舜遅れて煙の奥から現れたギネの姿にそれが勘違いだったと知る。

「その技は昨日見たべ!」

 そして、サンはギネが無事である事は読んでいた。

 

 セリパの技のハンティングアローでサンの逃げ場を無くして、パンブーキンの技のマッスルカタパルトで突撃する作戦だったのだが、サンはかめはめ波を放ってギネを迎え撃つ。

「かめはめ波っ!」

 しかし、ギネもかめはめ波を放った。ただし、サンではなく後ろに向かって。

 

 かめはめ波をロケット噴射のように使って勢いを増したギネのマッスルカタパルトは、サンのかめはめ波を打ち負かし、彼女を吹っ飛ばすことに成功した。

『ワン、ツー……テン! ギネ選手の勝利です! 天下一武道会準優勝はサン選手! そして優勝者はギネ選手に決定しました!』

 こうして第二十四回天下一武道会の優勝者はギネになったのだった。

 

 

 

 そして行われるエキシビジョンマッチだが、観客や実況はちょっとした催し物程度に思っていたが、戦う4号とギネは真剣そのものだった。

 

「体力はもう回復しましたか? 観客席にはムーリ長老やツムーリさんも来ていますが……」

「大丈夫。爺さんに回復してもらったから」

「なるほど。では……あなたの初優勝にさっそく土を付けるかもしれませんが、遠慮はしませんよ!」

「せっかくの試合なんだ! 稽古じゃないんだから、それぐらいじゃないと楽しくないよ!」

 

 残虐さは無いが旺盛な戦闘意欲を浮かべた二人から放たれた気で、実況は思わず尻餅をついた。

『エ、エキシビジョンマッチ開始! こ、これは決勝戦に続いて白熱した試合になりそうです!』

 そのまま試合開始を宣言し、素早くシールド発生装置の外側に退避する。そして装置が起動して観客席の前にシールドが展開された途端、二人は動き出した。

 

「っ! 前よりずっと早くなってる!?」

「ドクター達とヤードラット星で修行した成果です。あなたこそ、短い時間で仲間の技をものにしたのは驚嘆に値します!」

 

 4号の戦闘力は、2万5千にまで上昇している。三年前の天下一武道会で優勝した時は8000だったので、三倍以上の成長だ。しかし、それでもギネの3万4千には及んでいない。

 だが、4号は速さをブルマやタイツがしていたように瞬間移動で補っていた。

 

「行きますよ、二身の拳!」

「おおおおっ!」

 しかも、瞬間移動で分身をギネの背後に移動させ、その分身はプラズマブーストを使用しながら巨大化する。

 

「くっ、合わせ技は大人げなくない!?」

『妹の成長が著しいので、私も追いつくのに必死なのですよ!』

 4号の分身は、巨大化とプラズマブーストによって身体能力はギネを上回った。しかし、タイツが桃白白にしたように舞台の端に追い詰めて行った訳ではないので、原作で悟空が巨大化したピッコロにしたように、ギネは巨大化した4号の分身を小回りで翻弄しようと試みる。

 

「そんなに大きいと、迂闊に瞬間移動もできないだろ!?」

 そう言って4号の脚の間を走りながら、気を集中して……巨大化した分身の頭の上にいた4号の本体に向かって技を放った。

 

「ライオットジャベリン!」

 彼女は巨大化した分身が分身でしかない事を忘れていなかった。4号の本体を倒せば、分身も消える。そして、巨大化していない本体は耐久力が本来の半分になったままである事も。

 

 これで終わりかと思われたが……。

「スピリットブースト!」

 しかし、精神を集中して気の制御に務めていた4号がそう叫ぶと、半分になっていたはずの気の量が倍増した。

 

 そしてギネのライオットジャベリンを瞬間移動で回避し、彼女の目の前に現れる。さっそく巨大化分身の足元で立ち技の応酬を始める4号とギネ。

「気が倍になってる。なんだい、その技は!?」

「身体能力だけではなく、気の出力を倍増する新技です。これであなたは、二人の私を相手にする事になりました」

『ギブアップするなら、今の内ですよ』

 

 4号本体が離れた途端、巨大分身の足が頭の上から降ってくる。巨大分身を先に倒そうとすれば、4号本体が瞬間移動で間合いを詰めてくる。

 ギネにとって苦しい戦況だ。

 

「冗談っ、こんなに楽しいのに途中でやめられないよ!」

 人造人間になって強さを手に入れてもギネは冷酷さや残酷さには目覚めなかったが、戦いの楽しさにはしっかり目覚めていた。

 

 体を思いっきり動かし、思うようにならない相手と拳を交え、気功波を撃ちあい、ぶつかり合うのが楽しくてたまらないのだ。

「そう言うと思っていました。ですが……」

『これで終わりです! 魔口弾!』

 

 巨大分身が口から巨大気弾を、4号本体に撃つ。まさかの自爆かと実況が叫ぶが、そうでない事をギネは知っていた。

「アタック!」

 4号本体がそう叫びながら、巨大気弾に自らの気を込めてさらに威力を増し、ギネに向かって弾き返す。二番目の工程を省略した排球波だったのだ。

 

「かめはめ波ぁーっ!」

 ギネはそれに対して跳ねるようにして巨大分身の背後に回ると、彼ごと4号本体に向かって渾身のかめはめ波を放った。

 

 高い威力と貫通力を併せ持つかめはめ波は、巨大分身を押し出し排球波の盾にする。

「『くっ、解除……しまった!』」

 とっさに二身の拳を解除して分身を盾にされる事を避けた4号だったが、その瞬間スピリットブーストが解けてしまう。

 

 そして二つの気弾が衝突し……押し負けたのは4号の排球波だった。

「かはっ!」

 とっさに張ったフォトンシールドで何とかかめはめ波を相殺したものの、4号の体力は底をつきかけていた。

 

「どうする? 続ける?」

「……恰好を付けられるうちに、ギブアップする事にしましょう。実を言うと、もう立っているだけでもやっとです」

 

『4号選手ギブアップ! エキシビジョンマッチは前回大会優勝者を下し、ギネ選手の勝利です!』

 実況の宣言と同時に、シールド発生器が解除され、観客の歓声や花火が二人の健闘を讃える。

 

「惜しかったよ。あのスピリットブーストって技が完成していたら、あたしの負けだった」

「編み出した技を試合までに完成させられなかったのですから、私の負けは変わりません。優勝おめでとう、ギネ」

 ヤードラット星でスピリットパワーの修行を行った事で、界王拳のように気の出力を倍増させる技を編み出すことに成功した4号だったが、その技は未完成だった。

 

 気の制御が難しく、発動まで長い時間集中しなければならない。そのための時間が一対一の試合では確保できないので、時間稼ぎのために二身の拳を使わなければならなかった。

 もし、スピリットブーストを界王拳のようにすぐ発動できるようにまで昇華できていれば、二身の拳で気を分けた状態で使う必要はなく、戦闘力を5万に引き上げた4号がギネを押し切っていただろう。

 

 だが、それが出来なかった事も含めて今の自分の実力であり、ギネはそれを出し切った自分を破ったのだから誇りなさいと、4号は悔いのない様子で彼女を讃えた。

 

 

 

 

 

 

 そして儂らが観客席でギネ達を拍手で讃える中表彰式も終わり、第二十四回天下一武道会は盛況の内に幕を閉じた。結局歴史改変者の介入はなく、彼らの抜け毛や皮膚片を採取して彼らの細胞を手に入れようという、この儂の企みは不発に終わった。

 

 優勝者はギネ、準優勝者はサン、三位はタイツ、四位は桃白白、五位はターレスという、前回大会とは打って変わって女性と未成年の選手が四位以外を独占する大会となり、テレビや雑誌では「これからは仕事だけではなく格闘技界にも女性進出の波が迫る!?」といった見出しで特集が組まれる事になった。

 

 その流れで前回大会に出場した女性選手のランファンの行方を捜すジャーナリストが何人かいたが、結局足取りを追い彼女の行方を掴むことは出来ず、『武者修行の旅に出ているらしい。次の大会で彼女の活躍を期待しよう』という記事が雑誌に載っただけで終わったようだ。

 

 レッドリボン軍は、上手く情報を隠してくれたようだ。

 

 また、桃白白が四位だった事で、「スーパーヒーローにも衰えの影が!?」と少し騒がれた。しかし、彼がインタビューに応えた事ですぐに鎮静化した。

「悪との戦いならともかく、こうした武道大会での敗北を私は恥とは思わん。悔しくはあるが、同時に嬉しくもあるからだ。チャンピオン経験者であると同時に、チャレンジャーでいられるのだから。

 簡単に極めきれない武の厳しさ、そして深さに感謝している」

 

 と、負けを認める潔さとまだまだ修行を諦めない熱意を見せた事で、桃白白の人気はまた高まったのだった。

 

 そして天下一武道会ではスポンサーについてグッズ制作やCM等の芸能活動をバックアップするのは五位までと公式で決まっていたのだが、今回の大会では親子や姉妹で出場した選手が多かったため、企業や番組から合わせてグッズを作りたい、一緒にCMに出てほしいという要望があり、五位入賞を逃した選手達の一部もグッズやCM出演等のオファーがあった。

 

 タイツとブルマ、サンとチチ、ギネと悟空とターレス等の組み合わせだ。……とはいっても、悟空は演技ができないため、新商品の運動靴を履いている事以外は普段通り野山を駆けてもらい、その様子を撮影して運動靴のCMにするなどの工夫が凝らされた。

 

 タイツは巨大化して建築会社のCMに出たり、ブルマとラズリとラピス、そしてチャオズが子供服のモデルをしたり、天津飯と目薬や眼鏡メーカーのCMに出たり、それぞれメディアにも出ていた。

 ナムは、故郷の町(正式に村から町になった)に郷土の英雄として銅像が建てられることになったと照れながら言っていた。また、ギランも応援に来ていた舎弟達に恰好を付ける事が出来たと、喜んで帰っていった。

 

 なお、アックマンにもオファーがあったようだが、本人が全力で遠慮したので、フィギュアだけ発売された。彼は、恥を忍んでカリン塔に登る事にしたらしい。

 

 獅子牙流のヤシシは、一度道場に帰った後、武の聖地カリンを目指すつもりらしい。……アックマンと違い彼の実力では塔は登り切れんと思うのだが。まあ、ボラが止めてくれるだろう。

 天津飯も撮影をハイペースで終えた後地球の神の神殿に戻って修行を再開し、チャパ王は一度国に帰って留守を任せていた弟子たちを労いに行くそうだ。

 

 ナメック星ではナメック星一武道会が開かれた。実況に天下一武道会の実況を務めた青年を呼び、宇宙船で撮影クルーと共に十日程かけて来てもらって地球でも放送された。

 なお、優勝賞品はナメック星人の職人が作った服一揃えと靴のセットという、かなり無欲な商品だった。

 

 

 

 

 

 

 勉強よりも熱心にジムに通って格闘技に夢中の少年、マークは今回の天下一武道会もテレビにかぶりつくようにして観戦していた。

「父さんと母さんは大人になってからにしなさいって言うけど、そんなに待てない! でも、武天老師様の連絡先なんて知らないしな~。GCGの入隊テストも、十五歳にならないと受けられないし」

 そう言ってため息を吐きながらジムへ向かって歩いていると、幼馴染でライバルのジャガーとばったり遭遇した。

 

 どうやら、彼も同じサタンジムに通っているらしい。

「マーク! おめぇ、まさか武天老師こと亀仙人に弟子入りするつもりでいるのか? いくら弟子を募集中だって言っても、おめぇなんかじゃ門前払いがセンベイの山だで」

 

「それを言うなら関の山だ! フンッ、俺はトレーニングを積んで、桃白白のような一流の武道家にしてヒーローになり、ミゲルちゃんのハートを射止めるんだから、つまらない事を言うな!」

「なっ!? み、ミゲルちゃんのハートを炒めるだと!?」

「射止める、だ! この馬鹿め!」

 

「そっだら事はどうでもいい! ミゲルちゃんは俺のガールフレンドだぞ!」

「お前のパパがミゲルちゃんのママと仲が良いから、誕生日パーティーに呼ばれただけじゃないか! デートもしていないのに、ガールフレンドとは片腹痛い!」

「い、言わせておけば~っ! 勝負だ! 痛いのが肩と腹だけじゃすまなくしてやる!」

「受けて立ってやる! 今日の自由組手でな!」

 

 こうして武道家を目指す少年達は切磋琢磨していくのだった。

 




・気功脚

 原作のサイヤ人強襲編でナッパが天津飯の腕を切断した技の脚バージョン。なお、桃白白が腕ではなく脚に気を纏ったのは、リーチが蹴りの方が長かったのと、舞空術で飛んで移動すれば舞台(の表面を覆う石材)を自らの脚で壊して体勢を崩す心配がなくなるため。



・巨大化

 ナメック星人や、スピリットパワーを扱う事が出来るヤードラット星人が可能な技(?)。使用すると身体能力(主に力)が増す。ただ、サイヤ人の大猿化程ではない。
 しかし大猿化と違って理性を失うことはない。原作ではピッコロ(マジュニア)が天下一武道会の決勝戦で使用し、劇場版ではスラッグも巨大化した。しかし、その際服が破れて全裸になってはいなかったので、服も破れないと思われる。

 また、ヤードラット星人にとっては瞬間移動より高度な技にあたる。



〇巨大タイツ

 ヤードラット星での修行で習得した巨大化を使用したタイツ。戦闘力が1030から2575にパワーアップ。
 準決勝でサン相手には使わなかったが、それは彼女程実力に差があると多少自分の力が上がっても的が大きくなるだけで、逆に不利になると分かっていたため。



〇4号

 戦闘力1万→2万5千。スピリットパワーの修行によって、占い婆の宮殿で行われたバーダックチーム+αとの戦い当時の二・五倍の実力に。
 また、ナメック星人の能力として巨大化も出来るようになった。

 そして界王拳と同じ性質の技、スピリットブーストを習得した。



〇スピリットブースト

 気の出力はそのままだが、力やスピード等の身体能力と思考スピードだけを倍増させるプラズマブーストに、スピリットパワーのコントロール技術を応用する事で可能になった、気の出力も倍増させる技。
 ただ、界王拳は二十倍等まで倍率をあげる事が出来るのに対して、スピリットブーストは今のところ二倍までしかならないという欠点がまだある。

 要改善。


・マーク

 現在十歳。格闘家を志す少年。幼馴染みにライバルの少年と、美少女コンテストで優勝を重ねるミゲルという少女がいる。原作と違い、まだ十歳であるため合宿でおねしょをしていない。
 ジムに新しいコーチ(元GCG隊員)が来てから、前よりも厳しい訓練をしているが、子供向けのトレーニングなので劇的に強くなっている訳ではない。

 しかし、他の子供達に比べると才能は高い。



・ジャガー・バッタ

 バッタ男爵家の跡取り息子。しかし、格闘家を志しジムに通っている。マークのライバル。
 原作では「フェアプレーの精神」を「ヘアスプレーの精神」等と言い間違えていたので、多分十歳の頃からこんな感じではないかと思われる。

 ジムではサタンに置いて行かれまいと食らいついている。才能は並だが努力で補うタイプ。(才能でサタンに勝るなら、原作でも十二歳で行った決闘で負かされて武道を諦めることはなかっただろうと推測したため)



・ミゲル

 原作では本人は登場していないが、病で急逝したサタンの妻でビーデルの母親。有名な美人歌手だったらしい。
 なお、彼女がサタンとジャガーの幼馴染だったという設定は、原作には今のところありません。この作品の捏造……よく言えば独自設定です。

 この作品では、子供の頃から美少女コンテストで優勝を重ねているという設定です。


 路徳様、黒帽子様、虚気様、カカオチョコ様、変わり者様、あんころ(餅)様、カド=フックベルグ様、asis様、誤字報告ありがとうございます。返信が遅れてすみません。
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