ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
「界王の弟子と戦ってほしい」という話を閻魔大王から持ち寄られたベジータ王は、大いに動揺した。
「ま、待てっ! 儂に奴らの相手をしろだと!?」
以前反乱を起こした際、大猿化していたのに一方的にやられた時の事を思い出して冷や汗を浮かべるベジータ王を、閻魔大王は「落ち着け」と言って宥めた。
「お前が想像しているのは、大界王様の下で修行をするために、死後も技を磨き続けている戦士達だろうが今回は違う。界王様が何年か前に弟子にしたナメック星人の戦士の相手をしてもらいたいそうなのだ」
「何? ……それはつまり、奴らほど強くはないという事か?」
「ああ、保証する。とはいえ、大猿化しなければお前でも相手にならない程の強者だぞ」
閻魔大王の言葉に、ベジータ王はほっと安堵した。いくら圧倒的に強い相手だからといっても、手も足も出ない状態で一方的に負けるのは、彼のメンツが立たないからだ。
「しかし、何故儂が? 貴様も知っている通り、儂は悪人だ。その弟子とやらを殺そうとするかもしれんぞ」
「儂もそう止めたのだが、界王様が大丈夫だというのでな。……覚えた技を実戦形式の組手で試すのに丁度いい相手が、貴様以外にいないらしいのだ。
貴様も恐れている死後も修行を続ける戦士達にわざわざ来てもらうのは、気が引けるしな」
「そうか。なら……その話、儂が受けて何か得はあるのか?」
「反乱を起こして増えた分の刑期を帳消しにしてやる。部下の分もだ」
「……まあ、いいだろう」
恩赦による刑期短縮、それも反乱を起こして増えた分のみなんて、天文学的な数字の刑期を言い渡されているベジータ王にとってはまったく魅力を感じない報酬だ。
しかし、閻魔大王からの依頼を受けたという事実は大きい。バーダックチームのような連中ならともかく、他の部下達は閻魔大王からもベジータ王は頼りにされていると思い込むはずだ。
他にもっと何かしら得になる物を報酬に出させようとごねて、閻魔大王の機嫌を損ねるよりは利があるはずだ。
「それで、どこで戦うのだ? まさか、界王様とやらの弟子を地獄で戦わせるわけにはいかんのだろう?」
「いや、地獄で行う。界王様のいる星は小さくて、大猿化した貴様が戦うには狭すぎるからな。生者が地獄に出入りするのは問題だが……今回だけの特例という奴だな」
「儂を一日だけ現世に戻せばいいのではないか?」
「占い婆のようにか? お婆のような事が出来る者は宇宙広しと言えどそうそうおらんから無理だ」
「それもそうか」
そうして数日後、ベジータ王がその日の地獄の刑罰を受け終わった頃に界王様の弟子、ネイルが現れた。
「今日はよろしく頼む」
「うむ」
一礼するネイルの気を感知し、ベジータ王は内心で「こいつから、とてつもない力を感じるぞ!?」と動揺していた。生きている頃からとはいえ、界王の弟子になるような者は化け物しかいないのかと思ったほどだ。
(だが、大猿化すれば十分戦える)
しかし、ベジータ王はそう己を鼓舞し、平然としているように装う。
「貴様もナメック星人だそうだが、ヨンやツムーリ、そしてゲロとは知り合いなのか?」
「ああ、私が界王様の下で修行する事が出来たのも、ゲロのお陰だ。しかし、何故お前がヨンやゲロに付いて知っている?」
「フッ、二年ほど前に一日だけ蘇って戦った事があったのだ」
「そうだったのか」
共通の知人がいると知った事で、ネイルがベジータ王に向けていた警戒心が緩んだ。彼は閻魔大王からベジータ王について地獄に落ちた悪人で、悪名高いサイヤ人の王であり、閻魔大王に一度反乱を起こしたと聞いていたため、つけ入れられないよう気を張っていたのだ。
「その時の話を聞きたいが、あまり長居すると閻魔大王に悪い。手合わせを始めてもらっていいだろうか?」
「いいだろう。お前達、上を見るなよ!」
離れたところで見物しているサイヤ人達にそう警告すると、ベジータ王はパワーボールを空に向かって放った。
「弾けて混ざれ!」
そして、地獄の空に本来ないはずの満月が出現する。事情を知らない他の罪人達は突然の出来事に驚きながらも、生きている時に見上げた夜空の美しさを思い出し、見とれていた。
「う……オオオオオオ!」
だが、パワーボールはそんな美しいだけのものではない。それを表すように、ベジータ王の全身が膨張し、剛毛が生え、瞳が紅く染まる。
『さあ、お望み通りなってやったぞ! 儂に殺されないよう気を付けるのだな!』
体が大きくなっただけではなく、全身にとてつもない力が漲ってくる。この時、ベジータ王の戦闘力は5万8千から約58万に跳ねあがっていた。
(今の儂ならフリーザに勝る事はあっても負けることはない! 対して奴の戦闘力は儂の半分以下! どんな技かは知らんが、相手にならん! 適当に半殺しにしてやるとしよう!)
そうベジータ王が調子に乗っている通り、ネイルのこの時の戦闘力は全力で27万。大猿ベジータ王の半分にわずかに届かない程度だ。
たしかに、まともに戦えばネイルには小回りしか大猿ベジータ王に勝る点はない。
「参る……界王拳!」
だが、ネイルが赤いオーラを発した途端、彼の気の大きさが倍増した。
『な、なんだと!? く、くらえ!』
驚きながらも、ベジータ王は反射的にネイルを踏み潰そうと足を踏み下ろした。しかし、ネイルは素早く回避し、空を飛び回ってベジータ王が振り回す両手や尻尾を避け続ける。
「うおおおっ!」
もちろん逃げているだけではない。ネイルは体ごと飛び上がって、ベジータ王の顎にアッパーを叩き込み、仰け反った彼の腹に気弾を連打。
怒り狂ったベジータ王が巨大な手から放った気弾を避け、岩よりも大きな拳を掻い潜る。
『かかったな!』
だが、なんとベジータ王は尻尾の先端から気弾を放ち、拳を避けた直後のネイルに当てる。堪らず防御姿勢を取った彼に向って、地面に叩きつけてやろうと片方の拳を上から振り下ろした。
「三倍っ!」
だが、その瞬間さらにネイルの気が倍増する。赤いオーラの勢いも増し、ベジータ王の拳はネイルの両腕に受け止められてしまった。
馬鹿な、こいつフリーザ以上か!? そう叫ぶ間もなくベジータ王はネイルに腕を掴まれ、ジャイアントスイングのように振り回されて投げ飛ばされた。
『くっ、それで勝ったつもりか!』
叫ぶ代わりに、ベジータ王は口を大きく開けてそこからエネルギー波をネイルに向けて発射した。それはネイルに正面から当たる。そう思われたが、ネイルが三度叫んだ。
「四倍! はあああああ!」
そして彼が放った気功波は、ベジータ王のエネルギー波を蹴散らして彼を吹っ飛ばしたのだった。
結局手も足も出ないまま倒された気がする。
そう思いながらベジータ王は地獄の空を見上げていた。もうパワーボールは消え、空も彼自身も元に戻っている。
大猿化したが、戦闘服を着ていたおかげで全裸ではない。戦闘服とインナーも多少伸びたぐらいで……と思ったら、全然伸びていなかった。
(そう言えば、ゲロが寄越した戦闘服の方が性能は優れていると科学者連中が言っていたな)
そう思っていると、ネイルがやって来た。
「大丈夫か?」
「おかげさまでな」
意識はしっかりしているし、話もできるが、全身が痛みと倦怠感を訴えている。しかも、立ち上がれない。これで大丈夫なはずはない。
「そうか、さすがサイヤ人は頑丈だな」
しかしネイルはベジータ王の言葉を額面通りに受け取って、感心した様子で、しかし彼に手を差し伸べて立ち上がらせると肩を貸して歩き出した。
敗れた相手に世話を焼かれる事にプライドが刺激されたが、ネイルに肩を借りないと歩けないため、ベジータ王は黙る事にした。
その代わり、情報収集はしっかり行う。
「あの界王拳という技はなんだ? お前があれを使った途端……そしてお前が『三倍』だの『四倍』だの叫ぶたびに、戦闘力が増加しているようだったが、界王の奥義か?」
「ああ、界王様から授けられた技だ。体に大きな負担をかける代わりに、気……お前達の言う戦闘力を増加させることができる技だ。気の出力を増やしているらしい」
「そんな事が可能なのか!?」
薄々自分でも予想していたベジータ王だが、界王拳の驚異的な利便性には驚きを隠せなかった。サイヤ人が大猿化するには、尻尾を備えた状態で満月を見なければない。また、尻尾が切断されると変身が解けてしまうというデメリットも抱えている。
それに比べて、界王拳のなんと便利な事か!
「だが、代わりに体力を消費する。誰でも使えるような簡単な技ではない。お前達の言う戦闘力で1万未満の者は二倍でも体に相当無理を強いる事になるはずだ」
「そうか、大猿化にも利点があった訳だ。条件さえ揃えられれば、サイヤ人なら誰でも可能だというな。しかし、貴様との手合わせで、欠点も見えた。
大猿は、あまりにも小回りが利かん」
巨大化したから小回りが利かなくなる。
もっと早く気が付くべきではないか? そんな事を言われそうな分かり切った欠点だが、ベジータ王と同世代以前のサイヤ人にとって大猿化の欠点は「王族やその血が流れているエリート以外、大猿化すると理性を失う事」だけだった。
何故なら、他の惑星へ侵略に行く多くのサイヤ人は下級戦士であるため、大猿になると理性がなくなり、大猿化している間の記憶も残らない。そのため、大猿化している間に自分や仲間が苦戦した相手や、返り討ちにされた相手について、覚えていないのだ。
巨大化するのでスカウターも壊すか、変身前に外しているかのどちらかの場合が圧倒的に多いため外部の記録装置にも記録が残っていない。
とはいえ、逆に言えば王族やその血を引くエリートなら大猿化しても理性を保ち、その間の記憶も失われずに済む。しかし……そもそも、大猿化したサイヤ人にその欠点を思い知らせるような、強力な存在は滅多に存在しない。
他星を侵略しに行くサイヤ人の戦闘力は、最下級戦士の中でも弱い者でも約千。それが大猿化すれば一万。平均的な惑星のトップクラスの戦士の戦闘力が千であるのに対し、大猿化したサイヤ人は圧倒的に強いのだ。
特に王族の血を引くエリート戦士の場合は、ターブルのような非戦闘タイプにでも生まれない限り、4千や5千はある。
その惑星にギニュー特戦隊の隊員のような突然変異がいない限り、小回りが利かない事を意識する間もなく蹂躙出来てしまうのだ。
それを、ベジータ王はネイルという大猿化しても圧倒できない相手との戦いを経験する事で思い知ったのだった。
なお、彼が起こした反乱を鎮圧した大界王の下で修行する戦士達との戦いでは、彼らがベジータ王より圧倒的に強かったため、逆の意味で小回りが利かない事に気づく機会がなかったのだ。
「貴様ほどの者がいるなら、フリーザも早々にこの地獄に落ちる事になるだろう。できれば仇は息子に討って欲しかったが、仕方あるまい」
「……いや、まだフリーザを倒すのはとても無理だと思うが?」
「な、何? たしかに貴様の素の戦闘力では難しいだろうが、界王拳を使えば余裕で倒せるのではないのか!?」
驚くベジータ王に、ネイルは困惑した様子で答えた。
「もしかして、知らないのか? フリーザは変身タイプの宇宙人だと、奴の細胞を解析したゲロが言っていたぞ」
「なんだと!? 奴が変身タイプの宇宙人!?」
フリーザの戦闘力は約50万。そう思い込んでいたベジータ王の目論見は、驚愕と共に砕け散った。
「ああ、最終的にはその戦闘力は一億を超えるという解析結果が出ているらしい」
「いち……お……く……?」
「フリーザに従わされていたそうだが、知らなかったのか」
「ああ……奴は我々サイヤ人をいいように利用しつつも、信用はしていなかったからな」
フリーザが変身タイプの宇宙人だと聞かされても、それだけならベジータ王はここまで驚かなかっただろう。戦闘力が上がると知らされても、それが100万や200万なら愕然とまではしなかったはずだ。
しかし、億以上となると文字通り桁が違い過ぎる。
今の自分が大猿化しても、本気を出したフリーザにとっては的が大きくなるだけ。小回りが利かないとか、そんな弱点は突くまでもないだろう。デスビームを一発撃ってそれで終わりだ。
そんな奴がいずれ地獄に落ちてくる。……そもそもそんなフリーザ相手に息子やこのネイルは勝てるのかという疑問もあるが、それは無視して、フリーザが近い将来死んで地獄に落ちてくるとする。
そうなったら、圧倒的な力を持つフリーザにベジータ王が抵抗するには、閻魔大王に縋り彼がフリーザを封じ込める事に期待するしかない。
その期待が裏切られ、フリーザが部下を率いて閻魔大王に反乱を起こしたら……結果的には自分と同じように鎮圧されるだろうが、それまでの間逃げ隠れするか、見つかって嬲られるかの何方かになるだろう。
ただ、ベジータ王も配下のサイヤ人達も死者だ。生きている時と違って死ぬことはない。しかし、逆に言えば死ねないという事だ。
フリーザに何百万……何億年と怯え続けなければならない。サイヤ人の王としての権力を失い、ただの囚人として気が遠くなる歳月を存在し続けなければならない。
(とても耐えられん! それぐらいなら、消滅した方がまだマシだ!)
生きていた頃、フリーザに同盟とは名ばかりの隷属を強いられていた時代と比べると、ベジータ王にとって今の地獄での日々はずっとマシだった。
コルド大王やフリーザに脅かされる事のない、一日の三分の一ほど刑罰を受けるだけで残りは自由に過ごすことが許されている地獄での毎日。しかも、毎月地球から供え物が安定的に届かれるようになったここ最近は、快適と言っていいほどだった。……閻魔大王たちにとっては、不本意だろうが。
だが、その快適な生活を維持するためには、いずれ地獄に落ちるフリーザに対抗するために、彼自身も億か……せめて数千万にまで戦闘力を上げなければならない。大猿化を考慮に入れても、一千万。
生前の戦闘力は1万2千で、いまも十万に届かないベジータ王にとっては一千万でも気が遠くなるような数字だ。
「おい、その界王拳という技を儂にも――」
「すまないが、この技は界王様から滅多な者に教えてはならんと戒められている」
冷静に考えればもっともな話だが、界王は界王拳を教える相手を厳選していた。滅多な相手に教えて、悪人が界王拳を使えば……例えばフリーザやクウラが使うようになったら、それこそ歯止めが利かなくなってしまう。
……もちろん、フリーザやクウラが修行をして界王拳を習得しようとする可能性は低いが。しかし、それぞれの部下が、特にクウラが配下の機甲戦隊に使わせようとする可能性なら十分あるだろう。
「くっ……トレーニングを続けるしかないか。だが、それで儂がフリーザに近づけるのか?」
地獄の死者であるために、ベジータ王にはナメック星人に潜在能力を起こしてもらう事も、ヤードラット星人にスピリットパワーについて修行を受ける事も出来ない。精神と時の部屋の使用も不可能だ。
日々の修行でさえ、仕事(刑罰)を受けてからでなければならないので、実は生者よりも割ける時間は限られている。……今まではそれほど差はなかったが、最低でも一千万という目標を達成するには足枷になるだろう。
ゲロにより高性能なトレーニング機器を供えるよう要求する事は出来るが、それだけで十分かどうかは……
「ベジータ王、さっきの大猿化だが……大猿に変身せずに大猿になる事は出来ないか?」
「なに? お前は何を言っているのだ?」
考え込んでいると、ネイルに突然訳の分からない事を聞かれて、ベジータ王は目を瞬かせた。
「いや、つまりだな、巨大化せずに大猿になったのと同じパワーアップが出来るようになれないかと思ったのだ。それなら、お前の言っていた小回りの利かなさも克服できると思うのだが、どうだ?」
ネイルも下手な冗談を言った訳ではない。彼なりにベジータ王を心配して、何か助言できないかと考えた結果思いついたのが、この質問だった。
ベジータ王が悪人である事を知っているネイルだったが、彼の態度はやや偉そうではあるが悪意のある者ではなかった。そして、ともにフリーザを敵とする者同士という事で、親近感を持っていた。
そんな彼が自分の教えた事で深刻な様子で思い悩んでしまったので、何か力になれないかと考えた結果である。
「……考えた事もなかった。大猿に変身せずに大猿のパワーを得る。やってみる価値はあるかもしれん」
ベジータ王も、生前に同じ事を尋ねられたら「つまらんジョークだ」と言って考えもしなかっただろうが、溺れる者は藁をも掴むという。藁よりはよほど確かなアイディアに、飛びつかないはずがない。
「そうか、力になる事が出来て良かった」
こうしてネイルは界王星へ帰還し、界王様の修行を納めてナメック星へと帰り戦士タイプのナメック星人達を鍛える事になる。
また、ベジータ王はフリーザが地獄に落ちた時彼に対抗できる力を得るためによりトレーニングに打ち込み、ネイルが提案した大猿に変身しないままパワーアップする技を編み出す事を目指すのだった。
なお、彼はゲロがフリーザを殺さず脳改造して完善体メカフリーザにする事を企んでいる事は、まだ知らない。
『帰ってきた桃白白、逆襲のメカピッコロ大魔王』の撮影は天下一武道会が終わって後、すぐに始まる予定だったが……監督が「天下一武道会優勝者のギネさんを是非出したい!」と言い出した事で、脚本家とリアルファイトに突入。その後、ギネ本人がまだ映画に出演する事を了承していなかった事が明らかになり、やはり揉め、撮影開始が秋ごろに延期になった。
ギランはその間に何故か聖地カリンで、守り人のボラと稽古をしていた。
「お前、十分強い。何故、カリン塔に登ろうとする?」
「ヘ、ヘヘ、男には守らなきゃならねぇプライドってもんがあるのさ」
「そうか、訳があるのか。深くは聞かない」
格好をつけてボラを煙に巻いたギランだったが……前回に続いて桃白白主演映画第四弾にも、舎弟共々メカピッコロ大魔王の手下役で出演してほしいとオファーされた彼だったが、撮影で気功波を撃ってほしいと言われて後に引けなくなってしまったからだった。
天下一武道会の一回戦で、「撃てるけど体力を消費するから撃たないだけだ」というようなことを言ってしまったので、今更打てないとは言えない。しかも、今回は舎弟達もいるので、本当のことを言ったらウソがばれてしまう。
そこで彼は、撮影の開始が数カ月延びたのを利用して、「撮影のためにトレーニングを積んでくる」と人里離れた聖地カリンに逃げ……修行を積みに来たのである。
ちなみに、修行を経ても結果光線が撃てるようにならなかったら修行に夢中になったせいで遅刻した事にするつもりである。
「分かった。お前が塔を登り切れるかは分からないが、先に塔に登ったアックマンと同じように翼もあるから死ぬことは無いだろう。今日は休んで、明日塔に挑戦するといい」
「父上、でも眠っている時に落ちちゃったらギランさんが危なくないですか?」
「ウパ、男には危険でも行かなければならない時がある。お前にも、いずれ分かる」
「はい、父上! ギランさん、頑張ってくださいね!」
「お、おうっ! ありがとよ、坊主」
ウパの純粋な眼差しに気後れしながらも、ギランはカリン塔を登る許しを得たのだった。
なお、獅子牙流のヤシシはカリン塔に赴く前に道場のある地元で修行を、より難易度を高くしてやり直している最中である。
そして夏になり、ゲロが「これで原作開始まで残り二年を切ったな」と呟き、ナムがナメック星で念願の潜在能力解放を受け、不死鳥にチャパ王やナム、チューボやコリー博士が触れて不老長生を得た頃、亀仙人は地球で修行をしながら旅をしていた。
チャパ王に免許皆伝を与えてから、彼は直弟子を取っていない。今日もまだ見ぬ弟子候補を探していたのだ。
「悟空とチチは十二になってから教える予定じゃし、ラズリとラピスは鶴のが教える事になっておるからの~。サンとギネに技を教えたいところじゃが……」
滅多に弟子を取らない事で知られた自分が、才能ある弟子を求めて修行しながら旅をするようになるとは、分からんものだと、砂漠を歩いて進む亀仙人。
こうして歩くのも足腰を鍛える修行になるが……そろそろ在野から弟子を探すのは潮時かもしれないとも考え始めていた。これからはゲロが改造した人造人間達に技を教えるか、せっかく流派を鶴亀流と改めたのだし鶴仙人と共同で弟子を育てるべきかもしれない。
しかし、鶴仙人と四六時中顔を合わせるようになったら、弟子に教えるより鶴仙人と罵る時間の方が長くなってしまうかもしれない。
「……ん?」
そう考える彼の目に、遠くから土煙を立ててこちらに走ってくるオープンカーが見えた。はて、こんな砂漠で何をしているのだろうかと思って眺めていると、車はそのまま亀仙人のやや前で止まった。
「ご老人、この砂漠を一人旅とは物騒だぜ」
「この辺りは危険な蠍や毒蛇に、怖い山賊だって出るんですよ!」
そして、車からそんな事を言いながら胸に「楽」と書かれた服を着て腰に刀を差した長髪の色男……というにはまだやや若い少年と、青い毛並みに長い尻尾を生やし空中に浮いている猫に似た生き物が降りてきた。
「ほう、そう言うお前さん達は何者かの?」
この若者、武術を嗜んでおるな。それも、並みの使い手ではない。まあ、三年前のギランと同じかやや劣るぐらいだが。そう思いながらも、油断せず亀仙人は尋ねた。
「フッ、俺達は――」
少年はニヒルに笑うと、オープンカーから旗を取り出して掲げて見せた。
「俺達は、この砂漠を専門にしているベテランの観光&ボディーガード業者! ヤムチャ&プーアルです!」
「美味しい食事に冷たい飲み物が付いて、誰も知らない砂漠の絶景スポットへもご案内できます! しかも、山賊や危険な獣にはこのヤムチャ様がお客様をお守りします! ね、ヤムチャ様!」
「ああ、こう見えても俺は拳法を嗜んでいますから! ボディーガードも万全です!」
なんと、観光&ボディーガード……つまりツアーガイドの売り込みだった。
原作で荒野のハイエナと恐れられた盗賊ヤムチャは、何故かプーアルと共にツアーガイドで生計を立てるようになっていた。
「ほ、ほぅ。ベテランにしては去年この砂漠を通りがかった時には見かけなかったが?」
「去年の今頃ですか? あー、去年の今頃は団体のお客さんを砂漠のオアシス経由で奇岩が立ち並ぶ通称『砂漠の彫刻広場』まで案内するのに忙殺されておりまして……」
やや戸惑いつつ放った亀仙人のツッコミに対して、プーアルは車から手帳を取り出して過去のスケジュールを確認しているように装って答える。
なお、この時ヤムチャは十五歳で、プーアルと出会ったのは数か月前……つまり、プーアルが語っているのは嘘だ。彼が見ている手帳のページも実は白紙である。
「ちなみに、今なら映画でも話題の、伝説のピッコロ大魔王が封印されている祠がある洞窟にご案内できますが?」
「なにっ!? ピッコロ大魔王が封印されている祠じゃと!?」
「え、ええっ。といっても、洞窟の中は危険なので入り口までしかご案内できませんが」
原作のことなど知らない亀仙人だったが、ピッコロ大魔王と聞いては黙っていられない。封印されている場所が違うような気がするが、あれから二百年以上過ぎている。もしかしたら、誰かが亀仙人の知らないうちに移したのかもしれない。
もちろん亀仙人もヤムチャ達が言っているのは、悪く言えばペテン、よく言っても映画人気を利用した偽聖地巡礼だと分かっている。
しかし、この時亀仙人は先を急ぐ旅ではなく、懐にもゲロから研究協力への報酬という名目でもらった金で無駄に暖かかったことから、念のために確かめる事にした。
「……よし、ガイドを頼もう。いくらじゃ?」
「毎度ありがとうございます!」
こうして、亀仙人はガイドを受ける事にしたのだった。
その頃、占い婆の宮殿では占い婆の不在が続いていた。彼女は第二十四回天下一武道会を観戦した後、ヤードラット星に戻り修行の完成に向けて追い込みをかけている最中だった。
だが、彼女の事情に関わらず客は来る。金持ちの客の場合は、だいたいの場合アポイントメントを取って占いを依頼してくるので問題はない。しかし、格闘試合に挑戦する方の客は前触れもなく現れる事が多い。
そのため、宮殿にはヤードラット星にいる占い婆への連絡手段として、スカウターが置かれている。
とはいえ、格闘試合に挑戦する方の客が占い婆の戦士達を倒して占ってもらう事はまずない。アックマンが恥を忍んでカリン塔を登ってカリン様の修行を受けているため不在だが、ミイラ君がいるからだ。
ドラキュラマンやスケさんが敗れる事はそれなりにあるが、挑戦者が天下一武道会本戦出場者やGCGの隊員でもなければミイラ君が負けるはずもない。
そのため、格闘試合に挑戦する客が来た時に占い婆に連絡する理由は、試合を観戦するか否かの確認をするためだった。
「占い婆様、お客様が試合に挑戦したいそうですがどうしますか?」
『ふむ、どんな客じゃ?』
見ごたえのある試合が出来そうか? という意味の問いを返された幽霊っぽい使用人は、慣れた様子で答えた。
「グルメス王国軍のボンゴ様と、ボンゴ親衛隊の皆さまです」
『ああ、奴等か。う~む、普通の挑戦者の中ではいい部類だが、どうせミイラ君には勝てんじゃろうしなぁ。パスタとオレガノも参加しないようじゃし、修行も大詰めじゃから、今回はパスじゃ。
後は任せたぞ』
「畏まりました」
そう言ってスカウターを置いた幽霊っぽい使用人は、ふと疑問に思った。
「しかし、あの人達も何故試合に挑戦する事に拘るのでしょう? グルメス王国は最近景気が良いはずなのに」
国全体の景気は良くても軍の予算は絞られているのか、それともボンゴ達のプライドの問題なのか。
彼は別にどちらでもいいかと思い直して、ミイラ君達に声をかけに向かったのだった。
〇地獄の刑罰
劇場版『復活のフュージョン!! 悟空とベジータ』で、ジャネンバに閻魔大王が閉じ込められた影響で変化した地獄に、血の池地獄や針山地獄等があったことや、アニメでも血の池や針の山等があったので、日本の地獄のイメージに沿う施設(?)は一通りあるだろうと考えました。
しかし、刑罰で受ける苦痛は、いくら受けてもサイヤ人の瀕死パワーアップには影響しないとします。また、刑罰で受ける傷や疲労は、しばらくしたら刑罰を受けるのに支障がない状態にまで再生すると思われます。
再生しなかった場合、地球人の悪人が刑罰を受けたら魂が浄化される前に数日と持たず消滅してしまう可能性が高いと思うので(汗
〇地獄の死者の肉体
ドラゴンボール世界の肉体を持つ死者は、死亡した場合魂が消滅してしまいドラゴンボールでも蘇生できない(スーパードラゴンボールなら多分可能)。
ただ、地獄の死者の場合は過酷な刑罰を受ける必要のある仮初の肉体は、生前のものより数倍以上丈夫になっていると思われる。
ゲーム等のHPに例えると、生者の肉体はHPが0になったら死亡するが、地獄の死者の肉体はHPがマイナスになっても消滅しない。消滅するのは、よっぽどオーバーキルだった場合とこの作品では設定します。
〇界王拳
この作品では「界王拳」が1・5倍、「二倍界王拳」で戦闘力が2倍、三倍で戦闘力が3倍、と増えていく技とします。
その代わり、倍率をあげる度に体にかかる負担や失う体力の量も倍増していく技とします。
原理上、千倍界王拳を使用すれば、現時点のネイルでもフルパワー状態のフリーザを倒せますが瞬間的に体力を失って、すぐ倒れる……場合によっては死に至ります。
高倍率の界王拳に耐えられるようにするには、高い気の制御力と消耗に耐える体力が必要だと思われます。
悟空がスーパーサイヤ人に成れるようになってからは、あまり使われなくなったので、スーパーサイヤ人化で戦闘力を素の五十倍にした方が、五十倍界王拳を使用するより失う体力と体にかかる負担が少なくて済むのだと思われます。
なお、この作品でネイルが界王から「この技を滅多な者に教えてはならない」としているのは、独自設定ですが、技の開発者である界王様の目に適ったものにしか伝授されない技なのではないかと考えた結果です。
〇ネイル
界王様の所で約四年修行した事で、戦闘力が13万から27万に。界王拳を実戦で試して、消耗に耐えられるか知りたいと彼が希望したため、大猿化ベジータ王との腕試しが実現した。
訓練では十倍界王拳まで使える。また、実は元気玉も習得している。
〇ベジータ王
フリーザは変身タイプの宇宙人で、戦闘力は最大で億を超えるという真実を知ってしまい、狼狽えるベジータ王。劇場版『ブロリー』でブロリーが行っていた、大猿に変身しないパワーアップを目指す。
なお、ネイルに倒されボロボロにされた事で戦闘力は5万8千から7万7千にパワーアップした。
〇ボラ
原作よりもカリン塔を登る者が多く、天津飯などと腕試しをするなどした結果、原作よりやや強くなっている。また、原作と違い奥さんも存命。
〇ヤムチャ&プーアル
原作で盗賊だったヤムチャが、この作品では何故か開業している旅行会社。詳細は次の話で明らかに?
〇グルメス王国軍
占い婆に占って欲しい事があるらしい。探しているのは美味い料理か、一流シェフか、珍しい珍味なのか……。
路徳様、クウヤ様、N2様、あんころ(餅)様、変わり者様、タングラタン様、ヨシユキ様、酒井悠人様、カド=フックベルグ様、step11様、117様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。