ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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神龍の伝説&この世で一番強いヤツ
40話 人造人間7号こっそり完成! 暗躍するグルメス王国軍!


 アルマの墓に『帰ってきた桃白白、逆襲のメカピッコロ大魔王』のDVD――この世界ではまだ一般的にはビデオテープの時代だが、我が社では現在家庭用の再生機とレコーダーを開発中である――を供え、モロコ達用の地球の科学雑誌と、ベジータ王やバーダックチーム向けに重力トレーニング室のアップグレード用のパーツとプログラム、そして取り扱い説明書をサイヤ人の共同慰霊碑に供える。

 

 年が明けて、界王様の修行を一先ず終えたネイルはナメック星に帰還した。儂の狙い通り、彼は界王拳と元気玉を無事習得した。地獄で大猿化したベジータ王と手合わせしたと聞いた時は驚いたが。

 ネイルは実戦で使えるのは十倍界王拳までだが、瞬間的には二十倍まで使えるそうだ。彼の今の戦闘力は約30万。二十倍でも600万で、フリーザ最終形態のフルパワー時の5パーセントでしかない。だが、フリーザが第一形態の時なら約十二倍。十倍界王拳でも、約六倍だ。

 

 だから、ネイルがフリーザに勝つためには第一形態で「もちろん、フルパワーであなたと戦う気はありませんからご心配なく」と言っている間に、界王拳で一気に戦闘力を上昇させてフリーザが対応する前に致命傷を……頭部を破壊するとか、体を縦に真っ二つにすれば勝てるだろう。

 

 フリーザは変身すると変身以前に受けていたダメージが回復していたような描写――実際は回復や治癒ではなく、変身して新形態になった事で最大HPが爆発的に増え、その結果受けていたダメージが実質かすり傷程度に軽くなったのかもしれない――があった。

 しかし、頭部を破壊される等した場合はさすがにそのまま死ぬだろう。

 

 ネイルには、そこまで修行してもらったのに不意打ちを奨めて済まないと謝罪したが、彼は快く納得してくれた。

「確かに、修行して手に入れた力と技を思う存分試してみたいという気持ちが無いと言えば嘘になる。しかし、ナメック星の皆や、お前達の命を賭けてまで試したいとは思わない。

 ただ、まだ時間はある。その間に正面から戦って倒せるだけの強さに到達できるよう、修行するだけだ」

 そう決意を漲らせていた。実際、フリーザと戦うまで原作通りなら後十年以上あるので、ネイルがフリーザ最終形態と戦える強さを手に入れる確率はゼロではない。

 

 もちろん、原作とは異なるタイミングでフリーザがナメック星やヤードラット星、そして地球にやってくる可能性もあるが。

 そして、此方から倒しに行くのは以前も述べたが悪手だ。フリーザを倒せたとしても、今度は常にフリーザの最終形態と同じ形態で行動するクウラが、一族の誇りのためにフリーザを倒した者を殺しに来る可能性が高いからだ。その際は、コルド大王も来るかもしれん。不意打ちが通じないので、その場合は今度こそ詰む。

 

 それに、成功するか賭けになる不意打ちしか勝算の無い状態でフリーザに挑むのは無謀すぎる。歴史改変者も存在する以上、「不意打ちを成功させての勝利」は最後の賭けにするべきだろう。

 ドクターウィローにならまず勝てるだろうが、動き出す様子もまだないのでまだ静観でいいはずだ。

 

 そしてネイルは儂とブリーフがアップデートし、二百倍まで対応可能になった重力トレーニング室で修行をしつつ、戦士タイプに生まれ変わったマイーマ達やムデン達若い戦士タイプのナメック星人との組手を行い修行に励んでいるそうだ。

 

 また、春頃に占い婆が地獄から連れてきたサイヤ人と儂等の代表が戦う、あの世対この世の交流試合が行われる事になった。今回は二日にかけて行われる予定で、亀仙人達も前回より張り切っている。

 何故なら、一日目の現世チームはその亀仙人や桃白白、鶴仙人達の予定だからだ。

 

「ここが地球か。生きていた頃なら高く売れそうな星だとでも言うところだな」

「ちょ、ちょっと、バーダックさんの奥さんと息子も暮らしてるんですから、滅多なことを言わないでくださいよ」

「分かってるって、ただの冗談だ。第一、売る相手なんていないだろうが」

 

 そう話すバーダックの知り合いらしい二人を含めた、五人のサイヤ人。バーダックチームでもベジータ王でもなく、彼らは適当に選ばれた下級戦士達だ。

「かなりの気の持ち主ばかりじゃな。これで下級戦士とは、サイヤ人は恐ろしい奴らじゃわい」

「だが、三年前と違って勝負にならない程ではない」

 

 三年前はバーダックチーム+αとの試合の作戦会議中や、休憩中に行った前座試合でしか戦えなかった亀仙人達も、今では戦闘力で千を軽く超える。特に亀仙人は3千に迫るほどになっており、並の下級戦士相手ならまず負けないだろう。

 

「それに、もう地球人は俺達に簡単に侵略されるような連中じゃない。戦闘力を読めばわかるだろ?」

「確かに……大猿化でもしないとこれは無理だ。

 あっ! ギネさん、お久しぶりです!」

 

「リーク、タロ、今日は皆をよろしくね!」

 あの世チームのサイヤ人の内二人は、バーダックとチームを組んだことがあるリークと、知り合いのタロだった。

 そして亀仙人、桃白白、鶴仙人、タイツ、そしてターレスの五人で試合が行われた。

 

 一度目は一対一の勝ち抜き戦。二度目は五対五のチーム戦。一度目の勝ち抜き戦では、あの世チームが勝利した。ただ、大将であるタロが亀仙人相手に辛勝するというギリギリの勝利だったが。

 

「いててて……なんだ、あの技は? 地球人ってのは電撃も放てるのか?」

「ほっほっほ、あれは気の性質を変化させた奥の手じゃよ」

 萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)をギリギリ耐えたタロが亀仙人を殴り倒して勝利した。なお、リーク以下四人はそれまでの対戦で負けている。

 

「供え物で送られてきた映像で見たが、地球人って言うのは本当にタイプが多彩だな。非戦タイプが多すぎる気がするけど」

「種族の殆どが戦士というお前達サイヤ人が珍しいのだ」

「まったくだ」

 

「あの爺さん達だけじゃなくて、ターレスとタイツも戦闘員としてやっていける強さだな。大したもんだぜ」

「まあね、でもまだまだ強くならないと、ターレスにはすぐ追い越されちゃいそうだし、悟空君も強くなりそうだしね」

「どっちがサイヤ人か分からねぇな、まったく。それにしてもお前ら、中途半端にやりやがって……手加減するなって言っただろ」

 

「い、いや、そんなこと言われたってよ」

「ああ、おっかなくて追い打ちなんてできるかよ」

 

 リークは打ち解けた様子で桃白白と鶴仙人の三人で話しており、残りの三人のサイヤ人は戦闘力1300のターレスと1500のタイツを褒めていた。ちなみに、彼らが恐れているのは試合を観戦していたギネ……と多分儂だ。

 おかげで彼らはターレスに試合では勝ったが、瀕死に追い込む程激しい戦いにはならなかった。

 

「爺さんとギネも過保護過ぎだぜ。骨が何本か折れたぐらいならヨンが治せるし、メディカルポッドだって持って来てるだろうが」

「面目ない」

「ごめん、ごめん。思わず気になっちゃってさ」

 儂とギネは正座をしてターレスから叱られたのだった……。

 

 一戦目の勝ち抜き戦では、実力が近く場外負けありのルールだったので誰も瀕死にはならなかった。

 しかし、二戦目のチーム戦では一戦目より激しい戦いになり、タロ達あの世チームの全員が、そして現世チームも亀仙人以外の四人が4号の治療の世話になる事になった。

 

「な、なんで負けたんだ……? 俺達サイヤ人は、集団で戦うと戦闘力が強くなるはず……?」

「じ、地獄で、地獄のようなトレーニングもしたってのに……」

 そう治療を待ちながら呻くタロとリークに、亀仙人と治療を受け終えたターレスが答えた。

 

「三年前に見たセリパちゃん達と比べると、チームワークがだいぶお粗末じゃったからのぅ」

「お前らは同じ場所で五人がバラバラに戦っているだけで、俺達は連携して戦ったって言えば分かるか?」

 そう言われると、二人はなるほどと頷いた。

 

「チームワークか……あまり考えた事が無かったな。生きている頃はチームを組んで働いたが、こいつらとじゃなかったし」

「そう言えば、お互いに顔と名前は知っていても、一緒に戦った事ってなかったですね。地獄でも、そんな機会はベジータ王が起こした反乱の時ぐらいだったし」

 

 サイヤ人は集団で戦うと戦闘力が上がる性質を持っているが、同族同士の絆の希薄さのせいでその強みを生かしきれない場合が多いようだ。タロ達の敗因もそれで、ピンチのチームメイトを助ける事よりも自分が目の前の相手に勝つことを優先してしまった。

 ただ、バーダックチームを見ればわかるように仲間意識がないわけではない。しかし、タロ達は生前同じチームで働いた経験が無いらしく、そのせいでチームワークが培われていなかったようだ。

 

「もっとも、紙一重でやられた側の俺がとやかく言える事じゃないがな」

 そう言いながらもターレスが悔しげではないのは、瀕死から復活した事で初めてパワーアップを経験したからだろう。

 

「う~、やっぱり損してる気がする~、地球人はパワーアップできないなんて不公平じゃない? 一気に追い越されてるし」

「まあ、儂等は地球人じゃからな」

「そう言えばタイツは今年十五になるのだったな。会長に人造人間にしてもらうか?」

「それもちょっと、考えがあるからそれは保留しようと思うのよ。不死鳥さんには触れるけど」

 

 いわゆる瀕死パワーアップが出来ないタイツが羨ましがり、鶴仙人が生まれた種族ばかりは仕方ないと肩をすくめる。桃白白はタイツに人造人間化の意思を尋ねるが、今のところ彼女にはそのつもりはないようだ。

 

「タイツよ、不死鳥に触れたいのなら条件が――」

「今度新しい水着を買ってカメハウスに遊びに行くからいいでしょ、亀のお爺ちゃん?」

「――もちろんじゃ! いつでも遊びに来ると良え!」

 

「相変わらずブレませんなぁ……不死鳥が自分をスケベに利用しないで欲しいとため息をついていましたぞ」

 弟子の嫁や弟子の息子の嫁相手にもブレないスケベさと、それを「亀仙人だから」で流せるのはある種の超能力かもしれない。

 

 単に、そのあたりの意識がこの世界では地球よりも緩いからかもしれんが。

 

「まあ、ええじゃないか。年寄りの数少ない楽しみなんじゃから」

 そう言う亀仙人に、実は儂もあまりとやかく言うつもりはない。タイツは水着ぐらいならナメック星に行った時等に普通に着ているし。

 

「そう言えばお爺ちゃん、新しい人造人間は作らないの? ギネさんの後、誰も人造人間にしてないけど」

「ああ、永久エネルギー炉の完成度を上げるのに苦戦していてな。セリパとトーマには悪いがもう少し待ってもらう事になるじゃろう」

 タイツの質問にそう答えながら、地獄にいるランチの事を口に出そうとしたタロやリーク達の口をテレパシーで口止めしておく。

 

 ランチやランファンはレッドリボン軍を通じて遺体を手に入れたので、レッドリボン軍をどうにかするまでは存在を明らかにできないのだ。知っているのは4号と桃白白ぐらいである。

 

 ちなみに、まだサイヤ人と戦えるほどには至っていない悟空達は占い婆の通常の戦士達と試合をしている。

「まさか、勝てるとは思わなかったぜ」

「あたし達、強くなってるんだな。二対一だけど」

 ラズリとラピスは二人一組でドラキュラマン、そして透明人間のスケさん相手に見事勝利した。まだ修行を始めて二年目だが、集中すれば気の感知が出来るようになっているので、ラピスが守っている間にラズリが気を読んでスケさんの位置を把握し、攻撃して彼を場外へ追い込んだのだ。

 

「いてて、やっぱ強えんだな、ミイラ君」

「くっ、全く相手にならなかった……」

「一対一じゃ、今のあたし達じゃ無理ね」

 

 他の年少組とヤムチャはミイラ君と総当たり形式で試合した結果、全滅している。まだ本格的な修行をしていない悟空達に、亀仙人に弟子入りしてから一年経っていないヤムチャでは、原作より若干強くなっているミイラ君には勝てなかったのだ。

 

 そして二日目、バーダックチームとベジータ王が再びこの世に戻ってきた。

「再び現世に戻る事があるとはな……。クックック、誉めてやろう占い婆よ」

「別にお前さんのために修行した訳ではないがの」

 現れたベジータ王は、地獄でトレーニングを積んだためか三年前よりも明らかに風格というか、迫力が増していた。

 

「よう、ギネ! 久しぶりだな!」

「ギネ~、なんで俺の技だけ使ってくれなかったんだよ~」

「武道会の映像見たよ、三年前も思ったけど本当に強くなったね、ギネ」

「ターレス、悟空、前より、大きくなったな」

 バーダックチームがその横をすり抜けてギネや悟空、ターレスに話しかけるので、その迫力もすぐに霧散したが。

 

「貴様ら……!」

「それはともかく、今回もよろしく頼みますぞ」

「ああ、ゲロか。貴様には聞きたい話がある。試合の後、時間を作っておけ」

 

 そしてツムーリの代わりに若い世代の戦士タイプのナメック星人であるムデンを加えた以外は三年前と同じメンバーで、昨日と同じく勝ち抜き戦とチーム戦で戦った。ナメック星で潜在能力を覚醒されたギネはもちろん、儂等も三年前よりはだいぶ強くなったはずだ。

 

 しかし、勝ち抜き戦では結局ベジータ王に勝つことはできなかった。チーム戦では何とかセリパ達を倒してからギネを中心として戦う事で、儂と4号もスピリットブーストを使って何とか倒す事には成功したが。

 そうした結果、前回と違い瀕死になったのは各人一回ずつで済んだ。……うむ、ターレスに人の事は言えんな。

 

 そしてベジータ王の話とは、儂がフリーザの戦闘力が最大1億2千万であることを黙っていたこと……ではなく、大猿に変身せず人型の姿のままでパワーアップの効果のみ得るための相談だった。去年、ネイルに提案されてから独自に修行を重ねているらしいが、上手くいっていないようだ。

 

「貴様なら、何かアドバイスできるのではないか?」

「ふむ……儂はサイヤ人ではないですからな」

 そう言いながら難しい顔を作る儂だが、ベジータ王の目標が実現可能……少なくとも、実現させたサイヤ人を一人知っている。劇場版『ブロリー』の新ブロリーだ。もちろん、彼に可能だったからベジータ王にも可能だとは限らない。

 

 しかし、可能性は高いと儂は考えている。何故なら、ブロリーが大猿に変身せず元の大きさと姿のままパワーアップ可能だったのは、スーパーサイヤ人4へ変身する数段階前の状態だと推測できるからだ。

「後、貴様とヨン・ゴーのスピリットブーストを教えろ」

 そして、劣化界王拳であるスピリットブーストにも目を付けたようだ。

 

「スピリットブーストの方は、教えを受けたヤードラット星人に教える相手を選ぶと誓っておりますし、儂もまだスピリットパワーについての理解は浅く、教えても形にするのは難しい。

 それに、体力の消費が激しいので大猿化と同時に使用した場合、命の保証が出来かねるので」

 

 スーパーサイヤ人化した状態で界王拳を使うのと、そう変わらないだろうからな。

 

「む……そうか」

「それで肝心のアドバイスですが、大猿化する際に集中的に気の制御を行うのが効果的ではないかと」

 儂はサイヤ人の大猿化について、スピリットパワーを扱う技術が応用できるのではないかと推測した。スピリットパワーでの巨大化は、気の制御と解放を同時に行い、巨大な自分と同じ形で実体化した気を纏っている状態……らしい。

 

 サイヤ人の場合は気……力の解放と肉体の変化は本能が勝手にやってくれるので、ベジータ王は制御に集中すればいいはずだ。

 なお、それなら気の制御技術がないはずのブロリーが何故大猿に変身せず人の姿のままパワーアップする事に成功したのか説明がつかなくなるが……ブロリーだからな。彼も彼で天才なので、どうにかしたのだろう。何せ、スーパーサイヤ人ブルーの悟空とベジータ、そしてゴールデンフリーザ相手に連戦した伝説のスーパーサイヤ人じゃし。

 

「机上の空論だが、それで手応えが無いなら占い婆に頼んで大猿化しても理性を保てるサイヤ人を何人かこの世に連れて来てもらい、大猿化させてデータを取って検証してみよう」

 ベジータ王達はブルーツ波遮断目薬を付けており、今日は……つまりこの世にいる間は満月を直視しても大猿化する事は出来ないのでデータ収集は不可能だからな。

 

「なるほど。我々サイヤ人は、最近まで気の制御技術を持っていなかった。大猿化する際、気を制御しようとする者も存在しなかったはずだ。試してみる価値はある。

 さすがは我が宰相だ」

 

「いや、儂は宰相になった覚えは無いのだが……この前来たモロコ達には期待を裏切るようで言えなかったが。

 それより、スーパーサイヤ人に成るつもりはないのか?」

 戦闘力が十倍になる大猿化より、約五十倍になるスーパーサイヤ人化の方が強くなれるし、大猿化のようなデメリットもない。

 

「フン、なろうと思ってなれるのなら伝説にはなっておらん。スーパーサイヤ人は、我が息子ベジータのような、生まれながらの天才でなければ不可能だ」

 だが、ベジータ王は自分がスーパーサイヤ人に成れるとは最初から考えていなかったようだ。

 

 生前のベジータ王ならそうだったろうが、今のベジータ王ならスーパーサイヤ人になれるのではないかと思うのだが……スーパーサイヤ人化にまだ彼の肉体が耐えられない可能性もあるので勧めないほうがいいだろう。

 

 そうして二日に渡った占い婆の宮殿で開かれたあの世とこの世の交流戦は終わったのだった。

 なお、この頃儂は占い婆に儂等以外の客について尋ねる必要があるとは考えていなかったため、グルメス王国の関係者が彼女に占いを依頼している事を聞く機会を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 その後、完成を前に再び改造をやり直した人造人間7号ランファンが六月に完成した。

「初めまして、ドクター……って、言った方が良いのかしらん? それともパパとか?」

「好きに呼んで構わんよ、と言いたいところだが、君にはドクターと呼んでもらった方が都合は良いじゃろうな」

「レッドリボン軍でドクターフラッペをしているからよね。普段からドクターって呼んでいれば、口が滑ってもばれずに済むってわけね」

 

 なお、彼女が置かれている状況や諸々の情報は、占い婆を通じて渡した分以外にも、秘密研究所の裏手に作った彼女の墓に手紙を備える事で伝えてある。

 天下一武道会で自分が強化され、操られていた事について知った時は、天国で転げまわって恥ずかしがったらしい。武者修行の旅に出た理由の、自分には隠された力があるという確信が勘違いだった事が、相当ショックだったようだ。……天下一武道会で下着姿になっても平気だったのに、彼女の羞恥心が刺激されるポイントは儂には不可解じゃな。

 

 そして、何故引き留めて教えてくれなかったんだと文句を言っていたと、この前現世に戻ってきたアルマから伝えられた。……当時の彼女に説明したところで信じて武者修行を思い留まるとは思えなかったが、黙っていたのは事実なので謝罪の手紙を供えておいた。

 

「それじゃあ、私はこれからレッドリボン軍で働くわけ? なんだか潜入捜査官みたいでカッコいいわね」

「いや、君の完成はレッドリボン軍には後一年程黙っておくつもりだ。……あまり早い段階で大きな戦力が手に入ったと思い込ませると、彼が世界征服に乗り出すかもしれんからな」

 レッドリボン軍が原作より早く、そして原作より大規模な作戦を展開しようとすると都合が悪い。

 

 正直、今の段階でレッドリボン軍を壊滅させる事はいつでもできる。なので、儂にとって都合のいい形になるよう手を回させてもらおう。……幸い、原作よりも真っ当な傭兵団になっているから、一刻も早く倒さなければならないという事もない。

 

 ……むしろ、レッドリボン軍を壊滅させると、その後のレッドリボン軍の縄張りの治安維持をどうするかが問題になってしまう。縄張り内の警察がレッドリボン軍と癒着しきっているので、全く頼りにならんからな。

 一つの組織が幅を利かせているため、他の犯罪者が活動する余地がない。そんな状態なのである。

 

 もちろん、それもどうするか考えてはいるが……レッドリボン軍が本格的に世界征服に動き出すと、その考えを実行するのに支障が出るのだ。

 

「ふうん。じゃあ、その間あたしはどうしてればいいの?」

「それについてなんじゃが、一年程修行中心の生活をおくるというのはどうじゃろう?」

「修行って言うと……武天老師様とか!?」

「君が弟子入りすると亀仙人は大いに喜ぶじゃろうが、今彼の下で修行している弟子がショックで死にかねんから遠慮してくれ」

 

 あがり症が治っていないヤムチャにとってランファンは、劇物にもほどがある。

「え~っ!」

「とりあえず、了承してもらえるならナメック星はどうかと考えておる。嫌な場合は、君用の変装キットも用意してあるので一年間身分を隠して修行をしながらの生活になるが」

 

「ナメック星って、あのヨン・ゴーの生まれ故郷……ってわけじゃないけど、ナメック星人のいる星よね!? なら興味があるわ。テレビで見た時は何にもない所っぽかったけど、二年ぐらい花畑しかない天国にいた今のあたしなら平気だと思うのよね」

 

 という事で、ランファンはしばらくナメック星で修行する事になった。彼女の戦闘力は目覚めたての今は1万で、修行をすれば4号だけではなくサンやギネにも追い付くだろうから、ムデン達戦士タイプのナメック星人達はいい組手相手になるはずだ。

 

 ちなみに、ランファンには打倒フリーザプロジェクトへの参加や、地球が危機に瀕している場合は戦う事、そして儂にデータを提供する事を、儂が彼女の生活を保証する……GCコーポレーションから給料を出す事を条件に快く契約してもらっている。

 なんだかヒーローになったみたいだし、プロの武道家として雇われている感じで良いと、喜んでサインしてくれた。

 

「では、ナメック星に行く前に確認だが、体に不具合や気に入らない点はあるかね?」

 そう尋ねると、ランファンはその場で簡素な入院着姿の自分の体を見下ろしたり、眉間に穴がない事を改めて確認したり、軽くシャドーボクシングをして、自分の体を確認した。

 

「ないわ。お肌もツルツルスベスベだし、バストも大きくなってるし……ねえ、どれくらい大きくしてくれたの?」

「アルマにもっていってもらったイメージ図の内、君が選んだものと同じじゃよ」

 具体的に言うと、マロンより若干大きいぐらいだ。

 

「ありがと。それで、この尻尾は?」

 ランファンの腰には、サイヤ人の尻尾が生えていた。

「うむ、手紙にも書いた通り、サイヤ人の細胞を多めに移植した結果じゃな。イメージ図にも尻尾が生えている画像が使ってあったじゃろう?」

 

 儂はランファンにサイヤ人の細胞を多めに移植し、どの程度で外見に影響が現れるのか実験した。これは人造人間化後のデータを、外見に影響が出ないように調整したサンと比較したかったという理由もある。

 潜在能力、回復力、精神的な影響……等々違いが現れるのか否か。なお、ランチとマロンも宇宙人の細胞を多めに移植する予定である。

 

「それはそうだけど、実際に自分に生えている尻尾を動かしたり、触ったりするのとは違うじゃない?」

「神経や筋肉に問題があるなら再調整するが?」

「ん~、大丈夫。でも、そんなに気になるなら……触って確かめてみる?」

 ウィンクをしながら腰をくねらせて見せるランファンに、「いや、問題がないなら結構」と答えた。

 

「あら、そう?」

 意外そうな顔をするランファン。……儂は自覚しているより、人からスケベだと思われているのだろうか?

 そうでなくても、遺体を回収して修復し改造して復活させたのは儂なので、彼女の体は内臓まで知り尽くしていると言っても過言ではないのだが。

 

「尻尾は……大丈夫そうね。思い通りに動くし、物も掴めるし。でもこれ、強く握られると力が抜けるのよね?」

「ああ、頑張って克服してくれ」

 そしてランファンはナメック星へ旅立ったのだった。彼女は元々武道家だった事もあって呑み込みが早く、またサイヤ人の細胞を多く移植したからか、サンの時よりも早く舞空術や気功波を習得し、気の制御と感知も一か月とかからずものにする事が出来た。

 

 そして、戦闘力は1万から5万に上昇してもう戦士タイプのナメック星人達と互角に戦えるようになった。その内、シールド発生装置で囲んだ内側で大猿化する実験にも協力してもらう予定だ。もちろん、ネイルにも協力してもらって。

 今は技の習得を目指しているようだ。

 

 なお、今年の夏のレジャー(修行)はヤードラット星に行く予定なので、今年はランファンの事はばれずに済むはずだ。

 

 

 

 

 

 

 そしてゲロ達がヤードラット星に向かっている間、地球ではまた『原作』ではなかった動きがあった。

『フハハハッ! 今日も金と食い物を頂いていくぞ!』

 ある辺境の村で、家よりも大きな化け物が村人達を脅しながら金と食料を献上させていた。

 

『ん? おい、お前! お前はこの村の者ではないな?』

 そんな恐ろしい化け物の目に留まってしまったのは、栗色の髪をした美女だった。

「は、はい。偶然この辺りを旅しておりまして……」

 怯えた様子で答える美女に、化け物ははた目にも分かるほど頬を緩ませ鼻の下を伸ばした。何故なら、美女はいくら今が夏でも旅人にしては妙なほど露出度が高い恰好をしていたからだ。

 

 上はチューブトップに、下は太腿がむき出しのホットパンツ。胸の谷間にくびれた腰、そして引き締まった脚線美を、化け物は舐めるような視線で凝視し鼻息を荒くした。

(た、堪らん! 旅人って事は、今度この村に来た時はもういないよな!? よし、予定外だがこの年上美女も頂くぞ!)

 

『偶然か、それはラッキーだったな! 女、このウーロン様の嫁の一人にしてやろう!』

 ウーロンは女を掴み上げる……ような事は、変身しても力は変わらないのでできないから、抱き寄せてそのまま引きずるように連れて行く。なお、略奪品は荷車に乗せてもう片方の手で掴んで引っ張っていく。

 

「きゃああっ! 痛いわっ、大人しくしますから乱暴にしないで!」

「ふ、ふはは、そうだ、大人しくしていれば、可愛がってやるぞ」

 美女という予定外の荷物が増えた事で、想定外の重労働をする事になったウーロンは息が上がりそうになりながら、なんとか五分以内に村の外に出る。そして村人の目が届かない茂みを抜けると、隠し持っていたホイポイカプセルを使って車を出した。

 

 その車に略奪品と美女を荷台に押し込め、『大人しくしていろ、絶対に外に出るなよ!』と言いつける。

「ふう、ギリギリ間に合った」

 そして、変身し続けられる限界の五分が過ぎ、悟空と同じぐらいの背の子豚型の獣人っぽい本当の姿に戻る。

 

 そして、車を運転して家に戻るのだ。その間に、再変身するのに必要な一分間の時間をとる事が出来る。連れ帰った美女にはどうせ正体はばれるが、今までに攫ってきた娘と同じように、贅沢な暮らしを餌に懐柔するつもりだった。

 

 

『フハハ、どうだ、これが俺様の豪邸だ! お前は今日からここでぜいたくな暮らしができるのだ、嬉しいだろう!?』

「凄いっ! 素敵、ウーロン様!」

 しかし、美女はウーロンの家である豪邸を目にした瞬間、態度を百八十度変えて変身した彼に抱き着いて来た。鮮やか過ぎる手のひらの返しっぷりを本来なら怪しむべきなのだろうが、頭の中がピンク一色になったウーロンは気にしなかった。

 

「キスさせて、愛しいウーロン様」

『キス!? い、いいだろうっ!』

 化け物の姿のまま、顔を美女に近づけるウーロン。

 

『そう言えば、名前は何というのだ?』

「はい、パスタと申します。愛しいウーロン様」

 そう言いながら美女、パスタは近づいて来たウーロンの首に両腕を回し……締め上げにかかった。




〇タロ&リーク

 劇場版『ブロリー』で登場したサイヤ人。リークはバーダックとチームを(臨時で?)組んでおり、タロはバーダックにフリーザ軍がスーパーサイヤ人について聞きまわっていた事を教えた。
 ほとんど設定がないため、ほぼオリキャラのつもりで書いています。下記の戦闘力も適当です。

 リーク:2000(生前)→3000(試合中)→3750(チーム戦後)
 タロ:3000(生前)→4000(試合中)→5000(チーム戦後)



〇サイヤ人は集団で戦うと戦闘力が上がる

 ナメック星編の頃、そうフリーザ側のキャラクターが何度かそうした事を言っていた覚えがあります。
 私はこれを、当時の少年漫画などでよくあった「皆の力を合わせて戦う事で、1+1が2ではなく、10にも、100にもなるのだ!」というのと同じだと解釈していました。

 それにしては悟空もベジータも一対一で戦いたがりますが、悟空の場合は心では繋がっているとか、皆に支えられているという事かなと解釈できるかもしれません。
 皆から気を分けてもらう元気玉等の技もありますし。



〇ヤムチャ

 原作よりだいぶ早く亀仙人の弟子になったため、この時点での戦闘力は80まで上昇している。原作で亀仙人の修行を受けた悟空と同じぐらいの強さ。ただ、気の感知や制御が未熟でかめはめ波等の技を放つことはまだできない。



〇ランファン

 人造人間7号として復活したランファン。豊胸手術によってマロンと同じくらいにサイズアップしたバストと、サイヤ人の尻尾が生えた以外は外見上の変化はない。
 ただ実は体内は大幅な改造が施されており、CTスキャンを取って医療知識がある人間に見られたら普通の人間でない事は誤魔化せない。

 サイヤ人の細胞を多めに移植されており、その影響で尻尾が生えている。また生命力とタフネスも地球人だった頃より上昇している。さらにナメック星人とヤードラット星人、フリーザ一族の細胞も移植されているので再生力や超能力、宇宙空間でも生存できる特殊な生態なども持っている。

 ただ永久エネルギー炉は完成に近づいているが未完成であるため、気を発している。
 戦闘力は1万から5万に短期間で上昇し、現在はナメック星にいる。
 また、レッドリボン軍のドクターフラッペの研究室には彼女の遺体の偽物が保管されており、レッド総帥達は彼女が復活した事を知らない。



〇ウーロン

 プーアルと同じ南部変身幼稚園出身の妖怪。一見すると豚の獣人の子供だが、プーアルと同じく様々な姿に化けられる変身能力を持っている。化けられるのは巨大な鬼や牛、特定の個人の姿だけではなく、バイクや船のオール、パンツ等の器物や、蠅のような小さな生物まで多岐に渡る。

 ただ、女の先生のパンツを盗んで幼稚園から追い出されたためか、プーアルよりも変身していられる時間は短く、器物に変身した場合も力や機能などは変わらない等、劣っている部分が多い。
 この作品の世界線のウーロンもそれは変わらず、変身していられるのは五分間で、再変身には一分間の休憩が必要。

 恐喝やその後の運搬方法は、ウーロンが変身している時間が五分間と限られているため、自分でお宝を探すのではなく脅した村人に自ら持ってくるように指示していたのではないかと考えたからです。そして、彼の家も恐喝していた村から歩いていける距離にあったとはいえ、金だけならまだしも食料品をウーロンの力で運ぶのは無理ではないかと思ったため。

 ホイポイカプセルという車を隠して持ち運び可能になる便利な道具が存在する世界なので、この手口は可能だと思いました。


 クルージング様、熨斗目花様、匿名鬼謀様、PY様、オオアカ様、カド=フックベルグ様、おきゃく様、あんころ(餅)様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。

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