ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

42 / 143
42話 この世(地球)で一番強い奴と、悪魔の科学者から研究を盗んだ天才科学者

 対ドクターウィロー戦の戦力を集めるのに、儂は一日の時間をかけた。極論を言えば、ウィローとその配下の狂暴戦士にはネイル一人連れてくれば、多分勝てる。しかし、ギネ達に戦闘経験を積ませる良い機会ではある。

 それに、スパイロボットで警戒はしているがウィローに動いた様子はなく、レーダーに映るドラゴンボールの反応も一つのまま増えなかったから余裕をもって動く事が出来た。

 

 あまりにも動きが無さすぎて、歴史改変者の策略……例えば、原作劇場版の時期よりも早く『この世で一番強いヤツ』を起こす事で、歴史改変を儂等の手で起こさせようと考えている……の疑いが濃くなるが、黙って見ている事は出来ないので仕方ない。

 

 儂が起こった事実とドクターウィローの存在と目的、そして彼の元に地球のドラゴンボールがある事を伝えると、皆も集まってくれた。

 

「ドクターウィローか。そう言えば、昔ニュースや新聞を賑わせていたな。悪魔の科学者と呼ばれ、賞金を懸けるかどうか当時の国王が検討するほどのマッドサイエンティストだったはずだ」

「そうか? 儂は覚えておらんが」

 

「亀仙人、それはお前が世俗から離れていたからだろう。私は当時、街でサラリーマンをしていたから、ニュースをよく覚えている」

「そう言えば、儂の所にも暗殺の依頼が来たような気がするわい。結局受けなかったが」

 

 長寿で世俗から離れていなかった桃白白と鶴仙人は、ウィローやコーチンが氷の下に埋もれる前の事を覚えていた。原作劇場版ではブルマが悪魔の科学者と評し、研究所ごと氷に埋もれても救助活動がされるような事もなく「悪魔の科学者に天罰が下ったのだ」と人々が口々に言った程なので、よほどの悪党だったようだ。

 

「彼等ならゲロが言うような目的のために研究を重ねていても、何の不思議もない。氷に閉じ込められて何十年も経つのに生きていたとは驚いたけれど」

 ブリーフも珍しく真剣な顔つきで頷く。しかし、集まった皆はあまり危機感を覚えていないようだった。

 

「爺さんよ、そのウィローって奴らを野放しにしていたらヤバイってのは分かったが、俺達が集まって殴り込みをかける程の相手なのか?」

「そうよね。悪魔の科学者って言っても……お爺ちゃんより強い科学者って地球には存在しないし」

 

 それは、ターレスとタイツが口々に言うように、皆のウィローに対する認識が普通の地球人の科学者だからだろう。

 たしかに、地球人の普通の科学者ならどれだけ危険な研究をしていても、科学兵器で武装していたとしても、儂や4号なら力でねじ伏せるのは容易い。だから、ターレス達から見ると儂と4号が態々皆を集めた理由が分からないのだろう。

 

「ターレスの質問の答えとして、今からだいたい二十年ほど前に儂がドクターウィローとコーチンの研究室に潜入した時の映像を見せよう」

 それに対して、儂は4号を創る時に彼らの研究を盗む目的で研究所に潜入した際、撮影したウィローや狂暴戦士達の画像を投影して見せると、場の空気が一変した。

 

「な、なんじゃ、この巨大な脳みそは!?」

「それにこれは魔族、か?」

「そう言えば、地球人って言っても色々いるんだったな。忘れてたぜ」

「そっか、ウィローってモンスター型の地球人だったんだ」

「あらあら、ウィローさんって随分頭でっかちな人だったのね~」

「いや、確かウィローは少なくとも肉体は普通だったはずだ。儂、残っていた資料から彼の写真を見た事があるから、それは確かだ」

 

「ちなみに、この巨大な脳が二十年ほど前の時点でのドクターウィロー。そして一見すると魔族のようにも見えるのが、ウィローとコーチンがバイオテクノロジーによって生み出した人工生命体だと思われる」

 危険なマッドサイエンティストだが、地球人の科学者というウィローのイメージが、敵としても危険な存在へとウィロー達に対する認識が変わった。

 

「爺、こいつらの戦闘力は?」

「正確な数値は分からん。奴らの研究所に忍び込んだ当時はまだ、スカウターが存在しなかった。それに仮死状態で眠っていたから、気の大きさも探れなかった」

 

 ウィローは脳以外が機械製のボディだから気は殆ど発していないが、配下の狂暴戦士達は姿こそ異様だが、人造人間のように完全な機械や永久エネルギー炉を動力に動いている訳ではないため気を放っている。しかし、仮死状態で眠っていたので本来の気の大きさも分からなかったのだ。

 

 まあ、原作劇場版やカードダスでの数値なら、だいたい覚えているつもりだ。しかし、それも後のゲーム作品で数値が変わっている事もある。……それに、この世界の彼らが原作と同じ数値とも限らない。まあ、ウィロー達の場合は儂が色々やらかす前に氷漬けにされたはずなので、大丈夫だと思うが。

 ……前世の儂が間違えて覚えていない限り。

 

 しかし、はっきり数字を言う事は出来ないのでぼかして伝える事にする。

「ただ、盗んだ研究データから推測すると、このサイバイマン……サイヤ人が兵器として使用していた生命体に似た量産型は、スカウターのデータにあったサイバイマンより若干弱い程度。この三体はそれぞれ、最初に出会ったバーダックチームの面々と同じ程度か。ウィローは分からんが……弱い事はないじゃろう」

 

「そんなに? やっぱり地球の科学者って爺さん以外もおかしいよ」

「それにしてもお爺ちゃん、人の研究を盗んだって結構堂々と話すよね。天才科学者なのに」

「うむ、それは論文にウィローとコーチンの研究を参考にしたと彼らの名前を記しているから、世間的には問題はない」

 

「会長なら、こいつらが眠っている間にそのまま殺せなかったのか?」

 半眼になったギネとブルマに呆れられている儂に、桃白白が非情な質問を投げかけて、鶴仙人が思わず顔を引き攣らせた。

 

「桃白白、さすがにそれは……のう、会長?」

「うむ、当時の儂は今の悟空より弱かったので、殺そうとして失敗し、その拍子にウィローやその手下が目覚めたら逃げる事も出来ず殺されていた可能性がある。そのため、無謀な事は出来なかったのだ」

「いや、儂はそう言う事が言いたかったのではなく、卑劣が過ぎんかと……ええい、いいわい。話を進めてくれい」

 

 どうやら、鶴仙人は「研究を盗むために忍び込んだ上に、ウィロー達を眠っている間に殺すのはあんまりではないか?」と言いたかったようだ。

 彼も裏社会から離れてだいぶ過ぎた事で、丸くなったようで何よりだ。

 

「まあ、もう話は殆どないのだが……以上の事からウィローにドラゴンボールを使わせるわけにはいかないと、皆も理解してくれただろう。

 それに、歴史改変者が関わっている可能性も高い」

 

「ああ! 皆で行ってウイロウって奴らを叩きのめすんだな! 行こうぜ、ゲロのじっちゃん!」

 そう元気に言う悟空に、儂は残念な報せを述べた。

「悟空、すまんがお主はブルマ達と他にやって欲しい事がある」

 正確には留守番だが、こう言わないと駄々をこねそうじゃし……ブルマとチャオズが瞬間移動でこっそり来て、流れ弾が当たって消し飛ばされたら大問題じゃからな。

 

「ん? なんだ、オラ達に他にやって欲しい事って?」

「あたしも?」

「うむ、それにチチとチャオズ、ラズリとラピス。お前達には、孫悟飯殿が持つドラゴンボールを守って欲しい」

「じっちゃんもドラゴンボールをもってたんか!?」

 

 悟空達に留守番の名目として頼むのは、ドラゴンボールの護衛だ。もちろん、歴史改変者がボールを奪いに来たら手も足も出ないだろうが……彼らが今の悟空を殺す気なら、地球どころか宇宙全体を見回しても、安全なところはそうそうないので、考えるだけ無駄だろう。

 

 それに、ウィローに対処している合間に、グルメス王国軍にドラゴンボールを盗まれる事になったら面白くはない。

 

「リーダーは天津飯君だ。頼むぞ」

「はっ! お任せください、会長!」

「おし! オラ達も頑張るぞ!」

 こうして儂は行動を起こしたのだった。

 

なお、ヤムチャとプーアルはカメハウスで留守番をしており、ナムは研修という名目で地球の神様の神殿でアックマンと共に修行中。しかし、チューボは有給を取って来てもらった。

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な、この時期にウィローと戦うだと!?」

 この歴史の異変にまず気が付いたのは、時の界王神ではなくドミグラだった。

 時の界王神はこの歴史の存在にまだ気が付いていないのに対して、この歴史に以前から潜んで活動しているドミグラの方がこの場合有利なのは当然。しかし、彼もメチカブラ達がこの歴史に侵入した事には気が付かなかった。

 

「いったい何故、今になって動く? 何かきっかけがあるはずだ。トワが何かしたのか?」

 そして魔術を使って何が起きたのかを調べる。だが、彼を凌駕する魔術の使い手である暗黒魔界王メチカブラの痕跡を見つける事は出来ない。

 

「ドラゴンボールか! ……メチカブラめ、時の界王神に私達の存在を気付かせて、我々とタイムパトロールをぶつけるつもりだな」

 しかし、メチカブラが残したドラゴンボールには魔術による隠ぺいは施されていなかった。そこからドミグラは、黒幕が誰で、その狙いについてもすぐに見抜く事に成功した。

 

 何故なら彼に痕跡も発見させない程の腕の魔術師はメチカブラぐらいであり、その彼がこの歴史で大きな改変を起こすとしたら、その狙いは邪魔な時の界王神達の目をドミグラ達にも向けさせ、注意を攪乱する事ぐらいしか考えられなかったからだ。

 

 もっとも、それをドミグラに見抜かれたところでメチカブラには痛くも痒くもない。既に事は成っている、ドミグラに今からゲロ達を止める手段はない。

「どうしますか、ドミグラ様。連中、すぐにでもウィローに仕掛けるつもりですよ」

「……動くしかないな。トワとミラに先を越されて、奴らがキリを集めるのを見物するよりは、マシだ」

 

 ドミグラにとって最も不愉快なのは、何をしてもメチカブラの狙い通りに進み、自分はメチカブラの部下ではないトワとキリを獲り合うしかない事だ。

 苛立ちながら杖を握り、配下のシャメルに視線を向け……そこでふと思いついた。メチカブラへの嫌がらせを。

 

「シャメル、今回はお前にタイムパトロールと戦ってもらう。ただ、最後まで勝負する必要はない。姿を見せた後は不自然でない程度に相手をしてやった後、切り上げろ」

 そう命じるドミグラの顔には、もう苛立ちは浮かんでいなかった。

 

 

 

 

 

 

 凍てつく氷の地下深く、悪魔の科学者ドクターウィローと彼とドクターコーチンが作り出した狂暴戦士達は眠りについていた。

 地球環境を大きく乱す実験を行った故か、それとも人々が噂したように天罰が下ったからか、研究所が氷に埋もれ閉じ込められた際、ウィローは助手であり自身の信奉者であるコーチンの手によって、老いた生身の肉体から頭脳を解放し、機械の体に移植したばかりだった。

 

 ただ、当時のウィローの機械の体は頑丈であっても戦闘力に乏しく、狂暴戦士達も存在しなかったために分厚い氷の棺桶から脱出する事は出来なかった。

 限られた物資、先細りしていくエネルギー、乏しい労働力、自分達を助けようとしない愚かな者達。圧倒的な逆境だったが、ウィローとコーチンは諦めなかった。

 

 コーチンが過酷な環境と限られた食料でも活動し続けられるよう、彼もサイボーグにした。彼らの手となり脚となり働く、生きた重機として人工生命体……のちの狂暴戦士の原型を作り出した。そして、クローン培養したウィローの脳細胞をウィロー自身に追加し、より高性能な機械の体を制御できるよう試みた。

 

 しかし、エネルギーと資源の限界が訪れウィローと狂暴戦士達はついに氷の中で眠りについた。コーチンはそれでもあきらめず、一人研究所を脱出してドクターウィローを復活させる手段を探し求めている。

 

 その試みは、ドラゴンボールがおとぎ話ではなく本当に願いを叶える事が出来るとコーチンが知り、七つ全てを集める事に成功した時、叶えられるはずだった。

「はぁ!」

 ドミグラが腕を一振りして魔術を放つと、不可視のエネルギーが冷気に包まれた研究所に拡散し……凍り付いていた研究所の機械が息を吹き返して作動し始める。

 

 そのドミグラの横には、ドクターコーチンの姿があった。普通ならウィローの復活を喜び、高笑いを上げそうなものだが、まるで人形のように動かない。ドミグラに視線を向ける様子もなく、ただ時が止まったように立ち尽くしている。

 本当に時が止まっているのだから、当然だが。

 

「メチカブラめ……ウィローの覚醒もしていないとはな。まあいい、奴に利用された分、こいつを利用させてもらおう」

 ドミグラはそう言うと、さっさと魔術によってテレポートし、コーチンを連れ去ってしまう。

 

『……!? これは……コーチンがやり遂げたのか?』

 ウィローが意識を取り戻したのは、その直後だった。

 

 しかし、コーチンはドミグラによって拉致されたため研究所内におらず、なぜ自分が目覚める事が出来たのか、何故研究所が再び稼働しているのか説明する者は存在しない。ドラゴンボールが床に転がっているが、ウィローはボールの存在を知らないため気が付いていない。

 この状況に大いに困惑したウィローは、本来は科学者である彼らしくまず情報を求めた。研究所のセキュリティシステムを起動して、研究所の内外に異変が起きていないか調査する。

 

 そして、コーチンが何年か前に残したメッセージを見つける。

『研究所に侵入者? 狂暴戦士のデータを盗んだ? セキュリティ強化のため、バイオマンを量産し、地上に監視カメラを設置……』

 なんと、ドクターコーチンは約二十年前にゲロが自分達の研究所に侵入した事に、数年前に気が付いたのだ。そして、外部から運び込んだ素材とエネルギーでバイオマンの数を増やし、研究所のセキュリティ体制を強化していた。

 

 それはスパイロボットを放っていたゲロも気が付いていたが、もう研究は盗み終わったので再び彼らの研究所を訪れる時は殴り込む時だと思っていたのと、コーチンが設置した監視カメラはゲロのスパイロボットを発見できる程の性能はなかったので、放置していた。

 

『侵入者か』

 その放置していたカメラの映像によって、ウィローはゲロ達が堂々と接近しつつあるのを確認した。あの中に自分達の研究を盗んだ不届き者が、そしてもしかしたら自身が求める最強の肉体の持ち主がいるかもしれない。

 

『小手調べだ。行け、バイオマンよ』

 それを調べるための情報収集と、留守のコーチンが残したデータを見る時間を稼ぐために、まずウィローは量産型狂暴戦士のバイオマンを放った。

 

 そして、優秀で巨大な彼の頭脳は一分もかからずそれらの作業を完遂し、真実にたどり着いた。

『オオオオオオ!』

 

 

 

 

 

 

 その頃、占い婆の宮殿では、ゲロが連絡をしていないため何も知らない占い婆が日常業務をこなしていた。

「この前は拒否したのに、今日は二回連続で占うとはどういうことだ?」

「お前さん達があまりにしつこかったからの。一応お得意様ではあるし、多少は融通してやろうと思っただけじゃ」

 

「良いじゃないか、あたし等にとっては都合がいいしね」

「何なら、残りのボール全ての場所を教えてくれてもいいんだがな」

「いやいや、一度に占ってもらっても取りに行くのは俺達だけですからね。それとも、何なら二手に分かれます?」

 

 ボンゴはまだ不満がある様子だったが、パスタとオレガノにそう説得されると鼻を鳴らして矛を収めた。自分達の力と手際に自信があるボンゴだったが、上位の魔族やレッドリボン軍、GCGの隊員や天下一武道会の出場者等、簡単には手出しができない者が存在する事は知っている。

 そうした存在の手元にドラゴンボールがある場合、ボールの入手は難しくなる。それなのに部隊を二手に分けるのは、悪手だ。

 

「話はまとまったようじゃな。では、占うぞ。確認するが、占うのはドラゴンボールの位置じゃな?」

「できれば、楽に手に入ると嬉しいんですけどね」

「それはお主達の運次第じゃな」

 

 そう答えながら占い婆が水晶玉に手をかざすと、まず映ったのは室内に飾られている四星球だった。

「これは何処だ?」

「うむ、ここから――はて?」

 占い婆は水晶玉に映った場所をボンゴ達に伝えながら、聞いた覚えのある地名にふと首を傾げた。そう言えば、弟の一番弟子とその義理の娘と孫が暮らしている場所ではなかったかと。

 

「次はこの男が首から下げているのか。……この動き、出来るな」

「なかなかの色男だ。これはまた姉さんの出番ですかね」

「オレガノ、あたしを色仕掛け担当だとでも思っちゃいないだろうね?」

 

 そして次に映ったのは、占い婆も面識のある男、ヤムチャだった。穴を開けて紐を通した三星球を首から下げて、カメハウスがある小島の砂浜で一人汗を流している。彼女の弟である亀仙人は留守なのか、テレビでも見ているのか姿は見えない。

 

(まさか弟の一番弟子と、最も新しく取った弟子がドラゴンボールを持っているとは、妙な偶然じゃな)

 そう疑問に思いつつ占い婆はボンゴ達に尋ねた。

「念のために確認するが、お主らこのドラゴンボールとやらを集めるために悪事を働いたりはしておらんな?」

 

 うっかりすると死人が出かねない場所で挑戦者を戦わせる占い婆だが、彼女にも倫理観や超えたくない一線がある。特に、知人やお得意先が自分の占いのせいで不幸になるのは気分が良くない。

 

「……ああ、多少荒っぽい事になるかもしれないがな」

「ここを出入り禁止にされるようなことはしないよ」

 一方、ボンゴ達は占い婆が心配しているのは自分達の事ではなく、占いで出たドラゴンボールの持ち主達だと思い、そう答えた。

 

 実際、村の老婆からウーロンを退治し攫われた娘達を取り返すのと引き換えにドラゴンボールをもらった時のように、ボンゴ達はあまり荒っぽい手段に出るつもりはなかった。少なくとも、所有者を殺して奪おうとは思っていない。……ドラゴンボールの価値を伏せて上手く手に入れようとか、気づかれずに盗めるなら盗んでしまおうとか、その程度の事は考えているが。そのあたりの倫理観が緩いのも、悪事を重ね続ける悪人故である。

 

「ふむ……なら構わんが」

 

「じゃあ、次は四つ目のドラゴンボールの在り処を占ってもらいに来るぜ。できれば、次も融通してくれれば助かる」

「金はいくらでも出すから、よろしく頼むよ」

 そう言いながら、占い婆の宮殿から立ち去るボンゴ達。それを見送った後、占い婆は一応悟飯とヤムチャに連絡を入れる事にした。

 

 ボンゴ達はミイラ君に勝てない程度であり、彼らがもし物騒な手段でドラゴンボールを手に入れようとしても、ギネや孫悟飯、亀仙人が居ればどうとでもなる。

 しかし、何もしないのは具合が悪いと思ったからだ。

 

 早速連絡用のスカウターを使って、連絡しようとするが……。

「悟飯の所は……留守か。ギネも悟空もおらんとは、外で狩りか畑仕事でもしとるのか?」

 占い婆は知らないが、孫悟飯とギネはウィロー退治で留守にしており、留守番をしているはずの悟空達はタイミング悪く家の外で稽古をしていた。仕方がないので、伝言を残す事にする。

 

 次に連絡したカメハウスでは、幸いなことにプーアルが出てすぐにヤムチャへ取り次いでくれた。

『占い婆様? ご無沙汰してます、ヤムチャです!』

「あー、挨拶はいい。前置き無しで用件を伝えるが、儂のお得意さんが、お主が首から下げている玉、ドラゴンボールを手に入れるためにそっちに向かっておってな。今日中には着くはずじゃ」

 

『ドラゴンボールを!? ですが、これは武天老師様から『留守中に誰か来ても、絶対渡すな』と任された物なので……』

「いや、それは構わん。お得意様であっても、儂は占っただけ。そのドラゴンボールを渡すよう話を通してやるつもりはないわい」

 

『そうなんですか? じゃあ、俺はどうすれば?』

「儂が連絡したのは、そのお得意先の連中が荒っぽい手段に出るかもしれんから、それを警告するためじゃ。自分達が勝ったらボールを寄越せ、と決闘を申し込むぐらいはするじゃろうとな。しかし、弟は留守のようじゃな?」

 

『ええ、武天老師様は重大な用件で今日は帰らないかもしれないと。ですが、そんな連中俺一人で大丈夫ですよ! これでも鶴亀仙流の一員ですから、修行の成果を見せてやりますよ!』

 亀仙人に留守番とドラゴンボールの番を言いつけられたヤムチャは、それを「重大な使命を任せられた」と解釈したのか、調子に乗っている様子だった。

 

「調子に乗るでない。お得意様の一人はおぬし同様ミイラ君には勝てていないが、かなりの使い手じゃ。お前達以外の挑戦者では、随一の使い手だと思え」

『わ、分かりました! 油断せずに相手をします!』

「うむ、それでいい」

 

 そうして連絡を終えた占い婆は、心配事が解消したため軽やかな気分でスカウターを置いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 時間はやや巻き戻り、瞬間移動で儂等はウィローの研究所が埋まっている氷河に脚を踏み入れた。

「こ、こりゃあ、冷える。ゲロよ、直接ウィローの研究所の中に瞬間移動する事は出来んのか?」

「研究所の内部には、スパイロボットを設置してないので無理じゃ」

 外に設置してやや離れたところから見張るのと、監視対象の本拠地内部に設置するのとでは、ばれる可能性の桁が違うからの。

 

「寒さに音をあげるとはまだまだじゃな、カメよ。ほれ、冬眠でもしたらどうじゃ?」

「着膨れした貴様に言われたくないわい!」

「師よ、気を高めて体の周りに纏えば寒さもしのげますぞ」

 アロハシャツ姿のままの亀仙人を、暖かそうなコートを羽織っている鶴仙人が笑い、やはりいつも通りの格好をしているチャパ王がそうアドバイスする。

 

「ううむ、儂も着ておくべきだったかもしれんな」

「そう言えば亀仙人、スカウターはどうした? 連絡用のを会長からもらっていたはずだが?」

「ああ、ドラゴンボールと一緒にヤムチャに預けた。持って来て壊したらもったいないじゃろ?」

 

「でも寒いわね~、ナメック星人ベースのヨン兄さんは分かるけど、ターレスやお爺ちゃん達はなんで平気なの?」

「お前の親父が改良した戦闘服のお陰だよ。防寒もばっちりだ」

「あたしが改造される前の戦闘服とインナーよりも、性能は上がってるよ」

「儂も服の下にインナーだけ着ておるから、寒さ対策はばっちりという訳じゃ」

 

「へえ、モロコさん達のおかげだけど、父さんもやるもんね」

 去年の年末に一日だけこの世に戻ってきたサイヤ人の科学者であるモロコ達は、地獄に落ちたフリーザ軍の宇宙人が着ていた最新の戦闘服のデータを持って来てくれた。

 それを参考にブリーフが一年もかからず戦闘服の性能をアップさせたのだ。

 

「ブリーフは儂が認める天才科学者の一人じゃからな。それよりも、そろそろ出迎えが来るぞ」

 儂らが近づいてくるのに気が付いたのだろう。氷の下から複数の野生動物ではありえない大きな気が近づいてきている、

 

「「「侵入者! 侵入者!」」」

 雪と氷の下から現れたのは、複数のバイオマンだった。彼らは一匹ずつ儂等に襲い掛かって……いや、多いな。

 

「二十年前に見た時は、十匹もいなかったはずだが」

「二十年の間に、繁殖したんじゃないのかい?」

「こいつら、増えるんだか!?」

「ギャ!?」

 儂は襲い掛かってきたバイオマンの首を無造作に捻って、ギネは気功波で容赦なく頭を吹き飛ばし、サンは蹴り飛ばした。

 

「おそらく、何らかの理由で増産したのでしょう。ドクター達が侵入した形跡を発見し、セキュリティを上げる必要に迫られたのかもしれません」

 4号は自分に近づこうとした二匹のバイオマンを、指でそれぞれ頭部と胸部を貫いて倒している。

 

 戦闘力1000の、平均的な惑星のトップクラスの戦士と互角の力を持つバイオマンだが、戦闘力1万を超える儂らの敵ではない。

 

「容赦ないのう、お主ら」

「爺! 聞き忘れたが、こいつらは倒して良いんだよな!?」

 一方、亀仙人達はそれぞれバイオマンの相手をしていた。亀仙人や鶴仙人には明らかに余裕があるが、ターレスには余裕がなさそうに見える。

 

「ああ、それはサイバイマンと同じようなものだ。それ自体には罪はないが、ウィローとコーチンの命令しか聞かないので説得不能の危険な存在、ロボットと同じと思えばいい」

「つまり!?」

「倒しても構わん。むしろ、倒してくれ」

 

「なら、さっさとそう言いやがれ!」

 ターレスはそう言いながら、それまでやや互角に戦っていたはずのバイオマンの蹴りを片手で弾いた。

「ギッ!?」

「悪いな、手加減しちまったぜ。ここからは本気で相手をしてやる。はぁっ!」

 

 ターレスは同じ言葉を繰り返すバイオマンが体勢を立て直すのを待って、戦闘を再開した。

「侵入者!」

 話す言葉は同じだが、蹴りを弾かれ隙を見せてしまった事から学習したのか、拳による攻撃に移るバイオマン。

 

「遅いぜ!」

 しかし、ターレスの拳はバイオマンが殴りかかってきた時には彼の胴体に突き刺さっていた。

「はあっ!」

 そして、前のめりになったバイオマンを空中に蹴り飛ばすと、気功波で消し飛ばした。

 

「へっ、準備運動には物足りねぇな」

「カッコつけちゃって。でもまあ、物足りないのは確かよね」

 ターレスの戦闘力は約2300、タイツは約2000、それぞれバイオマンの倍以上の戦闘力に至っている。この世界で戦闘力が自分の倍以上ある相手には、それなり以上に技を修めていなければ食い下がる事も難しい。バイオマンの戦闘プログラムは、やはり量産型であるためか完成度は高くなかったようだ。

 

「若、お嬢、これはトレーニングでもなければルールのある試合でもない! 僅かな油断で全てを失いかねません! もっと真剣に!」

 そう説教するチューボに、ターレスは胡乱気な視線を向けた。

 

「手伝ってやろうか?」

 何故なら、チューボはターレスとタイツがあっさり倒したバイオマンと、白熱した戦いを繰り広げている真っ最中だったからだ。

 

「結構っ! それよりも、相手の出方を警戒しろ! すぐに増援が来るぞ!」

「侵入者! 侵入者! 侵入者ぁ!」

 戦闘服を着たベテランアクション俳優のような貫禄と迫力があるチューボと、小柄だが(この世界では)魔族を連想させるバイオマンの戦いは激しさを増すばかりだ。その理由は、チューボの戦闘力が約1200で、バイオマンとそう離れていないからだが。

 

「敵の増援がすぐに来ると思うのなら、助力を願ってもすぐにそいつを倒すべきだと私は思うがな!」

 その横で、チャパ王はウォーミングアップ代わりの八手拳でバイオマンに反撃の機会も与えず攻め切り、勝利した。

 

「なあ、兄弟子殿よ?」

「オラは、必要ねぇ! ただ稽古でも試合でもねぇ戦いが久しぶりだから、勘を取り戻すには丁度いいべ!」

「確かに、実戦は久しぶりじゃな!」

 チャパ王が話を振った牛魔王は豪快な、孫悟飯は無駄の無い戦い方でバイオマンを攻めて倒している。

 

「確かに、言われてみれば久しぶりだ」

 牛魔王の言葉を聞いたチューボも、そう言って内心で苦笑いを浮かべた。並みの格闘家とは次元が異なる力と、マシンガンや大砲、ミサイルの直撃にすら耐える肉体を手に入れた彼に、危機感を覚えさせる相手は地球の市井には存在しない。

 

 例外は、前々回の天下一武道会でぶつかった、歴史改変者に強化されたギランぐらいだ。それを考えると、自分の戦いの勘はだいぶ鈍っていたらしい。ターレスとタイツに説教している場合ではない。

「ウオオオオオッ!」

 吹っ切れたチューボは、戦闘服と己の肉体の強度を信じてバイオマンの攻撃に構わず間合いを詰めた。

 

「どどん波!」

「っ!?」

 そして、バイオマンに胸部を突いた指からどどん波を発射し、胸に風穴を開けた。動かなくなったバイオマンをその場に転がし、息を整える。

 

 敢えて回避を捨て、速攻で仕留める事で仕事に支障がない程度にダメージを抑えての勝利。勘を取り戻したことを静かに喜びながら、チューボは視線を上げた。

 

『ウオオオオオオオ!!』

 その瞬間、何者かの咆哮と共に赤黒く輝く太い光線に地下から氷が貫かれて激しい爆発が巻き起こり、狂暴戦士を引き連れたドクターウィローが出現した。

 

「か、会長、これは無理です」

「うむ、お前達にはバイオマンを任せたぞ。しかし、あのウィローが漂わせている黒いオーラは……」

 自身の研究所の天井と、分厚い氷を光線で破壊して地上に現れたウィローは、前々回の天下一武道会でギランやランファンが漂わせていたのと同じ、黒いオーラを漂わせていた。

 

『ドクターゲロ! 我々の研究を盗んだ貴様は絶対に許さん! そしてギネ、お前の体が欲しい!』

 氷原にウィローの機械を通した、しかし人間らしい憎悪と欲望が込められた叫びが響き渡った。

 




〇戦闘力

・ターレス:2300 サイヤ人襲来編のピッコロをやられて激高した悟飯(小)や、生前のセリパ(当時2500)に迫る強さ。フリーザ軍でも戦士として通用するレベルに。

・タイツ:2000 サイヤ人襲来編のピッコロや天津飯よりも強くなった、人造人間を除けば最も強い女性地球人。

・チューボ:1200 サイバイマンと互角の強さに至った。平均的な惑星の最強の戦士と同レベルの警備部部長。

・チャパ王:1590 原作ラディッツよりやや強い。サイヤ人襲来編の天津飯(1600ぐらい)より、僅かに弱い程度。

・孫悟飯(老):1680 サイヤ人襲来編のピッコロよりやや弱い? ぐらい。

・牛魔王:1400 サイヤ人襲来編のヤムチャと同じくらいの強さ。体が大きい分戦闘力の数値以上にタフなので、サイバイマンの自爆にも耐えられる可能性あり? ただ、幸いなことにバイオマンは自爆しない。



〇劇場版『この世で一番強いヤツ』

 ドクターコーチンがドラゴンボールを使って氷の下で眠るドクターウィローを目覚めさせた、ウィローの肉体とするため、地球で最も強い存在として亀仙人と居合わせたブルマが攫われる。しかし、亀仙人は狂暴戦士を倒す事が出来ず、悟空は亀仙人とブルマを助けるためにウィローの研究所へと向かい……。

 という映画。ウィローの正体が巨大な脳を納めたロボットであるなど、ややSFホラーっぽい演出もあり、個人的にはお勧めのドラゴンボール映画。

 次期的にはサイヤ人襲来編に当たるが、悟飯がピッコロに師事した後なのに悟空が生存している。
 この事から、対ラディッツ戦で悟空が死に、約一年後にやってくるだろうベジータとナッパに対抗するためにピッコロが悟飯を鍛えるまでは原作通りだったが、何らかの理由でベジータとナッパが一年以上経ってもまだ地球にやってきていない時間軸の出来事ではないかと考えられる。

 死後一年以上経つと地球のドラゴンボールでは生き返れなくなるので、ベジータ達が来る前でも悟空を生き返さなければならない。ピッコロが悟飯を親元に返したのは……生き返った悟空が自分よりはるかに強くなっていたので、彼に追い付くべく自身の修行に集中するためかもしれない。

 ベジータとナッパが地球に来ていない理由は、「ナッパ、地球に行くのはこの惑星の制圧をきちんと終えて、報告をしてからにするぞ」、「ああ、もちろんだぜ、ベジータ。俺達は社会人だからな!」とラディッツが敗れた事を知った時に侵略中だった惑星の侵略を終えるという、フリーザ軍の仕事を優先したから等の理由が考えられる。



〇ドクターウィロー

 悪魔の科学者と呼ばれていた地球人。ただ、人としての姿は手術台らしきものに横たわった首から下の男性の姿しか描写されていない。後は壁に埋め込まれた巨大な脳が収まっているカプセルと、そこからロボットとして活動を始めた姿。

 再興の頭脳を持つ自分に相応しい最強の肉体を求めていたが、求めていた孫悟空が思った以上に手ごわかったために激高したのか、地球ごと悟空を破壊して倒そうとする、堪忍袋の緒がゆるキャラ。
 体が機械であるためか、真空状態でも活動が可能。

 戦闘力は1万8千……だとゲロと作者は思っていたが、カードダスだと3万9千。サイヤ人襲来編のベジータの倍以上。彼が大猿化しない限り勝てる。

 なお、劇場版ではコーチンがドラゴンボールに「生き返してくれ」と願っている。しかし、この作品では「仮死状態だったウィローを、コーチンにそう願われた神龍が目覚めさせた」と解釈し、ウィローは死んでおらず仮死状態で眠ったままだったとします。

 また、武道家でないので気の感知は出来ず、戦闘力を計測する機能も持っていないと思われる。……あったら、ピッコロを拉致して後に亀仙人をこの世で一番強い奴だとは考えないと思う。

 なお、この作品でウィローが生身の人間だった頃の話や、すぐ脱出できなかった理由等はこの作品の独自、はっきり言えば捏造設定になります。



〇バイオマン

 全体的にサイバイマンに似た形の、黒い量産型狂暴戦士。
 片言だが言語を話す事が可能で、ブルマを人質にとったり、その場に創造者が居なくても命令を遂行したり、創造者が自分達より弱くても反抗しない。

 戦闘力は1000で、サイバイマンより若干弱く自爆も多分できない。しかし、サイバイマンは植える土の質で戦闘力が上下する、狂暴過ぎて命令者が弱いと襲い掛かってくる、種(球根?)を採取するのが難しい、等の欠点があるので、兵器としての使い勝手ではバイオマンの方が上かもしれない。

 ただ、サイヤ人はアタックボールのような小型の宇宙船で星から星へ移動するので、携帯性に優れたサイバイマンの方が有用かもしれない。

 劇場版では亀仙人に複数体のバイオマンが倒されているが、亀仙人の実力を測るために手加減してやられたふりをしていたのか、それとも劇場版の亀仙人は当時の原作コミックやアニメの亀仙人よりも強かったのかもしれない。


 路徳様、匿名鬼謀様、コダマ様、Othuyeg様、おでん様、変わり者様、リースティア様、酒井悠人様、中島ゆうき様、カド=フックベルグ様、ソフィア様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。