ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
時の界王神クロノアが事態に気が付いたのは、既にウィローダークがギネ達と戦闘に入ってからだった。
他の歴史でメチカブラとその一味が大暴れしていて、彼女が率いるタイムパトロールは彼等との戦いで劣勢を強いられており、疲れが溜まっていた彼女は「また歴史改変者かー、まったく好き勝手にやってくれるわよねー」と色々な感覚がマヒした状態だった。
しかし、この歴史の状況を確認した瞬間、目玉が飛び出るほど驚いた。
「何これ!?」
メチカブラに牛耳られた歴史を確認した時も驚いたが、この歴史の在りようはそれと同等の衝撃を彼女に与えた。
しかし、今はこの歴史がどうしてこうなったのかを考えるより先に、この歴史をさらに乱そうとする歴史改変者を排除しなければならない。
「でもトランクスはあっちの歴史で戦ったばかりだし、あのゲロもいるから……よし!」
そしてクロノアは、トランクス以外のタイムパトローラーに出動を要請した。
幸い、歴史改変者がいるのはウィローダークとギネ達が戦っている場所から、やや離れた場所だ。この歴史の住人が戦いに巻き込まれることは無いだろう。
「うっひゃ~っ、ここは冷えるなぁ」
彼女の要請に応じてこの歴史に降り立ったのは、孫悟空だった。
この歴史に存在する十一歳の孫悟空ではなく、とっくの昔に成人して孫もいる大人の孫悟空だ。着ているのも亀仙流の道着ではなく、タイムパトロールの制服である。
「おめえは平気なんか?」
その悟空がそう話しかけるのは、大鎌を肩に背負い、バンダナを巻いた青年の姿をした魔神。
「……」
メチカブラの配下の一人、魔神シュルム。暗黒魔界の死神と呼ばれる、魔神の中でも異質とされる存在だ。
彼は悟空に対して無言のまま鎌を構えると、舌を出して鎌の刃を舐めるような仕草をして見せる。
「どうした? 今日は無口だな。手下もいねぇし……お前があんまりぶった斬るもんだから、ついにいなくなっちまったんか?」
悟空は、そう話しかけながらシュルムに違和感を覚えていた。前に戦った時と、気配が違う気がしたのだ。
「……さあな」
だが、シュルムは悟空の軽口には答えず鎌を構えると悟空に挑みかかった。
その頃、天才科学者である儂は魔神シュルムとタイムパトロール悟空との戦いに気づくことなく、ウィローと戦っていた。
配下の狂暴戦士が全滅したが、ウィローにそれを惜しむ様子はなかった。彼にとって狂暴戦士達は子供や仲間ではなく、ただの道具だからだろう。
『ウオオオオオ!』
もしくは、狂暴戦士の事を考える余裕もないほど激高しているからかもしれない。
『お前の体は私の物だ、ギネ!!』
赤黒いエネルギーを全身に纏って突撃する技、ギガンティックボマーをギネに仕掛けるウィロー。原作劇場版では孫悟飯(子)に阻まれたが――。
「だから、人妻に言う事じゃないだろ! マッスルカタパルト!」
この歴史では、ギネが似た技であるマッスルカタパルトで正面から迎え撃った。ギネの気と、赤黒いエネルギーが正面からぶつかり合う。
凄まじい力と力の押し相撲だが、勢いはキリで強化されたウィローの方に軍配が上がった。二人が拮抗したのは一瞬で、すぐにギネがウィローに押され始める。
「「スピリットブースト!」」
だが、ウィローは意識をギネに集中するあまり儂等に対して無防備だった。
「排球波! 行くぞ!」
「トス!」
スピリットブーストで気の出力を倍増させた儂が気弾を放ち、サンがそれをさらに打ち上げる。
「アターックっ!」
そして、儂と同じくスピリットブーストで気の出力を上げた4号が三人の気が込められた排球波を、ウィローの脚に向かって弾く。
『ウオオオオオ!?』
既にサンの攻撃を受けていた脚部は、排球波には耐えきれず爆発しながら崩壊する。
「やあああっ!」
ウィローが脚と推進力を失った事でギネが巻き返し、彼を逆に吹き飛ばした。
『お、おのれ……!』
吹き飛ばされたウィローは、元々ボディに備えていた機能によるものか、それともキリで強化された影響か、脚がないまま空中に浮かんで怨嗟の声をあげる。
彼の優秀な頭脳は、自身の敗北を悟ってしまったのだろう。
『おのれ!!』
そして、敗北に彼の高すぎるプライドは耐える事が出来なかった。叫びながら空高く飛んで行く。
「逃げるつもり!?」
「待つんじゃ、儂に考えがある」
追おうとするギネを呼び留めた儂は、ホイポイカプセルから用意していた装備を取り出す。
一方、その頃ウィローは宇宙にまで到達していた。青く輝く地球を見下ろす彼だったが、その美しさに感動を覚える心は残っていなかった。
『地球諸共、滅ぶがいい!』
怒りのあまり破滅的な暴走を始めたウィローは、全エネルギーを振り絞る。世界一を自称した彼の頭脳には、地球を破壊した後、どうするのかといったプランは何もない。
今のこの瞬間、ギネとゲロを殺す事だけが大事で、それ以外の全てがどうでもいい。そんな状態だった。
『ウオオオオオ!』
そして赤黒く輝くエネルギー波、プラネットゲイザーを放つ。それはキリで強化された事で、原作劇場版を遥かに超える破滅的な威力があった。
「シールド発生装置、起動!」
しかし、儂が用意したシールド発生装置で張ったシールドを貫く事は出来なかった。
気を発してはいなくても、キリを発しているウィローの位置をスカウターで特定し、放つだろうエネルギー波の軌道を予想する事は儂のスカウターなら難しくない。
『ば、馬鹿な!?』
宇宙空間で自身の必殺技が不発に終わった事に、ウィローが驚愕したのを観測していない。
「「フォトンウェイブ!」」
「かめはめ波ーっ!」
「ライオットジャベリン!」
何故なら、地上からウィローに向かって必殺技を全力で放ったからだ。
『オッ! オオッ! オオオォォォォ……!』
プラネットゲイザーを放つためにエネルギーを振り絞った直後だったウィローは、儂等の必殺技を無防備に受けるしかなかった。そして、儂のスカウターに表示されていたキリの反応は消えた。
ウィローの消滅は、シュルムと戦う悟空も察知した。宇宙に向かって一際激しい気功波が複数放たれたので、それで決着がついたのだろうと。
「どうする? あっちは決着がついたみてぇだけんど、おめぇもそろそろ本気を出したらどうだ?」
私生活では鈍いところがある悟空だが、戦いにおいては鋭いところがある。今も、シュルムが本気を出していないように感じていた。
「って、言うかおめぇ、魂を狩るとかなんとかって技、なんで使わねぇ?」
そう問いかけるが、シュルムは悟空に応えないままバックステップで距離を取ると、仲間が開いたらしい空間の穴から何処かへ逃げて行ってしまった。
「あ、あれ? あいつ、今日は具合でも悪かったんかな?」
そのいつもとは異なる逃げっぷりに、悟空は思わず追うのも忘れて見送ってしまった。事前に深追いはするなとクロノアに言われていたというのもあるが、シュルムは殺人狂染みた嗜好の持ち主で、悟空とは方向性が異なるが戦闘を楽しむタイプだったはずなので、何も言わず逃げるとは思わなかったのだ。
「そう言えば、ウィローの暗黒ドラゴンボールは回収しなくていいんかな? あれ? 最初からついてなかったか?」
どっちだったかなと首を傾げていると、この歴史の住人たちの気を感じる。彼の歴史でも感じていた気に、ひどく懐かしい気、覚えがあるようなないような気に、始めて覚える気。
そのどれも悟空よりずっと小さいが、「どんな戦い方をするのか、ちょっと手合わせしてみてぇな」と思った。
『悟空っ! 終わったのならすぐ戻すから、その歴史の住人と接触しようなんて思っちゃだめよ!』
その心を読んだように、クロノアの声が響く。
「わ、分かってるよ! でもよぉ、この歴史の事、時の界王神様も気になってんだろ?」
『それは後でちゃんと調べるから気にしないで! さあ、時の巣に転送するわよ!』
そして悟空はギネや孫悟飯がいる方に未練のある視線を向けながら、転送され時の巣に帰還したのだった。
同時刻、シュルムと悟空がいた場所とは別の、ゲロ達とウィローが戦っていた場所からやや離れた場所に、二人の人影があった。
「ドクターウィローっ!」
ドミグラと、彼によって研究所から拉致されたドクター・コーチンである。
コーチンは背後のドミグラを気にしていないのか、それとも彼には知覚できないのか、ただただウィローの敗北と消滅に愕然とした様子で天を仰いでいる。
「な、なんという事だ……世界一の……この世界を支配し、愚かな人類を導くのに相応しい唯一にして偉大な頭脳が……」
コーチンもまた世界征服の野望に燃えた悪の科学者だが、それと同時に彼はウィローの信奉者だった。自身を超える真の天才であり、世界を支配するに相応しい存在であるとウィローを信じ、彼が仮死状態になった後も二心なく彼に仕えてきた。
ウィローを見捨て、狂暴戦士を自らが率いて世界の支配者になろうなんて考えもしなかった。
そんな彼がウィローを失えばどうなるか。答えは、絶望だった。あまりに大きな喪失感に耐えかねたように膝を折り、がっくりと肩を落とす。
彼の野望は、生きる目的はウィローと共に砕け散ったのだ。
だが、野望や生きる目的を喪失してぽっかり空いたコーチンの心の穴には、すぐに炎が灯った。
「おのれ……おのれ、ドクターゲロ!」
復讐という激しくも暗い炎が。
ゲロは自分達の研究を盗んで自らが富と名声を得るために利用したのみならず、自分が留守の間に研究所を襲撃し、ウィローを亡きものとした。
悪魔の科学者は奴の方ではないか!
「だが、復讐の時は今ではない」
「そうだ……まだ復讐の時ではない」
背後で囁くドミグラの言葉を繰り返して、コーチンは怒りを抑えた。狂暴戦士は全滅し、研究所も抑えられた。戦闘力に乏しい自分一人では、ウィローを倒した連中に一矢報いる事も出来ないだろう。
今は雌伏の時だ。恨みを力に変え、戦力を整えなければならない。しかし、どうすれば? 狂暴戦士は時間と素材があれば再び作れるが、同じ狂暴戦士をぶつけても敗北は必至。自分一人で、ウィローを倒すような連中に通用する新たな狂暴戦士を開発する事が可能だろうか?
「そうだ、うってつけの素材がいるではないか」
「そうだっ! うってつけの素材がいるではないか!」
再びドミグラの言葉を繰り返すコーチンの脳内に、まるで自分が思い出したかのように、自然とある知識と場所が流れ込む。
あの素材を利用する事が出来れば、復讐を成功させることができるはずだ。
ゲロもそれを知っているから、厳重に監視しているに違いない。だが、奴のスパイロボットの監視を欺く方法は既に彼の頭の中にある。
「クックック、待っていろ、ドクターゲロ! 必ずや、ドクターウィローの仇を討ってくれる! その時こそ、貴様を天才科学者と褒めたたえる世界の終焉の時だ!」
そう呪詛を吐くと、コーチンは復讐の準備に取り掛かるためにもゲロに見つかる訳にはいかないと、ここから足早に立ち去ろうとした。
そして、そのままドミグラが開いた空間の穴に入り、姿を消した。彼がドミグラによって自分の思考が誘導されている事に気が付くことはなかった。
「これで、しばらく経てばキリを稼ぐ道具として使えるだろう。情報提供とここから逃がしてやるのは手間だったが……甘い汁を蓄えた果実を実らせるには、果樹の世話は欠かせない」
ドミグラがそう言いながら新たな空間の穴を開く。すると、そこから悟空と戦っていたシュルムが現れた。
「首尾はどうだ?」
「……申し訳ありません、怪しまれました」
ドミグラにそう報告するシュルムの輪郭が不自然にぶれると、大鎌ではなく奇妙な形状の杖を持った魔神シャメルの姿に変わった。
なんとタイムパトロールの悟空と戦ったのは、ドミグラの魔術によってシュルムの幻を纏ったシャメルだったのだ。
「そうか。お前と体格が近いからシュルムに化けさせたが、無理があったようだな」
「ですが、違和感を覚えただけで俺の正体には気が付いていないでしょう。しばらくは誤魔化せるはずです」
ドミグラがシャメルをシュルムに変装させた理由は、この歴史に干渉しているのは自分達ではなくメチカブラ達であると、時の界王神とタイムパトローラーを誘導するためだ。
ゲロとウィローをぶつけたメチカブラの狙い……自分達が牛耳る歴史から時の界王神とタイムパトローラーの注意を逸らす……を潰し、自分達は潜み続ける。
もっとも、時の界王神にこの歴史の存在が露見した時点で、いつかドミグラ達の関与がばれるのは避けられない。彼らがしたのは、その先送り……嫌がらせに過ぎない。
「しばらく、か。なら上出来だ。では、戻るぞ」
「はっ!」
そして、空間移動で今度こそ歴史改変者は立ち去ったのだった。
激戦を終えた儂等は、主を失ったウィローの研究所の調査を開始した。仮死状態で眠っている狂暴戦士が残っているのを見逃して、将来儂らが地球を留守にしている間に目を覚ましたら事じゃし……ドラゴンボールも回収しなければならん。
なお、重傷を負った者はいなかったが、傷の手当てや休憩が必要な者が殆どだったので、亀仙人達はホイポイカプセルで出した家で休んでもらっている。
瞬間移動でそれぞれの家に送り届けても良かったのだが、「急いで帰ってもやる事はない」、「せっかくじゃから、土産に北海の幸を獲ろうと思う」と鶴仙人や孫悟飯が言い出し、他の皆もそれに同調したからという理由もある。
「あったよ、ドラゴンボール! 星の数以外は家にあるのと同じだね」
「どれどれ……うむ、五星球じゃな」
ギネが見つけたドラゴンボールには、五つの星があった。歴史改変者がここに置いたのは、原作でブルマが北の山で手に入れた五星球だったようだ。
(となると、グルメス王国が手に入れたのはウーロンが襲っている村の老婆の家にある六星球か。物騒な事になっていないと良いのだが……まあ、大丈夫か)
ドラゴンレーダーに映るドラゴンボールの反応には、星の数ごとの違いはない。そのため、五星球と六星球のどちらがウィローの研究室にあり、どちらをグルメス軍が手に入れたのか今まで分からなかった。
しかし、これでグルメス軍は原作でウーロンが恐喝を働いていた村に住む老婆から、彼女の先祖が拾ったというドラゴンボールを手に入れたのが確実になった。
やはり気になるな……村がどうなっているのか、今日中に確認してみるか。まさか壊滅してはいないと思うが……。
「ん? なんじゃ、3号から通信?」
その時、儂はスカウターにブリーフの家を守らせている3号から通信が入っている事に気が付いた。まさか、グルメス王国軍が、ブリーフの家に盗みに入ったのだろうか? だとしたら、今頃GCGの隊員に袋叩きにされて警察に引き渡されていそうだが……。
「どうした、3号? ドラゴンボールを狙う不届き者でも現れたか?」
『イエ、ソレガ、ぶるまオ嬢サンが……』
「なにっ!? ブルマに何かあったのか!?」
慌てて気を探ると……ブルマの気はパオズ山ではなくブリーフの家に何時の間にか移動していた。
『イエ、タダぶるまオ嬢サンガ、どらごんぼーるヲ参考ニ何カ作ッテイマス。止メナクテ大丈夫デスカ?』
そして、スカウターから聞こえる3号の声。どうやら、切迫した事態ではないようだ。
ため息を吐いて安堵すると、儂の声を聞いたサンとギネ、そして4号がこちらを伺っている。儂は彼女達に聞こえるようスカウターの通話をスピーカーにする。
「それは構わんが、何かあったのかブルマから聞いておるか?」
テレパシーで直接ブルマに聞いてもいいが、何かを作っている最中の彼女の邪魔をするのは気が引ける。そのため、そのまま3号に尋ねると、彼は儂等がウィローと戦っている間に何があったのかを説明してくれた。
時間は、ゲロ達がウィローや狂暴戦士と戦い始めるしばし前に巻き戻る。
留守番を言いつけられたブルマ達は、悟空が暮らすパオズ山に集まって合宿をしていた。大人がいないため、気分は修学旅行や林間学校に近い。
もちろん、ドラゴンボールを狙っている者が来るかもしれないとは彼らもゲロや孫悟飯から聞いている。
だが、孫悟飯とギネがパオズ山を留守にするのは長くても一日の予定であり、パオズ山周辺にバイオマンを連れたコーチンが現れた場合は、その気の大きさからすぐに察知する事が可能であるため、深刻には考えていなかった。
グルメス王国軍がボールを奪いに来る可能性もあったが、ゲロはボンゴ達が原作の何倍も強くなっている事を知らないため、今の悟空達なら問題のない相手だと判断したため、悟空達にあまり強く警告しなかったのだ。
そのため、悟空達も家の中のドラゴンボールを付きっきりで守ろうと思わなかった。
せっかく集まったのだから、昼は外に出てみんなで稽古をしていた。……家の中で電話が鳴っている事には誰も気づかなかったため、占い婆の連絡は届かなかった。
そして、昼下がり、暗くなる前に夕飯の準備を済ませておこうと、彼らが動き出して直ぐの事だった。
「薪割り終わったぞ~! おっ、あれ飛行機ってやつだろ? 鳥だったら今日の晩飯にしてやるのにな」
空に、一機の飛行機が現れたのは。
「あの飛行機、それなりに強い気の持ち主が何人か乗っているようだな……悟空、この辺りの空はよく飛行機が通るのか?」
「いや、ゲロのじっちゃん達が時々乗ってくるぐらいだ」
悟空の答えを聞いた天津飯は、パオズ山の上空を飛ぶ飛行機を両手の親指と人差し指で作った枠を通して、鋭い三つの目で睨みつけた。
「それで何か分かるのか?」
「ああ、武装しているからただの旅客機や貨物機ではない事と、何かのマークが見える事ぐらいだが」
「……相変わらず、望遠鏡並みの目の良さだな」
「武装しているぐらいなら珍しくはないけど……本当に強い奴らが何人か乗ってる。偶然か?」
ラズリが言うように、この世界では武装している車や船、飛行機は珍しくない。都の内側や周辺だけで乗るならともかく、街から離れた辺境では危険な魔族や恐竜等がいるため、一般市民でもマシンガンや大砲を搭載した乗り物を使う必要があるからだ。……もちろん、武装が搭載されている乗り物より搭載されていない乗り物のほうが安いので、非武装の乗り物のほうが多数派ではあるが。
「強い奴らが乗ってるのか!? 降りてきてオラと戦ってくれねぇかな~」
「でも、通り過ぎていくぞ。飛んで近づいてみるか?」
「あたし達の舞空術じゃ、飛行機には追い付けないよ。天津飯でも難しいんじゃないか?」
空を飛ぶ事が出来る舞空術だが、その飛行速度は術者の気の大きさによる。戦闘力100程では、飛行というより浮遊と評した方が良い程度で、鳥のように素早く自由自在に空を飛ぶ事は出来ない。可能だったとしても、短い間だけだ。
何より、舞空術は気を使って飛ぶので疲れる。原作のサイヤ人襲来編で、死んだ悟空が界王様の所に行くのに蛇の道を進む際、最初は舞空術で空を飛んだ。しかし、体力を消費したため途中から道を走って進んでいる。その事からも、飛行機のようには使えないのだ。
戦闘力が千数百未満の者が長距離を楽に移動したければ、乗り物を使うのが適している。筋斗雲や、自分で投げた丸太や柱などの。
「桃白白みたいに丸太でも投げるか、チャオズに見て来てもらうか?」
なお、超能力であるサイコキネシスで自分を浮かせて行う飛行は舞空術とはエネルギーの使い方が異なる。
「いや、そこまでしなくていいだろう。ただ偶然通りがかっただけのようだからな」
しかし、飛行機はそのまま遠ざかっていったので、天津飯は深くは気にしない事にした。
「よし。気分を切り替えて、狩りで勝負だ。負けたら、夕飯の後片付けだ」
「おう! 今日はオラが勝つぞ!」
天津飯が留守番組の最年長者として、そう盛り上げようとする。勝負事が大好きな悟空も、飛行機の事を忘れて声をあげる。
「悟空さ、その背中に背負ってるのはなんだべ?」
「おう、じっちゃんから貰った如意棒だ!」
彼の背には、孫悟飯から留守番のご褒美の先払いとしてもらっていた如意棒が背負われていた。
武器の類にはあまり興味がない悟空だったが、自由自在に伸びて頑丈な如意棒は武器として以外にも様々な使い道があり、とても面白い。
「この如意棒で大物を捕まえてやる!」
「オラも、この新しいヘルメットで熊でも恐竜でもすぐ捕まえてやるべ!」
「その棒はともかく、チチちゃんのヘルメットは切れ味が凄そうね」
「天、野菜はどうしよう?」
「四身の拳で出した分身が山菜を集めて来るから心配するな、チャオズ」
楽しげに話しながら、悟空達が狩りに出かけようとした時、招かれざる客が現れた。
「たのもう! ここに第二十四回天下一武道会優勝者、ギネ殿がおられると聞いたのだが!」
そこに現れたのは、強面の大男達と美女の奇妙な組み合わせの一団だった。
「誰だ!? もしかして母ちゃんの客か?」
「俺達は武者修行中の武道家だ。御高名なギネ殿に、腕試しの試合を申し込みに来た! どうか、手合わせ願いたい!」
大声で用件を述べる先頭の大男の前に、悟空達が集まる。天津飯やブルマ、チャオズは大男達の気から、彼らが飛行機に乗っていた者達だと気が付く。
「へ~、おっちゃん達、母ちゃんと試合しに来たのか」
「そうだ。俺はボンゴという、お前達は……天下一武道会に出ていたな」
飛行機に乗っていた大男達の正体、それはグルメス王にドラゴンボール集めを命じられたボンゴ達だった。彼らは占い婆の占いによってドラゴンボールがパオズ山のある民家にある事を知り、そこに向かっていたのだが……その途中である事を思い出したのだ。第二十四回天下一武道会優勝者が、確かパオズ山で暮らしているとテレビのインタビューで答えていたなと。
それを思い出した瞬間、ボンゴは悟った。実力行使では絶対勝てないと。自分達が一度も勝ったことがないミイラ君よりも強いというアックマンは、天下一武道会では一回戦負けだったのだ。その大会で優勝したギネに勝てるはずがない。
彼等にとってギネは、全員で束になってかかればとか、そうした手が通じる次元の存在ではないのだ。
ボンゴはもちろん四天王のニョッキ達だって、一般的なグルメス王国軍兵が相手なら十人以上が束になってかかってきても蹴散らせる。それ以上の圧倒的な差がギネとの間にはあると彼は察していた。
一緒に暮らしている者を人質にとる、という手段も使えない。何故なら、ギネの義理の親は武天老師こと亀仙人の一番弟子の孫悟飯、そして息子は一回戦負けとはいえ幼くして天下一武道会本戦に出場した孫悟空だ。
孫悟空一人だけなら、ボンゴ達が束になってかかれば捕まえる事が出来るかもしれない。しかし、その時点で簡単に人質に出来る存在じゃない。
なら、六星球を手に入れた時のように取引を持ち掛けて譲ってもらうか、こっそり盗むかしかない。しかし、ギネは宇宙人にも影響力を持つ超企業GCコーポレーションの会長や社長とコネクションがある。はした金に目の色を変える事はないだろう。田舎の老婆と交渉するのとは、交渉の難易度が違う……そうボンゴ達は思い込んだ。
そうである以上、悪党である彼らがドラゴンボールを盗む事を選ぶのは当然の事だった。
だが、盗むのも簡単ではない。何故なら、ギネ達は気を感知して視界の外にいる人の位置も把握できるからだ。ボンゴは、それを占い婆の宮殿で戦った透明人間のすけさんが何気なく口にした言葉から察していた。
いわく……「気が読めれば、俺が透明人間でも関係ない。見えなくても何処にいるのか、すぐに見破られてしまう」と。
ボンゴ達にはその「気」が何なのか、どれほど「読める」ものなのかは分からない。達人は目に頼らず、相手の気配を読んで戦う事が出来るというが、その事だろうかと推測するぐらいだった。
だが、スケさんに世間話として尋ねたところ、その気が読めるのが、「例えば、天下一武道会で優勝したギネさんや、その息子さん達だ」という情報を得ていた。
こっそり盗もうとしても、「気」を読まれて見破られる可能性が高い、なら、どうするか。そこでパスタとオレガノが知恵を出した。
まず、全員で武者修行中の武道家と身分を偽って囮になる。そして、連中の注意が逸れている間に、「気」とやらが無いと思われる奴にドラゴンボールを盗ませて、後で合流する。
「わりぃけど、母ちゃんは留守だ」
「な、何っ!? そうなのか!? じゃあ、達人と名高い孫悟飯殿は……?」
「じっちゃんも留守だ」
「そ、そうだったのか……」
それは好都合だと緩みそうになる口元を隠すために、ショックを受けたかのように俯くボンゴ。しかし、それで作戦を盗みから強奪に変更しようとは思わなかった。
集まってきた子供達が、ラズリとラピスの双子以外天下一武道会本戦出場者だったからだ。
「俺は天津飯。鶴仙人様の下で修行している。ギネさんや孫悟飯翁は、予定では明日には帰るはずだが、それまで待つか? 一晩泊まってもらう事になるか……」
そんなボンゴ達の態度を、天津飯や悟空はおかしいとは思わなかった。都会で暮らす天津飯だが、原作コミックやアニメとは違い殺し屋を目指して悪事をしてはいないため、原作天津飯より他人の悪意に鈍いところがあった。
「……なんか怪しくない? 道着じゃないのに似たような格好だし、武者修行の旅をしているっていうには、気が大きいのに飛行機を使ってるし」
「さっき顔を伏せた時の動きも、わざとらしかったし」
そう囁くブルマとラズリの方が鋭いくらいだ。しかし、彼女達も違和感を覚えた程度で確証がある訳ではない。
「いや、実は明日には国に帰らなければならないので、それには及ばない。だが、よければだが天下一武道会本戦に出場したおま……君達と手合わせを願いたい。良いだろうか?」
「オラ達とか!? よっしゃ、やろうぜ!」
「悟空さ、夕飯の準備はどうするだ?」
「でもよ、チチ、おっちゃん達が可哀そうだろ?」
「夕飯は、俺が四身の拳で山菜と一緒に獲物も集めて来るから、悟空達は客人の相手を頼む」
天津飯もボンゴ達との試合に興味はあったが、彼の実力は既に戦闘力に換算して約640。ボンゴ達では相手にならない。四身の拳で気を四分の一にしても、余裕で勝てる強さだ。
そのため、ボンゴ達と実力が近い悟空達が試合をした方が、双方得られるものが多いだろうと判断した。
「ありがとな、天津飯! じゃあ、やろうぜおっちゃん!」
「感謝する。だが、まずはこいつらから試合をしてやって欲しい。おいっ!」
「へいっ! 俺はボンゴし……ボンゴさんの舎弟のニョッキ! 相手を頼みますぜ!」
彼等がイメージする「試合をしてもらう武者修行の武道家」らしい態度で、まずはボンゴ四天王のニョッキが前に出た。まだドラゴンボールを盗むのに成功したという合図がないので、彼らの気を引き続ける必要があるからだ。
なお、ボンゴが本名を名乗ったのは短い時間で偽名まで思いつかなかったのと、本名を使った方がボロを出さないだろうと思ったからである。
その頃、孫悟飯の家を目指す者の影があった。
『アノ家デンナ』
それは、グルメス王も使用人代わりに使っているのと同じロボットだった。「気」が全ての生き物が発する気配だとするなら、ロボットに「気」はないはずだとオレガノが推測し、使う事を提案したのだが、彼の推測は大当たりだった。
天津飯もブルマも気のないロボットの存在には全く気が付かなかった。そして、GCコーポレーションが販売している家事手伝いロボットの廉価品であるロボットには、命じられたのが犯罪か否かを判断する機能も搭載されていない。
ロボットは見せられた写真に写っていたドラゴンボールと似たボールを、「あの家の中から探して指示した場所まで持ってくるように」という命令を実行すべく、孫悟飯の家に裏から侵入するのだった。
〇タイムパトロール
この作品のタイムパトロールは、ながやま由貴先生の「スーパードラゴンボールヒーローズ 暗黒魔界ミッション」を参考にしております。ただ、タイムパトロールのメンバー構成や強さが同じかは今後の展開と、プロットによって変わります。
「スーパードラゴンボールヒーローズ 暗黒魔界ミッション」では、トランクス 孫悟空(超ルート)、ベジータ(超ルート)、孫悟飯(超ルート)、孫悟天(超ルート)、パン(GTルート)が、名前をあげた順でタイムパトロールに参加しています。
この作品で現在確定しているタイムパトロールのメンバーは、トランクス、孫悟空(超ルート)です。
〇シュルム
暗黒魔界の死神と呼ばれる、バンダナに大鎌がトレードマークの青い肌をした青年の姿をした魔神。
殺人狂かつ戦闘狂な傾向があり、部下の犠牲を厭わないのではなく、部下を好んで犠牲にする。
例を挙げると、強敵の動きを封じるよう忠実な部下に命令し、実行した部下ごと鎌で斬殺する。タイムパトロールを待つ間、暇つぶしのために部下を殺していたら、タイムパトロールと戦う前に部下を自分の手で全滅させてしまった。
ただ、「スーパードラゴンボールヒーローズ 暗黒魔界ミッション」では、メチカブラの命令に逆らう様子はなく、他の魔神を裏切るような事はしなかった。
大鎌で攻撃した対象の魂の力(スピリットパワー?)を奪う能力を持つ。しかし、スピリットパワーの分離とは異なり、フュージョンを解除させるようなことはできないようだ。
また、空間移動は苦手らしい。
なお、この話で登場したシュルムは、ドミグラの部下である魔神シャメルの変装で本人ではない。
〇舞空術
「戦闘力千数百未満の者は、長距離を楽に移動した場合は乗り物を使った方が良い」というのは、本編でもあげた原作のサイヤ人襲来編の悟空が蛇の道を進む際のエピソードや、無印で弟弟子の天津飯も舞空術を習得していたのに桃白白が舞空術を使うのではなく、自分で投げた柱を乗り物にして移動した事から推測しました。
〇如意棒
無印で悟空が孫悟飯から貰った、自在に伸び縮する棒。筋斗雲と違い、Zでは早々に登場しなくなってしまった。
どんな物質で出来ているのか、何故伸び縮みするのか、不明な点が多い。おそらく、地球の神様(今代か数代前かは不明)の手による品だと思われる。
〇ゲロのスカウター
戦闘力だけではなく、キリも測定できる特製スカウター。
酒井悠人様、変わり者様、あんころ(餅)様、水上一佐様、劉魔様、みそかつ様、Othuyeg様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。