ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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45話 ドラゴンボール泥棒を追え! ヤムチャVSボンゴ!

 武者修行中の武闘家を自称する男達との手合わせは、四身の拳で増えた天津飯達が森に狩りに行った後、すぐに四試合目が終わった。

「ま、まいった! いやー、流石は孫悟飯のお孫さんだ。早くて見えなかったぜ」

 ニョッキから始まり、ペンネ、マカロニ、そしてこのリングイネとの試合に勝利した悟空は不思議そうに尋ねた。

 

「なあ、おっちゃん。腕試しの試合なのに、なんで本気を出さねぇんだ?」

「えっ、そんな事は――」

「おっちゃん、全然本気出してねぇ。今だって、逃げ回ってばっかりで反撃しようともしねぇ。変だぞ」

 

 腕試しの試合に連勝した悟空は、その試合内容に違和感を覚えていた。ニョッキ達から、戦意……勝とうとする意志が感じられないからだ。

 悟空が彼らの立場なら、必死に勝とうとする。何度殴られても、蹴られても、体が動く限り立ち上がり続けるだろう。

 

 しかし、最初の相手だったニョッキは回避に集中していた。悟空も最初はニョッキがそういう戦い方をする武道家だと思って、相手をした。きっと、隙を突いてカウンターを狙ってくるに違いないと思ったのだ。だが、ニョッキは悟空と暫く戦うと、本気を出す事もなくその前に降参してしまった。

 

 気の大きさはニョッキより悟空の方が倍以上大きい。きっと、実力差が大きくてとても勝てないと思ったか、カウンターを狙っている内に体力が尽きたのだろうと悟空は思った。

 だが、その後のペンネ、マカロニも同じように逃げ回ってばかりで降参してしまった。そして、リングイネで四人目だ。妙に思わない訳がない。

 

「い、いやいやっ、俺はさっきので精いっぱい……それに、明日には国に帰らないといけないんで、動けなくなるまで全力を振り絞る訳にはいかないかなーって思いまして!」

「孫君が強いから、おじさん達が勝つのを諦めちゃうだけじゃない?」

「そうかぁ? でもよぉ、おっちゃん達諦めたって感じじゃねぇぞ。目が活きてる」

「そうだべな、まったく悔しそうじゃねぇべ」

 

 対人関係において色々鈍いところがある悟空だが、この歴史の悟空はこの時点の原作悟空と比べると他人に接した経験が圧倒的に多い。さらに、もう一度天下一武道会に出場している。

 勝ち上がった予選で、自分とぶつかった選手が全力を出した時の様子も、それでも負けた時に悔しそうにしつつも敗退を認めた時の様子も見ていた。

 

 それに比べるとリングイネ達は、悔しそうな様子があまりに見られない。悔しさを押し隠しているようにも、全力を出す前に倒されて諦めたようにも、どちらにも見えないのに、此方の健闘を讃えてくる。

 それが武者修行中の武道家という悟空のイメージからかけ離れていて、怪しく見えるのだ。

 

「あ、はははっ、実は俺、明日故郷の妹の結婚式がありまして、それに出席するんでボロボロになる訳にはいかないなーと思う次第でして!」

「え、そうだったんか。そりゃ疑って悪かったな」

 しかし、他人の言葉を信じやすい性格は、この歴史の悟空も変わらなかった。何とか誤魔化せたと、ほっと胸をなでおろすリングイネだったが……。

 

「怪しい」

「怪しいね」

「滅茶苦茶怪しいべ」

 悟空以外、特に女子は全く誤魔化せていなかった。それどころか、下手な嘘をついたせいで余計に怪しまれている。

 

「そうか? まあ、つまらない試合なのは確かだが」

「ボク、晩御飯の準備をしてくる」

 一方、ラピスとチャオズはリングイネ達が揃って逃げ腰なので試合観戦に飽き始めていた。だが、それは怪しまれるよりボンゴ達にとって都合が悪い。何故なら、彼らの目的はロボットがドラゴンボールを盗み終えるまで、彼らの注意をここに引き付けて置く事なのだから。

 

「まあまあ、次はこのオレガノおじさんと試合をしてくれないかな~。おじさん、明日は国に戻っても結婚する妹とかいないから、こいつらよりは本気の試合ができるからさ」

(クソ、演技力の無い連中だ! ロボットも早くしてくれ!)

 オレガノは内心でボンゴ四天王達を罵りながら、ロボットがドラゴンボールを早く盗んで合図を送るよう祈った。しかし、彼が次の相手に名乗り出てもチャオズは足を止めず、家の方へ向かっていく。

 

(クソ、失敗か!?)

 オレガノだけではなく、内心焦っているボンゴやパスタもそう思った。だが、その時孫悟飯の家の裏手から大きな音がした。

 

「な、なんだ!?」

「飛行機!?」

 なんと、小型の飛行機が飛び立ったのだ。

 

「なんで飛行機が……あっ、もしかして!」

「ドラゴンボールっ!」

 既に家の前にいたチャオズが飛び込んで確認するが、ドラゴンボールが飾られていた場所には何もなくなっていた。

 

「盗まれた! きっとあの飛行機!」

「チャオズ、ブルマっ、瞬間移動できるか!?」

 とっさに悟空達は飛行機を追おうとする。ブルマとチャオズなら、飛行機に何者が乗っているとしてもその気を目印にして、瞬間移動が可能だ。

 

「う~んっ、ダメ! あの飛行機から気を全く感じないわ」

「ボクも感じない。天に連絡する!」

 しかし、上昇を続ける飛行機からは瞬間移動の目印にするための気が感じられなかった。それは、ドラゴンボールを盗んであの飛行機に乗った犯人が、小動物や微生物並みの生命力の持ち主か……気を消す技術の持ち主である事を意味すると、チャオズは思い込んだ。

 

「それじゃ間に合わねぇ! オラが行く!」

 原作と違い舞空術を習得している悟空だが、飛行機には追い付けないと天津飯達と話したばかりだ。そんな彼がどうやって飛行機を追跡するのかというと……先達に倣うのである。

 

「そう来ると思ったぜ」

「そらっ、これを使いなっ!」

 ラピスとラズリが近くに生えていた木の上下を蹴り折り、大雑把だが丸太にして悟空に放り投げる。

「おうっ、サンキュっ!」

 そして、受け取った丸太を悟空は目測で飛行機に向かって投擲!

 

「じゃあ、行ってくるっ!」

「悟空さっ、オラも!」

 自分が投擲した丸太に悟空と、彼を追ったチチも飛び乗った。桃白白が映画でも披露した、柱(丸太)投擲移動術である。

 

 悟空はこの移動方法に桃白白程慣れておらず、更にチチと二人乗りだが、短い距離なら問題ない。どんどん飛行機に追い付いていく。

「悟空さ、追い付いたらどうするつもりだべ?」

「あっ、忘れてた」

 

 問題は、追い付いた後どうするか悟空が考えていなかった事だ。思わずズッコケそうになったチチが、慌てて悟空の尻尾に捕まる。

「ち、チチ、尻尾は~」

「わわっ、すまねぇ、悟空さ!」

 尻尾を掴まれた事で力が入らなくなった悟空が丸太から落ちそうになり、チチが慌てて尻尾ではなく悟空の服を掴んで彼の落下を防ぐ。

 

 そんな追跡者の混乱ぶりをどう思ったのかは不明だが、追い付かれつつあった飛行機に変化があった。機体の一部が開き、バルカン砲やミサイルが出現し、悟空とチチを撃退するために容赦なく弾丸を吐き出した。

「やべっ!」

 脱力から素早く立ち直った悟空は、背中の如意棒を抜いて回転させ、弾丸を叩き落とした。しかし、ミサイルにまでは手が足りない。

 

「やあっ!」

 しかし、チチが兜から放つレーザー光線によって次々にミサイルを撃ち落とした。

「すげえな、チチ。新しい技か?」

「ううん、この兜のお陰だべ」

 

 弾丸を弾く如意棒にミサイルを打ち落とすレーザーを放つ兜。それを見たからか、それとも単に弾薬が切れたからか、飛行機からの攻撃が止む。

「悟空っ、チチっ、無事か!?」

 そこに、悟空と同じように丸太に乗った天津飯がやって来た。

 

「無事だけど、飛行機をどうやって止めればいいか困ってんだ。撃ち落としちまったら拙いよな?」

「確かに、撃ち落とすのは不味いな」

 この時、悟空達はドラゴンレーダーを持っていないどころか、存在すら知らない。飛行機が地上に落下するだけならまだいいが、空中で爆発四散したらボールを探すのは不可能に近いと思っている。

 

(しかし、まだパイロットの気を感じないな。俺達が追いかけているのに気が付いているなら、もう気を消す意味はないと分かっているはずだが? いや、そんな事よりも今はドラゴンボールだ!)

 イチかバチか飛行機に向かって飛んで機体に張り付き、パイロットから奪い返すか? 若干危険だが、自分ならパイロットを抱えていても地面に落下せず舞空術で安全に着地できる。

 

 しかし、もし機体に張り付くのに失敗したら、再チャレンジするのが難しくなる。

(やるしかないか。……ん? チャオズ?)

 判断を下そうとしたとき、実の弟同然の弟弟子のテレパシーを受け取った天津飯は、方針を一転した。

 

「悟空っ、チチ、飛行機の翼だけを壊せ!」

「分かった!」

 悟空は迷わず丸太を蹴って飛び上がると、如意棒を大きく振り上げた。

 

「伸びろっ、如意棒!」

 そして、如意棒を伸ばし、飛行機に届く長さになった時に全力で振り下ろした。すると、まっすぐ飛び続けるだけの飛行機の右側の翼に命中し、半ばからへし折った。

 

 もう片方! そう思った悟空だったが、傾いた飛行機に残っていた翼が彼の見ている前で切断された。なんと、チチが兜についていた刃を投擲したのだ。

「じっちゃんから貰った如意棒もすげえけど、チチの兜もすげぇなぁ」

 感心する悟空が舞空術で浮かびながら如意棒を元の長さに戻している間に、両翼を失った飛行機は見る見るうちに落下していく。

 

 どうするのかと思っていると、天津飯が乗っていた丸太を蹴って機体を追いかけていく。

 そして、飛行機に追い付いたと思った瞬間、天津飯の近くにブルマとチャオズが瞬間移動で現れた。

「さあ、これでもう逃げられないわよ!」

「大人しく、ボール返せ!」

 そして、飛行機を念動力で支えて落下を止めた。パイロットの気が感じ取れなかった二人は、天津飯とテレパシーで連絡を取ってタイミングを計り、彼の気を目印に瞬間移動してきたのだ。

 

 こうする事で天津飯が一人で飛行機に取りつくよりも不測の事態に対応しやすくなり、万が一にもボールを見失う事やパイロットを死なせるような事を防げる。

 そう考えたのだが……。

 

『ぼーる? 何ノ事ヤネン?』

 飛行機を運転していたのは、ロボットだったのだ。

「ロボット? なるほど、気が感じ取れないわけだわ」

「ロボットがボールを盗んだのか!?」

 

『セヤカラ、ぼーるッテ何ノ事ヤネン?』

「とぼけるな。ドラゴンボールを盗んでいないなら、なぜ逃げた?」

『逃ゲテマヘン。ウチハ命令通リ、飛行機ヲ運転シタダケデッセ』

 

「なんだと!?」

 驚いた天津飯が操縦室をのぞき込んで機内を見回すが、飛行機の中には誰も乗っておらず、ドラゴンボールもボールが入っていそうなものも見当たらなかった。

 

『ソウ言エバ、飛行機ガ壊サレタリ、誰カガ乗リ込ンデ来タラ、コノぼたんヲ押セッテ命令モ受ケテマシタワ』

 そう言いながら、ロボットは髑髏マークが描かれたボタンを押す。

「っ! チャオズ、ブルマ、飛行機を放せ!」

 天津飯の警告に応えてチャオズとブルマが念動力を解除して飛行機を放すのと、飛行機が自爆したのはほぼ同時だった。

 

「天津飯!」

「みんな無事だべか!?」

 悟空と、丸太から離れて舞空術で飛行機に近づこうとしていたチチが声をあげる。

 

「心配するな、無事だ!」

 煙が晴れると、その向こうには怪我一つない様子の天津飯の姿があった。その背後にはチャオズとブルマもいる。

「しかし、ドラゴンボールは飛行機にはなかったようだ。飛行機を操縦していたのは、何も知らないロボットだった。俺達は犯人に騙されたらしい」

 そう言って天津飯は悔しそうに拳を握る。彼は留守組のリーダーをゲロに任され、ドラゴンボールを守るように言われていたので、責任を感じているのだろう。

 

 自分達では勝てない相手が来た場合は、抵抗せず渡すようにとは言われていた。しかし、ロボットに操縦させた飛行機を囮に使うような相手が、勝てない相手だったとは天津飯には思えなかった。

「くっそ~、泥棒め、どこへ行っちまったんだ?」

「そうだ! 飛行機を操縦していたロボットの残骸を解析すれば何か分かるかもしれないわ!」

 ブルマがそう言いだしたため、悟空達は落ちた飛行機の残骸を探るために地上に降りた。しかし、ただ墜落しただけではなく、空中で自爆装置を作動して自爆したためか、飛行機の機体も操縦していたロボットもバラバラになっており、無事なパーツはほぼ残っていなかった。

 

「さすがにこれは、無理でねえか?」

「そうだ! 占い婆に占ってもらったらどうだ?」

「今の天ならミイラ君に勝てる! アックマン、神様の神殿で修行中だから、占ってもらえるかも!」

 手がかりが見つかる見込みがない中、悟空がすべてを解決できるアイディアを出した。

 

 彼女の占いなら、盗まれたドラゴンボールが何処にあるのか分かる。そして、アックマン不在の占い婆の戦士達なら、天津飯が居れば勝ち抜く事が可能だ。

 ……というか、占い婆なら事情を聴いただけでドラゴンボール泥棒の犯人がボンゴ達だと分かる。何なら、家の中の電話に録音された伝言を聞いて、連絡するだけで悟空達は犯人を知る事が出来るのだ。

 

 しかし、初めての留守番。大人の手を借りずに、トラブルを解決したい。そんなプライドがあった。

「ううん……そうだ! ドラゴンボールの位置が分かる装置を作れるかもしれないわ!」

「え、そんなの作れるのか?」

「多分ね! 今気が付いたんだけど、そうじゃないとゲロおじいちゃんがドクターウィローの研究所にドラゴンボールがあるのに気が付いた理由が謎じゃない?」

 

 ドラゴンレーダーの存在は知らなかったブルマだが、ゲロがそうしたドラゴンボールの位置を検知できる機械を持っていないとおかしい事に気が付いた。

「現物を詳しく調べないと無理だけどね」

「現物って、じっちゃんのドラゴンボールはもう盗まれちまったぞ?」

「大丈夫よ、あたしの家の蔵にもドラゴンボールがあるから、そっちを調べて来るわ! 皆は待ってる間、他に手掛かりがないか調べてみて!」

 

 ブルマはそう言うと、瞬間移動で西の都の自分の家に瞬間移動し、さっそくドラゴンレーダーの制作を開始した。

 その間、悟空達は言われた通り残骸から手掛かりを探し、チャオズは一旦悟空の家に戻って天津飯が狩って持って来たままにした食材や、ラズリとラピスと一緒に戻ってきた。

 

「そう言えば、おっちゃん達はどうしたんだ?」

「あいつらなら、お前達が飛行機を追いかけていった後、すぐに帰ったぞ」

「トラブルのようだから、邪魔をしては悪いとかなんとか言ってな。やっぱり、あいつら怪しくないか?」

「……確かにな」

 

 残骸からは手掛かりは得られなかったが、全てはボンゴ達が現れた後で起きている。無関係とは考え難いタイミングだ。

 しかし、証拠はない。今から追いかけようにも、既に天津飯でも気が追えない距離まで離れてしまった。

 

 そしてブルマを待っている間に、日は傾き、天津飯が狩った車より大きな魚と山菜を使って、チャオズとチチが大魚の香草焼きと、山菜の味噌汁を作っていると……不意に絹を裂くような悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 そして時間はこの儂、天才科学者のドクターゲロが、ブルマがドラゴンボールを調べているという連絡を3号から受けた時まで巻き戻る。

 ブルマが3号に話した事情から、グルメス王国軍が四星球を盗んだ事を儂は察した。

 

 ブルマはボンゴ達が武者修行中の武道家と身分を偽って現れた事までは話さなかったが、今ドラゴンボールを集めているのは彼らぐらいじゃからな。

 コーチンは相変わらず行方不明だが……もし彼ならバイオマンを一体でも連れていれば、そんな小細工を使わずにドラゴンボールを奪う事が出来るからだ。

 

「それで、どうする? あたしがそのグルメス王国までちょっと行ってこようか?」

「いや、それには及ぶまい。悟飯や鶴仙人と相談してから決めるが、可愛い子には旅をさせろと言う。良い機会じゃから、子供達に任せよう」

 

 ギネがグルメス王国に乗り込めば、一分と掛からず問題は解決。後は地球国の国王に丸投げすればいいだけだが、原作が始まる時期も約一年前だ。ブルマや悟空達が冒険を経験するにはいい時期だろう。

「まあ、あっちにも歴史改変者が介入しないとも限らないので、様子は見るが。後、ドラゴンボールを盗まれた事を連絡しなかった事については、少し叱らねばならんな」

 

 

 

 

 

 

 その頃、ボンゴ達は飛行機に乗って次のドラゴンボールの場所を目指して移動している途中だった。

「なんとか上手くいったな」

「危なかったけどね」

 

 ボンゴ達は、ギネや孫悟飯に気配を読まれる事を警戒して、気配が無いだろう二体のロボット……仮にロボットAとロボットBと呼称する……を使う作戦を立てた。

 自分達が武者修行中の武道家のふりをして注意を引き、家を無人にしている間にロボットAに家の中のドラゴンボールを探させる。そして見つけたら、それを持って指示した位置……ボンゴ達の飛行機が着陸した場所まで戻って機内で待機しているよう命じる。

 

 そしてロボットBは孫悟飯の家の裏手で待機させ、ロボットAがドラゴンボールを持って出てきた後でしばらく経ったらホイポイカプセルから小型飛行機を出し、それを操縦して適当に飛ぶようにと命令しておく。誰かに追い付かれたら自爆ボタンを押すよう指示して。

 

「本当に綱渡りだった……天下一武道会優勝者と達人が留守だったのは運が良かったけど、代わりに本戦に出場したガキが何人もいたからね」

 パスタの言う通り、彼女達の作戦が上手くいったのは運が良かったからだ。作戦を仕掛けた時は家にいるのはギネと孫悟飯、孫悟空の三人だけだと思っていた。しかし、実際には大人はいなかったがブルマやチャオズ等子供が七人もいた。しかも、全員が手練れだった。

 

 気を引くための手合わせを申し込んだ時、もし天津飯が実力の近い悟空達に相手を譲らずボンゴ達を一瞬で倒していれば、チャオズやチチが観戦ではなく夕食の準備を進める事を選んで家の中に戻ってロボットが発見されれば、そして何より天津飯達にもっと疑われていれば、作戦は失敗していただろう。

 

 もっとも、ロボットBがすぐに自爆しなかったため犯人が生きており、ドラゴンボールを盗んで逃走中である事が悟空達にばれてしまっているので、実は作戦成功とも言い難い状況なのだが。しかも、ブルマがドラゴンレーダーを開発中である。

 

「でもまあ、上手くいって一安心ですね」

「俺達がドラゴンボールを盗んだと気づかれなければ、占い婆が文句を言ってくることもないでしょうし」

 それを知らないニョッキ達は、安堵した様子でくつろいでいた。ロボットBが操縦した飛行機の迎撃システムがONになっており、追跡した悟空とチチに向かって攻撃を仕掛けてしまった事も含めて、自分達の仕業だとばれなければ、大事に至らなければいいだろうという、実に適当な感覚をしていた。

 

「まあな。だが、さっさと集めておくに越したことはない。今日中にもう一つも手に入れておくぞ」

 そして、飛行機はカメハウスに向かって進んでいた。

 

 その頃カメハウスでは、双眼鏡で空を警戒していたプーアルが近づいてくる機影にいち早く気が付いていた。

「ヤムチャ様っ、きっと奴らです!」

「やっと来たか。待ちくたびれたぜ」

 ヤムチャは不敵に笑うとカメハウスから表に出た。決闘を申し込まれるかもしれないと占い婆から言われていたので、体に負荷をかけるトレーニングスーツから道着にしっかり着替えて支度をしていたのだ。

 

 飛行機はヤムチャとプーアルが見ている前で水上モードに変形して着水、カメハウスがある小島のすぐ近くで止まった。

 そして、飛行機からぞろぞろとボンゴ四天王を引き連れたボンゴが小島に乗り込んで来る。

 

「おい、お前。ドラゴンボールを……!?」

 そして、ドラゴンボールを要求しようとしたボンゴは、ヤムチャが着ている道着に鶴亀仙流の鶴亀のマークがある事に気が付き驚愕した。

 

(あれは武天老師こと亀仙人と、鶴仙人がお互いの流派を合流して改名した鶴亀仙流のマーク! という事は……こいつは亀仙人の弟子か!?)

 ボンゴ達は、まだ格闘技大会等に出場していないヤムチャの事を知らなかった。彼も『帰ってきた桃白白対逆襲のメカピッコロ大魔王』に出演していたが、画面に映っていたのは短い間だったので覚えていなかったのだ。

 

「どうした? たしかにドラゴンボールなら武天老師様から預けられたが、誰にも渡すなと言いつけられている。渡すつもりはないぜ」

 話している途中で急に黙り込んだボンゴを訝しく思いながら、ヤムチャは彼らがしてくるだろう要求を拒絶した。

 

(こいつ、やはり亀仙人の弟子だ! どうなってるんだ? ドラゴンボールの持ち主が、鶴亀仙流の関係者ばかりだと!?)

 そう内心で文句を言うボンゴ。しかし原作でも孫悟飯、亀仙人、牛魔王の亀仙流の師弟三人がドラゴンボールを所有していたので、運命が悪いとしか言いようがない。

 

 だが、彼らにとって都合のいい事もあった。亀仙人が留守である事だ。

「……金なら払う。ドラゴンボールを売ってくれれば、一千万ゼニーでも二千万ゼニーでも好きなだけ払うぜ」

「悪いが、はした金には興味はないんでな」

 

「そうか。なら、そのドラゴンボールを賭けて俺達と勝負してもらうおうか」

 亀仙人の弟子だったとしても、天下一武道会にも出場していないこの男だけなら勝てるかもしれない。ボンゴはその可能性に賭けることにした。

 

「へっ、いいぜ。プーアル、ドラゴンボールを持っていてくれ」

「はいっ、ヤムチャ様!」

 そして、やや調子に乗っているヤムチャは自分にとって得の無い勝負を受けてしまった。首から下げていたドラゴンボールをプーアルに預けると、構えをとる。

 

「まずはどいつが相手だ?」

「まずはこの俺、ボンゴ四天王の一人、ニョッキ様が相手だ!」

 しかし、亀仙人に弟子入りして約一年修業したヤムチャは強くなっていた。悟空と戦った時とは違い、本気でかかってきたニョッキの攻撃を容易く回避すると、がら空きになった胴体に攻撃を繰り出す。

 

「ハイハイハイハイ、ハイーッ!」

「ぐわーっ!?」

 小手調べのつもりで放った軽い拳の連打だけで、ニョッキは吹っ飛んで白い砂浜に転がった。それを見た他のボンゴ四天王は戦慄したように呻き、プーアルは「凄いです、ヤムチャ様!」と歓声をあげる。

 

「フッ、口ほどにもない」

 そう不敵に笑うヤムチャ自身も、自分が強くなっている事を実感して内心驚いていた。亀仙人に弟子入りしてから組手をする機会は何回かあったが、相手は自分と同格以上の相手が多かったため、彼は自分がどれくらい強くなったのか測りかねていたのだ。

 

 亀仙人も、そろそろ他流試合や腕試しをさせて経験を積ませたいと考えていた時期なので、ボンゴ達との試合を知れば丁度良い機会だったと思うだろう。

 

「四天王だか何だか知らないが、残り三人、纏めてかかってきても構わないぜ」

「テメェっ! 大口を叩きやがって!」

「お前が倒したニョッキは、四天王の中でも一番の小物だ! 調子に乗るんじゃねぇ!」

「後悔しても遅いぞ、若造が!」

 

 そう言いながらペンネ、マカロニ、リングイネはヤムチャが言った通り纏めてかかっていく。彼らは本当にニョッキより強かった。

「はっ! ていっ! はいぃーっ!」

 しかし、亀仙人の課す修行に耐えて強くなったヤムチャにとって、その差は団栗の背比べ程度でしかない。三人が束になってかかってきても、すぐに倒してしまった。

 

「どうした? こっちはやっと体が温まってきたところだが、もう終わりか?」

「く、クソ、調子に乗りやがって!」

 悔し気にヤムチャを睨むリングイネだが、砂浜に膝を突いたまま立ち上がる事が出来ないでいる。

 

「こいつは仕方ねぇな。ここは俺が――」

「オレガノ、お前でも無理だ。ここは俺が出る」

 ヤムチャの動きを見たボンゴがオレガノを抑えて前に出る。ヤムチャは相手の中で最も強そうな相手が出てきたことに、満足げな笑みを浮かべた。

 

「そう来なくちゃな。お前達を全員叩きのめしてやってもいいが、それじゃあお前達を俺が介抱しなくちゃならなくなる」

「調子に乗るな!」

 

 この時、ヤムチャの実力はボンゴを確実に上回っていた。

「ぬおおおおっ! くらえ!」

 ボンゴの巨体から繰り出されるパワー主体の攻撃を、ヤムチャは余裕をもって回避していた。

 

「はっ!」

 ヤムチャは回避し、ボンゴの隙を突いて素早い攻撃を確実に当てていく。ボンゴは見た目通りタフなため一撃必殺とはいかないが、確実にダメージを与え体力を削っていった。

 

「クソがぁ!」

 一分程戦っただけで、ボンゴはヤムチャがただ調子に乗っているのではなく、自分に対して調子に乗るだけの実力の持ち主である事に気が付いたが後には引けない。

 

「フッ、そろそろ決めさせてもらうぜ! 狼牙……風風拳!」

 一方、ヤムチャは動きに自信が漲り、体力も十分。だが、油断せずに勝ち切るために自身が編み出した技、狼牙風風拳を繰り出した。

 

「ハイハイハイハイハイハイ!」

 より速く、より攻撃的になったヤムチャの技にボンゴは防御を固める事でしか対応できなかった。しかし、その防御の上からでもダメージが蓄積されていく。

 

「ぐっ!」

 そしてついにボンゴの防御が崩れた。ヤムチャの拳が、前かがみになったボンゴの顎を捉える。

「い゛ぃっ!?」

 その一瞬前、飛行機から出てきたパスタの姿がヤムチャの視界に入ってしまった。

 

 パスタは、もしもの場合脱出をスムーズに行うため砂浜に降りず飛行機に待機していたのだ。だが、ボンゴ達の敗色が濃厚になったため思わず出てきた。

 それが、結果的にボンゴに勝利をもたらした。

 

「う、うおおおおっ!」

 パスタの方を向いたままカチコチに固まってしまったヤムチャを、ボンゴは反射的に殴り飛ばした。彼はそのままの姿勢で吹っ飛び、上下反対になって浅瀬に突き刺さった。白い波間から、ヤムチャの下半身だけが見える。

 

「や、ヤムチャ様ーっ!?」

「おい、俺達の勝ちでいいだろう。助けに行くなら、そのドラゴンボールを渡せ!」

「渡すから邪魔するなーっ、えいっ!」

 ヤムチャを助けようとするのを引き留めたオレガノに、プーアルがドラゴンボールを投げ渡す。

 

「へへっ、ありがとうよ。ボンゴの旦那っ! 引き上げだ!」

「お、おう。……なんだったんだ?」

「さあね」

 なんで自分が勝ったのか分からない。そんな顔つきのボンゴは、パスタと倒れたままのニョッキや立ち上がれないでいるペンネ達を飛行機に雑に投げ込む。そして、プーアルに救助され介抱されているヤムチャが起きる前に、グルメス王国に帰還するべく慌ただしく飛び立っていったのだった。




〇戦闘力

・悟空(11歳):100 原作で初めて天下一武道会に出場した時よりも強くなった。また、舞空術とかめはめ波も習得済み。尻尾の克服は未完成。

・チチ(11歳):90 原作で匿名希望として天下一武道会に出場した時よりちょっと弱い程度。かめはめ波や残像拳、舞空術も習得している。また、今回はルールのある大会ではないので原作で被っていたヘルメットを着用している。

・ブルマ(11歳):90 天才超能力格闘科学少女。ゲロと同じ戦える科学者の道を順調に進んでいる。背では悟空を追い抜きつつある。

・チャオズ(10歳):75 超能力少年。この頃は天津飯の事を天と呼ぶ。

・ラズリ&ラピス(13歳):50 本格的な修行を始めつつある。気の感知や制御はまだ甘いが、身体能力はもう超人の域にあり、木を丸太にするぐらいならそれぞれ軽く蹴るぐらいで充分。留守番組では天津飯に次いで年長だが、実力は最も低い。

・天津飯(15歳):640 実はボンゴ達を瞬殺できる実力を持つ、留守番組最年長者。ただ、原作よりも人の悪意に触れていないため、ボンゴ達をあまり怪しまずに武者修行の旅の途中で立ち寄ったと信じてしまい、それなら気の大きさから実力の近い悟空達が相手をした方が良いだろうと思って、狩りに行ってしまった。

・ヤムチャ(16歳):120 原作鶴仙人と同じくらいの強さ。舞空術と気功波(かめはめ波)を習得済みで、戦闘服の柔軟性を体に負荷をかける事に応用したトレーニングスーツの修行も始めている。
 ただ、対女性限定のあがり症は全く克服できていない。



〇ボンゴ

 グルメス王国の混乱と荒廃の原因の一人。二メートルを超える大男で、パスタと組んでグルメス王国軍を牛耳る悪党。
 荒事担当で、常人離れした怪力を持ち、棒術も得意としている。原作劇場版では、特殊な装備(フライングソーサー)に乗って空を飛び、悟空と戦ったが敗れ、巨大化したグルメス王に踏み潰されてしまう。……平べったくなったが、死んではいないらしい。

 戦闘力は原作では7から8ぐらいと推測されるが、この作品では占い婆の宮殿で繰り返し試合に挑戦したり、元GCG隊員を名乗る教官から修行を受けたり、原作劇場版にない行動を繰り返した結果、100にまで到達している。

 しかし、気の制御や感知は未収得。感知は耳に挟んだことはあるが、達人の類が習得している技という以上の認識はない。気功波についても同様。自分で習得するのは、ミイラ君に勝つのを諦めた時に同時に諦めた。



〇パスタ

 グルメス王国の混乱と荒廃の原因の一人。軍服姿の美女で、ボンゴと手を組んでリッチストンで荒稼ぎしている。
 原作では悟空の家から四星球を盗んだり、飛行機に乗って追ってきたブルマを迎撃しようとしたり、ヤムチャを銃殺しようとしたりした。
 原作劇場版では欲しがっていたリッチストンを失う以外に報いは受けていない。また、一応相棒のボンゴが踏み潰された後で、無事かどうか確認している。

 戦闘力は原作劇場版で銃や手榴弾を使っていたとはいえ、ヤムチャと渡り合ったので6から7ぐらいありそう。
 しかし、この作品ではボンゴに付き合って修行を受けたので、80程になっている。しかしボンゴ同様気の感知、制御は未収得。



〇オレガノ

 グルメス王国軍所属の中肉中背の三十歳前後の、オレンジ色の髪をした男。グルメス王国出身ではなく、外国から流れてきてボンゴとパスタが手下を集めるために急速な軍拡にあったグルメス王国軍に雇われ、頭角を現す。

 二人がリッチストン欲しさに国を牛耳って急速に荒廃させている事を知ってなお、ボンゴを旦那、パスタを姉さんと呼び、従っている。
 戦闘力は70。



〇ボンゴ四天王

 ボンゴが占い婆の宮殿に挑戦するために、グルメス王国軍の中でも強くて自分に従順な者を四人集めて結成した。
 ニョッキ、ペンネ、マカロニ、リングイネの四人。
 戦闘力は、弱い順にニョッキ25で、ペンネ30、マカロニ35、そしてリングイネが40。



 メイ様、ずわい様、中島ゆうき様、PY様、ユウれい様、変わり者様、酒井悠人様、くるま様、Mr.ランターン様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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