ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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46話 謎の少女パンジと懲りないウーロン

「よし、お爺ちゃんがレーダーで検知しているのはこの電波ね! 後は、レーダー本体を組み立てれば――」

「しかし、一から設計して組み立てるのでは時間がかかり過ぎて、天津飯達が待ちくたびれてしまうじゃろう。儂が以前作ったレーダーの資料を参考にしなさい」

「そうね、それなら半日もかからず組み立てられるかも……お爺ちゃん!?」

 

 不意に背後から声をかけられたブルマは、いつの間にか背後にゲロが立っていたことに驚いて声をあげた。

 ブルマにとってゲロは、父親であるブリーフ博士と同じく尊敬できる科学者であると同時に身近なライバルだった。彼女が科学だけでなく、超能力と武術の研鑽も続けているのはゲロの影響によるものが大きい。

 

 もっと幼い頃はただただ尊敬していたが、彼女も十一歳。思春期になると、尊敬するだけではなく挑戦してみたいと思うようになった。

 そんな思いがあったから、今回の留守番で起きたトラブル……ドラゴンボールを盗まれるという大事件をゲロ達大人に黙ったまま、自分達の手で解決しようとしたのだ。

 

「ええっとね、お爺ちゃん、これはそのう……」

 しかし、こうしてゲロを前にすると、夢中になっている間は意識の外にあった後ろめたさがこみ上げてくる。特に、彼女はテレパシーで何時でもゲロやタイツにドラゴンボールが盗まれた事を報告出来たのだから、それをしなかった罪悪感も大きい。

 

「言いたい事は分かる。ドラゴンボールを追いかけるのに夢中で、儂等に連絡するのが遅れていたのじゃろう」

 だが、ゲロはブルマを注意して叱るつもりはあっても、怒ってはいなかった。何故なら、彼は自分で自覚している以上に親バカで孫バカだったからである。

 

 すぐに事態を報告しなかった事も、ドラゴンボール泥棒を追いかけるのと、そのためのレーダーを作る事に夢中になっていたからだろうとゲロは考えていた。テレパシーを使えたとしても、離れた相手に使うには気を探って位置を把握する必要があり、夢中になっているならそれを忘れてもおかしくない。

 携帯が手元にあるのに連絡を忘れる者がいるのと、同じようなものである。

 

「しかし、次に同じような事があったら連絡を入れるように。報告、連絡、相談は基本じゃからな」

「は~い。ところで、なんでばれたの?」

「3号が教えてくれたからな。

 それはともかく、これが以前儂の組み立てたドラゴンボール専用レーダー、ドラゴンレーダーの設計図と資料じゃ」

 

「これが……でも持ち歩くには大きいわね。精度を上げるのは時間がかかるから、とりあえず小型化だけで満足しましょう」

 そして、ブルマは夕食の時間までにドラゴンレーダーを組み立てた。外見はほぼ原作通りだが、性能は原作でレッドリボン軍が使っていたのと同じ程度でしかない。しかし、今はそれで十分だ。

 

「ええっと、今動いているのは……海? これってカメハウスがある方じゃない?」

 そして、試しに動かしてみると何故かカメハウスがある方に二つのドラゴンボールがあるのが分かった。

「あ、二つとも動き出した。他は……動いてないから、これがあたし達の四星球ね」

「ふむ……今、カメハウスのプーアルから連絡が入った。ヤムチャがやられて、ドラゴンボールを奪われたそうじゃ」

 

「ええっ!? カメハウスって、そっちにもドラゴンボールがあったの!? でも盗まれたの!? あのヤムチャって人、結構強かったはずなのに……」

「後で、そのヤムチャとプーアルも瞬間移動で連れて行ってくれ。彼も自分で取り戻したいじゃろうからな」

「そうね、彼から話を聞けばドラゴンボール泥棒の手掛かりも分かるかもしれないし」

 

 そう言うブルマだが、実はヤムチャに話を聞けば手掛かりどころか真犯人が分かる。

「じゃあ、とりあえず孫君達の所に一回戻るわ。じゃあね、お爺ちゃん!」

「うむ、今度はちゃんと連絡を忘れんようにな」

 

 そしてブルマは悟空達と別れた飛行機の墜落地点近くに瞬間移動で戻ると、何故か旅の仲間が増えていた。

 

 

 

 

 

 

 時間はやや巻き戻り……森の中に停まっているキャビンカーの運転席で、子豚がため息を吐いていた。

「まったく、あいつらのお陰で散々だぜ」

 それはただの子豚ではなく、ウーロンだった。彼はパスタ達から逃げ出した後、人気のないこの森に隠れ住んでいたのだ。

 

 蠅からミサイルに化けて逃げ出し、そのまま外で一夜を明かした。そして鳥に化けてこっそり家に戻り、ボンゴ達に脅されても隠し場所を黙っていた、とっておきのホイポイカプセルを回収する事に成功。

 拷問にかけられる前にペラペラと、とっておき以外の金やエロ本の隠し場所を全て話したため、ボンゴ達もウーロンがまだ財産を隠しているとは思わなかったようだ。

 

 そして、あの村から十分に離れたこの森を見つけて、ホイポイカプセルからキャビンカーを出し、木の枝や落ち葉などで苦労して擬装を施して隠れ潜んでいたのだ。

 

「これからどうしようかな。警察やGCGや軍隊やならず者がいなくて、連絡せずに助けも求めない、ついでに可愛い女の子がいる都合のいい村なんてそうそうないし」

 ウーロンの手口は、恐ろしそうな外見に変化して脅し、人々から金や食料を差し出させるというものだ。当然、この手口が通じるのは無力な一般市民だけ。しかも、その一般市民が警察に通報したり、GCGを雇ったりしても通用しなくなってしまう。

 

 何故なら、勇気を振り絞った村人が斧を握りしめて殴りかかってきただけでもウーロンは危機に陥るからだ。彼の変化で変わるのはほぼ外見だけで、力はもちろん硬さもウーロン自身のままなのだ。

 警察が居なくて呼んでも来てくれない程辺境にあったあの村々は、ウーロンにとって貴重な場所だったのだ。

 

「でもまあ、悪い事ばかりじゃないよな。うん、前向きに行こう」

 しかし、ウーロンはめげなかった。これに懲りて真面目に生きようとか、改心しようとは考えない。

 前向きに良かった事……こうしてホイポイカプセルを回収できたからしばらくの間は生活できる事、我儘になってきた女の子達から解放された事、何よりこうして生きている事をあげて、自分を励ます。

 

 そして、また贅沢な暮らしをしてやると再起を誓った。

「んっ? 何か近づいてくる? まさかあいつらが追ってきたのか!?」

 しかし、臆病なのは変わらないので、何者かの気配が近づいてくるのを察知すると、慌ててキャビンカーに隠しておいた銃を構える。

 

「……ん? 変化っ! なんだ、女の子じゃないか」

 そして、夜目の効く猿に変化して気配の正体を確かめると、なんと女の子だった。彼女は夜だったためか、ウーロンの施した雑な擬装に気が付くことなく、キャビンカーの前を通り過ぎていく。

安堵したウーロンは、夜の森を女の子がたった一人で歩いている事に違和感を覚えるよりも早く、いいアイディアを思いついた。

 

「そうだ! あの女の子を新しいお嫁さんにしてやろう!」

 さっき見せた臆病さは何処に行ったのか、ウーロンはキャビンカーから飛び出すと、女の子……パンジを追いかけて大きな野牛に変化した。

 

「きゃ!? きゃぁぁぁぁぁ!?」

 突然現れた巨大な野牛に、パンジは反射的に悲鳴を挙げた。トラックよりも大きく恐ろしい姿を目にして、得意のパチンコで玉を打ち出しても通用しないだろうと判断し、とっさに逃げようとする。

 

『待て~! このウーロン様からは逃げられんぞ! 大人しく俺のお嫁さんになるのだ~!』

「そんなの絶対イヤよっ!」

 悲鳴をあげながら逃げるパンジを、追いかけるウーロン。同年代の少女と比べて圧倒的な機動力を持つパンジだったが、夜の森でウーロンから逃げ続けるのは難しい。

 

 五分以上逃げ続けてウーロンの変身が解けても、一分間休めば再び変化する事が出来る。蝙蝠に変化すれば、夜の森でもすぐに追いつかれてしまうだろう。

 もっとも、難しいのは逃げ続ける事だけで、パチンコで小石や硬い木の実を連射すれば撃退する事も可能なのだが……パンジがそれに気が付くよりも早く、ウーロンに捕まる方が早そうだった。

 

 だが、そこに助けがやって来た。

「悟空、お化け牛だ!」

「でっかいな~!」

 パンジの悲鳴を聞き付けたチャオズが、旅人が事故にでも遭ったのかと悟空を連れて瞬間移動で様子を見に来たのだ。

 

「た、助けて!」

『な、なんだお前ら!? 引っ込んでろ!』

「う~ん、おめえ達、仲間じゃないのか?」

 

 悲鳴を聞いたチャオズだったが、気を探ると小さな気が二つ、元気に森の中を走り回っているような感じで、弱っている様子はない。

 しかし、もしかしたら近くに重傷を負った、チャオズ達の居るところからでは気を感じ取れない程弱っている人がいるのかもしれない。そこで、同行者として犬並みに鼻が利く悟空を選んだ。

 

 だが、やって来てみると予想とは異なる状況だったのでチャオズと悟空はやや困惑を覚えた。

「悟空、とりあえず、あの牛、悪い奴」

「そうだな! あんまり美味そうじゃねえけど、悪い奴ならやっつけるか!」

 しかし、とりあえず悪い方をやっつければいいだろうと、悟空はウーロンとパンジの間に割って入ると、如意棒を構えた。

 

『お、おい、お前っ! 俺の邪魔をすると喰ってしまう……イテェ!?』

 邪魔されて焦ったウーロンは悟空を脅そうとするが、この歴史の悟空は既に気の感知を習得していた。精度はチャオズには遠く及ばないが、目の前にいる相手の気の大きさを見誤る事はない。

 

 そのため、悟空はウーロンの見かけに惑わされないどころか、彼が見掛け倒しである事まで見抜き、彼の脅し文句を無視して如意棒で軽く頭を叩いた。

 その威力は悟空にとっては軽くでも、ウーロンにとっては視界に火花が散り、気が遠くなるほどの威力だ。ショックで変化が解け、本当の姿に戻って倒れ込んでしまう。

 

「あれ? 牛が消えて豚になったぞ?」

「気は同じ。こいつ、牛に化けてた」

「へぇ、プーアルと同じ事が出来んだな」

「本当はあたしと変わらない大きさだったんだ……。

 危ないところをありがとう。あたしはパンジ、あなたは……もしかしてターレス!? それとも孫悟空!? それにあなたはチャオズね!?」

 

 ウーロンが失神して、助かった事に安堵して悟空達に礼を言うパンジ。その時になって二人の姿に見覚えがある事に気が付いた。

「オラ、孫悟空だ。でもなんでオラやターレス兄ちゃんの事知ってるんだ?」

「悟空、ボク達天下一武道会と映画に出た」

 それはパンジが助けを求めるために訪ねようとしていたギネの息子の孫悟空と、鶴仙人の直弟子の一人であるチャオズ。

 

「お願い、あなたのお母さんに頼みたい事があるの!」

「母ちゃんにか? もしかして、おめぇも武者修行の旅の途中か?」

「違うわっ! そうじゃなくて、助けてほしいの!」

「話を聞くのは、皆の所に戻ってからにしよう。晩御飯もある」

 

 そして、再び瞬間移動でみんなの元に戻ってしばらく経った頃にブルマがドラゴンレーダーとヤムチャ、そしてプーアルを連れて合流したのだった。

「ヤムチャ!? 何故お前がここに? カメハウスで亀仙人殿の留守を預かっていたのではなかったのか?」

「ああ、それなんだが……不甲斐ない事にドラゴンボールを取られちまった。あと一歩のところだったんだが」

 ブルマに連れられてやって来たヤムチャに驚いた天津飯が声をかけると、彼もドラゴンボールを奪われていた事が判明した。

 

「お前もドラゴンボールを盗まれたのか!?」

「盗まれた? いや、俺は飛行機でやって来た連中にドラゴンボールを賭けた決闘を申し込まれて、負けたんだ。相手は、占い婆様のお得意様らしい」

 

「でも、あたしがお爺ちゃんのレーダーを参考に組み立てたこのドラゴンレーダーによると、あたし達のドラゴンボールを盗んだのと、ヤムチャからドラゴンボールを取った相手は同一人物らしいのよ。詳しい話を聞く前に連れてきたけど」

 

「そうなのか……ヤムチャ、お前を決闘で倒したのはどんな奴だ?」

「ああ、負けたのはボンゴって大男だ。ボンゴ四天王って連中は倒したんだが……」

「ボンゴ!? くっ、そうか、奴らが犯人だったのか!」

「やっぱりな。あいつら、怪しいと思ってたんだ」

 

 こうして、ドラゴンボール泥棒の正体がボンゴ達である事が判明したのだった。

 

「ねえ、今、ボンゴって言った? もしかして、四天王以外にパスタって女やオレガノって男がいなかった?」

「ああ、オレガノって男はいた。女もいたが名前までは……プーアル、覚えてるか?」

「はい、名前は憶えていませんけどこんな顔でした! 変化!」

 

 ヤムチャはパスタを見た途端固まってしまい、ボンゴに吹っ飛ばされてしまったので彼女の名前を聞いておらず、特徴もあまり覚えていなかった。

 しかし、彼の頼りになる相棒はパスタの大まかな特徴を覚えており、それを元に彼女の姿に変化した。本物と比べると目がつぶら過ぎるが、パンジ達には十分通じた。

 

「その女よ! あなた達が大事にしていたドラゴンボールを盗んだのは、あたし達の国がおかしくなった元凶の二人組とその手下だわ!」

 実はパンジはブルマが戻ってくるまでの間に、大まかに自分が抱えている事情と故郷の窮状を悟空達に説明し、助けを求めていた。

 

 悟空やチチ達はパンジの話を聞いて憤り、ドラゴンボールを取り戻すついでに悪い奴らをやっつけようと主張し、年長の天津飯が宥めていた。

 泥棒はともかく、一国の軍相手では話が大きすぎる。それに、自分達はドラゴンボール泥棒を追わなくてはならない。退治に行くのは鶴仙人様や桃白白様、そして会長に相談してからだ。そう説得したのだ。

 

 しかし、この瞬間ドラゴンボール泥棒とパンジの故郷を荒らす悪党が同一人物である事が判明してしまった。

 

「どういう事?」

「ああ、実はさ――」

 ブルマがラズリから説明を受けている間、思わず天津飯は頭を抱えた。

 

「どうする、天?」

「やはり、鶴仙人様達に相談する必要があるな。チャオズ、鶴仙人様達の気はどうだ?」

「うん……今は落ち着いてる。多分大丈夫」

 チャオズやブルマは気の感知能力が高いため、ゲロ達がウィローと戦って起きる強大な気のぶつかり合いを感知していた。

 

 しかし、今はウィローを倒して数時間以上経っている。もうテレパシーで連絡しても構わないだろうと、チャオズは鶴仙人に連絡を取った。

『鶴仙人様、ボクです、チャオズで――』

『遅いっ! ドラゴンボールを盗まれたのなら、出来るだけ早く儂等に連絡せんか! 近くに天津飯もおるな!? リーダーを任せられていながらなんという様だ!』

『『も、申し訳ありません!!』』

 

 テレパシーで鶴仙人から厳しい叱責を受けて、思わずその場で頭を下げるチャオズと天津飯。その様子を見たパンジがきょとんとして驚いているが、二人には彼女の視線を気にする余裕はなかった。

 

『はぁ……詳細は会長から聞いておる。亀のところのヤムチャもやられたのだから、相手が上手だったのだろう。他に、何か儂に報告する事はあるか?』

『はい、実は――』

 その後、天津飯はボンゴ達とグルメス王国、そしてパンジの事を鶴仙人に伝えた。すると、鶴仙人は一旦「会長と相談する」とテレパシーを切った。

 

 だが、五分もかからずにゲロからテレパシーで大人たちの決定が伝えられた。

『天津飯君、儂だ、ドクターゲロだ。鶴仙人からの沙汰を伝えるが……連絡を怠った罰として、ドラゴンボールの奪還と、グルメス王国の悪党退治を命じるそうだ』

『っ!? 良いのですか!?』

 

『うむ。市街地への被害は出来るだけ抑えるように。後は、事後処理やら高度な政治的判断やらは儂が国王様と掛け合ってどうにかしよう』

『はいっ! 必ずや名誉挽回して見せます!』

 

 こうして悟空達留守番組のグルメス王国行きが決定したのだった。

 

「ああっ! ウーロンっ!」

「ぷ、プーアルっ!? へ、へへ、久しぶりだな」

 その間に、同じ南部変身幼稚園に通っていたプーアルの口からウーロンの正体が判明した。実は、失神していた彼もここへ連れて来られていたのだ。

 

 そして、悟空達が話している間に失神から目覚めていたが、狸寝入りを続けながら逃げ出すチャンスをうかがっていたのである。結局、そのチャンスが来ないうちにプーアルに気が付かれてしまい、思わず声を出したことで起きていたことがばれてしまったのだが。

 

「知り合いか、プーアル?」

「はいっ! こいつはボクと同じ南部変身幼稚園に通っていたウーロンって奴で、女の先生のパンツを盗んで追い出されたエッチな奴です!」

 

「お前っ! 昔の事をばらすなよ!」

「ふふん、ここで捕まっているって事は、どうせエッチな事をしようとして退治されたんだろ! やーい!」

「お前、亀仙人のじっちゃんみたいなやつだな」

「悟空さ、一緒にしたら武天老師様に失礼だべ」

 

 ウーロンがパンジを襲おうとして悟空に退治された事は、途中からやって来たブルマとヤムチャ、そしてプーアル以外には知られていたので、女子達から白い視線が向けられる。

 また、この歴史の亀仙人はスケベだがドラゴンボールを渡す見返りにパンツを見せる事や、フライパン山の灯を消す代わりに胸をつつく事を要求していないので、チチ達の心証としてはパンジを襲おうとしたウーロンよりも彼の方が格段に上だった。

 

「それでどうする? チャーシューにでもするかい?」

「警察に突き出す時間も惜しいし……無人島にでも置き去りにするのはどう?」

「チャーシューも置き去りも嫌だ~!」

 ラズリとブルマの目を見て、彼女達が半ば本気で言っている事に気が付いたウーロンは、半泣きになって悲鳴をあげた。自業自得だが、絶体絶命の危機が迫る。

 

 だが、そんな危機にこそ妙案を閃く者だ。

(こ、こいつら、可愛いけど全員性格がキツイ! 美人はあのパスタって女みたいなのしかいないのか!? ……そうだ!)

「待ってくれよ! 俺もそのボンゴとパスタって奴等の被害者なんだ! 俺はあいつらに家と財産を奪われて、それでつい自棄になって魔が差しただけなんだよ!」

 

 ウーロンが思いついたのは、自分もボンゴとパスタの被害者になる事だった。

 パンジや悟空、ヤムチャ達がボンゴとパスタ達に何をされたのか、それぞれの事情は狸寝入りしている間に聞いていた。そして、自分を罠に嵌めて財産を奪ったのと同一人物である事もほぼ間違いないと思っている。

 

 だから、考える時間が無くてもすらすらと真実が混ざった嘘をつく事が出来た。

 

「あんた、話を合わせようとして適当な事を言ってるんじゃないわよね?」

「本当だよっ! 俺はパスタって女に騙されて家まで連れて行ったら捕まったんだ! その後ボンゴって奴らも何処からか出てきて、金目の物を奪われたんだよ! それで俺は隙を見て逃げ延びて、あの森に隠れてたんだ」

 

 変身能力を悪用して村人を脅して金や食料を脅し取り、家に女の子を囲っていた事は伏せて説明するウーロン。

「そうだったんか。おめぇも大変だなぁ」

 他人をあまり疑わない悟空が、さっそく信じそうになるが、ラピスが異を唱えた。

 

「その話が本当だったとして、なんでお前の家に奴らは押し入ったんだ? お前はグルメス王国に住んでいたわけじゃないんだろう?」

 パンジの話が事実なら、パスタとボンゴは国を牛耳ってリッチストンで荒稼ぎをしている。そして、今は何らかの目的でドラゴンボールを集めている。そんな連中が、グルメス王国外に暮らすウーロンの家に強盗に入るのは、辻褄が合わないのだ。

 

 実際、ウーロンも何故パスタ達が自分を騙し討ちしたのか、その理由は知らない。村人に自分を退治して女の子を助けるよう頼まれたらしい事は彼らの会話を聞いて推測していたが、異国の悪党が何故村人の頼みを聞いて自分を退治する事にしたのかまでは聞いていなかった。

 

「そ、そんなの俺が知る訳ないだろ!」

 なので、そのまま正直に知らないと言った。すると、運よくブルマが都合のいい推測を思いついてくれた。

「もしかしたら、あんたの家にドラゴンボールがあったか、あると思い込んでいたのかもしれないわね」

 

「え、ドラゴンボールってお前達が話している物だよな? そんなの俺は知らないぜ」

「あんたは気づいていなくても、家の庭の隅とか、井戸の底とかに転がっていたかもしれないでしょ。それを手に入れるついでに他の金目のものも取ろうとしたのかもしれないわ」

 

 なるほどと、ブルマの推測に納得する一同。彼らのボンゴ達に対する心証はかなり悪くなっていたので、弁護する者はいなかった。

 唯一ヤムチャは、決闘そのものは正々堂々としていたし、多数に無勢だったのは、自分がそう言ったからだったし、そこまでするような連中だっただろうか? と思った。だがパンジの話を聞くとかなりの悪党のようだし、悟空達を騙してドラゴンボールを盗んでいるので、口に出して主張する事はなかった。

 

「そう、あなたもあいつらのせいで……さっきの事は許してあげてもいいけど、もう女の子を強引にお嫁さんにしようとしちゃだめよ」

「はいっ! 反省してます!」

「お金を盗まれたのは本当でも、スケベなのは元からだからきっと反省してないですよ」

「プーアルっ、反省してるって言ってるだろ!?」

 

 自分達と同じ相手のせいで苦境に立たされていると知ったパンジのウーロンに対する態度は、一気に軟化した。脅された際にあげた悲鳴のお陰で、悟空達と遭遇できたことも考えて許す事にしたらしい。

 しかし、以前からウーロンがどれほどスケベだったのかを知っているプーアルは容赦なく真実を言い当てる。

 

「誓って、もう二度と女の子を強引にお嫁さんにしようとはしない!」

 実際、ウーロンは「女の子を強引にお嫁さんにする」事自体には凝りていた。村から攫ってお嫁さんにした女の子達は我儘でメチャクチャ贅沢をするようになったし、パスタには絞め落とされて財産を奪われる、パンジにちょっかいを掛けようとしたら、悟空に如意棒で殴られ今の有様だ。

 

 もうやめようと思う程、上手くいっていない。もちろん、スケベな性分が治った訳ではなく、単にこの手口は止めようと思っただけだが。

 

「なあ、ヤムチャ。本気のおっちゃん達と戦ったんだろ? オラとやった時はあいつら全然本気じゃなかったから羨ましいぞ」

「そ、そうか?」

 一方、悟空や天津飯はヤムチャとボンゴ達との戦いについて話していた。

 

「だが、ボンゴという大男はなかなかやるようだな。気はお前の方が大きいはずだが、それでも勝ったという事は妙な技でも使ったのか?」

「いや、妙な技って程では……まあ、あの時はボンゴ四天王って連中と連戦した後だったからな。ちょっと油断があったかもれん。いやー、俺もまだまだ未熟だなー」

 

 敗因をそう誤魔化すヤムチャ。夜は更けていき、この日は一旦悟空達の家に戻り(ウーロンのキャビンカーは回収した)、グルメス王国に行くのは明日に行く事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、レッドリボン軍の基地でドクターフラッペとして活動しているゲロの分身である儂は、ブラック補佐を引き連れたレッド総帥に呼び止められた。

「ドクター、ちょっといいか? 見てほしいものがあるのだ」

「総帥自らとは、何か重大事だっぺか?」

 

「いや、そうではない。散歩のついでに、立ち寄っただけだ。ブラック」

「こちらです、ドクター」

 ブラック補佐に渡された書類を見ると、何が書いてあるのかはすぐ分かった。ドラゴンボールが発する、特殊な電波についてだ。

 

「この電波の発生源の場所を特定する、レーダーのようなものが作れないかと取引先から打診されたのだ。ドラゴンボールという石だそうだが」

 何がどうしてレッドリボン軍にいるフラッペに話が回ってきたのかは不明だが、ドラゴンボールで間違いないようだ。

 

「ドラゴンボールと言うと……あの伝説の?」

「ああ、おとぎ話だと思っていたが、どうやら石自体は実在するようだな。それに、石には伝説の元になってもおかしくない妙な性質があるらしい」

 儂が聞き返すと、レッド総帥は世間話をするようにそう続けた。どうやら、彼はドラゴンボールに興味を持ってはいないらしい。本当に取引先から打診されただけなのだろう。

 

 その取引先は……タイミングから考えると、グルメス王国軍か。

 

「……やってみなければ分からないっぺ。しかし、予算と時間を頂けるなら、一か月……いや、半月もあれば使い物になるレーダーを開発して見せるッペ」

 実際には、既に開発しているがそれを渡すわけにはいかないので、適当に期限を区切って伝える。

 

 すると、レッド総帥はなるほどと頷いた。

「やはりドクターでもそれぐらいかかるか。まあ、この件は忘れてくれ。珍しい石のようだが、不確かな伝説を追うよりも、ドクターには重要な仕事がいくらでもあるからな」

 そう言って儂の肩を叩くレッド総帥。だが、ふとブラック補佐の方を振り返って彼に指示を出した。

 

「ブラック、もっと儂の近くに立て。少し離れ過ぎだぞ」

「で、ですが、以前総帥が近くに立つなと……」

 以前のレッド総帥は、背の高いブラック補佐が自分の近くに立つ事を嫌っていた。

 

「ん? そうだったか? はっはっはっは! すまん、すまん!」

 しかし、ブラック補佐とそう変わらない身長になったレッド総帥は彼が近くに立っても気にならないようだ。

 悟空と同じくらいの背しかなかったレッド総帥の背が何故伸びているのかと言うと……以前彼から背を伸ばす方法はないかと打診されて、とりあえず行った投薬治療。それが儂の予想外に上手くいってしまったのだ。

 

 効果があっても、伸びるのは三十センチメートル未満だろうと予想していたのだが、儂が調合した薬を注射したレッド総帥の背は日を追う毎にグングンと、それもバランスよく伸びていった。

 今では身長百八十センチで脚の長い、すらりとした体形の渋い伊達男になってしまった。

 

「では、その命令は撤回だ! 補佐である貴様には適切な距離にいてもらわなければ困るからな! 頼りにしているぞ、ブラック!」

 しかも、背が伸びた事でコンプレックスから解放された反動か、レッド総帥は人間的な器まで大きくなっている。以前と比べるとまるで別人のようだ。そして、原作の彼と比べると別人としか思えない。

 

「は、はいっ。ありがとうございます!」

 そう答えるブラックも、嬉しそうにしつつも儂に対して胡乱気な視線を向けている。「こいつ、総帥に何をしたんだ?」と怪しんでいるのだろう。

 

 レッド総帥の背が伸びていく過程を毎日近くで見ていたブラック補佐でもこの様子なので、任務で基地から離れていた兵士の中には、レッド総帥が儂の改造手術を受けてサイボーグになったとか、儂が本物の総帥をどこかに監禁してロボットと入れ替えているとか、そんな噂を囁やく者もいるほどだ。

 

 気持ちはよく分かるが……儂は本当に普通の薬を……今の地球に存在する普通の薬品を、普通の科学技術で普通に調合して処方しただけなのだが。

 GCコーポレーションの影響で、この世界の地球の「普通」の医科学は、原作よりだいぶ進んでいるから、もしかしたらそのせいかもしれない。

 

 もっとも、相変わらずレッド総帥に治療の事は口止めされているので、ブラック補佐達には説明できないのだが。

 

(まあ、ともかく……レッド総帥がドラゴンボールの伝説は本当だと知った後の行動しだいか。身長を伸ばすためには集めんだろうが、世界征服のために集めようとする可能性はある。

 グルメス王国の方は……儂の本体と国王に丸投げじゃな。まあ、明日には儂も本体に一度戻るのだが)

 

 グルメス王国をどう復興したものだろうかと考えながら、儂は自室へと戻ったのだった。そして、グルメス王国の運命が変わる朝となった。




〇ドラゴンレーダー

 原作ブルマの発明品の一つ。同じ機能のドラゴンレーダーはピラフ大王やドクターゲロが制作しているが、精度と携帯性はブルマが発明したレーダーが圧倒的に優れている。
 原作ゲロが発明してレッドリボン軍が使っていたレーダーは大まかな場所は分かっても、探し出すのに大人数で何日もかかるのに対して、ブルマのドラゴンボールは細かい場所まで分かる。
 また、原作では半日で製作できる程になっていた。

 しかし、この作品でブルマが初めて組み立てたドラゴンレーダーは、早く完成させる事と携帯性を優先したために、精度は今一つ。



〇キャビンカー

 ウーロンのとっておきのホイポイカプセル。運転席にキッチン付きのリビング、シャワーだけではなく浴槽も付いた浴室、そして二階に寝室がある。後、トイレなどもあると思われる。
 入浴にも使う大量の水や、食料を貯蔵するスペースもあり、更に銃まで置かれていた。

 「とっておき」だったのは、ウーロンにとってもしもの時に使う移動アジトだったからだと思われる。原作ではヤムチャに破壊され、原作アニメではその後さらにシュウとマイが仕掛けた爆弾によって爆破されてしまった。
 劇場版『最強への道』でも、レッドリボン軍の攻撃によって破壊されている。



〇悟空の嗅覚

 犬並みに鼻が利くと、自称していた。本当に犬並みかはさておき、自然の中で生活していたので嗅覚が鋭いのは本当だと思われる。



〇レッド総帥

 フラッペ(ゲロ)が処方した薬をきっかけに、人体の神秘によって急成長して、ブラック補佐と同じくらいの身長と、長い脚、すらりとした体形を手に入れた。

 長年の悩みは、自分の身長の低さ。
 ちょっと前までの悩みは、着る服のサイズが週単位で変わる事と、地獄の成長痛。
 そして最近の悩みは、ついつい基地内を歩き回って部下達に今の自分の姿を見てもらいたくて仕方がなくなり、デスクワークが進まない事。

 なお、コンプレックスが解消された事で余裕の無さや短気さが改善され、大らかな性格になっている。
 しかし、野望は世界征服。



 是非様、匿名鬼謀様、変わり者様、中島ゆうき様、gsころりん様、みえる様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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