ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
二つのドラゴンボールをグルメス王国へ持ち帰ったボンゴ達は、グルメス王から労いの言葉を受けた。さらに、悟空達からドラゴンボールを盗むために消費した飛行機一機とロボット一台を補充しても余りある潤沢な予算を約束された。
「今日のところはなんとかなったが、そろそろ潮時だ」
「そうだね」
しかし、ボンゴとパスタはグルメス王国に見切りを付けようとしていた。
表面上、彼らは上手くいっているように思える。グルメス王国内に脅威となる勢力は存在せず、国民の反感は日々高まっているが、暴動が起こったとしても軍はそれ以上の力で押さえつけることできる。
七つのドラゴンボールも、既に三つを集めて残りは四つ。そして、肝心なリッチストンの採掘も順調。
だが、ボンゴとパスタは今日のドラゴンボール集めで、潮時だと確信していた。
「孫悟飯の孫一人ならともかく……GCコーポレーションの会長令嬢と令息、社長令嬢に、牛魔王の娘、桃白白の弟弟子……あの場では俺達が犯人じゃないと誤魔化せたが、怪しまれるのは時間の問題だ」
「それに、あんたが殴り飛ばしたヤムチャっていう男も亀仙人の弟子だったからね。話が孫悟飯や牛魔王にまで回れば、あたし達がドラゴンボールを探している事がばれる。
もっと情報を集めて、作戦を練ってからボールを集めるべきだったね」
ボンゴとパスタの失敗は、拙速を尊び過ぎた事だ。
それは彼らがドラゴンボールを探す唯一の手段が、占い婆の占いであるため仕方ない部分もある。彼女の占いは絶対に当たるが、占い終わった後もドラゴンボールが同じ場所にあるとは限らない。
ウーロンが恐喝していた村の老婆が持っていたドラゴンボールで例えるなら……占い婆が村の老婆が持っている事を占った次の日には、老婆がウーロンにドラゴンボールを金の代わりに差し出すかもしれない。さらに次の週には、ウーロンが老婆から巻き上げたドラゴンボールを質屋に売ってしまうかもしれない。そして、質屋に立ち寄った何者かがドラゴンボールを買って何処かへ行ってしまうかもしれない。
そうなってしまえばグルメス王国軍としての権力が使えない土地で、しかも少人数で動くボンゴ達が独力でドラゴンボールを追う事は困難になる。後日、新ためて占い婆に高い金を払って占ってもらうしかない。
そうした事が起きないようにボンゴ達が、占いの後に出来るだけ早くドラゴンボールを手に入れたいと考えるのは仕方のない事だろう。
……潤沢な予算を貰っているのだから、それを有効活用すればいくらでも情報が手に入るし、もっと大掛かりな捜索も可能になるのだが、そんな考えはパスタの頭にはなかった。懐に入れる額は、出来るだけ多い方が良いからだ。
真に反省する点は、欲の皮が突っ張り過ぎた事かもしれない。
「次、占い婆に占ってもらいに行く時に、そのまま脱走するぞ。グルメス王から貰った予算の残りと、飛行機に積めるだけリッチストンを積んでな」
「オレガノや四天王はどうするんだい?」
「オレガノとは占い婆に払うはずの金を渡すと取引して、こちら側に抱き込んである。四天王は用済みだ、理由を付けて飛行機に乗せずに置いていく」
そうグルメス王国を見限り、金とリッチストンを持ち逃げする計画を話す二人だったが、彼らは同じ失敗を犯していた。
欲をかかずに、今すぐ持てるだけの金を持って脱走するべきだったのである。
翌日の早朝、悟空達の動きは速かった。
「レーダーに謎の飛行物体!」
「高速で近づいてきます! 戦闘機より速い!」
グルメス王国軍のレーダーが、城に向かって飛んでくる何かを捉えた。
それは鳥か? 飛行機か?
「見えた! あれがグルメス王国か」
いや、自ら投擲した丸太に乗った天津飯だ!
「なんて事だ。パンジに聞いていた通り、そこら中が掘り返されている。だが、おかげで着陸場所には困らん!」
天津飯はそれまで乗って来た丸太を蹴ってグルメス王国に無数にある採掘跡に墜落させ、自分はその前に離脱して着地。
墜落したのは丸太なので爆発炎上こそしないものの、ミサイル攻撃でも受けたかのような轟音がグルメス王国に響き、土煙が巻き起こる。
そして、それが晴れた時には天津飯以外の全員がグルメス王国に降り立っていた。
「凄い、本当に一瞬で帰ってきちゃった」
「瞬間移動は便利でしょ」
天津飯の気を目印に、チャオズとブルマの瞬間移動で一気に全員を運んだのだ。苦労して家出してきたパンジは、驚いて目を丸くしている。
「凄いし便利だけど、なんで俺まで!?」
一人騒いでいるのは、連れて来られてしまったウーロンだ。
「なんだ? お前はボンゴ達にやり返したくないのか?」
「昨日あんなに悔しそうにしていたじゃないか」
「俺は平和主義者なの! それに、お前らみたいに強くないんだぞ!」
「何言ってるのよ、平和主義者は夜道で女の子を襲ったりしないわ」
「罪滅ぼしに少しは手伝うんだね。お前みたいのでも何かの役に立つかもしれないし」
「トホホ……死んだら化けて出てやるからな!」
一瞬、またロケットに化けて逃げ出そうかとも考えたウーロンだったが、悟空達はボンゴ達と違ってすぐに空を飛ぶ手段があるし、彼も体験したように、気を目印に瞬間移動する事が出来る。ウーロンが逃げ出そうが隠れようが、すぐに捕まえる事が出来るのだ。
結局、観念して悟空達について行くしかないと腹をくくるウーロンだった。
一方、グルメス王国軍は慌ただしく動き出していた。
「なんだ、あいつら!?」
「取り押さえろ!」
ただ、組織的にとはいかない。まず動いたのは採掘作業を始めるために外に出ていた兵士達で、軍司令部の命令を受ける前に、独自の判断で悟空達を取り押さえようとする。
「ブルマ、ドラゴンボールは!?」
「ここからだと……やっぱり城の方ね! ボンゴかパスタか、王様にでも聞けば分かるでしょ!」
「分かったっ! 伸びろ、如意棒!」
しかし悟空が長く伸ばした如意棒を横薙ぎに一閃すると、殺到しようとしていたグルメス王国軍の兵士達は木の葉のように宙を舞い、自分達が掘り返した地面に悲鳴をあげながら転がったのだった。
「やろうっ!」
「やりやがったな!」
「俺達グルメス王国軍に逆らったらどうなるか、思い知らせてやる!」
「お、おい、あの三つ目の男って、天下一武道会に出ていた奴じゃ――」
「ガキでも容赦はしねぇ! ぶっ殺してやる!」
十人以上が一瞬で倒されても、極一部の兵士以外は恐れるどころか激高して悟空達に殴りかかった。
「ひえええっ!? お助けぇ!」
「悲鳴をあげるんじゃないよ、情けないね」
そんな兵士達に悲鳴をあげるのはウーロンぐらいで、悟空達は円陣を組み、内側にウーロンやパンジを入れて守りながら向かってくる兵士達を次々に倒していった。
「こいつら、強くねぇけど、そこまで弱いって訳でもねぇ。天下一武道会の予選みてぇだ」
「何年か前から、ボンゴが外国からトレーナーを雇って鍛えていたの! 気を付けて!」
「パンジちゃん達を押さえつけるためだな。とんでもねぇ奴等だべ」
悟空が感じた通り、グルメス王国軍の兵士は一人一人が厳しい訓練に耐え抜いた結果強くなっていた。ボンゴが連れていたボンゴ四天王も、強くなった兵士達の上から四人までを集めたチームだ。
そのため、彼らは戦闘力にして6以上の者が多く、中には7に達している者もいる。ただの雑魚ではない。
「それじゃあ、あんまり手加減しなくてよくて楽ね!」
だが、戦闘力80に達しているブルマ達にとっては殺したり重傷を負わせたりしないよう、手加減するのに細心の注意を払わなくて済む、程よいザコに過ぎないのだった。
「こ、こいつら、止まらないぞ!」
「俺達の手には負えんっ、援軍を! 誰か援軍を呼んできてくれ!」
「俺達も一旦撤退だ!」
天津飯とヤムチャ以外は子供ばかりの一団に一方的に倒されて、頭に血が上っていた兵士達もようやく実力の差を理解したらしい。
我先にと城に向かって逃げ出すが、悟空達も城に向かって走っているので逃げ切る事が出来ない。
「おいっ、ようやく軍隊らしい奴らが出てきたぞ」
しかし、城から空を飛行可能なホバーバイク(?)や、戦車、そして武装した歩兵達が無数に現れた。
「兵器か……やれるな、皆!?」
「「「おうっ!」」」
「やれるわけないだろ!?」
「だ、大丈夫かな?」
しかし、グルメス王国軍の兵器を前にしても、悟空達は怯まない。天津飯の確認に、「ようやく少しは歯ごたえのある相手のお出ましだ」と言わんばかりの顔で答える。
悲鳴をあげるウーロンと、流石に不安そうなパンジを除いて。
一方、グルメス王国軍の内部はメチャクチャに混乱していた。錯乱状態にあると言ってもいい。
何故なら、天津飯達の姿を映像で確認した軍司令部は、彼らが何者なのか気が付いたからだ。
彼らは全員、元GCGという触れ込みで雇われた教官の訓練を受けている。だからこそ、GCGの正規隊員がどれほど強いか察している。
それなのに、向かってくるのはGCGの指導者である鶴仙人の弟子や、そのライバルである亀仙人の孫弟子、そしてGCコーポレーションの会長や社長の令息と令嬢だ。自分達では戦車を出そうが戦闘機を出そうが、勝てない可能性が高い。
何故彼らがやって来たのかは不明だが、出来れば穏便に話し合いで解決したい。
しかし、リッチストンの採掘作業を始めるために外にいた兵士達が殴りかかってしまった。
「な、なんてこった! ボンゴ様やパスタ様、オレガノ様は何処にいる!?」
「ま、まだこちらに向かっているところです!」
「そんな!? じゃあ、誰が指揮を執るんだ!?」
そして、グルメス王国軍の兵士達個人の戦闘力は高くても、統率や指揮系統がかなりお粗末な軍隊だった。
グルメス王国は元々軍事国家だった訳でも、大国だった訳でもない。自然の豊かさだけが特徴の小国だ。そんな国をボンゴとパスタが牛耳り、軍を掌握したのだがその規模は小さかった。
その軍の規模を、ボンゴとパスタはリッチストンの採掘と国民を押さえつけ監視するために拡大させた。
もちろん、グルメス王国民から新兵を徴兵したのではない。
余所者の自分達に従順で、国土の自然をめちゃくちゃに破壊しながらリッチストンを喜んで採掘し、逆らう国民を躊躇なく痛めつける事が出来る。そんな兵士を大勢集めるために、ボンゴとパスタはグルメス王国民ではない、流れの傭兵やチンピラ、ゴロツキ、ならず者を集めた。
そして、ボンゴとパスタの目的は世界征服でもなければ、地球国と戦争をする事でもない。ボンゴの「占い婆の戦士達に勝ちたい」という、個人的な理由で兵士個人の身体能力や格闘技の腕を訓練で上げはしたが、高度な軍事訓練は行っていなかった。
そのため、グルメス王国軍の兵士達は個人では強くても、集団で動くのは苦手だ。軍事パレードでもやろうものなら、整然と行進する事も出来ないだろう。
しかも、グルメス王国軍は軍なのに階級が大雑把で組織がいい加減なままだった。トップが上級兵のボンゴとパスタの二人で、その下がオレガノ。はっきりしているのはそこまでで、後は十数人程の部下をもつ班長や隊長が無数にいるだけだ。レッドリボン軍のように将軍や大佐等、指揮を執る人間がいないのだ。
形式上軍の最高責任者はグルメス王なのだろうが、自室に籠って出てこない王が自分に忠誠を誓っていない軍の指揮を執れるはずもない。
そして、軍をこうした原因のボンゴとパスタはグルメス王国のために戦う気が無い。
パンジ達民にならず者のように思われていたグルメス王国軍は、武装して鍛えた個人が集まっただけの、本当のならず者集団でしかなかったのである。
「く、クソ! こうなったら全軍出撃だ! 全軍出撃しかない!」
「全軍出撃せよ! 全軍出撃せよ! 敵を倒すんだ!」
そんなならず者集団の構成員しかいない司令部は、自棄になったのか、ボンゴ達なら悟空達を倒せると信じているのか、全軍出撃の号令を出してしまった。
実際には彼らにそんな号令を出す権限は無いのだが、司令部から「全軍出撃」と命令されたグルメス王国軍の兵士達は、大した疑問も持たず兵器に乗り込み、または武器弾薬を装備して次々に出撃していく。
「クソっ、あいつらめ! もうここを嗅ぎつけたのか!!」
そして、この国を牛耳っていたはずのボンゴとパスタの手からも事態は離れていた。
「あんたは時間を稼いで、あたしはその間にリッチストンを! 脱出の準備はオレガノに任せてあるから、逃げ遅れるんじゃないよ!」
「おう!」
しかし、二人にとってグルメス王国は故郷でもなければ、決死の覚悟で守るべき対象でもない。無理だと考えれば防衛ではなく逃亡へと意識を切り替える。
ボンゴは得物である特殊合金製の棒を持ち、左右の足にそれぞれ装着する事で空を飛行することできるフライングソーサーを使って時間稼ぎのため出撃し、パスタはリッチストンを確保するために動き出した。
そして、この事態を眺める者達がいた。
「思ったより早く動き出したわね。昨日出遅れた分、ここで稼いでおきましょう」
歴史改変者の一人、トワだ。彼女はミラともう一人、目深にフードを被り全身をマントで包んだ謎の男を引き連れている。
だが、グルメス王国で大事件が起きている事に気が付いたのはトワだけではない。
「フン、この歴史でも貴様らがコソコソ動き回っているとは、随分手広くやっているようだな」
時の界王神クロノアによって転送されたタイムパトロール……この歴史の地球にまだ来ていないはずのベジータは、トワ達の姿を認めて不敵な笑みを浮かべた。
「他の歴史の私の事は知らないわ。それに、私はまだ何もしていない……安心して他の歴史を守りに行ったらどうかしら?」
「貴様らが仕組んだことではないとでも言うつもりか?」
「だからそう言っているでしょう。言っておくけど、昨日の事とも私達は無関係よ」
面倒そうに言うトワに胡乱気な視線を向けるベジータだが、彼女は真実を話していた。グルメス王国が正史より早く動いたのも、その結果悟空達に攻め込まれている事にも、彼女は何の関与もしていない。
そして、昨日のゲロ達とウィローの戦いにも出遅れたため何の関与もしていなかった。メチカブラがちょっかいをかけてきた事や、それに対してドミグラが動いた事にも気が付いていない。
分かっているのは、昨日は自分達以外の歴史改変者に出遅れた。それだけである。
「この俺が、そんな言い訳を信じるとでも思っているのか?」
しかし、トワが言っている事が真実でもベジータがそれを信じるかは別の問題だった。
「まあ、信じないでしょうね。この歴史が正史から離れる事で発生するキリを現在進行形で集めているのは事実だし……これから何かするつもりだもの」
そして、トワもベジータを説得できるとは思っていなかった。
「丁度この男がどれくらい使えるか、試してみたかったところなの。行きなさい!」
トワの言葉に応えて、ミラではなくマントとフードの男が前に出ると、自身の体を覆うそれを脱ぎ捨てた。
『………!』
現れたのは、奇妙な仮面をつけた黒髪の男だ。肩がむき出しになっている、ベジータから見ると旧型の戦闘服を着てベルトのように尻尾を腰に巻いている。
「サイヤ人か。いいだろう、いつの時代の誰かは知らんが、相手をしてやる」
仮面のサイヤ人を見たベジータは、その髪型から自身のライバルを思い浮かべた。しかし、サイヤ人の下級戦士には髪形も含めて外見が似ている者が多い。トワが適当に過去から攫ってきた奴だろうと見当をつけ、それ以上彼の正体について考えるのを止めた。
知っている奴だろうとなかろうと、ぶちのめして仮面を叩き割れば分かる事だ。
「はあぁぁ!」
『………!』
スーパーサイヤ人となったベジータの金色のオーラと、仮面のサイヤ人の暗黒のオーラがぶつかり合う。
トワがこの歴史の存在に察知されないように張った結界の中で起きた戦いでなければ、グルメス王国軍と悟空達は即座に戦闘を止めただろう。
そう確信するほどの戦いを眺めながら、トワはさらにキリを稼ぐために強化する対象の目星を付ける。
(万が一何人か死んでも、ナメック星のドラゴンボールを使って生き返すだろうから、そこまで神経質に調整しなくてもいいわね。なら……これぐらいか)
「トワ、俺も行けば奴を倒せるが、どうする?」
そんなミラの発言がトワの思考を遮るが、彼女はベジータを倒す事より手駒に加えた仮面のサイヤ人を試すことを優先した。
「その必要はないわ、ミラ。無理にベジータを倒そうとすれば、時の界王神も他のタイムパトローラーを送り込んでくるか、本人が乗り込んでくるはず。今回は様子を見るだけになるかもしれないけど、我慢して」
「……分かった」
ミラはトワの言葉に頷きながらも地上の戦いには関心を向けず、ベジータと仮面のサイヤ人の激しい戦いに視線を集中させ、イメージしていた。自分が彼らの立場だったら、どう戦うかと。
一方、巻き込まれたら一瞬でグルメス王国全土が灰燼に帰するような次元の異なる戦いが繰り広げられていると知る由もない悟空達とグルメス王国軍の戦いは、激化の一途を辿っていた。
ただ、優勢なのは相変わらず悟空達だった。
「おめえらっ! 怪我する前にどっか行け!」
悟空は戦車に向かって如意棒を振り回し、次々に砲身をへし折り、下から掬い上げるようにしてひっくり返していく。また、自分や仲間に向かって放たれた銃弾や砲弾も如意棒を回転させて弾き落とす。
戦車すら瞬く間に無力化していく姿は、超小型の竜巻のようだ。
「女だからって舐めるでねぇだぞ!」
チチは兜の機能を遠慮なく活用してビームを放ち、カッターを投擲して悟空とは別の方向から迫る戦車や装甲車を撃ち、真っ二つに切断する。そして、ビームとカッターが間に合わなければ気功波を躊躇なく打ち込む。
その様子は戦乙女……というより、人間砲台である。
「ひいいいっ!」
「に、逃げろ~っ!」
キャタピラを破壊された戦車や、真っ二つになった装甲車から兵士達が這い出て、戦意を喪失させて逃げ出した。
しかし、中には戦意を失わずに銃を持って悟空達に向かってくる者もいる。
「奴らの中にも弱いのはいる! そいつらを人質にとれば俺達の勝ちだ!」
パンジ、そしてウーロンに目を付けた男の考えは、兵士としては間違っていないかもしれない。戦争ではきれいごとは言っていられないのも事実だ。
「おっと、そんな卑怯な真似はさせないぜ!」
しかし、グルメス王国軍が相手をしているのは軍人ではなく、彼らがされているのは戦争ではなく悪党退治だ。
ヤムチャは得意のスピードで戦場を縦横無尽に走り回り、悟空やチチの攻撃を掻い潜って接近しようとする兵士を次々に倒していく。
「プーアルっ! 俺から離れるなよ!」
「はい、ヤムチャ様!」
背中にはプーアルが張り付いており、万が一グルメス王国軍にパスタ以外の女性兵士がいた場合の備えも万全である。
しかし敵の数は膨大で、円陣を維持する悟空達の四方八方……そして空からも襲い掛かってくる。
「どどん波! どどん波! これは返す!」
だが、悟空達も空に対する備えはしっかりしている。チャオズがどどん波を連射してホバーバイクや戦闘機を落とし、自分達に向かってきたミサイルの軌道を念動力で捻じ曲げて、撃ってきた相手に跳ね返している。
「まったく! 脱出ぐらい自力でどうにかしなさいよね!」
「ひ、ひぃっ! お助け~っ!」
「だから、助けてあげてるじゃない!」
ブルマも同様に敵機を打ち落としながら、脱出に失敗したグルメス王国軍兵を瞬間移動や念動力を駆使して救出し、地面に放り出している。
ブルマだけではなく、実は悟空やチチも戦車や装甲車が爆発する前に乗っている兵士が逃げられるよう、加減しているのだ。
グルメス王国軍の兵士の生死を考慮しないなら、今の悟空達がかめはめ波を何度か撃てば戦車もエアバイクも、消し飛ばすことが可能だ。それをしないのは非殺に拘っているからなのだ。
もっとも、そのせいで塵も残さず消し飛ばされるはずだった戦車や装甲車の残骸が戦場に転がり、断末魔の悲鳴も残さず死んでいたはずの兵士達が元気に泣き叫びながら逃げ回るので、目で見た印象では凄惨に感じるだろうけれど。
そんな中、悟空達に機体を破壊される前に逃げ出す兵士達がいた。
「た、桃白白だ!」
「逃げろっ、逃げるんだ! 俺達が敵う相手じゃない!」
なんと、戦場に桃白白が姿を現したのだ。やや、鼻の形が豚っぽいが。
「この桃白白様が来たからには、貴様らの悪事はもうお終いだ! は、早く逃げないと、おっ、私が、貴様らをギッタギタにしてしまうぞ!」
そう叫びながら青龍刀を振り上げる桃白白の姿を見て、彼の強さが映画の中だけではない事を知っている兵士達は、戦車や装甲車を乗り捨てて我先に逃げ出していく。誰も桃白白に近づこうとはしない。
そして、自分の前にいる兵士が逃げ去った後、桃白白は慌てた様子で円陣の中に逃げ帰る。
「ぷっはーっ! なんて事させるんだっ! もし死んだらどうするんだよ!?」
そして、煙に包まれたかと思うとウーロンが姿を現した。なんと、彼が桃白白に変化していたのだ。
「大丈夫だ。天津飯から離れすぎなければ、もし撃たれても銃弾を叩き落としてもらえる」
「もし死んでも、パパならお前を珍しがって研究してくれるだろうから、改造して生き返してもらえるよ。多分」
「お、俺はサイボーグもアンドロイドもごめんだからな!」
辛辣なラピスとラズリに、ウーロンは悲鳴のような声をあげて抗議した。
「どうせならプーアルみたいに、あたしの背中から離れるなよ、ぐらい言ってくれてもいいんじゃないか!?」
「仕方ないな、必要ないと思うが、俺が守ってやるよ」
「え~、お前よりお前の姉ちゃんの方がいい」
「おまえ……筋金入りだな。亀仙人の爺さんみたいだ」
少し絆されたラピスだったが、ウーロンのスケベさが窮地に在っても健在な事に思わず笑いを浮かべた。
しかしウーロンに指名されたラズリの方は、ヤムチャがプーアルにしているように彼を背負って守るつもりはさらさらないようだ。
「案外余裕があるじゃないか。そろそろ一分経ったし、もう一度行ってきな」
「ええっ!? またかよ!?
なあ、パンジ、頼むよ! もう罪滅ぼしは十分だろ!? この通り!」
「えっ!?」
ラズリを説得するのは無理と見たウーロンに拝まれたパンジは、ウーロンに同情しラピス同様に絆され「もういいよ」と言いかけたが……。
「もう許してあげてもい――」
「許してほしかったら、もっと役に立て。でないと、桃白白に言いつけてやる。だってさ」
しかし、ラズリがパンジの言葉に声を被せて、真逆の意見にしてしまった。
「ひえええっ! 本物に言いつけるのは堪忍して~っ! 変化!」
悲鳴をあげて再度桃白白の姿に変化したウーロンは、懲りずに近づいてくるグルメス王国軍を脅しに戻ったのだった。
「あ、あの いいの?」
「ああいうのは、あれぐらいで良いんだよ。なに、本当に死にそうになったら助けてやるさ」
「うん、でもちょっとかわいそうかも」
そしてウーロンと、彼に同情するパンジを守るのは天津飯達だ。
「この俺の十二の目から逃れられると思うなよ!」
「銃弾が俺に通じると思ったか!?」
「くらえ、どどん波!」
「ウッ、桃白白様っ、離れ過ぎるな!」
640という悟空達の中で圧倒的に高い戦闘力をもつ天津飯は、四身の拳で四人になってパンジやウーロンを守りながらグルメス王国軍の相手をしていた。
四分の一になっても悟空達の中で最も強い彼が、留守番組のリーダーに徹しているからこそ、この円陣は維持されているのだ。
だが、円陣を維持する必要があるのも、あと少しの間かもしれない。
「て、撤退だぁ!」
「付き合いきれるか! 俺はおさらばさせてもらうぜ!」
戦車も戦闘機も通じない悟空達に対して、兵士達の士気は崩壊して命令に逆らって逃げ出し始めたのだ。
司令部からは「逃げるな、戦え!」と命令が発せられているだろうが、逃げ出す兵士達は聞く耳を持たない。自国の領土を掘り起こして荒らし、国民を監視し弾圧する事が目的の軍隊の限界だろう。
「情けねぇ奴らだぜ!」
「ここは俺達、ボンゴ四天王に任せな!」
だが、そこにボンゴ四天王のニョッキ達が戦場に現れた事で空気が変わった。
「チッ、軍も相手にならないとは化け物どもめ」
そして、フライングソーサーに乗ったボンゴが現れると、逃げ出そうとしていた兵士達も立ち止まって歓声をあげ、再び戦線に戻ろうとする。
「おっ。ようやく出てきたな!」
「あの女はいないな……よし、またぶっ飛ばしてやるぜ!」
悟空とヤムチャが、やっと歯ごたえのある相手が出てきたと改めて構えを取る。
士気崩壊から立ち直ったグルメス王国軍だが、このままいけばニョッキ達ボンゴ四天王はすぐに敗れ、ボンゴも天津飯や悟空に撃ち落とされて終わり、再び敗走する事になっただろう。
だが、そうはならなかった。
『うおおおおおおっ!?』
『ぬああああ! 力が!』
『『力が漲って来たぁぁ!』』
正史ではその他の雑魚の間に埋もれていた、そしてこの歴史でもあっさりやられるはずだったボンゴ四天王をトワがキリで強化したのだ。
「な、なんだ、こいつら!?」
「ヤムチャっ、狼狽えるな。こいつらは……さっきまでとは違う!」
初めてキリで強化された存在を肉眼で見たヤムチャが、その異様な気に動揺する。そして、天津飯の警告が本当だと証明するように、ニョッキ達は動いた。
『死ねぇ!』
撃てなかったはずの気弾をヤムチャや悟空に向かって乱射し始めたのだ。戦車砲よりも激しい閃光と爆音によって、グルメス王国での戦いは混迷を深めていくのだった。
〇グルメス王国軍
原作劇場版でもボンゴやパスタは指揮をすることなく戦いに出ており、二人以外の指揮官等が登場していないので、軍としての指揮系統はかなりいい加減だったと思われる。
もしかしたら描写されなかっただけで将軍や大佐などが存在したかもしれないが、ボンゴとパスタに牛耳られているので、二人より上の立場だったとは考えにくい。
そして亀仙人の修行を受ける前の悟空に負けているので、軍事力もそんなに高くなかったのではないだろうか。
当時の悟空なら、ホワイト将軍が使ったようなパワーガン(大口径の拳銃?)が命中すれば最低でも気絶させる事は出来たはず。大口径でも個人で運用できる兵器なので、戦車や戦闘機よりはずっと安価なはずだが……結局グルメス王国軍は使っていない。
これはやはり、軍を従えるボンゴとパスタが本職の軍人ではないため大勢の軍隊を指揮する事が出来ず、また軍の目的が「戦争」ではなく、国民が反抗しないよう管理統制する事とリッチストンの採掘だったからだったと思われます。
〇タイムパトローラー
ベジータ(超ルート)。
なお、タイムパトローラーへ参加した経緯は……。
・まずトランクスがタイムマシンで歴史を増やした罪を償うため、時の界王神クロノアに協力を申し出る(タイムパトロール結成。
・歴史改変者と最初の戦いの後、トランクスを鍛えるためにクロノアはトランクスが思い浮かべる「強い人」を召喚する。結果、悟空(超ルート)が召喚されタイムパトロールに参加。
・トランクスと悟空が修行している間に、クロノアがベジータ(超ルート)を召喚。トランクスが「強い人」として自分ではなく悟空を思い浮かべたと彼女から聞き、プライドを刺激された事等の理由で、タイムパトロールに参加。
というもの。多分、プライドが刺激された以外にも、歴史改変者が自分の過去の戦いの結果を好き勝手改変する事や、キリによって強化する手口、あと家族を守るため、等の理由があったと思われる。
〇仮面のサイヤ人
トワが歴史を遡り、洗脳して連れてきた謎のサイヤ人。その正体は、いったい何バーダックなのか……。
おでん様、櫛八木 乃渡莉様、sakurabuti様、Mr.ランターン様、 物数寄のほね様、KELP様、にぼし蔵様、Paradisaea様、太陽のガリ茶様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。