ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
『『『『うおおおおおっ!』』』』
ニョッキ隊ボンゴ四天王は、キリによって強化された影響で増大した破壊衝動のまま気弾を乱射し始めた。
「俺達の背後で身を伏せていてくれっ!」
「貴様らの気弾は、俺には通用しない!」
「はああああっ!」
それに対して、三人の天津飯が立ち向かい、気弾を弾き飛ばし、フォトンシールドで防ぎ、気合でかき消す。
「キャァァァ!?」
「お助けぇ~っ!?」
しかし、砲弾やミサイルとは比べ物にならない閃光と衝撃にパンジとウーロンは悲鳴をあげて身を伏せる。
「どういうことだ? 何故あいつらが光線を……? いや、俺の知った事じゃない!」
フライングソーサーで空を飛ぶボンゴは、ニョッキ達の身に異変が起きている事に気が付くが、かぶりを振って意識を切り替える。
元々置いて行く予定の手下だ。何がどうしてああなったかは知らないが、強くなったのなら好都合。時間稼ぎに利用するだけだ。
そしてボンゴが時間稼ぎのために排除しなければならないターゲットとは――。
「地面に叩き落としてやる!」
「わーっ!?」
「ちょっとっ! 敵の大将が女子供を狙うなんて卑怯じゃないの!」
悟空でも天津飯でも、一度戦ったヤムチャでもなく、チャオズとブルマだった。
「悪いが、自力で空を飛べる貴様らがいると、邪魔なんだ! 恨むなら、妙な超能力が使える自分を恨むんだな!」
超能力で空を飛び、天下一武道会で瞬間移動を使っていたチャオズとブルマこそ、ボンゴ達の逃亡を妨げる最大の障害だ。
自分で投げた柱や丸太に乗る事で悟空達も飛行機より早く飛べるが、方向転換が出来ないので、やはりチャオズ達の方がボンゴにとって厄介なのである。
そんなボンゴの思惑と、ボンゴ四天王の異常に気が付いていないグルメス王国軍の兵士達は、逃亡を止めて歓声をあげる。
「押し返したぞ! これなら勝てる!」
しかし、悟空達もやられっぱなしではない。
「ブルマさん達に何するだ!」
ボンゴを打ち落とそうと、チチが地上からレーザーを放つ。
「っ!? ガキがっ!」
フライングソーサーを装着する事で飛行を可能にしたボンゴだったが、舞空術や超能力程自在には飛べない。そのため、真下という死角が生まれていたのだ。
「伸びろ、如意棒!」
「うおおおっ!?」
しかも、悟空まで如意棒を伸ばして上空のボンゴを攻撃しだした。点の攻撃であるレーザーと違い、線の攻撃である如意棒は、避けるのに大きく動かなければならず、フライングソーサーの操縦がより難しくなる。
「チチちゃん、孫君っ! こいつの足を狙って! 乗ってる機械を壊せばこいつは飛べないから!」
「分かっただ!」
「任せろっ!」
「こ、小賢しい真似を!」
しかも、フライングソーサーを集中的に狙われ、ボンゴはブルマとチャオズを狙うどころではなくなってしまった。
「ヤムチャ、行くぞ!」
「おうっ!!」
地上では、ボンゴ四天王を倒すため天津飯の残り一人とヤムチャが走り出していた。
『くそっ! 当たらねぇっ!』
『当たっているのに当たってねぇ! どういうことだ!?』
キリで強化された事で気の制御が可能になったニョッキ達だったが、彼らは気弾を乱射するばかりで、天津飯とヤムチャの残像拳に引っかかり、足を止めさせることもできない。
「また吹っ飛ばしてやるぜ!」
『この前のようにいくと思うなよ!』
そして、間合いを詰めたヤムチャがマカロニと接近戦を始める。
『野郎っ!』
他の三人がヤムチャに向かって気弾を撃とうと注意を向けるが、その瞬間リングイネが天津飯に殴り飛ばされる。
「貴様らの相手は俺だ!」
そしてボンゴ四天王は気弾を乱射する余裕がなくなり、その隙にラズリ達も走り出した。
「おいっ! なんであいつらの方に行くんだよ!?」
「奴らを早く倒さないと、また戦車だの装甲車だのが来るからだろう。覚悟を決めるんだな」
戦況が互角になったかに見えたが、その瞬間大きく傾いた。
「当たったべ!」
チチのレーザーが、ボンゴのフライングソーサーの片方を捉えたのだ。
「ぬおおおっ!?」
幸い足は無事だったが、片方が機能を停止したために反射的にバランスを取ろうとして狼狽え動きが鈍るボンゴ。彼程の身体能力の持ち主なら、いっそ地面に飛び降りた方が良かっただろうが、瞬間的にそこまで思い切る事は出来なかった。
「でやーっ!」
そこに悟空の如意棒が襲い掛かる。咄嗟に金属棒で受け止めようとしたボンゴだったが、足場が不安定になっていたため受け止め切れず、如意棒が脇腹にめり込む。
「「どどん波!」」
さらに、チャオズとブルマが容赦なくどどん波を撃ちこんだ。体が右脇腹を中心にくの字に曲がったボンゴは、どどん波の爆発に吹っ飛ばされて成す術もなく地面に落下する……かに見えた。
『調子に乗るなよ……クソガキ共ぉ!』
だが煙の向こうから現れたのは、フライングソーサーを失ったにもかかわらず空を飛んでいるボンゴの姿だった。そう、トワがやられかけた彼をキリで強化したのだ。
『ぶち殺してやる!』
黒いオーラを纏ったボンゴは、増大した狂暴性と破壊衝動に赴くまま、逃亡するのに必要な時間を稼ぐという本来の目的を忘れてブルマ達に金属棒で殴りかかる。
「キャァァ!?」
倒したと思い込んで油断したのか、避ける間もなくブルマが金属棒の横なぎの一撃を受けて吹っ飛ばされる。
「ブルマっ! この野郎ーっ!」
「なんてタフな奴だべ!」
地上から悟空が伸ばした如意棒で、チチが兜から放つビームやカッター投げで攻撃するが、フライングソーサーに飛行能力を依存しなくなったボンゴはそれらを容易く回避してしまう。
そして、ブルマの次はチャオズを倒そうと追いかけ始める。
「うわっ、うわわわっ!」
チャオズも逃げ回りながらどどん波を撃つなどして牽制するが、ボンゴを引きはがせない。瞬間移動で天津飯のところに退避しようかとも思ったが、それではボンゴが怒りの矛先を悟空とチチに向けるかもしれない。
キリによって強化されたボンゴの不気味な気は、自分はもちろん悟空やチチよりも大きい事にチャオズは気が付いていた。
「くっ、伸びろ、如意棒!」
チャオズがどうするか迷っている間に、焦れた悟空が地面に如意棒を突いて伸ばし、棒高跳びの要領で空に飛び上がった。
「かめはめ波ーっ!」
そして、かめはめ波を放った。しかし、ボンゴも悟空に向かって構えを取り、掌を突き出す。
『死ね、クソガキーっ!』
そして罵倒と共に黒い気功波を放った。青と黒、異なる色の気功波が激しくぶつかり合う。
「くっ、うっ……うわああぁ~っ!?」
軍配は、ボンゴに上がった。悟空は黒い気功波にグルメス城の方に向かって吹き飛ばされて行ってしまう。
「うおおおおおっ!」
だが、それに満足しなかったボンゴは、自分で吹き飛ばした悟空に止めを刺すために自身も城に向かって飛んで行こうとする。
「よくも悟空さを!」
しかし、それを止めるためにチチが地上からレーザーと気弾を放つ。そのどちらも、今のボンゴにとっては直撃しても大したダメージは受けない程度の攻撃だ。しかし、攻撃性が倍増しているボンゴには彼女の攻撃を無視する事は出来なかった。
『この――』
『このオッサン! よくもやってくれたわね!』
だが、その時地面に落ちたはずのブルマが起き上がって巨大化し、チチに向かって気弾を放とうとしたボンゴを巨大な拳で殴りつけた。
注意を向けていなかったブルマの奇襲をまともに受けて、地面に墜落はしなかったものの大きく体勢を崩すボンゴ。
『チャオズは瞬間移動で孫君に仙豆を届けて! あたしはチチちゃんと一緒にあいつの足止めをするから!』
「分かった!」
その隙にブルマは指示を出し、チャオズは弱まった悟空の気を頼りに瞬間移動を使った。
「ブルマさん、いつの間に巨大化できるようになったんだべか!?」
『ほんのごく最近よ。本当は使うつもりなかったんだけどね。あたしにばっかり攻撃が集中しそうだし、上手く手加減出来るか分かんないし。
でも、今のあいつには手加減なんて必要ないわよね』
巨大化して力が倍増したはずの自分の拳が直撃しても倒れないボンゴに、ブルマは内心冷や汗を浮かべていた。
そんな危機が続く対ボンゴ戦だが、グルメス王国軍ばかりが優勢ではなかった。
『ぐおおおっ、何故だ! 俺は強くなったのに、何故お前の方が速い!?』
キリで強化されたマカロニは、戦闘力にして135。120のヤムチャを上回っている。しかし、マカロニの攻撃はヤムチャにギリギリで回避され、逆に彼の攻撃をマカロニは回避する事が出来ないでいる。
「俺とお前とでは、技の完成度が違う!」
その原因は、ヤムチャとマカロニの技量……体術の完成度の高さが異なるからだった。さらに言えば、マカロニに訓練を施した元GCGを名乗る教官と、ヤムチャの師である亀仙人の指導力の差でもある。
『チ、チクショオオオオ!』
このままでは負ける。そう焦ったマカロニが、空へ逃げる。気弾と同じく、キリで強化された事で飛行も可能になった故の選択だ。
だが、ヤムチャは慌てずに背中の相棒に声をかけた。
「頼んだぞ、プーアル!」
「はい、ヤムチャ様! 変化!」
プーアルは背中に装着する飛行用ブースターに変化すると、ヤムチャごとマカロニを追って発進した。
『な、なんだと!?』
「狼牙風風拳!」
一気に間合いを詰めたヤムチャは、姿勢制御をプーアルに任せきりにして狼牙風風拳をマカロニに叩き込む。
『ぎええええっ!』
悲鳴をあげて地面に落下したマカロニからは、不気味な気と黒いオーラは消えていた。
「どどん波!」
『ぐわぁぁぁ!? 馬鹿な、ボンゴ四天王最強のこの俺がーっ!?』
次に倒れたのは、四人の天津飯の内一人の相手をしていたリングイネだ。
「だから、まず貴様を狙った」
キリで強化されたリングイネだったが、それでも四分の一の天津飯の方が強い。そのため、彼は他の仲間のために最も強い彼を狙って早々に倒したのだ。
「俺達も良いところを見せないとな」
「別に見せなくてもいいだろ!? あの強い三つ目ハゲに任せておけよ!」
「それ以上情けない事を言うと放り出すよ!」
「いっそ放り出してぇ~!」
『このガキ共! ちょこまかと!』
残り二人となったボンゴ四天王のニョッキは、ウーロンを背負ったラズリと、ラピスの二人に翻弄されていた。
双子のどちらか一人だけならキリで強化されたニョッキの敵ではない。しかし、二人は足を止めず残像拳を多用して彼をかく乱し続けている。
『このガキ共が!』
苛立ったニョッキは、双子目掛けて気弾を放ち始めた。ただ、相変わらず狙いは荒く、気を探って慎重に打つという事をしないため双子には容易く避けられてしまう。
「ヒエエエッ!?」
「ニョッキ様っ、俺達は味方です!」
逆に、味方であるはずのグルメス王国軍の兵士達が逃げ惑うはめになっている。
「行くぞっ!」
そのニョッキの乱射気弾を縫うように、ラピスが気弾を放った。
『はっ、甘いぜ!』
それを容易く避けるニョッキだったが、気弾は彼の後ろにいるラズリが受け止める。
「返すよ!」
そして、気弾に自身の気を込めてラピスに打ち返した。二人はニョッキを間に挟んだまま気弾でキャッチボールを始めた。
最初は何のつもりかと戸惑い苛立ったニョッキだったが、二人の間を行き来する度に気弾が大きくなるのを見て彼は二人の魂胆を察した。
二人は、排球波を二人で繰り返し行い、ニョッキを倒せる威力の気弾を作ろうとしているのだ。
『小賢しい真似を!』
「今頃気が付いたのかい? もう遅いよ!」
十分巨大になった気弾をラズリがニョッキに向かって投げつけようとする。そうはさせるかと、ニョッキは急いだ彼女に向かって気弾を放った。
「っ!」
慌てて放ったニョッキの気弾はラズリに直撃はしなかったが、彼女の近くで爆発し土煙を巻き上げて彼女の姿を覆い隠す。
そして、巨大な気弾が煙の中から現れ、上空に向かって飛んで行ってしまった。
やった。そう思ったニョッキだったが、土煙の向こうから巨大気弾を構えたラズリの姿が見えた時自分が引っかけられた事を悟った。
「くらいなっ、どどん波!」
巨大気弾を放ち、更にどどん波を後ろから当てて加速させる。
『ひ、ひいいいっ!?』
「どどん波!」
巨大気弾から反射的に逃げ出そうとしたニョッキだったが、死角に回り込んだラピスのどどん波を背中から受けて動きが止まる。
巨大気弾の直撃を受けたニョッキは閃光と大爆発に飲み込まれ、それによってできたクレーターの真ん中で倒れた。キリによって強化されていたおかげで生きてはいるが、しばらく起きることは無いだろう。
「し、死ぬかと思った~」
そこに、上空に飛んで行ったはずの巨大気弾がしゃべりながら戻って来たかと思うと、地面の近くでウーロンの姿に戻った。そう、ニョッキが騙された巨大気弾は、ウーロンが化けていたのだ。実際には気弾そのものではなく、気弾と同じような形をした空を飛ぶ謎の物体に化けたのだが。
「おい、もう十分役に立ったろ!? もう行っていいよな!?」
「何言ってるんだ。さっきまであたしの事をベタベタ触りまくった事をパパや桃白白に言いつけてもいいのかい?」
「ええーっ!? だってあれは作戦で、それにお前が――」
「諦めるんだな。いっそ、最後まで俺達に付き合って勝ち馬に乗った方が良いんじゃないか?」
「勝ち馬って、あの悟空って奴は吹っ飛ばされちゃったぞ!? 本当に勝てるのかよ!?」
「だと思うぜ。ほら」
ラズリが指さした方向では、ボンゴ四天王最後の一人ペンネが、チチとブルマの妨害に合って悟空を追えないでいるボンゴの援護をするために駆けつけたところだった。
『邪魔!』
しかし、巨大化したブルマに蹴り上げられ、拳で殴り飛ばされてしまった。
『ぐわああああっ!? ボンゴ様~っ!?』
悲鳴をあげて飛んで行くペンネを、ボンゴは無視した。それどころか、ブルマが彼に攻撃を行った僅かな間を利用してここから離脱し、悟空が吹っ飛んで行ったグルメス城に向かって飛んで行ってしまう。
『追いかけるわよっ!』
「もちろんだ!」
それを巨大化したままのブルマとチチは走って追いかけるが、その前に立ちはだかる者はいなかった。
「四天王が全滅した! ボンゴ様も逃げちまった!」
「今度こそ終わりだっ! 逃げろっ!」
「撤退! 撤退ぃ!」
ボンゴ四天王の全滅とボンゴの敵前逃亡を目にしたグルメス軍の士気が今度こそ崩壊し、逃げ出し始めたのだ。
「な?」
「なって、どうすんだよ!? まだ一番強そうなのが残ってるじゃないか!」
「逆に言えば、敵で残っているのはあの大男ぐらいだろ? だったら、天津飯やヤムチャが寄ってたかって袋叩きにすれば勝てると思わないか?」
「そ、それもそうか、な?」
ラピスに促されて戦況を確認したウーロンは、このまま逃げ出さずに残った方が美味しい目を見られるのではないかと、彼の口車に乗って考えを変えた。
「ラピス、お前こいつの事を気に入ったんじゃないだろうな?」
「ああ、ちょっとな。こいつ、結構面白いからな」
「……まあ、確かに役に立つのは認めるよ」
こうしてウーロンは逃げるきっかけを失ったのだった。
「よしっ、俺達も城に行くぞ! ボンゴを倒し、ドラゴンボールを取り戻し、この国の王の胸倉を掴み上げてパンジの直談判を受けさせる!」
「お願いします!」
ここにパンジがついて来ているのは、引き籠ってしまったグルメス王に直談判をするためだった。
悟空達に戦いを任せて、全てが終わって安全が確保された後でグルメス王の前に行くのが合理的なのは、パンジも分かっている。しかし、外国人の悟空達に自分の国の事を任せっきりにする事はパンジには出来なかったのだ。
そして、悟空や天津飯はそうした彼女の思いや覚悟を良しとする性格の持ち主だった。
パンジを背負った天津飯を中心に、彼らはブルマ達と同様にグルメス城へ向かって走り出した。
その頃、仮面のサイヤ人とベジータの戦いは、ベジータが優勢に進んでいた。
『……!!』
「悪くない動きだ。だが、俺と貴様では実力の差があり過ぎる!」
ベジータが言うように、仮面のサイヤ人は豊富な戦闘経験の持ち主である事を連想させる動きで彼と攻防を繰り広げた。
しかし、スーパーサイヤ人2にまで至っているベジータにテクニックだけでは対応しきれず、ダメージが蓄積して動きに無駄が増え、緩慢になっていった。
「その不気味な仮面を叩き壊してやる! くらえっ!」
ベジータは仮面のサイヤ人の頭部に拳を叩きつけ、仰け反った彼の頭を両手で掴む。そして、仮面を被った顔面に膝蹴りを叩きこんだ。
『――!?』
仮面はトワの魔術によって作り出された物だが、ベジータの拳と膝蹴りを続けて受けた事で限界を超え、ヒビが入って四分の一、左目とその周囲が明らかになる。
(やはりカカロットに似ている。もしかしてこいつ、奴の父親のバーダックか?)
素顔の四分の一が露わになった仮面のサイヤ人が、手で頭を抑えて後退りする。ベジータは彼の正体に思いをはせたために、それを追撃するのが遅れた。
「ミラ、あいつと交代して」
「分かった!」
その隙を突いて、トワの命令を受けたミラがベジータに挑みがかった。
「チッ、この歴史の貴様も他の歴史の貴様と同じであの女の言いなりか!」
「他の歴史の俺の事は知らん! トワは、俺が守る!」
「フン、やってみろ、出来るものならな!!」
幾度かミラと拳と蹴りの応酬を行ったベジータは、ウォーミングアップは終わったと言わんばかりに、スーパーサイヤ人ブルーへ変身する。
金色から青へ髪とオーラの色を変えたベジータと、ミラが激しくぶつかり合う。
「まだ魔力による強化が足りなかったようね。いいわ、お前は下がって休んでいなさい」
トワは仮面のサイヤ人に下がるよう命じると、残りの主だった人物……パスタやグルメス王を強化する事に意識を向きなおした。
『う…ウオォォォォォ!!』
だが、仮面のサイヤ人は彼女の命令を認識していなかった。仮面が一部割れた事で弱まった洗脳と、頭に受けた傷の痛み、何より刺激された闘争本能と戦闘意欲が、複数の要因が作用して仮面のサイヤ人は獣染みた叫び声を轟かせ、気を爆発的に高めた。
「そんなっ!?」
トワも彼の仮面が損傷している事には気が付いていたが、それでも自分が施した洗脳に自信があった彼女は問題ないと思っていた。それが誤りだったと気が付いた時には、仮面のサイヤ人の髪は黄金に輝いていた。
『おおおおおおっ!』
だが、トワにとって幸いなことに、仮面のサイヤ人はスーパーサイヤ人になりはしたが洗脳から脱した訳ではなかった。金と黒が混じったオーラを放ちながら、ミラと戦うベジータに向かって突撃していく。
「ほう、スーパーサイヤ人になったか。面白い!」
「貴様の出番は終わりだ! 引っ込んでいろ!」
『があああああ!』
だが、仮面のサイヤ人はミラと協力してベジータと戦うどころか、ミラにも攻撃を繰り出している。そして、そのまま三つ巴の戦いを始める。
「……戦力になると思って連れてきたけれど、想定よりも扱い辛いわね」
トワはその三人の戦いを、苦い顔で見ていた。あの様子では、仮面のサイヤ人は彼女が撤退を指示してもベジータと戦い続けるだろう。
トワにとって仮面のサイヤ人の価値は、ミラに比べればはるかに低い。しかし、たった一回使っただけで捨て石にするのは避けたい。潮時を見極めて空間移動を使い、強制的に回収するしかないだろう。
そのタイミングを見極めるために集中しなければならず、キリによる強化幅がややいい加減になってしまった。
(でも私にとっては小さな問題よ。さっきも思ったけれど、この歴史ではナメック星のドラゴンボールがもう使えるのだし。
自分の息子やそのお友達が死んだとしても、恨むなら私に素直に従わない自分を恨むのね)
時間はやや巻き戻り……ボンゴの気功波に力負けして吹き飛ばされた悟空は、そのままグルメス城の屋根に激突した。
轟音が響き、城にいた兵士達がパニックに陥るなどしたが、幸い悟空に止めを刺すために屋根に上る者はいなかった。
「い、いててて……ま、まいったな。力が出ねぇ」
「うむ、中々の負けっぷりじゃ」
屋根に半ばめり込むようにして倒れたまま起き上がれないでいる悟空に、そう話しかける者が居た。
「じっちゃん!? なんでここに居るんだ!?」
それは悟空の義理の祖父、孫悟飯だった。彼は悟空を屋根から抱き起しながら、彼の質問に答えた。
「ゲロに連れて来てもらっての。気の動きと……何よりスパイカメラで悟空達の活躍は知っていたからな。
それにしても、よく頑張ったな」
「でもじっちゃん、オラ負けちまった」
「ホッホッホ、負けは武道家につきものじゃ。負けた事のない武道家なぞ、この世に存在せんぞ。悟空も、天下一武道会でナム君に負けたじゃろう?」
「それはそうだけど……」
「まあ、確かに勝負を急ぎ過ぎたな。あのボンゴという男が急に強くなって焦ったのだろうが、天津飯やヤムチャが奴の手下を倒すまで時間を稼いで、協力して戦うべきじゃったな」
その点は反省するのだぞと、穏やかに叱る悟飯。そして、孫に問いかけた。
「それで悟空、どうする? ここからは儂等が代わるか?」
「嫌だ。オラ、このままオラ達で戦いたい!」
即座に断った悟空だが、祖父が自分達よりも圧倒的に強い事は分かっている。それに、ゲロの瞬間移動で来たと言っている以上、ゲロ本人もどこかにいるはずだ。彼等なら突然強くなったボンゴも、軽いパンチ一発で倒してしまえるだろう。
しかし、悟空は自分達の手で解決したかった。
そんな頑固で意地っ張りな孫に、孫悟飯は満足げに頷いた。
「それでこそ悟空じゃ。儂等は見守っておるから、思いっきりやってくると良い。ほれ、友達も来たようじゃ」
そう悟飯が視線を上げると、瞬間移動でチャオズが現れた。
「悟空、仙豆! って悟空のお爺さん!?」
「儂の事は気にせず、悟空を頼む。あまり時間が無いのじゃろう?」
「そうだった!」
孫悟飯がいる事に驚いたチャオズだったが、ボンゴが悟空に止めを刺すためにここへやってこようとしている事を思い出し、袋から取り出した仙豆を悟空に渡す。
「サンキュ、チャオズ。……良しっ!」
受け取った仙豆を噛み砕き、飲み込むと体中の痛みが消え、全身に力が漲る。
「頑張るんじゃぞ」
すっかり回復した悟空とチャオズを残して、悟飯が音もなく消える。孫たちの邪魔をしないよう、距離を取ったのだろう。
『どこへ行った!? まずはお前から倒す!』
それと同時にボンゴの怒鳴り声が響く。顔を向けると、城に向かって飛んで来たボンゴと、彼を追う巨大化したブルマの姿が見えた。
ボンゴがブルマ達より悟空に止めを刺すことを優先するのは、本能的に悟空の潜在能力の大きさに気が付き、今のうちに倒さなければ自分の身が危ないと理解しているのかもしれない。
「悟空、どうする? 天達を待つ?」
「いや、チャオズ、オラは逃げねぇ。あのボンゴレ獅子舞って連中はもういないみたいだし、オラ達が戦っている間に皆来てくれるさ」
「悟空、ボンゴ四天王」
悟空がチャオズと共にボンゴを迎え撃とうとしていた時、ヤムチャ達は既に城にたどり着いていた。兵士達は彼らを止める事は出来ない。
「王様のいる城の奥はこっちか! はーっ!」
「ヤムチャ、柱は壊すなよ!」
何故なら、ヤムチャと天津飯は壁を壊してグルメス王の元へ直進していたからだ。
「やっぱり化け物だー!」
「こんな連中に関わったら、命がいくつあっても足りやしねぇ!」
「同感だよ、チクショウ!」
逃げる兵士達の捨て台詞に、ウーロンがそう怒鳴り返すが天津飯とヤムチャは止まらない。何故なら、グルメス城の構造に詳しい者が一人もいないため、普通に廊下を進んだら道に迷うのは確実だからだ。
「ごめんなさい、私がお城に詳しければ道案内が出来たのに」
「気にする事ないよ、パンジ。悪党の親玉のクセに、手下より弱いグルメス王が悪いのさ」
「まったくだ。気が大きければ、それで居場所が分かったってのに」
グルメス王国民でも城に奉公に出てきたわけでもないパンジは、城の内部構造について全く知らなかったので、天津飯達を誘導する事が出来なかった。
そして、気で居場所を探ろうにもグルメス王の気は軍の兵士達が強くなったこの歴史では特別大きいとは言えないため、会った事がない天津飯達ではどの気か特定する事は出来なかった。
「いや、王様が軍人より弱いのは普通だろ?」
ウーロンはそうツッコミを入れるが、人造人間を除けば最強の会長であるゲロの養子であるラピスとラズリは取り合わない。
そして幾度かの壁を破った時、
「部屋の様子が変わってきたな。そろそろか? ……お前は!?」
舞い上がった埃の向こうには、陳列されたリッチストンが収められた箱、そしてナップザックを背負った軍服姿の美女の姿があった。
「もうここまで来るとはね」
そう顔を顰めるパスタの姿を見た瞬間、ヤムチャは石のように硬直した。
「や、ヤムチャ様ーっ!」
「ひええっ!? あの女だ!」
プーアルとウーロンの悲鳴が木霊する。彼らと硬直してしまったヤムチャを庇うように、天津飯が前に出て身構えた。
「貴様か。俺達の先回りをした、という訳ではなさそうだな」
しかし、彼には余裕があった。既にグルメス王国軍が戦意を喪失しているため、パンジの護衛をラズリとラピスに任せて、四身の拳は既に解いている。
四分の一だった戦闘力は元に戻り、数値にして約640。パスタが正史の十倍以上強くなっていたとしても、天津飯の敵ではない。
「まあね。あたし達はもうこの国から引き上げるんだ。見逃してもらえない? なんだったら、ここにあるリッチストンの半分を――」
そこまでの力の差がある事は分かっていないが、自分だけでは敵わない事は理解しているパスタは、天津飯達を買収して逃げようとするが……。
「ふざけないで!」
憤ったパンジの叫びに言葉を遮られる。
「そういう訳だ。大人しく降伏するなら、痛い目に合わずにすむぞ」
そもそも、天津飯は買収に応じる性格ではない。
「チッ、欲張り過ぎたか」
パスタはそう舌打ちをすると、降伏を選ぼうとした。金銭欲が異常に強い彼女だが、好き好んで痛い目にあいたい訳じゃない。ここは降伏して、逃げ出すチャンスを伺うべきだという計算ぐらいはできる。
何故かいるウーロンに、癪だがまた色仕掛けでもすれば利用できるだろう。
そう思いながら両手を上げようとしたところで……黒いオーラが彼女を包んだ。
『なんだっ!? 力が漲る……今のあたしなら、お前らを全員倒して、リッチストンを全部持ち逃げできる!』
そう叫ぶパスタが放つ異様な気の大きさに、天津飯は背中に冷や汗が浮かべて呟いた。
「ラズリ、ラピス、パンジを連れて下がっていてくれ。こいつは、強敵だ」
パスタの気は、天津飯に匹敵していた。
〇敵戦闘力(強化前→強化後)
・ニョッキダーク:25→125 原作鶴仙人を超えた強さを手に入れた。戦った相手的に勝ち目があった人その1。まず双子の片方を倒す事に集中していれば、撃てるようになった気弾に頼らず接近戦を挑んでいればまず勝てた。
・ペンネダーク:30→130 原作桃白白並みに強化されたペンネ。狼狽えてボンゴに助けを求めたら、巨大ブルマの相手を押し付けられて蹴り上げられて殴り飛ばされてしまった。ボンゴではなく他の四天王と共闘していれば勝ち目があった人その2だった。
・マカロニダーク:35→135 気の大きさは上がったが、純粋な武術の腕が上がった訳ではなかったため、ヤムチャに勝てなかった。
・リングイネダーク:40→140 原作悟空(桃白白を倒した頃)並みに強くなったリングイネ。ただ、天津飯の分身(戦闘力160)には勝てなかった。
なお、四天王と名乗っているが、彼らが鍛えられた目的はボンゴが占い婆の戦士達との試合に勝つためにチームメンバーが必要だったからなので……実は一対一以外の形式で戦うのに慣れておらず、仲間同士の連携が拙い。
また、彼らがもし双子やヤムチャに勝っても、続けて天津飯の他の分身の相手をする事になり、それに勝っても最終的には様子を見ている孫悟飯達に瞬殺される事になる。
・ボンゴダーク:100→200→150 強化されたが、悟空の如意棒とブルマとチャオズのどどん波にやられた後だったので、実は傷ついており、徐々に弱まりつつある。
なお、ここまで大雑把に100ずつキリで強化されており、状況によっては双子(戦闘力50)があっさり殺される可能性もあった。
・パスタダーク:80→580 トワがキリの調整をミスって、ボンゴ達の五倍強化してしまった。
〇悟空の瀕死パワーアップ
悟空:100→125 原作鶴仙人やジャッキー・チュンと同じくらい、もしくはそれよりもちょっと強くなった。また、ヤムチャもやや追い越している。
〇超ルートのベジータがバーダックを知っている。
原作アニメのナメック星編で、フリーザと戦う悟空の心(?)に死んだベジータが語り掛けるシーンで、バーダックの名前を悟空の父親として出していました。
アニメオリジナルの演出で、悟空に語り掛けたのが本当にベジータなのか定かではなく、ダメージを受けた悟空が聞いた幻聴でないとは言い切れませんし、この作品の作者は答えを知りません。
しかし、この作品では超ルートのベジータはバーダックの名前と顔、そして彼が悟空の父親である事を知っていたとします。
是非様、コダマ様、JtR0000様、ユウれい様、にぼし蔵様、みそかつ様、たかたかたかたか様、Mr.ランターン様、Paradisaea様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。