ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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 ……50話になっても原作開始まで行かない作品があるそうです。

 「原作死亡キャラ生存」と「原作キャラ強化」、「若干のオリキャラ」タグを今更ですが追加しました。



50話 天才科学者の神龍に願わない復興

 グルメス王が亀仙人の魔封波によって封印され、彼が吐き出したドラゴンボールを悟空達が拾い集め終わった頃、複数の大型輸送機がグルメス城上空に現れた。そして機内からGCGの隊員達と王立国防軍の兵士達が降下し、逃げまどうグルメス王国軍の兵士達を取り押さえにかかる。

 

 そして、戦闘が終わって何があったのか集まってきたパンジの両親を含めたグルメス王国の国民達の前に、事情説明を行うためにご足労願った地球国国王とこの儂、天才科学者のドクターゲロが現れる。

 

「っ!? あ、あれは国王様だ! 隣にいるのは、ドクターゲロ!?」

「な、なんでこんなところに!?」

「巨大化したグルメス王様を退治してくれたのか? でも、なんで今更?」

 

 そう儂等を遠巻きにして騒めくパンジの父親達に、マイクを持った地球国国王が語り掛けた。

『グルメス王国の皆さん、私は現地球国国王、そしてこちらは特別宇宙外交官のゲロ。……まずは、皆さんの苦境に長年気が付かず放置した事をお詫びさせてください』

 そう言う地球国国王と共に儂は頭を下げ、謝罪した。

 

 突然の謝罪に驚いたパンジの父達は、困惑のあまり事情を聴く体勢に入った。

 それから地球国国王様の口から、今回の事件の顛末の虚偽を交えた説明が行われた。

 

 パンジという勇気ある少女の行動によって、グルメス王国の状況を把握した事。しかし、王立国防軍やGCGを動かすとグルメス王国軍と大規模な戦争になってしまい、グルメス王国の人々に被害が出てしまう。

 そこで、天津飯達若い武道家達に解決を託した事。しかし、悪意ある宇宙人の手によってグルメス王が巨大化してしまったので、武天老師こと亀仙人の秘術でもって封印した。

 

「う、宇宙人!?」

「ナメック星人以外にも宇宙人がいたのか!?」

 驚くグルメス王国民に、今度は儂が説明する。

 

「広大な宇宙には様々な宇宙人が存在し、その中にはナメック星人のように我々地球人の良き隣人もいれば、地球の平和を脅かす恐ろしい力と科学力を持つ宇宙人も存在するのです」

 この宇宙人とは、歴史改変者であるトワ達の事だ。彼女は暗黒魔界人なので、嘘ではない。

 

「……確かに、宇宙人の仕業ならあのグルメス王の変わりようも納得がいく」

「いや、あの巨大化は超能力のせいじゃないのか? 天下一武道会でGCコーポレーションのタイツが……それにさっきも女の子が巨大化していたぞ」

 

「グルメス王様が超能力者? そんな話は聞いたことがない。それに、巨大化は宇宙人の修行を受けたから出来るようになったって聞いたぞ」

「そうだな。グルメス王様が宇宙人から修行を受けるなんてことはないだろうし……ナメック星人にも見えないもんな」

 

 グルメス王が城を内側から崩壊させる程巨大化し、口から気功波を放って暴れまわった姿を目撃したグルメス王国の人々は、儂の説明に説得力を覚えたようだ。

 

「グルメス王国の皆さん、この国を復興するためにどうか私達を信じていただけないでしょうか?」

 そして、地球国国王の演説にグルメス王国の国民達は応えてグルメス王国は復興への道を、地球国とGCG主導で歩むことになったのだった。

 

 とはいえ、この日は軍から解放された喜びでお祭り騒ぎになり、忙しく働いたのは王立国防軍とGCGの隊員達だけだったが。

 今は戦意を失ったグルメス王国軍の兵士達だが、放置すれば後々グルメス王国周辺で山賊や強盗団を結成して悪事を働き、治安を悪化させ復興の障害になりかねない。悟空達にとっては、やや丈夫なだけのザコだが、一般人にとっては十分すぎる脅威だからな。

 

 ……それに、貴重な労働力だ。

 

 なお、ボンゴ四天王や彼らに訓練を施した元GCGを騙る教官等は全員捕まえたが、首謀者であるボンゴとパスタ、そしてオレガノは捕まらなかった。気を探って位置は特定出来たのだが……何故か彼らはレッドリボン軍の大型輸送機に乗っている。

 そのため、儂の立場上捕まえる事は断念した。

 

 ……まあ、捕まえたところで、ボンゴ程強い相手は普通の刑務所では捕まえていられないため、拘束し続けるのが凄く難しいのだが。戦闘力が100もあれば、鋼鉄の手錠も飴細工、鉄筋コンクリートの分厚い壁もベニヤ板同然だからな。

 

「さあさあ、どんどん食べてくれ! 遠慮はいらないぜ!」

「食材はいくらでもあるからね!」

 宴会で腕を振るっているのは、グルメス王の命によって世界中から集められた一流の料理人達だった。グルメス王国軍兵が敗走しだした時と同じくして城から逃げ出した彼らは、グルメス王が魔封波で封印されると戻ってきて、宴会で出す料理を作ると言い出した。

 

 高給につられてグルメス王に雇われた彼等だが、グルメス王が彼らの料理を食べたのは雇われてから長くても数日だけ。その後は「前より美味い料理を作れ」と命令され、料理を作ったらロボットがそれを持っていく。そして、しばらく経ったら、「前より美味い料理を作れ」と再び命じられる日々。

 かなり鬱憤が溜まっていたようだ。

 

「うめぇっ! メチャクチャうめぇな、この肉まん!」

「本当においしいよ、これ! 普通の肉まんとは違うね?」

「それはピロシキだ。肉まんに似た雪国の料理で、具は俺のオリジナルさ!」

「良い食いっぷりだねぇ! 俺のスープも飲んでくれ!」

 

 そんな料理人達によって悟空達の食いっぷりは「気持ちいい」を通り越して輝いて見えたようで、モテモテになっていた。

 

 なお、食材はグルメス王が集めて貯蔵されていた高級食材を使用している。城は瓦礫の山となったが、貯蔵庫が地下にあったため無事だったのだ。

 瓦礫も、儂やタイツが超能力で持ち上げて退かしたので、すぐに調理にかかる事が出来た。

 

 その宴会の途中で、師匠から弟子達へ労いの言葉と若干の説教が送られた。

「天津飯、チャオズ、お前達は独力でグルメス王を倒す事が出来なかった」

「「申し訳ありません、鶴仙人様!」」

 

「謝らんでいい。天下一武道会のような試合ならともかく、今回のような戦いでは負けた時自分だけが悔しい思いをするだけでは済まん。師である儂や兄弟子、仲間に助けを求めるのは当然の判断じゃ。

 ただ、他力本願になってはならん。お前達はこれからの人生で、その境界線を何度も問われる事じゃろう。見失うでないぞ」

 

「はい、肝に銘じます、鶴仙人様!」

「銘じます!」

「よし。では、連絡が遅れた事の罰はこれでしまいじゃ。宴を楽しむと良い」

「「はいっ!」」

 

 鶴仙人と天津飯、そしてチャオズは奇麗に纏まったようだ。しかし、ヤムチャを教える亀仙人はやや悩んでいるようだった。

 

「ヤムチャよ、武道を嗜む者にとって敗北は常にあるもの。一度や二度の敗北でめげず、むしろ己の糧にしなければならん。それが武道の厳しさじゃ。しかし……お主、プーアルから聞いたが昨日の敗北を全く糧に出来ておらんな?」

 

「は、はい。面目次第もありません。どうも、その……女の子を前にすると上がってしまって……」

「ふ~む……本やテレビは平気だったはずじゃがのう」

「いや、武天老師様、本やテレビで見るのと、本物が目の前にいるのとでは違いますよ」

 

 亀仙人にとって、ヤムチャのあがり症は彼の複数ある短所の一つであり、克服させるための課題をどうするか、この約一年考えてきた。

 とはいえ、そこまで深刻に思い悩んできたわけではない。ヤムチャの武道家としての欠点は、集中力が続かない事や、長所である速さに対して持久力が続かない事、そして調子に乗って油断する性格等、あがり症以外にも複数ある。

 

 そして、ヤムチャには短所を補うには十分な長所がある。厳しい修行をやり遂げるストイックさに、呑み込みの良さ。高い行動力に器用さ、コミュニケーション能力や周りの空気を明るくする力を持っている。

 欠点にしても、これから修行を重ね、強敵と戦い経験を重ねていけばどうにかなるだろう。そう思っていた。

 

 しかし、決闘の最中に美女が視界に入っただけで動けなくなるほど緊張するのは、さすがに拙いと亀仙人も考え直した。

「昨日の勝負では、あがり症のせいで負けただけではなく、プーアルが居なければ溺れていたかもしれんのだろう? どうせなら『決闘に自分が勝ったらパイパイをつつかせてください』ぐらい言わんか」

 

「そ、そんな……無理ですよ」

「師よ、そんな事を提案できるのはあなたぐらいだ」

 弱った様子のヤムチャに、兄弟子のチャパ王が助けに入る。

 なお、チャパ王は先送りにしていた「ピチピチギャルを連れてくる」という亀仙人への弟子入りの条件を、故郷のキャバクラ的な店に亀仙人を招待して三日三晩接待してクリアしたそうだ。

 

「それに彼はまだ十六歳の少年……異性を前に緊張するのは無理もない事かと」

「ふ~む、確かに。……大人なら、ゲロから貰っている金でも持たせてエッチな店にでも放り込んで免疫を付けさせるところじゃが」

 

「勘弁してくださいっ、武天老師様!」

「そんな事をしたら、ヤムチャ様が全身固まったまま戻れなくなっちゃいますよ」

「やはり荒療治がすぎるか。幸い、まだ次の天下一武道会まで一年と半年ほどある。それまでにあがり症の克服も含めて、しっかり修行するのじゃ。

 とりあえず、そろそろカリン塔に登ってカリン様から修行を受けてこい」

 

 エッチな店に放り込まれる事を回避したヤムチャは、ほっと胸を撫でおろした。

 しかし、亀仙人の指示についてよく考えると、ヤムチャのあがり症が修行の過程で治る見込みがないという事は、想像に難くない。

 

 何せ、カリン塔も、そしてその上にある地球の神様の神殿も、女っ気はゼロだ。免疫を付ける機会は全くない。

 どうやら、亀仙人はカリン様とミスターポポにヤムチャの心身を鍛えてもらい、彼を荒療治に耐えられる状態にした後、改めてエッチな店に放り込むつもりのようだ。

 

 まあ、ヤムチャのあがり症は異性に対する免疫……つまり慣れの問題だと推測できるので、それでどうにかなるだろう。……原作と同じようにブルマで荒療治する訳にはいかんし。

 

「爺さん、俺なら今すぐ放り込まれてもいいぜ!」

「なんじゃ、お主? お主も儂に弟子入りしたいのか? 儂の修行は厳しいぞ」

「ちぇ、ならいいや」

 なお、宴会にはウーロンも悟空達と同じ救国の英雄として参加している。実際、彼も命がけで活躍したのでその資格は十分あるだろう。

 

「そう言えば、ゲロは師や保護者として何か言うことは無いのか?」

「ふむ、そうですな。

 皆、よくやってくれた。妙な横槍を入れられても狼狽えず、諦めず戦い、現時点での実力では勝つのは難しい相手にはプライドを曲げて助けを求める。それは戦っている最中に、中々できる事ではない。

 おかげでグルメス王国は悪党から解放され、市街地に被害は出ず、何よりも誰も死ななかった。間違いなく、お前達の大勝利だ」

 

 客観的に状況を見て冷静に思考すれば難しくない判断だが、そもそも命がけの戦闘中に「客観的に状況を見て、冷静に思考し判断を下す」のは難しい。

 敵と殴り合っていれば視野は狭まり、怒りや恐怖などの激しい感情は冷静さを保つには邪魔になる。

 儂も、若い頃は研究に没頭するあまり寝食を忘れて倒れた事が何度かある。

 

「特に、信頼できる仲間と力を会わせて強敵と戦った今回の経験は、貴重な財産となるじゃろう」

「爺さん、褒めてくれるのは嬉しいけど、叱ってないぜ?」

「ラズリ、それはそうじゃが叱らなければならない点は見当たらんからな」

 

 強いてあげれば、最初にボンゴ達に騙された点ぐらいだが……あれも、気の感知にばかり頼ってロボットに気が無い事を忘れていた儂の責任も大きい。留守番の間だけでも、監視カメラ代わりのスパイロボットをドラゴンボールの周りに設置しておけば防ぐ事が出来た。

 

 むしろ、ボンゴ達がどんなに怪しくても証拠が無いから荒っぽい手段に訴えなかった、ラピス達の倫理観の高さを褒めるべきだろう。

 

 さて、今回の一件で儂にとって大きな出来事が起きた。それは、チチと悟空の婚約である。

「悟空さ、オラの事……お嫁に貰ってけれ!」

「ヨメ? それってウーロンがパンジにしようとしてたあれだろ? チチはオラの嫁になっていいんか?」

「もちろんだべ! オラ、悟空さの嫁になりてぇ!」

「なりてぇんか……分った! オラはチチを嫁にする!」

「悟空さっ、オラ嬉しいだよ!」

 

 感激した様子で悟空に抱き着くチチ。「そんなに引っ付くなって」と言いながらも、チチが嬉しそうだから自分も嬉しい悟空。

 驚く儂等、歓声をあげて幼い英雄同士のカップル成立を祝うグルメス国民達、「よっしゃー! ここからは婚約披露パーティーだ!」と即席の厨房で元気に調理に取り掛かる料理人達。

 

「オラのチチが悟飯さん所の悟空の嫁に……こいつは目出度てぇ!」

「チチ、良かっただなぁ! オラ、チチの花嫁姿を見られるなんて人造人間になる前は思わなかったべ!」

「めでたいのぅ、めでたいが今すぐ結婚する訳ではないのだから、落ち着いたらどうじゃ?」

 今にもチチと悟空の結婚式を用意しそうな牛魔王とサンに、二人を宥める孫悟飯。

 

「チチちゃんの方から告白させるなんて、悟空もやるもんだ。バーダックの奴、早く帰ってこないと孫の顔を見る事になるかもね」

「いくらなんでも早いだろ。だが、あいつらの間に子供が出来るなら、是非チチの方に似てほしいもんだぜ」

「え、なんでだい?」

「俺と悟空とバーダック、同じ顔がこれ以上増えたら紛らわしくて仕方ねぇだろう」

 逆に、ギネとターレスは落ち着いていた。喜んでいないわけではないが、感激して泣き出すほどではないという様子だ。これも一応地球人とサイヤ人の感性の違いだろうか?

 

「悟空っ、チチさん、おめでとう!」

「チチちゃん、随分思い切ったわね~」

「まさかチチちゃんに先を越されるなんて……はあ」

「随分早いと思うが、おめでとう悟空」

「へっ、お前きっと尻に敷かれるぞ」

 

 それぞれパンジや友達に声をかけられ、嬉しそうにするチチに、やや戸惑った様子だがやはりうれしそうな悟空。……悟空の場合は、やはり「嫁に貰う」という言葉の意味を正確に理解していないようだが、周りの雰囲気から漠然と良い事だと思っているようだ。

 

 悟空とチチの馴れ初めは、サンや孫悟飯、そしてギネの生存。そして既に悟空とチチが知り合っている事から、事原作と同じ状況の再現が不可能なため、儂もなるようにしかならないと思っていた。

 結果、原作と大きく異なる流れ……ブルマ、もしくはラズリ、今後出会う事になるかもしれないジングル村のスノ、もしくは儂が予想もしなかった相手と悟空が結婚するかもしれないと考えていた。

 

 しかし、まさか原作開始約一年前のこの時期に、しかも原作劇場版ではチチは登場していない『神龍の伝説』で二人の婚約が成立するとは……まさに予想外だ。

 歴史改変者の介入によって原作通りのカップリングが成立するとは、皮肉な事だが。

 

「よし、婚約祝いに儂から悟空にこれをやろう。筋斗雲よ~い!」

 すると、亀仙人が筋斗雲を呼んだ。空の彼方から飛んで来た金色の雲に、グルメス王国の人々が驚きと感嘆の声をあげる。

 

「亀仙人のじっちゃん、このでっけぇ綿飴、食っていいのか?」

「ありがたい雲を食うな! これは乗り物じゃ! まあ、悟空ならいずれカリン塔を登ってカリン様から授かる事になるだろうが……今回のような時には、柱を投げる以外の方法で素早く飛べた方が良いじゃろう」

「これ、乗れるのか!?」

「ただ、清い心の持ち主でなければ……おお、乗れたか。まあ、悟空なら乗れると思ってやったんじゃが」

 

 亀仙人が試し乗りして見せる前に、悟空は「ひゃっほ~いっ!」と筋斗雲に乗って空を自在に飛び回っている。

 それを見て、突然天津飯が「しまった」と言って頭を抱えた。

「どうした、天津飯?」

「桃白白様、実は……俺もカリン様から筋斗雲を授かっていたのを忘れていました。俺は、乗れなかったので」

 

 地球の神様の神殿で修行していた天津飯は、その過程でカリン塔を登り、カリン様から筋斗雲を授かっていた。しかし、天津飯はその事をすっかり忘れていたらしい。

 まあ、乗れないのでは仕方ない。

 

「孫が乗れると知っていれば……いや、こうなる前に乗れるかどうか試していれば……」

「過ぎた事は仕方ない。あまり気に病むな。……実は、私も今の今まで筋斗雲の事は忘れていた」

 なお、桃白白もカリン様から筋斗雲を授かっていたのだが、自分が乗れないので忘れていたらしい。

 

「そう言えば、お爺ちゃんやヨン兄さんも筋斗雲を持ってたわよね?」

「うむ、タイツやブルマをあやすのに、ベビーベッド代わりにして使ったな」

 そして儂は、4号と違い筋斗雲に乗る事は出来なかった。

 

「あの雲か……乗り物としては早いが、ヨンに捕まらないと落ちちまうのがネックなんだよな」

「ターレスも、心を静め純粋に保てばドクターのように乗れるようになりますよ」

 しかし、ヤードラット星の修行を経て、精神の状態を純粋に維持する事でその間は筋斗雲に乗る事が可能になった。

 

 ……少しでも思考を乱すと落ちるし、儂は瞬間移動が使えるからそこまでして筋斗雲に乗る必要はなかったため、何度か試した後は結局乗っていないが。

「……チャオズみたいな面してか? 油断したら落ちちまう乗り物に、そこまでして乗りたくないぜ」

 そして、その時の儂の様子はターレスから見ると、チャオズと同じ顔つきをしているらしい。

 

「ターレス、その言い方だと、ボクが何も考えてないみたいに聞こえる!」

「悪かった悪かった。お前も、筋斗雲に乗れるか試してみたらどうだ?」

「なら、乗れたら儂の筋斗雲をやろう」

 その後行われた筋斗雲チャレンジで、チャオズとラピスにプーアル、そしてパンジは筋斗雲に乗れたが、ラズリとブルマは乗る事は出来なかった。

 

「な、なんでチチちゃんは乗れてあたしは乗れないの? 昔は乗れたのに!」

「フンッ、別に悔しくなんてないさ。飛ぶだけなら投げた柱や丸太に乗れば十分だからね」

 地面に膝ついて悟空と一緒に筋斗雲に乗って飛び回っているチチを見上げるブルマに、悔しそうに言うラズリ。

「筋斗雲に乗る事が出来る条件は、純粋であるかどうかじゃからな。あまり気にせんことじゃ」

 

 原作で亀仙人は筋斗雲に乗る事が出来る条件として分かり易く説明するために、「良い子でなければ乗れない」と言っていた。確かに純粋さは美徳ではなるが、純粋でないから悪とはならない。……実際、亀仙人は乗れんのだし。

 

「じゃあ、パンジが貰うと良い」

「えっ、良いの?」

「ああ、俺はそのうちカリン塔に登るだろうし、そうすれば貰う機会もあるだろう」

「ボクは超能力で飛べる」

「ボクも変化で鳥や、それこそ筋斗雲に化ければ空は飛べますから」

 

「皆、ありがとう! 大切にするわね!」

 こうして儂の筋斗雲はパンジにプレゼントされる事になったのだった。死蔵されるよりはずっとマシじゃろう。

「ただ、乗る時はパラシュートを忘れるなよ。もし落ちたら、大怪我じゃすまないからな」

「うん、分かった」

 まあ、悟空達と違って空を自由に飛び回る、というのは普通の少女であるパンジには難しいが。緊急時用の小型反重力装置もおまけにプレゼントするとしよう。

 

 こうしてグルメス王国での宴は夜遅くまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後も、グルメス王国の復興は順調に進んだ。

 もちろん、神龍を召喚して願うよりもずっと時間はかかっている。まず、掘り返されたグルメス王国の都市開発計画を立案。解決したのが原作劇場版より一年早かったため、まだ国民の家や個人の庭は掘り返されていないので、仮設住宅の設置は考えなくていい。道路や公園、水を抜かれた湖の再建、商業区や農業区の設置と採掘場の指定だけで済んだ。

 

 自然環境の回復は、ブリーフが品種改良したアジッサの木を使う。掘り返した土を戻して道路の敷設や公園の造成を行い、アジッサの木を植林して土壌の再生を図る。

 それには莫大な労働力が必要だが、捕まえた元グルメス王国軍の兵士達を労役に就かせれば十分賄える。

 

 これはグルメス王国の暫定的為政者である地球国国王、そしてパンジの父親達グルメス王国の国民も同意しているので、完全に合法な措置だ。

 その労役も、鞭で打って働かせるようなことはせず、発信機付きの足輪を嵌めて監視するが、仕事は一日八時間。三食十分な食事を出し、週に一日は休日を確保し、かなり少額だが給料も払う。

 

 この待遇は、パンジやその父親達の意見を取り入れた結果だ。自分達を弾圧した元兵士達であっても、重い罰は望まない。十分に反省するのなら、それでいいと言うのが彼らの主張だ。

 そのため、元兵士達の労役は罰よりも更生を重視した内容になっている。実際、死ぬまで牢につないでおくわけにはいかないので、グルメス王国が復興するまでに更生し、まっとうな道に再就職して欲しいものだ。

 

 元ボンゴ四天王のニョッキ、ペンネ、マカロニ、リングイネの四人はキリによる強化が解け元通りになったが、彼らは素の状態で平均的な地球人から見れば十分超人であるため、彼らの監視はGCGの隊員によって行う。

 そして人間重機として大いに活躍してもらっている。

 

 グルメス国の治安は一時的に王立国防軍が担い、その間に新しいグルメス王国軍や警察を組織する。

 これらの復興事業には、労働力以上に莫大な資金が必要となる。そして、その資金はリッチストンの採掘事業と売却で得た資金で賄う予定だ。

 

 当初、パンジ達は自分達が苦しむ原因となったリッチストンに頼る事に難色を示した。採掘を行う場所を採掘場だけに定めたとしても、そこからリッチストンが採れなくなったら、また公園や道路を掘り返し、湖を干上がらせて底を浚うのではないかと思ったそうだ。

 

 パンジ達グルメス王国の人々がリッチストンの採掘事業に対して猜疑心を募らせ、不安に思うのは当然だ。

 その原因を、儂はリッチストンの採掘が国家事業として行われているのに、その利益が国民である彼等に分配されるどころか不利益のみ押し付けられたからだと考えている。

 

 軍からは厳しく管理され、反対意見を述べる事は許されず、景観は破壊され、公共サービスは低下する。近い将来には水資源の枯渇や、大気汚染などの問題が乱立するのは目に見えているのに、国にはそれを解決するどころか問題を認識している様子もない。

 これで良い感情を持つわけがない。

 

 しかし、今後リッチストンの採掘事業は国を代表する産業として、売却益は復興が終われば公共サービスの充実に使われる予定だ。最終的には、世界で最も税金が安く、福祉が充実した国になるだろう。

 その頃には国民感情も落ち着くだろう。

 

 そうした復興事業で忙しいのは、主に地球国国王や我が社の副社長、そして王立国防軍やGCGで、儂は直接関わってはいない。

 儂が直接関わるのは、グルメス王の治療ぐらいだ。

 

 彼に行われたキリによる強化の影響は、魔封波で封印されている間に解けた。しかし、暴飲暴食の結果肥大化した体と変化した体質はそのままだ。原作劇場版では、パンジが神龍に願った事で国の自然と同様に元に戻ったが、この歴史では神龍の出番がなかったから仕方がない。

 

 このままでは、彼をどうするにしても差しさわりがあるので、治療しなければならない。

『…………思うに、儂はこのまま死んだ方が良いのではないだろうか?』

 特注した巨大ポッドに満たされた薬液に浮いたグルメス王が、儂にそう問いかける。

 

「ふむ……確かに、国が荒廃した主犯はボンゴとパスタだが、あなたにも大きな責任がある。何より、国王じゃからな」

 王である彼がしっかりしていれば、グルメス王国がリッチストン目当てのボンゴとパスタに牛耳られる事もなかった。美食に耽り、暴飲暴食に走らなければ体質が変わる事もなかった。何より、為政者である彼が責任を取る事で納まる問題は少なくない。

 

「しかし、あなたが死ぬことで別の問題も起こるのです。グルメス王国を将来誰が統治するのかという、大きな問題が」

『……立候補者を募り、選挙によって民から選べばいいのではないか?』

「急には無理ですな。高い確率で躓きます。政治形態を変えるのに、数十年は必要でしょう」

 

 民主主義は素晴らしいし、グルメス王国の人々は善良だ。しかし、善良な人々が優れた政治家になれる訳ではない。

 特に、今のグルメス王国は官僚も軍も司法も機能しておらず、王立国防軍と地球国から派遣された官僚や司法職員によって運営されている。

 素人政治家をフォローする力は、今のグルメス王国にはない。

 

 ボンゴとパスタによって遠ざけられた、まともな官僚や警察官、軍人を呼び戻しているが……それでも民主主義国家への急激な転換はハードルが高い。

 

『では、特区である事を止めグルメス王国からグルメス県とでも名前を変えて地球国の統治下になるのは……?』

「それは既に国王様に提案したが、辞退されました」

 落としどころしては十分ありだと儂は思ったが、地球国国王様にとってはそうでなかったようだ。

 

 理由は、事件の解決に尽力したのは悟空達であって、地球国ではない事。全てが終わった後に駆けつけて、事後処理をしているだけで、手柄を横取りしたかのように見えてしまう。

 グルメス王国がただの貧しい小国であれば、それでも問題なかったが……近い将来、リッチストンの売却益で豊かになるのが確実な国じゃからな。

 

『では、ドクターゲロ、あなたが――』

「断固、辞退する」

 死んだ目をした地球国の国王様にも言われたが、儂がグルメス王国の為政者になるのは死んでも断る。

 

 何故なら、儂はやろうと思えばもっと早くグルメス王国を解放できたからだ。それなのに動かなかった儂がグルメス王国を治めるなんて、罪悪感で精神を病み、マッドサイエンティストになってしまいかねない。

 そもそも、儂は天才科学者であって政治家でも為政者でもない。百歩譲っても経営者だ。

 

 もちろん、儂とグルメス王の会話で上がった案も、グルメス王国の国民達が望むなら、儂が国王になること以外は十分検討に値する。

 しかし、パンジや彼女の父親達はそれを望んでいない。

 

「グルメス王国の国民から、あなたの治療を頼まれておりましてな。文句を言いたいから、早く戻ってきて欲しいそうですぞ」

 彼らが望むのは、グルメス王が元の民思いな王に戻って帰ってくる事だったのだ。

 

『っ! ……儂は、どんな顔で民の前に出ればいいのか……』

「とりあえず、落としどころとしてはグルメス王国を公国と改め、あなたも王から公爵に一段階称号を下げて、議会を設置する。権限を分散させ、公爵や議員一人が道を誤っても、周囲が止めやすくするというのはどうですかな? っと、我が社の副社長が申しております」

 

『……ああ、民と話し合って決めよう』

 こうしてグルメス王も立ち直ったのだった。なお、彼の治療法は儂がやると一年ほど時間がかかる事が判明したため、友人と相談したところ……ヤードラット星人の長老ビバラ様が治療に協力してくれた。

 

『イタッ!? イタいぞ!?』

「ごめんよ、ダメージを与えないと君が吸収したスピリットを分離できないんだ」

『その、スピリットというのがいまいち理解できないのだが!?』

 

 治療方法は、ヤードラット星人の奥義、スピリットの分離である。なんでも、グルメス王は食事を取る事で料理に含まれているスピリットっぽいエネルギーを吸収し、体に蓄えた結果体質が変わってしまったらしい。

 普通の地球人なら太るだけで済むが……モンスター型の地球人である彼はかなり特殊な生態の持ち主だったらしい。

 

 生体エネルギーを吸収していると考えれば、セルと似たようなものだろうか。料理に生体エネルギーがあるのかは疑問だが……実際に効果があるようなので、あるのだろう。

 

「あれ? 説明を聞いていなかったのかい? じゃあ、もう一度最初からするね」

『殴るのを止めてくれないと、何を説明されても頭に入らないのだが!?』

「うーん、でもダメージを与えないと君が吸収したスピリットを分離できないんだ」

 

 なお、スピリットの分離は対象にダメージを与えなければ効果を発揮しないため、グルメス王は先ほどからビバラ様にボコボコにされている。強くないヤードラット星人のビバラ様だが、キリで強化されていないグルメス王よりは強いようだ。

 

 ちなみに、仙豆も喉を通らないため回復できないグルメス王だが、儂とブリーフが作った仙豆を液状にした仙豆ポーションを直接注射する事で強制的に回復させた。

 まさか仙豆ポーションを実践する初めての相手が、グルメス王だとは思わなかった。しかし、そのお陰で彼は一日で元の姿と体質に戻り、泣きながら国に帰ったのだった。

 

 そして事件解決から一か月が経った。季節は、真夏は過ぎたが秋が来るまでには残暑に耐えなければならない頃だ。

 

 他に主だった事と言えば……まず、グルメス公爵が世界中から集めた料理人達が、グルメス公国に留まって店を出す事にした事だ。

 これから発展して人口も増えるだろうグルメス公国に、チャンスを見出したらしい。グルメス公国が美食の国として注目を浴びる日は遠くないだろう。

 

 次に、パンジが地球国国王からその勇気と行動力を讃えられて勲章を贈られた。

 そして、ウーロンが孫一家に引き取られた。

 ウーロン本人は嫌がったが、捕まえたニョッキ達の元ボンゴ四天王の口から村で行っていた悪行が判明したため、孫悟飯が「二度と悪さをしないよう教える。そのためには、都会より田舎の方が良いじゃろう」と言って引き取った。

 

 ウーロンがした事に対して甘すぎるかもしれないが、彼も(妖怪の成長速度を地球人と同じとするなら)悟空達と同世代の少年だ。それに、直接被害に遭った村から退治するよう依頼されたわけでもない。

 それに、事件の解決に取り組み、命がけで活躍した功績は事実であるし、根っからの悪人という訳でもない。

 

 まあ、落としどころとしてはこれで程よいのではないだろうか?

 気がかりなのはギネがどう思うのかと、そもそも孫悟飯がスケベの矯正が出来るのかという点だが……。

 

「悟空、お前の姉ちゃん、結構美人だな」

「姉ちゃん? オラ、姉ちゃんはいないぞ。兄ちゃんはいるらしいけど」

「え、何言ってんだよ。ギネってあの人、お前の姉ちゃんだろ?」

「違うぞ、母ちゃんだ」

「ええっ!? 母ちゃんなの!? お前の母ちゃんめちゃくちゃ若いな!」

 

 そう悟空とウーロンが会話をしていたのを聞いたギネが気を良くして、彼を引き取るのに反対しなかった。

 その後、何回かウーロンが風呂や着替えを覗こうとしたらしいが、気の感知が出来るギネ本人によって未遂の内にひょいひょいと捕まえられ、悟空に「おめぇも懲りない奴だな~」と呆れられ、孫悟飯から説教を受けているそうだ。

 

 そして、後はヤムチャがプーアルを連れてカリン塔を登り、天津飯やチャオズ、チャパ王がヤードラット星に修行へ向かった事ぐらい……だと思っていたが、この日、儂にとって特大の事件が起こった。

「突然押しかけてすみませんねぇ。ちょっとお時間よろしいでしょうか?」

 強引なセールスのような事を言っているのは、白い髪に青い肌の、変わった形状の杖を携えた青年……の姿をした天使。

 

「よ、ようこそ。お会いできて光栄です」

 この第七宇宙の破壊神ビルス様の付き人にして師匠、ウイスだった。

 




〇悟空の結婚観

 母親のギネや、ブリーフ夫妻や牛魔王夫妻の事を知っているので、原作と違い母や夫婦という概念は知っている。
 しかし、交際や婚約、そして結婚して夫婦になるというプロセスは理解していなかった。
 それどころか、最近「ヨメ」という言葉をウーロンから知り、「女を嫁にしようとするのは、嫌がられる悪い事」と誤解しかけていた。

 チチが嫁に貰って欲しいと言い出したため、「悪い事かどうかは相手による」という事を理解した。
 また、この当時悟空はチチに対する恋愛感情はなく、友人としての好感度が100パーセント。それで嫁に貰う事を受け入れたのは、「チチが喜ぶから」という理由。

 恋愛感情や異性としての愛はまだ幼いため無いか無自覚だが、それとは別に悟空がチチと仲が良かったため婚約が成立した。



〇元グルメス王国軍兵士

 彼等に対するグルメス王国の民の懲罰感情がそれほどではないのは、弾圧された期間はそれなりに長くても、彼らがパンジの父のような国民に怪我をさせる事はあっても、殺しはしていなかったため。
 原作劇場版を見ても、逆らったパンジの父は殴られただけで、グルメス王を叱るシーンでは元気に登場している。また、そこまで血生臭い雰囲気ではなかったとこの作品の作者は思いました。

 そして、なによりグルメス王国民が善良で寛大である事が大きいと思われる。元に戻ったグルメス王を叱るだけで、某革命のようにギロチンにかけようとはしていないし。
 もっとも、善良で寛大な国民性だからボンゴやパスタに国を牛耳られた、ともいえる気がする。



〇グルメス王国→グルメス公国

 王国から公国、つまり王様が収める国ではなく、貴族が治める国になった。
 主な産業はリッチストンの採掘と売却。それに伴ってアクセサリーを作る工房が増える予定。
 また、グルメス王が世界中から集めた料理人達の多くが国に留まり、自分の店を出したため名前の通り美食の国としても注目を集める事となる。




 佐藤浩様、JtR0000様、天導 優様、N2様、どーラ様、中島ゆうき様、カド=フックベルグ様、リースティア様、くらねす様、gsころりん様、アマラ深界在住様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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