ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする   作:デンスケ(土気色堂)

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52話 幕間の出来事と悪の胎動

 やあ、諸君。タイムパトロールの外部協力者に就任した天才科学者、ドクターゲロだ。

 なお、この事は既に皆に教えて情報共有しておいた。歴史改変者の事も以前から教えているし、クロノアにも口止めされなかったからな。

 

 とはいえ、タイムパトローラー達の事……未来トランクスや超ルートの悟空とベジータの事はもちろん黙っておいたが。皆には、『時の界王神様が様々な歴史から選んだ強い戦士』とだけ伝えてある。

 

 その約一か月後、タイツ達が来年の春、地球のドラゴンボールを集めて使うための冒険の旅に出たいと言われたので、保護者一同で話し合った結果構わないという事になった。孫悟飯は、以前悟空達がドラゴンボールを探す旅に出る事を儂が仄めかしたのを思い出したのか、「なるほど、この事か」と頷いていた。

 

 原作では時期は夏だったが、『この世で一番強いヤツ』や『神龍の伝説』に比べれば数か月前倒しになるぐらいなら、問題ないだろう。

 なお、兎人参化一味はもう逮捕されている。彼らが縄張りにしていた村はウーロンが恐喝を働いていた村々より都会よりで、GCGの警備員を雇って対抗する事を人々が思いついたからだ。

 

 触れた者を人参にする兎人参化の強力な特殊能力も、住民からの情報提供によって事前に分かっていれば対処可能だ。遠距離から手加減したどどん波の一斉射撃で捕まえ、警察に引き渡す事が出来た。

 まあ、兎人参化は普通の警察署で取り調べ、刑務所に収監すると人参にされる者が続出しそうなので、うちの会社で研究開発に協力するボランティアとして社会奉仕活動に従事してもらっている。

 

 なお、兎人参化の力は、彼と対象との力に圧倒的な差があれば抵抗する事が出来る事が、儂の四身の拳の分身を使った実験で明らかになっている。また、人参に変えられても気を制御できれば動く事が可能だ。

 原作の魔人ブウ編で、ベジットが飴玉にされてもブウを圧倒したのと同じだ。

 

 それはともかく、兎人参化を既に確保しているため原作と同じ展開ならだが、タイツ達の冒険に命の危機に陥るような事はほぼない。

 唯一の懸念はドクターコーチンだ。ウィローの研究所で彼の死を確認できなかったので、念のために占い婆に頼んで閻魔大王に聞いたのだが、彼は死んでいないという。

 

 この世界のあの世は、サイボーグや19号のような機械ベースの人造人間でも、死ねば(破壊されれば)地獄に落ちる。だから、悪魔の科学者と呼ばれたウィローの助手であり信奉者だったコーチンも、死ねば地獄に落ちるはずなのだ。

 そうでないという事は、生きているという事なのだろう。

 

 当然儂はスパイロボットを駆使してコーチンを探しているが、未だ発見できていない。どこで何をしているのか、手掛かりも無い状態だ。

 また、占い婆にコーチンの居場所を占ってくれるよう依頼したが、彼女の占いでも居場所を映し出す事が出来なかった。やはり、歴史改変者が何らかの手段で妨害しているのだろう。

 

 とはいえ、冒険を止めさせるほど差し迫った脅威でもない。元々歴史改変者に対する警戒は続ける必要があるので、タイツ達には何かあったらテレパシーかスカウターで連絡するよう念入りに言ったが。

 

 それに、七つのドラゴンボールの内六つを身内で管理している状態じゃからな。冒険というよりほぼ旅行だろう。

 

 そのしばらく後、鶴仙人が昔からの知り合いから赤子を引き取って来た。

「この子はチャオズとはまた違った不思議な力を持っているようでな。両親が育てきれず困っていたのを聞き付けたのが、儂の知人だったという訳じゃ」

 

 鶴仙人の説明を聞きながら彼が抱えているおくるみを覗き込むと、そこには一歳ぐらいの、まだ幼児とも呼べない赤ん坊が眠っていた。

 その寝顔は健やかで、普通の赤ん坊に見えるが……。

 

「ああ、もちろんこの知人はもう足を洗っているはずじゃ」

「まあ、どういう知人かは深く聞きませんが……それで、不思議な力というのは?」

「なんでも、夜に眠っているはずの母親が夢遊病のように動き出し、この子に乳を与えたらしい。他にも、奇妙な事がいくつも起きたとか」

 

「なるほど。超能力というより、仙術や妖術の類、もしくは先祖に宇宙人の血が混じっていてその力が何らかの形で現れたのかもしれませんな」

 この世界では地球人であっても、先ほど名前を出した兎人参化のように、特殊な能力を持って生まれる者が存在する。この赤ん坊もその一人という事だろう。

 

「それで、この子の名前は?」

「ユーリンと言うそうじゃ。天津飯とチャオズの妹弟子として、儂が親代わりになって育てるつもりじゃ。その過程で会長にも色々相談に乗ってもらいたい」

「喜んで。ベビーシッターの経験なら豊富ですぞ」

 

 赤ん坊の名はユーリンだった。最初はピンとこなかったが、名前を聞いてからしばらく経ってから思い出した。

 ドラゴンボールとドラゴンボールZには登場しなかったが、ドラゴンボール超のアニメで登場したキャラクターだ。主に登場したのが、悟空が力の大会に参加する選手を集めるために仲間達を訪ねる展開の、天津飯と亀仙人の時だけだったので、印象が薄かったのである。

 

 アニメでは天津飯とチャオズが鶴仙流から袂を別って、鶴仙人の道場か何かから出ていく際に、「裏切り者」と彼らに向かって叫ぶ幼い彼女の姿が、回想シーンとして描写されていた。

 今が原作開始の約一年前で、原作で天津飯がチャオズと共に鶴仙流から出ていくのが約四年後。年齢的にも、矛盾はないように思える。

 

 ……天津飯とチャオズが鶴仙流から離れた後、約三十年過ぎているはずのドラゴンボール超で登場したユーリンの姿は、十代から二十代前半ぐらいに見えたが、それはきっと妖術か仙術で老化が遅くなっているのだろう。多分。

 

 そして儂にも思わぬ出会いが待っていた。GCコーポレーション会長として政財界の大物とコネクションがある儂だが、その中の一人が儂に依頼をして来たのだ。

「頼むっ! どうか息子の夢を応援してやってくれ!」

「親父、もういいんだ。マークの奴に、それもミゲルちゃんの前で負けて、俺のブランドはボロボロだ。夢はもうあきらめた。これからは家業の商売の方に専念する」

 

「ジャガーっ! それを言うならプライドだ! しっかりしてくれっ!」

 小柄で小太りなバッタ男爵が、意気消沈した様子の彼によく似た顔つきの息子ジャガー・バッタの肩を揺さぶる。

「親父、俺には才能が無かったんだ……マークの奴には、金を使って復讐する事にするよ」

「思いっきり道を踏み外しそうだから、止めてくれっ!

 ゲロ会長、この通りだっ、息子を鶴仙人先生に紹介してくれ!」

 

 この少年の名はジャガー・バッタ。バッタ男爵の息子で……マークことミスター・サタンの幼馴染でライバルだった、劇場版『超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』の登場人物である。

 『超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』では、コリー博士を雇ってバイオ戦士や、『危険なふたり! 超戦士はねむれない』に登場した祈祷師からブロリーの血液を買い取ってバイオブロリーを創らせた。

 

 目的は十二歳の頃に決闘して自分を負かしたサタンに対する復讐で、そのために、修学旅行でオネショした秘密を暴露すると脅してサタンを呼び出したが、居合わせた18号が巻き込まれ、好奇心に駆られたトランクスと悟天が付いていき……結果的にバイオブロリーが暴走し、彼を培養するために使っていた培養液が空気に触れて変質し、メイクーン城がある島が壊滅状態になってしまった。

 

 この歴史では原作では彼が雇うはずだったコリー博士を儂が雇っている。それにブロリーが新ブロリーの方であるため劇場版『超戦士撃破! 勝つのは俺だ』通りにはならないだろうが……歴史改変者が手を出してくる可能性があるため、楽観はできない。

 

 ブロリーは無理でも、地球に現れる他の強敵の血液を使って他のバイオ強敵……バイオスラッグやバイオフリーザ、バイオコルド大王等を創らせるとか。

 もしくは、他の歴史から旧ブロリーの血液を持って来て彼が雇った科学者に渡すかもしれない。

 

 そもそも、『超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』で猛威を振るったのはバイオブロリーではなく、空気に触れたら、触れた生き物の細胞を吸収し増殖する液体に変質する培養液の方じゃからな。

 

「分かりました」

 そういう訳で放置はできないので、是非ジャガー少年には立ち直ってもらいたい。

「でも、俺には才能なんか……」

「なに、才能の有無などやってみなければ分からないものだよ。天才科学者の儂が、武道家としても有名になったのがいい例だ」

 

「それは、あんたが武道や超能力の才能まであったから――」

「儂は中年になってから武を始め、それから超能力に目覚めた。十二歳の君なら、これから幾らでも自分の才能を発見できるだろう。

 やめる事はいつでもできる。まずは、やってみてはどうだね?」

 

 それに、儂も大人の端くれ。挫折した子供に手を差し伸べたくなるのは自然な事だろう。

「……分かった。もう一度やってみる」

 こうしてジャガーは立ち直った。しかし、鶴仙人はGCGの指導者としての仕事とユーリンの世話で忙しかったので、彼は儂の弟子という事になった。

 

「ジャガー、このトレーニングスーツは君のデータを元に開発した、特別製じゃ。安心して励むといい」

「ひえええっ! 死ぬぅぅぅっ!」

「はっはっはっは、走りながら絶叫する元気があるとは、君はやはり才能豊かじゃな!」

 

 とりあえず、ジャガーには彼専用に儂が開発したトレーニングスーツを着用させ、修行をさせる事にした。特別製のスーツは彼の体に適切な負荷をかけ、体調を管理し、万が一の時は仙豆ポーションを注入して蘇生させることも可能だ。

 

 これで彼も驚くほど強くなれる事だろう。

 

 このままでは未来のチャンピオンがミスタージャガーになってしまうかもしれないが、サタン(マーク)も強くなるために動いていた。

 なんと、家出して偶然都を訪れていた亀仙人の元に弟子入りしたのである。

 

 後日経緯を亀仙人から聞いたが……ヤムチャをカリン塔へ送り出し、後は来年悟空達が来るまでの間自分の修行に集中しようと考えながら新しいエロ本を購入しようと本屋巡りをしていたら、偶然マークと出会ったそうだ。

 老人の正体が亀仙人だと気が付いたマークは、一も二もなく弟子入りを志願した。しかし、志願されただけで弟子にする亀仙人ではない。マークに次々に試練を出すが……マークはそれを次々にクリアしてしまった。

 

 適当な石に亀と文字を書いて放り投げ、あの石を日没までに探して持ってこいと言えば、運良く見つけて十分ほどで持ってくる。

 ピチピチギャルを連れて来いと言えば、ガールフレンドのミゲルが偶然通りがかって、「マーク君、あの武天老師様に弟子入りするの? スゴ~イ! 今度、事務所のお友達も連れて遊びに行っていいですか?」と言い出す。

 

 そして、マーク自身の才能にも光るものがあり、しかも料理が上手かったので、亀仙人も折れて彼を弟子にする事にしたそうだ。

 魔人ブウも気に入った彼の料理の腕は、サタンジムでジム生達の食事を作る手伝いをしている内に身に付いたものだったらしい。

 

 そして秋も深くなった頃、めでたい知らせが牛魔王夫妻から届いた。

「実は、チチに妹か弟が出来ただよ」

「おお、それはめでたい。出産祝い……は気が早すぎるが、さっそく検査の日取りを決めよう」

 チチと悟空の婚約が決まったのがきっかけになったのか、サンが第二子を妊娠した。

 

 牛魔王の友人としても、サンを人造人間5号に改造した生みの親としても、めでたい報せだ。

 そしてもちろん、科学者としても色々と準備しなければならない。人造人間へ改造する際、サンには複数の宇宙人の細胞を融合させている。もちろん、生殖機能に関しても問題が出ないよう改造したが、実際に妊娠した人造人間はサンが初めてなので、地球人と同じように胎児が育ち出産できる確証はない。

 

 そのため、「体が丈夫だから大丈夫」等と過信せず、定期的な検診を行うべきなのだ。

 

「それはありがたいんだども、しばらくサンは修行や戦いが出来ねぇ。その分、オラが戦うと言いてえけんど、オラはサンに比べればまだまだだべ。 申し訳ねぇ」

 

「すまねぇだ」

 

「ん? ああ、なるほど」

 どうやら、牛魔王夫妻はサンが妊娠した事で彼女が戦えなくなることを気にしていたらしい。

「そんな事を気にしてストレスを溜めこむ必要はない。サン、お前は確かに貴重な戦力だ。だが、プライベートや家庭を犠牲にする事を強制させる体制は間違っている」

 

 たった一人、もしくは少数のヒーローが常に体を張り、プライベートや家庭を犠牲にして世界を守らなければならない体制は間違っていると、儂は思う。

 儂の前世の地球にあった漫画やアニメでは、そうした体制になっている事がある。ドラゴンボールも、その中に入るだろう。何せ、『龍拳爆発!! 悟空がやらねば誰がやる』と劇場版のタイトルにもなっているぐらいじゃからな。

 

 しかし、その体制が許されるのは、よほど特殊な場合……他に替えが効かない才能や特殊能力、素質が必要な場合だけだ。

 地球人では真似できない特殊能力と、超人的な身体能力を持つ宇宙人。伝説の勇者の生まれ変わり。世界に数本しか存在せず新たに生産する事が出来ない伝説の剣に選ばれた存在。そうした替えが効かず、他に増やす事が不可能か難しい場合などだ。

 

 だが、フリーザを倒す事や地球の危機を救う、そして歴史改変者との戦いに替えの効かない才能や特殊能力は必要ない。ただ強ければいいのだ。

 特殊なスーパーパワーや伝説の剣がなくても、フリーザより強ければフリーザを倒せる。他の劇場版の強敵も同様だ。

 

 なので、儂としては強敵と戦える戦士を一人や二人ではなく、大勢揃えた状態が理想なのである。

「妊娠出産以外の場合でも、体調不良や偶然地球を留守にしていた等、戦いに間に合わない可能性はゼロではない。それに、フリーザはいつか倒さなければならない相手ではあるが、差し迫った脅威ではない。

 気にしなくて構わんよ」

 

 そもそも、十分な強さの戦士を常時待機させておきたいなら、儂は機械ベースの人造人間の開発にもっと力を入れる。

「それに、トレーニングを続ける方法なら儂に妙案がある」

「妙案だべか?」

 そして一か月後、儂の妙案を実践した結果。サンは身重でありながら、やや効果は下がるもののトレーニングを続けることが出来るようになった。

 

「四身の拳って、便利だべなぁ」

「まったくだべ」

 儂の妙案とは、四身の拳の習得と使用である。四身の拳で作り出した分身にトレーニングを積んでもらい、終わったら本体に戻る。

 

 分身はサンだけの気で作られるので、胎児には影響は出ない。

 ただ、母体であるサンの気が減り過ぎるのは良くないので、実際に出す分身は一人だけで、気も本体に七割以上残すように指導している。

 

「こんな事ならもっと早く習得するべきだったべ」

「儂もこの使い方を思いついたのは、サンが妊娠したと知ってからじゃからな。それに、普通ならすぐに習得できる技でもないし」

 言葉で伝え難い感覚的なコツをテレパシーで教えても、サンが四身の拳を習得するのに一か月かかった。高い精度で気の制御をする必要があるので、人によって向き不向きが分かれる技だ。

 

「どうじゃ亀! 儂の技は女性武道家の進出にも貢献しておるぞ! 儂には先見の明があったという事じゃな!」

「うむ、こればかりは素直に認めるしかあるまい。活用法を閃いたのはゲロだが、それも技があったからこそじゃからな」

「……貴様が素直に誉めるとは、薄気味が悪いのぅ」

「どうせえというんじゃ、捻くれるのも大概にせい!」

 

 

 

 

 

 

 その頃、ナメック星にいる人造人間7号こと、ランファンのトレーニングも進んでいた。

 戦士タイプに生まれ変わったマイーマ達や、界王様の修行を終えて帰ってきたネイルと組手を行い、気の大きさだけではなく制御と感知を高めた彼女に頼んで、儂はある実験を行った。

 

「本当に大猿になっても大丈夫なの?」

 それは、大猿への変身時に気を制御する事で大猿に変身しないまま同様のパワーアップが可能になるのか、確かめるためのデータ収集のための実験だ。

 

 そのために三つの太陽が代わる代わる上がるナメック星から、ナメック星に比較的近い無人の惑星に二人に来てもらっている。

「大丈夫だ、もし失敗して暴れ出しても、私が必ず止める」

 ランファンだけではなく、ネイルにも協力を頼んだ。ランファンの戦闘力が十倍になった時、儂だけでは月を破壊する以外の方法で止め切れんからな。

 

「そうじゃなくて……もし体が巨大化したら、服が破けたりしない?」

 しかし、ランファンが心配しているのはそっちだったらしい。天下一武道会で下着姿になって孫悟飯に色仕掛けを仕掛けた彼女も、流石にヌードにはなりたくないようだ。

 

「そうか。我々ナメック星人が巨大化する時は、服も一緒に大きさが変わっていたから失念していた」

「ランファン、今お前さんが着ているのはサイヤ人が着ている戦闘服をブリーフがさらに改良した物じゃから、まず破れることは無い。念のためだが、替えの服も用意してあるから心配は無用じゃ」

 

「オッケ~。じゃあ、いくわよ」

 服の心配がなくなったランファンは、ゴーグルを外して夜空に浮かぶ満月を見上げた。

「……っ!」

 そのまま硬直したかと思うと、脈打つようにランファンの手足が痙攣を始める……が、気を制御しているためか、巨大化する様子はない。

 

「これはいきなり成功……ではないな」

 計測していたランファンの脳波が異常な波形を描いたと思ったら、見る見るうちに彼女の口に鋭い牙が生え、筋肉が膨張し、獣毛が生えて白い艶やかな肌を覆っていく。

 

「大きさは変わっていない。成功ではないのか?」

 しかし、ランファンは膨張した筋肉の分一回り大きくなった程度で著しい巨大化はしなかった。まあ、身長約二メートルの猿だから、ゴリラ化といったところだろうか。

 

「目標としては姿が変わらないまま大猿化と同じパワーアップなので、大成功とは言い辛いが……大型化しなければ成功の内か?」

 大猿化の問題は、小回りが利かなくなり死角が増える事が問題だったので、それが解決できるのなら確かに成功と言えるかもしれん。

 

『ウオオオオオオオ!』

 そして、変身を完了したランファンは、そのまま目の前にいるネイルに殴りかかった。儂は、即座に距離を取って逃げる。

 

「くっ! 理性が失われたようだが、もう止めていいのか!?」

 ランファンの拳を腕で防御して受け止めたネイルが、呻きながらそう尋ねる。界王様の修行を終え、ナメック星でも修行を続けている彼の戦闘力は40万。対して、ランファンの戦闘力は6万。しかし、変身した彼女の戦闘力は十倍になり、60万に到達している。

 

 ネイルでも、ただの拳を受け止めるだけで必死だ。

「もちろんだ!」

 ランファンが意識と理性を失うのは、元々想定内だ。彼女に移植したサイヤ人の細胞は、王族の者ではないからだ。

 

「界王拳!」

 儂の返事を聞いたネイルは、即座に界王拳を発動。戦闘力を一・五倍にして、ランファンと拳を重ねる。戦闘力では互角になったが、その途端ネイルがランファンに対して優勢になった。

 

「やはり、理性を失っていてもランファンだな! 動きの癖が変わっていない!」

『ウオオオオオ!』

 どうやら、変身しても体の大きさがあまり変化しなかった影響か、ランファンの動きはあまり変わっていないようだ。……儂には二人の動きが速すぎて、さっぱり分からんが。後で映像を解析しよう。

 

『ガアアアアア!』

 そうこうしている内に、気功波を放とうとランファンが口を大きく開く。

「させん!」

 それに対して、ネイルは素早く口元を手で覆い……必殺技を放った。

 

「魔口弾!」

 口内で溜めた気を、口元を覆う手で制御して撃ちだすこの技は、魔口砲の気弾バージョンだ。手だけで放つより強力な気弾を、口だけで放つより複雑な軌道で撃つことができる。

 

 ……技を放つ時の挙動が、まるで投げキッスのようだが優れた技だ。

 

『ウオォォォォ……!?』

 ランファンもネイルの投げキッ――魔口弾の軌道が読めずに直撃を受け、気功波を放つ前に倒れてしまった。

「ランファン、お前の技を借りたぞ」

 

 そして、この技を開発したのはネイル達ナメック星人ではなく、ランファンだった。ナメック星人達が口から気功波を放つのを見て、なら投げキッスをする動作でも気弾を撃てるのではないかと思いついたらしい。

 それが、意外な事にナメック星人達の間で実戦的で優れた技だと評価された。気弾を放つ瞬間まで口元を隠すので、相手に技を放つタイミングを見抜かれ難いらしい。

 

 なお、ランファンがこの技を撃つ時は気弾がハート型になる。

 

『グ、オオオオ!』

 一度倒れたランファンだったが、儂の改造によって得た回復力を遺憾なく発揮してすぐに立ち上がろうとする。

「どうする? 続けるか? 続けるなら彼女を気絶させるか、尻尾を切断するしかなくなるが」

「いや、ついでにこれの実験もしておこう。ブルーツ波遮断薬、噴射!」

 

 儂がリモコンのスイッチを押すと、設置しておいた装置から霧状になったブルーツ波遮断目薬が噴射され辺り一帯を覆う。

『オオォ……オォォォ……』

 すると、ランファンがうめき声をあげながら大人しくなり、変身が解けていく。

 

 やはり、霧状にしても問題なく効果を発揮したようだ。点眼した場合より効果時間は遥かに短いが、一度変身を解除出来れば十分だ。

「ところで、肺や口に入っても害はないのか?」

「うむ。この程度なら問題はない。原液をがぶ飲みでもしたら別だが」

 

 こうして実験は大成功を納めたのだった。ベジータ王が劇場版『ブロリー』の新ブロリーのように、変身せずに大猿化と同等のパワーアップを可能とする日も近いだろう。

 

 

 

 

 

 

 その頃、地球ではゲロ達に察知されず密やかに悪が動いていた。

「ヒェッヒェッヒェ、ようやくここまで来た。奴のスパイロボットをクラッキングして監視の目を掻い潜り、これを手に入れるのは、この儂でも苦労させられた。

 だが、天才科学者であるこの儂に不可能はない!」

 

 杖を突いた老科学者……ドクターコーチンだ。彼は、ドミグラによって与えられた情報と知識を自身の頭脳によるものだと信じ込んだまま、ウィローの復讐をするために動いていた。

 そのために必要な素材は、今彼の手にある。

 

「さあ甦れ、ピッコロ大魔王よ!」

 炊飯器に似た機械に張られた札を引きちぎり、コーチンは叫んだ。彼に応えるように電子ジャーの蓋が内側から弾け飛ぶような勢いで開き、異形の老人が現れる。

 

「封印を破り、儂を解放したのは貴様か、人間よ。何故儂を目覚めさせた?」

 深い皴が刻まれた緑色の肌に、額から生えた二本の触角。ピッコロ大魔王の姿は、コーチンが知るナメック星人の老人の物だった。

 

 まさか、ピッコロ大魔王の正体が桃白白主演映画と同じナメック星人だったとは。そう内心で驚きながら、コーチンは答えた。

「そうだ、ピッコロ大魔王よ。我が名はコーチン。貴様が儂の願いを叶えてくれるなら、その老いた肉体に若さと全盛期の……いや、それ以上の力を与えよう! 悪魔の科学者と恐れられた、儂の頭脳によってな!」

「ほう、それは興味深い提案だ」

 

 封印から解き放たれたばかりのピッコロ大魔王だったが、自身の肉体が魔封波によって封印されている間にすっかり老いてしまった事にもう気が付いていた。

 自らの力は、封印される前の若かったころと比べるとだいぶ落ちてしまっているだろう。このままでは世界征服を果たしたとしても、数十年程で寿命が尽きて死んでしまう。

 

「良いだろう、その願いとやらを言ってみろ」

 封印が解けた今、ピッコロ大魔王の次の望みは若さだった。コーチンの提案は、彼の望みに合致していた。それに、封印されている間に長い年月が過ぎているため、ひとまずこの人間を殺さず利用するのが良いだろうと彼は考えていた。

 

 もちろん、封印を解いてくれた恩義等は全く覚えていない。本当に願いを叶えるつもりなどなく、十分に利用した後はコーチンも殺すつもりだった。

 

「儂の望みは、儂とドクターウィローを認めなかった人類を滅ぼし、ウィローを亡きものにした憎き仇を皆殺しにする事だ! ピッコロ大魔王よ、この星を地獄にしてくれ!」

 

「なんだと?」

 だが、憎しみと憎悪に満ちたコーチンの願いはピッコロ大魔王にとって予想外の物だった。てっきり、彼が世界征服を成し遂げた暁にはおこぼれが欲しい、という類の望みかと思ったら復讐と人類の破滅が願いとは……。

 

 思わず聞き返してしまったが、嘘や冗談を言っている様子はない。コーチンからは、憎しみと憎悪、そして復讐への執念だけが感じ取れる。

 まるで、邪悪な魔族のようだ。

 

「ククク……良いだろう。気に入ったぞ、コーチンとやら。このピッコロ大魔王が貴様の願いを叶えてやろう。この世を魔族にとっての天国……人間共にとっての地獄に変えてやる! フハハハハハハハ!」

 フハハハハハハハ!」

「感謝するぞ、ピッコロ大魔王!」

 

 歓喜するコーチンだったが、ピッコロ大魔王をただ若くするだけでは自身が作り出した狂暴戦士はもちろん、ドクターウィローを倒したゲロ達を倒す事は出来ないだろうという事は、彼も理解している。

 だからこそ、ピッコロ大魔王を改造するのだ。彼の手で、ピッコロ大魔王を最強無敵の狂暴戦士へと。

 

 ゲロ達が気づかないうちに、新たな悪の胎動が始まっていたのだった。

 




〇兎人参化

 ドラゴンボール初期の強敵。触れた相手を人参にする特殊能力を持っており、人参にした相手をそのまま食べる等、考えれば考えるほど恐ろしい脅迫手段を持つ。

 原作ではブルマに握手を求め、彼の手を振り払ったブルマを人参にして人質に取って悟空を窮地に追い込んだ。しかし、ヤムチャとプーアルとの共闘によって逆転され、悟空によって月に送られてしまう。
 その後、天下一武道会でジャッキー・チュンがかめはめ波で月を破壊した後の消息は不明。ゲームによってはその際地球に帰還する事に成功し、ヤムチャが山賊だった頃のアジトに居座っていたらしい。そのゲームでも、カメハウスから帰ってきたヤムチャに追い出されて、やはりその後は消息不明。

 考えれば考えるほど強力な能力の持ち主で、もし兎人参化が武術を習得していたらと考えると恐ろしい。ただ、とあるゲームではペンギン村で人々を人参にして悪さをしていたが、アンドロイドであるアラレを人参にする事は出来なかったので、人参にできるのは生物限定であると考えられる。そのため、人造人間8号や16号、19号、メタルクウラ、バトルジャケットに登場したブラック補佐、ピラフマシンに乗っているピラフ大王達とは相性が悪そう。

 この作品では普通の刑務所に収監するのは危険であると判断され、GCコーポレーションで社会奉仕活動に従事する刑を言い渡されている。
 今後、研究や医療に貢献する予定。



〇ユーリン

 ドラゴンボール超にて登場した、鶴仙人の弟子。回想シーンで、天津飯とチャオズが鶴仙流から離れる際、二人を「裏切り者―!」と罵倒していた幼い日の姿が描写されていた。
 その後、細かい経緯は不明だが札を張り付けた相手を操る妖術を身に付け、道場を開いた天津飯の前に復讐するために現れた。

 その後、亀仙人からセクハラを受けたが、彼と他の道場生達を術で暴れさせた。その後、迷惑をかけた町の人達に謝り、天津飯の道場で修行している。

 本人は強そうな描写はなかったが、力の大会に出場する前の亀仙人……億単位の戦闘力を持つ超人を操っており、術に関してはかなりの技量であると思われる。



〇ジャガー・バッタ

 ミスターサタン(マーク)の幼馴染で、十二歳まで武道家を志していたライバル。しかし、十二歳の時にサタンと決闘して負けたため、夢をあきらめて親の商売を継いだ。

 しかし、この作品だと金持ちのバッタ男爵が、天才科学者なのに天下一武道会での優勝経験があるドクターゲロを知っているため、消沈した息子を立ち直らせるためにコンタクトをとってきた。

 劇場版ではすっかり太っており、サタンから昔の面影も無い、脂身の塊のようだ。トレーニングをしろ、と言われていたが、この時点では背は低めだが太っておらず、むしろ筋肉質な体つきをしている。

 戦闘力は4から5ではないかと推測。



〇マーク(サタン)の料理の腕

 チャンピオンになってから料理を始めたとは考えにくいので、この作品では子供の頃から料理の経験があったとします。
 



〇戦闘力の推移

ランファン:5万→6万 大猿化すると60万。大猿化しなくてもギニュー特戦隊の隊員達よりも強い。まだ最長老様に潜在能力を起こしてもらう前。

ネイル:27万→40万 ゲロが改良して重力二百倍まで可能になったトレーニング室に、ブリーフ博士が改良したトレーニングスーツを着て修行を重ねた。



〇ピッコロ大魔王

 ドミグラによって誘導されたコーチンによって、原作より約四年早く復活した大魔王。
 しかし、眠っている間に地球は彼にとって魔境と化しており、ピッコロ大魔王の名は人々にとって恐怖の伝説から映画のキャラクターになっていた。

 その強さは若返れば戦闘力にして230と、地球人にとっては驚異的なはずだったが……この作品の地球では主にゲロのせいでピッコロ大魔王を圧倒的に凌駕している者がゴロゴロいる。というか、コーチンが作った狂暴戦士の方が強い。
 それはピッコロ大魔王を復活させたコーチンも分かっているため、彼によって劇的に大改造される予定。ウィローの仇討ちが目的なので、最低でもウィローより強くされるのは確実。

 なお、ピッコロ大魔王はこの話の終了時点では自分が宇宙人である事や、自分を題材にした映画が大ヒットしている事を知らない。




 赤毛のショーン様、PY様、Paradisaea様、kubiwatuki様、KJA様、味噌鍋大好き様、クラスター・ジャドウ様、gsころりん様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。
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