ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする 作:デンスケ(土気色堂)
「そう言えば、なんで車なんだ? お前らって飛べるんだろ?」
「舞空術は疲れるからな。それに、旅はこういう無駄を楽しむものだろう?」
楽しそうに車の運転をしながら、ラピスはウーロンにそう答えた。
今年十四歳になる彼は、今回の冒険に備えてトレーニングや勉強の傍ら、車の免許を取得していた。ターレスに「走った方が速くないか?」と言われても、「走るのと運転するのは違う」と言い返して。
「たしかに、悪くねえな。お前らを抱えて走ったり飛んだりするより楽だ」
そう車の屋根に座っているターレスも、今ではそう同意している。既に自力で飛行機以上の速さで飛ぶ事が出来る彼だったが、自分の力以外で動く乗り物に乗るのは楽だった。その乗り物が自分の思い通りに動かせるのなら、それはそれで面白いのかもしれないと思った。
「それに、せっかく免許を取ったんだ。都会と違って伸び伸びと運転できる今なら、練習し放題だからな」
「って、おいっ!? お前、免許取ったばっかり!? 本当に大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫だ。標識も信号もこんなところにはないからな」
ラピスの車が走っているのは、街から離れた山道で、標識や信号はもちろん、交通違反を取り締まる警察も、対向車もいない。
「標識や信号だけじゃなくて、ガードレールも無いだろ!? 落ちたらどうするんだよ!」
しかし、ウーロンが言ったようにガードレールも何もないため、道から外れると崖から真っ逆さまに落ちていく事になる。
「俺が代わってやろうか!?」
実はキャビンカーを運転出来るウーロンが慌ててそう主張するが、ラピスは「じゃあ、疲れたら頼む」と答えるだけで、今すぐ交代する事に乗り気ではないようだ。
「落ち着きなさいよ、ウーロン。もし崖から車が落ちても、そんなことぐらいであんた以外は死なないから」
「そりゃあそうでしょうよ! 俺はお前らみたいに強くないからな!」
「あんただって、変化して窓から逃げ出せばいいじゃないか」
「あ、それもそうか」
ちなみに、ウーロンは助手席で、後部座席にはタイツ、ブルマ、ラズリが乗っている。
「おーいっ! 海が見えてきたぞー!」
そして、悟空はチチを後ろに乗せて筋斗雲で飛んでいた。
翼竜のバーベキューを堪能した一行は、亀仙人との待ち合わせのために海に向かっていた。
青い空、白い砂浜、季節は夏真っ盛り……ではなく春だが、南の海なので若干冷たいが泳げない事もない水温の海。
原作と異なり、最初から海に行く予定だったためブルマ達は水着を用意していた。
ドラゴンボール集めの冒険に出たタイツ達だったが、去年の事件の結果、七個のドラゴンボールの内六つが関係者の手元にある事が分かっている。
しかし、それではせっかくの旅行がつまらないだろうという事で、ゲロや亀仙人はちょっとしたイベントを用意していた。
この海水浴もそのイベントの一つである。
「なあ、おい。覗きなんかしないから放してくれよ。な、この通りっ!」
「そう言われても、悟空からお前の日頃の行いは聞いてるからな」
「もし虫に変化して逃げようとしたら、魔封波で封印するように言われてる。それが嫌なら大人しく諦めるんだな」
当然、タイツ達がホイポイカプセルから出した家の中で水着に着替えている間、ウーロンは厳重な監視下に置かれていた。
「魔封波って、グルメス王国の時のあれだろ!? 友達にそんなのを使おうなんて、お前ら鬼か!?」
「おいおい、叩き潰すより優しくしてるつもりだぜ? 魔封波なら封印はされるが、無傷で済むんだからよ」
そう心外だと苦笑いするターレス。なお、ウーロンは彼と友達というが、実はこの二人は今までそれほど顔を合わせていない。
ただ、一方的にウーロンが悟空にそっくりなターレスと「付き合いがある」と錯覚しているだけだ。
「そ、そうなのか? あの王様、壺に入れられる前にメチャクチャ伸びてたぞ? 本当に痛くないのか?」
「ああ、俺は試した事はないけどな」
「なあ、兄ちゃん。オラ、魚でも獲ってきていいか?」
その悟空は、驚くべき事にしっかり海パンを履いていた。パオズ山で漁を行う時等では躊躇いなく裸になる悟空だったが、ギネとターレスが苦労して「水着は水中で急所を守るための防具である」と水着を着る必要性を教えた事で、水着を履くようになっていたのだ。
「そう慌てるなよ、もうそろそろだ。そら、来たぞ」
ターレスが待つのに飽きた様子の悟空にそう言って、海の方を視線で指す。そこには、沖から此方に猛スピードで近づいてくる小型ボートがあった。
「波―っ!」
ボートの推力に、ヤムチャが放つかめはめ波の反動を使っているようだ。海面を滑るように進むボートが浜辺に近づくにつれ、「ひいぃぃぃっ!?」という悲鳴が聞こえてくる。
「亀仙人のじっちゃんに、ヤムチャにプーアル……と、誰だ?」
「覚えのない気だな」
「そう言えば、ヤムチャの後にまた弟子をとったとか聞いたな。そいつじゃないか?」
「この声は……男だな。興味なし」
「よっと! 悟空、皆久しぶりだな!」
「お久しぶりです!」
浜辺近くで減速し、程よい勢いで止まったボートからまず降りたのはヤムチャとプーアルだ。去年の『神龍の伝説』事件の頃と比べて、より精悍な顔つきになっている。
「久しぶりだな、ヤムチャ! へへ、気が前会った時と比べて倍ぐらい大きくなってる。強くなったなー」
「ああ、カリン様にしっかり鍛えてもらったからな。悟空、お前もカリン様のところに行く時は覚悟しておけよ」
その昔、亀仙人しか登り切った事がなかったが、近年は次々に塔を登って修行を受けに来る者が来るようになったカリンは、自身も修行をやり直す事でより一層厳しい試練を弟子たちに課せるようになっていた。
そのため、ヤムチャはカリンから超聖水(ただの水)を奪うのに半年以上もかかってやっと成功したのだった。
「まあ、気が倍近くなっているのは悟空達もみたいだけどな。この分じゃあ、天下一武道会初出場で初優勝! は難しそうだな」
「へへっ、まあな。ところで、そっちの奴は亀仙人のじっちゃんの新しい弟子か?」
「し、死ぬかと思った……」
「この程度で死んでいたら、命がいくつあってもたらんぞ」
砂浜に手をついて、亀仙人に背中を摩られているのは悟空やターレスと同じくらいの年頃の少年だった。
癖の強いアフロヘアのような髪に、鋭い目つきで精悍な印象を普段なら受けるのだろうが……今はグロッキー寸前に見える。
「ああ、俺とプーアルも顔を合わせたのはカリン塔から戻ってきた後だが……おい、自己紹介出来そうか?」
「は、はいっ! ヤムチャ先輩の弟弟子のサタンです! 皆さんのお噂は聞いております!」
まだ青い顔をした少年は、慌てて姿勢を正して自己紹介を行った。ただ、名乗ったのは本名であるマークではなく、自分が通っていたジムの名前からとったリングネームだったが。
何故なら彼は実は家出中で、亀仙人にも本名を誤魔化して弟子入りしていたからだ。本名を明かせば家出している事がばれ、家に戻る事になると思って名前を隠しているのだ。
……最も、亀仙人はその事に気が付いており、こっそり彼の両親と連絡を取り合い、「息子をよろしくお願いします」と弟子入りする許可を得ているのだが。
「本日は胸を貸していただけると聞いて、楽しみにしておりました!」
「オッス! オラ、悟空! よろしくな!」
「でも、手加減していただけると幸いです!」
「亀の爺さん、こいつ大丈夫なのか? 気は鍛えて半年ちょっとにしては中々だが」
「うむ、まあやる気はあるからの。……今日の稽古についてなら、むしろヤムチャの方が気がかりじゃ。ところでタイツちゃん達は着替え中かの?」
「ああ、だがそろそろ……ああ、来たぞ」
亀仙人達が来たことに気が付いたのだろう、水着に着替え終わったタイツ達が出てきた。
「亀のお爺ちゃんもヤムチャも久しぶりねー、そっちが新しくとった弟子の子?」
十六歳になりパンチー夫人譲りのナイスバディへ成長したタイツは、迷彩柄のビキニ。
「よし、ちゃんとウーロンを見張っていてくれたみたいね」
一方ブルマはリボンとフリルがあしらわれた、セクシーさよりも可愛さを重視したワンピースタイプの水着。
「タイツ、あんたこれから組手をするって事を忘れてないだろうね? 水着がずれても知らないよ」
ラズリもタイツと同じビキニだが、ボトムはホットパンツにして動きやすさを重視したチョイスをしている。
「へへっ、悟空さ、どうだべ? オラの水着姿!」
そしてチチは、シンプルなワンピースタイプの水着を選んだようだ。……普段より露出度が下がっている。
「ええの~っ! ちょっと見ない間に、本当に大きくなったもんじゃ!」
「ついて来た甲斐があったぜ!」
「やあ、皆、久しぶり!」
タイツ達の水着姿に大喜びする亀仙人とウーロンに、手を振って爽やかに挨拶するヤムチャ。スケベ二人はともかく、ヤムチャが普通にしているのに気が付いたタイツは不思議そうな顔をした。
「あら? ヤムチャ、あがり症は克服したの? せっかく水着に着替えたのに」
タイツ達が亀仙人達と砂浜で、しかも水着に着替えて待ち合わせしていたのは、彼からドラゴンボールを渡す代わりに、水着姿でヤムチャと乱取り稽古をしてほしいと依頼されたからだ。
その狙いは、もちろんヤムチャのあがり症克服だ。地球の神様の修行を終えたら、エッチなお店にでも放り込んで荒療治をする事を考えていた亀仙人だが、その前にやや穏当な方法で克服出来る機会があるなら活かさない理由はない。……ついでに、自分の目の保養にもなる。
やや下心が透けて見えるが、亀仙人が原作でドラゴンボールを渡す条件として出した「パンツを見せろ」と比べれば露骨ではないのと、ブルマやラズリもヤムチャのあがり症は今のうちに何とかしないとヤバイと思っていたので、「ドキ! 水着美少女だらけの乱取り稽古大会!」が開催される事になったのである。
なお、サタンはオマケだ。
「ま、まあな。カリン様の修行で、心身ともに鍛えられたからな!」
しかし、そのヤムチャはまだ彼にとって異性ではなく子供の内だろうチチやブルマはともかく、以前見た時は上がり気味だったラズリや、完全に上がっていたはずのタイツを前にしても平気なようで話している。
「ん? ヤムチャ、お主いつの間にサングラスをかけたんじゃ?」
「武天老師様、これはですね、ちょっとしたオシャレですよ」
「ほほう、そう言えばプーアルは何処に行ったんじゃ?」
「あ、はい、プーアルはですね、ちょっと散歩に――」
「隙あり!」
声を上ずらせてヤムチャが答えている内に、亀仙人は杖の先で彼がいつの間にかかけていたサングラスを跳ね飛ばした。
「うわ~っ!?」
すると、サングラスから悲鳴が聞こえたと思った次の瞬間、プーアルが現れた。
「しまったっ!」
そしてヤムチャは、なんと瞼を固く閉じて視覚を自ら封じてタイツ達の水着姿を見て上がるのを防いでいたのだ。
「なるほど、さっきまでは気を探って位置を確認していた訳ね」
「変に器用な奴だね……」
「ヤムチャ、組手の最中は目を閉じてはいかんぞ」
「そ、そんな~っ」
一方、ヤムチャの事はあまり気にせず婚約者に水着姿を見た感想を求めるチチに、悟空は率直に答えた。
「ああ、オラ見違えたぞ、チチ」
普段のビキニアーマーや拳法着、チャイナ風の衣服と、ワンピースタイプの水着姿はだいぶ違う。髪も普段と違って背中で纏めている。
「そんな~、見違えたなんてオラ、照れちまうべ。そんなに似合ってるだべか?」
「ん? おう、チチに似合ってると思うぞ」
ファッションに疎い悟空でもさすがに色は分かる。チチが着ている水着は、普段彼女が着ている服に多い青色だった。
「ねえ、ターレス。あんたはあたしに何か言う事は無いわけ?」
そんな悟空とチチの初々しい様子に触発されたらしいタイツが、ターレスにそう話しかけながらポーズを取って見せる。
「その水着か? この前出したグラビアの水着と一緒だな、気に入ったのか?」
「そうそう、撮影が終わった後に頼んでそのまま買い取ってもらったの。って、あんたあたしのグラビアちゃんと覚えてるの!?」
「出す度にお前が渡してくるからな。見てないとでも思ったか?」
「くっ、今度からスタジオに連れて行こうかしら。でも、別にそうしょっちゅうグラビアの撮影がある訳じゃないし……」
「おい、勘弁してくれよ。その水着はお前に最高に似合ってるし、可愛いからよ」
初めて見た訳じゃないからインパクトが足りなかったのかと思い、ターレスを撮影現場に連れ出す事を企むタイツ。それは面倒だと、やっとタイツを褒めるターレス。
「……二人ともその水着、似合ってるぞ」
「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくわ」
「本当に可愛いと思うぜ! サンオイル塗ってやろうか!?」
「悪いけど、日焼け止め塗った後だから遠慮するわ」
何となく雰囲気に流されてブルマと姉の水着姿を褒めるラピスと、鼻息荒く提案するが拒否されるウーロン。
「こ、これが青春……! お、俺も必ず一人前の武道家になって、ミゲルちゃん……!」
一方、サタンは武道家として大成する決意を新たにしていた。
その後行われた組手では、サタンはラピスや悟空、ターレスに稽古をつけてもらい、タイプの異なる相手と戦う事で貴重な経験を得た。
「あのダイナマイトキックって技、隙はデカいが思い切りが良いな」
「いや~、それほどでも」
一方、ヤムチャはタイツ達水着姿の美少女四人に袋叩きにされていた。
「くっ、脚だけ見て上半身の動きを読めば……がはっ!?」
「正面から普通に見なさい! でないと特訓の意味が無いでしょ!」
「これで本当にこいつの上がり症が治るのか?」
ヤムチャは去年の『神龍の伝説』事件の後、カリン塔を登ってカリン様に修行をつけてもらい、ギランと組手を行い鍛えてきた。その甲斐あって彼の強さは戦闘力で225。『神龍の伝説』事件の当時120だったので倍とはいかなかったが、再び悟空を抜き返している。
ブルマやチチも強くなっているがヤムチャを超える程ではないし、タイツはヤムチャと互角程度に気を抑えている。そのため、四対一でもそうそう負けるはずがない。
しかし、ヤムチャは言いつけ通り目は瞑っていないがタイツとラズリ、そしてブルマまで視界に入れないようにして戦うので、隙だらけなのである。
「さっきからオラの事ばっかり見て、やらしいべ!」
「ま、待って、それは誤解だ!」
そして、ヤムチャにとってまだ子供判定であるチチばかり見るので、誤解されてしまった。もっとも、誤解が解けても彼女にとって失礼な事に違いは無いのだが。
「まあ、視界に一瞬入っただけで硬直して動けなくなっていた去年に比べれば、マシになったと言ったところかの」
一応戦えてはいるので、進歩はしている。見守っている亀仙人は、そう評価していた。これなら、少なくとも去年のように試合の最中に硬直して負ける事は無いだろう。……隙だらけになって逆転される事ぐらいはありそうだが。
「それにしても、皆大きく成長した。タイツはC……いや、Dはあるか。ラズリも……ブルマも成長著しいのぅ」
そして、激しく動く度に揺れるタイツ達の胸元を凝視しながらそんな事を呟く。
「おい、亀の爺さん。見ているだけじゃ退屈だろう? 俺にも稽古をつけてくれよ」
亀仙人のそんな呟きに気がついたのかは不明だが、ターレスがそう言いながら彼の肩を掴んだ。
「な、なにっ? 儂、今忙しいんじゃが――」
「そう言うなって、サタンとの稽古じゃ気を抑えてたんでな、不完全燃焼なんだ。付き合ってくれてもいいだろう?」
「待てっ、いいところ――」
その後、『この世で一番強いヤツ』事件後、ナメック星の最長老様に潜在能力を覚醒させてもらったターレスと亀仙人の稽古は、彼がタイツ達を眺めている余裕が無いほど白熱した内容になったのだった。
その後、ヤムチャ達は亀仙人から「ついでじゃ、このままタイツ達について行き、経験を積んでこい」と言われ、旅に合流する事になった。
そして亀仙人から三つ目のドラゴンボールを手に入れたタイツ達は、ゲロとの待ち合わせの場所であるフライパン山と海の間にある砂漠へと向かったのだった。
その頃レッドリボン軍では、ドクターフラッペが開発した新兵器のお披露目が行われていた。
「素晴らしい成果だ、ドクター! これで我がレッドリボン軍はさらなる勢力拡大が可能となるだろう!」
「スポンサーの私としてもうれしい限りです、グフフフ」
レッド総帥も、そしてレッドリボン軍を長年資金援助してきたスポンサー、ギョーサン・マネーも満足げな様子で笑っている。
(ギョーサン・マネーが来ると聞いた時は驚いたが……今のところは順調じゃな)
フラッペに扮しているこの儂、ドクターゲロは開発した兵器を順番に披露していた。もちろん、これらの兵器はレッドリボン軍が本格的に世界征服に動き出さない程度に性能を抑えている。
しかし、我がGCコーポレーションの警備部門であるGCGの隊員達の練度も順調に上がっているので、それなりの物を「開発した」事にして並べてある。
『神龍の伝説』事件でボンゴが使っていたフライングソーサーの、搭乗者の姿勢制御を補助するプログラムを搭載した改良版。
原作でホワイト将軍が悟空に使ったパワードガン。
GCGでも採用されている、サイヤ人の戦闘服を参考に作った劣化ボディアーマー。
そして、原作でブラック補佐が搭乗したバトルジャケットの小型版、強化外骨格スーツ。
「フライングソーサーはアクティビティとしてもウケそうですな。一般用に売ってもらう事は可能ですかな?」
それらを見るギョーサン・マネーの様子は、特に野望に燃えているとか、何者かに洗脳され操り人形にされているとか、そうした様子はなかった。
「安全のため最高速度を落とし、飛行高度に制限を設けた訓練用を調整すれば、一般用になるはずだッペ」
人造人間編と魔人ブウ編の間の時期である、原作劇場版『銀河ギリギリ!! ぶっちぎりの凄い奴』に登場したギョーサン・マネー。側頭部と後頭部には髪が残っている儂と同じパターンの禿げの、太った年配の男性の姿だった彼だが、今は原作劇場版の約二十年前だ。儂の記憶にある姿よりだいぶ若々しい。
一対一で話した訳ではないが、今のところ危険な言動も見られない。世界征服に取り組んでいる様子もないので、彼がレッドリボン軍のスポンサーになった動機は、ビジネスや彼なりに対魔族を意識した安全保障によるものなのかもしれない。
「おおっ! ではお願いできますか、レッド総帥?」
「もちろんです、マネー殿。頼んだぞ、ドクター」
世界征服を目標に掲げるレッドリボン軍だが、ギョーサン・マネーが資金援助を始めた頃のレッドリボン軍はただの傭兵団だった。そして、規模が拡大した今も目標に掲げているだけで、やっている事は傭兵団の域を出ていない。なので、ギョーサン・マネーにとってレッドリボン軍との繋がりはグレーな商売でしかないのかもしれない。
もっとも、まだトワやメチカブラの魔術で思考を誘導されている可能性はあるが……今のところは証拠もない。
それに、今日の儂の目的はギョーサン・マネーを探る事ではないので、スパイロボットをつけて警戒するだけでいいだろう。
「では、今回の目玉をお見せするっペ。来るっペ、メタリック」
『ハイ、どくたー』
儂の声に応えて、地球人離れした巨体の兵士が姿を現す。スキンヘッドにサングラスをかけた黒い肌の兵士に見えるが、中身は人造人間3号が遠隔操作しているロボットである。
「おお、ドクターフラッペお得意の戦闘用ロボットですか! 見た目はまるで人間のようだ……!」
「戦闘力では桃白白には及ばないそうですが、要塞のような防御力と戦車の攻撃力、そして訓練された兵士並みの自己判断能力を有します。生身で対抗できるのは、我が軍のエースであるブルー将軍、次いでボンゴ少尉ぐらいです」
鼻高々と言った様子でメタリックを紹介するレッド総帥には悪いが、儂は原作に登場するメタリック軍曹を作っていない。悟空に壊されるのが分かっていて、人造人間並みに高性能なAIを搭載したロボットを作る気にはなれなかったからだ。
ならこのメタリックは何なのかと言うと、先にも言ったように、人造人間3号のAIが遠隔操作しているロボットだ。なので、実質的に性能を落とした劣化3号である。
3号そのものではなく、遠隔操作しているだけなのでこの機体が壊されても3号には何の影響もない。
なぜこのメタリック(外装)を作ったのかと言うと、フラッペに扮している儂では手に入らない情報を3号に集めてもらうため。そして、レッド総帥からロボット兵士を作って欲しいという要望があったためである。
なんでも、死亡率が高い危険な任務に生身の兵士の代わりに投入して、兵士の犠牲を少なくしたいらしい。……どんどんレッド総帥の人格が原作から乖離していく。
この歴史において、最も歴史を改変しているのは儂なのでは? そんな思いを振り切って次の成果を発表する。
「そして、此方がサイボーグ1号、ランファンだッペ」
続いて現れたのが、人造人間7号ランファン。
「サイボーグ!? 普通の女性にしか見えないが……?」
「マネー殿、儂も動き出した彼女を見た時は驚いたが、彼女は一度死んでいるのです。ブラック」
ブラック補佐がギョーサン・マネーにランファンの死亡診断書を見せると、「信じられん」と彼は目を見開き、診断書の写真と彼女の顔を見比べる。
「ランファン、自己紹介を」
「はい、レッド総帥。初めまして、ギョーサン・マネー様、サイボーグ1号、ランファンです」
そう自己紹介をしてウィンクをして見せるランファンには、事前に今日の事を話しており、「レッドリボン軍に忠実なサイボーグ」として演技してもらっている。
その後、ランファンはデモンストレーションとして鉄板で折り紙をし、空を飛んで気弾を放って演習用の目標を木っ端微塵にして見せた。
「す、素晴らしい! 天下一武道会の本戦に出場した武道家達と比べても遜色ない……いや、彼女もそうだったか。しかし、あの尻尾は?」
「実は伝手を使って天下一武道会に出場した選手の細胞を手に入れ、それを移植したッペ。その結果生えてきたのだッペ」
「なるほど。では、前回優勝者のギネ選手や、五位のターレス選手のような強さを彼女も持っていると……?」
「少なくとも、匹敵する強さを持っているはずだッペ」
感心するギョーサン・マネーに、儂はいよいよ今日最後の目玉を披露した。
「そして、これが完成間近のサイボーグ2号、ランチだッペ」
続いて披露したのが、サイボーグ2号……人造人間9号ランチの入ったカプセルが兵士達によって運び込まれる。
「これは……女の魔族ですか?」
「賞金首の『いただき』ランチです。この女も我がレッドリボン軍の縄張り内で死亡しまして、その死体をドクターが改造する事に成功したのです」
「な、なんと! では、この角は……?」
「魔族の細胞を移植した結果生えてきたものだっぺ」
そうカプセルの中に横たわるランチ(もちろん服は着せてある)を、興味深そうに観察するギョーサン・マネーに、偽情報を説明する儂。
当然だが、ランチは既に完成し蘇生も終わっている。なので、ランチはカプセルの中で瞼を閉じて寝たふりをしているだけだ。
「完成間近とのことですが……?」
「実は、もう肉体の方は完成しているッペ。ただ、この女の人格は攻撃性が高く反抗的だと判断したため、レッドリボン軍の兵士として運用するのは躊躇われたッペ」
実際には、金髪ランチの方なら上手くやれそうだと思うが。女嫌いのブルー将軍ならともかく、個性豊かな部下が多いホワイト将軍や、部下からの人望が厚いシルバー大佐、それに長年スパイをしていたオレンジ大佐(今年、将軍になる予定)なら、部下として使いこなしそうだ。
原作アニメで崩壊するレッドリボン軍からいち早く金を盗んで逃げだしたバイオレット大佐なら、親友になれるかもしれない。
「それに、彼女は二重人格で、もう一方の性格は大人しい代わりに軍人には全く向いていないッペ。だから、このサイボーグ2号は遠隔操作し、単独での危険な調査や潜入任務、破壊工作に使う事を提案するッペ」
「まだサイボーグは研究中の技術なので、用途が限られた機体が出来上がるのも仕方がないかと」
「なるほど。素体に成果が大きく影響されると……いっそ人格や記憶を全て消してしまうというのは?」
サイボーグにした素体に問題があるなら、素体の個性を消してしまえばいい。それをしないのは何故かとギョーサン・マネーが尋ねた瞬間、ランチの顔がピクリと動いた。
「っ!? お、起きてる!?」
「いえ、眠っているっペ。悪い夢でも見ているだけだっペ」
実際には、カプセル越しにギョーサン・マネーの声を聞いて、「なんてこと言いやがるんだ、テメェ!」と思わず反応してしまったのだろう。
「それで、質問の答えだっペが……人間の脳はデリケートだっペ。人格や記憶を全て消そうとしても中途半端に残って混乱する可能性や、何かの拍子に戻ってしまう事もあり得るっペ。
そうなると制御不能になる危険性があるので、人格や記憶を消す処置はやりたくないっペ。ご理解いただけたっペか?」
「あ、ああ……分かった」
ランチが動いたことに驚き、青ざめているギョーサン・マネーは儂の説明にあっさり頷いてくれた。
「それで、ドクター、具体的にはどうするつもりだ?」
「レッド総帥の許可が貰えれば、調整を施した後で実用試験として魔族の巣窟にある秘宝の調査のために送り込もうと考えているっペ」
「なるほど。魔族の巣窟か。それは兵士には任せられない危険な任務だが、その秘宝とは?」
「伝説によれば、『眠り姫』と呼ばれる危険な兵器だそうだっペ」
こうして、儂はランチを原作劇場版『魔神城の眠り姫』通り魔神城に送り込む作戦を認めてもらう事に成功したのだった。
なお、実はブルー将軍やボンゴを送り込めば魔神城の魔族には勝てるだろうという事は黙っておいた。
〇サタン(マーク)
亀仙人に弟子入りして約半年の、今年十三歳になるマーク少年。実は家出しており、本名を言うと親にばれて連れ戻されるかもしれないので、通っていたサタンジムの名前をとって、サタンと名乗っている。
しかし、思考が読める亀仙人にはとっくの十にばれており、親とも連絡を取り合い弟子入りの了解を貰っている。
戦闘力は60で、まだかめはめ波等は撃てないが、ダイナマイトキック(原作コミックでセルに向かって放った蹴り)を編み出し、現在改良中。
〇戦闘力推移(年齢は、「今年で〇〇歳になる」というのを略して記載しています)
・悟空(十二歳):125→200 ボンゴダークにやられて瀕死パワーアップする前は100だったので、その時から比べると戦闘力は倍になっている。この頃の原作悟空と比べると女心を分かっているが、ゲロと4号以外原作悟空を知らないため、評価されない。
・チチ(十二歳):90→155 原作チチ(100)を超え、武道の修行も花嫁修業も両立して励む乙女。ヤムチャセンサーでは子供判定。
・ブルマ(十二歳):85→148 原作桃白白を超えた。背では完全に悟空を追い抜いている。ヤムチャセンサーの子供判定を卒業した。
・タイツ(十六歳):2000→2900 原作セリパを戦闘力で抜き、亀仙人のスカウターでもなかなかの数値を出した。原作ブルマと同い年。
ラズリ(十四歳):50→105 この作品の『神龍の伝説』時の悟空とほぼ互角。
ラピス(十四歳)50→105 声変わりもして、女に間違われる事も無くなった。
ターレス(十四歳)2300→4000 原作ナッパと同じくらい強くなった。亀仙人と激しく稽古した。
ヤムチャ(十七歳)120→220 カリン塔での修行とギランとの組手で、原作ピッコロ大魔王に迫る実力に。しかし、マシになったもののまだあがり症は治っていない。
亀仙人:3900→5200 原作ナッパを超えた武天老師。美少女だらけの水着乱取り稽古を鑑賞していたら、ターレスと激しい稽古をする羽目になった。
〇サイボーグ1号
人造人間7号ランファンのレッドリボン軍での仮のコードネーム。戦闘力はだいぶ抑えている。
〇サイボーグ2号
人造人間9号ランチのレッドリボン軍での仮のコードネーム。本人は寝ているふりを続けていた。
この後、「フラッペにコントロールされているとは自覚しないまま」という設定で、魔神城の調査を始める。
〇ギョーサン・マネー
『銀河ギリギリ!! ぶっちぎりの凄い奴』登場の、地球一の金持ち。息子の誕生日プレゼントとして優勝賞金一億ゼニ―の格闘技大会を開催するほどの金持ち。試合会場も凝った作りだったので、建造費も億単位の費用が掛かっていそう。
息子、ドルに「金さえあればなんでも出来る」と危ない言葉を教えている。なお、妻の名前はオッカネ・マネー。
この作品では『銀河ギリギリ!! ぶっちぎりの凄い奴』の約二十年前なので、また息子はいない。結婚はしているかもしれない。
レッドリボン軍に資金援助している理由は、ゲロの推測以外では謎。
変わり者様、KJA様、カド=フックベルグ様、Paradisaea様、kiyo0084様、Othuyeg様、Mr.ランターン様、 kubiwatuki様、gsころりん様、都庵様、みえる様、都庵様、誤字報告ありがとうございます。早速修正しました。